説明

通信アダプタ

【課題】障害発生を迅速に把握し、移動通信サービスの安定した運用を実現すること。
【解決手段】本実施形態に係る通信アダプタは、端末と接続するISDNインタフェース部301と、前記端末を回線網に接続するIPインタフェース部303と、無線基地局との間の無線通信を経由して前記端末を前記回線網に接続するPHSインタフェース部302と、前記無線通信を試験するためのテストパターンを前記PHSインタフェース部302により前記回線網に接続される試験相手先との間で送受信し、前記テストパターンの送受信結果を前記IPインタフェース部303により前記回線網上の監視制御装置に通知するテストパターン送受信部309とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、端末を回線網に接続するための通信アダプタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯、PHS(Personal Handyphone System)等の移動通信インフラが進展する中、益々次世代の携帯、PHS分野における技術開発が注目されている。携帯、PHSインフラにおいて、携帯電話、PHS電話に相当する無線端末は無線で通信可能な範囲に存在する近隣の無線基地局と通信を行い、IP(Internet Protocol)網、PHS網等の回線網を介し、他の無線端末、または、固定端末と接続することにより、ユーザ通信である音声通話、データ交換を実現している。
【0003】
また、移動通信インフラを提供するキャリアベンダは、常に無線端末が正常に接続できるよう安定したサービスを提供するため、無線基地局を始め、移動通信インフラの障害監視を行っている。従来技術では、例えば、無線基地局で障害を検出し、保守者は無線基地局からの通知により障害の発生を知ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来技術のように無線基地局の監視のみでは、必ずしも全ての障害を検出できるとは限らず、実際に無線端末から通信を行うユーザのクレームにより、初めて保守者が障害の発生を認識することがあった。このように障害発見が遅れたために、復旧までに時間がかかるという問題があった。
【0006】
本実施形態の目的は、障害発生を迅速に把握し、移動通信サービスの安定した運用を実現する通信アダプタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る通信アダプタは、端末と接続する第1通信インタフェースと、前記端末を回線網に接続する第2通信インタフェースと、無線基地局との間の無線通信を経由して前記端末を前記回線網に接続する第3通信インタフェースと、前記無線通信を試験するためのテストパターンを前記第3通信インタフェースにより前記回線網に接続される試験相手先との間で送受信し、前記テストパターンの送受信結果を前記第2通信インタフェースにより前記回線網上の監視制御装置に通知するテストパターン送受信手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る通信アダプタを備えた移動通信監視システムの全体構成図。
【図2】本実施形態に係る通信アダプタの構成を示すブロック図。
【図3】定期起動による移動通信監視処理を示すシーケンス図。
【図4】監視制御装置からの指示による移動通信監視処理を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る通信アダプタを説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る移動通信監視システムの全体構成図を示したものである。無線端末21,22は、携帯電話、PHS(Personal Handyphone System)電話等の移動無線端末である。無線基地局11,12は、無線端末21,22からの無線信号を受信し、他の無線端末または固定端末と通信を行う機能を有する。無線基地局11,12は、PHS通信するためのPHS網を含む回線網5に接続されている。回線網5は、該PHS網や携帯電話通信を行うための携帯電話網、固定アナログ電話機と通信を行うためのアナログ網、IP(Internet Protocol)通信を行うためのIP網等多様な移動端末、固定端末を接続するためのさまざまなプロトコル網によって構成されており、無線基地局、音声やデータの交換機、プロトコル変換機、ルータを介して多様な端末が接続されている。
【0011】
IPアダプタ31,32は、ISDN(Integrated Services Digital Network)プロトコル−IPプロトコル間の変換装置である。IPアダプタ31,32は、ISDN固定電話やISDN固定データ端末である固定端末41,42を収容し、回線網5に接続される他端末と通信する機能を有する。固定端末41,42からのISDNプロトコルをIPプロトコルに変換する機能を持ち、また回線網5からのIPプロトコルを固定端末41,42側のISDNプロトコルに変換する機能を持つ。
【0012】
さらに、IPアダプタ31,32は、IPアダプタ31,32の回線網5側には通信コストの高いISDN網ではなく、安価なIP網に接続するためのIPインタフェースを有する。IPアダプタ31,32は、内部にPHSインタフェースを備え、IPで接続される回線網5側に障害が発生し、固定端末41,42が回線網5側と通信ができなくなった場合に、PHSインタフェースから無線基地局11,12を介し、迂回することによって固定端末41,42と回線網5が通信できるようにする迂回機能を備える。
【0013】
