説明

透過型エッジリットホログラムの製造方法

【課題】 簡単な工程で労力や時間を削減すると共に、効率よく安定した透過型エッジリットホログラムの製造方法を提供する。
【解決手段】 一方側から順に、反射型エッジリットホログラム原版1’、ホログラム感材2、及び少なくとも反射型エッジリットホログラム原版1’の記録波長周辺の波長の光を吸収する光吸収層Aを配置し、反射型エッジリットホログラム原版1’側から、ホログラム感材2へレーザー光を入射し、反射型エッジリットホログラム原版1’を透過した物体光11と、反射型エッジリットホログラム原版1’により回折され反射型エッジリットホログラム原版1’のレーザー光の入射面で全反射しホログラム感材2へ入射した参照光12が干渉し、ホログラム感材2内に干渉縞を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全反射を利用して製造できるエッジリットホログラムに関し、特に、エッジリットホログラム原版からエッジリットホログラムを製造する透過型エッジリットホログラムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導光板やプリズム内の全反射を利用したエッジリットホログラムが知られている(非特許文献1)。このようなエッジリットホログラムとして、透過型エッジリットホログラムを製造する方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−337587号公報
【特許文献2】特開平6−301322号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】久保田敏弘,「ホログラフィ入門」,(1995.11)朝倉書店,p74,p75
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、透過型ホログラムの製造は、図18に示すように、透過型ホログラム原版101及びホログラム記録材料102を積層し、透過型ホログラム原版101側より一方向からレーザー光111を照射し、透過型ホログラム原版101を透過した0次光112と透過型ホログラム原版101により回折された1次光113をホログラム記録材料102内で干渉させることによって行われる。
【0006】
しかしながら、実際には、レーザー光111を照射した透過型ホログラム原版101は、−1次回折光及び2次回折光等の出にくい反射型ホログラムと比較して、1次光113のみではなく、2次光114又は−1次光115等の余分な光を回折しやすく、この余分な回折光もホログラム記録材料102内で干渉してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡単な工程で労力や時間を削減すると共に、効率よく安定した透過型エッジリットホログラムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の透過型エッジリットホログラム製造方法は、一方側から順に、反射型エッジリットホログラム原版、ホログラム感材、及び少なくとも前記エッジリットホログラム原版の記録波長周辺の波長の光を吸収する光吸収層を配置し、前記反射型エッジリットホログラム原版側から、前記ホログラム感材へレーザー光を入射し、前記反射型エッジリットホログラム原版を透過した物体光と、前記反射型エッジリットホログラム原版により回折され前記反射型エッジリットホログラム原版のレーザー光の入射面で全反射し前記ホログラム感材へ入射した参照光が干渉し、前記ホログラム感材内に干渉縞を形成することを特徴とする。
【0009】
また、前記反射型エッジリットホログラム原版は、少なくとも、第1の波長に対応した第1反射型エッジリットホログラム原版と、第2の波長に対応した第2反射型エッジリットホログラム原版と、を積層して形成することを特徴とする。
【0010】
また、前記反射型エッジリットホログラム原版に対して前記ホログラム感材とは反対側に前記レーザー光を透過し、前記反射型エッジリットホログラム原版の回折光を反射する光学素子を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記光学素子は、反射型ホログラムであることを特徴とする。
【0012】
また、前記光学素子は、誘電体多層膜ミラーであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な工程で労力や時間を削減すると共に、効率よく安定した透過型エッジリットホログラムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】反射型エッジリットホログラム原版を製造するための工程を示す図である。
