説明

通信ケーブル用保護シート、その製造方法及び保護シート付き通信ケーブル

【課題】特に耐水性に優れた通信ケーブル用保護シート、その製造方法及び保護シート付き通信ケーブルを提供すること。
【解決手段】断熱層1の両面にそれぞれ積層体8を設けてなるシート本体10を備え、積層体8は、断熱層1上に配置され、金属層4を含む通気遮断層2と、通気遮断層2上に配置される綿布層5と、綿布層5上に配置される難燃層6とを有する通信ケーブル用保護シート100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブル用保護シート、その製造方法、及び保護シート付き通信ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルやメタルケーブルから構成される通信ケーブルは、電話局から、地下に設置されたいわゆる洞道(ケーブルトンネル)を経由して加入者宅へ配線される。このため、洞道において火災が発生するとその被害が非常に大きいことから(非特許文献1)、洞道内に設置された通信ケーブルは保護シートに巻き付けられ、この保護シート付きの通信ケーブルは、洞道の長さ方向に沿って一定の間隔で設置された複数のケーブル受け金物によって支持されているのが一般的である。
【0003】
このような通信ケーブル用保護シートとして、例えば、断熱層の両面にそれぞれ金属箔及び補強布を設けてなるカバーシート(特許文献1)や、不燃性断熱材に、カーボン繊維及び金属繊維からなる織布とアルミニウム箔をラミネートした複合織布から形成された防災シート(特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−162236号公報
【特許文献2】特開昭62−221375号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NTT東日本、「史上最大の通信災害〜電話ケーブル火災の教訓」、[online]、[平成20年12月24日検索]、インターネット<URL:http://www.ntt-east.co.jp/theater/collection.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1及び2に記載の保護シートは、火災から保護するために十分な耐火性を有するものの、その他の特性の点では改善の余地を有していた。
【0007】
即ち洞道においては、地中を浸透してきた水が天井から滴り、この水が保護シートに接触することが実際に起こりうる。この場合、上記特許文献1及び2に記載の保護シートは十分な耐水性を有していないため、その水が保護シートによって吸収され、保護シートの自重が増加して撓み、これに伴って通信ケーブルも撓むおそれがある。そして、この撓みが長期間にわたる水の吸収によって過大になると、通信ケーブルにおいて伝送特性が低下するおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、特に耐水性に優れた通信ケーブル用保護シート、その製造方法、及び保護シート付き通信ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、驚くべきことに、断熱層の両面にそれぞれ断熱層側から順次金属層及び難燃層を配置し、これら金属層と難燃層との間に、一般的には吸水性に優れるとされる綿布を配置することで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、断熱層の両面にそれぞれ積層体を設けてなるシート本体を備えており、前記積層体は、(1)前記断熱層上に配置され、金属層を含む通気遮断層と、(2)前記通気遮断層上に配置される綿布層と、(3)前記綿布層上に配置される難燃層とを有することを特徴とする通信ケーブル用保護シートである。
【0011】
この通信ケーブル用保護シートは、特に耐水性に優れる。このため、当該通信ケーブル用保護シートを通信ケーブルに巻き付け、この保護シート付き通信ケーブルを、洞道の長さ方向に沿って一定間隔で設置されたケーブル受け金物によって支持する場合に次の効果が得られる。
【0012】
即ち、地中を浸透してきた水が天井から滴って、保護シートの内側又は外側の積層体のいずれに接触しても、積層体によって水の吸収が十分に阻止される。このため、保護シートの重量の増加が十分に抑制され、通信ケーブルの撓みを十分に抑制することができる。よって、本発明の保護シートによれば、通信ケーブルにおける伝送特性の低下を十分に抑制することができる。