監視制御装置6は、回線網5の監視制御を行い、多様な端末が安定して通信サービスを受けることができるよう、回線網5の正常性を監視し、無線基地局や交換機の運用制御を行う。回線網5の保守者は、監視制御装置6を監視することにより、広域にわたる回線網5で発生するあらゆる箇所の障害を把握することができる。
【0014】
ここで、無線端末21,22が通信する場合について考える。無線端末21,22は、無線基地局11,12、回線網5を経由して他の無線端末または固定端末とユーザ通信が可能である。図1においては無線端末21が無線基地局11、回線網5、無線基地局12を経由して無線端末22とユーザ通信している場合である。また、同時に無線端末21と無線端末22とのユーザ通信が正常に行えているか、障害が発生していないか、音声、データは正常に送受信されているかを監視制御装置6から無線基地局11,12に監視制御することで、通信サービスの安定的な提供を実現している。
【0015】
図2は、IPアダプタ31,32の構成を示すブロック図である。IPアダプタ31,32は、固定端末41と接続するためのISDNインタフェース部301を持ち、第1スイッチ304、IPインタフェース部303を介して、回線網5と接続される。固定端末41が発信した場合は、該ISDNインタフェース部301、第1スイッチ304、IPインタフェース部303を経由して回線網5に発信信号、音声、データが送られ、また回線網5からIPインタフェース部303、第1スイッチ304、ISDNインタフェース部301を経由して音声、データが送られ、双方向の通信、通話を行う。
【0016】
また回線網5に障害が発生し、該通信、通話が不可能となった場合は、障害検出部306で障害を検出し、迂回指示部305に迂回指示を出す。迂回指示を受けた迂回指示部305は第2スイッチ308に対し、ISDNインタフェース部301側との接続をIPインタフェース部303からPHSインタフェース部302側に経路を変更する指示を出す。第1スイッチ304の接続先をIPインタフェース部303からPHSインタフェース部302にすることにより、端末との通信を回線網5から無線基地局に迂回することができる。
【0017】
迂回の契機としては、障害検出部306が障害検出を行う以外に、回線網5が正常であっても、迂回機能確認目的で監視制御装置6からの指示で、制御指示受信部307が迂回指示を受け、迂回指示部305から第1スイッチ304に指示を出し、固定端末41を回線網5から無線基地局に迂回することもある。
【0018】
ここで、無線端末21,22の通信を無線基地局11,12で監視するには、その監視方法は、無線基地局11,12で発生しうる障害を設計上で考慮した障害検出機能を使用することになる。このため、想定外、設計外の障害が発生した場合に、障害を検出できず、監視制御装置6からは正常に見えるが、実際の無線端末21,22との通信ができていないこともあった。このようなケースでも障害を検出するためには、実際のユーザ通信を行って、異常を検出するしか方法がない。
【0019】
例えば、無線基地局11,12では、レイヤ1,2における障害監視、データのシーケンス番号監視や、データのパリティ計算による正常性確認を行うが、検出ポイントの後段でデータの抜け、データ化けが発生した場合、また、データ抜け、データ化けはないが、検出できないデータ内容異常が発生し、正常に通信できなくなった場合など、設計上考えられない障害が発生した場合は、無線基地局11,12の監視では必ずしも障害を検出できるとは限らず、実際に無線端末から通信を行うユーザのクレームにより、初めて保守者が障害に気づくことがあった。
【0020】
そこで、本実施形態では、IPアダプタ31は、迂回用に設けられたPHSインタフェース部302を用いて、無線基地局31を経由して、回線網5に発信し、無線基地局32を経由して、IPアダプタ32に着信する。IPアダプタ31、IPアダプタ32はユーザ通信を行い、IPアダプタ31からテストパターンを送信する。テストパターンを受信したIPアダプタ32では送られてきたテストパターンが正常かを判定する。またIPアダプタ32からもIPアダプタ31に対してテストパターンを送信し、IPアダプタ31では送られてきたテストパターンが正常かを判定する。IPアダプタ31、IPアダプタ32にて判定した結果は試験結果通知27として監視制御装置26に通知する。
【0021】
監視制御装置6に送られる試験結果通知は、実際に無線通信を行った結果であり、無線端末21,22が行うユーザ通信と同等の通信の結果がわかるため、従来の技術で検出していた無線基地局11,12での検出結果よりも信頼の高い結果が通知されることになる。また、IPアダプタ31,32は、固定端末41,42を収容する固定設備であり、事前に位置を記憶しておくことにより試験を実施した位置が把握でき、正常にユーザ通信ができなかった場合の無線基地局や故障経路を把握できるため、故障箇所が特定しやすくなる。
【0022】
上記機能を実現するために、図2に示すようにIPアダプタ31,32は、さらに、第2スイッチ308、テストパターン送受信部309、PHS試験指示部310、定期起動部311、及び試験要求受信部312を備える。第2スイッチ308は、通常はPHSインタフェース部302側と第1スイッチ304側が接続された状態になっている。IPアダプタ31が無線基地局11の定期監視を行う場合、定期的に定期起動部311が起動され、PHS試験指示部310に指示を送る。PHS試験指示部310は第2スイッチ308をテストパターン送受信部309に接続すると同時に、テストパターン送受信部309は試験相手先であるIPアダプタ32に試験要求を発信する。IPアダプタ32は、試験要求受信部312により試験要求を受信すると、第2スイッチ308をテストパターン送受信部309に接続する。
