説明

透水試験装置

【課題】透水し易い地盤であっても透水し難い地盤であっても、地盤の透水性を正確に測定できるようにする。
【解決手段】高さ方向に略等断面積となる挿入部材7を、気密水槽2に挿脱できるように構成している。したがって、このような挿入部材7を該気密水槽内に挿入した状態では、水(水位測定用水)Wの断面積(水平断面積)が小さくなり、試験孔Hの水(試験孔用水)Wの水位変化に対する水位測定用水Wの水位変化が敏感になる。したがって、地盤Gが固くて試験孔用水Wの浸透度合いが小さい場合には、前記挿入部材7を前記気密水槽内に挿入しておけば水位変化を感度良く測定することが可能となる。また、地盤Gが緩くて試験孔用水Wの浸透度合いが大きい場合には、前記挿入部材7を前記気密水槽2から取り外しておけば、適正な感度で水位変化を測定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤の透水性を測定する透水試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネルやダムやビル等の建設現場においては、透水試験装置を使ってその地盤の透水性を測定することが行われている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0003】
図5は、従来の透水試験装置の構造及び透水試験方法の一例を示す模式図であって、符号Hは、地盤Gに掘削された試験孔を示し、該試験孔Hには水(本明細書においては“試験孔用水”とする)Wが貯留されている。また、符号100は、該試験孔Hの近傍に配置された気密水槽を示し、該気密水槽100にも水(本明細書においては“水位測定用水”とする)Wが気密状態で貯留されている。さらに、この気密水槽100と試験孔Hとは連通管101により連通されていて、試験孔用水Wが周辺地盤に徐々に浸透してその水位が下がった場合に該連通管101を介して気密水槽100から試験孔Hに水が供給され、該試験孔用水Wの水位は一定に保持されるようになっている。その結果、水位測定用水Wの水位は、試験孔用水Wの地盤Gへの浸透量に応じて下がることとなり、水位センサー(例えば、超音波距離計)102で水位測定用水Wの水位を測定することで、地盤の透水性を測定できるように構成されている。なお、図示のものでは、気密水槽100に大気連通管103を挿通すると共に、その大気連通管103の下端を試験孔用水Wの水面高さと一致させることにより、該試験孔用水Wの水位を一定に保持するように構成されている。また、本発明と直接関係は無いが、符号104は、試験孔内に配置される有孔塩化ビニル管などの案内管を示し、符号105は、該案内管104の固定のために地盤との間に詰められる案内管固定砕石を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−021059号公報
【特許文献2】特開2002−365201号公報
【特許文献3】特許第3072572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような透水試験装置の場合、透水し易い地盤では水位測定用水Wの水位変化が顕著となる反面、透水しにくい地盤では水位測定用水Wの水位変化が穏やかとなり、透水し易い地盤か否かで測定精度が異なってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することのできる透水試験装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、地盤(G)に試験孔(H)を掘削すると共に該試験孔(H)に試験孔用水(W)を貯留して地盤(G)の透水性を測定する透水試験装置(1)において、
水位測定用水(W)を気密状態で貯留可能な気密水槽(2)と、
該気密水槽内であって前記水位測定用水(W)の水面(W20)よりも下に一端開口(4a)が開口されると共に、前記試験孔(H)に他端開口(4b)が配置されてなる注水管(4)と、
前記試験孔用水(W)の水位が下がった場合には前記注水管(4)を介して前記気密水槽(2)から前記試験孔(H)に水を補給して前記試験孔用水(W)の水位を略一定に保持する定水位保持手段(3)と、
前記水位測定用水(W)の水位を測定する水位センサー(5)と、
前記気密水槽(2)の上部に開閉可能に配置された蓋部材(6)と、
該蓋部材(6)を開けた状態で前記気密水槽(2)に挿脱可能となるように構成されると共に、該気密水槽(2)に挿入された状態では高さ方向に略等断面積となるように配置される挿入部材(7)と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記挿入部材(7)は棒状であり、
