説明

透水層の造成方法

【課題】施工中の穿孔部分の沈下や経年変化による透水層部分の地盤沈下の生じることのない透水層の造成方法を提供する。
【解決手段】地盤34中の不透水層を透水層62に改良する透水層の造成方法であって、地盤34中に2重ジェット管24を挿入し、2重ジェット管24からの高圧噴射により改良対象地盤層50の上層52を水平掘削して、セメントを充填し上層スラブ54を造成する工程と、上層スラブ54の硬化後、上層スラブ54を貫通させて2重ジェット管24を改良対象地盤層50まで挿入し、2重ジェット管24からの高圧噴射により改良対象地盤層50を水平掘削して掘削空隙64を形成する工程と、掘削空隙64に透水性材料を充填して透水層62を形成する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水層の造成方法に関し、特に、粘土層や不透水地下層に透水層を形成するための透水層の造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤中に連続した平板状の透水層を造成する方法として特許文献1に示すようなものがある。
【0003】
この方法では、地盤中にジェット管を挿入し、このジェット管に設けた水平方向に噴射可能なジェットノズルより高圧水を噴射して地盤に穿孔し、続いてこの穿孔内にサンドグラウトまたは地盤硬化薬液と多量の気泡剤の混合液を圧送し、これらの工程をジェット管を回転または引き上げながら行うことにより、地盤中に連続した平板状の透水層を造成し、この透水層を通じて排水するようにしている。
【特許文献1】特公昭50−27281号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような透水層の造成方法にあっては、地盤中に直接穿孔を行って、そこに透水性の材料を圧送することで透水層を形成するため、透水層自体の強度が経年変化で弱くなった場合に地盤沈下が生じる可能性が生じることとなる。
【0005】
また、施工中においても、透水層形成位置の上部に透水層形成用の機器を設置していると、その重量により穿孔部分が沈下したりすることが考えられる。
【0006】
本発明の目的は、施工中の穿孔部分の沈下や経年変化による透水層部分の地盤沈下の生じることのない透水層の造成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明の透水層の造成方法は、地盤中の不透水層を透水層に改良する透水層の造成方法であって、
地盤中にジェット管を挿入し、前記ジェット管からの高圧噴射により改良対象地盤層の上層を水平掘削して、セメントを充填し上層スラブを造成する工程と、
前記上層スラブの硬化後、前記上層スラブを貫通させて前記ジェット管を改良対象地盤層まで挿入し、前記ジェット管からの高圧噴射により前記改良対象地盤層を水平掘削して空隙を形成する工程と、
前記空隙に透水性材料を充填して透水層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、改良対象地盤層の上層に上層スラブを造成し、その下層である改良対象地盤層に透水層を造成するため、経年変化により透水層の強度が弱くなっても、上部荷重を上層スラブが受け持つことができ、透水層の経年変化による地盤沈下を防止することができ、しかも、上層スラブを造成した後、透水層を造成するため、透水層形成位置上に施工機器等を設置していても、その重量によって施工中の穿孔部分が沈下するのを防止することができる。
【0009】
ここで、ジェット管とは水またはエアをジェット噴流として噴射して地盤の切削を行う管をいう。
【0010】
本発明においては、前記透水性材料は、スクリューコンベアにて、充填位置まで搬送されるようにすることができる。
【0011】
このような構成とすることにより、透水性材料を目詰まりを生じさせることなく確実に充填位置まで搬送することができる。
【0012】
本発明においては、前記上層スラブ用のセメント及び透水層用の透水性材料は、ジェット管により高圧噴射されるようにすることができる。
【0013】
このような構成とすることにより、セメントや透水性材料を掘削した部分の奥まで確実に供給、充填することができる。
【0014】
本発明においては、前記透水層用の透水性材料は、つなぎ材と共に前記空隙に充填されるようにすることができる。
【0015】
このような構成とすることにより、つなぎ材により透水性材料に流動性を持たせて確実に空隙内に流し込むことができる。
【0016】
本発明においては、少なくとも前記改良対処地盤層を掘削する際に前記ジェット管から解こう剤または分散剤を掘削土に供給するようにすることができる。
【0017】
このような構成とすることにより、解こう剤または分散剤により掘削土の粘性復活作用であるチキソトロピーを防止して、確実に掘削土を地上に搬出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図5は、本発明の一実施の形態に係る透水層の造成方法を示す図である。
【0020】
本実施の形態に係る透水層の造成方法においては、図1〜図3に示すような地盤改良用施工機10を用いて透水層の造成施工を行うようにしている。
【0021】
