透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法
【課題】意匠性、概観およびコントラストを向上させることができる透過型スクリーンを提供する。
【解決手段】映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーン10であって、フレネルレンズ部22を有するフレネルレンズシート20と、フレネルレンズシート20の映像光出射側に配置された光制御シート45であって、光制御シート45の映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部47と、単位光透過部47と交互に配置され、光制御シート45の映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部48とを有する光制御シート45と、光制御シート45の映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層55と、光拡散層55の映像光出射側に配置された着色層60とを備える積層体30を備え、フレネルレンズシート20および積層体30が曲面をなすように曲がっている。
【解決手段】映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーン10であって、フレネルレンズ部22を有するフレネルレンズシート20と、フレネルレンズシート20の映像光出射側に配置された光制御シート45であって、光制御シート45の映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部47と、単位光透過部47と交互に配置され、光制御シート45の映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部48とを有する光制御シート45と、光制御シート45の映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層55と、光拡散層55の映像光出射側に配置された着色層60とを備える積層体30を備え、フレネルレンズシート20および積層体30が曲面をなすように曲がっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像光をスクリーンの背面型から投射して表示する背面投射型表示装置においては、投射された映像光を透過して映像を表示させる透過型スクリーンが用いられている。このような透過型スクリーンとしては、様々な構造のものが提案されており、例えば、視野角を広げるために映像光を拡散させるための光拡散粒子を含む拡散層を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、例えば自動車等の分野においては、意匠性が非常に重要視される。現在、このような分野に適用される背面投射型表示装置には、単に映像を表示する機能が期待されているだけでなく、意匠面におけるシステム全体との調和も要求されている。
【0004】
そして、このような意匠性の観点から、曲面形状を有する透過型スクリーンの開発が望まれている。しかしながら、光拡散粒子を含む光拡散層を有する透過型スクリーンにおいて、光拡散層を含む積層体を加熱して、曲面状に曲げると、加熱により光拡散層中に埋め込まれている光拡散粒子が光拡散層の表面に隆起してしまい、光拡散層の表面に微細な凹凸が形成されてしまう。このような微細な凹凸が形成されると、表面にハードコート層のような表面層を形成した場合であっても、この凹凸が視認され、透過型スクリーンの外観が悪化するおそれがある。特に、光沢感のある外観を求められる場合には、この外観悪化は非常に問題となる。加えて、透過型スクリーンにおいては、更なるコントラストの向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−37496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、意匠性、外観、およびコントラストを向上させることができる透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、およびこのような透過型スクリーンを製造することができる透過型スクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、前記フレネルレンズシートおよび積層体が曲面をなすように曲がっていることを特徴とする、透過型スクリーンが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、上記透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記スクリーンに映像光を投射する映像光源とを備えることを特徴とする、背面投射型表示装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、前記積層体を加熱することにより軟化させ、軟化した前記積層体を曲面成形する工程と、曲面成形された前記積層体を、フレネルレンズ部を有しかつ曲面成形されたフレネルレンズシートの映像光出射側に配置する工程とを備える透過型スクリーンの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、前記積層体と、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートとを、前記積層体が前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置されるように積層する工程と、積層された前記フレネルレンズシートと前記積層体とを加熱することにより軟化させ、軟化した前記フレネルレンズシートおよび前記積層体を曲面成形する工程とを備える透過型スクリーンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一の態様の透過型スクリーンおよび他の態様の背面投射型表示装置によれば、フレネルレンズシートおよび積層体が曲面形状をなすように曲がっているので、意匠性を向上させることができる。また、光拡散層の映像光出射側に着色層を形成しているので、光拡散粒子が表面に隆起して、光拡散層の表面に微細な凹凸が形成された場合であっても、この微細な凹凸を着色層により吸収することができる。これにより、外観を向上させることができる。さらに、この着色層により外光を吸収させることができるので、黒い部分の輝度(黒輝度)を低下させることでき、これによりコントラストを向上させることができる。
【0012】
本発明の他の態様の透過型スクリーンの製造方法によれば、積層体を曲面成形しているので、意匠性を向上させた透過型スクリーンを得ることができる。また、拡散層の映像光出射側に着色層を形成しているので、光拡散粒子が表面に隆起して、光拡散層の表面に微細な凹凸が形成された場合であっても、この微細な凹凸を着色層により吸収することができる。これにより、外観を向上させた透過型スクリーンを得ることができる。また、この着色層により外光を吸収させることができるので、黒輝度を低下させることでき、これによりコントラストを向上させた透過型スクリーンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図である。
【図3】図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。
【図4】図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図である。
【図5】図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図である。
【図7】図2に示される光制御シートの概略斜視図である。
【図8】図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図12】第1の実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図14】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図15】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
<透過型スクリーン>
先ず、本発明の第1の実施形態に係る透過型スクリーンについて、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図であり、図2は本実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図であり、図3は図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。図4は図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図であり、図5は図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。図6は本実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図であり、図7は図2に示される光制御シートの概略斜視図であり、図8は図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【0015】
図1および図2に示される透過型スクリーン10は、フレネルレンズシート20と、フレネルレンズシート20の映像光出射側に配置された積層体30とを備えている。
【0016】
フレネルレンズシート20および積層体30は、曲面をなすように曲がったものである。具体的には、フレネルレンズシート20および積層体30は、二次元曲面または三次元曲面をなすように曲がっている。好ましくは、フレネルレンズシート20および積層体30は、図1および図2に示されるように三次元曲面をなすように曲がっている。ここで、本明細書において、「二次元曲面」とは単一の軸を中心として二次元的に曲がったもの、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で二次元的に曲がったものを意味し、また「三次元曲面」とは互い対して傾斜した複数の軸をそれぞれ中心として、部分的または全体的に曲がっていることを意味するものとする。フレネルレンズシート20および積層体30は、曲率半径が2000mm以下、好ましくは曲率半径が250mm以上1500mm以下となる部分を有することができる。
【0017】
本実施形態においては、図1に示すように、フレネルレンズシート20および積層体30は、概ね、一方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第1の軸A1を中心とした方向d1に曲がるとともに、他方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第2の軸A2を中心とした方向d2にも曲がっている。この結果、透過型スクリーン10は観察者側へ凸となるように曲がっており、透過型スクリーン10の平面形状をなす矩形状の一対の対角線が交わる中央位置Pにおいて、透過型スクリーン10の映像光出射面10a(表示面)は観察者側に最も突出している。なお、図1に示される透過型スクリーン10は、観察者側へ凸となるように曲がったものであるが、これに限らず、透過型スクリーンは、観察者側へ凹、すなわち背面側へ凸となるように曲がっていてもよく、また観察者側へ凸となるように曲がった部分と、背面側へ凸となるように曲がった部分とを組み合わせた形状となっていてもよい。
【0018】
フレネルレンズシート
図2および図3に示されるフレネルレンズシート20は、基部21と、基部21の表面に形成されたフレネルレンズ部22を備えている。
【0019】
フレネルレンズ部22は、映像光源(図示せず)から発散光束として透過型スクリーン10に投射される映像光の進行方向を偏向させる機能を有している。具体的には、フレネルレンズ部22は、発散光束として入射した映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば正面方向Nへ進む平行光束に変換する。このようにフレネルレンズ部22を用いて映像光をいったん平行光化させておくことにより、観察者に観察される映像、とりわけ、観察者によって斜め方向から観察される映像の明るさの面内ばらつきを効果的に緩和させることができる。
【0020】
本実施形態では、図4および図5に示すように、フレネルレンズ部22は、いわゆるサーキュラーフレネルレンズとして構成されている。ただし、これに限られず、いわゆるリニアフレネルレンズとして構成されていてもよい。リニアフレネルレンズでは、複数の単位レンズの各々が直線状に延び、且つ、複数の単位レンズがその長手方向と交差する配列方向に配列されるようになる。
【0021】
フレネルレンズ部22は、図5に示されるようにフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部形成面20aの中心O1に対して偏心した位置に光学中心O2を有することが好ましい。具体的には、フレネルレンズ部22は、光学中心O2を中心とする同心円弧状または同心円状の複数の単位プリズム23から構成されている。
【0022】
上記「フレネルレンズ部形成面」とは、フレネルレンズシートにおけるフレネルレンズ部が形成されている面であり、フレネルレンズシートが屈折型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光出射側に位置し、フレネルレンズシートが後述する全反射型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光入射側に位置している。
【0023】
図5に示されるフレネルレンズ部22の光学中心O2は、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在する。例えば、映像光源(図示せず)が透過型スクリーン10よりも下方に配置される場合には、光学中心O2は、フレネルレンズシート20外であってフレネルレンズ部形成面20aの中心O1に対して透過型スクリーン10の縦方向下側の位置に存在する。なお、上記では、光学中心O2は、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在しているが、フレネルレンズシート20内に存在していてもよい。
