透析装置用吸着剤
陽イオン交換粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の層を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置に使用される吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、ヒトホメオスタシス系の生命維持に必要不可欠な器官である。腎臓は、血液から尿素などの毒性代謝廃棄物を除去する、体内の天然フィルタとして働く。腎不全又は機能不全は、毒素の蓄積をもたらす可能性があり、また血液中の不均衡な電解質レベルをもたらす可能性があり、その結果、個人の健康に有害な望ましくない影響が生じる可能性がある。この点に関し、腎機能障害を抱える患者は、血液中の毒性廃棄物を除去するために、また血液中の電解質の最適レベルを回復させるために、通常は透析を受けなければならない。
【0003】
ここ2〜3年にわたり、末期腎不全(ESRD、end-stage renal disease)に罹っている患者に使用される透析の主流の形態は、血液透析である。血液透析では、患者の大量の血液を濾過ユニット又は透析器に通すことによって患者の血液から直接毒素を除去するために、体外システムを使用する。従来の血液透析プロセスでは、患者は、透析が続いている間は動けない状態で何時間も過ごさなければならず、患者の行動を妨げている。血液透析のその他の欠点は、治療プロセス中に抗凝血剤を利用する必要があることであり、内出血の危険性を不可避的に増大させる可能性がある。
【0004】
腎不全の患者に使用される透析のその他の形態は、腹膜透析であり、最も一般的には以下の2つの技法、即ち、「連続携行式腹膜潅流(CAPD、continuous ambulatory peritoneal dialysis)」及び「自動腹膜透析(APD、automated peritoneal dialysis)」で適用される。CAPDでは、新鮮な透析物を患者の腹(腹膜)腔に注入し、血液中の代謝廃棄物及び電解質を、拡散を用いることで腹膜を通して透析物と交換する。電解質及び代謝廃棄物の十分な拡散を引き起こすには、透析物を腹(腹膜)腔内に2〜3時間保持し、その後に、使用済みの透析物を除去し新鮮な透析物と交換する。連続携行式腹膜潅流の主な欠点は、毒素クリアランスが低レベルであることであり、使用済みの透析物を連続的に交換する必要があり、患者にとっては厳しいものとなり且つ彼/彼女の日々の活動を妨げる可能性がある。
【0005】
従来の血液透析及び連続携行式腹膜潅流治療の上記問題を克服するために、自動腹膜透析(APD)装置が近年開発されてきた。APDでは、透析を夜行い、又は患者が休息している間に行う。透析物は、自動的に交換され置き換えられる。これにより、患者の日々の活動に対する妨害を最小限に抑えながら、より頻繁な透析物の交換及びより良好な毒素クリアランスが可能になる。
【0006】
しかし、上述の全ての透析技法は、依然としていくつかの欠点を有する。例えば、血液透析は、タンパク質結合毒素を除去することができず、一方腹膜透析は、患者に有益なタンパク質の著しい損失を必然的に伴う。血液透析、CAPD、及びAPDは、使用される透析物の体積が制限されることにより(コスト上の制約により)、尿毒症毒素に関して最適なクリアランスを提供することができない。血液透析装置が、使用済み透析物を再生する吸着剤カートリッジなどの再生ユニットを含む場合、これら透析装置の全体的なサイズ及び重量は、携帯用にするにはしばしば非常に大き過ぎ、したがって患者の行動範囲が改善されない。そのような装置は、装置の断続的な使用の結果生じる必要条件である、毒素の適切な除去を確実にするのに使用される吸着剤のバルク状の性質により、やはり扱い難い。さらに、知られている再生血液透析装置の流動システムは、複数のポンプを必要とし、したがって望ましくないことであるが、装置の全体的なサイズ、重量、及び電力消費を増大させる。腹膜透析における使用が提案されるこれら装置の代替形態では、自動腹膜透析装置の携帯性を、再生ユニットのサイズを縮小することによって改善しようと試みられている。しかし、再生ユニットのサイズの縮小の見返りとして、再生ユニット又は吸着剤による毒素除去の効力の著しい低下があり、最終的には患者の健康を損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の欠点の1又は2以上を克服し又は少なくとも改善する透析装置を提供することが求められている。そのような装置は、携帯可能で比較的軽く、且つ毒素の除去に高い効力を有するべきである。したがって、透析装置に組み込むことができる、コンパクトで毒素を除去する優れた能力を有する再生部品又は吸着剤を提供することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、陽イオン交換粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の層を含む吸着剤が提供される。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属イオンを含んでいてもよい。一実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、陽イオン交換粒子などの水不溶性アンモニア吸収剤と混合された、共有結合により固定化された尿毒症毒素処置酵素粒子の層を含む吸着剤が提供される。固定化尿毒症毒素処理酵素粒子と共に陽イオン交換粒子の単一複合層における存在により、尿毒症毒素処理酵素粒子の加工性が高まり、且つ透析物中の望ましくない沈殿によるカートリッジの詰まりが防止されることは、有利である。陽イオン交換粒子は、望ましくない陽イオンを除去するだけでなく、尿毒症毒素処理酵素の酵素反応に対して比較的一定のpH範囲を確立するための緩衝剤としても働く。さらに、尿毒症毒素処理酵素と陽イオン交換粒子とは空間的に近接しているので、酵素によって生成された望ましくない陽イオンの吸収効力を、増大させることができる。別の利点は、尿毒症毒素処理酵素の共有結合固定化にあり、それによって、透析物中への酵素の浸出が防止される。有利なことに、これによって、酵素再吸収のための吸着剤の追加の層の必要性−即ち、これらシステムのバルク性に著しく寄与し且つそれらの生体適合性を損なうといった、知られている透析物再生装置の欠点が取り除かれる。
【0009】
一実施形態では、第1の態様の吸着剤の前に、有機化合物吸収剤粒子の層又は有機化合物吸収剤パッドが付される。有利には、この層が酵素阻害物質を除去し、したがって尿毒症毒素処理酵素の活性及び安定性が維持される。別の実施形態では、第1の態様の吸着剤がさらに、陽イオン交換粒子の層を含む。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含んでいてもよい。有利には、この層は、陽イオン交換粒子と固定化尿毒症毒素処理酵素粒子との混合物の層から逃げた任意の望ましくない陽イオンが除去されるのを確実にする。別の実施形態では、開示された吸着剤はさらに、有機化合物吸収剤粒子と混合された陰イオン交換粒子の層を含んでいてもよい。混合物の2層の存在により、吸着剤の全体的なサイズ及び高さが減少し、吸着剤の生成が容易になり、透析装置で使用した場合に吸着剤によって引き起こされた全体的な圧力降下が減少する。有利には、これにより、代謝廃棄物が吸着剤によって除去される効力に悪影響を及ぼすことなく、吸着剤の携帯性及び使用者の快適さが増大する。
【0010】
第2の態様によれば、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の層を含む吸着剤が提供される。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含んでいてもよい。一実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、10〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有している、共有結合により固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子を含んだ吸着剤が提供される。吸着剤はさらに、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む陽イオン交換粒子であって、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子などのアンモニア吸収粒子を含んでいてもよい。吸着剤はさらに、非晶質であり部分的に水和した水不溶性の金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩の対イオン形態で含む陰イオン交換粒子であって、10ミクロン〜1000ミクロンの平均粒度を有する陰イオン交換粒子を含んでいてもよい。吸着剤はさらに、10〜1000ミクロンの平均粒度を有する有機化合物吸収剤粒子を含んでいてもよい。発明者らによって、尿毒症毒素処理酵素粒子、陽イオン交換粒子、陰イオン交換粒子、及び有機化合物吸収剤粒子のこの特定の粒度範囲の使用により、代謝廃棄物除去の効力が大きく改善され、同時にそれぞれの吸着剤材料の好ましい低流動抵抗及び最小溶解度が可能になることが見出された。有利には、吸着剤を通過する透析物は、任意の望ましくないイオン及び代謝廃棄物を本質的に含んでいなくてもよい。
【0011】
第3の態様によれば、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、
10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の2次層と、
3次層及び4次層であり、その少なくとも一方が陰イオン交換粒子を含み、他方の層が有機化合物吸収剤粒子を含む3次層及び4次層と
を含む吸着剤が提供される。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含んでいてもよい。
【0012】
一実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子又は有機化合物吸収パッドの1次層と、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の3次層と、
4次層及び5次層であり、その少なくとも一方が、非晶質の部分的に水和した水不溶性金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩の対イオンの形で含む、10ミクロン〜1000ミクロンの平均粒度を有する陰イオン交換粒子を含み、他方の層が、10〜1000ミクロンの平均粒度を有する有機化合物吸収剤粒子を含む4次層及び5次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0013】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、
そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含む、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の2次層と、
陰イオン交換粒子の3次層と、
有機化合物吸収剤粒子の4次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0014】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収剤粒子又は有機化合物吸収剤パッドの1次層と、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の3次層と、
陰イオン交換粒子の4次層と、
有機化合物吸収剤粒子の5次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0015】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子又は有機化合物吸収パッドの1次層と、
陽イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
陰イオン交換粒子と混合した陽イオン交換粒子の3次層と、
有機化合物吸収剤粒子の4次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0016】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子又は有機化合物吸収パッドの1次層と、
陽イオン交換粒子及び陰イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
有機化合物吸収剤粒子の3次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0017】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子の1次層と、
陽イオン交換粒子及び陰イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0018】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
陽イオン交換粒子、陰イオン交換粒子、及び有機化合物吸収粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子
を含む吸着剤が提供される。
【0019】
定義
本明細書で使用される以下の単語及び用語は、指示される意味を有するものとする。
【0020】
本明細書で使用される「吸着剤」という用語は、所望の物質を吸収できることを特徴とする材料の種類を広く指す。
【0021】
本明細書で使用される「無毒性」という用語は、人体に存在する場合、副作用をほとんど又は全く引き起こさない物質を指す。
【0022】
本明細書の文脈における「汚染物質」という用語は、ヒトの健康に一般に有害で、透析物無毒化プロセスで除去されることが望ましい、透析物中の任意の構成成分、典型的には毒性構成成分を意味する。典型的な汚染物質には、アンモニウム、リン酸塩、尿素、クレアチニン、及び尿酸が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0023】
本明細書で使用される「陽イオン交換粒子」という用語は、典型的にはこの粒子の表面上に正に帯電した化学種の溶液を通すことによって、陽イオン性の又は正に帯電した化学種に接触したときにそのような化学種を捕捉し又は固定化することが可能な粒子を指す。
【0024】
本明細書で使用される「陰イオン交換粒子」という用語は、典型的にはこの粒子の表面上に負に帯電した化学種の溶液を通すことによって、陰イオン性の又は負に帯電した化学種に接触したときにそのような化学種を捕捉し又は固定化することが可能な粒子を指す。
【0025】
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、ヒト又は動物の身体に有害な生体反応を引き起こさない材料の性質を指す。
【0026】
「粒度」という用語は、粒子の直径又は均等な直径を指す。「平均粒度」という用語は、粒子の量の大部分が指定された粒度に近くなるが、一部の粒子はこの指定サイズよりも大きく一部の粒子は小さいことを意味する。粒子の分布のピークは、指定サイズを有することになる。したがって、例えば、平均粒度が50ミクロンである場合、50ミクロンよりも大きな一部の粒子及びより小さい一部の粒子が存在することになるが、粒子の大部分、好ましくは80%、より好ましくは90%は、そのサイズが約50ミクロンになり、粒子の分布のピークは50ミクロンになる。
【0027】
本明細書で使用される「再生」という用語は、尿毒症毒素の吸収による透析物無毒化の動作を指す。
【0028】
本明細書で使用される「再構成」という用語は、再生された透析物を、透析前に新鮮な腹膜透析物と本質的に同じ状態及び化学組成に変換する動作を指す。
【0029】
「実質的に」という用語は「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであってもよい。必要な場合には、「実質的に」という単語は、本発明の定義から省略してもよい。
【0030】
他に指示しない限り、「含む(comprising)」及び「含む(comprise)」という用語とこれらの文法上の変形例は、列挙された要素を含むが追加の列挙されていない要素の包含も可能になるような、「非限定的な」又は「包括的な」言語を表すものとする。
【0031】
本明細書で使用される「約」という用語は、配合物の成分の濃度という文脈において、典型的には記述される値の平均±5%、より典型的には記述される値の±4%、より典型的には記述される値の±3%、より典型的には記述される値の±2%、さらにより典型的には記述される値の±1%、さらにより典型的には記述される値の±0.5%を意味する。
【0032】
この開示の全体を通して、ある実施形態は、範囲フォーマットで開示されていてもよい。範囲フォーマットの記述は、単なる便宜上及び簡略化のためと理解すべきであり、開示された範囲に対して柔軟性なく限定するものと解釈すべきではない。したがって、範囲の記述は、具体的に開示された全ての可能性ある部分範囲、並びに範囲内の個々の数値を有するものと見なすべきである。例えば、1〜6のような範囲の記述は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの具体的に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、及び6を有するものと見なすべきである。これは、範囲の広さに関わりなく適用される。
【0033】
実施形態の詳細な開示
透析装置用の吸着剤の、例示的な非限定的実施形態について、以下に開示する。吸着剤は、前記吸着剤に接触した流体から、尿素などの代謝廃棄物を除去することが可能であってもよい。
【0034】
一実施形態では、吸着剤は、陽イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、陽イオン交換粒子の2次層と、有機化合物吸収剤粒子と混合した陰イオン交換粒子の3次層とを含む。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンを含んでいてもよい。一実施形態では、吸着剤は、1次層と3次層との間に結合された2次層を含み、使用中、透析液は、前記1次層から前記2次層を介して前記3次層へと通過していく。有機化合物吸収剤の追加の層を、吸着剤に含めてもよい。