【図2】ガラスブロックを用いて反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図3】ガラスブロックを用いて反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図4】ガラスブロックを用いて反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図5】ガラスブロックを用いて反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図6】ガラスブロックを用いず反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図7】ガラスブロックを用いず反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図8】ガラスブロックを用いず反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図9】ガラスブロックを用いず反射型エッジリットホログラム原版を再生した状態を示す図である。
【図10】透過型エッジリットホログラムを製造するための工程を示す図である。
【図11】透過型エッジリットホログラムを再生した状態を示す図である。
【図12】透過型エッジリットホログラムを製造するための工程を示す図である。
【図13】透過型エッジリットホログラムを再生した状態を示す図である。
【図14】反射型エッジリットホログラム原版として、異なる波長に対応した各要素原版を積層したものを示す図である。
【図15】図10の実施形態を応用した実施形態を示す図である。
【図16】図15で用いる反射型ホログラムの製造方法を示す図である。
【図17】ガラスブロックを用いて、図15で用いた反射型ホログラム3’を再生した状態を示す図である。
【図18】一般の透過型ホログラムの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照にして本発明に係る透過型エッジリットホログラムの製造方法について説明する。
【0016】
まず、一段階目の反射型エッジリットホログラム原版を製造する方法を説明する。図1は反射型エッジリットホログラム原版を製造するための工程を示す図である。
【0017】
図1に示すように、第1ホログラム記録用感光材料1の一方側に第1ガラスブロックG1を配置し、他方側に第2ガラスブロックG2を配置する。第1ガラスブロックG1及び第2ガラスブロックG2は、直方体又は立方体が好ましい。
【0018】
本実施形態では、第1ガラスブロックG1の第1ホログラム記録用感光材料1側の面を第1面G1aとし、図1を紙面から見て時計回りに第2面G1b、第3面G1c、及び第4面G1dとする。また、第2ガラスブロックG2の第1ホログラム記録用感光材料1側の面を第1面G2aとし、図1を紙面から見て時計回りに第2面G2b、第3面G2c、及び第4面G2dとする。また、第1ホログラム記録用感光材料1の第1ガラスブロックG1側を第1面1aとし、図1を紙面から見て時計回りに第2面1b、第3面1c、及び第4面1dとする。したがって、第1ホログラム記録用感光材料1の第2ガラスブロックG2側は第3面1cとなる。
【0019】
本実施形態では、第1ホログラム記録用感光材料1は、第1面1a側に第1ガラスブロックG1を、第2面1b側に第2ガラスブロックG2を積層し、第1ガラスブロックG1の第1面G1aと第2ガラスブロックG2の第1面G2aとにより挟持された状態とする。第1ガラスブロックG1の屈折率と第2ガラスブロックG2の屈折率は、近い値であればあるほど好ましく、同一であればさらに好ましい。
【0020】
第1ホログラム記録用感光材料1の第1面1aと第1ガラスブロックG1の第1面G1aの界面は、インデックスマッチング液を用いて屈折率変化が少なくなるように構成されている。また、第1ホログラム記録用感光材料1の第2面1bと第2ガラスブロックG2の第1面G2aの界面も、同様に、インデックスマッチング液を用いて屈折率変化が少なくなるように構成されている。
【0021】
この状態で、平行光又は略平行光からなる第1物体光11及び第1物体光11と可干渉な同一光源からの同一波長の平行光又は略平行光からなる第1参照光12を第1ホログラム記録用感光材料1に入射させる。
【0022】
第1物体光11は、第3面G1cから第1ガラスブロックG1に入射し第1面G1aを経て第1ホログラム記録用感光材料1の第1面1aに入射する。また、第1参照光12は、第4面G2dから第2ガラスブロックG2に入射し第1面G2aを経て第1ホログラム記録用感光材料1の第2面1bに入射する。
【0023】