【0024】
ここで、本明細書においては、透過型スクリーン10の「縦方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の上下方向を意味するものとし、また透過型スクリーン10の「横方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の左右方向を意味するものとする。
【0025】
このように光学中心O2が偏心したフレネルレンズ部22を形成することにより、フレネルレンズシート20と映像光源との距離を短くした場合であっても、映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば図1に示される正面方向Nへ進む平行光束に変換することができる。本実施形態では、光学中心O2がフレネルレンズ部形成面20aの中心O1に対して偏心したフレネルレンズ部22を用いているが、光学中心がフレネルレンズ部形成面の中心に対して偏心していないフレネルレンズ部を用いることも可能である。
【0026】
また、本実施形態におけるフレネルレンズシート20は、いわゆる屈折型のフレネルレンズであるが、これに限られず、全反射型のフレネルレンズシートを用いることも可能である。
【0027】
図6に示されるように、全反射型のフレネルレンズシート24は、入射する映像光を屈折させる屈折面25aと、屈折面25aで屈折された映像光の少なくとも一部を全反射させて、映像光出射側に向ける全反射面25bとを有する複数の単位プリズム25を備えたものである。全反射型のフレネルレンズシート24を用いた場合には、さらに映像光源とフレネルレンズシート24との距離を縮めることができるので、より薄型の背面投射型表示装置を提供することができる。
【0028】
また、図2〜図4に示されるようにフレネルレンズシート20は、基部21よりも映像光入射側にフレネルレンズシート20を補強するための入射側透明基材26を有していてもよい。入射側透明基材26と基部21は、粘着剤や紫外線硬化型接着剤のような接着剤等からなる接合層(図示せず)を介して互いに接合されている。
【0029】
入射側透明基材26は、フレネルレンズシート20と同様に、曲面をなすように曲がったものである。入射側透明基材26としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0030】
入射側透明基材26の厚みは、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.5〜2.0mmであることがより好ましい。入射側透明基材26の厚みが1.0mm未満であると、補強部材としての機能を十分に果たすことができないおそれがあるからであり、また4.0mmを超えると、次に説明する理由から二重像が観察者に認識されやすくなるからである。すなわち、フレネルレンズシートの厚みが厚い場合には、フレネルレンズシートの厚みが薄い場合に比べてフレネルレンズシートから出射される映像光と迷光との距離が大きくなり、この距離が大きくなると、観察者に二重像として認識されやすくなる。したがって、フレネルレンズシート20が同じ厚さであったとしても、入射側透明基材26の厚さが厚い場合には、観察者に二重像が認識されやすくなる。
【0031】
積層体
積層体30は、図2および図3に示されるように映像光入射側から映像光出射側に向けて、順に、主に、透明基材35、接合層40、光制御シート45、接合層50、光拡散層55、着色層60、および表面層65を有している。なお、本発明においては、積層体30は光制御シート45、光拡散層55、および着色層60を有していればよく、透明基材35、接合層40、50および表面層65を有していなくともよい。
【0032】
透明基材
積層体30の透明基材35は、透過型スクリーン10の剛性を高めるものである。ここで、入射側透明基材26の厚みを厚くして、透過型スクリーン10の剛性を高めることも可能であるが、入射側透明基材26の厚みを厚くした場合には観察者に二重像が認識されやすくなる。したがって、入射側透明基材26の厚みを厚くして透過型スクリーン10の剛性を高めるよりも透明基材35を配置して透過型スクリーン10の剛性を高めた方が、観察者に二重像が認識されにくくなるので、効果的である。また、透明基材35を配置することにより透過型スクリーン10の剛性を高めることができるので、入射側透明基材26の厚みをより薄くすることができ、二重像がさらに認識されにくくなる。
【0033】
透明基材35の厚みは、1.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。透明基材35の厚みが1.5mm未満であると、透過型スクリーン10の剛性を高めるという機能を十分に果たすことができないおそれがあるからである。
【0034】
透明基材35としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0035】
光制御シート
光制御シート45は、透明基材35の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45に入射した映像光を透過するものであるとともに二重像の原因となる迷光を吸収するためのものである。
【0036】
図3、図7および図8に示されるように光制御シート45は、基部46と、基材部46上に形成された入射した映像光を透過する複数の単位光透過部47と、外光を吸収する複数の単位光吸収部48とを備えている。
【0037】
基部46は、図8に示されるように光制御シート45の映像光入射面45aを構成するものである。単位光透過部47および単位光吸収部48は、図8に示されるようにそれぞれ光制御シート45の映像光出射面45bを構成するものであり、映像光出射面45bに沿って配置されている。また、単位光透過部47および単位光吸収部48は、図7に示されるように透過型スクリーン10の横方向に延在しており、透過型スクリーン10の縦方向に交互に配置されている。
【0038】
また、光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係においては、単位光透過部47および単位光吸収部48は、フレネルレンズ部形成面20aの中心O1とフレネルレンズ部22の光学中心O2とを結ぶ方向と略平行でありかつ映像光出射面45aに沿った第1の方向に交互に並べて配置されている。この場合、単位光透過部47および単位光吸収部48は、第1の方向と略直交しかつ映像光出射面45aに沿った第2の方向に延在している。ここで、図1等においては、「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」が一致しているが、「第1の方向」と「第2の方向」は光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係を表すためのものであり、必ずしも「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」は一致していなくともよい。
【0039】
基部46は、単位光透過部47や単位光吸収部48を形成するためのベースとなる層である。
【0040】
基部46としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0041】
単位光透過部47は、光制御シート45の厚さ方向の断面形状が略台形となっているものが好ましい。この台形は、映像光出射面45bが上底、映像光入射側が上底より長さが長い下底とするものである。
【0042】
単位光透過部47は、映像光を透過する光透過性樹脂で構成されている。この光透過性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート等の電離放射線硬化型樹脂の硬化物が挙げられる。
【0043】
単位光吸収部48は、単位光吸収部48が隣り合う単位光透過部47により形成される、断面形状がV字状の溝または断面形状が台形状の溝に形成されていることが好ましい。すなわち、断面形状がV字状の溝の場合には、単位光吸収部48は光制御シート45の厚さ方向の断面形状が映像光出射面45bを底辺とする略三角形となっており、断面形状が台形状の溝の場合には、光制御シート45の映像光入射側を上底としかつ光制御シート45の映像光出射面45bを下底とするものである。ここで、「下底」の長さは「上底」の長さより長いものとする。
【0044】
単位光吸収部48は、透明樹脂に光吸収材等を含有させたものから構成することが可能である。透明樹脂は、単位光透過部47を構成する透明樹脂の屈折率より小さい屈折率を有する材料により構成されていることが好ましい。また、透明樹脂として用いられるものも特に限定されることはないが、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系等のアクリレート系樹脂の電離放射線硬化型樹脂の硬化物が挙げられる。
【0045】
光吸収材は、可視光である外光や迷光を吸収する機能を有すればよく、光吸収材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等、顔料または染料、顔料または染料で着色された樹脂粒子等が挙げられる。
【0046】
光吸収材が顔料または染料で着色された樹脂粒子である場合、樹脂粒子としては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ等のプラスチックビーズが挙げられる、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。
【0047】
光拡散層
光拡散層55は、光制御シート45の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45から出射した映像光を等方的に拡散させるためのものである。光拡散層55の表面は、後述する光拡散粒子の隆起により微細な凹凸を有している。
【0048】
光拡散層55の厚みは、0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることがより好ましい。光拡散層55の厚みが0.05mm未満であると、光拡散効果が十分に得られないおそれがあるからであり、また2.0mmを超えると透過型スクリーン10に映し出される映像がぼやけてしまい、解像性に劣る映像となってしまうおそれがあるからである。
【0049】
光拡散層55は、透明樹脂に光拡散粒子を含有させたものから構成することが可能である。光拡散層55は、例えば、透明樹脂と光拡散粒子との間の屈折率差に起因して、または、光拡散粒子自体が有する反射性に起因して、映像光を等方的に拡散する機能を発現する。光拡散層55の光拡散能によって、光制御シートを透過した映像光が拡散され、観察者は、光拡散層55の光拡散能に応じた視野角の範囲内で映像を観察することができる。
【0050】
透明樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0051】
光拡散粒子としては、プラスチックビーズ等の有機フィラーが好適であり、特に透明度が高いものが好ましい。プラスチックビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩化ビニルビーズ等が挙げられ、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。また、プラスチックビーズのみならず、シリコンビーズ等も使用することも可能である。さらに、プラスチックビーズとシリコンビーズ等を併用することも可能である。
【0052】
着色層
着色層60は、光拡散層55の映像光出射側(観察者側)に配置されている。着色層60は、観察者側から透過型スクリーン10に入射する外光を吸収するとともに光拡散層55の表面に形成される凹凸形状を有効に吸収するためのものである。
【0053】
着色層60の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下であることが特に好ましい。この範囲の厚みが好ましいとしたのは、着色層60の厚みが10μm未満であると、着色層60により外光が有効に吸収できなくなり、また光拡散層55の表面に形成される凹凸を有効に吸収できなくなるおそれがあるからである。また着色層60の厚みが200μmを超えると、映像光の透過率が低下するおそれがあるからである。この場合、所定の明るさを維持しようとすると、映像光源の出力を高める必要があり、消費電力が上昇するおそれがある。
【0054】
着色層60は、透明樹脂に光吸収剤や着色剤を含有させたものから構成することが可能である。透明樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、光吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等が挙げられ、着色剤としては、例えば、グレー等の染料や顔料等が挙げられる。
【0055】
着色層60は、光拡散粒子を含んでいないものであるが、着色層は光拡散粒子を含んでいてもよい。着色層が光拡散粒子を含んでいる場合には、光拡散粒子は0重量%を超え25重量%以下の割合で着色層に含まれていることが好ましい。光拡散粒子の割合をこの範囲とすることが好ましいとしたのは、25重量%を超えると、含有する光拡散粒子の隆起によって光沢感が失われるおそれがあるからである。
【0056】
表面層
表面層65は、着色層60より観察面側に設けられる層であり、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する層である。本実施形態では、表面層65は、ハードコート機能を有する層(ハードコート層)となっている。ハードコート層は、透明性を有し、JISK5600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度を示すものである。
【0057】
<透過型スクリーンの製造方法>
このような透過型スクリーン10は、例えば、以下のような製造方法により作製することが可能である。図9(a)〜図11は本実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を示した図である。
【0058】
