説明

通信システム、トランシーバ、ノード

【課題】スリープモードにあるノードを個別にウェイクアップすることが可能な通信システムにおいて、スリープモードにあるノードの消費電力を増大させることなく、自ノードに対する起動用フレームを識別できるようにする。
【解決手段】起動フレーム検出部17は、レシーバ16のコンパレータCP2を介して通信路LNを監視し、フレームの先頭(開始タイミング)からドミナントが3ビット連続する箇所(境界ポイント)までの領域(起動パタン領域)に設定されたビットパタンから抽出した特徴量(第1領域および第2領域の数)が、予め設定された起動量と一致するものを起動フレームとして認識し(WA←アクティブレベル)、その起動フレームの指定パタン領域に設定されている指定パタンをデューティ信号とみなしてデコードした値が、自ECU10に割り当てられた割当パタンと一致する場合に通常モードに遷移する(WU←アクティブレベル)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリープ/ウェイクアップ機能を有するノードによって構成された通信ネットワークに関し、特に、スリープ中のノードを個別に起動する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された複数のノード間の通信を実現する車載LANのプロトコルとして、CAN(Controller Area Network)が標準化されている(ISO11898−1)。
【0003】
CANでは、通信路上の信号レベルとして、ドミナントとレセッシブとが定義されており、いずれか一つのノードでもドミナントの信号を出力した場合には、通信路上の信号レベルはドミナントとなるようにされている。
【0004】
また、通信路を介して受信した信号からクロック誤差補正を可能とするために、同一の信号レベルが5ビット継続すると、反転した信号レベルを有するスタッフビットを挿入することも規定されている。
【0005】
更に、CANでは、スリープ/ウェイクアップ機能を有する物理層も定義(ISO11898−5)されている。具体的には、省電力のために通信機能を停止させる動作モードであるスリープモードにあるノードは、通信路上でドミナントを検出するとウェイクアップして、通信機能を利用可能な動作モードである通常モードに遷移するように規定されている。
【0006】
ところで、このようなウェイクアップ/スリープ機能を有する通信システムでは、スリープモードにあるノード(以下、休止ノードという)がある場合に、休止ノードをスリープ状態にしたまま、通常時の動作モードである通常モードにあるノード(以下、起動ノードという)同士でだけで通信を行ったり、必要なノードだけを選択的にウェイクアップしたりするという使い方をすることができないという問題があった。
【0007】
即ち、通信を行うということは、通信路上にドミナントが現れることを意味するため、起動ノード同士が通信を行うと、全ての休止ノードが起動してしまうからである。
これに対して、休止ノードのトランシーバにバスを監視させ、バスがアイドル状態ではないことをトランシーバが検出すると、受信したフレームを解析するプロトコルコントローラを限定的に起動(電源供給を再開)し、プロトコルコントローラが、受信したフレームが自ノードをウェイクアップさせるためのフレームであるとプロトコルコントローラが判断した場合に、ECU全体を起動(ウェイクアップ)する技術が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−529393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、プロトコルコントローラでは、フレームを構成する各ビットを個別に識別しなければならないため、通常、その動作のためには、高精度なクロック源からクロックの供給を受けることが必要となる。つまり、プロトコルコントローラを起動するには、高精度なクロック源も同時に起動しなければならない。
【0010】
そして、起動ノードと休止ノードとが混在する状況において、起動ノード間の通信(即ち、バスの非アイドル状態)が継続していると、その間、休止ノードでは、プロトコルコントローラや高精度なクロック源が動作し続けることになり、休止ノードである(ECUとしては機能していない)にも関わらず、無視できない電力を消費し続けてしまうことになるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記問題点を解決するために、スリープモードにあるノードを個別にウェイクアップすることが可能な通信システムにおいて、スリープモードにあるノードの消費電力を増大させることなく、自ノードに対する起動用フレームを識別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するためになされた本発明の通信システムでは、通信路に接続されたノード間の通信にNRZ(Non Return to Zero)符号を用いる。なお、通信路に送出されるフレームの生成規則によって許容される同一信号レベルのビットの最大連続数である許容連続ビット数に相当する期間を超えて、通信路の信号レベルが該通信路において劣位な信号レベルであるレセッシブのまま継続した状態を待機状態とする。
【0013】
そして、ノードは、通信路が待機状態になった後、該通信路において優位な信号レベルであるドミナントに変化すると、これをフレームの先頭として認識すると共に、通信路を介した通信を停止して消費電力を抑制するための動作モードであるスリープモードの時に、所定の起動フレームが通信路に送出されると、通信路を介した通信を実行可能な動作モードである通常モードに遷移するように構成されている。
【0014】