なお、第2ガラスブロックG2の第1ホログラム記録用感光材料1とは反対側の第3面G2cには第1物体光11の0次光を吸収し反射を防止する第1光吸収層A1が配置される。また、第1参照光12が第2ガラスブロックG2に入射する第4面G2dとは反対側の第1ガラスブロックG1の第4面G1dには第1参照光12の0次光を吸収し反射を防止する第2光吸収層A2が配置される。第1光吸収層A1及び第2光吸収層A2を配置することにより第1ガラスブロックG1及び第2ガラスブロックG2の内部での反射を最小限に抑えている。
【0024】
第1物体光11と第1参照光12とは第1ホログラム記録用感光材料1内で干渉する。第1物体光11と第1参照光12とが干渉すると、第1ホログラム記録用感光材料1中に干渉縞が生成する。その後、第1ホログラム記録用感光材料1を後処理して反射型エッジリットホログラム原版1’を製造することができる。
【0025】
図2〜図5は、ガラスブロックを用いて反射型エッジリットホログラムを再生した状態を示す図である。本実施形態では、図2の反射型エッジリットホログラム原版1’を、紙面から見て時計回りに第1面1’a、第2面1’b、第3面1’c、及び第4面1’dとする。なお、反射型エッジリットホログラム原版1’と第3ガラスブロックG3の界面は、インデックスマッチング液を用いて屈折率変化が少なくなるように構成されている。
【0026】
図2に示すように、反射型エッジリットホログラム原版1’を製造した際に、第1ガラスブロックG1を積層した位置に、第3ガラスブロックG3を積層する。そして、図1に示した第1物体光11と同じ方向の第1再生照明光21を第3ガラスブロックG3の第3面G3cから入射する。第1再生照明光21は、第3ガラスブロックG3に入射し、第1面G3aを経て、反射型エッジリットホログラム原版1’に第1面1’aから入射する。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’により、図1に示した第1参照光12と同じ方向に向かう第1再生光22が回折される。そして、第3ガラスブロックG3の第4面G3dから第1再生光22を取り出すことができる。
【0027】
また、図3に示すように、図2と同様に、反射型エッジリットホログラム原版1’ を製造した際に、第1ガラスブロックG1を積層した位置に、第3ガラスブロックG3を積層した後、図1に示した第1参照光12とは反対方向に向かう第1再生照明光21を第4面G3dから入射してもよい。第1再生照明光21は、第3ガラスブロックG3に入射し、第1面G3aを経て、反射型エッジリットホログラム原版1’に第1面1’aから入射する。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’により、図1に示した第1物体光11とは反対方向に向かう第1再生光22が回折される。そして、第3ガラスブロックG3の第3面G3cから第1再生光22を取り出すことができる。
【0028】
さらに、図4に示すように、反射型エッジリットホログラム原版1’を製造した際に、第2ガラスブロックG2を積層した位置に、第3ガラスブロックG3を積層してもよい。そして、図1に示した第1物体光11と反対方向に向かう第1再生照明光21を、第3ガラスブロックG3の第3面G3cから入射する。第1再生照明光21は、第3ガラスブロックG3に入射し、第1面G3aを経て、反射型エッジリットホログラム原版1’に第3面1’cから入射する。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’により、図1に示した第1参照光12と反対方向に向かう第1再生光22が回折される。そして、第3ガラスブロックG3の第4面G3dから第1再生光22を取り出すことができる。
【0029】
また、図5に示すように、図4と同様に、反射型エッジリットホログラム原版1’を製造した際に、第2ガラスブロックG2を積層した位置に、第3ガラスブロックG3を積層した後、図1に示した第1参照光12と同じ方向に向かう第1再生照明光21を、第3ガラスブロックG3の第4面G3dから入射してもよい。第1再生照明光21は、第3ガラスブロックG3に入射し、第1面G3aを経て、反射型エッジリットホログラム原版1’に第3面1’cから入射する。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’により、図1に示した第1物体光11と同じ方向に向かう第1再生光22が回折される。そして、第3ガラスブロックG3の第3面G3cから第1再生光22を取り出すことができる。
【0030】
なお、第1ガラスブロックG1、第2ガラスブロックG2及び第3ガラスブロックG3の屈折率は、近い値であればあるほど好ましく、同一であればさらに好ましい。また、反射型エッジリットホログラム原版1’の製造時に使用した第1ガラスブロックG1又は第2ガラスブロックG2を再生時に使用してもよい。
【0031】
図6〜図9は、ガラスブロックを用いずに反射型エッジリットホログラムを再生した状態を示す図である。