まず、フレネルレンズシート20を用意する。フレネルレンズシート20は、例えば以下のようにして得ることができる。すなわち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基部21と金型との間に紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を充填し、電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂を硬化させることによってフレネルレンズ部22を形成する。これにより、フレネルレンズシート20が作製される。そして、基部21の映像光入射面に入射側透明基材26を粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層(図示せず)を用いて接合し、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を形成する(図9(a))。
【0059】
フレネルレンズシート20を作製した後、フレネルレンズシート20を加熱して、軟化させ、例えばフレネルレンズ部22側が凸となるように曲面成形する(図9(b))。具体的には、フレネルレンズシート20を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度にフレネルレンズシート20を加熱して、軟化させる。より具体的には、60〜250℃、好ましくは70〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化したフレネルレンズシート20を、所定の曲面形状を有した型面(図示せず)に、例えば押圧部材を用いて、フレネルレンズシート20を押し付け、あるいは、気体圧力を用いた加圧により、非接触で、フレネルレンズシート20を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、フレネルレンズシート20と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、フレネルレンズシート20を曲面成形できる。なお、上記では、フレネルレンズ部22側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形しているが、これに限らず、フレネルレンズ部22側が凹となるように、すなわち入射側透明基材26側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよく、またフレネルレンズ部22側が凸となる部分とフレネルレンズ部22側が凹となる部分とを組み合わせた形状となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよい。
【0060】
一方で、透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、および着色層60を用意する。光制御シート45は、例えば、以下の方法によって作製することができる。すなわち、単位光透過部47の形に対応した形の複数の溝を有する金型(図示せず)にシート状の基部46を送り込み、金型と基部46との間に電離放射線型樹脂等を含む光透過部用組成物を供給し、基部46と金型との間に光透過部用組成物を充填する。その後、電離放射線を照射し、光透過部用組成物を硬化させて、基部46上に単位光透過部47を形成する。
【0061】
単位光透過部47を形成した後、単位光透過部47を金型から引き抜き、そして、複数の単位光透過部47間の溝に、光吸収材および電離放射線硬化型樹脂を含む光吸収部用組成物を塗布し、ドクターブレード等によって充填する。その後、電離放射線により光吸収部用組成物を硬化させて、単位光透過部47間に単位光吸収部48を形成する。これにより、光制御シート45が作製される。
【0062】
光拡散層55および着色層60は、例えば、共押出し成形装置を用いて、光拡散粒子を含む透明樹脂と、光吸収剤や着色剤を含む透明樹脂とを板状に共押出しすることにより作製することができる。なお、光拡散層55と着色層60は、共押出しではなく、別々に形成してもよい。また、光拡散層55に使用される透明樹脂および光拡散粒子、並びに着色層60に使用される透明樹脂および着色剤は、上記で説明したので、説明を省略するものとする。
【0063】
そして、このように用意した透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、着色層60をこの順で積層し、積層体80を形成する(図10(a))。なお、これらのシートおよび層を積層する際に、透明基材35と光制御シート45、および光制御シート45と光拡散層55とを、粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層40、50を用いて接合する。
【0064】
積層体80を作製した後、積層体80を加熱して、軟化させ、着色層60側が凸となるように曲面成形する(図10(b))。具体的には、積層体80を透明基材35のガラス転移温度以上に加熱して、軟化させる。より、具体的には60〜250℃、好ましくは80〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化した積層体80を、所定の曲面形状を有した型面に、例えば押圧部材を用いて積層体80を押し付け、あるいは、気体圧力を用いた加圧により、非接触で、積層体80を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、積層体と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、積層体80を曲面成形できる。
【0065】
積層体80を曲面成形した後、着色層60上に表面層65を形成して、積層体30を形成する(図10(c))。表面層65として、ハードコート層を形成する場合においては、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用組成物を塗布し、乾燥させ、紫外線等の電離放射線により硬化させる。これにより、着色層60上に表面層65としてのハードコート層が形成される。なお、ハードコート層は、予め半硬化させたハードコート層を形成しておき、このハードコート層を着色層上に載せ、その後硬化させて形成することも可能である。また、熱硬化性塗料を塗布し、加熱乾燥し、硬化させてハードコート層を形成することも可能である。
【0066】
そして、最後に、曲面成形された積層体30を、曲面成形されたフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置する(図11)。なお、この状態においては、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、着色層60が観察者側となっている。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0067】
<背面投射型表示装置>
透過型スクリーン10は、背面投射型表示装置に組み込んで使用することができる。このような背面投射型表示装置としては、例えば、車載用や船舶用の背面投射型表示装置等が挙げられる。
【0068】
以下、透過型スクリーン10を組み込んだ背面投射型表示装置について説明する。図12は本実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。図12に示されるように背面投射型表示装置70は、例えば、透過型スクリーン10、透過型スクリーン10を支持する例えば筐体のようなスクリーン支持体71、および透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。
【0069】
本実施形態では、透過型スクリーン10は、透過型スクリーン10が縦方向となるようにスクリーン支持体71に支持されている。とりわけ、透過型スクリーン10の映像光出射面10aのうちの最も観察者側に突出した位置(本実施形態では、透過型スクリーン10の中央位置Pに相当)における法線方向に直交する面(すなわち、最も観察者側に突出した位置での接面)が、略鉛直方向と平行となっている。
【0070】
映像光源72は、透過型スクリーン10の背面側に配置されている。図12に示される映像光源72は、透過型スクリーン10よりも下方に配置されており、ミラー等を使用せずに透過型スクリーン10に対し映像光を投射するように構成されている。なお、ミラー等を介して透過型スクリーン10に映像光を投射してもよい。
【0071】
この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心O2がフレネルレンズ部形成面20aの中心O1より縦方向下側となるように配置されている。
【0072】
なお、図12においては、映像光源72が透過型スクリーン10より下方に配置されているが、映像光源72は透過型スクリーン10よりも上方に配置されていてもよい。この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心O2がフレネルレンズ部形成面20aの中心O1より縦方向上側となるように配置される。
【0073】
映像光源72は、照射領域がしだいに広がっていく発散光束(拡大投影された光束)として透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に映像光を照射する。このような映像光源72としては、公知の光源、例えばLEDやレーザを利用したピコプロジェクタ等の小型の光源が挙げられる。
【0074】
このような背面投射型表示装置70においては、映像光源72から映像光が発せられると、図12に示されるように映像光は、発散光束として、透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に投射される。そして、図3に示されるように透過型スクリーン10の映像光入射面10bに投射された映像光L1は、入射側透明基材26を透過して、フレネルレンズシート20に入射する。そして、フレネルレンズ部22によって、映像光L1は正面方向Nに向く光に変換される。正面方向Nに向く光となった映像光L1は、透明基材35を介して光制御シート45に入射し、単位光透過部47を介して光制御シート45から出射する。光制御シート45から出射した映像光L1は、光拡散層55で拡散されて、着色層60および表面層65を介して、透過型スクリーン10の映像光出射面10aから出射する。このような背面投射型表示装置70においては、映像光は、フレネルレンズシート20によっていったん正面方向Nに向く光に変換された後に光拡散層55で拡散されるので、各方向から表示された映像を観察した場合、明るさの面内ばらつきが緩和された高品質の映像を提供できる。
【0075】
また、映像光のみならず、図3に示されるように迷光L2もフレネルレンズシート20から出射し、光制御シート45に入射するが、迷光L2は正面方向Nに向く略平行な光とはなっていないので、迷光L2は単位光吸収部48で吸収される。さらに、図3に示されるように観察者側から入射する外光L3は、着色層60により吸収される。なお、外光は、着色層60のみならず、光制御シート45の単位光吸収部48によっても吸収される。
【0076】
本実施形態によれば、フレネルレンズシート20および積層体30が曲面をなすように曲がっているので、意匠性を向上させることができる。
【0077】
本実施形態によれば、光拡散層55の映像光出射面側に着色層60を形成しているので、曲面成形の際の加熱により光拡散層55に埋め込まれていた光拡散粒子が光拡散層55の表面に隆起して光拡散層55の表面に微細な凹凸形状が形成されたとしても、着色層60によりこの微細な凹凸を吸収することができ、この微細な凹凸形状が視認されにくい透過型スクリーン10を得ることができる。これにより、透過型スクリーン10の外観を向上させることができる。
【0078】
本実施形態によれば、光拡散層55の映像光出射側に着色層60を形成しているので、着色層60により外光をより吸収することができ、これによりコントラストの向上を図ることができる。すなわち、透過型スクリーンに入射し、着色層と光拡散層との界面で反射される外光を想定した場合、着色層が光拡散層より背面側(映像光源側)に配置されている場合には、外光は光拡散層を通過する際にはほぼ吸収されないので、光拡散層と着色層との界面で反射されて、光拡散層から出射する外光はほぼ減少しない。これに対し、着色層が光拡散層より表面側(観察者側)に配置されている場合には外光は着色層を通過する際に吸収されるので、着色層と光拡散層との界面で反射され、着色層から出射する外光は減少する。また、外光が光拡散層に入射した場合、光拡散層に入射した外光の中には光拡散層内の光拡散粒子によって表面側(観察者側)に散乱するものもある。この表面側に散乱した外光が透過型スクリーンから出射されると、コントラストが低下してしまうおそれがある。着色層が光拡散層より背面側(映像光源側)に配置されている場合には、光拡散層より表面側に外光を吸収するための層を配置しない限り、光拡散粒子によって表面側に散乱した外光は透過型スクリーンから出射されるおそれがある。これに対し、着色層が光拡散層より表面側に配置されている場合には、光拡散粒子によって表面側に散乱した外光は再び着色層に入射するので、外光を吸収するための層を配置しなくとも、着色層により吸収することができ、透過型スクリーンからの外光の出射を抑制することができる。したがって、着色層が光拡散層より表面側に配置されている場合と、着色層が光拡散層より背面側に配置されている場合とを比べた場合、外光吸収率は着色層が光拡散層より表面側に配置されている場合の方が高い。それゆえ、本実施の形態おいては、より外光を吸収することができる。これにより透過型スクリーン10への外光の映り込みを抑制することができ、コントラストを向上させることができる。
【0079】
積層体80を曲面成形する前に着色層60上に表面層65を形成した場合には、積層体80を曲面成形する際に表面層65が割れてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態においては積層体80を曲面成形した後に着色層60上に表面層65を形成しているので、表面層65の割れを防止することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、第1の実施形態とは異なる方法によって製造した例について説明する。図13(a)〜図13(c)は、第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【0081】
まず、第1の実施形態と同様に、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を用意する。また、第1の実施形態と同様に、透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、および着色層60を用意し、これらをこの順で積層して、積層体80を形成する。