【0023】
IPアダプタ31,32は、試験相手先と双方向通信ができた場合に、テストパターンを送信し、また試験相手先から送られてきたテストパターンを受信し、正常テストパターンと同じであるか比較する。正常なテストパターンを受信したと認識するとIPインタフェース部303経由で監視制御装置6に対して、正常であることを通知し、正常でないテストパターンが受信された場合は、正常でないことを監視制御装置6に通知する。したがって、監視制御装置6では保守者がユーザ通信に異常があったことを検出できるため、異常の原因調査にすばやく対応できることになる。
【0024】
また、監視制御装置6の指示で試験を行う場合は、監視制御装置6からIPインタフェース部303経由で制御指示受信部307に指示が送られ、PHS試験指示部310を経由して第2スイッチ308をテストパターン送受信部309に接続すると同時に、テストパターン送受信部309から試験相手先に試験要求の発信を行い、また試験相手先から送られてきたテストパターンを受信し、正常テストパターンと同じであるか比較を行う。
【0025】
図3は、本実施形態における定期起動による移動通信監視処理のシーケンス図である。IPアダプタ31は、定期起動部311による一定タイミングで起動し(ステップS11)、IPアダプタ2に対して試験要求を発信する(ステップS12)。IPアダプタ31とIPアダプタ32がユーザ通信状態となり(ステップS13)、テストパターンの送受信が行われ、IPアダプタ31,32は、テストパターンの受信結果を監視制御装置6にそれぞれ送信する(ステップS14,S15)。
【0026】
図4は、本実施形態における監視制御装置の指示による移動通信監視処理のシーケンス図である。試験のきっかけは監視制御装置6により送られる。監視制御装置6は、試験指示をIPアダプタ31に対して行う(ステップS21)。IPアダプタ31は、IPアダプタ32に試験要求を行い(ステップS22)、IPアダプタ31とIPアダプタ32がユーザ通信状態となり(ステップS23)、テストパターンの送受信が行われ、IPアダプタ31、32ではテストパターンの受信結果を監視制御装置6にそれぞれ送信する(ステップS24,25)。
【0027】
本実施形態では、定期試験時間、試験先装置、試験回数、テストパターン内容等の試験条件をあらかじめ監視制御部から試験を行うIPアダプタに対して設定しておくことができ、再度異なる試験条件の設定を行うことにより、該試験条件の変更を行うことも可能である。
【0028】
なお、本実施形態では、対向にIPアダプタを使用したが、双方ともIPアダプタである必要がない。つまり、片側がIPアダプタ、その相手側が別のPHS試験を行う装置であってもかまわない。
【0029】
また、本実施形態の方法でPHSの試験を行うこととは逆に、テストパターン送受信部309、PHS試験指示部310を無線基地局に持たせ、特定のIPアダプタに発信し、IPアダプタ経由で他IPアダプタと接続することにより、IPアダプタの正常性試験を行うことも可能である。
【0030】
さらに、IPアダプタまたは監視制御装置が試験の位置と試験状況を知ることにより、障害検出時には、さらに知能的に障害発生位置付近の別IPアダプタに試験を指示し、複数の試験結果を収集することにより、自動的に障害箇所の絞込みを進める機能をもつことも可能である。
【0031】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
11,12…無線基地局、21,22…無線端末、31,32…通信アダプタ、41,42…固定端末、5…回線網、6…監視制御装置、301…ISDNインタフェース部、302…PHSインタフェース部、303…IPインタフェース部、304…第1スイッチ、305…迂回指示部、306…障害検出部、307…制御指示受信部、308…第2スイッチ、309…テストパターン送受信部、310…PHS試験指示部、311…定期起動部、312…試験要求受信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末と接続する第1通信インタフェースと、
前記端末を回線網に接続する第2通信インタフェースと、
無線基地局との間の無線通信を経由して前記端末を前記回線網に接続する第3通信インタフェースと、
前記無線通信を試験するためのテストパターンを前記第3通信インタフェースにより前記回線網に接続される試験相手先との間で送受信し、前記テストパターンの送受信結果を前記第2通信インタフェースにより前記回線網上の監視制御装置に通知するテストパターン送受信手段と
を具備することを特徴とする通信アダプタ。
【請求項2】
定期的に前記テストパターン送受信手段を起動させる定期起動手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信アダプタ。
【請求項3】
前記第2通信インタフェースにより前記監視制御装置からの指示を受信して前記テストパターン送受信手段を起動させる制御指示受信手段をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の通信アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−222799(P2012−222799A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90319(P2011−90319)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】