この地盤改良用施工機10は、例えばジェットグラウト工法における施工機を用いることができるもので、ベースマシン12と、このベースマシン12に立設したリーダ14と、このリーダ14に沿って上下動するスライド部16と、このスライド部16に設けた多重管ロッド18とを有している。
【0022】
多重管ロッド18は、図4及び図5に示すように、ケーシングパイプ20と、このケーシングパイプ20内に配設されたスクリューコンベア22と、水や空気を噴射するための2重ジェット管24とを有している。
【0023】
スクリューコンベア22は、図4に示すように、スクリュー羽根26を回転可能なスクリュー軸28に取り付けた状態となっており、ケーシングパイプ20内で回転してケーシングパイプ20の上端に設けた材料ホッパ30からセメントや透水性材料32を下方に搬送してケーシングパイプ20の下端より地盤34中に供給できるようになっている。
【0024】
2重ジェット管24は、図5に示すように、スクリュー軸28を外筒にしてその中に内筒36を配設した2重管構造となっている。
【0025】
そして、スクリュー軸28と内筒36との間を高圧エアのエア供給路38として高圧エアを下端部側のエア噴射ノズル40より噴射しうるようにすると共に、、内筒36内を超高圧水の水供給路42として下端側の超高圧水噴射ノズル44より超高圧水を噴射しうるようにしている。
【0026】
また、スクリュー軸28の下端には羽根ビット46が設けられ、内筒36の下端には逆止弁48が設けられている。
【0027】
なお、図示せぬが、多重間ロッド18には、各種の薬剤や混合材の供給路を別途または一体に形成することができる。
【0028】
そして、このような地盤改良用施工機10を用いて透水層の造成施工を行う場合には、まず、地盤34中の不透水層である改良対象地盤層50の上層52に上層スラブ54を造成する。
【0029】
この場合、まず、2重ジェット管24の超高圧水噴射ノズル44からの超高圧水の噴射やエア噴射ノズル40からの高圧エアの噴射等によって地表56から地盤34を掘削しつつ地盤34中に多重管ロッド18を挿入し、改良対象地盤層50の上層52位置まで掘り下げる。
【0030】
次いで、この位置で2重ジェット管24からの超高圧水や高圧エア等の高圧噴射により改良対象地盤層50の上層52を所定範囲で水平掘削する。
【0031】
この掘削にあたっては、2重ジェット管24を上層スラブ54形成位置下端から上端まで回転させながら上昇させていくことで、所定高さでの掘削が行える。
【0032】
この場合、地中の掘削土はエアリフトを利用して、地上まで排出する。
【0033】
またこの場合、2重ジェット管24の超高圧水に混合して、あるいは2重ジェット管24に設けた別の供給手段により、解こう材または分散剤を掘削土に供給すれば、解こう剤または分散剤材により掘削土の粘性復活作用であるチキソトロピーを防止して、確実に掘削土を地上に搬出することができる。
【0034】
この解こう材または分散剤としては、粘土粒子あるいは粘土凝集物を分散させて粘性を低下させる効果を持つ、カルボン酸系水溶性高分子、ポリアクリル酸塩系化合物、フミン酸ソーダ等の添加物が採用できる。
【0035】
所定範囲の掘削が終了したら、多重管ロッド18のスクリューコンベア22、あるいは他の供給手段により、掘削位置まで供給し、セメント58を掘削空隙60内に充填し上層スラブ54を造成する。
【0036】
このセメント58の充填にあたっては、2重ジェット管24からの超高圧水や高圧エア等の高圧噴射により掘削空隙60の奥まで十分に行き渡らせることができる。
【0037】
次に、この状態で、図2に示すように、多重管ロッド18を引き上げて、上層スラブ54が硬化するまで待って、次工程まで待機する。
【0038】
そして、上層スラブ54が硬化した後、図3に示すように、上層スラブ54の下方に透水層62を造成する。
【0039】
この場合、まず、2重ジェット管24の超高圧水噴射ノズル44からの超高圧水の噴射やエア噴射ノズル40からの高圧エアの噴射等によって上層スラブ54を貫通させて多重管ロッド18を改良対象地盤層50まで挿入し、その下端位置まで掘り下げる。
【0040】
次いで、この位置で2重ジェット管24からの超高圧水や高圧エア等の高圧噴射により改良対象地盤層50を所定範囲で水平掘削する。
【0041】
この掘削にあたっては、2重ジェット管24を透水層62形成位置下端から上端まで回転させながら上昇させていくことで、所定高さでの掘削が行える。
【0042】
この場合、前述の工程と同様、地中の掘削土はエアリフトを利用して、地上まで排出する。
【0043】
この場合、2重ジェット管24の超高圧水に混合して、あるいは2重ジェット管24に設けた別の供給手段により、解こう材または分散剤を掘削土に供給すれば、解こう剤または分散剤により掘削土の粘性復活作用であるチキソトロピーを防止して、確実に掘削土を地上に搬出することができる。
【0044】
そして、所定範囲の掘削が終了したら、多重管ロッド18のスクリューコンベア22により、透水性材料32を材料用ホッパ30から掘削位置まで供給し、透水性材料32を掘削空隙64内に充填し透水層62を造成する。
【0045】
透水性材料32としては、例えば、砂、礫、砂礫、砂利等の他、代替物として粘性土中にエアと低強度硬化材を注入したものが採用できる。
【0046】
低強度硬化材としては、例えば、流動化処理土(粘性土に泥水または水とセメント等の固化材を混合したもので流動性と自硬性を有するもの)、ソイルセメント(土砂に水とセメント系固化材、分離低減材(ベントナイトなど)を混合したもの)等が採用できる。