【0082】
その後、積層体80がフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置されるようにフレネルレンズシート20と積層体80とを積層する(図13(a))。積層された状態では、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、積層体80の着色層60が観察者側となっている。
【0083】
フレネルレンズシート20と積層体80とを積層した後、これらを加熱して、軟化させ、着色層60側が凸となるようにフレネルレンズシート20および積層体80を曲面成形する(図13(b))。
【0084】
フレネルレンズシート20と積層体80を曲面成形した後、着色層60上に表面層65を形成して、積層体30を形成する(図13(c))。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0085】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、タッチパネル機能を有する背面投射型表示装置に組み込んだ例について説明する。図14は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図であり、図15は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。なお、図14および図15中において、第1の実施形態と同様の符号を付している部材等は、第1の実施形態で説明した部材等と同様のものであるので、説明を省略する。
【0086】
図14に示されるように背面投射型表示装置90は、例えば、透過型スクリーン10、筐体のような透過型スクリーン10を支持するスクリーン支持体71、透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。さらに、この背面投射型表示装置90は、図14および図15に示されるように、透過型スクリーン10に赤外光を投射する赤外光源91と、赤外光を検出可能なCCDカメラ等の赤外光検出器92等を備えている。赤外光源91および赤外光検出器92は透過型スクリーン10の背面側に配置されている。
【0087】
赤外光源91から発せられた赤外光は、透過型スクリーン10を透過する。これにより、透過型スクリーン10に例えば指や専用のペン等が触れた場合には、赤外光は指等により反射されるので、赤外光検出器92で指の位置情報を検出することができる。これにより、タッチパネル機能を実現することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【実施例】
【0089】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明する。
【0090】
実施例1
まず、フレネルレンズシートを用意した。フレネルレンズシートの入射側透明基材としては、厚みが1.3mmのアクリル板を使用した。フレネルレンズシートのフレネルレンズ部としては、紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)から構成されており、単位プリズムのピッチが105μmのものを使用した。
【0091】
そして、このフレネルレンズシートを80℃に加熱し、軟化させるとともに真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0092】
一方で、透明基材、光制御シート、光拡散層および着色層を用意した。透明基材としては、厚みが3mmのアクリル板を使用した。
【0093】
光制御シートとしては、ポリカーボネート(PC)フィルム上に形成された単位光透過部および単位光吸収部を備え、かつ厚みが0.3mmのものを使用した。光制御シートの単位光透過部は、紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)から構成されており、単位光透過部の屈折率は1.550であった。光制御シートの単位光吸収部は、光吸収材としての着色粒子を含む紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)から構成されており、単位光吸収部の屈折率は1.490であった。また、単位光吸収部の幅は映像光出射面において30μmであり、単位光吸収部における映像光入射側の先端部の幅は6μmであり、単位光吸収部における映像光出射側の底部のピッチは60μmであった。さらに、ポリカーボネートフィルムの法線と単位光吸収部とによって形成される角度は4.5°であった。
【0094】
光拡散層としては、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)樹脂中に、光拡散粒子として、屈折率1.550および平均粒径8μmのアクリル系ビーズと、屈折率1.420および平均粒径2μmのシリコン系ビーズとを含有させたものから構成され、かつ厚みが0.14mmのものを使用した。なお、光拡散層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、アクリル系ビーズ40重量%、シリコン系ビーズ10重量%であった。着色層は、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)樹脂中に、光吸収剤としてカーボンブラックを含有させたものから構成され、かつ厚みが0.7mmのものを使用した。着色層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂75重量%、カーボンブラック25重量%であった。着色層は、光拡散粒子を含まないものであった。ここで、光拡散層および着色層は共押出し成形により形成されたものであった。
【0095】
透明基材等を用意した後、透明基材、光制御シート、光拡散層および着色層をこの順で積層し、積層体を形成した。ここで、透明基材等を積層する際、透明基材と光制御シートとの間、および光制御シートと光拡散層との間を、紫外線硬化型接着剤により接着した。
【0096】
そして、この積層体を140℃に加熱し、軟化させるとともに真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0097】
積層体を曲面成形した後、着色層の表面に、アクリルウレタン系熱硬化塗料を塗布し、加熱により乾燥させた後、ハードコート層を形成した。最後に、積層体をフレネルレンズシートの映像光出射側に配置して、実施例1に係る透過型スクリーンを作製した。
【0098】
実施例2
実施例2においては、光拡散粒子を含まない着色層の代わりに、光拡散粒子を含む着色層を用いた以外、実施例1と同様の材料および方法を用いて、透過型スクリーンを作製した。具体的には、実施例2の着色層は、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂中に、光吸収剤としてのカーボンブラックと、光拡散粒子としての屈折率1.550および平均粒径8μmのアクリル系ビーズとを含有させたものから構成された。実施例2の着色層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、カーボンブラック25重量%、アクリル系ビーズ25重量%であった。
【0099】
比較例
比較例においては、光拡散層および着色層の代わりに、光吸収剤および光拡散粒子を含む光拡散層を用いた以外、実施例1と同様の材料および方法を用いて、透過型スクリーンを作製した。具体的には、比較例の光拡散層は、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂中に、光拡散粒子として、屈折率1.55および平均粒径8μmのアクリル系ビーズと、屈折率1.42および平均粒径2μmのシリコン系ビーズと、光吸収剤としてのカーボンブラックとを含有させたものから構成された。比較例の光拡散層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、アクリル系ビーズ32.5重量%、シリコン系ビーズ5重量%、カーボンブラック12.5重量%であった。
【0100】
(1)外観観察
このような実施例1、2および比較例の透過型スクリーンのハードコート層側の表面を正面から目視により観察した。この外観観察の評価基準は以下の通りとした。
◎:微細な凹凸が確認されず、光沢感のある極めて良好な外観が得られた。
○:微細な凹凸が若干確認されたが実用上問題のない程度であり、光沢感のある良好な外観が得られた。
×:微細な凹凸が多数確認され、光沢感がなく、良好な外観が得られなかった。
【0101】
(2)コントラスト評価
次に、実施例1、2および比較例に係る透過型スクリーンをそれぞれ背面投射型表示装置に組み込み、映像光源から映像光を透過型スクリーンに照射して、透過型スクリーンに映像を表示させたときのコントラストを評価した。このコントラスト評価の評価基準は以下の通りとした。
○:コントラストが良好であった。
△:コントラストがさほど良好ではなかった。
【0102】
以下、結果について述べる。
【表1】
表1に示されるように比較例に係る透過型スクリーンは、表面に微細な凹凸が多数確認され、外観が良好ではなかった。これに対し、実施例1に係る透過型スクリーンは、微細な凹凸が確認されず、外観が極めて良好であり、実施例2に係る透過型スクリーンは、微細な凹凸が若干確認されたが実用上問題のない程度であり、良好であった。また、実施例1、2に係る透過型スクリーンは、比較例に係る透過型スクリーンに比べて、コントラストが向上していた。この結果から、実施例1、2に係る透過型スクリーンは、外観およびコントラストを向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0103】
10…透過型スクリーン、10a…映像光出射面、10b…映像光入射面、20…フレネルレンズシート、20a…フレネルレンズ部形成面、22…フレネルレンズ部、23…単位プリズム、26…入射側透明基材、35…透明基材、45…光制御シート、45a…映像光入射面、45b…映像光出射面、46…基部、47…単位光透過部、48…単位光吸収部、55…光拡散層、60…着色層、65…表面層、70、90…背面投射型表示装置、72…映像光源、80…積層体、91…赤外光源、92…赤外光検出器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、および透過型スクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像光をスクリーンの背面型から投射して表示する背面投射型表示装置においては、投射された映像光を透過して映像を表示させる透過型スクリーンが用いられている。このような透過型スクリーンとしては、様々な構造のものが提案されており、例えば、視野角を広げるために映像光を拡散させるための光拡散粒子を含む拡散層を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方で、例えば自動車等の分野においては、意匠性が非常に重要視される。現在、このような分野に適用される背面投射型表示装置には、単に映像を表示する機能が期待されているだけでなく、意匠面におけるシステム全体との調和も要求されている。
【0004】
そして、このような意匠性の観点から、曲面形状を有する透過型スクリーンの開発が望まれている。しかしながら、光拡散粒子を含む光拡散層を有する透過型スクリーンにおいて、光拡散層を含む積層体を加熱して、曲面状に曲げると、加熱により光拡散層中に埋め込まれている光拡散粒子が光拡散層の表面に隆起してしまい、光拡散層の表面に微細な凹凸が形成されてしまう。このような微細な凹凸が形成されると、表面にハードコート層のような表面層を形成した場合であっても、この凹凸が視認され、透過型スクリーンの外観が悪化するおそれがある。特に、光沢感のある外観を求められる場合には、この外観悪化は非常に問題となる。加えて、透過型スクリーンにおいては、更なるコントラストの向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−37496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。すなわち、意匠性、外観、およびコントラストを向上させることができる透過型スクリーン、これを備えた背面投射型表示装置、およびこのような透過型スクリーンを製造することができる透過型スクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様によれば、映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、前記フレネルレンズシートおよび積層体が曲面をなすように曲がっていることを特徴とする、透過型スクリーンが提供される。
【0008】
本発明の他の態様によれば、上記透過型スクリーンと、前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記スクリーンに映像光を投射する映像光源とを備えることを特徴とする、背面投射型表示装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、前記積層体を加熱することにより軟化させ、軟化した前記積層体を曲面成形する工程と、曲面成形された前記積層体を、フレネルレンズ部を有しかつ曲面成形されたフレネルレンズシートの映像光出射側に配置する工程とを備える透過型スクリーンの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、前記積層体と、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートとを、前記積層体が前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置されるように積層する工程と、積層された前記フレネルレンズシートと前記積層体とを加熱することにより軟化させ、軟化した前記フレネルレンズシートおよび前記積層体を曲面成形する工程とを備える透過型スクリーンの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一の態様の透過型スクリーンおよび他の態様の背面投射型表示装置によれば、フレネルレンズシートおよび積層体が曲面形状をなすように曲がっているので、意匠性を向上させることができる。また、光拡散層の映像光出射側に着色層を形成しているので、光拡散粒子が表面に隆起して、光拡散層の表面に微細な凹凸が形成された場合であっても、この微細な凹凸を着色層により吸収することができる。これにより、外観を向上させることができる。さらに、この着色層により外光を吸収させることができるので、黒い部分の輝度(黒輝度)を低下させることでき、これによりコントラストを向上させることができる。