【0013】
さらに本発明の保護シートは、難燃層のみならず断熱層をも有する。このため、本発明の保護シートは、通信ケーブルに巻き付けられた状態で、保護シートの外側が火災の発生により高温になっても、通信ケーブルが高温状態になることを十分に防止することができる。さらに本発明の保護シートは通気遮断層をも有するため、火災時でも炎が通信ケーブルまで到達することを十分に防止することができる。
【0014】
上記積層体において、前記綿布層は前記通気遮断層上に非接着の状態で配置されていることが好ましい。この場合、綿布層が通気遮断層上に接着状態で配置されている場合に比べて保護シートの柔軟性が増加する。このため、保護シートを通信ケーブルに巻き付ける際の作業が容易となる。
【0015】
また本発明は、断熱層の両面にそれぞれ積層体を形成してシート本体を形成するシート本体製造工程を含み、前記積層体は、(1)前記断熱層上に配置され、金属層を含む通気遮断層と、(2)前記通気遮断層上に配置される綿布層と、(3)前記綿布層上に配置される難燃層とを有すること、を特徴とする通信ケーブル用保護シートの製造方法である。
【0016】
この製造方法によれば、特に耐水性に優れた通信ケーブル用保護シートを得ることができる。
【0017】
さらに本発明は、上述した通信ケーブル用保護シートを通信ケーブルに巻き付けてなる保護シート付き通信ケーブルである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、特に耐水性に優れた通信ケーブル用保護シート、その製造方法及び保護シート付き通信ケーブルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る通信ケーブル用保護シートの一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】本発明に係る保護シート付き通信ケーブルの一実施形態を示す正面図である。
【図4】本発明に係るケーブル用保護シートの製造方法の一工程を示す図である。
【図5】本発明に係るケーブル用保護シートの製造方法の他の工程を示す図である。
【図6】実施例1の保護シートについての耐水性試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1〜図3を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(通信ケーブル用保護シート)
図1は、本発明に係る通信ケーブル用保護シートの好適な実施形態を示す平面図、図2は、図1のII−II線に沿った断面図、図3は、図1の通信ケーブル用保護シートを通信ケーブルに巻き付けてなる保護シート付き通信ケーブルを示す正面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態の通信ケーブル用保護シート(以下、単に「保護シート」と呼ぶ)100は、シート本体10と、シート本体10の一面10a上に取り付けられてシート本体10を巻付け状態で締結する2本のシート締結具14とを備えている。シート締結具14は、例えばシート本体10の一面10aに固定される耐炎性のベルト12と、ベルト12の一端に取り付けられる金具13とを有している。金具13は例えばベルト12の他端を引っ掛けて引き出すことにより、シート本体10を巻付け状態で保持することが可能となっている。
【0023】
図2に示すように、シート本体10は、断熱層1と、断熱層1の両面にそれぞれ設けられる積層体8とを備えている。積層体8は、断熱層1上に配置され、樹脂層3及び金属層4からなる通気遮断層2と、通気遮断層2上に配置される積層シート7とから構成されている。積層シート7は、通気遮断層2上に配置される綿布層5と、綿布層5上に配置される難燃層6とで構成されている。通気遮断層2は、通気を遮断するものであり、火災時でも通信ケーブルまで炎が到達しないようにするものである。
【0024】
ここで、難燃層6は綿布層5上に接着状態で配置されている。また綿布層5は通気遮断層2上に非接着状態で配置されている。そして、積層体8、断熱層1及び積層体8は、縫製用糸11を用いて縫製されることにより一体化されている。
【0025】
この保護シート100によれば、図3に示すように、まずシート本体10が通信ケーブルCに巻き付けられ、ベルト12の一端に取り付けられた金具13に、ベルト12の他端を引っ掛けて引き出すことにより、巻き付けられたシート本体10が締結される。こうして得られた保護シート付き通信ケーブル200が、洞道の長さ方向に沿って一定間隔で設置されたケーブル受け金物30の上に載せられる。ここで、ケーブル受け金物30は、洞道の壁面などから突出する棒状の部材である。