【0032】
図6に示すように、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1面1’aに、図1に示した第1物体光11と同じ方向の第1再生照明光21を入射する。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’により第1参照光12と同じ方向に向かう第1再生光22が回折される。ここで、反射型エッジリットホログラム原版1’の第2面1’b側にプリズムP等を配置する。すると、第1再生光22は、反射型エッジリットホログラム原版1’の第2面1’bを射出した後、プリズムP内に第1面P1から入射し、第2面P2及び第3面P3で全反射しながら導光して、第4面P4から射出する。
【0033】
また、図7に示すように、反射型エッジリットホログラム原版1’の第3面1’cに、図1に示した第1物体光11と反対方向の第1再生照明光21を入射してもよい。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’により第1参照光12と反対方向に向かう第1再生光22が回折される。ここで、反射型エッジリットホログラム原版1’の第2面1’b側にプリズムP等を配置する。すると、第1再生光22は、反射型エッジリットホログラム原版1’の第2面1’bを射出した後、プリズムP内に第1面P1から入射し、第2面P2及び第3面P3で全反射しながら導光して、第4面P4から射出する。
【0034】
さらに、図8に示すように、反射型エッジリットホログラム原版1’の第2面1’bに、図1に示した第1参照光12とは反対方向の第1再生照明光21を入射する。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’内を全反射し導光しながら、ある箇所で第1物体光11とは反対方向に第1再生光22の回折光が射出される。図8のような再生は、液晶表示装置のバックライト等に好適なものである。
【0035】
また、図9に示すように、反射型エッジリットホログラム原版1’の第4面1’dに、図1に示した第1参照光12と同じ方向の第1再生照明光21を入射してもよい。すると、反射型エッジリットホログラム原版1’内を全反射し導光しながら、ある箇所で第1物体光11と同じ方向に第1再生光22の回折光が射出される。図9のような再生は、液晶表示装置のバックライト等に好適なものである。
【0036】
次に、この反射型エッジリットホログラム原版1’を用いて透過型エッジリットホログラムを製造する方法について説明する。図10は、透過型エッジリットホログラムを製造するための工程を示す図である。
【0037】
本実施形態では、図10に示すように、第2ホログラム記録用感光材料2の第1面2a側に反射型エッジリットホログラム原版1’を配置し、第2面2b側に光吸収層Aを配置する。すなわち、一方から順に、反射型エッジリットホログラム原版1’ 、第2ホログラム記録用感光材料2及び光吸収層Aを積層する。なお、反射型エッジリットホログラム原版1’ と第2ホログラム記録用感光材料2の屈折率は、積層した層の界面での反射光が無視できる程度であればよい。さらに、反射型エッジリットホログラム原版1’ と第2ホログラム記録用感光材料2の屈折率は、近ければ近いほどよく、同一の値であることが好ましい。
【0038】
この状態で、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1再生照明光21を反射型エッジリットホログラム原版1’の図1に示した製造時の第1物体光11と同じ波長及び角度で照射する。本実施形態では、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1面1’aに対して垂直に入射する。
【0039】
すると、第1再生照明光21の0次光は、反射型エッジリットホログラム原版1’を透過して第3面1’cから射出し、第2ホログラム記録用感光材料2の第1面2aから第2物体光31として入射する。また、第1再生照明光21が反射型エッジリットホログラム原版1’により回折された第1再生光22は、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1面1’aで全反射して第3面1’cから射出し、第2ホログラム記録用感光材料2の第1面2aから第2参照光32として入射する。
【0040】
そして、第2物体光31と第2参照光32とは第2ホログラム記録用感光材料2内で干渉する。第2物体光31と第2参照光32とが干渉すると、第2ホログラム記録用感光材料2中に干渉縞が生成する。その後、第2ホログラム記録用感光材料2を後処理して透過型エッジリットホログラム2’を製造することができる。
【0041】