【0012】
本発明の他の態様の透過型スクリーンの製造方法によれば、積層体を曲面成形しているので、意匠性を向上させた透過型スクリーンを得ることができる。また、拡散層の映像光出射側に着色層を形成しているので、光拡散粒子が表面に隆起して、光拡散層の表面に微細な凹凸が形成された場合であっても、この微細な凹凸を着色層により吸収することができる。これにより、外観を向上させた透過型スクリーンを得ることができる。また、この着色層により外光を吸収させることができるので、黒輝度を低下させることでき、これによりコントラストを向上させた透過型スクリーンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図である。
【図3】図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。
【図4】図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図である。
【図5】図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図である。
【図7】図2に示される光制御シートの概略斜視図である。
【図8】図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【図9】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図10】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図11】第1の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図12】第1の実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図13】第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【図14】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図である。
【図15】第3の実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
<透過型スクリーン>
先ず、本発明の第1の実施形態に係る透過型スクリーンについて、図面を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る透過型スクリーンの模式的な斜視図であり、図2は本実施形態に係る透過型スクリーンの概略構成図であり、図3は図2のI−I線に沿って透過型スクリーンを切断したときの断面図である。図4は図2に示されるフレネルレンズシートの概略斜視図であり、図5は図2に示されるフレネルレンズシートを映像光出射側から見たときのフレネルレンズシートの平面図である。図6は本実施形態に係る他の態様のフレネルレンズシートを示す図であり、図7は図2に示される光制御シートの概略斜視図であり、図8は図7のII−II線に沿って光制御シートを切断したときの断面図である。
【0015】
図1および図2に示される透過型スクリーン10は、フレネルレンズシート20と、フレネルレンズシート20の映像光出射側に配置された積層体30とを備えている。
【0016】
フレネルレンズシート20および積層体30は、曲面をなすように曲がったものである。具体的には、フレネルレンズシート20および積層体30は、二次元曲面または三次元曲面をなすように曲がっている。好ましくは、フレネルレンズシート20および積層体30は、図1および図2に示されるように三次元曲面をなすように曲がっている。ここで、本明細書において、「二次元曲面」とは単一の軸を中心として二次元的に曲がったもの、或いは、互いに平行な複数の軸を中心として異なる曲率で二次元的に曲がったものを意味し、また「三次元曲面」とは互い対して傾斜した複数の軸をそれぞれ中心として、部分的または全体的に曲がっていることを意味するものとする。フレネルレンズシート20および積層体30は、曲率半径が2000mm以下、好ましくは曲率半径が250mm以上1500mm以下となる部分を有することができる。
【0017】
本実施形態においては、図1に示すように、フレネルレンズシート20および積層体30は、概ね、一方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第1の軸A1を中心とした方向d1に曲がるとともに、他方の対角線と平行で透過型スクリーン10の背面側(映像光入射側)に位置する第2の軸A2を中心とした方向d2にも曲がっている。この結果、透過型スクリーン10は観察者側へ凸となるように曲がっており、透過型スクリーン10の平面形状をなす矩形状の一対の対角線が交わる中央位置Pにおいて、透過型スクリーン10の映像光出射面10a(表示面)は観察者側に最も突出している。なお、図1に示される透過型スクリーン10は、観察者側へ凸となるように曲がったものであるが、これに限らず、透過型スクリーンは、観察者側へ凹、すなわち背面側へ凸となるように曲がっていてもよく、また観察者側へ凸となるように曲がった部分と、背面側へ凸となるように曲がった部分とを組み合わせた形状となっていてもよい。
【0018】
フレネルレンズシート
図2および図3に示されるフレネルレンズシート20は、基部21と、基部21の表面に形成されたフレネルレンズ部22を備えている。
【0019】
フレネルレンズ部22は、映像光源(図示せず)から発散光束として透過型スクリーン10に投射される映像光の進行方向を偏向させる機能を有している。具体的には、フレネルレンズ部22は、発散光束として入射した映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば正面方向Nへ進む平行光束に変換する。このようにフレネルレンズ部22を用いて映像光をいったん平行光化させておくことにより、観察者に観察される映像、とりわけ、観察者によって斜め方向から観察される映像の明るさの面内ばらつきを効果的に緩和させることができる。
【0020】
本実施形態では、図4および図5に示すように、フレネルレンズ部22は、いわゆるサーキュラーフレネルレンズとして構成されている。ただし、これに限られず、いわゆるリニアフレネルレンズとして構成されていてもよい。リニアフレネルレンズでは、複数の単位レンズの各々が直線状に延び、且つ、複数の単位レンズがその長手方向と交差する配列方向に配列されるようになる。
【0021】
フレネルレンズ部22は、図5に示されるようにフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部形成面20aの中心O1に対して偏心した位置に光学中心O2を有することが好ましい。具体的には、フレネルレンズ部22は、光学中心O2を中心とする同心円弧状または同心円状の複数の単位プリズム23から構成されている。
【0022】
上記「フレネルレンズ部形成面」とは、フレネルレンズシートにおけるフレネルレンズ部が形成されている面であり、フレネルレンズシートが屈折型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光出射側に位置し、フレネルレンズシートが後述する全反射型のフレネルレンズシートの場合には、フレネルレンズ部形成面は映像光入射側に位置している。
【0023】
図5に示されるフレネルレンズ部22の光学中心O2は、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在する。例えば、映像光源(図示せず)が透過型スクリーン10よりも下方に配置される場合には、光学中心O2は、フレネルレンズシート20外であってフレネルレンズ部形成面20aの中心O1に対して透過型スクリーン10の縦方向下側の位置に存在する。なお、上記では、光学中心O2は、フレネルレンズシート20から外れた位置に存在しているが、フレネルレンズシート20内に存在していてもよい。
【0024】
ここで、本明細書においては、透過型スクリーン10の「縦方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の上下方向を意味するものとし、また透過型スクリーン10の「横方向」とは、観察者が透過型スクリーン10を正面から見たとき、観察者の左右方向を意味するものとする。
【0025】
このように光学中心O2が偏心したフレネルレンズ部22を形成することにより、フレネルレンズシート20と映像光源との距離を短くした場合であっても、映像光を、映像光入射側から映像光出射側へ向けて進む平行光束、例えば図1に示される正面方向Nへ進む平行光束に変換することができる。本実施形態では、光学中心O2がフレネルレンズ部形成面20aの中心O1に対して偏心したフレネルレンズ部22を用いているが、光学中心がフレネルレンズ部形成面の中心に対して偏心していないフレネルレンズ部を用いることも可能である。
【0026】
また、本実施形態におけるフレネルレンズシート20は、いわゆる屈折型のフレネルレンズであるが、これに限られず、全反射型のフレネルレンズシートを用いることも可能である。
【0027】
図6に示されるように、全反射型のフレネルレンズシート24は、入射する映像光を屈折させる屈折面25aと、屈折面25aで屈折された映像光の少なくとも一部を全反射させて、映像光出射側に向ける全反射面25bとを有する複数の単位プリズム25を備えたものである。全反射型のフレネルレンズシート24を用いた場合には、さらに映像光源とフレネルレンズシート24との距離を縮めることができるので、より薄型の背面投射型表示装置を提供することができる。
【0028】
また、図2〜図4に示されるようにフレネルレンズシート20は、基部21よりも映像光入射側にフレネルレンズシート20を補強するための入射側透明基材26を有していてもよい。入射側透明基材26と基部21は、粘着剤や紫外線硬化型接着剤のような接着剤等からなる接合層(図示せず)を介して互いに接合されている。
【0029】
入射側透明基材26は、フレネルレンズシート20と同様に、曲面をなすように曲がったものである。入射側透明基材26としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0030】
入射側透明基材26の厚みは、1.0〜4.0mmであることが好ましく、1.5〜2.0mmであることがより好ましい。入射側透明基材26の厚みが1.0mm未満であると、補強部材としての機能を十分に果たすことができないおそれがあるからであり、また4.0mmを超えると、次に説明する理由から二重像が観察者に認識されやすくなるからである。すなわち、フレネルレンズシートの厚みが厚い場合には、フレネルレンズシートの厚みが薄い場合に比べてフレネルレンズシートから出射される映像光と迷光との距離が大きくなり、この距離が大きくなると、観察者に二重像として認識されやすくなる。したがって、フレネルレンズシート20が同じ厚さであったとしても、入射側透明基材26の厚さが厚い場合には、観察者に二重像が認識されやすくなる。
【0031】
積層体
積層体30は、図2および図3に示されるように映像光入射側から映像光出射側に向けて、順に、主に、透明基材35、接合層40、光制御シート45、接合層50、光拡散層55、着色層60、および表面層65を有している。なお、本発明においては、積層体30は光制御シート45、光拡散層55、および着色層60を有していればよく、透明基材35、接合層40、50および表面層65を有していなくともよい。
【0032】
透明基材
積層体30の透明基材35は、透過型スクリーン10の剛性を高めるものである。ここで、入射側透明基材26の厚みを厚くして、透過型スクリーン10の剛性を高めることも可能であるが、入射側透明基材26の厚みを厚くした場合には観察者に二重像が認識されやすくなる。したがって、入射側透明基材26の厚みを厚くして透過型スクリーン10の剛性を高めるよりも透明基材35を配置して透過型スクリーン10の剛性を高めた方が、観察者に二重像が認識されにくくなるので、効果的である。また、透明基材35を配置することにより透過型スクリーン10の剛性を高めることができるので、入射側透明基材26の厚みをより薄くすることができ、二重像がさらに認識されにくくなる。
【0033】
透明基材35の厚みは、1.5mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましい。透明基材35の厚みが1.5mm未満であると、透過型スクリーン10の剛性を高めるという機能を十分に果たすことができないおそれがあるからである。
【0034】
透明基材35としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基材が挙げられる。
【0035】
光制御シート
光制御シート45は、透明基材35の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45に入射した映像光を透過するものであるとともに二重像の原因となる迷光を吸収するためのものである。
【0036】
図3、図7および図8に示されるように光制御シート45は、基部46と、基材部46上に形成された入射した映像光を透過する複数の単位光透過部47と、外光を吸収する複数の単位光吸収部48とを備えている。
【0037】
基部46は、図8に示されるように光制御シート45の映像光入射面45aを構成するものである。単位光透過部47および単位光吸収部48は、図8に示されるようにそれぞれ光制御シート45の映像光出射面45bを構成するものであり、映像光出射面45bに沿って配置されている。また、単位光透過部47および単位光吸収部48は、図7に示されるように透過型スクリーン10の横方向に延在しており、透過型スクリーン10の縦方向に交互に配置されている。
【0038】