【0026】
このとき、保護シート100は、積層体8が特に耐水性に優れる。このため、地中を浸透してきた水が天井から滴って、保護シート100の外側に接触しても、積層体8によって水の吸収が十分に阻止される。また仮に水が保護シート100の内側の積層体8に接触しても積層体8によって水の吸収が十分に阻止される。このため、保護シート100の重量の増加が十分に抑制され、保護シート100の撓み、特に保護シート100のうちケーブル受け金物30によって支持されていない部分の撓みが十分に抑制される。その結果、通信ケーブルCの撓みが十分に抑制されることとなる。よって、保護シート100によれば、通信ケーブルCにおける伝送特性の低下を十分に抑制することができる。
【0027】
また保護シート100は、実使用上十分な耐せん断性及び耐摩耗性を有する。このため、作業者によって誤って踏まれたり保護シート100の撓みが過大となったりしても、そのときの保護シート100に加わるせん断力によって保護シート100が裂けにくい。また、ケーブルの布設作業時や布設後に保護シート100同士の擦れ合う等の環境下であっても、摩耗力によって穴部等が発生し難くい。これらの特性により、保護シート100の内部への水の浸入を十分に防止することができる。
【0028】
さらに保護シート100は、難燃層6のみならず断熱層1をも有する。このため、保護シート100は、通信ケーブルCに巻き付けられた状態で、保護シート100の外側が火災の発生により高温になっても、通信ケーブルCが高温状態になることを十分に防止することができる。さらに保護シート100は通気遮断層2をも有するため、火災時でも炎が通信ケーブルCまで到達することを十分に防止することができる。
【0029】
また保護シート100においては、綿布層5は通気遮断層2上に非接着の状態で配置されている。このため、綿布層5が通気遮断層2上に接着状態で配置されている場合に比べて保護シート100の柔軟性が増加する。このため、保護シート100を通信ケーブルCに巻き付ける際の作業が容易となる。
【0030】
次に、シート本体10を構成する断熱層1、通気遮断層2、綿布層5及び難燃層6についてさらに詳細に説明する。
【0031】
(断熱層)
断熱層1を構成する材料は、断熱性を有する材料であればいかなるものであってもよく、火災発生時の高熱から通信ケーブルCを保護する観点からは難燃材であることが好ましい。難燃材としては、例えば炭素繊維、金属繊維、アルミナ繊維などのセラミック繊維などを用いることができる。中でも特に炭素繊維が好ましい。これは耐炎性に優れるからである。炭素繊維としては、具体的には、パイロメックス(登録商標)フェルト#300HSが用いられる。
【0032】
また炭素繊維や金属繊維は柔軟性を有する。このため、断熱層1を構成する材料として、炭素繊維や金属繊維を用いると、従来品のセラミック系材料のように荷重による破損や該材料の飛散が無く、安全性が高い。
【0033】
断熱層1の厚さは、特に制限されるものではないが、保護シート100の柔軟性と通信ケーブルCの火災からの保護の観点からは、2.0〜10.0mmであることが好ましい。
【0034】
(通気遮断層)
通気遮断層2は、上述したように金属層4を含む構成である。通気遮断層2は例えば、樹脂層3と金属層4とで構成されている。樹脂層3を構成する樹脂は、樹脂であれば特に制限されるものではなく、このような樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリイミドなどが挙げられる。特に、高強度及び柔軟性の点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0035】
金属層4としては、例えばアルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔などが挙げられる。中でも、軽量化及び熱伝導性の点からアルミニウム箔が好ましく用いられる。金属層4の厚さは特に制限されるものではないが、通常は、0.01〜0.20mmが好ましい。更には0.03〜0.06mmが好ましい。
【0036】
(綿布層)
綿布層は木綿繊維から構成される。綿布層5の厚さは特に制限されるものではないが、通常は0.1〜0.5mmであり、強度及び軽量化の点から0.2〜0.4mmであることがより好ましい。
【0037】