また、本発明の通信システムでは、起動フレームは、当該フレームが起動用のフレームであることを示すためのビットパタンを設定するための領域である起動パタン領域と、起動対象となるノードを指定するためのビットパタンを設定するための領域である指定パタン領域とを有し、且つ、ビットパタンが予め設定された境界条件を満たすフレーム中の箇所を境界ポイントとして、フレームの先頭から境界ポイントまでの領域が起動パタン領域として用いられる。
【0015】
そして、ノードは、信号レベルがドミナントであり且つ予め設定された第1のビット幅を有する領域を第1領域、信号レベルがレセッシブであり且つ予め設定された第2のビット幅を有する領域を第2領域として、起動パタン領域で検出される第1領域の数および第2領域の数のうち少なくとも一方を特徴量とし、その特徴量が予め設定された起動量と一致し、且つ、指定パタン領域で検出されるビットパタンが自ノードを指定するために予め割り当てられた割当パタンと一致する場合に、通常モードに遷移する。
【0016】
このように本発明の通信システムでは、フレームの起動パタン領域に設定されたビットパタンから抽出される特徴量(第1領域の数や第2領域の数)が、予め設定された起動量と一致するか否かを判定することによって、フレームを構成する個々のビットを解釈(デコード)することなく、起動フレームであるか否かを識別している。
【0017】
従って、本発明の通信システムによれば、スリープモードにあるノードが起動フレームを受信したか否かを判定する際に、プロトコルコントローラや高精度なクロック源を動作させる必要がないため、スリープモードにあるノードの消費電力を大幅に削減することができる。
【0018】
また、起動フレームを受信した全てのノードを無条件に起動するのではなく、指定パタン領域で検出されるビットパタンにより指定されたノードのみを起動するため、起動する必要のないノードが無駄に起動すること、ひいては当該通信システム全体としての消費電力を削減することができる。
【0019】
ところで、境界ポイントは、例えば、ドミナントがM(Mは2以上の整数)ビット以上連続するフレーム中の箇所とすることが考えられる。この場合、第1領域のビット幅をMビット未満に設定すると共に、第2領域のビット幅を許容連続ビット数以下に設定すればよい。
【0020】
また、境界ポイントは、例えば、信号レベルがレセッシブからドミナントに変化するエッジおよびドミナントからレセッシブに変化するエッジのうち少なくとも一方を注目エッジとして、フレームの先頭からカウントして予め設定された境界数個目の注目エッジが検出されるフレーム中の箇所としてもよい。
【0021】
本発明の通信システムにおいて、指定パタン領域は、複数ビットからなる単位ブロック毎に符号化されていることが望ましい。この場合、単位ブロック単位で処理を行えばよいいため、複数ビットがMビットである場合、クロックを用いてデコードするとしても、通常のプロトコルコントローラに必要なクロックの1/Mの精度があれば処理が可能となる。
【0022】
また、この場合、例えば、単位ブロックを3ビット以上で構成し、デューティ比の異なる2種類の符号パタンによって1ビットの情報を表すようにしてもよい。具体的には、単位ブロックが3ビットの場合は「001」「011」、4ビットの場合は「0001」「1110」等とすることが考えられる。
【0023】
また、本発明の通信システムにおいて、通信路における通信プロトコルとして、CAN(Controller Area Network)を用いる場合、CANにおけるデータフレームのDLCより前の領域を起動パタン領域、データフィールドを指定パタン領域として使用すればよい。
【0024】
次に、請求項6に記載された本発明のトランシーバは、NRZ符号(Non Return to Zero)を用いて通信を行う通信路に接続され、通信路を介した通信を停止して消費電力を抑制するための動作モードであるスリープモードの時に、所定の起動フレームが通信路に送出されると、通信路を介した通信を実行可能な動作モードである通常モードに遷移するように構成されたノードにおいて、通信路を介した信号を送受信するために使用される。
【0025】
そして、本発明のトランシーバでは、開始タイミング検出手段が、通信路に送出されるフレームの生成規則によって許容される同一信号レベルのビットの最大連続数である許容連続ビット数に相当する期間を超えて、通信路の信号レベルが該通信路において劣位な信号レベルであるレセッシブのまま継続した状態を待機状態として、通信路が待機状態になった後、該通信路において優位な信号レベルであるドミナントに変化したタイミングを開始タイミングとして検出する。
【0026】
また、境界ポイント検出手段が、動作モードがスリープモードの時に開始タイミング検出手段で開始タイミングが検出されると、フレームのビットパタンが予め設定された境界条件を満たす箇所を境界ポイントとして検出する。
【0027】
更に、特徴量判定手段が、信号レベルがドミナントであり且つ予め設定された第1のビット幅を有する領域を第1領域、信号レベルがレセッシブであり且つ予め設定された第2のビット幅を有する領域を第2領域、開始タイミング検出手段にて開始タイミングが検出されてから境界ポイント検出手段にて境界ポイントが検出されるまでの領域を起動パタン領域として、起動パタン領域で検出される第1領域の数および第2領域の数の少なくとも一方を特徴量とし、その特徴量が予め設定された起動量と一致するか否かを判定する。
【0028】
そして、特徴量判定手段により、特徴量が起動量と一致すると判定されると、符号パタン判定手段が、フレームの予め設定された指定パタン領域に示された符号パタンと予め設定された割当パタンとを比較して、両者が一致する場合に、起動フレームを受信したことを示すウェイクアップ信号を出力する。
【0029】
このように構成された本発明のトランシーバは、上述した本発明の通信システムにおけるノードを構成する際に好適に用いることができる。