また、光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係においては、単位光透過部47および単位光吸収部48は、フレネルレンズ部形成面20aの中心O1とフレネルレンズ部22の光学中心O2とを結ぶ方向と略平行でありかつ映像光出射面45aに沿った第1の方向に交互に並べて配置されている。この場合、単位光透過部47および単位光吸収部48は、第1の方向と略直交しかつ映像光出射面45aに沿った第2の方向に延在している。ここで、図1等においては、「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」が一致しているが、「第1の方向」と「第2の方向」は光制御シート45とフレネルレンズシート20との配置関係を表すためのものであり、必ずしも「第1の方向」と「縦方向」および「第2の方向」と「横方向」は一致していなくともよい。
【0039】
基部46は、単位光透過部47や単位光吸収部48を形成するためのベースとなる層である。
【0040】
基部46としては、透明樹脂フィルム、透明樹脂板、透明樹脂シートや透明ガラスを用いることができる。透明樹脂フィルムとしては、トリアセテートセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系フィルム、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルロニトリルフィルム等を好適に使用できるが、これらの中でも、ポリエステル系フィルムが好ましく用いられる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートの他、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0041】
単位光透過部47は、光制御シート45の厚さ方向の断面形状が略台形となっているものが好ましい。この台形は、映像光出射面45bが上底、映像光入射側が上底より長さが長い下底とするものである。
【0042】
単位光透過部47は、映像光を透過する光透過性樹脂で構成されている。この光透過性樹脂としては、例えばウレタンアクリレート等の電離放射線硬化型樹脂の硬化物が挙げられる。
【0043】
単位光吸収部48は、単位光吸収部48が隣り合う単位光透過部47により形成される、断面形状がV字状の溝または断面形状が台形状の溝に形成されていることが好ましい。すなわち、断面形状がV字状の溝の場合には、単位光吸収部48は光制御シート45の厚さ方向の断面形状が映像光出射面45bを底辺とする略三角形となっており、断面形状が台形状の溝の場合には、光制御シート45の映像光入射側を上底としかつ光制御シート45の映像光出射面45bを下底とするものである。ここで、「下底」の長さは「上底」の長さより長いものとする。
【0044】
単位光吸収部48は、透明樹脂に光吸収材等を含有させたものから構成することが可能である。透明樹脂は、単位光透過部47を構成する透明樹脂の屈折率より小さい屈折率を有する材料により構成されていることが好ましい。また、透明樹脂として用いられるものも特に限定されることはないが、例えば、電子線、紫外線等の電離放射線により硬化する特徴を有するウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系等のアクリレート系樹脂の電離放射線硬化型樹脂の硬化物が挙げられる。
【0045】
光吸収材は、可視光である外光や迷光を吸収する機能を有すればよく、光吸収材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等、顔料または染料、顔料または染料で着色された樹脂粒子等が挙げられる。
【0046】
光吸収材が顔料または染料で着色された樹脂粒子である場合、樹脂粒子としては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ等のプラスチックビーズが挙げられる、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。
【0047】
光拡散層
光拡散層55は、光制御シート45の映像光出射側(観察者側)に配置されている。光制御シート45から出射した映像光を等方的に拡散させるためのものである。光拡散層55の表面は、後述する光拡散粒子の隆起により微細な凹凸を有している。
【0048】
光拡散層55の厚みは、0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることがより好ましい。光拡散層55の厚みが0.05mm未満であると、光拡散効果が十分に得られないおそれがあるからであり、また2.0mmを超えると透過型スクリーン10に映し出される映像がぼやけてしまい、解像性に劣る映像となってしまうおそれがあるからである。
【0049】
光拡散層55は、透明樹脂に光拡散粒子を含有させたものから構成することが可能である。光拡散層55は、例えば、透明樹脂と光拡散粒子との間の屈折率差に起因して、または、光拡散粒子自体が有する反射性に起因して、映像光を等方的に拡散する機能を発現する。光拡散層55の光拡散能によって、光制御シートを透過した映像光が拡散され、観察者は、光拡散層55の光拡散能に応じた視野角の範囲内で映像を観察することができる。
【0050】
透明樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【0051】
光拡散粒子としては、プラスチックビーズ等の有機フィラーが好適であり、特に透明度が高いものが好ましい。プラスチックビーズとしては、メラミンビーズ、アクリルビーズ、アクリル−スチレンビーズ、ポリカーボネートビーズ、ポリエチレンビーズ、ポリスチレンビーズ、塩化ビニルビーズ等が挙げられ、これらの中でもアクリルビーズが好ましい。また、プラスチックビーズのみならず、シリコンビーズ等も使用することも可能である。さらに、プラスチックビーズとシリコンビーズ等を併用することも可能である。
【0052】
着色層
着色層60は、光拡散層55の映像光出射側(観察者側)に配置されている。着色層60は、観察者側から透過型スクリーン10に入射する外光を吸収するとともに光拡散層55の表面に形成される凹凸形状を有効に吸収するためのものである。
【0053】
着色層60の厚みは、10μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下であることが特に好ましい。この範囲の厚みが好ましいとしたのは、着色層60の厚みが10μm未満であると、着色層60により外光が有効に吸収できなくなり、また光拡散層55の表面に形成される凹凸を有効に吸収できなくなるおそれがあるからである。また着色層60の厚みが200μmを超えると、映像光の透過率が低下するおそれがあるからである。この場合、所定の明るさを維持しようとすると、映像光源の出力を高める必要があり、消費電力が上昇するおそれがある。
【0054】
着色層60は、透明樹脂に光吸収剤や着色剤を含有させたものから構成することが可能である。透明樹脂としては、例えば、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。また、光吸収剤としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩等が挙げられ、着色剤としては、例えば、グレー等の染料や顔料等が挙げられる。
【0055】
着色層60は、光拡散粒子を含んでいないものであるが、着色層は光拡散粒子を含んでいてもよい。着色層が光拡散粒子を含んでいる場合には、光拡散粒子は0重量%を超え25重量%以下の割合で着色層に含まれていることが好ましい。光拡散粒子の割合をこの範囲とすることが好ましいとしたのは、25重量%を超えると、含有する光拡散粒子の隆起によって光沢感が失われるおそれがあるからである。
【0056】
表面層
表面層65は、着色層60より観察面側に設けられる層であり、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、紫外線吸収機能および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する層である。本実施形態では、表面層65は、ハードコート機能を有する層(ハードコート層)となっている。ハードコート層は、透明性を有し、JISK5600−5−4(1994)で規定される鉛筆硬度試験で「HB」以上の硬度を示すものである。
【0057】
<透過型スクリーンの製造方法>
このような透過型スクリーン10は、例えば、以下のような製造方法により作製することが可能である。図9(a)〜図11は本実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を示した図である。
【0058】
まず、フレネルレンズシート20を用意する。フレネルレンズシート20は、例えば以下のようにして得ることができる。すなわち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル−スチレン共重合体樹脂等の透明樹脂からなる基部21と金型との間に紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を充填し、電離放射線を照射して電離放射線硬化型樹脂を硬化させることによってフレネルレンズ部22を形成する。これにより、フレネルレンズシート20が作製される。そして、基部21の映像光入射面に入射側透明基材26を粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層(図示せず)を用いて接合し、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を形成する(図9(a))。
【0059】
フレネルレンズシート20を作製した後、フレネルレンズシート20を加熱して、軟化させ、例えばフレネルレンズ部22側が凸となるように曲面成形する(図9(b))。具体的には、フレネルレンズシート20を構成する樹脂のガラス転移温度以上の温度にフレネルレンズシート20を加熱して、軟化させる。より具体的には、60〜250℃、好ましくは70〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化したフレネルレンズシート20を、所定の曲面形状を有した型面(図示せず)に、例えば押圧部材を用いて、フレネルレンズシート20を押し付け、あるいは、気体圧力を用いた加圧により、非接触で、フレネルレンズシート20を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、フレネルレンズシート20と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、フレネルレンズシート20を曲面成形できる。なお、上記では、フレネルレンズ部22側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形しているが、これに限らず、フレネルレンズ部22側が凹となるように、すなわち入射側透明基材26側が凸となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよく、またフレネルレンズ部22側が凸となる部分とフレネルレンズ部22側が凹となる部分とを組み合わせた形状となるようにフレネルレンズシート20を曲面成形してもよい。
【0060】
一方で、透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、および着色層60を用意する。光制御シート45は、例えば、以下の方法によって作製することができる。すなわち、単位光透過部47の形に対応した形の複数の溝を有する金型(図示せず)にシート状の基部46を送り込み、金型と基部46との間に電離放射線型樹脂等を含む光透過部用組成物を供給し、基部46と金型との間に光透過部用組成物を充填する。その後、電離放射線を照射し、光透過部用組成物を硬化させて、基部46上に単位光透過部47を形成する。
【0061】
単位光透過部47を形成した後、単位光透過部47を金型から引き抜き、そして、複数の単位光透過部47間の溝に、光吸収材および電離放射線硬化型樹脂を含む光吸収部用組成物を塗布し、ドクターブレード等によって充填する。その後、電離放射線により光吸収部用組成物を硬化させて、単位光透過部47間に単位光吸収部48を形成する。これにより、光制御シート45が作製される。
【0062】
光拡散層55および着色層60は、例えば、共押出し成形装置を用いて、光拡散粒子を含む透明樹脂と、光吸収剤や着色剤を含む透明樹脂とを板状に共押出しすることにより作製することができる。なお、光拡散層55と着色層60は、共押出しではなく、別々に形成してもよい。また、光拡散層55に使用される透明樹脂および光拡散粒子、並びに着色層60に使用される透明樹脂および着色剤は、上記で説明したので、説明を省略するものとする。
【0063】
そして、このように用意した透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、着色層60をこの順で積層し、積層体80を形成する(図10(a))。なお、これらのシートおよび層を積層する際に、透明基材35と光制御シート45、および光制御シート45と光拡散層55とを、粘着剤または紫外線硬化型接着剤のような接着剤からなる接合層40、50を用いて接合する。
【0064】
積層体80を作製した後、積層体80を加熱して、軟化させ、着色層60側が凸となるように曲面成形する(図10(b))。具体的には、積層体80を透明基材35のガラス転移温度以上に加熱して、軟化させる。より、具体的には60〜250℃、好ましくは80〜200℃に加熱して、軟化させる。そして、この軟化した積層体80を、所定の曲面形状を有した型面に、例えば押圧部材を用いて積層体80を押し付け、あるいは、気体圧力を用いた加圧により、非接触で、積層体80を押し付ける。この曲面成形中、好ましくは、積層体と型面との間の雰囲気が減圧した状態に保たれ、より好ましくは概ね真空状態に保たれる。これにより、積層体80を曲面成形できる。
【0065】
積層体80を曲面成形した後、着色層60上に表面層65を形成して、積層体30を形成する(図10(c))。表面層65として、ハードコート層を形成する場合においては、電離放射線硬化型樹脂を含むハードコート層用組成物を塗布し、乾燥させ、紫外線等の電離放射線により硬化させる。これにより、着色層60上に表面層65としてのハードコート層が形成される。なお、ハードコート層は、予め半硬化させたハードコート層を形成しておき、このハードコート層を着色層上に載せ、その後硬化させて形成することも可能である。また、熱硬化性塗料を塗布し、加熱乾燥し、硬化させてハードコート層を形成することも可能である。