(難燃層)
難燃層6を構成する材料は難燃性を有する材料であればよく、このような材料としては、例えば難燃剤を含有するクロロプレンゴム、シリコーンゴム、またはフッ素ゴムなどが挙げられる。特にハロゲンフリーであることから、シリコーンゴムが好ましい。難燃層6の厚さは特に制限されるものではないが、通常は0.03〜0.30mmであり、耐火性及び軽量化の点から0.03〜0.10mmであることが好ましい。
【0038】
(通信ケーブル用保護シートの製造方法)
次に、保護シート100の製造方法について図4及び図5を参照して説明する。
【0039】
図4は、図1の保護シートの製造方法の一工程を示す図、図5は、図1の保護シートの製造方法の他の工程を示す図である。
【0040】
まず断熱層1の両面にそれぞれ積層体8を形成してシート本体10を形成する(シート本体の製造工程)。
【0041】
このためには、図4に示すように、断熱層1を1枚、通気遮断層2を2枚及び積層シート7を2枚準備する。
【0042】
通気遮断層2としては、樹脂層3と金属層4との積層体を準備する。
【0043】
積層シート7は、綿布層5の表面に難燃層6を積層することによって準備することができる。例えば難燃層6が、難燃剤を含有するシリコーンゴムで構成されている場合、シリコーンゴムの原料となるシリコーンコンパウンドに加硫剤を添加し溶剤にて粘度を例えば200〜400dPa・sに調整してから脱泡を行ってシリコン糊を得た後、シリコン糊を綿布層5に塗布し乾燥炉で硬化させることによって積層シート7を得ることができる。なお、上記シリコーンコンパウンドとしては、例えば東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のSH502U A/Bを用いることができる。また上記溶剤としては、トルエン等の有機溶媒を用いることができる。乾燥炉の温度は、シリコン糊を硬化させることが可能な温度であればよく、例えば150〜170℃である。
【0044】
次に、通気遮断層2及び積層シート7を、断熱層1の両面側にそれぞれ、通気遮断層2及び積層シート7が順次配置されるように重ね合わせる。即ち、積層シート7、通気遮断層2、断熱層1、通気遮断層2及び積層シート7を、この順で重ね合わせる。
【0045】
そして、図5に示すように、積層シート7、通気遮断層2、断熱層1、通気遮断層2及び積層シート7を、縫製用糸11を用いて縫製することによって一体化する。こうしてシート本体10が得られる。
【0046】
そして、シート締結具14を2本準備し、シート本体10の一面10a側に、シート締結具14のベルト12を、例えば糸11と同様の糸を用いて縫製することによって取り付ける。こうして保護シート100の製造が完了する。
【0047】
(保護シート付き通信ケーブル)
保護シート付き通信ケーブル200は、通信ケーブルCに保護シート100のシート本体10を巻き付け、シート締結具14によってシート本体10を巻き付け状態で締結することによって得ることができる。
【0048】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、綿布層5が通気遮断層2上に非接着状態で配置されているが、綿布層5は通気遮断層2上に接着状態で配置されていてもよい。また通信ケーブルCは、特に限定されない。通信ケーブルCとしては、例えば光ファイバケーブルやメタルケーブルが挙げられる。
【0049】
また上記実施形態では、シート締結具14は、シート本体10の一面10a側に固定されてシート本体10と一体化されているが、シート本体10とは別体であってもよい。この場合、保護シート100はシート本体10のみで構成されることとなる。この場合でも、耐炎性を有する紐状部材を巻き付けて縛ることによりシート本体10を締結することができる。
【0050】
さらに上記実施形態では、通気遮断層2は樹脂層3と金属層4との積層体で構成されているが、樹脂層3は省略可能である。この場合、通気遮断層2は、金属層4のみで構成されることとなる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明の内容をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1)
(保護シートの構成:積層シート(難燃層/綿布層)/通気遮断層/断熱層/通気遮断層/積層シート(難燃層/綿布層)
まず以下のようにして断熱層、通気遮断層及び積層シート(難燃層/綿布層)を準備した。
【0053】