【0035】
別の実施形態では、吸着剤は、固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンを含む、陽イオン交換粒子の2次層と、3次層及び4次層であって、それぞれ陰イオン交換粒子の層及び有機化合物吸収剤粒子の層であり、又はその逆でもある3次層及び4次層とを含む。有機化合物吸収剤の追加の層を、吸着剤に含めてもよい。
【0036】
一実施形態では、吸着剤は、2次層に結合された1次層、3次層に結合された2次層、及び4次層に結合された3次層を含み、使用中は、透析液が前記1次層から前記2次層へ、前記2次層から前記3次層へ、前記3次層から前記4次層へと通過していく。一実施形態では、2次層は、前記1次及び前記3次層の間に配置され、前記3次層は、前記2次層と前記4次層との間に配置される。
【0037】
一実施形態では、吸着剤は、有機化合物吸収剤粒子又はパッドの1次層と、それに続く、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む陽イオン交換粒子などのアンモニア吸収粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む陽イオン交換粒子などのアンモニア吸収粒子の3次層と、非晶質で部分的に水和した水不溶性金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩、対イオンの形で含む陰イオン交換粒子の4次層とを含む。
【0038】
一実施形態では、吸着剤は、1次及び3次層の間に結合された2次層と、2次及び4次層の間に結合された3次層とを含み、使用中は、透析液が前記1次層から前記2次及び3次層を介して前記4次層へと通過していく。
【0039】
別の実施形態では、吸着剤は、有機分子吸収剤粒子又はパッドの1次層と、固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む、陽イオン交換粒子の3次層と、4次層及び5次層であって、それぞれ、非晶質で部分的に水和した水不溶性の金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩、対イオンの形で含む陰イオン交換粒子の層、及び有機化合物吸収剤粒子の層を含み、又はその逆でもある、4次層及び5次層とを含む。
【0040】
一実施形態では、吸着剤は、2次層に結合された1次層と、3次層に結合された2次層と、4次層に結合された3次層と、5次層に結合された4次層とを含み、使用中は、透析液が前記1次層から前記2次層へ、前記2次層から前記3次層へ、前記3次層から前記4次層へ、前記4次層から前記5次層へと通過していく。一実施形態では、2次層が前記1次及び前記3次層の間に配置され、前記3次層は前記2次層及び前記4次層の間に配置され、前記4次層は前記3次及び前記5次層の間に配置される。
【0041】
尿毒症毒素処理酵素粒子は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することが可能であってもよい。一実施形態では、尿毒症毒素処理酵素は、ウレアーゼ、ウリカーゼ、及びクレアチニナーゼの少なくとも1種である。好ましい実施形態では、尿毒症毒素処理酵素がウレアーゼである。一実施形態では、ウレアーゼの代わりに、吸着剤で吸収することができる生成物に尿素を変換することができる任意の材料を用いてもよい。好ましくは、その材料は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することができる。
【0042】
一実施形態では、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組合せの群から選択される金属のイオンである。一実施形態では、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンが、ジルコニウムである。
【0043】
一実施形態では、陽イオン交換粒子は、非晶質の水不溶性金属リン酸塩を、プロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含み、この金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択してもよい。一実施形態では、金属がジルコニウムである。
【0044】
それほど溶解しないリン酸塩は、本明細書では、水に対して10mg/l以下の溶解度を有するリン酸塩であると理解される。好ましくは、陽イオン交換粒子がリン酸ジルコニウム粒子である。
【0045】
陰イオン交換粒子は、非晶質で部分的に水和した水不溶性の金属酸化物を、その水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩、対イオンの形で含んでいてもよく、この金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択されていてもよい。一実施形態では、金属がジルコニウムである。
【0046】
陰イオン交換粒子は、酸化ジルコニウム粒子であってもよい。好ましくは、陰イオン交換粒子は、含水酸化ジルコニウム粒子である。
【0047】
有機化合物吸収剤は、とりわけ、活性炭、モレキュラーシーブ、ゼオライト、及び珪藻土からなる群から選択されていてもよい。有機化合物吸収剤粒子は、活性炭粒子であってもよい。一実施形態では、1次層内の有機化合物吸収剤が、活性炭フィルタパッドである。別の実施形態では、有機化合物吸収剤は、活性炭粒子を含む。
【0048】
ウレアーゼは、固定化ウレアーゼであってもよい。ウレアーゼは、ウレアーゼ粒子の固定化をもたらすことができる、任意の知られている担持材料に固定化してもよい。一実施形態では、担持材料が、生体適合性基材である。生体適合性材料は、炭水化物ベースのポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、又は無機ポリマー材料であってもよい。生体適合性基材は、1種の材料で構成された均質基材、又は少なくとも2種の材料で構成された複合体基材であってもよい。生体適合性基材は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素(例えば、シリカゲル)、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種であってもよい。
【0049】
一実施形態では、生体適合性基材へのウレアーゼの固定化は、グルタルアルデヒド活性化、エポキシ基による活性化、エピクロロヒドリン活性化、ブロモ酢酸活性化、臭化シアン活性化、チオール活性化と、N−ヒドロキシスクシンイミド及びジイミドアミドのカップリングからなる群から選択される固定化技法によって実施される。使用される固定化技法では、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、又は(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランなどの、シランをベースにしたリンカーを使用してもよい。生体適合性基材の表面は、デキストラン又はポリエチレングリコールなどの反応性及び/又は安定化層で、またエチレンジアミン、1,6−ジアミノヘキサン、チオグリセロール、メルカプトエタノール、及びトレハロースなどの適切なリンカー及び安定化剤分子でさらに官能化されていてもよい。ウレアーゼは、精製された形で、又はナタマメ若しくはその他の適切なウレアーゼ源の粗製抽出物の形で使用することができる。
【0050】
一実施形態では、ウレアーゼ粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約100ミクロン〜約900ミクロン、約200ミクロン〜約900ミクロン、約300ミクロン〜約800ミクロン、約400ミクロン〜約700、500ミクロン〜約600ミクロン、約25ミクロン〜約250ミクロン、約25ミクロン〜約100ミクロン、約250ミクロン〜約500ミクロン、約250ミクロン〜約1000ミクロン、約125ミクロン〜約200ミクロン、約150ミクロン〜約200ミクロン、約100ミクロン〜約175ミクロン、及び約100ミクロン〜約150ミクロンの範囲の平均粒度を有する。
【0051】
一実施形態では、1000〜10000単位のウレアーゼが、前記生体適合性基材に固定化される。固定化ウレアーゼ及び基材の全重量は、約0.5g〜約30gに及ぶ。
【0052】
一実施形態では、ウレアーゼは、尿素を無毒性化合物に変換することができる任意の材料で置き換えてもよい。好ましくは、この材料は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することができる。
【0053】
リン酸ジルコニウム粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約100ミクロン〜約900ミクロン、約200ミクロン〜約900ミクロン、約300ミクロン〜約800ミクロン、約400ミクロン〜約700、500ミクロン〜約600ミクロン、約25ミクロン〜約200ミクロン、又は約25ミクロン〜約150ミクロン、又は約25ミクロン〜約80ミクロン、又は約25ミクロン〜約50ミクロン、又は約50ミクロン〜約100ミクロン、又は約125ミクロン〜約200ミクロン、又は約150ミクロン〜約200ミクロン、又は約100ミクロン〜約175ミクロン、又は約100ミクロン〜約150ミクロン、又は約150ミクロン〜約500ミクロン、又は約250ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0054】
リン酸ジルコニウム粒子は、リン酸ジルコニウム粒子の固定化をもたらすことができる、任意の知られている担持材料に固定化されていてもよい。一実施形態では、担持材料が生体適合性基材である。一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、所定体積へのこの粒子の物理的圧密化である。一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、リン酸ジルコニウム、又はリン酸ジルコニウム及び適切なセラミック材料の混合物を、焼結することによって実現される。生体適合性基材は、1種の材料で構成された均質基材、又は少なくとも2種の材料で構成された複合体基材であってもよい。生体適合性材料は、炭水化物ベースのポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリオレフィン、又は無機ポリマー若しくはセラミック材料であってもよい。生体適合性基材は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種であってもよい。
【0055】
一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子は、アンモニウムイオン及びその他の陽イオンを吸収することができる任意の粒子によって置き換えてもよい。好ましくは、この粒子は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムのイオンを含む群から選択される陽イオンを、吸収することができる。アンモニア吸収剤粒子は、吸収されたアンモニウムイオン及びその他の陽イオンの代わりにナトリウム及び水素などのイオンを放出してもよい。一実施形態では、アンモニア吸収剤は、ウレアーゼ反応に向けて一定のpHを確立するための緩衝剤としても機能する。
【0056】
酸化ジルコニウム粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約100ミクロン〜約900ミクロン、約200ミクロン〜約900ミクロン、約300ミクロン〜約800ミクロン、約400ミクロン〜約700、500ミクロン〜約600ミクロン、約10ミクロン〜約200ミクロン、又は約10ミクロン〜約100ミクロン、又は約10ミクロン〜約30ミクロン、又は約10ミクロン〜約20ミクロン、又は約20ミクロン〜約50ミクロン、又は約25ミクロン〜約50ミクロン、又は約30ミクロン〜約50ミクロン、又は約40ミクロン〜約150ミクロン、又は約80ミクロン〜約120ミクロン、又は約160ミクロン〜約180、又は約25ミクロン〜約250、又は約250ミクロン〜約500、又は約250ミクロン〜約1000の範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0057】
酸化ジルコニウム粒子は、酸化ジルコニウム粒子の固定化をもたらすことができる、任意の知られている担持材料に固定化されていてもよい。一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、所定体積へのこの粒子の物理的圧密化である。一実施形態では、酸化ジルコニウム粒子の固定化は、酸化ジルコニウム、又は酸化ジルコニウム及び適切なセラミック材料の混合物を、焼結することによって実現される。一実施形態では、担持材料が生体適合性基材である。生体適合性材料は、炭水化物ベースのポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリオレフィン、又は無機ポリマー若しくはセラミック材料であってもよい。生体適合性基材は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種であってもよい。
【0058】
一実施形態では、酸化ジルコニウム粒子の代わりに、リン酸イオン及びその他の陰イオンを吸収することができる任意の粒子を用いてもよい。好ましくは、この粒子は、リン酸塩、フッ化物、硝酸塩、及び硫酸塩のイオンを含む群から選択される陰イオンを、吸収することができる。酸化ジルコニウム粒子は、吸収される陰イオンの代わりに、酢酸塩、乳酸塩、重炭酸塩、及び水酸化物などのイオンを放出してもよい。一実施形態では、酸化ジルコニウム粒子は、鉄、アルミニウムと、ヒ素、ビスマス、カドミウム、コバルト、銅、鉛、水銀、ニッケル、パラジウム、及び銀からなる群から選択される重金属とに対する良好な結合剤でもある。
【0059】
活性炭粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約10ミクロン〜約250ミクロン、約20ミクロン〜約200ミクロン、約25ミクロン〜約150ミクロン、約50ミクロン〜約100ミクロン、約25ミクロン〜約250ミクロン、又は約100ミクロン〜約200ミクロン、又は約100ミクロン〜約150ミクロン、又は約150ミクロン〜約300ミクロン、又は約200ミクロン〜約300ミクロン、又は約400ミクロン〜約900ミクロン、又は約500ミクロン〜約800ミクロン、又は約600ミクロン〜約700ミクロン、又は約250ミクロン〜約500ミクロン、又は約250ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0060】
一実施形態では、活性炭粒子の代わりに、有機化合物を吸収することができる任意の粒子を用いてもよい。好ましくは、この粒子は、有機化合物及び/又は有機代謝産物であって、クレアチニン、尿酸と、その他の小さい及び中程度のサイズの有機分子とを含む群から選択されるものを、他と全く交換することなく吸収することができる。活性炭粒子は、スペースを節約する目的で、所定の体積に物理的に圧密化してもよい。一実施形態では、活性炭粒子は、活性炭フィルタパッドに物理的に圧密化される。
【0061】
一実施形態では、吸着剤は、少なくとも1つのカートリッジに収容される。吸着剤カートリッジは、透析装置から容易に除去可能であるように構成されていてもよい。吸着剤カートリッジは、コンパクトであってもよく、水及び引裂きに耐性のある材料で作製されていてもよい。カートリッジは、弾力性のある、化学的及び生物学的に不活性な材料から作製されていてもよい。カートリッジは、浸出することなく透析装置の流動システム内の圧力に耐えることもできる。カートリッジは、熱滅菌、エチレンオキシド滅菌、及びイオン化放射線による滅菌などの滅菌条件に耐えることができる材料から作製されていてもよい。一実施形態では、吸着剤カートリッジは、ポリカーボネートで作製される。吸着剤カートリッジは、ポリプロピレン又はポリエチレンで作製されていてもよい。一実施形態では、フィルタパッド及び濾紙を、吸着剤カートリッジの入口及び出口に、及び/又は吸着剤内の個々の層の間に位置付けて、吸着剤の層から生じる任意の粒子を濾別してもよい。
【0062】
添付図面は、開示された実施形態を例示し、開示された実施形態の原理を説明する働きをする。しかし、これらの図面は、単なる例示を目的に作成されており、本発明を明確に限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1a】透析装置用吸着剤の、一実施形態の配置を示す図である。
【図1b−1g】透析装置用吸着剤の、その他の種々の実施形態の配置を示す図である。
【図2a】吸着剤カートリッジのCADの等角図である。
【図2b】図2aの吸着剤カートリッジの断面図である。
【図2c】吸着剤の種々の層をはっきり画定する仕切りを有する、吸着剤カートリッジの別の実施形態のCADの断面図である。
【図3】本明細書に開示される、ウレアーゼの固定化用の生体適合性基材として使用される、ポリカルポラクトン(PCL、polycarpolactone)骨格を示す図である。
【図4】本明細書に開示される、リン酸ジルコニウムの固定化用の生体適合性基材として使用される、ポリカルポラクトン(PCL)骨格を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1aを参照すると、開示された透析装置で使用される吸着剤(100)の一実施形態が示されている。吸着剤(100)の第1の層(1a−1)は、活性炭パッド(1)を含む。
【0065】
吸着剤(100)の第2の層(1a−2)は、第1の層(1a−1)に隣接して連続して配置されており、固定化ウレアーゼ(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物を含む。ナタマメ、粗製ナタマメ粉末、又はその他の供給源(細菌、組換え、熱安定性ウレアーゼ変異体など)から得られた精製済みウレアーゼは、共有結合によって固定化されている。使用される固体担持材料又は基材は、セルロースである。固定化ウレアーゼ(2)は、粒度が25ミクロン〜200ミクロンの範囲にある粒子の形をとる。使用される固定化ウレアーゼ粒子の全重量範囲は、0.5グラム〜30グラムの範囲にある。リン酸ジルコニウム粒子(3)は、25ミクロン〜250ミクロンのサイズを有し、アメリカ合衆国ニュージャージー州MEI社製である。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0066】