図11は、透過型エッジリットホログラムを再生した状態を示す図である。図10に示した方法で製造した透過型エッジリットホログラム2’に、第2ガラスブロックG2を配置した位置に第4ガラスブロックG4を配置し、第2参照光32とは反対方向の第2再生照明光41を第2面2’bから入射する。すると、透過型エッジリットホログラム2’の第1面2’aから第2物体光31とは反対方向に第2再生光42が回折される。
【0042】
次に、反射型エッジリットホログラム原版1’を用いて透過型エッジリットホログラムを製造する他の方法について説明する。図12は、透過型エッジリットホログラムを製造するための工程を示す図である。
【0043】
本実施形態では、図12に示すように、第2ホログラム記録用感光材料2の第2面2b側に反射型エッジリットホログラム原版1’を配置し、第1面2a側に光吸収層Aを配置する。すなわち、一方から順に、反射型エッジリットホログラム原版1’ 、第2ホログラム記録用感光材料2及び光吸収層Aを積層する。なお、反射型エッジリットホログラム原版1’ と第2ホログラム記録用感光材料2の屈折率は、積層した層の界面での反射光が無視できる程度であればよい。さらに、反射型エッジリットホログラム原版1’ と第2ホログラム記録用感光材料2の屈折率は、近ければ近いほどよく、同一の値であることが好ましい。
【0044】
この状態で、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1再生照明光21を反射型エッジリットホログラム原版1’の図1に示した製造時の第1物体光11と同じ波長及び反対方向に照射する。本実施形態では、反射型エッジリットホログラム原版1’の第3面1’cに対して垂直に入射する。
【0045】
すると、第1再生照明光21の0次光は、反射型エッジリットホログラム原版1’を透過して第1面1’aから射出し、第2ホログラム記録用感光材料2の第2面2bから第2物体光31として入射する。また、第1再生照明光21が反射型エッジリットホログラム原版1’により回折された第1再生光22は、反射型エッジリットホログラム原版1’の第3面1’cで全反射して第1面1’aから射出し、第2ホログラム記録用感光材料2の第2面2bから第2参照光32として入射する。
【0046】
そして、第2物体光31と第2参照光32とは第2ホログラム記録用感光材料2内で干渉する。第2物体光31と第2参照光32とが干渉すると、第2ホログラム記録用感光材料2中に干渉縞が生成する。その後、第2ホログラム記録用感光材料2を後処理して透過型エッジリットホログラム2’を製造することができる。
【0047】
図13は、透過型エッジリットホログラムを再生した状態を示す図である。図12に示した方法で製造した透過型エッジリットホログラム2’に、第1ガラスブロックG1を配置した位置に第4ガラスブロックG4を配置し、第2参照光32とは反対方向の第2再生照明光41を第1面2’aから入射する。すると、透過型エッジリットホログラム2’の第2面2’bから第2物体光31とは反対方向に第2再生光42が回折される。
【0048】
なお、第1ガラスブロックG1、第2ガラスブロックG2、及び第4ガラスブロックG4の屈折率は、近い値であればあるほど好ましく、同一であればさらに好ましい。また、反射型エッジリットホログラム原版1’の製造時に使用した第1ガラスブロックG1又は第2ガラスブロックG2を透過型エッジリットホログラム2’の再生時に使用してもよい。
【0049】
また、本実施形態の物体光、参照光、再生照明光及び再生光は、532nmのDPSSレーザー等を用いると好ましいが、その他のレーザーでもよい。また、ホログラム記録用感光材料としては、特許文献2に記載されたものを用いると好ましいが、その他の材料でもよい。さらに、物体光又は参照光と再生照明光は、ガラスブロックやホログラム記録用感光材料の屈折率を変更することにより、波長や角度を変更することが可能である。
【0050】
ここで、反射型エッジリットホログラム原版として、異なる波長に対応した各要素原版を積層した場合について説明する。一般に、透過型ホログラムは色分散が大きいため、複数波長にて記録された透過型ホログラムを同時に再生する場合、それぞれの波長にて想定していない回折が引き起こされる場合がある。したがって、透過型ホログラムの製造は複数波長を同時に用いることが困難であった。本発明にかかるホログラム原版は、反射型エッジリットホログラムを用いるので、再生時に複数波長の光を用いても不要な回折が生じることがない。また、複数波長に対応して反射型エッジリットホログラム原版を複数積層することで、各波長での角度の自由度を持たせることも可能となる。
【0051】
図14は、反射型エッジリットホログラム原版として、異なる波長に対応した各要素原版を積層したものを示す図である。本実施形態では、赤色の波長に対応する赤色反射型エッジリットホログラム原版1’R、緑色の波長に対応する緑色反射型エッジリットホログラム原版1’G及び青色の波長に対応する青色反射型エッジリットホログラム原版1’Bを用いてカラーの透過型ホログラムを製造する。