断熱層としては、フェルト状の炭素繊維(東邦テナックス(株)製パイロメックスフェルト#300HS)を用意した。
【0054】
通気遮断層としては、厚さ12μmのPETフィルムと厚さ30μmのアルミニウム箔との積層体を準備した。
【0055】
積層シートは、以下のようにして準備した。まず難燃シリコーンコンパウンド(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)社製SH502U A/B)100質量部に加硫剤3.5質量部を添加し、トルエンに溶解し、粘度を200〜400dPa・sに調整してから脱泡を行ってシリコン糊を得た。その後、このシリコン糊を、厚さ320μmの綿布にナイフオーバーロールコータにて塗布し、連続乾燥炉にて乾燥後、加硫し、150〜170℃で硬化させ、厚さ30〜100μmのシリコーンゴムからなる難燃層を綿布上に形成し、積層シートを準備した。
【0056】
次に、上記のようにして準備した1枚の断熱層、2枚の通気遮断層、2枚の積層シートを、積層シート(難燃層/綿布層)/通気遮断層/断熱層/通気遮断層/積層シート(難燃層/綿布層)のようにして重ね合わせた。
【0057】
そしてこれを、縫製用糸を用いて縫製することにより一体化し、シート本体を得た。
【0058】
一方、積層シート/通気遮断層/積層シートの層構成を有するベルトの一端に金具(一本線送り)を取り付けたシート締結具を2本準備した。なお、積層シート及び通気遮断層としてはそれぞれ、実施例1と同様のものを用いた。
【0059】
そして、ベルトの中央部分を、縫製用糸を用いて縫製した。こうして保護シートを得た。
【0060】
(比較例1)
(保護シートの構成:難燃層/通気遮断層/断熱層/通気遮断層/難燃層)
綿布を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして保護シートを得た。
【0061】
(比較例2)
(保護シートの構成:積層体(難燃層/通気遮断層)/断熱層/積層体(難燃層/通気遮断層)
まず断熱層として、6mmのセラミックブランケットを用意した。
【0062】
次に、アクリル系粘着剤100質量部に硬化剤1.4質量部を添加した。その後、この硬化剤を添加したアクリル系粘着剤を、厚さ170μmのガラスクロスにフローティングナイフコーターにて塗布し、連続乾燥炉にて100℃で乾燥させ、厚さ10μmの粘着剤層をガラスクロス上に得た。こうして粘着剤層付きガラスクロスからなる難燃層を2枚準備した。
【0063】
次に、上記のようにして準備した難燃層のうち粘着剤層がコーティングされている面とは反対面上に、上記と同様にして粘着剤層をコーティングした。
【0064】
次に、上記の両面に粘着剤層がコーティングされたガラスクロスのうちの一方の粘着剤層上に、20μmのアルミニウム箔を貼り合わせた。こうして、難燃層と通気遮断層とからなる積層体(難燃層/通気遮断層)を2枚得た。
【0065】
そして、1枚の断熱層、2枚の積層体を、積層体(難燃層/通気遮断層)/断熱層/積層体(難燃層/通気遮断層)のようにして重ね合わせた。
【0066】
次にこれを、ガラス糸にフッ素樹脂をコーティングした糸を用いたこと以外は実施例1と同様にして縫製し、シート本体を得た。
【0067】
そして、金具として波型金具を用い、ガラス糸をフッ素樹脂でコーティングした糸を用いたこと以外は実施例1と同様にしてシート本体にシート締結具を取り付け、保護シートを得た。
【0068】
実施例1、比較例1及び比較例2で得られた保護シートについて、耐水性、耐せん断性、耐火性および耐摩耗性を以下のようにして評価した。
【0069】
[耐水性の評価]
各保護シートを3日間水没させ、取り出した後、室温環境下に放置し、初期(水没前)、浸漬3日後(取出日)、取出日の1日後、取出日の3日後における保護シートの重量を測定した。結果を表1と図6に示す。
【表1】

【0070】
表1及び図6に示すように、実施例1の保護シートは、比較例1,2の保護シートに比べて、水没による重量変化率が極めて小さく、耐水性に極めて優れることが分かった。
【0071】
[耐せん断性]
耐せん断性は、各保護シートのうちの積層体を200mm×50mmのサイズに切り出し、100mmの長さの切り込みを入れた試験サンプルを作製し、この試験サンプルについて、「ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第4部:引裂試験 JISK6404−4444:1999 トラウザー法」に基づく引裂試験を行うことによって評価した。結果を表2に示す。なお、表2において、引裂に要した力が大きいほど、耐せん断性に優れることとなる。