前記蓋部材(6)は、該挿入部材(7)を前記気密水槽(2)に挿入しない場合に使用されて該気密水槽(2)を気密状態に保持する第1蓋部材(図2(a) の符号6A参照)と、該挿入部材(7)を前記気密水槽(2)に挿入する場合に使用されて該気密水槽(2)を気密状態に保持する第2蓋部材(図2(b) の符号6B参照)と、からなり、
前記棒状の挿入部材(7)と前記第2蓋部材(6B)とは一体となるように係合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、図1に例示するものであって、地盤(G)に試験孔(H)を掘削すると共に該試験孔(H)に試験孔用水(W)を貯留して地盤(G)の透水性を測定する透水試験装置(1)において、
水位測定用水(W)を気密状態で貯留可能な気密水槽(2)と、
該気密水槽内であって前記水位測定用水(W)の水面(W20)よりも上に一端開口(3a)が開口されると共に、前記試験孔中の試験孔用水(W)に対峙するように他端開口が配置されてなる定水位保持管(3)と、
前記気密水槽内であって前記水位測定用水(W)の水面(W20)よりも下に一端開口(4a)が開口されると共に、前記試験孔用水(W)に水没されるように他端開口(4b)が配置されてなる注水管(4)と、
前記水位測定用水(W)の水位を測定する水位センサー(5)と、
を備え、
前記定水位保持管の他端開口は、図4(b)
(c) に符号3cで示すように、該定位水位保持管(3)の側面に穿設されたことを特徴とする。
【0010】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、地盤が固くて試験孔用水の浸透度合いが小さい場合には、前記挿入部材を前記気密水槽内に挿入しておけば水位変化を感度良く測定することが可能となる。また、地盤が緩くて試験孔用水の浸透度合いが大きい場合には、前記挿入部材を前記気密水槽から取り外しておけば、適正な感度で水位変化を測定することができる。さらに、上述の挿入部材は、水位測定用水を捨てないで挿入したり取り外したりすることができるので、現場での作業を簡素化することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、第2蓋部材自体で挿入部材の位置決めを行うことができるので便利である。また、挿入部材及び第2蓋部材を前記気密水槽からワンタッチの操作で装着または取り外すことができ、現場での作業を簡素化できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、試験孔用水の水位が下がったにもかかわらず表面張力で前記他端開口が閉塞されているという事態を低減でき、水位変化測定を正確に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る透水試験装置の全体構成及び使用状態を示す部分断面図である。
【図2】図2(a)(b) は、本発明に係る透水試験装置の外観を示す斜視図である。
【図3】図3は、挿入部材の構成の一例を示す分解斜視図である。
【図4】図4(a) 〜(c)は、定水位保持管の他端開口の配置位置等を示す模式図である。
【図5】図5は、従来の透水試験装置の構造及び透水試験方法の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1乃至図4に沿って、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は、本発明に係る透水試験装置の全体構成及び使用状態を示す部分断面図であり、図2(a) (b) は、本発明に係る透水試験装置の外観を示す斜視図であり、図3は、挿入部材の構成の一例を示す分解斜視図であり、図4(a) 〜(c)
は、定水位保持管の他端開口の配置位置等を示す模式図である。
【0016】
本発明に係る透水試験装置は、地盤の透水性を測定するために使用されるものであって、図1に符号1で例示するように、地盤Gに試験孔Hを掘削すると共に該試験孔Hに試験孔用水Wを貯留した状態で使用される。
【0017】
本発明に係る透水試験装置1は、
・ 水位測定用の水(水位測定用水)Wを気密状態で貯留可能な気密水槽2と、
・ 該気密水槽内であって前記水位測定用水Wの水面W20よりも下に一端開口4aが開口されると共に、前記試験孔Hに他端開口4bが配置されてなる注水管4と、
・ 前記試験孔用水Wの水位が下がった場合には前記注水管4を介して前記気密水槽2から前記試験孔Hに水を補給して前記試験孔用水Wの水位を略一定に保持する定水位保持手段3と、
・ 前記水位測定用水Wの水位を測定する水位センサー5と、
を備えている。
【0018】