ところで、境界ポイント検出手段は、例えば、フレームにおいて同一信号レベルがM(Mは2以上の整数)ビット以上連続していることを境界条件として用いるように構成されていてもよい。この場合、第1領域および第2領域のビット幅をMビット未満に設定すればよい。
【0030】
但し、境界条件には、必ずしもドミナント,レセッシブの両方を用いる必要がなく、ドミナントがMビット以上連続していることを境界条件とした場合には、第1領域のビット幅をMビット未満に設定し、逆にレセッシブがMビット以上連続していることを境界条件とした場合には、第2のビット幅をMビット未満に設定すればよい。
【0031】
そして、このような境界ポイント検出手段は、具体的には、次のように構成することができる。
即ち、第1の充電回路が、通信路の信号レベルがレセッシブおよびドミナントのうちいずれか一方の信号レベルの時に、第1の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、通信路の信号レベルがいずれか他方の信号レベルの時に、第1の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する。
【0032】
そして、境界ポイント検出手段は、第1の充電回路による充電がMビットに相当する期間以上継続した時の第1の容量性素子の充電電圧に相当する大きさに設定された終了判定閾値と、第1の容量性素子の充電電圧とを比較することで、同一信号レベルがMビット以上連続する領域を検出することで境界ポイントを検出する。
【0033】
このように構成された境界ポイント検出手段は、境界ポイントの検出を、フレームを構成する各ビットのデコードを行うことなく(ひいては、デコードの動作に必要な高精度なクロックを使用することなく)、アナログ回路によって実現することができる。
【0034】
また、境界ポイント検出手段は、例えば、レセッシブからドミナントに変化するエッジおよびドミナントからレセッシブに変化するエッジのうち少なくとも一方を注目エッジとして、フレームにおいて注目エッジをカウントした値が予め設定された境界数に達することを境界条件として用いるように構成されていてもよい。
【0035】
この場合、境界ポイント検出手段は、例えば、注目エッジによって動作するカウンタによって構成することができる。つまり、境界ポイントの検出を、フレームを構成する各ビットのデコードを行うことなく(ひいてはデコードの動作に必要な高精度なクロックを使用することなく)、アナログ回路によって実現することができる。
【0036】
また、本発明のトランシーバにおいて、特徴量検出手段は、例えば、第2の容量性素子、第2の充電回路第1領域カウント回路を備えていてもよい。
即ち、第2の充電回路が、通信路の信号レベルがレセッシブの時に、第2の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、通信路の信号レベルがドミナントの時に、第2の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する。そして、第2の充電回路による充電が第1のビット幅に相当する期間継続した時の第2の容量性素子の充電電圧に相当する大きさ設定された閾値を第1閾値として、第1領域カウント回路が、第2の容量性素子の充電電圧が第1閾値を超えた回数を第1領域の数としてカウントする。
【0037】
また、特徴量検出手段は、例えば、第3の容量性素子、第3の充電回路、第2領域カウント回路を備えていてもよい。
即ち、第3の充電回路が、通信路の信号レベルがドミナントの時に、第3の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、通信路の信号レベルがレセッシブの時に、第3の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する。そして、第3の充電回路による充電が第2のビット幅に相当する期間継続した時の第3の容量性素子の充電電圧に相当する大きさ設定された閾値を第2閾値として、第2領域カウント回路が、第3の容量性素子の充電電圧が超えた回数を第2領域の数としてカウントする。
【0038】
このように構成された特徴量判定手段は、第1領域の数や第2領域の数(即ち、特徴量)を、フレームを構成する個々のビットの信号レベルを個別に判定することなく(ひいては、各ビットに同期した高精度なクロックを使用することなく)、アナログ回路によって求めることができる。
【0039】
ところで、開始タイミング検出手段は、例えば次のように構成することができる。
即ち、第4の充電回路が、通信路の信号レベルがドミナントの時に、第4の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、通信路の信号レベルがレセッシブの時に、第4の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する。
【0040】
そして、開始タイミング検出手段は、この第4の充電回路による充電が許容連続ビット数に相当する期間以上継続した時の第4の容量性素子の充電電圧に相当する大きさ設定された待機判定閾値と、第4の容量性素子の充電電圧とを比較することで、待機状態にあるか否かを判断する。具体的には、第4の容量性素子の充電電圧が待機判定閾値より大きい場合に待機状態にあると判断する。
【0041】
このように構成された開始タイミング検出手段では、待機状態にあるか否かの判断を、フレームを構成する個々のビットをカウントすることなく(ひいては、各ビットに同期した高精度なクロックを使用することなく)、アナログ回路によって実現することができる。
【0042】
また、本発明のトランシーバの符号パタン判定手段での判定の対象となる符号パタンが、レセッシブからドミナントに変化するエッジまたはドミナントからレセッシブに変化するエッジのいずれか一方を注目エッジとして、注目エッジで区切られた複数ビットで構成され、且つデューティ比が異なる2種類のパタンからなる場合、符号パタン判定手段は、例えば、次のように構成することができる。