吸着剤(100)の第3の層(1a−3)は、第2の層(1a−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1a−3)は、25ミクロン〜250ミクロンのサイズのリン酸ジルコニウム粒子(3)を含む。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0067】
吸着剤(100)の第4の層(1a−4)は、第3の層(1a−3)に隣接して連続して配置されている。第4の層(1a−4)は、含水酸化ジルコニウム粒子(4)及び活性炭粒子(5)の混合物を含む。酸化ジルコニウム粒子(4)は、10ミクロン〜250ミクロンのサイズを有し、アメリカ合衆国ニュージャージー州MEI社製である。酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。活性炭粒子(5)は、50ミクロン〜300ミクロンのサイズを有し、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグのCalgon Carbon社製である。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0068】
使用中、吸着剤(100)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1a−1)から第4の層(1a−4)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1a−1)を通過するとき、活性炭パッド(1a−1)は、酸化剤及び/又は重金属などの酵素阻害物質を除去し、したがって尿毒症毒素処理酵素の活性及び安定性が維持される。さらに、この層は、使用済みの透析物からの尿毒症毒素など、有毒な有機化合物も除去する。
【0069】
透析物が第2の層(1a−2)を通過するとき、固定化ウレアーゼ(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物は、透析物から尿素及びアンモニウムイオンを除去する。さらに、リン酸ジルコニウム粒子(3)はイオンを交換するだけでなく緩衝剤としても働くので、ウレアーゼ(2)の周りのpH条件は安定に保たれ、それによってウレアーゼの活性が保護され、その寿命が延びる。透析物が第2の層(1a−2)を通過し、中間の第3の層(1a−3)に進入するとき、この層に存在するリン酸ジルコニウム粒子(3)は、第2の層(1a−2)で形成された全てのアンモニウムイオンを定量的に除去する。その後、透析物は第4の層(1a−4)に入る。含水酸化ジルコニウム粒子(4)及び活性炭粒子(5)の混合物は、患者によって生成された、又は第2(1a−2)及び/又は第3(1a−3)の層のリン酸ジルコニウム粒子(3)から浸出した任意のリン酸イオンを除去する。この混合物は、クレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素も除去する。吸着剤(100)の種々の層の組合せは、毒素除去の全体的な効力を改善し、吸着剤(100)の全体的なサイズを縮小する。
【0070】
次に図1bを参照すると、使用される吸着剤(102)の第2の実施形態が示されている。固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び以下の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0071】
吸着剤(102)の第1の層(1b−1)は、固定化ウレアーゼ(2)を含む。使用されるウレアーゼ(2)は、粒度が25ミクロン〜200ミクロンの範囲にある粒子の形をとる。使用されるウレアーゼ粒子の全重量は、0.5グラム〜30グラムの範囲にある。
【0072】
吸着剤(102)の第2の層(1b−2)は、第1の層(1b−1)に隣接して連続して配置される。第2の層(1b−2)は、サイズが25ミクロン〜250ミクロンのリン酸ジルコニウム粒子(3)を含む。リン酸ジルコニウム粒子の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0073】
吸着剤(102)の第3の層(1b−3)は、第2の層(1b−2)に隣接して連続して配置される。第3の層(1b−3)は、サイズが10ミクロン〜250ミクロンの含水酸化ジルコニウム粒子(4)を含む。酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0074】
吸着剤(102)の第4の層(1b−4)は、第3の層(1b−3)に隣接して連続して配置される。第4の層(1b−4)は、サイズが25ミクロン〜300ミクロンの活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0075】
使用中、吸着剤(102)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1b−1)から第4の層(1b−4)になるように、透析装置内に配置される。
【0076】
透析物が第1の層(1b−1)に進入するとき、固定化ウレアーゼ(2)は、透析物中に存在する尿素を炭酸アンモニウムに分解し、したがってアンモニウム及び重炭酸イオンを透析物中に放出する。透析物が第2の層(1b−2)を通過するとき、リン酸ジルコニウム粒子(3)は、第1の層(1b−1)による尿素の分解から生じたアンモニウム陽イオンを吸収する。リン酸ジルコニウム粒子(3)は、陽イオン交換体として作用して、カルシウム、カリウム、及びマグネシウムなどのその他の陽イオンを吸収し、交換としてナトリウム及び水素を放出する。使用されるリン酸ジルコニウム粒子(3)のサイズは25ミクロン〜250ミクロンの範囲にあるので、望ましくない陽イオンの吸収及び吸着剤の流動抵抗は最適な範囲にある。これは、リン酸ジルコニウム粒子(3)の層から出ていく透析物が、望ましくないいかなる陽イオンも本質的に含まないことを確実にする。次いで透析物は第3の層(1b−3)に入り、含水酸化ジルコニウム粒子(4)が、患者によって生成された又は第2の層(1b−2)のリン酸ジルコニウム粒子(3)から浸出した任意のリン酸イオンを除去する。まとめると、含水酸化ジルコニウム粒子(4)は、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンを結合し、代わりに酢酸塩及び水酸化物イオンを放出することによって、陰イオン交換体として作用する。さらに、含水酸化ジルコニウム粒子(4)は、鉄、アルミニウム、及び重金属の良好な結合剤でもある。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の層を通過した後、透析物は第4の層(1b−4)に進入し、第4の層(1b−4)に存在する活性炭(5)が、代わりに何も放出することなく、透析物からのクレアチニン、尿酸、及びその他の小さい又は中程度のサイズの有機分子などの有機代謝産物を吸収する。
【0077】
次に図1cを参照すると、使用される吸着剤(4)の別の実施形態が示されている。活性炭粒子(5)、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び以下の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0078】
第1の層(1c−1)は、サイズが25ミクロン〜300ミクロンの活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0079】
吸着剤(104)の第2の層(1c−2)は、固定化ウレアーゼを含有し、第1の層(1c−1)に隣接して連続して配置されている。固定化ウレアーゼ(2)は、粒度が25ミクロン〜200ミクロンの範囲にある粒子の形をとる。ウレアーゼ粒子の全重量は、0.5グラム〜30グラムの範囲にある。
【0080】
吸着剤(104)の第3の層(1c−3)は、第2の層(1c−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1c−3)は、サイズが25ミクロン〜250ミクロンのリン酸ジルコニウム粒子(3)を含む。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0081】
吸着剤(104)の第4の層(1c−4)は、第3の層(1c−3)に隣接して連続して配置されている。第4の層(1c−4)は、含水酸化ジルコニウム粒子(4)を含む。酸化ジルコニウム粒子(4)は、10ミクロン〜250ミクロンのサイズを有する。酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0082】
吸着剤(104)の任意選択の第5の層(1c−5)は、第4の層(1c−4)に隣接して連続して配置されている。存在する場合、第5の層(1c−5)は、活性炭(5)を含む。活性炭粒子(5)は、25ミクロン〜300ミクロンのサイズを有する。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0083】
使用中、吸着剤(104)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1c−1)から第4の層(1c−4)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1c−1)に入るとき、この層は、上述の活性炭パッド(図1a)と同じように、酵素阻害物質及び尿毒症毒素を含む有毒な有機化合物を除去する。
【0084】
透析物が第2の層(1c−2)に入ると、固定化ウレアーゼ(2)が、尿素をアンモニウムイオン及び炭酸/重炭酸イオンに分解する。透析物が第2の層(1c−2)を通過し、第3の層(1c−3)に進入すると、リン酸ジルコニウム粒子(3)が、アンモニウムイオンを透析物から除去する。透析物がその先に移動して第4の層(1c−4)に進入すると、含水酸化ジルコニウム粒子(4)が、患者によって生成された又は第3の層(1c−3)でリン酸ジルコニウム粒子(3)から浸出した任意のリン酸イオンを除去する。透析物がその先に進み、第4の層(1c−4)から離れると、透析物は、活性炭粒子(5)の第5の層(1c−5)に進入してもよい。存在する場合には、この第5の層(1c−5)は、クレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を除去する。
【0085】
次に図1dを参照すると、使用される吸着剤(106)の別の実施形態が示されている。活性炭パッド(1)、固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び下記の層で使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0086】
連続して配列された、吸着剤(106)の、第1の層(1d−1)の活性炭パッド(1)、第2の層(1d−2)の固定化ウレアーゼ粒子(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物は、図1aに関する記述で説明された最初の2つの層(1b−1及び1b−2)の場合と同じである。
【0087】
吸着剤(106)の第3の層(1d−3)は、第2の層(1d−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1d−3)は、リン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物を含む。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0088】
吸着剤(106)の第4の層(1d−4)は、第3の層(1d−3)に隣接して連続して配置されている。第4の層(1d−4)は、図1bの場合(1b−4)と同じ活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0089】
使用中、吸着剤(106)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1d−1)から第4の層(1d−4)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1d−1)を通過するとき、この層は、上述の活性炭パッド(図1a)の記述と同様に、酵素阻害物質と、尿毒症毒素を含む有毒な有機化合物とを除去する。透析物が第2の層(1d−2)に進入すると、ウレアーゼ粒子(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物は、図1aのセクションにおける記述と同じように、尿素、アンモニウムイオン、及びその他の陽イオン、即ちカルシウム、マグネシウム、及びカリウムを、同じ方法で除去する。透析物が第3の層(1d−3)内に入ると、リン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子の混合物は、第2の層(1d−2)から漏出する前記陽イオン、並びにリン酸化合物及びその他の望ましくない陰イオンを除去する。リン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)は空間的に近接しているので、漏洩したリン酸塩の再吸収を容易にすることができる。より有利には、1つの組み合わせた層内で両方のタイプのイオン交換体を混合することにより、緩衝剤としての両方の粒子の性能が著しく改善され、したがって、吸着剤の使用全体を通して、より一貫したpH状態を透析物にもたらす。一方、この混合物は、毒素除去能を損なうことなく、吸着剤(106)のサイズも縮小する。透析物が吸着剤(106)の最終層(1d−4)に入ると、活性炭(5)はさらに、クレアチニン、尿酸、及び使用済み透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を吸収する。
【0090】
次に図1eを参照すると、使用される吸着剤(108)の別の実施形態が示されている。活性炭パッド(1)、固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び下記の層で使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0091】
第1の層(1e−1)の活性炭パッド(1)は、上述の図1aの場合と同じである。
【0092】
吸着剤(108)の第2の層(1e−2)は、第1の層(1e−1)に隣接して連続して配置されている。第2の層(1e−2)は、固定化尿素粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物を含む。ウレアーゼ粒子(2)の全重量範囲は、0.5〜30グラムである。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量は、約100グラム〜1000グラムである。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。吸着剤(108)の第3の層(1e−3)は、第2の層(1e−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1e−3)は、図1bの場合(1b−4)と同じ活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0093】
使用中、吸着剤(108)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1e−1)から第3の層(1e−3)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1e−1)に入ると、この層は、上述の場合(図1a)と同じように、酵素阻害物質及び毒素を除去する。透析物が第2の層(1e−2)に進入すると、ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物が、尿素と、アンモニウムイオン、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムなどの陽イオンと、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンとを除去する。有利には、固定化ウレアーゼと両方のタイプのイオン交換体とを1つの組み合わせた層内で混合すると、即座の毒素吸収が容易になり且つ吸着剤の使用全体を通してより一貫したpH状態が透析物にもたらされることにより、性能が著しく改善される。一方、この混合物は、毒素除去能を損なうことなく吸着剤(108)のサイズも縮小する。透析物が吸着剤(108)の最終層(1e−3)に入ると、活性炭粒子(5)が、クレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を吸収する。
【0094】
次に図1fを参照すると、使用される吸着剤(110)の別の実施形態が示されている。固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び下記の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0095】
活性炭粒子(5)の第1の層は、上述の場合(図1c)と同じである。
【0096】
吸着剤(110)の第2の層(1f−2)は、第1の層(1f−1)に隣接して連続して配置されている。第2の層(1f−2)は、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物を含む。ウレアーゼ粒子(2)の全重量範囲は、0.5〜30グラムである。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量は、約100グラム〜1000グラムである。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0097】