なお、図示の定水位保持手段3は、前記気密水槽内であって前記水位測定用水Wの水面W20よりも上に一端開口3aが開口されると共に、前記試験孔中の試験孔用水Wに対峙するように他端開口3bが配置されてなる定水位保持管であるが、これに限るものでは無く、図5に示したような大気連通管103を使用しても良いし、その他の形式の管を使用しても良い。ここで、定水位保持手段を上述の定水位保持管や大気連通管103にした場合には、前記注水管4の他端開口4bは前記試験孔用水Wに水没させておく必要がある。
【0019】
図1に示す装置の場合、前記定水位保持管3の他端開口3bが前記試験孔用水Wにより閉塞されている間は前記気密水槽2の気密状態は保たれて前記水位測定用水Wの水位は変化せずに一定のまま保持されるが、地盤Gへの浸透により前記試験孔用水Wの水位が下がると前記他端開口3bから前記気密水槽2に空気が入り込むこととなる。これにより、前記注水管4から前記試験孔Hには前記注水管4を介して水が補給され、前記水位測定用水Wの水位が下がると共に前記試験孔用水Wの水位が上がり、前記定水位保持管3の他端開口3bは再び試験孔用水Wにより閉塞される。その結果、前記気密水槽2は再び気密状態となり、前記注水管4からの排水が止まり、水位測定用水Wの水位変化は停止する。その後も、前記試験孔用水Wの地盤Gへの浸透が継続されるので、上述のような現象が繰り返されることとなり、前記水位測定用水Wの水位変化は上述の水位センサー5により測定される。
【0020】
ところで、上述の気密水槽2の上部(正確には、水位測定用水Wの水面W20よりも上の部分)には開閉可能な蓋部材(図1の符号6、及び図2の符号6A,6B参照)が配置されており、該蓋部材6を開けた状態では挿入部材7が挿脱可能となるように構成されている。この挿入部材7は、前記気密水槽2に挿入された状態では、高さ方向に略等断面積となるように配置される。このような挿入部材7を該気密水槽内に挿入した状態では、水位測定用水Wの断面積(水平断面積)が小さくなり、試験孔用水Wの水位変化に対する水位測定用水Wの水位変化が敏感になる。したがって、地盤Gが固くて試験孔用水Wの浸透度合いが小さい場合には、前記挿入部材7を前記気密水槽内に挿入しておけば水位変化を感度良く測定することが可能となる。また、地盤Gが緩くて試験孔用水Wの浸透度合いが大きい場合には、前記挿入部材7を前記気密水槽2から取り外しておけば、適正な感度で水位変化を測定することができる。さらに、上述の挿入部材7は、水位測定用水Wを捨てないで挿入したり取り外したりすることができるので、現場での作業を簡素化することができる。またさらに、上述の蓋部材6は、前記水位測定用水Wの水面W20よりも上の部分に配置されているので、該蓋部材6を開けても水位測定用水Wがこぼれることは無く、水を補給する手間を省くことができる。なお、この蓋部材6は公知の方法(例えば、ネジ)により簡単に着脱できるようにしておくと良く、また、公知のシール部材を配置することにより気密水槽2の気密性を保持できるようにすると良い。
【0021】
ところで、図2(b)
に示す挿入部材7は丸棒の形状をしているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、丸棒以外の他の形状の棒として良く(例えば、角棒や、他の断面形状の棒)、棒状以外の他の形状(例えば、図3に符号17で示す円筒状や、角筒状など)として良い。なお、挿入部材を図3に符号17で示すような円筒状とした場合には、気密水槽2の上側部分(符号20で示す部分)の全体を蓋部材としておいて、該全体を着脱可能に構成しておくと良い。また、これらの挿入部材は1つだけでなく、複数挿入できるようにしても良い。
【0022】
なお、挿入部材を図2(b) に詳示するような棒状にする場合は、蓋部材は、少なくとも2つの蓋部材を取り替え可能に構成しておいて、
・ 一方の蓋部材(第1蓋部材)6Aは、前記挿入部材7を前記気密水槽2に挿入しない場合に使用されて該気密水槽2を気密状態に保持するものとし(図2(a) 参照)、
・ 他方の蓋部材(第2部材)6Bは、前記挿入部材7を前記気密水槽2に挿入する場合に使用されて該気密水槽2を気密状態に保持するもの(同図(b) 参照)
にしておくと良い。また、この場合、前記挿入部材7と前記第2蓋部材6Bとが一体となるように係合しておくと良い。このように、前記挿入部材7と前記第2蓋部材6Bとを一体に構成した場合には、該第2蓋部材自体で挿入部材7の位置決めを行うことができるので便利である。また、挿入部材7及び第2蓋部材6Bを前記気密水槽2からワンタッチの操作で装着または取り外すことができ、現場での作業を簡素化できる。
【0023】
一方、本発明に係る透水試験装置を、
・ 水位測定用水Wを気密状態で貯留可能な気密水槽2と、