【0043】
即ち、第5の充電回路が、一定の大きさの正極性の充電電流または一定の大きさの負極性の充電電流を、通信路の信号レベルが変化する毎に交互に切り替えて第5の容量性素子に供給することで該第5の容量性素子を充放電すると共に、注目エッジが検出される毎に、第5の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットする。
【0044】
そして、符号パタン判定手段は、注目エッジが検出される毎に、第5の充電回路がリセットする前の第5の容量性素子の充電電圧が、予め設定された閾値より大きいか否かによって、符号パタンが0,1のいずれに該当するかを判定する。
【0045】
つまり、正極性の充電電流と負極性の充電電流の大きさが同じである場合、注目エッジで区切られた期間(単位ブロック)での符号パタンのデューティ比が50%であれば、期間の終了時における第5の容量性素子の充電電圧は初期電圧と一致するため、デューティ比が50%以外に設定されていれば、符号パタン判定手段により、0,1のいずれかに判定すること、即ち、デューティ信号を復号することができるのである。
【0046】
また、本発明のトランシーバにおいて、復号手段は、次のように構成されていてもよい。
即ち、クロック生成回路が、通信路上の信号に基づき、受信したフレームに同期したクロックを生成し、デコーダ回路が、クロック生成回路にて生成されたクロックを用いて、符号パタンを復号する。
【0047】
つまり、符号パタンは複数ビットからなるため、デコーダ回路は、通常のプロトコルコントローラを動作させるクロックより、精度の低いクロックで動作させることができるため、クロック生成回路として、安価で消費電力の低いものを用いることができる。
【0048】
次に、請求項15に記載された本発明のノードは、請求項6乃至請求項14のいずれか1項に記載のトランシーバを備えている。そして、通信制御手段が、トランシーバを介して信号を送受信し、動作モード遷移手段が、動作モードが通常モードの時に、予め設定されたスリープ条件が満たされると、動作モードをスリープモードに遷移させ、動作モードがスリープモードの時に、トランシーバからウェイクアップ信号が出力されると、動作モードを通常モードに復帰させる。
【0049】
このように構成された本発明のノードは、上述した通信システムを構成する際に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明が適用された通信システムの構成を示すブロック図。
【図2】通信システムにおけるデータフレームの構成を示す説明図。
【図3】トランシーバの概略構成を示す一部回路図を含んだブロック図。
【図4】待機状態検出回路の構成を示す回路図およびその動作を示すタイミング図。
【図5】起動パタン判定回路の構成を示す回路図。
【図6】起動フレーム受信時の起動パタン判定回路の動作を示すタイミング図。
【図7】非起動フレーム受信時の起動パタン判定回路の動作を示すタイミング図。
【図8】指定パタン判定回路の構成を示す回路図。
【図9】エッジ検出回路およびデューティ比デコーダの動作を示すタイミング図。
【図10】割当パタンと一致した場合の指定パタン判定回路の動作を示すタイミング図。
【図11】割当パタンと不一致である場合の指定パタン判定回路の動作を示すタイミング図。
【図12】使用可能な他の起動用IDの例を示す説明図。
【図13】起動パタン判定回路の他の構成例を示す回路図。
【図14】起動フレーム受信時の起動パタン判定回路の動作を示すタイミング図。
【図15】非起動フレーム受信時の起動パタン判定回路の動作を示すタイミング図。
【図16】指定パタン判定回路の他の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、通信プロトコルとしてCAN(Controller Area Network)が用いられた車載用の通信システム1の構成を示すブロック図である。
【0052】
図1に示すように、通信システム1は、車両に搭載された複数の電子制御ユニット10a,10b,10c,…を、共通の通信路LNを介して相互に通信可能となるように接続することで構成され、これら電子制御ユニット10a,10b,10c,…のそれぞれがノードとして機能するようにされている。以下では、電子制御ユニットをECUとよび、また、ECU10a,10b,10c,10d…を、特に区別しなでいずれか一つを指す場合はECU10と表記する。
【0053】
このうち、通信路LNは一対のバスCANH,CANLで構成され、その両端は、図示しない終端抵抗によってそれぞれ終端されている。そして、通信路LNでは、両バスCANH,CANL間の電位差によって、通信路LNにおいて優位な信号レベルであるドミナント(例えば0)または通信路LNにおいて劣位な信号レベルであるレセッシブ(例えば1)を表現した差動信号によってNRZ符号が伝送される。
【0054】
ECU10a,10b,10c,10d…としては、具体的には、エンジン制御を司るエンジンECU、ブレーキ制御を司るブレーキECU、ステアリング制御を司るステアリングECU、サスペンション制御を司るサスペンションECU、ライトのオン/オフを制御するECU等、種々の電子制御装置を挙げることができる。なお、図1では、ECU10を、4つだけ図示しているが、通信システム1を構成するECU10の数がこれに限定されないことは言うまでもない。
【0055】
また、ECU10の一つ(ここではECU10b)には、通信システム1全体を起動するトリガとなる外部イベントが図示しない車載装置から入力されるように構成されている。
【0056】
なお、外部イベントは、例えば、車両のドアが開閉操作された時に発生させてもよいし、通信システム1の起動のために設けられたスイッチが操作された時に発生させてもよい。