【0066】
そして、最後に、曲面成形された積層体30を、曲面成形されたフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置する(図11)。なお、この状態においては、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、着色層60が観察者側となっている。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0067】
<背面投射型表示装置>
透過型スクリーン10は、背面投射型表示装置に組み込んで使用することができる。このような背面投射型表示装置としては、例えば、車載用や船舶用の背面投射型表示装置等が挙げられる。
【0068】
以下、透過型スクリーン10を組み込んだ背面投射型表示装置について説明する。図12は本実施形態に係る背面投射型表示装置の模式的な断面図である。図12に示されるように背面投射型表示装置70は、例えば、透過型スクリーン10、透過型スクリーン10を支持する例えば筐体のようなスクリーン支持体71、および透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。
【0069】
本実施形態では、透過型スクリーン10は、透過型スクリーン10が縦方向となるようにスクリーン支持体71に支持されている。とりわけ、透過型スクリーン10の映像光出射面10aのうちの最も観察者側に突出した位置(本実施形態では、透過型スクリーン10の中央位置Pに相当)における法線方向に直交する面(すなわち、最も観察者側に突出した位置での接面)が、略鉛直方向と平行となっている。
【0070】
映像光源72は、透過型スクリーン10の背面側に配置されている。図12に示される映像光源72は、透過型スクリーン10よりも下方に配置されており、ミラー等を使用せずに透過型スクリーン10に対し映像光を投射するように構成されている。なお、ミラー等を介して透過型スクリーン10に映像光を投射してもよい。
【0071】
この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心O2がフレネルレンズ部形成面20aの中心O1より縦方向下側となるように配置されている。
【0072】
なお、図12においては、映像光源72が透過型スクリーン10より下方に配置されているが、映像光源72は透過型スクリーン10よりも上方に配置されていてもよい。この場合、透過型スクリーン10は、単位光透過部47および単位光吸収部48の延在方向が横方向となり、かつフレネルレンズ部22の光学中心O2がフレネルレンズ部形成面20aの中心O1より縦方向上側となるように配置される。
【0073】
映像光源72は、照射領域がしだいに広がっていく発散光束(拡大投影された光束)として透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に映像光を照射する。このような映像光源72としては、公知の光源、例えばLEDやレーザを利用したピコプロジェクタ等の小型の光源が挙げられる。
【0074】
このような背面投射型表示装置70においては、映像光源72から映像光が発せられると、図12に示されるように映像光は、発散光束として、透過型スクリーン10の映像光入射面10bの全域に投射される。そして、図3に示されるように透過型スクリーン10の映像光入射面10bに投射された映像光L1は、入射側透明基材26を透過して、フレネルレンズシート20に入射する。そして、フレネルレンズ部22によって、映像光L1は正面方向Nに向く光に変換される。正面方向Nに向く光となった映像光L1は、透明基材35を介して光制御シート45に入射し、単位光透過部47を介して光制御シート45から出射する。光制御シート45から出射した映像光L1は、光拡散層55で拡散されて、着色層60および表面層65を介して、透過型スクリーン10の映像光出射面10aから出射する。このような背面投射型表示装置70においては、映像光は、フレネルレンズシート20によっていったん正面方向Nに向く光に変換された後に光拡散層55で拡散されるので、各方向から表示された映像を観察した場合、明るさの面内ばらつきが緩和された高品質の映像を提供できる。
【0075】
また、映像光のみならず、図3に示されるように迷光L2もフレネルレンズシート20から出射し、光制御シート45に入射するが、迷光L2は正面方向Nに向く略平行な光とはなっていないので、迷光L2は単位光吸収部48で吸収される。さらに、図3に示されるように観察者側から入射する外光L3は、着色層60により吸収される。なお、外光は、着色層60のみならず、光制御シート45の単位光吸収部48によっても吸収される。
【0076】
本実施形態によれば、フレネルレンズシート20および積層体30が曲面をなすように曲がっているので、意匠性を向上させることができる。
【0077】
本実施形態によれば、光拡散層55の映像光出射面側に着色層60を形成しているので、曲面成形の際の加熱により光拡散層55に埋め込まれていた光拡散粒子が光拡散層55の表面に隆起して光拡散層55の表面に微細な凹凸形状が形成されたとしても、着色層60によりこの微細な凹凸を吸収することができ、この微細な凹凸形状が視認されにくい透過型スクリーン10を得ることができる。これにより、透過型スクリーン10の外観を向上させることができる。
【0078】
本実施形態によれば、光拡散層55の映像光出射側に着色層60を形成しているので、着色層60により外光をより吸収することができ、これによりコントラストの向上を図ることができる。すなわち、透過型スクリーンに入射し、着色層と光拡散層との界面で反射される外光を想定した場合、着色層が光拡散層より背面側(映像光源側)に配置されている場合には、外光は光拡散層を通過する際にはほぼ吸収されないので、光拡散層と着色層との界面で反射されて、光拡散層から出射する外光はほぼ減少しない。これに対し、着色層が光拡散層より表面側(観察者側)に配置されている場合には外光は着色層を通過する際に吸収されるので、着色層と光拡散層との界面で反射され、着色層から出射する外光は減少する。また、外光が光拡散層に入射した場合、光拡散層に入射した外光の中には光拡散層内の光拡散粒子によって表面側(観察者側)に散乱するものもある。この表面側に散乱した外光が透過型スクリーンから出射されると、コントラストが低下してしまうおそれがある。着色層が光拡散層より背面側(映像光源側)に配置されている場合には、光拡散層より表面側に外光を吸収するための層を配置しない限り、光拡散粒子によって表面側に散乱した外光は透過型スクリーンから出射されるおそれがある。これに対し、着色層が光拡散層より表面側に配置されている場合には、光拡散粒子によって表面側に散乱した外光は再び着色層に入射するので、外光を吸収するための層を配置しなくとも、着色層により吸収することができ、透過型スクリーンからの外光の出射を抑制することができる。したがって、着色層が光拡散層より表面側に配置されている場合と、着色層が光拡散層より背面側に配置されている場合とを比べた場合、外光吸収率は着色層が光拡散層より表面側に配置されている場合の方が高い。それゆえ、本実施の形態おいては、より外光を吸収することができる。これにより透過型スクリーン10への外光の映り込みを抑制することができ、コントラストを向上させることができる。
【0079】
積層体80を曲面成形する前に着色層60上に表面層65を形成した場合には、積層体80を曲面成形する際に表面層65が割れてしまうおそれがある。これに対し、本実施形態においては積層体80を曲面成形した後に着色層60上に表面層65を形成しているので、表面層65の割れを防止することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、第1の実施形態とは異なる方法によって製造した例について説明する。図13(a)〜図13(c)は、第2の実施形態に係る透過型スクリーンの製造工程を模式的に示した図である。
【0081】
まず、第1の実施形態と同様に、入射側透明基材26を背面側に有するフレネルレンズシート20を用意する。また、第1の実施形態と同様に、透明基材35、光制御シート45、光拡散層55、および着色層60を用意し、これらをこの順で積層して、積層体80を形成する。
【0082】
その後、積層体80がフレネルレンズシート20の映像光出射側に配置されるようにフレネルレンズシート20と積層体80とを積層する(図13(a))。積層された状態では、透明基材35がフレネルレンズシート20のフレネルレンズ部22側となっており、積層体80の着色層60が観察者側となっている。
【0083】
フレネルレンズシート20と積層体80とを積層した後、これらを加熱して、軟化させ、着色層60側が凸となるようにフレネルレンズシート20および積層体80を曲面成形する(図13(b))。
【0084】
フレネルレンズシート20と積層体80を曲面成形した後、着色層60上に表面層65を形成して、積層体30を形成する(図13(c))。これにより、図1に示される透過型スクリーン10が完成する。
【0085】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態においては、透過型スクリーンを、タッチパネル機能を有する背面投射型表示装置に組み込んだ例について説明する。図14は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置の模式的な断面図であり、図15は本実施形態に係るタッチパネル機能を有する背面投射型表示装置を上方から見た図である。なお、図14および図15中において、第1の実施形態と同様の符号を付している部材等は、第1の実施形態で説明した部材等と同様のものであるので、説明を省略する。
【0086】
図14に示されるように背面投射型表示装置90は、例えば、透過型スクリーン10、筐体のような透過型スクリーン10を支持するスクリーン支持体71、透過型スクリーン10に映像光を投射する映像光源72を備えている。さらに、この背面投射型表示装置90は、図14および図15に示されるように、透過型スクリーン10に赤外光を投射する赤外光源91と、赤外光を検出可能なCCDカメラ等の赤外光検出器92等を備えている。赤外光源91および赤外光検出器92は透過型スクリーン10の背面側に配置されている。
【0087】
赤外光源91から発せられた赤外光は、透過型スクリーン10を透過する。これにより、透過型スクリーン10に例えば指や専用のペン等が触れた場合には、赤外光は指等により反射されるので、赤外光検出器92で指の位置情報を検出することができる。これにより、タッチパネル機能を実現することができる。
【0088】
なお、本発明は上記実施の形態の記載内容に限定されるものではなく、構造や材質、各部材の配置等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【実施例】
【0089】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明する。
【0090】
実施例1
まず、フレネルレンズシートを用意した。フレネルレンズシートの入射側透明基材としては、厚みが1.3mmのアクリル板を使用した。フレネルレンズシートのフレネルレンズ部としては、紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)から構成されており、単位プリズムのピッチが105μmのものを使用した。
【0091】
そして、このフレネルレンズシートを80℃に加熱し、軟化させるとともに真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0092】
一方で、透明基材、光制御シート、光拡散層および着色層を用意した。透明基材としては、厚みが3mmのアクリル板を使用した。
【0093】
光制御シートとしては、ポリカーボネート(PC)フィルム上に形成された単位光透過部および単位光吸収部を備え、かつ厚みが0.3mmのものを使用した。光制御シートの単位光透過部は、紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)から構成されており、単位光透過部の屈折率は1.550であった。光制御シートの単位光吸収部は、光吸収材としての着色粒子を含む紫外線硬化型樹脂(ウレタンアクリレート)から構成されており、単位光吸収部の屈折率は1.490であった。また、単位光吸収部の幅は映像光出射面において30μmであり、単位光吸収部における映像光入射側の先端部の幅は6μmであり、単位光吸収部における映像光出射側の底部のピッチは60μmであった。さらに、ポリカーボネートフィルムの法線と単位光吸収部とによって形成される角度は4.5°であった。
【0094】
光拡散層としては、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)樹脂中に、光拡散粒子として、屈折率1.550および平均粒径8μmのアクリル系ビーズと、屈折率1.420および平均粒径2μmのシリコン系ビーズとを含有させたものから構成され、かつ厚みが0.14mmのものを使用した。なお、光拡散層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、アクリル系ビーズ40重量%、シリコン系ビーズ10重量%であった。着色層は、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS)樹脂中に、光吸収剤としてカーボンブラックを含有させたものから構成され、かつ厚みが0.7mmのものを使用した。着色層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂75重量%、カーボンブラック25重量%であった。着色層は、光拡散粒子を含まないものであった。ここで、光拡散層および着色層は共押出し成形により形成されたものであった。
【0095】
透明基材等を用意した後、透明基材、光制御シート、光拡散層および着色層をこの順で積層し、積層体を形成した。ここで、透明基材等を積層する際、透明基材と光制御シートとの間、および光制御シートと光拡散層との間を、紫外線硬化型接着剤により接着した。
【0096】
そして、この積層体を140℃に加熱し、軟化させるとともに真空成形により曲面成形した。なお、曲面成形は、曲率半径が1000mmとなるように行われた。
【0097】