使用中、吸着剤(110)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1f−1)から第2の層(1f−2)に向かうように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1f−1)に入ると、この層は、酵素阻害物質、並びにクレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を、上述(図1c)と同様に除去する。透析物が第2の層(1f−2)に進入すると、ウレアーゼ粒子(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物が、尿素と、アンモニウムイオン、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムなどの陽イオンと、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンとを、上述と同じ方法(図1e)で除去する。本明細書の利点は、上述の内容(図1e)と同じである。
【0098】
次に図1gを参照すると、使用される吸着剤(112)の別の実施形態が示されている。活性炭粒子(5)、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び下記の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0099】
吸着剤(112)用の1種の均質な充填剤(1g−1)がある。充填剤層(1g−1)は、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び活性炭粒子(5)の、均質な混合物である。ウレアーゼ粒子(2)の全重量範囲は、0.5グラム〜30グラムであり、リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量は約100グラム〜1000グラムであり、含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は約10グラム〜100グラムであり、活性炭粒子の全重量範囲は20グラム〜200グラムである。
【0100】
使用中、吸着剤(112)は、透析物流の方向が矢印で示されるように底面次元から上面次元になるように(1g−1)、透析装置内に配置される。透析物が吸着剤(112)内を通過するとき、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び活性炭粒子(5)の混合物が、尿素と、アンモニウムイオン、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムなどの陽イオンと、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンと、酵素阻害物質と、クレアチニン、尿酸、及びその他の尿毒症毒素などの小サイズから中サイズの有機代謝産物とを除去する。この配置により、緩衝剤としての両方の粒子の改善された性能の利益が得られ、したがって、吸着剤の使用全体を通してより一貫したpH状態が透析物にもたらされる。より有利には、固定化ウレアーゼ、両方のタイプのイオン交換体、及び活性炭を、1つの組み合わせた層内で混合することにより、さらによりコンパクトなサイズの吸着剤(112)及び十分な毒素除去能という利益が得られる。吸着剤によって引き起こされる圧力降下も最小限に抑制され、生成プロセスが著しく容易になる。この配置によって、吸着剤層の早期消耗の原因となり得る不均等な吸着剤層を有するという危険性がなくなる。
【0101】
図2a及び図2bを参照すると、上述の吸着剤(102)を収容するためのカートリッジ(18)が示されている。カートリッジ(18)は、ポリカーボネートで作製される。カートリッジ(18)の上面(20)及びカートリッジの底面(28)は、透析装置内に投入するためのフランジを有する。カートリッジ(18)の内部は、3つの区画に分かれている。第1の区画(26)は、固定化ウレアーゼ(16)及びリン酸ジルコニウム粒子(14)の混合物を収容する。第1の区画は、高さ27mm、長さ113mm、及び幅57mmである。第2の区画(24)は、リン酸ジルコニウム粒子(14)を収容する。第2の区画(24)は、高さ27mm、長さ113mm、及び幅57mmである。第3の区画(22)は、活性炭粒子(10)及び含水酸化ジルコニウム粒子(12)の混合物を収容する。第3の区画(22)は、高さ13mm、長さ113mm、及び幅57mmである。
【0102】
次に図2cを参照すると、上述のカートリッジ18と同じであって、同じ参照番号により示されるが符号(’)が付されている、いくつかの技術的特徴を有するカートリッジ18’の断面図が示されている。カートリッジ18’の底面(27)及び上面(21)は、フランジを含まず、カートリッジ(18’)の全体的な外部寸法が縮小されている。カートリッジ(18’)は、透析装置に挿入し、ナットやボルトなどの締付け手段により固定することができる。カートリッジ(18’)は、吸着剤の種々の層のより良好な画定を行うために、セパレータ(19)も含有する。
【0103】
次に図3を参照すると、上述のウレアーゼ固定化に使用されるPCL骨格又は基材(30)が示されている。PCL骨格(30)は、約7cmの直径を有する。
【0104】
図4を参照すると、40%のリン酸ジルコニウムを含有するPCL骨格(32)が示されている。PCL骨格(32)は、約7cmの直径を有する。
[実施例]
【0105】
固定化ウレアーゼ(IU、Immobilized Urease)及びリン酸ジルコニウム(ZP、Zirconium phosphate)を混合することにより改善されたウレアーゼ活性及び安定性の証拠
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
上記データから、IU及びZPが1つの層に混合された場合、表3に示されるように、高レベルの尿素除去を長時間(10時間)にわたり実現することができ、それと共に吸着剤の端から端まで比較的安定な圧力降下が維持できることがわかる。一方、IUを単独で使用した場合、表1に示されるように、尿素除去効率は時間と共に低下し、吸着剤の端から端までの圧力降下は時間と共に著しく増大する。IU及びZPが使用されるが別々の層として使用される場合、表2に示されるように、尿素除去効率は高レベルで維持されるが、吸着剤の端から端まで時間と共に劇的な圧力降下が生じ、吸着剤及び/又は透析装置に過圧及び損傷がもたらされる。
【0110】
粒度を基にしたリン酸ジルコニウムの吸着能の研究
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
リン酸ジルコニウム粒子によって引き起こされた圧力降下は、問題となっているリン酸ジルコニウムの粒度に強度に依存することが示される。したがって、50ミクロン未満のサイズの粒子の層は、許容できないほど大きな圧力降下をもたらすが、50〜100ミクロンの粒度は既に、吸着剤カートリッジの適用例で好ましい範囲の著しく低い圧力降下をもたらす。粒度を100〜150ミクロン、及び150〜200ミクロンに増大させると、問題となっている粒子によって引き起こされる圧力降下がさらに縮小する。さらに、問題となっているリン酸ジルコニウムの吸収能は、50〜100ミクロンサイズの粒子で最高であることが、上記データからわかる。したがって、アンモニア吸収能と圧力降下との間の最適条件は、50〜100ミクロンのリン酸ジルコニウム粒子にある。
【0114】
粒度に基づく含水酸化ジルコニウムの吸収能の研究
【0115】
【表6】
【0116】
含水酸化ジルコニウム粒子によって引き起こされた圧力降下は、50ミクロンよりも小さい粒度であっても、リン酸ジルコニウム粒子によって引き起こされた場合よりも著しく低いことが示される。これは1つには、カートリッジの機能に必要な含水酸化ジルコニウムの量が、より少ないことに起因する。したがって、50ミクロン未満(95%を超える量が、10〜50ミクロンの範囲内である)のサイズの含水酸化ジルコニウム粒子の層が、カートリッジで使用するのに許容される圧力降下をもたらし、一方、このサイズの粒子は、50ミクロンサイズよりも大きい粒子に勝る改善されたリン酸塩吸収能も示す。したがって、吸着剤カートリッジに適用するための好ましい粒度は、10〜50ミクロンである。
【0117】
粒度に基づく活性炭の吸収能の研究
活性炭がクレアチニンを吸収する能力は、透析物の流量と、問題となっている炭素の粒度とに依存することが示される。重大なことは、粒度がより小さくなると、能力がより高くなり、圧力降下が増大する傾向があることである。許容される圧力降下と最大吸収能との間の最適条件は、下記の表に作成された実験結果に示されるように、50〜100μmの粒度範囲にある。
【0118】
シリーズ1
Calgon社製活性炭、第1のバッチ
条件:
【0119】
【表7】
【0120】
シリーズ2
Calgon社製活性炭、第2のバッチ
条件:
【0121】
【表8】
【0122】
シリーズ3
Sorb社製活性炭
条件:
【0123】
【表9】
【0124】
吸着剤カートリッジの配置及び設計
本明細書に開示される吸着剤カートリッジは、使用済み透析物中に存在する尿素及びその他の廃棄物を除去するように設計され、透析中に繰り返し使用するためにその透析物を再生することが可能である。これにより、4時間の血液透析セッションで約120リットル、又は1週間の典型的な腹膜透析で70〜100リットルという、従来の様式で使用される透析物の量が減少することになる。血液透析では、カートリッジは、血液透析器内を通過することになる透析物を再生するのに、使用することができる。透析物は、透析における再構成及び連続使用のために、透析物のリザーバに再生することができる。腹膜透析では、カートリッジは、患者の腹腔から引き出された透析物を再生するのに、使用することができる。次いで再生された透析物は、再構成システムに供することができ、患者の腔内に再導入することが可能になる。
【0125】
吸着剤カートリッジは、サイズ及び重量に関し、透析装置に挿入したときに本明細書に開示されるキャリアと共に装着できるよう設計される(まとめて、装着可能な腹膜透析機械又はWPDM(wearable peritoneal dialysis machine)として知られている)。これにより患者は、日々に活動を行う際により動くことが可能になり、経済的により生産性が上がる。開示された吸着剤を含む透析装置は、尿毒症毒素24/7を除去することができ、市販されている任意のその他の現行様式に比べて尿毒症毒素の除去に有効である。
【0126】
実施した実験から、本明細書に開示される吸着剤は、尿素190mmol(又は尿素−N 5.3グラム)を吸収できることが観察される。吸着剤カートリッジは、WPDMのエンリッチメントモジュールを通して、個別に又は組み込まれる所定量のグルコースと組み合わせて使用される、滅菌した単回使用のユニットでもある。まとめると、好ましい吸着剤配置、各層内の成分の量、及び機能を、以下の表に示す:
【0127】
【表10】
【0128】
インビトロ試験
1.目的
インビトロ試験の目的は、吸着剤カートリッジの機能性を、患者の血液透析物の再生においてその適用例をシミュレートする条件下で検証することである。このために、患者の使用済み透析物を、連続血液透析を目的とした期待される濃度で尿毒症毒素尿素、クレアチニン、及びリン酸塩を含有する合成使用済み血液透析物に交換する。
【0129】
【表11】
【0130】
3.インビトロ試験条件
試験は、37℃の透析物温度及び6.0L/時の連続流量で実施した。消耗は、再生された透析物の化学成分の少なくとも1種が許容される範囲外になった点と定義する(以下の3.2参照)。
【0131】
以下の表は、典型的な使用済み血液透析物の組成、再生された透析物の成分に関する医学的に許容される範囲、及び使用済み透析物が本明細書に開示される吸着剤の一実施形態(表11)を通過したときに吸収される毒素の量を示す。
【0132】
【表12】
【0133】
【表13】
【0134】
4.試験結果
消耗:カートリッジ流出物中のアンモニア濃度は、合計32Lの合成使用済み透析物が吸着剤カートリッジを通過した後、1.4mmol/L(2.0mg/dL)よりも高かった。その他全ての分析物は、許容限度内にあるままであった。
【0135】
【表14】
【0136】
【表15】
【0137】
5.結論
吸着剤カートリッジの性能は、使用済み血液透析物の再生で使用するために、上記3.2及び3.3で定義された全ての要件を満たし又は超えた。その全能力は、尿素−Nが5.3g、クレアチニンが750mg、及びリン酸塩−Pが710mgであった。
【0138】
適用例
透析装置に関して開示された吸着剤は、腹膜透析又は血液透析に使用してもよい。開示された吸着剤は、透析装置で使用される場合、いくつかの知られている透析装置では通常は不可能なタンパク質結合毒素の除去が可能であることが有利である。
【0139】
開示された吸着剤は、WPDM(装着可能な腹膜透析機械)で使用される場合、患者によって生成され且つ透析物中に存在する尿素、リン酸塩、クレアチニン、及びその他の尿毒症毒素の全てを吸収することが可能であり、尿毒症毒素に関して最適なクリアランスをもたらす、コンパクトで携帯可能な吸着剤である。吸着剤は、透析物から代謝廃棄物を素早く且つ効果的に除去するその能力を損なうことなく、コンパクトさを実現する手法で構成されることが有利である。1つの好ましい実施形態では、即ち、固定化ウレアーゼ及びリン酸ジルコニウム粒子が吸着剤の1つの層内に同時に存在する場合、リン酸ジルコニウム粒子が緩衝剤として作用していかなるpH変化も相殺するので、固定化ウレアーゼに最適な作動環境が生成される。これにより、ウレアーゼ活性が増大し、固定化ウレアーゼの寿命が延びることが有利である。より有利には、この特定の構成では、吸着剤の層に1又は2以上の材料の組合せを用いるので、吸着剤の全体的なサイズが著しく縮小される。その結果、透析装置の携帯性が改善され、それによって、より大きな患者の行動範囲がもたらされる。同時に、リン酸ジルコニウム粒子は、陽イオン交換体としても働き、望ましくない陽イオンを透析物から除去する。
【0140】
一実施形態では、提供されたリン酸ジルコニウム粒子は、25ミクロン〜100ミクロンの平均粒度を有する。有利には、この特定の粒度範囲は、リン酸ジルコニウム粒子の望ましくない陽イオン除去能の効力を増大させることが、本発明者らによって見出された。
【0141】
本発明の均等な実施形態について記述するために、妥当な努力がなされてきたが、前述の開示を読んだ後、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、その内部に本発明の様々なその他の変更及び適用を行うことができ且つそのような変更及び適用の全ては添付される特許請求の範囲内に包含されることが、当業者に明らかにされよう。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析装置に使用される吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓は、ヒトホメオスタシス系の生命維持に必要不可欠な器官である。腎臓は、血液から尿素などの毒性代謝廃棄物を除去する、体内の天然フィルタとして働く。腎不全又は機能不全は、毒素の蓄積をもたらす可能性があり、また血液中の不均衡な電解質レベルをもたらす可能性があり、その結果、個人の健康に有害な望ましくない影響が生じる可能性がある。この点に関し、腎機能障害を抱える患者は、血液中の毒性廃棄物を除去するために、また血液中の電解質の最適レベルを回復させるために、通常は透析を受けなければならない。
【0003】
ここ2〜3年にわたり、末期腎不全(ESRD、end-stage renal disease)に罹っている患者に使用される透析の主流の形態は、血液透析である。血液透析では、患者の大量の血液を濾過ユニット又は透析器に通すことによって患者の血液から直接毒素を除去するために、体外システムを使用する。従来の血液透析プロセスでは、患者は、透析が続いている間は動けない状態で何時間も過ごさなければならず、患者の行動を妨げている。血液透析のその他の欠点は、治療プロセス中に抗凝血剤を利用する必要があることであり、内出血の危険性を不可避的に増大させる可能性がある。
【0004】
腎不全の患者に使用される透析のその他の形態は、腹膜透析であり、最も一般的には以下の2つの技法、即ち、「連続携行式腹膜潅流(CAPD、continuous ambulatory peritoneal dialysis)」及び「自動腹膜透析(APD、automated peritoneal dialysis)」で適用される。CAPDでは、新鮮な透析物を患者の腹(腹膜)腔に注入し、血液中の代謝廃棄物及び電解質を、拡散を用いることで腹膜を通して透析物と交換する。電解質及び代謝廃棄物の十分な拡散を引き起こすには、透析物を腹(腹膜)腔内に2〜3時間保持し、その後に、使用済みの透析物を除去し新鮮な透析物と交換する。連続携行式腹膜潅流の主な欠点は、毒素クリアランスが低レベルであることであり、使用済みの透析物を連続的に交換する必要があり、患者にとっては厳しいものとなり且つ彼/彼女の日々の活動を妨げる可能性がある。
【0005】
従来の血液透析及び連続携行式腹膜潅流治療の上記問題を克服するために、自動腹膜透析(APD)装置が近年開発されてきた。APDでは、透析を夜行い、又は患者が休息している間に行う。透析物は、自動的に交換され置き換えられる。これにより、患者の日々の活動に対する妨害を最小限に抑えながら、より頻繁な透析物の交換及びより良好な毒素クリアランスが可能になる。
【0006】