【0052】
図14に示すように、第2ホログラム記録用感光材料2の一方側に赤色反射型エッジリットホログラム原版1’R、緑色反射型エッジリットホログラム原版1’G及び青色反射型エッジリットホログラム原版1’Bを配置し、他方側に光吸収層Aを配置する。すなわち、一方から順に、赤色反射型エッジリットホログラム原版1’R、緑色反射型エッジリットホログラム原版1’G及び青色反射型エッジリットホログラム原版1’B、第2ホログラム記録用感光材料2及び光吸収層Aを積層する。なお、赤色反射型エッジリットホログラム原版1’R、緑色反射型エッジリットホログラム原版1’G及び青色反射型エッジリットホログラム原版1’Bの順はこれに限らず、変更してもよい。
【0053】
この状態で、第1再生照明光21を赤色反射型エッジリットホログラム原版1’R、緑色反射型エッジリットホログラム原版1’G及び青色反射型エッジリットホログラム原版1’Bの光吸収層Aとは反対側から照射する。本実施形態では、赤色反射型エッジリットホログラム原版1’Rの第1面1’Raに対して垂直に入射する。
【0054】
すると、第1再生照明光21の0次光は、反射型エッジリットホログラム原版1’を透過し、第2ホログラム記録用感光材料2に第2物体光31として入射する。また、第1再生照明光21が赤色反射型エッジリットホログラム原版1’Rにより回折された赤色第1再生光22Rは、第1面1’Raで全反射し、第2ホログラム記録用感光材料2に赤色第2参照光32Rとして入射する。
【0055】
同様に、第1再生照明光21が緑色反射型エッジリットホログラム原版1’Gにより回折された緑色第1再生光22Gは、第1面1’Raで全反射し、第2ホログラム記録用感光材料2に緑色第2参照光32Gとして入射し、第1再生照明光21が青色反射型エッジリットホログラム原版1’Bにより回折された青色第1再生光22Bは、第1面1’Raで全反射し、第2ホログラム記録用感光材料2に青色第2参照光32Bとして入射する。
【0056】
そして、第2物体光31と赤色第2参照光32R、緑色第2参照光32G及び青色第2参照光32Bとは第2ホログラム記録用感光材料2内で干渉する。第2物体光31と赤色第2参照光32R、緑色第2参照光32G及び青色第2参照光32Bとが干渉すると、第2ホログラム記録用感光材料2中に各干渉縞が生成する。その後、第2ホログラム記録用感光材料2を後処理してカラーの透過型エッジリットホログラム2’を製造することができる。
【0057】
なお、各要素原版の入出射角は異なってもよい。原版として反射型ホログラムを用いるので、複数波長を用いても各要素原版における入出射光のクロストークは生じない。
【0058】
図15は、図10の実施形態を応用した実施形態を示す図である。
【0059】
図15に示す実施形態では、第2ホログラム記録用感光材料2の第1面2a側に反射型エッジリットホログラム原版1’を配置し、第2面2b側に光吸収層Aを配置し、反射型エッジリットホログラム原版1’に対して第2ホログラム記録用感光材料2とは反対側に反射型ホログラム3’を配置する。
【0060】
すなわち、一方から順に、反射型ホログラム3’、反射型エッジリットホログラム原版1’、第2ホログラム記録用感光材料2及び光吸収層Aを積層する。なお、反射型ホログラム3’、反射型エッジリットホログラム原版1’ 及び第2ホログラム記録用感光材料2の屈折率は、積層した層の界面での反射光が無視できる程度であればよい。さらに、反射型ホログラム3’、反射型エッジリットホログラム原版1’、及び第2ホログラム記録用感光材料2の屈折率は、近ければ近いほどよく、同一の値であることが好ましい。
【0061】
この状態で、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1再生照明光51を反射型ホログラム3’を透過して、反射型エッジリットホログラム原版1’の図1に示した製造時の第1物体光11と同じ波長及び角度で照射する。本実施形態では、反射型エッジリットホログラム原版1’の第1面1’aに対して垂直に入射する。
【0062】
すると、第1再生照明光51の0次光は、反射型エッジリットホログラム原版1’を透過して第3面1’cから射出し、第2ホログラム記録用感光材料2の第1面2aから第2物体光61として入射する。また、第1再生照明光51が反射型エッジリットホログラム原版1’により回折された第1再生光52は、反射型ホログラム3’で反射して反射型エッジリットホログラム原版1’の第3面1’cから射出し、第2ホログラム記録用感光材料2の第1面2aから第2参照光62として入射する。
【0063】