【0072】
表2に示すように、実施例1の積層体は、比較例1の積層体と比べて、引裂きに要した力が顕著に大きかった。また実施例1の積層体は、比較例2の積層体と比べて、引裂に要した力が小さかったが、実使用上十分な値であることが確認できた。
【表2】

【0073】
[耐火性]
耐火性については、以下のようにして評価した。即ち、保護シートを、200mm×200mmのサイズに切り出して試験サンプルを準備し、この試験サンプルを、長さ250mmの通信ケーブルに巻き付け、試験サンプルの両端を、幅10mm×長さ25mmのシリコン含浸耐炎繊維にて外れないように締結した。そして、この試験サンプルにバーナーの炎を接触させた。このとき、試験サンプルのうち炎を接触させる部分は通信ケーブルに対して1巻きとなっている部分とし、バーナーの先端から出る炎の高さは100mm、バーナーの先端から試験サンプルまでの距離は70mmとし、炎と試験サンプルとの接触温度を890℃程度とした。そして、試験サンプルの内側であって炎と接触するサンプルの中央部に棒状温度計を差し込み、20分後の温度を測定した。結果を表3に示す。
【0074】
表3に示すように、実施例1、比較例1、比較例2の保護シートはいずれにおいても20分後の温度は400℃以下であり、耐火性に優れることが分かった。
【表3】

【0075】
[耐摩耗性]
耐摩耗性は、「ゴム引布・プラスチック引布試験方法−第3部:引張試験 JISK6404−22 耐摩耗試験」に基づく摩耗試験を行うことによって評価した。摩耗試験では、回転数ごとに摩耗量及び摩耗割合を測定した。結果を表4に示す。なお、表4では、摩耗量及び摩耗割合が小さいほど耐摩耗性に優れることとなる。また摩耗試験に際して、試験片の回転数、摩耗輪にかけた負荷及び摩耗輪は以下のようにした。
試験片回転数:60rpm
摩耗輪にかけた負荷:500g(500g×摩耗輪数(2枚)=1000g)
摩耗輪:H18
【0076】
摩耗試験の結果、実施例1及び比較例1の保護シートでは、摩耗輪の回転数が600回転以上になっても、摩耗輪によって研磨された部分は表面の難燃層のみであった。これに対し、比較例2の保護シートでは、摩耗輪の回転数が600回転以上になると、アルミニウム箔が露出してしまった。
【表4】

上記結果より、実施例1の保護シートは、比較例2の保護シートに比べて、耐摩耗性の点で十分に優れるものであった。また実施例1の保護シートは、比較例1の保護シートに比べると耐摩耗性の点では同等であったが、実使用上十分な耐摩耗性を有することが確認できた。
【0077】
以上より、本発明の通信ケーブル用保護シートは、特に耐水性に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0078】
1…断熱層、2…通気遮断層、3…樹脂層、4…金属層、5…綿布層、6…難燃層、7…積層シート、8…積層体、10…シート本体、11…糸、12…ベルト、13…金具、14…シート締結具、30…ケーブル受け金物、100…保護シート、200…保護シート付き通信ケーブル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱層の両面にそれぞれ積層体を設けてなるシート本体を備えており、
前記積層体は、
(1)前記断熱層上に配置され、金属層を含む通気遮断層と、
(2)前記通気遮断層上に配置される綿布層と、
(3)前記綿布層上に配置される難燃層とを有すること、
を特徴とする通信ケーブル用保護シート。
【請求項2】
前記積層体において、前記綿布層は前記通気遮断層上に非接着の状態で配置されている、請求項1に記載の通信ケーブル用保護シート。
【請求項3】
断熱層の両面にそれぞれ積層体を形成してシート本体を形成するシート本体製造工程を含み、
前記積層体は、
(1)前記断熱層上に配置され、金属層を含む通気遮断層と、
(2)前記通気遮断層上に配置される綿布層と、
(3)前記綿布層上に配置される難燃層とを有すること、
を特徴とする通信ケーブル用保護シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の通信ケーブル用保護シートを通信ケーブルに巻き付けてなる保護シート付き通信ケーブル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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