しかし、上述の全ての透析技法は、依然としていくつかの欠点を有する。例えば、血液透析は、タンパク質結合毒素を除去することができず、一方腹膜透析は、患者に有益なタンパク質の著しい損失を必然的に伴う。血液透析、CAPD、及びAPDは、使用される透析物の体積が制限されることにより(コスト上の制約により)、尿毒症毒素に関して最適なクリアランスを提供することができない。血液透析装置が、使用済み透析物を再生する吸着剤カートリッジなどの再生ユニットを含む場合、これら透析装置の全体的なサイズ及び重量は、携帯用にするにはしばしば非常に大き過ぎ、したがって患者の行動範囲が改善されない。そのような装置は、装置の断続的な使用の結果生じる必要条件である、毒素の適切な除去を確実にするのに使用される吸着剤のバルク状の性質により、やはり扱い難い。さらに、知られている再生血液透析装置の流動システムは、複数のポンプを必要とし、したがって望ましくないことであるが、装置の全体的なサイズ、重量、及び電力消費を増大させる。腹膜透析における使用が提案されるこれら装置の代替形態では、自動腹膜透析装置の携帯性を、再生ユニットのサイズを縮小することによって改善しようと試みられている。しかし、再生ユニットのサイズの縮小の見返りとして、再生ユニット又は吸着剤による毒素除去の効力の著しい低下があり、最終的には患者の健康を損なう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の欠点の1又は2以上を克服し又は少なくとも改善する透析装置を提供することが求められている。そのような装置は、携帯可能で比較的軽く、且つ毒素の除去に高い効力を有するべきである。したがって、透析装置に組み込むことができる、コンパクトで毒素を除去する優れた能力を有する再生部品又は吸着剤を提供することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様によれば、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、陽イオン交換粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の層を含む吸着剤が提供される。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属イオンを含んでいてもよい。一実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、陽イオン交換粒子などの水不溶性アンモニア吸収剤と混合された、共有結合により固定化された尿毒症毒素処置酵素粒子の層を含む吸着剤が提供される。固定化尿毒症毒素処理酵素粒子と共に陽イオン交換粒子の単一複合層における存在により、尿毒症毒素処理酵素粒子の加工性が高まり、且つ透析物中の望ましくない沈殿によるカートリッジの詰まりが防止されることは、有利である。陽イオン交換粒子は、望ましくない陽イオンを除去するだけでなく、尿毒症毒素処理酵素の酵素反応に対して比較的一定のpH範囲を確立するための緩衝剤としても働く。さらに、尿毒症毒素処理酵素と陽イオン交換粒子とは空間的に近接しているので、酵素によって生成された望ましくない陽イオンの吸収効力を、増大させることができる。別の利点は、尿毒症毒素処理酵素の共有結合固定化にあり、それによって、透析物中への酵素の浸出が防止される。有利なことに、これによって、酵素再吸収のための吸着剤の追加の層の必要性−即ち、これらシステムのバルク性に著しく寄与し且つそれらの生体適合性を損なうといった、知られている透析物再生装置の欠点が取り除かれる。
【0009】
一実施形態では、第1の態様の吸着剤の前に、有機化合物吸収剤粒子の層又は有機化合物吸収剤パッドが付される。有利には、この層が酵素阻害物質を除去し、したがって尿毒症毒素処理酵素の活性及び安定性が維持される。別の実施形態では、第1の態様の吸着剤がさらに、陽イオン交換粒子の層を含む。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含んでいてもよい。有利には、この層は、陽イオン交換粒子と固定化尿毒症毒素処理酵素粒子との混合物の層から逃げた任意の望ましくない陽イオンが除去されるのを確実にする。別の実施形態では、開示された吸着剤はさらに、有機化合物吸収剤粒子と混合された陰イオン交換粒子の層を含んでいてもよい。混合物の2層の存在により、吸着剤の全体的なサイズ及び高さが減少し、吸着剤の生成が容易になり、透析装置で使用した場合に吸着剤によって引き起こされた全体的な圧力降下が減少する。有利には、これにより、代謝廃棄物が吸着剤によって除去される効力に悪影響を及ぼすことなく、吸着剤の携帯性及び使用者の快適さが増大する。
【0010】
第2の態様によれば、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の層を含む吸着剤が提供される。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含んでいてもよい。一実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、10〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有している、共有結合により固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子を含んだ吸着剤が提供される。吸着剤はさらに、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む陽イオン交換粒子であって、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子などのアンモニア吸収粒子を含んでいてもよい。吸着剤はさらに、非晶質であり部分的に水和した水不溶性の金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩の対イオン形態で含む陰イオン交換粒子であって、10ミクロン〜1000ミクロンの平均粒度を有する陰イオン交換粒子を含んでいてもよい。吸着剤はさらに、10〜1000ミクロンの平均粒度を有する有機化合物吸収剤粒子を含んでいてもよい。発明者らによって、尿毒症毒素処理酵素粒子、陽イオン交換粒子、陰イオン交換粒子、及び有機化合物吸収剤粒子のこの特定の粒度範囲の使用により、代謝廃棄物除去の効力が大きく改善され、同時にそれぞれの吸着剤材料の好ましい低流動抵抗及び最小溶解度が可能になることが見出された。有利には、吸着剤を通過する透析物は、任意の望ましくないイオン及び代謝廃棄物を本質的に含んでいなくてもよい。
【0011】
第3の態様によれば、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、
10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の2次層と、
3次層及び4次層であり、その少なくとも一方が陰イオン交換粒子を含み、他方の層が有機化合物吸収剤粒子を含む3次層及び4次層と
を含む吸着剤が提供される。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含んでいてもよい。
【0012】
一実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子又は有機化合物吸収パッドの1次層と、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の3次層と、
4次層及び5次層であり、その少なくとも一方が、非晶質の部分的に水和した水不溶性金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩の対イオンの形で含む、10ミクロン〜1000ミクロンの平均粒度を有する陰イオン交換粒子を含み、他方の層が、10〜1000ミクロンの平均粒度を有する有機化合物吸収剤粒子を含む4次層及び5次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0013】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、
そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含む、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の2次層と、
陰イオン交換粒子の3次層と、
有機化合物吸収剤粒子の4次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0014】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収剤粒子又は有機化合物吸収剤パッドの1次層と、
固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の3次層と、
陰イオン交換粒子の4次層と、
有機化合物吸収剤粒子の5次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0015】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子又は有機化合物吸収パッドの1次層と、
陽イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
陰イオン交換粒子と混合した陽イオン交換粒子の3次層と、
有機化合物吸収剤粒子の4次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0016】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子又は有機化合物吸収パッドの1次層と、
陽イオン交換粒子及び陰イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、
有機化合物吸収剤粒子の3次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0017】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
有機化合物吸収粒子の1次層と、
陽イオン交換粒子及び陰イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と
を含む吸着剤が提供される。
【0018】
別の実施形態では、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤であって、
陽イオン交換粒子、陰イオン交換粒子、及び有機化合物吸収粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子
を含む吸着剤が提供される。
【0019】
定義
本明細書で使用される以下の単語及び用語は、指示される意味を有するものとする。
【0020】
本明細書で使用される「吸着剤」という用語は、所望の物質を吸収できることを特徴とする材料の種類を広く指す。
【0021】
本明細書で使用される「無毒性」という用語は、人体に存在する場合、副作用をほとんど又は全く引き起こさない物質を指す。
【0022】
本明細書の文脈における「汚染物質」という用語は、ヒトの健康に一般に有害で、透析物無毒化プロセスで除去されることが望ましい、透析物中の任意の構成成分、典型的には毒性構成成分を意味する。典型的な汚染物質には、アンモニウム、リン酸塩、尿素、クレアチニン、及び尿酸が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0023】
本明細書で使用される「陽イオン交換粒子」という用語は、典型的にはこの粒子の表面上に正に帯電した化学種の溶液を通すことによって、陽イオン性の又は正に帯電した化学種に接触したときにそのような化学種を捕捉し又は固定化することが可能な粒子を指す。
【0024】
本明細書で使用される「陰イオン交換粒子」という用語は、典型的にはこの粒子の表面上に負に帯電した化学種の溶液を通すことによって、陰イオン性の又は負に帯電した化学種に接触したときにそのような化学種を捕捉し又は固定化することが可能な粒子を指す。
【0025】
本明細書で使用される「生体適合性」という用語は、ヒト又は動物の身体に有害な生体反応を引き起こさない材料の性質を指す。
【0026】
「粒度」という用語は、粒子の直径又は均等な直径を指す。「平均粒度」という用語は、粒子の量の大部分が指定された粒度に近くなるが、一部の粒子はこの指定サイズよりも大きく一部の粒子は小さいことを意味する。粒子の分布のピークは、指定サイズを有することになる。したがって、例えば、平均粒度が50ミクロンである場合、50ミクロンよりも大きな一部の粒子及びより小さい一部の粒子が存在することになるが、粒子の大部分、好ましくは80%、より好ましくは90%は、そのサイズが約50ミクロンになり、粒子の分布のピークは50ミクロンになる。
【0027】
本明細書で使用される「再生」という用語は、尿毒症毒素の吸収による透析物無毒化の動作を指す。
【0028】
本明細書で使用される「再構成」という用語は、再生された透析物を、透析前に新鮮な腹膜透析物と本質的に同じ状態及び化学組成に変換する動作を指す。
【0029】
「実質的に」という用語は「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであってもよい。必要な場合には、「実質的に」という単語は、本発明の定義から省略してもよい。
【0030】
他に指示しない限り、「含む(comprising)」及び「含む(comprise)」という用語とこれらの文法上の変形例は、列挙された要素を含むが追加の列挙されていない要素の包含も可能になるような、「非限定的な」又は「包括的な」言語を表すものとする。
【0031】
本明細書で使用される「約」という用語は、配合物の成分の濃度という文脈において、典型的には記述される値の平均±5%、より典型的には記述される値の±4%、より典型的には記述される値の±3%、より典型的には記述される値の±2%、さらにより典型的には記述される値の±1%、さらにより典型的には記述される値の±0.5%を意味する。
【0032】
この開示の全体を通して、ある実施形態は、範囲フォーマットで開示されていてもよい。範囲フォーマットの記述は、単なる便宜上及び簡略化のためと理解すべきであり、開示された範囲に対して柔軟性なく限定するものと解釈すべきではない。したがって、範囲の記述は、具体的に開示された全ての可能性ある部分範囲、並びに範囲内の個々の数値を有するものと見なすべきである。例えば、1〜6のような範囲の記述は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などの具体的に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5、及び6を有するものと見なすべきである。これは、範囲の広さに関わりなく適用される。
【0033】
実施形態の詳細な開示
透析装置用の吸着剤の、例示的な非限定的実施形態について、以下に開示する。吸着剤は、前記吸着剤に接触した流体から、尿素などの代謝廃棄物を除去することが可能であってもよい。
【0034】
一実施形態では、吸着剤は、陽イオン交換粒子と混合した固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、陽イオン交換粒子の2次層と、有機化合物吸収剤粒子と混合した陰イオン交換粒子の3次層とを含む。一実施形態では、陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である。陽イオン交換粒子は、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンを含んでいてもよい。一実施形態では、吸着剤は、1次層と3次層との間に結合された2次層を含み、使用中、透析液は、前記1次層から前記2次層を介して前記3次層へと通過していく。有機化合物吸収剤の追加の層を、吸着剤に含めてもよい。
【0035】
別の実施形態では、吸着剤は、固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンを含む、陽イオン交換粒子の2次層と、3次層及び4次層であって、それぞれ陰イオン交換粒子の層及び有機化合物吸収剤粒子の層であり、又はその逆でもある3次層及び4次層とを含む。有機化合物吸収剤の追加の層を、吸着剤に含めてもよい。
【0036】
一実施形態では、吸着剤は、2次層に結合された1次層、3次層に結合された2次層、及び4次層に結合された3次層を含み、使用中は、透析液が前記1次層から前記2次層へ、前記2次層から前記3次層へ、前記3次層から前記4次層へと通過していく。一実施形態では、2次層は、前記1次及び前記3次層の間に配置され、前記3次層は、前記2次層と前記4次層との間に配置される。
【0037】
一実施形態では、吸着剤は、有機化合物吸収剤粒子又はパッドの1次層と、それに続く、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む陽イオン交換粒子などのアンモニア吸収粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む陽イオン交換粒子などのアンモニア吸収粒子の3次層と、非晶質で部分的に水和した水不溶性金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩、対イオンの形で含む陰イオン交換粒子の4次層とを含む。
【0038】
一実施形態では、吸着剤は、1次及び3次層の間に結合された2次層と、2次及び4次層の間に結合された3次層とを含み、使用中は、透析液が前記1次層から前記2次及び3次層を介して前記4次層へと通過していく。
【0039】
別の実施形態では、吸着剤は、有機分子吸収剤粒子又はパッドの1次層と、固定化された尿毒症毒素処理酵素粒子の2次層と、非晶質の水不溶性金属リン酸塩をプロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含む、陽イオン交換粒子の3次層と、4次層及び5次層であって、それぞれ、非晶質で部分的に水和した水不溶性の金属酸化物をその水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩、対イオンの形で含む陰イオン交換粒子の層、及び有機化合物吸収剤粒子の層を含み、又はその逆でもある、4次層及び5次層とを含む。
【0040】
一実施形態では、吸着剤は、2次層に結合された1次層と、3次層に結合された2次層と、4次層に結合された3次層と、5次層に結合された4次層とを含み、使用中は、透析液が前記1次層から前記2次層へ、前記2次層から前記3次層へ、前記3次層から前記4次層へ、前記4次層から前記5次層へと通過していく。一実施形態では、2次層が前記1次及び前記3次層の間に配置され、前記3次層は前記2次層及び前記4次層の間に配置され、前記4次層は前記3次及び前記5次層の間に配置される。
【0041】
尿毒症毒素処理酵素粒子は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することが可能であってもよい。一実施形態では、尿毒症毒素処理酵素は、ウレアーゼ、ウリカーゼ、及びクレアチニナーゼの少なくとも1種である。好ましい実施形態では、尿毒症毒素処理酵素がウレアーゼである。一実施形態では、ウレアーゼの代わりに、吸着剤で吸収することができる生成物に尿素を変換することができる任意の材料を用いてもよい。好ましくは、その材料は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することができる。
【0042】
一実施形態では、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンが、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組合せの群から選択される金属のイオンである。一実施形態では、そのリン酸塩が水中にはそれほど溶解しない金属のイオンが、ジルコニウムである。