【0047】
この場合、透水性材料32の大きいものである場合、透水性材料32をつなぎ材と共に掘削空隙64に充填されるようにすることで、つなぎ材により透水性材料32に流動性を持たせて確実に掘削空隙64内に流し込むことができる。
【0048】
この、つなぎ材としては、透水性材料32が掘削空隙64に充填された後、溶解する性質のもの、例えば、粘性材料(ベントナイト)や粉体(フライアッシュ、石粉等)を採用することができる。
【0049】
また、透水性材料32の沈降を防止するため、地山比重と同等の軽量骨材を投入材料として用いることもできる。
【0050】
この透水性材料32の充填にあたっては、2重ジェット管24からの超高圧水や高圧エア等の高圧噴射により掘削空隙64の奥まで十分に行き渡らせることができる。
【0051】
このような透水層の造成方法によれば、改良対象地盤層50の上層52に上層スラブ54を造成し、その下層である改良対象地盤層50に透水層62を造成するため、経年変化により透水層の強度が弱くなっても、上部荷重を上層スラブが受け持つことができ、透水層の経年変化による地盤沈下を防止することができ、しかも、上層スラブ54を造成した後、透水層62を造成するため、透水層62形成位置上に施工機器等を設置していても、その重量によって施工中の穿孔部分が沈下するのを防止することができる。
【0052】
また、透水性材料32は、スクリューコンベア22にて、充填位置まで搬送することで、透水性材料32を目詰まりを生じさせることなく確実に充填位置まで搬送することができる。
【0053】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変形可能である。
【0054】
例えば、前記実施の形態においては、道路や一般の平坦地等を想定して説明したが、この例に限らず、トンネルの掘削経路に沿って透水層を形成する場合には、上層スラブをその経路に沿って縦長に形成していき、その下部に透水層を形成するようにすればよい。
【0055】
また、透水層の中に縦穴等を構築する場合や、透水層の一部が斜面に露出するような場合には、水平ボーリングを組み合わせることで、水抜き用のダクトを挿入して透水層中に含まれる水分を抜き出すようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施の形態に係る透水層の造成方法において上層スラブを造成する工程を示す側面図である。
【図2】図1の状態から上層スラブの硬化後の透水層の造成準備状態を示す側面図である。
【図3】図2の状態から透水層の造成状態を示す側面図である。
【図4】ジェット管及びスクリューコンベアのを示す断面図である。
【図5】ジェット管の先端部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10 地盤改良用施工機
22 スクリューコンベア
22 2重ジェット管
32 透水性材料
34 地盤
50 改良対象地盤層
52 上層
54 上層スラブ
58 セメント
62 透水層
64 掘削空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中の不透水層を透水層に改良する透水層の造成方法であって、
地盤中にジェット管を挿入し、前記ジェット管からの高圧噴射により改良対象地盤層の上層を水平掘削して、セメントを充填し上層スラブを造成する工程と、
前記上層スラブの硬化後、前記上層スラブを貫通させて前記ジェット管を改良対象地盤層まで挿入し、前記ジェット管からの高圧噴射により前記改良対象地盤層を水平掘削して空隙を形成する工程と、
前記空隙に透水性材料を充填して透水層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする透水層の造成方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記透水性材料は、スクリューコンベアにて、充填位置まで搬送されることを特徴とする透水層の造成方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記上層スラブ用のセメント及び透水層用の透水性材料は、ジェット管により高圧噴射されることを特徴とする透水層の造成方法。
【請求項4】
請求項1において、
前記透水層用の透水性材料は、つなぎ材と共に前記空隙に充填されることを特徴とする透水層の造成方法。
【請求項5】
請求項1において、
少なくとも前記改良対処地盤層を掘削する際に前記ジェット管から解こう剤または分散剤を掘削土に供給することを特徴とする透水層の造成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−138332(P2009−138332A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312447(P2007−312447)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000166432)戸田建設株式会社 (328)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】