【0057】
更に、ECU10は、制御対象を制御する際の通常の動作モードである通常モードと、通信を停止して消費電力を抑えるための動作モードであるスリープモードとで遷移するように構成されている。
【0058】
<フレームフォーマット>
ここで、図2は、通信システム1においてデータの送受信に使用するデータフレームの構成を示す説明図である。
【0059】
図2に示すように、データフレームは、1ビットのスタートオブフレーム(SOF)、11ビットのアイデンティファイア(ID)と1ビットのRTRビットで構成されたアービトレーションフィールド、各1ビットのIDEビット,予約ビット(rO)と4ビットのデータ長コード(DLC)からなるコントロールフィールド、0〜64ビット(即ち0〜8バイト)のデータからなるデータフィールド、15ビットのCRCシーケンスと1ビットのCRCデリミタからなるCRCフィールド、各1ビットのACKスロットとACKデリミタからなるACKフィールド、7ビットのエンドオブフレーム(EOF)により構成されている。
【0060】
なお、標準フォーマットのデータフレームでは、図中太線で示すように、SOF,RTRビット,IDEビット,r0は常にドミナント(0)となり、CRCデリミタ,ACKデリミタ,EOFは常にレセッシブ(1)となる。つまり、データフレーム中には、必ず3ビット連続してドミナントとなる領域(RTR,IDE,r0)が存在する。以下では、データフィールドを指定パタン領域とも称する。
【0061】
そして、フレームを送信する際には、先行するフレームのEOFの後に挿入される3ビットのレセッシブで構成されたインターミッション(図示せず)の次のビットから送信を開始するように規定されている。また、フレーム中では、同一信号レベルがN(ここではN=5)ビット連続すると、反転した信号レベルを有するスタッフビットを挿入するように規定されている。
【0062】
<起動フレーム>
また、通信システム1では、動作モードがスリープモードにあるECU10を起動(ウェイクアップ)する時に使用する起動フレームとして、IDを0x333に設定したデータフレームを使用する。従って、このIDは、動作モードが通常モードにあるECU10同士の通信での使用が禁止されることになる。
【0063】
つまり、起動フレームのSOF,IDに設定されるビットパタンは、<0>01100110011となる。但し、<0>はSOFを表す。また、このビットパタンに続き3ビット連続でドミナント(RTR,IDE,r0)となる。
【0064】
以下では、フレーム中で同一の信号レベルが3ビット以上連続することを境界条件とし、フレーム中で境界条件を満たす箇所を境界ポイントという。また、フレームの先頭から境界ポイントまでの領域を起動パタン領域という。
【0065】
つまり、起動フレームでは、RTR,IDE,r0の部分が境界ポイント、それ以前のSOF,IDの全体が起動パタン領域となる。そして、起動パタン領域には、信号レベルがドミナントで且つ2ビット幅を有する第1領域と、信号レベルがレセッシブで且つ2ビット幅を有する第2領域とが、交互に3個ずつ並んだビットパタンを有したものとなる。
【0066】
なお、ID中にドミナントが3ビット連続するビットパタンが含まれている場合は、その部分が境界ポイントとなり、それ以前のSOFとIDの一部が起動パタン領域となる。このように、フレーム中では、少なくともRTR,IDE,r0の部分で必ず同一の信号レベルが3ビット連続するため、起動パタン領域は、ID領域を超えた大きさとなることはなく、ID=0x333としたときの起動パタン領域は、該起動パタン領域中に第1領域と第2領域とが3回ずつ現れる唯一の特異なビットパタンとなる。
【0067】
次に、符号パタン領域には、起動するECU10を個別に指定するための指定コードを表す符号パタンが設定される。この符号パタンは、4ビットを単位ブロックとして、この単位ブロック毎に1ビットの値を表す。
【0068】
なお、符号パタンは、単位ブロックの境界で必ずレセッシブからドミナントに変化するエッジ(以下「注目エッジ」と称する)が検出されるように設定され、具体的には、データ‘0’を表す符号パタンとして「0111」を用い、データ‘1’を表す符号パタンとして「0001」を用いるものとする。つまり、デューティ比が異なる2種類の符号パタンによって1ビットを表すように設定される。そして、符号パタン領域の符号パタンをデコードすることで指定コードが得られることになる。
【0069】
更に、最後の単位ブロックの末尾は、CRCシーケンスとの境界となり、注目エッジが検出されるとは限らないため、最後の単位ブロックは、上述のデータ‘0’,‘1’に対応する符号パタンではなく、終了パタン「0010」または「0100」が設定される。つまり、この終了パタンは、単位ブロックの先頭側の境界と末尾側の境界以外の箇所とで合計2箇所の注目エッジが確実に検出されるような設定であればよい。
【0070】
なお、起動フレームのデータ長コード(DLC)は、そのDLC領域の末尾が必ずレセッシブとなり、コントロールフィールドとデータフィールドとの境界(即ち、最初の単位ブロックの先頭)で、必ずレセッシブからドミナントへの変化が検出されるように奇数、もしくはDLC領域の末尾をレセッシブに固定した8バイトに設定される。
【0071】
つまり、指定コードのコード長(単位ブロックの数)は、データ長をpとして、p(バイト)×8(1バイトのビット数)/4(単位ブロックのビット数)−1(終了パタン)となるため、具体的には1(p=1の場合),5(p=3の場合),9(p=5の場合),13(p=7の場合)等から選択されることになる。
【0072】
<ECU>