そして、第2物体光61と第2参照光62とは第2ホログラム記録用感光材料2内で干渉する。第2物体光61と第2参照光62とが干渉すると、第2ホログラム記録用感光材料2中に干渉縞が生成する。その後、第2ホログラム記録用感光材料2を後処理して透過型エッジリットホログラム2’を製造することができる。
【0064】
このように、反射型ホログラム3’を用いることで、物体光と参照光の干渉性を高く保持することが可能となり、透過型エッジリットホログラム2’の干渉縞のコントラストを明確にすることが可能となる。
【0065】
ここで、反射型ホログラム3’の製造方法について説明する。
【0066】
図16は、図15で用いる反射型ホログラム3’の製造方法を示す図である。
【0067】
図16に示すように、ホログラム記録用感光材料3の一方側に第5ガラスブロックG5を配置し、他方側に第6ガラスブロックG6を配置する。第5ガラスブロックG5及び第6ガラスブロックG6は、直方体又は立方体が好ましい。
【0068】
本実施形態では、第5ガラスブロックG5のホログラム記録用感光材料3側の面を第1面G5aとし、図16の紙面を正面から見て時計回りに第2面G5b、第3面G5c、及び第4面G5dとする。また、第6ガラスブロックG6のホログラム記録用感光材料3側の面を第1面G6aとし、図16の紙面を正面から見て時計回りに第2面G6b、第3面G6c、及び第4面G6dとする。また、ホログラム記録用感光材料3の第5ガラスブロックG5側を第1面3aとし、図16を紙面から見て時計回りに第2面3b、第3面3c、及び第4面3dとする。したがって、ホログラム記録用感光材料3の第6ガラスブロックG6側は第3面3cとなる。
【0069】
本実施形態では、ホログラム記録用感光材料3は、第1面3a側に第5ガラスブロックG5を、第3面3c側に第6ガラスブロックG6を積層し、第5ガラスブロックG5の第1面G5aと第6ガラスブロックG6の第1面G6aとにより挟持された状態とする。第5ガラスブロックG5の屈折率と第6ガラスブロックG6の屈折率は、近い値であればあるほど好ましく、同一であればさらに好ましい。
【0070】
ホログラム記録用感光材料3の第1面3aと第5ガラスブロックG5の第1面G5aの界面は、インデックスマッチング液を用いて屈折率変化が少なくなるように構成されている。また、ホログラム記録用感光材料3の第3面3cと第6ガラスブロックG6の第1面G6aの界面も、同様に、インデックスマッチング液を用いて屈折率変化が少なくなるように構成されている。
【0071】
この状態で、平行光又は略平行光からなる第1物体光71及び第1物体光71と可干渉な同一光源からの同一波長の平行光又は略平行光からなる第1参照光72をホログラム記録用感光材料3に入射させる。
【0072】
第1物体光71は、第5ガラスブロックG5に入射し第1面G5aを経てホログラム記録用感光材料3の第1面3aに入射する。また、第1参照光72は、第6ガラスブロックG6に入射し第1面G6aを経てホログラム記録用感光材料3の第3面3cに入射する。
【0073】
なお、第5ガラスブロックG5の第4面G5d及び第6ガラスブロックG6の第2面G6bには第1物体光71の0次光を吸収し反射を防止する光吸収層Aが配置される。光吸収層Aを配置することにより第5ガラスブロックG5及び第6ガラスブロックG6の内部での反射を最小限に抑えている。
【0074】
第1物体光71と第1参照光72とはホログラム記録用感光材料3内で干渉する。第1物体光71と第1参照光72とが干渉すると、ホログラム記録用感光材料3中に干渉縞が生成する。その後、ホログラム記録用感光材料3を後処理して反射型ホログラム3’を製造することができる。
【0075】
図17は、ガラスブロックを用いて、図15で用いた反射型ホログラム3’を再生した状態を示す図である。本実施形態では、図17の反射型ホログラム3’を、紙面の正面から見て時計回りに第1面3’a、第2面3’b、第3面3’c、及び第4面3’dとする。なお、反射型ホログラム3’と第7ガラスブロックG7の界面は、インデックスマッチング液を用いて屈折率変化が少なくなるように構成されている。
【0076】
図17に示すように、反射型ホログラム3’を製造した際に、第5ガラスブロックG5を積層した位置に、第7ガラスブロックG7を積層する。そして、図16に示した第1物体光71と同じ方向の第1再生照明光81を第7ガラスブロックG7の第2面G7bから入射する。第1再生照明光81は、第7ガラスブロックG7に入射し、第1面G7aを経て、反射型ホログラム3’に第1面3’aから入射する。すると、反射型ホログラム3’により、図16に示した第1参照光72と同じ方向に向かう第1再生光82が回折される。そして、第7ガラスブロックG7の第4面G7dから第1再生光82を取り出すことができる。
【0077】