・ 上述の定水位保持管(つまり、前記気密水槽内であって前記水位測定用水の水面W20よりも上に一端開口3aが開口されると共に、前記試験孔中の試験孔用水Wに対峙するように他端開口3bが配置されてなる定水位保持管)3と、
・ 上述の注水管(つまり、前記気密水槽内であって前記水位測定用水の水面W20よりも下に一端開口4aが開口されると共に、前記試験孔用水Wに水没されるように他端開口4bが配置されてなる注水管)4と、
・ 前記水位測定用水Wの水位を測定する水位センサー5と、
により構成し、前記定水位保持管3の他端開口は、図4(b) (c) に符号3cで詳示するように、該定位水位保持管3の側面に穿設しておくと良い。
【0024】
ここで、図4(b)
(c) の効果について説明する。上述の定水位保持管3の他端開口を、図4(a) に符号3bで詳示するように定水位保持管3の下端面に形成した構造のものでは、試験孔用水Wの水面W10が定水位保持管3の下端面よりも下がった場合でも、表面張力により該試験孔用水Wと他端開口3bとの接触が維持されてしまい、該開口3bから気密水槽2への空気の流入が阻止され、水位変化測定を正確に行えない場合がある。これに対し、定水位保持管3の他端開口を、図4(b)
に符号3cで詳示するように側面に設けた場合には、表面張力による影響は少なくなり、水位変化測定を正確に行える。この他端開口3cは、1つ設けても、複数設けても良い。
【0025】
なお、図2に示す気密水槽2は円筒状(正確には、両方の開口が閉塞された底付きの円筒状)をしているが、もちろんこれに限られるものではなく、円筒以外の筒状としても良い。例えば、四角筒とした場合には、多数の透水試験装置を積み重ねた状態で測定現場まで車で運搬でき、都合が良い。
【0026】
また、図1に示す水位センサー5はフロート5aを有するタイプのものであるが、もちろんこれに限られるものではなく、他の形式(例えば、超音波式)のものであっても良い。
【符号の説明】
【0027】
1 透水試験装置
2 気密水槽
3 定水位保持手段(定水位保持管)
3a 定水位保持管の一端開口
3b 定水位保持管の他端開口
3c 定水位保持管の他端開口
4 注水管
4a 注水管の一端開口
4b 注水管の他端開口
5 水位センサー
6 蓋部材
6A 第1蓋部材
6B 第2蓋部材
7 挿入部材
G 地盤
H 試験孔
試験孔用水
水位測定用水
20 水位測定用水の水面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に試験孔を掘削すると共に該試験孔に試験孔用水を貯留して地盤の透水性を測定する透水試験装置において、
水位測定用水を気密状態で貯留可能な気密水槽と、
該気密水槽内であって前記水位測定用水の水面よりも下に一端開口が開口されると共に、前記試験孔に他端開口が配置されてなる注水管と、
前記試験孔用水の水位が下がった場合には前記注水管を介して前記気密水槽から前記試験孔に水を補給して前記試験孔用水の水位を略一定に保持する定水位保持手段と、
前記水位測定用水の水位を測定する水位センサーと、
前記気密水槽の上部に開閉可能に配置された蓋部材と、
該蓋部材を開けた状態で前記気密水槽に挿脱可能となるように構成されると共に、該気密水槽に挿入された状態では高さ方向に略等断面積となるように配置される挿入部材と、
を備えたことを特徴とする透水試験装置。
【請求項2】
前記挿入部材は棒状であり、
前記蓋部材は、該挿入部材を前記気密水槽に挿入しない場合に使用されて該気密水槽を気密状態に保持する第1蓋部材と、該挿入部材を前記気密水槽に挿入する場合に使用されて該気密水槽を気密状態に保持する第2蓋部材と、からなり、
前記棒状の挿入部材と前記第2蓋部材とは一体となるように係合されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の透水試験装置。
【請求項3】
地盤に試験孔を掘削すると共に該試験孔に試験孔用水を貯留して地盤の透水性を測定する透水試験装置において、
水位測定用水を気密状態で貯留可能な気密水槽と、
該気密水槽内であって前記水位測定用水の水面よりも上に一端開口が開口されると共に、前記試験孔中の試験孔用水に対峙するように他端開口が配置されてなる定水位保持管と、
前記気密水槽内であって前記水位測定用水の水面よりも下に一端開口が開口されると共に、前記試験孔用水に水没されるように他端開口が配置されてなる注水管と、
前記水位測定用水の水位を測定する水位センサーと、
を備え、
前記定水位保持管の他端開口は、該定位水位保持管の側面に穿設された、
ことを特徴とする透水試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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