【0043】
一実施形態では、陽イオン交換粒子は、非晶質の水不溶性金属リン酸塩を、プロトン化及び/又はナトリウム対イオンの形で含み、この金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択してもよい。一実施形態では、金属がジルコニウムである。
【0044】
それほど溶解しないリン酸塩は、本明細書では、水に対して10mg/l以下の溶解度を有するリン酸塩であると理解される。好ましくは、陽イオン交換粒子がリン酸ジルコニウム粒子である。
【0045】
陰イオン交換粒子は、非晶質で部分的に水和した水不溶性の金属酸化物を、その水酸化物、炭酸塩、酢酸塩、及び/又は乳酸塩、対イオンの形で含んでいてもよく、この金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組合せからなる群から選択されていてもよい。一実施形態では、金属がジルコニウムである。
【0046】
陰イオン交換粒子は、酸化ジルコニウム粒子であってもよい。好ましくは、陰イオン交換粒子は、含水酸化ジルコニウム粒子である。
【0047】
有機化合物吸収剤は、とりわけ、活性炭、モレキュラーシーブ、ゼオライト、及び珪藻土からなる群から選択されていてもよい。有機化合物吸収剤粒子は、活性炭粒子であってもよい。一実施形態では、1次層内の有機化合物吸収剤が、活性炭フィルタパッドである。別の実施形態では、有機化合物吸収剤は、活性炭粒子を含む。
【0048】
ウレアーゼは、固定化ウレアーゼであってもよい。ウレアーゼは、ウレアーゼ粒子の固定化をもたらすことができる、任意の知られている担持材料に固定化してもよい。一実施形態では、担持材料が、生体適合性基材である。生体適合性材料は、炭水化物ベースのポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、又は無機ポリマー材料であってもよい。生体適合性基材は、1種の材料で構成された均質基材、又は少なくとも2種の材料で構成された複合体基材であってもよい。生体適合性基材は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素(例えば、シリカゲル)、リン酸ジルコニウム、酸化ジルコニウム、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種であってもよい。
【0049】
一実施形態では、生体適合性基材へのウレアーゼの固定化は、グルタルアルデヒド活性化、エポキシ基による活性化、エピクロロヒドリン活性化、ブロモ酢酸活性化、臭化シアン活性化、チオール活性化と、N−ヒドロキシスクシンイミド及びジイミドアミドのカップリングからなる群から選択される固定化技法によって実施される。使用される固定化技法では、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3−グリシジルオキシプロピル)トリメトキシシラン、又は(3−メルカプトプロピル)トリメトキシシランなどの、シランをベースにしたリンカーを使用してもよい。生体適合性基材の表面は、デキストラン又はポリエチレングリコールなどの反応性及び/又は安定化層で、またエチレンジアミン、1,6−ジアミノヘキサン、チオグリセロール、メルカプトエタノール、及びトレハロースなどの適切なリンカー及び安定化剤分子でさらに官能化されていてもよい。ウレアーゼは、精製された形で、又はナタマメ若しくはその他の適切なウレアーゼ源の粗製抽出物の形で使用することができる。
【0050】
一実施形態では、ウレアーゼ粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約100ミクロン〜約900ミクロン、約200ミクロン〜約900ミクロン、約300ミクロン〜約800ミクロン、約400ミクロン〜約700、500ミクロン〜約600ミクロン、約25ミクロン〜約250ミクロン、約25ミクロン〜約100ミクロン、約250ミクロン〜約500ミクロン、約250ミクロン〜約1000ミクロン、約125ミクロン〜約200ミクロン、約150ミクロン〜約200ミクロン、約100ミクロン〜約175ミクロン、及び約100ミクロン〜約150ミクロンの範囲の平均粒度を有する。
【0051】
一実施形態では、1000〜10000単位のウレアーゼが、前記生体適合性基材に固定化される。固定化ウレアーゼ及び基材の全重量は、約0.5g〜約30gに及ぶ。
【0052】
一実施形態では、ウレアーゼは、尿素を無毒性化合物に変換することができる任意の材料で置き換えてもよい。好ましくは、この材料は、尿素を炭酸アンモニウムに変換することができる。
【0053】
リン酸ジルコニウム粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約100ミクロン〜約900ミクロン、約200ミクロン〜約900ミクロン、約300ミクロン〜約800ミクロン、約400ミクロン〜約700、500ミクロン〜約600ミクロン、約25ミクロン〜約200ミクロン、又は約25ミクロン〜約150ミクロン、又は約25ミクロン〜約80ミクロン、又は約25ミクロン〜約50ミクロン、又は約50ミクロン〜約100ミクロン、又は約125ミクロン〜約200ミクロン、又は約150ミクロン〜約200ミクロン、又は約100ミクロン〜約175ミクロン、又は約100ミクロン〜約150ミクロン、又は約150ミクロン〜約500ミクロン、又は約250ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0054】
リン酸ジルコニウム粒子は、リン酸ジルコニウム粒子の固定化をもたらすことができる、任意の知られている担持材料に固定化されていてもよい。一実施形態では、担持材料が生体適合性基材である。一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、所定体積へのこの粒子の物理的圧密化である。一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、リン酸ジルコニウム、又はリン酸ジルコニウム及び適切なセラミック材料の混合物を、焼結することによって実現される。生体適合性基材は、1種の材料で構成された均質基材、又は少なくとも2種の材料で構成された複合体基材であってもよい。生体適合性材料は、炭水化物ベースのポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリオレフィン、又は無機ポリマー若しくはセラミック材料であってもよい。生体適合性基材は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種であってもよい。
【0055】
一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子は、アンモニウムイオン及びその他の陽イオンを吸収することができる任意の粒子によって置き換えてもよい。好ましくは、この粒子は、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムのイオンを含む群から選択される陽イオンを、吸収することができる。アンモニア吸収剤粒子は、吸収されたアンモニウムイオン及びその他の陽イオンの代わりにナトリウム及び水素などのイオンを放出してもよい。一実施形態では、アンモニア吸収剤は、ウレアーゼ反応に向けて一定のpHを確立するための緩衝剤としても機能する。
【0056】
酸化ジルコニウム粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約100ミクロン〜約900ミクロン、約200ミクロン〜約900ミクロン、約300ミクロン〜約800ミクロン、約400ミクロン〜約700、500ミクロン〜約600ミクロン、約10ミクロン〜約200ミクロン、又は約10ミクロン〜約100ミクロン、又は約10ミクロン〜約30ミクロン、又は約10ミクロン〜約20ミクロン、又は約20ミクロン〜約50ミクロン、又は約25ミクロン〜約50ミクロン、又は約30ミクロン〜約50ミクロン、又は約40ミクロン〜約150ミクロン、又は約80ミクロン〜約120ミクロン、又は約160ミクロン〜約180、又は約25ミクロン〜約250、又は約250ミクロン〜約500、又は約250ミクロン〜約1000の範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0057】
酸化ジルコニウム粒子は、酸化ジルコニウム粒子の固定化をもたらすことができる、任意の知られている担持材料に固定化されていてもよい。一実施形態では、リン酸ジルコニウム粒子の固定化は、所定体積へのこの粒子の物理的圧密化である。一実施形態では、酸化ジルコニウム粒子の固定化は、酸化ジルコニウム、又は酸化ジルコニウム及び適切なセラミック材料の混合物を、焼結することによって実現される。一実施形態では、担持材料が生体適合性基材である。生体適合性材料は、炭水化物ベースのポリマー、有機ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリオレフィン、又は無機ポリマー若しくはセラミック材料であってもよい。生体適合性基材は、セルロース、Eupergit、二酸化ケイ素、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種であってもよい。
【0058】
一実施形態では、酸化ジルコニウム粒子の代わりに、リン酸イオン及びその他の陰イオンを吸収することができる任意の粒子を用いてもよい。好ましくは、この粒子は、リン酸塩、フッ化物、硝酸塩、及び硫酸塩のイオンを含む群から選択される陰イオンを、吸収することができる。酸化ジルコニウム粒子は、吸収される陰イオンの代わりに、酢酸塩、乳酸塩、重炭酸塩、及び水酸化物などのイオンを放出してもよい。一実施形態では、酸化ジルコニウム粒子は、鉄、アルミニウムと、ヒ素、ビスマス、カドミウム、コバルト、銅、鉛、水銀、ニッケル、パラジウム、及び銀からなる群から選択される重金属とに対する良好な結合剤でもある。
【0059】
活性炭粒子は、約10ミクロン〜約1000ミクロン、約10ミクロン〜約250ミクロン、約20ミクロン〜約200ミクロン、約25ミクロン〜約150ミクロン、約50ミクロン〜約100ミクロン、約25ミクロン〜約250ミクロン、又は約100ミクロン〜約200ミクロン、又は約100ミクロン〜約150ミクロン、又は約150ミクロン〜約300ミクロン、又は約200ミクロン〜約300ミクロン、又は約400ミクロン〜約900ミクロン、又は約500ミクロン〜約800ミクロン、又は約600ミクロン〜約700ミクロン、又は約250ミクロン〜約500ミクロン、又は約250ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の平均粒度を有していてもよい。
【0060】
一実施形態では、活性炭粒子の代わりに、有機化合物を吸収することができる任意の粒子を用いてもよい。好ましくは、この粒子は、有機化合物及び/又は有機代謝産物であって、クレアチニン、尿酸と、その他の小さい及び中程度のサイズの有機分子とを含む群から選択されるものを、他と全く交換することなく吸収することができる。活性炭粒子は、スペースを節約する目的で、所定の体積に物理的に圧密化してもよい。一実施形態では、活性炭粒子は、活性炭フィルタパッドに物理的に圧密化される。
【0061】
一実施形態では、吸着剤は、少なくとも1つのカートリッジに収容される。吸着剤カートリッジは、透析装置から容易に除去可能であるように構成されていてもよい。吸着剤カートリッジは、コンパクトであってもよく、水及び引裂きに耐性のある材料で作製されていてもよい。カートリッジは、弾力性のある、化学的及び生物学的に不活性な材料から作製されていてもよい。カートリッジは、浸出することなく透析装置の流動システム内の圧力に耐えることもできる。カートリッジは、熱滅菌、エチレンオキシド滅菌、及びイオン化放射線による滅菌などの滅菌条件に耐えることができる材料から作製されていてもよい。一実施形態では、吸着剤カートリッジは、ポリカーボネートで作製される。吸着剤カートリッジは、ポリプロピレン又はポリエチレンで作製されていてもよい。一実施形態では、フィルタパッド及び濾紙を、吸着剤カートリッジの入口及び出口に、及び/又は吸着剤内の個々の層の間に位置付けて、吸着剤の層から生じる任意の粒子を濾別してもよい。
【0062】
添付図面は、開示された実施形態を例示し、開示された実施形態の原理を説明する働きをする。しかし、これらの図面は、単なる例示を目的に作成されており、本発明を明確に限定するものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1a】透析装置用吸着剤の、一実施形態の配置を示す図である。
【図1b−1g】透析装置用吸着剤の、その他の種々の実施形態の配置を示す図である。
【図2a】吸着剤カートリッジのCADの等角図である。
【図2b】図2aの吸着剤カートリッジの断面図である。
【図2c】吸着剤の種々の層をはっきり画定する仕切りを有する、吸着剤カートリッジの別の実施形態のCADの断面図である。
【図3】本明細書に開示される、ウレアーゼの固定化用の生体適合性基材として使用される、ポリカルポラクトン(PCL、polycarpolactone)骨格を示す図である。
【図4】本明細書に開示される、リン酸ジルコニウムの固定化用の生体適合性基材として使用される、ポリカルポラクトン(PCL)骨格を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1aを参照すると、開示された透析装置で使用される吸着剤(100)の一実施形態が示されている。吸着剤(100)の第1の層(1a−1)は、活性炭パッド(1)を含む。
【0065】
吸着剤(100)の第2の層(1a−2)は、第1の層(1a−1)に隣接して連続して配置されており、固定化ウレアーゼ(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物を含む。ナタマメ、粗製ナタマメ粉末、又はその他の供給源(細菌、組換え、熱安定性ウレアーゼ変異体など)から得られた精製済みウレアーゼは、共有結合によって固定化されている。使用される固体担持材料又は基材は、セルロースである。固定化ウレアーゼ(2)は、粒度が25ミクロン〜200ミクロンの範囲にある粒子の形をとる。使用される固定化ウレアーゼ粒子の全重量範囲は、0.5グラム〜30グラムの範囲にある。リン酸ジルコニウム粒子(3)は、25ミクロン〜250ミクロンのサイズを有し、アメリカ合衆国ニュージャージー州MEI社製である。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0066】
吸着剤(100)の第3の層(1a−3)は、第2の層(1a−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1a−3)は、25ミクロン〜250ミクロンのサイズのリン酸ジルコニウム粒子(3)を含む。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0067】
吸着剤(100)の第4の層(1a−4)は、第3の層(1a−3)に隣接して連続して配置されている。第4の層(1a−4)は、含水酸化ジルコニウム粒子(4)及び活性炭粒子(5)の混合物を含む。酸化ジルコニウム粒子(4)は、10ミクロン〜250ミクロンのサイズを有し、アメリカ合衆国ニュージャージー州MEI社製である。酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。活性炭粒子(5)は、50ミクロン〜300ミクロンのサイズを有し、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグのCalgon Carbon社製である。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0068】
使用中、吸着剤(100)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1a−1)から第4の層(1a−4)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1a−1)を通過するとき、活性炭パッド(1a−1)は、酸化剤及び/又は重金属などの酵素阻害物質を除去し、したがって尿毒症毒素処理酵素の活性及び安定性が維持される。さらに、この層は、使用済みの透析物からの尿毒症毒素など、有毒な有機化合物も除去する。
【0069】
透析物が第2の層(1a−2)を通過するとき、固定化ウレアーゼ(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物は、透析物から尿素及びアンモニウムイオンを除去する。さらに、リン酸ジルコニウム粒子(3)はイオンを交換するだけでなく緩衝剤としても働くので、ウレアーゼ(2)の周りのpH条件は安定に保たれ、それによってウレアーゼの活性が保護され、その寿命が延びる。透析物が第2の層(1a−2)を通過し、中間の第3の層(1a−3)に進入するとき、この層に存在するリン酸ジルコニウム粒子(3)は、第2の層(1a−2)で形成された全てのアンモニウムイオンを定量的に除去する。その後、透析物は第4の層(1a−4)に入る。含水酸化ジルコニウム粒子(4)及び活性炭粒子(5)の混合物は、患者によって生成された、又は第2(1a−2)及び/又は第3(1a−3)の層のリン酸ジルコニウム粒子(3)から浸出した任意のリン酸イオンを除去する。この混合物は、クレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素も除去する。吸着剤(100)の種々の層の組合せは、毒素除去の全体的な効力を改善し、吸着剤(100)の全体的なサイズを縮小する。
【0070】
次に図1bを参照すると、使用される吸着剤(102)の第2の実施形態が示されている。固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び以下の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0071】
吸着剤(102)の第1の層(1b−1)は、固定化ウレアーゼ(2)を含む。使用されるウレアーゼ(2)は、粒度が25ミクロン〜200ミクロンの範囲にある粒子の形をとる。使用されるウレアーゼ粒子の全重量は、0.5グラム〜30グラムの範囲にある。
【0072】
吸着剤(102)の第2の層(1b−2)は、第1の層(1b−1)に隣接して連続して配置される。第2の層(1b−2)は、サイズが25ミクロン〜250ミクロンのリン酸ジルコニウム粒子(3)を含む。リン酸ジルコニウム粒子の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0073】