なお、反射型ホログラム3’に代えて、誘電体多層膜ミラーを使用してもよい。誘電体多層膜ミラーは、異なる屈折率を有する複数の誘電体材料による光学薄膜の積層体である。図15に示す状態で、反射型ホログラム3’に代えて誘電体多層膜ミラーを設置した場合、第1再生照明光51は透過するが、第1再生光52は反射するように設計すればよい。
【0078】
このように、本実施形態の透過型エッジリットホログラム製造方法によれば、一方側から順に、反射型エッジリットホログラム原版1’、第2ホログラム記録用感光材料2、及び少なくとも反射型エッジリットホログラム原版1’の記録波長周辺の波長の光を吸収する光吸収層Aを配置し、反射型エッジリットホログラム原版1’側から、第2ホログラム記録用感光材料2へレーザー光を入射し、反射型エッジリットホログラム原版1’を透過した物体光31と、反射型エッジリットホログラム原版1’により回折され反射型エッジリットホログラム原版1’のレーザー光の入射面で全反射し第2ホログラム記録用感光材料2へ入射した参照光32が干渉し、ホログラム感材2内に干渉縞を形成するので、簡単な工程で労力や時間を削減すると共に、効率よく安定した透過型エッジリットホログラムの製造方法を提供することができる。
【0079】
また、反射型エッジリットホログラム原版1’は、少なくとも、第1の波長に対応した第1反射型エッジリットホログラム原版1’Rと、第2の波長に対応した第2反射型エッジリットホログラム原版1’Gと、を積層して形成するので、透過型エッジリットホログラム2’に自由度を持たせることができる。
【0080】
さらに、反射型エッジリットホログラム原版1’に対してホログラム感材2とは反対側にレーザー光を透過し、反射型エッジリットホログラム原版1’の回折光を反射する反射型ホログラム3’又は誘電体多層膜ミラー等の光学素子を有するので、物体光と参照光の干渉性を高く保持することが可能となり、透過型エッジリットホログラム2’の干渉縞のコントラストを明確にすることが可能となる。
【0081】
以上、本発明のエッジリットホログラムの製造方法を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施形態に限定されず種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1…第1ホログラム記録用感光材料
1’…反射型エッジリットホログラム原版
2…第2ホログラム記録用感光材料(ホログラム感材)
2’…透過型エッジリットホログラム
3…ホログラム記録用感光材料
3’…反射型ホログラム
11…第1物体光
12…第1参照光
21…第1再生照明光
22…第1再生光
31…第2物体光
32…第2参照光
41…第2再生照明光
42…第2再生光
51…第1再生照明光
52…第1再生光
61…第2物体光
62…第2参照光
71…第1物体光
72…第1参照光
81…第1再生照明光
82…第1再生光
A…光吸収層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側から順に、反射型エッジリットホログラム原版、ホログラム感材、及び少なくとも前記反射型エッジリットホログラム原版の記録波長の光を吸収する光吸収層を配置し、
前記反射型エッジリットホログラム原版側から、前記ホログラム感材へレーザー光を入射し、
前記反射型エッジリットホログラム原版を透過した物体光と、前記反射型エッジリットホログラム原版により回折され前記反射型エッジリットホログラム原版の前記レーザー光の入射面で全反射し前記ホログラム感材へ入射した参照光が干渉し、前記ホログラム感材内に干渉縞を形成する
ことを特徴とする透過型エッジリットホログラム製造方法。
【請求項2】
前記反射型エッジリットホログラム原版は、少なくとも、
第1の波長に対応した第1反射型エッジリットホログラム原版と、
第2の波長に対応した第2反射型エッジリットホログラム原版と、
を積層して形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の透過型エッジリットホログラム製造方法。
【請求項3】
前記反射型エッジリットホログラム原版に対して前記ホログラム感材とは反対側に前記レーザー光を透過し、前記反射型エッジリットホログラム原版の回折光を反射する光学素子を有する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の透過型エッジリットホログラム製造方法。
【請求項4】
前記光学素子は、反射型ホログラムである
ことを特徴とする請求項3に記載の透過型エッジリットホログラム製造方法。
【請求項5】
前記光学素子は、誘電体多層膜ミラーである
ことを特徴とする請求項3に記載の透過型エッジリットホログラム製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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