図1に戻り、ECU10は、自動車の各部を制御するための制御処理や他のECUと通信を行うための処理を実行するマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)11と、通信路LNに接続されて、マイコン11から与えられるデータ(送信フレーム)TxDを通信路LNに出力すると共に、通信路LN上のデータ(受信フレーム)RxDを受信してマイコン11に入力するトランシーバ12と、マイコン11やトランシーバ12に電源供給を行う電源回路13とを備えている。また、マイコン11は、トランシーバ12の動作を切り替えるスタンバイ信号STBをトランシーバ12に供給し、トランシーバ12は、通信路LNを介して起動フレームを受信したことを示すウェイクアップ信号WUまたはWAをマイコン11に供給するように構成されている。
【0073】
なお、二つのウェイクアップ信号WU,WAのうち、ウェイクアップ信号WAは、通信路LNにフレームが送出された時には必ず起動する必要があるECU10(例えば、車載LANを監視する機能を有するECUや、LAN同士を接続するゲートウェイ機能を有したECU等)で使用され、以下では、無差別ウェイクアップ信号とも称する。また、ウェイクアップ信号WUは、自ECUを指定する指定パタンが設定された起動フレームを受信した場合だけウェイクアップすればよいECU10で使用され、以下では、個別ウェイクアップ信号とも称する。
【0074】
なお、図1に示したECU10の構成は、いずれのECU10においても共通であり、各ECU10は、上記構成以外に、それぞれのECU10に個別に割り当てられた機能を実現するための構成を備えている。
【0075】
<マイコン>
マイコン11は、CPU,ROM,RAM,IOポート等からなるマイコンにおける周知の構成の他、CANプロトコルに従って、フレームの送受信や、どのフレームを優先的に処理するかを決定する調停制御や、通信エラー処理等を実行するCANコントローラ14を備えている。
【0076】
また、マイコン11は、CPUやCANコントローラ14を動作させるための動作クロックを生成するクロック回路(図示せず)を備えており、クロック回路への電源供給を遮断することで、クロック回路の動作(ひいてはCPU自身の動作)を停止させることができるように構成されている。このクロック回路が動作している時の動作モードが通常モードとなり、クロック回路が動作を停止している時の動作モードがスリープモードとなる。
【0077】
更に、マイコン11は、動作モードが通常モードであれば、スタンバイ信号STBを非アクティブに設定し、スリープモードであれば、スタンバイ信号STBをアクティブに設定する。
【0078】
そして、マイコン11は、動作モードが通常モードの時に、自身に割り当てられた各種制御を実行し、その実行中に、予め定められたスリープ条件が成立すると、スリープ処理を実行する。
【0079】
このスリープ処理では、スタンバイ信号STBをアクティブに切り替えることで、トランシーバ12の通信機能を停止させ、トランシーバ12の起動フレーム監視機能を動作させた後、クロック回路への電源供給を遮断して、マイコン11自身を停止させることにより、動作モードをスリープモードに遷移させる。
【0080】
また、マイコン11は、スリープモードの時に、トランシーバ12からのウェイクアップ信号WU(またはWA)がアクティブ(本実施形態ではハイレベル)になると、クロック回路が起動するように構成されている。そして、クロック回路が起動することにより、CPUが動作を開始してウェイクアップ処理を実行する。
【0081】
このウェイクアップ処理では、スタンバイ信号STBを非アクティブに切り替えることで、トランシーバ12の起動フレーム監視機能を停止させ、トランシーバ12の通信機能を動作させる。これにより、ECU10の動作モードが通常モードに遷移する。
【0082】
また、他のECUをウェイクアップさせる機能を有したECU10では、動作モードが通常モードの時に予め定められた起動条件が成立すると、起動対象となるECUの指定パタンを設定した起動フレームを送信することで、起動対象のECUを起動(ウェイクアップ)させる。なお、動作モードがスリープモードにあるECU10bが外部イベント(起動条件の一つ)を受け付けた場合、マイコン11では、ウェイクアップ信号WU(またはWA)がアクティブになった場合と同様に、クロック回路が起動し、上述のウェイクアップ処理を実行後に、起動フレームを送信する。
【0083】
<トランシーバ>
図3は、トランシーバの概略構成を示す一部回路図を含んだブロック図である。
図3に示すようにトランシーバ12は、通信路LNを構成する一方のバスCANHと電源VCCとを接続する経路を導通/遮断するバス駆動用のトランジスタTR1と、通信路LNを構成する他方のバスCANLとグランドGNDとを接続する経路を導通/遮断するバス駆動用のトランジスタTR2と、CANコントローラから入力される送信データTxDの信号レベルに従って、トランジスタTR1,TR2を同時にオン,オフするドライバ15とを備えている。なお、各トランジスタTR1,TR2のバスCANH,CANLとの接続端には、トランジスタTR1,TR2を保護するためのダイオードD1,D2がそれぞれ接続されている。
【0084】
また、トランシーバ12は、バスCANH,CANLの信号レベル(即ち、差動信号の信号レベル)を比較し、その比較結果を、CANコントローラ14に供給する受信データRxDとして出力するする第1コンパレータCP1、およびバスCANH,CANLの信号レベルを比較し、その比較結果を受信信号Rslとして出力する第2コンパレータCP2からなるレシーバ16とを備えている。ちなみにこれらコンパレータ(CP1、CP2)は、CANHとCANLの信号レベル差(電位差)が仕様で定められている値(本実施形態では、0.5V)以上あるか否かを比較してその結果を出力するものである。
【0085】
更に、トランシーバ12は、第2コンパレータCP2からの受信信号Rslに基づき、起動フレームを検出するとウェイクアップ信号WU,WAをマイコン11に出力する起動フレーム検出部17と、マイコン11からのスタンバイ信号STBに従って、ドライバ15,レシーバ16,起動フレーム検出部17への電源供給を許可または禁止することで、これら各部の動作を制御するウェイクアップ制御部18とを備えている。