吸着剤(102)の第3の層(1b−3)は、第2の層(1b−2)に隣接して連続して配置される。第3の層(1b−3)は、サイズが10ミクロン〜250ミクロンの含水酸化ジルコニウム粒子(4)を含む。酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0074】
吸着剤(102)の第4の層(1b−4)は、第3の層(1b−3)に隣接して連続して配置される。第4の層(1b−4)は、サイズが25ミクロン〜300ミクロンの活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0075】
使用中、吸着剤(102)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1b−1)から第4の層(1b−4)になるように、透析装置内に配置される。
【0076】
透析物が第1の層(1b−1)に進入するとき、固定化ウレアーゼ(2)は、透析物中に存在する尿素を炭酸アンモニウムに分解し、したがってアンモニウム及び重炭酸イオンを透析物中に放出する。透析物が第2の層(1b−2)を通過するとき、リン酸ジルコニウム粒子(3)は、第1の層(1b−1)による尿素の分解から生じたアンモニウム陽イオンを吸収する。リン酸ジルコニウム粒子(3)は、陽イオン交換体として作用して、カルシウム、カリウム、及びマグネシウムなどのその他の陽イオンを吸収し、交換としてナトリウム及び水素を放出する。使用されるリン酸ジルコニウム粒子(3)のサイズは25ミクロン〜250ミクロンの範囲にあるので、望ましくない陽イオンの吸収及び吸着剤の流動抵抗は最適な範囲にある。これは、リン酸ジルコニウム粒子(3)の層から出ていく透析物が、望ましくないいかなる陽イオンも本質的に含まないことを確実にする。次いで透析物は第3の層(1b−3)に入り、含水酸化ジルコニウム粒子(4)が、患者によって生成された又は第2の層(1b−2)のリン酸ジルコニウム粒子(3)から浸出した任意のリン酸イオンを除去する。まとめると、含水酸化ジルコニウム粒子(4)は、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンを結合し、代わりに酢酸塩及び水酸化物イオンを放出することによって、陰イオン交換体として作用する。さらに、含水酸化ジルコニウム粒子(4)は、鉄、アルミニウム、及び重金属の良好な結合剤でもある。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の層を通過した後、透析物は第4の層(1b−4)に進入し、第4の層(1b−4)に存在する活性炭(5)が、代わりに何も放出することなく、透析物からのクレアチニン、尿酸、及びその他の小さい又は中程度のサイズの有機分子などの有機代謝産物を吸収する。
【0077】
次に図1cを参照すると、使用される吸着剤(4)の別の実施形態が示されている。活性炭粒子(5)、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び以下の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0078】
第1の層(1c−1)は、サイズが25ミクロン〜300ミクロンの活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0079】
吸着剤(104)の第2の層(1c−2)は、固定化ウレアーゼを含有し、第1の層(1c−1)に隣接して連続して配置されている。固定化ウレアーゼ(2)は、粒度が25ミクロン〜200ミクロンの範囲にある粒子の形をとる。ウレアーゼ粒子の全重量は、0.5グラム〜30グラムの範囲にある。
【0080】
吸着剤(104)の第3の層(1c−3)は、第2の層(1c−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1c−3)は、サイズが25ミクロン〜250ミクロンのリン酸ジルコニウム粒子(3)を含む。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。
【0081】
吸着剤(104)の第4の層(1c−4)は、第3の層(1c−3)に隣接して連続して配置されている。第4の層(1c−4)は、含水酸化ジルコニウム粒子(4)を含む。酸化ジルコニウム粒子(4)は、10ミクロン〜250ミクロンのサイズを有する。酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0082】
吸着剤(104)の任意選択の第5の層(1c−5)は、第4の層(1c−4)に隣接して連続して配置されている。存在する場合、第5の層(1c−5)は、活性炭(5)を含む。活性炭粒子(5)は、25ミクロン〜300ミクロンのサイズを有する。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0083】
使用中、吸着剤(104)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1c−1)から第4の層(1c−4)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1c−1)に入るとき、この層は、上述の活性炭パッド(図1a)と同じように、酵素阻害物質及び尿毒症毒素を含む有毒な有機化合物を除去する。
【0084】
透析物が第2の層(1c−2)に入ると、固定化ウレアーゼ(2)が、尿素をアンモニウムイオン及び炭酸/重炭酸イオンに分解する。透析物が第2の層(1c−2)を通過し、第3の層(1c−3)に進入すると、リン酸ジルコニウム粒子(3)が、アンモニウムイオンを透析物から除去する。透析物がその先に移動して第4の層(1c−4)に進入すると、含水酸化ジルコニウム粒子(4)が、患者によって生成された又は第3の層(1c−3)でリン酸ジルコニウム粒子(3)から浸出した任意のリン酸イオンを除去する。透析物がその先に進み、第4の層(1c−4)から離れると、透析物は、活性炭粒子(5)の第5の層(1c−5)に進入してもよい。存在する場合には、この第5の層(1c−5)は、クレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を除去する。
【0085】
次に図1dを参照すると、使用される吸着剤(106)の別の実施形態が示されている。活性炭パッド(1)、固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び下記の層で使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0086】
連続して配列された、吸着剤(106)の、第1の層(1d−1)の活性炭パッド(1)、第2の層(1d−2)の固定化ウレアーゼ粒子(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物は、図1aに関する記述で説明された最初の2つの層(1b−1及び1b−2)の場合と同じである。
【0087】
吸着剤(106)の第3の層(1d−3)は、第2の層(1d−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1d−3)は、リン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物を含む。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量範囲は、約100グラム〜1000グラムである。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0088】
吸着剤(106)の第4の層(1d−4)は、第3の層(1d−3)に隣接して連続して配置されている。第4の層(1d−4)は、図1bの場合(1b−4)と同じ活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0089】
使用中、吸着剤(106)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1d−1)から第4の層(1d−4)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1d−1)を通過するとき、この層は、上述の活性炭パッド(図1a)の記述と同様に、酵素阻害物質と、尿毒症毒素を含む有毒な有機化合物とを除去する。透析物が第2の層(1d−2)に進入すると、ウレアーゼ粒子(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)の混合物は、図1aのセクションにおける記述と同じように、尿素、アンモニウムイオン、及びその他の陽イオン、即ちカルシウム、マグネシウム、及びカリウムを、同じ方法で除去する。透析物が第3の層(1d−3)内に入ると、リン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子の混合物は、第2の層(1d−2)から漏出する前記陽イオン、並びにリン酸化合物及びその他の望ましくない陰イオンを除去する。リン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)は空間的に近接しているので、漏洩したリン酸塩の再吸収を容易にすることができる。より有利には、1つの組み合わせた層内で両方のタイプのイオン交換体を混合することにより、緩衝剤としての両方の粒子の性能が著しく改善され、したがって、吸着剤の使用全体を通して、より一貫したpH状態を透析物にもたらす。一方、この混合物は、毒素除去能を損なうことなく、吸着剤(106)のサイズも縮小する。透析物が吸着剤(106)の最終層(1d−4)に入ると、活性炭(5)はさらに、クレアチニン、尿酸、及び使用済み透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を吸収する。
【0090】
次に図1eを参照すると、使用される吸着剤(108)の別の実施形態が示されている。活性炭パッド(1)、固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び下記の層で使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0091】
第1の層(1e−1)の活性炭パッド(1)は、上述の図1aの場合と同じである。
【0092】
吸着剤(108)の第2の層(1e−2)は、第1の層(1e−1)に隣接して連続して配置されている。第2の層(1e−2)は、固定化尿素粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物を含む。ウレアーゼ粒子(2)の全重量範囲は、0.5〜30グラムである。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量は、約100グラム〜1000グラムである。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。吸着剤(108)の第3の層(1e−3)は、第2の層(1e−2)に隣接して連続して配置されている。第3の層(1e−3)は、図1bの場合(1b−4)と同じ活性炭粒子(5)を含む。活性炭粒子(5)の全重量範囲は、約20グラム〜200グラムである。
【0093】
使用中、吸着剤(108)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1e−1)から第3の層(1e−3)になるように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1e−1)に入ると、この層は、上述の場合(図1a)と同じように、酵素阻害物質及び毒素を除去する。透析物が第2の層(1e−2)に進入すると、ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物が、尿素と、アンモニウムイオン、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムなどの陽イオンと、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンとを除去する。有利には、固定化ウレアーゼと両方のタイプのイオン交換体とを1つの組み合わせた層内で混合すると、即座の毒素吸収が容易になり且つ吸着剤の使用全体を通してより一貫したpH状態が透析物にもたらされることにより、性能が著しく改善される。一方、この混合物は、毒素除去能を損なうことなく吸着剤(108)のサイズも縮小する。透析物が吸着剤(108)の最終層(1e−3)に入ると、活性炭粒子(5)が、クレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を吸収する。
【0094】
次に図1fを参照すると、使用される吸着剤(110)の別の実施形態が示されている。固定化ウレアーゼ(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、活性炭粒子(5)、及び下記の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0095】
活性炭粒子(5)の第1の層は、上述の場合(図1c)と同じである。
【0096】
吸着剤(110)の第2の層(1f−2)は、第1の層(1f−1)に隣接して連続して配置されている。第2の層(1f−2)は、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物を含む。ウレアーゼ粒子(2)の全重量範囲は、0.5〜30グラムである。リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量は、約100グラム〜1000グラムである。含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は、約10グラム〜100グラムである。
【0097】
使用中、吸着剤(110)は、透析物流の方向が矢印で示されるように第1の層(1f−1)から第2の層(1f−2)に向かうように、透析装置内に配置される。透析物が第1の層(1f−1)に入ると、この層は、酵素阻害物質、並びにクレアチニン、尿酸、及び透析物中に存在するその他の尿毒症毒素を、上述(図1c)と同様に除去する。透析物が第2の層(1f−2)に進入すると、ウレアーゼ粒子(2)及びリン酸ジルコニウム粒子(3)及び含水酸化ジルコニウム粒子(4)の混合物が、尿素と、アンモニウムイオン、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムなどの陽イオンと、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンとを、上述と同じ方法(図1e)で除去する。本明細書の利点は、上述の内容(図1e)と同じである。
【0098】
次に図1gを参照すると、使用される吸着剤(112)の別の実施形態が示されている。活性炭粒子(5)、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び下記の層に使用されるそれぞれの基材は、図1aに関して既に述べたものと同じである。
【0099】
吸着剤(112)用の1種の均質な充填剤(1g−1)がある。充填剤層(1g−1)は、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び活性炭粒子(5)の、均質な混合物である。ウレアーゼ粒子(2)の全重量範囲は、0.5グラム〜30グラムであり、リン酸ジルコニウム粒子(3)の全重量は約100グラム〜1000グラムであり、含水酸化ジルコニウム粒子(4)の全重量範囲は約10グラム〜100グラムであり、活性炭粒子の全重量範囲は20グラム〜200グラムである。
【0100】
使用中、吸着剤(112)は、透析物流の方向が矢印で示されるように底面次元から上面次元になるように(1g−1)、透析装置内に配置される。透析物が吸着剤(112)内を通過するとき、固定化ウレアーゼ粒子(2)、リン酸ジルコニウム粒子(3)、含水酸化ジルコニウム粒子(4)、及び活性炭粒子(5)の混合物が、尿素と、アンモニウムイオン、カルシウム、マグネシウム、及びカリウムなどの陽イオンと、リン酸塩及びフッ化物などの陰イオンと、酵素阻害物質と、クレアチニン、尿酸、及びその他の尿毒症毒素などの小サイズから中サイズの有機代謝産物とを除去する。この配置により、緩衝剤としての両方の粒子の改善された性能の利益が得られ、したがって、吸着剤の使用全体を通してより一貫したpH状態が透析物にもたらされる。より有利には、固定化ウレアーゼ、両方のタイプのイオン交換体、及び活性炭を、1つの組み合わせた層内で混合することにより、さらによりコンパクトなサイズの吸着剤(112)及び十分な毒素除去能という利益が得られる。吸着剤によって引き起こされる圧力降下も最小限に抑制され、生成プロセスが著しく容易になる。この配置によって、吸着剤層の早期消耗の原因となり得る不均等な吸着剤層を有するという危険性がなくなる。
【0101】
図2a及び図2bを参照すると、上述の吸着剤(102)を収容するためのカートリッジ(18)が示されている。カートリッジ(18)は、ポリカーボネートで作製される。カートリッジ(18)の上面(20)及びカートリッジの底面(28)は、透析装置内に投入するためのフランジを有する。カートリッジ(18)の内部は、3つの区画に分かれている。第1の区画(26)は、固定化ウレアーゼ(16)及びリン酸ジルコニウム粒子(14)の混合物を収容する。第1の区画は、高さ27mm、長さ113mm、及び幅57mmである。第2の区画(24)は、リン酸ジルコニウム粒子(14)を収容する。第2の区画(24)は、高さ27mm、長さ113mm、及び幅57mmである。第3の区画(22)は、活性炭粒子(10)及び含水酸化ジルコニウム粒子(12)の混合物を収容する。第3の区画(22)は、高さ13mm、長さ113mm、及び幅57mmである。
【0102】
次に図2cを参照すると、上述のカートリッジ18と同じであって、同じ参照番号により示されるが符号(’)が付されている、いくつかの技術的特徴を有するカートリッジ18’の断面図が示されている。カートリッジ18’の底面(27)及び上面(21)は、フランジを含まず、カートリッジ(18’)の全体的な外部寸法が縮小されている。カートリッジ(18’)は、透析装置に挿入し、ナットやボルトなどの締付け手段により固定することができる。カートリッジ(18’)は、吸着剤の種々の層のより良好な画定を行うために、セパレータ(19)も含有する。