積層体を曲面成形した後、着色層の表面に、アクリルウレタン系熱硬化塗料を塗布し、加熱により乾燥させた後、ハードコート層を形成した。最後に、積層体をフレネルレンズシートの映像光出射側に配置して、実施例1に係る透過型スクリーンを作製した。
【0098】
実施例2
実施例2においては、光拡散粒子を含まない着色層の代わりに、光拡散粒子を含む着色層を用いた以外、実施例1と同様の材料および方法を用いて、透過型スクリーンを作製した。具体的には、実施例2の着色層は、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂中に、光吸収剤としてのカーボンブラックと、光拡散粒子としての屈折率1.550および平均粒径8μmのアクリル系ビーズとを含有させたものから構成された。実施例2の着色層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、カーボンブラック25重量%、アクリル系ビーズ25重量%であった。
【0099】
比較例
比較例においては、光拡散層および着色層の代わりに、光吸収剤および光拡散粒子を含む光拡散層を用いた以外、実施例1と同様の材料および方法を用いて、透過型スクリーンを作製した。具体的には、比較例の光拡散層は、屈折率1.550のメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂中に、光拡散粒子として、屈折率1.55および平均粒径8μmのアクリル系ビーズと、屈折率1.42および平均粒径2μmのシリコン系ビーズと、光吸収剤としてのカーボンブラックとを含有させたものから構成された。比較例の光拡散層の各成分の割合は、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体樹脂50重量%、アクリル系ビーズ32.5重量%、シリコン系ビーズ5重量%、カーボンブラック12.5重量%であった。
【0100】
(1)外観観察
このような実施例1、2および比較例の透過型スクリーンのハードコート層側の表面を正面から目視により観察した。この外観観察の評価基準は以下の通りとした。
◎:微細な凹凸が確認されず、光沢感のある極めて良好な外観が得られた。
○:微細な凹凸が若干確認されたが実用上問題のない程度であり、光沢感のある良好な外観が得られた。
×:微細な凹凸が多数確認され、光沢感がなく、良好な外観が得られなかった。
【0101】
(2)コントラスト評価
次に、実施例1、2および比較例に係る透過型スクリーンをそれぞれ背面投射型表示装置に組み込み、映像光源から映像光を透過型スクリーンに照射して、透過型スクリーンに映像を表示させたときのコントラストを評価した。このコントラスト評価の評価基準は以下の通りとした。
○:コントラストが良好であった。
△:コントラストがさほど良好ではなかった。
【0102】
以下、結果について述べる。
【表1】
表1に示されるように比較例に係る透過型スクリーンは、表面に微細な凹凸が多数確認され、外観が良好ではなかった。これに対し、実施例1に係る透過型スクリーンは、微細な凹凸が確認されず、外観が極めて良好であり、実施例2に係る透過型スクリーンは、微細な凹凸が若干確認されたが実用上問題のない程度であり、良好であった。また、実施例1、2に係る透過型スクリーンは、比較例に係る透過型スクリーンに比べて、コントラストが向上していた。この結果から、実施例1、2に係る透過型スクリーンは、外観およびコントラストを向上させることができることが確認された。
【符号の説明】
【0103】
10…透過型スクリーン、10a…映像光出射面、10b…映像光入射面、20…フレネルレンズシート、20a…フレネルレンズ部形成面、22…フレネルレンズ部、23…単位プリズム、26…入射側透明基材、35…透明基材、45…光制御シート、45a…映像光入射面、45b…映像光出射面、46…基部、47…単位光透過部、48…単位光吸収部、55…光拡散層、60…着色層、65…表面層、70、90…背面投射型表示装置、72…映像光源、80…積層体、91…赤外光源、92…赤外光検出器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、
フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、
前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、
前記フレネルレンズシートおよび積層体が曲面をなすように曲がっていることを特徴とする、透過型スクリーン。
【請求項2】
前記着色層の厚みが、10μm以上200μm以下である、請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項3】
前記フレネルレンズシートおよび積層体が三次元曲面をなすように曲がっている、請求項1または2に記載の透過型スクリーン。
【請求項4】
前記フレネルレンズシートおよび積層体が、曲率半径が2000mm以下となる部分を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項5】
前記着色層が実質的に光拡散粒子を含まない、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項6】
前記着色層が0重量%を超え25重量%以下の光拡散粒子を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項7】
前記積層体が、前記着色層よりも観察者側に、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する表面層をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項8】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記透過型スクリーンの横方向に延在している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項9】
前記フレネルレンズ部が、前記フレネルレンズシートのフレネルレンズ部形成面の中心に対して前記透過型スクリーンの縦方向下側に偏心した位置に光学中心を有する、請求項8に記載の透過型スクリーン。
【請求項10】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記フレネルレンズ部形成面の中心と前記フレネルレンズ部の光学中心とを結ぶ方向と略平行でありかつ前記映像光出射面に沿った第1の方向に交互に並べて配置されるとともに、前記第1の方向と略直交しかつ前記映像光出射面に沿った第2の方向に延在している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の透過型スクリーンと、
前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記スクリーンに映像光を投射する映像光源と
を備えることを特徴とする、背面投射型表示装置。
【請求項12】
前記透過型スクリーンに赤外光を投射する赤外光源と、
前記赤外光を検出可能な赤外光検出器と
をさらに備える、請求項11に記載の背面投射型表示装置。
【請求項13】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱することにより軟化させ、軟化した前記積層体を曲面成形する工程と、
曲面成形された前記積層体を、フレネルレンズ部を有しかつ曲面成形されたフレネルレンズシートの映像光出射側に配置する工程と
を備える透過型スクリーンの製造方法。
【請求項14】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、
前記積層体と、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートとを、前記積層体が前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置されるように積層する工程と、
積層された前記フレネルレンズシートと前記積層体とを加熱することにより軟化させ、軟化した前記フレネルレンズシートおよび前記積層体を曲面成形する工程と
を備える透過型スクリーンの製造方法。
【請求項15】
前記光拡散層と前記着色層が共押出し成形により形成される、請求項13または14に記載の透過型スクリーンの製造方法。
【請求項16】
前記積層体に曲面成形を施した後に、前記着色層上に防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、ハードコート機能、および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する表面層を形成する工程をさらに備える、請求項13ないし15のいずれか1項に記載の透過型スクリーンの製造方法。
【請求項1】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンであって、
フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートと、
前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置された光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを備える積層体とを備え、
前記フレネルレンズシートおよび積層体が曲面をなすように曲がっていることを特徴とする、透過型スクリーン。
【請求項2】
前記着色層の厚みが、10μm以上200μm以下である、請求項1に記載の透過型スクリーン。
【請求項3】
前記フレネルレンズシートおよび積層体が三次元曲面をなすように曲がっている、請求項1または2に記載の透過型スクリーン。
【請求項4】
前記フレネルレンズシートおよび積層体が、曲率半径が2000mm以下となる部分を有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項5】
前記着色層が実質的に光拡散粒子を含まない、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項6】
前記着色層が0重量%を超え25重量%以下の光拡散粒子を含む、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項7】
前記積層体が、前記着色層よりも観察者側に、ハードコート機能、防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する表面層をさらに備える、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項8】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記透過型スクリーンの横方向に延在している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項9】
前記フレネルレンズ部が、前記フレネルレンズシートのフレネルレンズ部形成面の中心に対して前記透過型スクリーンの縦方向下側に偏心した位置に光学中心を有する、請求項8に記載の透過型スクリーン。
【請求項10】
前記単位光透過部および前記単位光吸収部が、前記フレネルレンズ部形成面の中心と前記フレネルレンズ部の光学中心とを結ぶ方向と略平行でありかつ前記映像光出射面に沿った第1の方向に交互に並べて配置されるとともに、前記第1の方向と略直交しかつ前記映像光出射面に沿った第2の方向に延在している、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の透過型スクリーン。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1項に記載の透過型スクリーンと、
前記透過型スクリーンの背面側に配置され、前記スクリーンに映像光を投射する映像光源と
を備えることを特徴とする、背面投射型表示装置。
【請求項12】
前記透過型スクリーンに赤外光を投射する赤外光源と、
前記赤外光を検出可能な赤外光検出器と
をさらに備える、請求項11に記載の背面投射型表示装置。
【請求項13】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、
前記積層体を加熱することにより軟化させ、軟化した前記積層体を曲面成形する工程と、
曲面成形された前記積層体を、フレネルレンズ部を有しかつ曲面成形されたフレネルレンズシートの映像光出射側に配置する工程と
を備える透過型スクリーンの製造方法。
【請求項14】
映像光入射側から投射された映像光を映像光出射側に透過させる透過型スクリーンの製造方法であって、
光制御シートであって、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光透過部と、前記単位光透過部と交互に配置され、前記光制御シートの映像光出射面の一部を構成する複数の単位光吸収部とを有する光制御シートと、前記光制御シートの映像光出射側に配置され、かつ光拡散粒子を含む光拡散層と、前記光拡散層の映像光出射側に配置された着色層とを有する積層体を形成する工程と、
前記積層体と、フレネルレンズ部を有するフレネルレンズシートとを、前記積層体が前記フレネルレンズシートの映像光出射側に配置されるように積層する工程と、
積層された前記フレネルレンズシートと前記積層体とを加熱することにより軟化させ、軟化した前記フレネルレンズシートおよび前記積層体を曲面成形する工程と
を備える透過型スクリーンの製造方法。
【請求項15】
前記光拡散層と前記着色層が共押出し成形により形成される、請求項13または14に記載の透過型スクリーンの製造方法。
【請求項16】
前記積層体に曲面成形を施した後に、前記着色層上に防眩機能、反射防止機能、帯電防止機能、ハードコート機能、および防汚機能の少なくともいずれかの機能を有する表面層を形成する工程をさらに備える、請求項13ないし15のいずれか1項に記載の透過型スクリーンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−20210(P2013−20210A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155749(P2011−155749)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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