【0086】
なお、送信データTxDおよびスタンバイ信号STBの信号線は、それぞれ抵抗R1,R2を介して電源電圧VCCにプルアップされている。つまり、ECU10がスリープモードとなり、マイコン11の動作が停止した時に、トランシーバ12に入力される送信データTxDが「1」に、スタンバイ信号STBがアクティブレベルに固定されるように設定されている。
【0087】
また、バスCANH,CANLは、それぞれ、トランジスタTR1,TR2がオフの時に、図示しない周知の終端抵抗によって信号レベル差が発生しない、即ちレセッシブの状態となるようにされている。
【0088】
そしてドライバ15は、送信データTxDが「1」の時には、トランジスタTR1,TR2をいずれもオフし、送信データTxDが「0」の時には、トランジスタTR1,TR2をいずれもオンする。つまり、通信路LN上の差動信号の信号レベルは、送信データTxDが「1」の時に0V(レセッシブ)となり、送信データTxDが「0」の時に2V(ドミナント)となるようにされている。
【0089】
レシーバ16を構成する第1コンパレータCP1および第2コンパレータCP2は、ウェイクアップ制御部18からの指示に従って、いずれか一方が動作するように構成されている。また、第1コンパレータCP1は、差動信号の信号波形を正確に再現できるように、動作速度の速い(消費電力が比較的大きい)素子を用いて構成され、一方、第2コンパレータCP2は、消費電力の小さい素子を用いて構成されている。
【0090】
ウェイクアップ制御部18は、スタンバイ信号STBが非アクティブレベル(動作モードが通常モード)の場合は、ドライバ15およびレシーバ16の第1コンパレータCP1に対する電源供給を許可することで、通信路LNを介して他のECU10と通信する通信機能を動作させる共に、レシーバ16の第2コンパレータCP2および起動フレーム検出部17に対する電源供給を禁止することにより、起動フレームを検出する起動フレーム監視機能を停止させる。
【0091】
また、ウェイクアップ制御部18は、スタンバイ信号STBがアクティブレベル(動作モードがスリープモード)の場合は、逆に、ドライバ15およびレシーバ16の第1コンパレータCP1に対する電源供給を禁止することで、通信機能を停止させると共に、レシーバ16の第2コンパレータCP2および起動フレーム検出部17に対する電源供給を許可することで、起動フレーム監視機能を動作させる。
【0092】
<起動フレーム検出部>
起動フレーム検出部17は、図3(b)に示すように、第2コンパレータCP2からの受信信号Rslに基づいて、通信路LNが待機状態にある場合にハイレベルとなる待機状態検出信号DTwを生成する待機状態検出回路21と、待機状態検出信号DTwがハイレベルからロウレベルに変化した場合、即ち、通信路LNに送出されたフレームの起動パタン領域に設定されたビットパタンが、起動用のIDを表すものである場合に信号レベルがアクティブレベルとなる無差別ウェイクアップ信号WAを生成する起動パタン判定回路22と、無差別ウェイクアップ信号WAがアクティブとなった場合に、フレームの指定パタン領域に設定された指定パタンが、当該ECUに割り当てられた割当コードを表すものである場合に、信号レベルがアクティブレベルとなる個別ウェイクアップ信号WUを生成する指定パタン判定回路23とを備えている。
【0093】
以下、起動フレーム検出部17を構成する各部の回路構成および動作について詳述する。
<待機状態検出回路>
図4は、(a)が待機状態検出回路21の詳細な構成を示す回路図であり、(b)が待機状態検出回路21の各部の動作を示すタイミング図である。
【0094】
図4(a)に示すように、待機状態検出回路21は、一端が接地され電荷を充放電可能なコンデンサ31と、受信信号Rslの信号レベルに従って、コンデンサ31の非接地端を、接地レベルまたは定電流源32のいずれかに接続するスイッチ33と、電源電圧VCCを分圧する一対の抵抗からなり基準電圧(待機判定閾値)Vref1を発生させる分圧回路34と、反転入力端子に基準電圧Vref1が印加され、非反転入力端子にコンデンサ31の非接地端の電圧(以下「充電電圧」という)Vc1が印加されたコンパレータ35とからなり、コンパレータ35の出力を待機状態検出信号DTwとして出力するように構成されている。
【0095】
なお、スイッチ33は、受信信号Rslがドミナントの時に接地側に接続し、レセッシブの時に定電流源32側に接続するように設定されている。
また、定電流源32が供給する電流の大きさ、コンデンサ31の容量、基準電圧Vref1の大きさは、コンデンサ31を連続充電する期間が、通信路LN上の伝送符号の5ビットに相当する期間以下の長さでは、充電電圧Vc1が基準電圧Vref1に達することがなく、6ビットに相当する期間以上の長さになると、充電電圧Vc1が基準電圧Vref1を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0096】
このように構成された待機状態検出回路21では、図4(b)に示すように、充電電圧Vc1は、受信信号Rslがドミナントの時に初期電圧である0Vにリセットされ、受信信号Rslがレセッシブである間一定の割合で増大する。
【0097】
そして、レセッシブの連続数が6ビット未満であり、充電電圧Vc1が基準電圧Vref1以下の時には、待機状態検出信号DTwは、待機状態ではないことを示す非アクティブレベルとなる。一方、レセッシブの連続数が6ビット目に達して、充電電圧Vc1が基準電圧Vref1を超えると、その後、受信信号Rslがドミナントに変化するまでの間、待機状態検出信号DTwは、待機状態であることを示すアクティブレベルとなる。
【0098】