【0103】
次に図3を参照すると、上述のウレアーゼ固定化に使用されるPCL骨格又は基材(30)が示されている。PCL骨格(30)は、約7cmの直径を有する。
【0104】
図4を参照すると、40%のリン酸ジルコニウムを含有するPCL骨格(32)が示されている。PCL骨格(32)は、約7cmの直径を有する。
[実施例]
【0105】
固定化ウレアーゼ(IU、Immobilized Urease)及びリン酸ジルコニウム(ZP、Zirconium phosphate)を混合することにより改善されたウレアーゼ活性及び安定性の証拠
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
【表3】
【0109】
上記データから、IU及びZPが1つの層に混合された場合、表3に示されるように、高レベルの尿素除去を長時間(10時間)にわたり実現することができ、それと共に吸着剤の端から端まで比較的安定な圧力降下が維持できることがわかる。一方、IUを単独で使用した場合、表1に示されるように、尿素除去効率は時間と共に低下し、吸着剤の端から端までの圧力降下は時間と共に著しく増大する。IU及びZPが使用されるが別々の層として使用される場合、表2に示されるように、尿素除去効率は高レベルで維持されるが、吸着剤の端から端まで時間と共に劇的な圧力降下が生じ、吸着剤及び/又は透析装置に過圧及び損傷がもたらされる。
【0110】
粒度を基にしたリン酸ジルコニウムの吸着能の研究
【0111】
【表4】
【0112】
【表5】
【0113】
リン酸ジルコニウム粒子によって引き起こされた圧力降下は、問題となっているリン酸ジルコニウムの粒度に強度に依存することが示される。したがって、50ミクロン未満のサイズの粒子の層は、許容できないほど大きな圧力降下をもたらすが、50〜100ミクロンの粒度は既に、吸着剤カートリッジの適用例で好ましい範囲の著しく低い圧力降下をもたらす。粒度を100〜150ミクロン、及び150〜200ミクロンに増大させると、問題となっている粒子によって引き起こされる圧力降下がさらに縮小する。さらに、問題となっているリン酸ジルコニウムの吸収能は、50〜100ミクロンサイズの粒子で最高であることが、上記データからわかる。したがって、アンモニア吸収能と圧力降下との間の最適条件は、50〜100ミクロンのリン酸ジルコニウム粒子にある。
【0114】
粒度に基づく含水酸化ジルコニウムの吸収能の研究
【0115】
【表6】
【0116】
含水酸化ジルコニウム粒子によって引き起こされた圧力降下は、50ミクロンよりも小さい粒度であっても、リン酸ジルコニウム粒子によって引き起こされた場合よりも著しく低いことが示される。これは1つには、カートリッジの機能に必要な含水酸化ジルコニウムの量が、より少ないことに起因する。したがって、50ミクロン未満(95%を超える量が、10〜50ミクロンの範囲内である)のサイズの含水酸化ジルコニウム粒子の層が、カートリッジで使用するのに許容される圧力降下をもたらし、一方、このサイズの粒子は、50ミクロンサイズよりも大きい粒子に勝る改善されたリン酸塩吸収能も示す。したがって、吸着剤カートリッジに適用するための好ましい粒度は、10〜50ミクロンである。
【0117】
粒度に基づく活性炭の吸収能の研究
活性炭がクレアチニンを吸収する能力は、透析物の流量と、問題となっている炭素の粒度とに依存することが示される。重大なことは、粒度がより小さくなると、能力がより高くなり、圧力降下が増大する傾向があることである。許容される圧力降下と最大吸収能との間の最適条件は、下記の表に作成された実験結果に示されるように、50〜100μmの粒度範囲にある。
【0118】
シリーズ1
Calgon社製活性炭、第1のバッチ
条件:
【0119】
【表7】
【0120】
シリーズ2
Calgon社製活性炭、第2のバッチ
条件:
【0121】
【表8】
【0122】
シリーズ3
Sorb社製活性炭
条件:
【0123】
【表9】
【0124】
吸着剤カートリッジの配置及び設計
本明細書に開示される吸着剤カートリッジは、使用済み透析物中に存在する尿素及びその他の廃棄物を除去するように設計され、透析中に繰り返し使用するためにその透析物を再生することが可能である。これにより、4時間の血液透析セッションで約120リットル、又は1週間の典型的な腹膜透析で70〜100リットルという、従来の様式で使用される透析物の量が減少することになる。血液透析では、カートリッジは、血液透析器内を通過することになる透析物を再生するのに、使用することができる。透析物は、透析における再構成及び連続使用のために、透析物のリザーバに再生することができる。腹膜透析では、カートリッジは、患者の腹腔から引き出された透析物を再生するのに、使用することができる。次いで再生された透析物は、再構成システムに供することができ、患者の腔内に再導入することが可能になる。
【0125】
吸着剤カートリッジは、サイズ及び重量に関し、透析装置に挿入したときに本明細書に開示されるキャリアと共に装着できるよう設計される(まとめて、装着可能な腹膜透析機械又はWPDM(wearable peritoneal dialysis machine)として知られている)。これにより患者は、日々に活動を行う際により動くことが可能になり、経済的により生産性が上がる。開示された吸着剤を含む透析装置は、尿毒症毒素24/7を除去することができ、市販されている任意のその他の現行様式に比べて尿毒症毒素の除去に有効である。
【0126】
実施した実験から、本明細書に開示される吸着剤は、尿素190mmol(又は尿素−N 5.3グラム)を吸収できることが観察される。吸着剤カートリッジは、WPDMのエンリッチメントモジュールを通して、個別に又は組み込まれる所定量のグルコースと組み合わせて使用される、滅菌した単回使用のユニットでもある。まとめると、好ましい吸着剤配置、各層内の成分の量、及び機能を、以下の表に示す:
【0127】
【表10】
【0128】
インビトロ試験
1.目的
インビトロ試験の目的は、吸着剤カートリッジの機能性を、患者の血液透析物の再生においてその適用例をシミュレートする条件下で検証することである。このために、患者の使用済み透析物を、連続血液透析を目的とした期待される濃度で尿毒症毒素尿素、クレアチニン、及びリン酸塩を含有する合成使用済み血液透析物に交換する。
【0129】
【表11】
【0130】
3.インビトロ試験条件
試験は、37℃の透析物温度及び6.0L/時の連続流量で実施した。消耗は、再生された透析物の化学成分の少なくとも1種が許容される範囲外になった点と定義する(以下の3.2参照)。
【0131】
以下の表は、典型的な使用済み血液透析物の組成、再生された透析物の成分に関する医学的に許容される範囲、及び使用済み透析物が本明細書に開示される吸着剤の一実施形態(表11)を通過したときに吸収される毒素の量を示す。
【0132】
【表12】
【0133】
【表13】
【0134】
4.試験結果
消耗:カートリッジ流出物中のアンモニア濃度は、合計32Lの合成使用済み透析物が吸着剤カートリッジを通過した後、1.4mmol/L(2.0mg/dL)よりも高かった。その他全ての分析物は、許容限度内にあるままであった。
【0135】
【表14】
【0136】
【表15】
【0137】
5.結論
吸着剤カートリッジの性能は、使用済み血液透析物の再生で使用するために、上記3.2及び3.3で定義された全ての要件を満たし又は超えた。その全能力は、尿素−Nが5.3g、クレアチニンが750mg、及びリン酸塩−Pが710mgであった。
【0138】
適用例
透析装置に関して開示された吸着剤は、腹膜透析又は血液透析に使用してもよい。開示された吸着剤は、透析装置で使用される場合、いくつかの知られている透析装置では通常は不可能なタンパク質結合毒素の除去が可能であることが有利である。
【0139】
開示された吸着剤は、WPDM(装着可能な腹膜透析機械)で使用される場合、患者によって生成され且つ透析物中に存在する尿素、リン酸塩、クレアチニン、及びその他の尿毒症毒素の全てを吸収することが可能であり、尿毒症毒素に関して最適なクリアランスをもたらす、コンパクトで携帯可能な吸着剤である。吸着剤は、透析物から代謝廃棄物を素早く且つ効果的に除去するその能力を損なうことなく、コンパクトさを実現する手法で構成されることが有利である。1つの好ましい実施形態では、即ち、固定化ウレアーゼ及びリン酸ジルコニウム粒子が吸着剤の1つの層内に同時に存在する場合、リン酸ジルコニウム粒子が緩衝剤として作用していかなるpH変化も相殺するので、固定化ウレアーゼに最適な作動環境が生成される。これにより、ウレアーゼ活性が増大し、固定化ウレアーゼの寿命が延びることが有利である。より有利には、この特定の構成では、吸着剤の層に1又は2以上の材料の組合せを用いるので、吸着剤の全体的なサイズが著しく縮小される。その結果、透析装置の携帯性が改善され、それによって、より大きな患者の行動範囲がもたらされる。同時に、リン酸ジルコニウム粒子は、陽イオン交換体としても働き、望ましくない陽イオンを透析物から除去する。
【0140】
一実施形態では、提供されたリン酸ジルコニウム粒子は、25ミクロン〜100ミクロンの平均粒度を有する。有利には、この特定の粒度範囲は、リン酸ジルコニウム粒子の望ましくない陽イオン除去能の効力を増大させることが、本発明者らによって見出された。
【0141】
本発明の均等な実施形態について記述するために、妥当な努力がなされてきたが、前述の開示を読んだ後、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、その内部に本発明の様々なその他の変更及び適用を行うことができ且つそのような変更及び適用の全ては添付される特許請求の範囲内に包含されることが、当業者に明らかにされよう。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤。
【請求項2】
陽イオン交換粒子の2次層をさらに含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
有機化合物吸収剤粒子と混合された陰イオン交換粒子の3次層をさらに含む、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
2次層が1次層と3次層の間に配置される、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項5】
尿毒症毒素処理酵素粒子が尿素を炭酸アンモニウムに変換する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項6】
尿毒症毒素処理酵素がウレアーゼである、請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
陽イオン交換粒子がリン酸ジルコニウム粒子である、請求項1又は2に記載の吸着剤。
【請求項8】
陰イオン交換粒子が酸化ジルコニウム粒子である、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項9】
有機化合物吸収剤粒子が活性炭粒子である、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項10】
ウレアーゼが、セルロース、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種に固定化される、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項11】
酸化ジルコニウムが含水酸化ジルコニウムである、請求項8に記載の吸着剤。
【請求項12】
ウレアーゼ粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項13】
リン酸ジルコニウム粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する、請求項7に記載の吸着剤。
【請求項14】
酸化ジルコニウム粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の粒度を有する、請求項8に記載の吸着剤。
【請求項15】
活性炭粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する、請求項9に記載の吸着剤。
【請求項16】
25ミクロン〜100ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の層を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤。
【請求項17】
固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、
10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の2次層と、
3次層及び4次層であって、その少なくとも一方が陰イオン交換粒子を含み、他方の層が有機化合物吸収剤粒子を含む前記3次層及び前記4次層と
を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤。
【請求項18】
2次層が、1次層と3次層の間に配置され、前記3次層が、前記2次層と4次層の間に配置される、請求項17に記載の吸着剤。
【請求項19】
陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である、請求項1、2、18、又は19のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項20】
陽イオン交換粒子が、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含む、請求項1、2、18、又は19に記載の吸着剤。
【請求項1】
陽イオン交換粒子と混合された固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤。
【請求項2】
陽イオン交換粒子の2次層をさらに含む、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項3】
有機化合物吸収剤粒子と混合された陰イオン交換粒子の3次層をさらに含む、請求項2に記載の吸着剤。
【請求項4】
2次層が1次層と3次層の間に配置される、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項5】
尿毒症毒素処理酵素粒子が尿素を炭酸アンモニウムに変換する、請求項1に記載の吸着剤。
【請求項6】
尿毒症毒素処理酵素がウレアーゼである、請求項5に記載の吸着剤。
【請求項7】
陽イオン交換粒子がリン酸ジルコニウム粒子である、請求項1又は2に記載の吸着剤。
【請求項8】
陰イオン交換粒子が酸化ジルコニウム粒子である、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項9】
有機化合物吸収剤粒子が活性炭粒子である、請求項3に記載の吸着剤。
【請求項10】
ウレアーゼが、セルロース、ナイロン、ポリカプロラクトン、及びキトサンの少なくとも1種に固定化される、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項11】
酸化ジルコニウムが含水酸化ジルコニウムである、請求項8に記載の吸着剤。
【請求項12】
ウレアーゼ粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する、請求項6に記載の吸着剤。
【請求項13】
リン酸ジルコニウム粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する、請求項7に記載の吸着剤。
【請求項14】
酸化ジルコニウム粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の粒度を有する、請求項8に記載の吸着剤。
【請求項15】
活性炭粒子が、10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する、請求項9に記載の吸着剤。
【請求項16】
25ミクロン〜100ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の層を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤。
【請求項17】
固定化尿毒症毒素処理酵素粒子の1次層と、
10ミクロン〜1000ミクロンの範囲の平均粒度を有する陽イオン交換粒子の2次層と、
3次層及び4次層であって、その少なくとも一方が陰イオン交換粒子を含み、他方の層が有機化合物吸収剤粒子を含む前記3次層及び前記4次層と
を含む、透析液から代謝廃棄物を除去するための吸着剤。
【請求項18】
2次層が、1次層と3次層の間に配置され、前記3次層が、前記2次層と4次層の間に配置される、請求項17に記載の吸着剤。
【請求項19】
陽イオン交換粒子がアンモニア吸収剤である、請求項1、2、18、又は19のいずれかに記載の吸着剤。
【請求項20】
陽イオン交換粒子が、そのリン酸塩が低水溶性である金属のイオンを含む、請求項1、2、18、又は19に記載の吸着剤。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2011−525403(P2011−525403A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516227(P2011−516227)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000229
【国際公開番号】WO2009/157877
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510338259)テマセク ポリテクニック (3)
【氏名又は名称原語表記】TEMASEK POLYTECHNIC
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/SG2009/000229
【国際公開番号】WO2009/157877
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(510338259)テマセク ポリテクニック (3)
【氏名又は名称原語表記】TEMASEK POLYTECHNIC
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]