なお、待機状態か否かの判定基準となる6ビットは、フレーム生成規則の一つであるスタッフビットの挿入規則(同一信号レベルが5ビット続くと反転した信号レベルを有するスタッフビットを挿入)によって、フレーム中で許容される同一信号レベルの最大連続数(許容連続ビット数)である5ビットに基づき、これより大きな値に設定されている。
【0099】
<起動パタン判定回路>
図5は、起動パタン判定回路22の詳細な構成を示す回路図である。図6,図7は、起動パタン判定回路22の各部の動作を示すタイミング図である。
【0100】
図5に示すように、起動パタン判定回路22は、受信信号Rslの供給経路に設けられ、待機状態検出信号DTwの立ち下がりエッジのタイミング(以下「開始タイミング」と称する)、即ち、フレームの受信を開始したタイミングでON状態(供給経路を導通させた状態)となり、後述する終了信号DTeの立ち上がりエッジのタイミング(以下「終了タイミング」と称する)でOFF状態(供給経路を遮断した状態)となるスイッチ24と、スイッチ24を介して供給される受信信号が通信路LN上の伝送符号の2ビットに相当する期間だけドミナントが継続する領域である第1領域を検出する毎に短期間ハイレベルとなる第1領域検出クロックDCKを生成する第1領域検出回路25と、スイッチ24を介して供給される受信信号が通信路LN上の伝送符号の2ビットに相当する期間だけレセッシブが継続する領域である第2領域を検出する毎に短期間ハイレベルとなる第2領域検出クロックRCKを生成する第2領域検出回路26とを備えている。
【0101】
また、起動パタン判定回路22は、スイッチ24を介して供給される受信信号Rslから、通信路LN上の伝送符号の3ビットに相当する期間以上、同一信号レベルが継続する領域(境界ポイント)を検出すると、アクティブレベル(ハイレベル)となる終了信号DTeを生成する終了タイミング検出回路27と、第1領域検出クロックDCKおよび第2領域検出クロックRCKに基づいてそれぞれ特徴量(パルスの発生回数)を求め、その特徴量が予め設定された起動量(本実施形態では、いずれも3)と一致した場合に、アクティブレベル(ハイレベル)となる無差別ウェイクアップ信号WAを生成する特徴量判定回路28とを備えている。
【0102】
<第1領域検出回路>
第1領域検出回路25は、電荷を充放電可能に構成され一端が接地されたコンデンサ41と、受信信号Rslに従って、コンデンサ41の非接地端を、接地レベルまたは定電流源42のいずれかに接続するスイッチ43と、電源電圧VCCを分圧する一対の抵抗からなり基準電圧(第1閾値)Vref2を発生させる分圧回路44と、反転入力端子に基準電圧Vref2が印加され、非反転入力端子にコンデンサ41の非接地端の電圧(以下「充電電圧」という)Vc2が印加されたコンパレータ45と、コンパレータ45の出力(第1領域候補検出信号DD)を、伝送路符号の略1ビットに相当する期間だけ遅延させる遅延回路46と、遅延回路46により遅延させた第1領域候補検出信号DDおよび受信信号Rslを入力としていずれもがハイレベルの時にハイレベルを出力する論理回路47とを備え、論理回路47の出力を、第1領域検出クロックDCKとして特徴量判定回路28に供給するように構成されている。
【0103】
なお、スイッチ43は、受信信号Rslがレセッシブの時に接地側、ドミナントの時に定電流源42側に接続され、更に、スイッチ24がOFF状態の時には接地側に接続されるように設定されている。
【0104】
また、定電流源42が供給する電流の大きさ、コンデンサ41の容量、基準電圧Vref2の大きさは、コンデンサ41を連続充電する期間が、伝送符号の1ビット分に相当する期間以下の長さでは、充電電圧Vc2が基準電圧Vref2に達することがなく、それを超えた長さ(即ち、2ビット目に掛かる長さ)になると、充電電圧Vc2が基準電圧Vref2を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0105】
このように構成された第1領域検出回路25にて生成される第1領域候補検出信号DDは、図6,7に示すように、受信信号Rslの信号レベルが2ビット以上連続してドミナントとなる領域(以下「候補領域」という)があると、その候補領域の2ビット目の途中でハイレベルとなり、受信信号Rslの信号レベルがレセッシブに変化するタイミングでロウレベルに戻る。
【0106】
そして、候補領域が2ビットで構成されている場合は、遅延回路46で遅延させた第1領域候補検出信号DDが論理回路47に入力されるタイミング(候補領域の先頭から3ビット目)で、受信信号Rslはレセッシブ(ハイレベル)となるため、論理回路47の出力である第1領域検出クロックDCKとして、遅延させた第1領域候補検出信号DDがそのまま出力される。一方、候補領域が3ビット以上のドミナントで構成されている場合は、遅延回路46で遅延させた第1領域候補検出信号DDが論理回路47に入力されるタイミングで、受信信号Rslはドミナント(ロウレベル)となるため、論理回路47の出力、即ち、第1領域検出クロックDCKはロウレベルのまま保持される。
【0107】
つまり、第1領域検出クロックDCKでは、ドミナントが2ビットだけ継続する領域である第1領域を検出した場合に発生するパルス信号だけで構成されることになる。
<第2領域検出回路>
第2領域検出回路26は、電荷を充放電可能に構成され一端が接地されたコンデンサ51と、受信信号Rslに従って、コンデンサ51の非接地端を、接地レベルまたは定電流源52のいずれかに接続するスイッチ53と、電源電圧VCCを分圧する一対の抵抗からなり基準電圧(第2閾値)Vref3を発生させる分圧回路54と、反転入力端子に基準電圧Vref3が印加され、非反転入力端子にコンデンサ51の充電電圧Vc3が印加されたコンパレータ55と、コンパレータ55の出力(第2領域候補検出信号DR)を、伝送路符号の略1ビットに相当する期間だけ遅延させる遅延回路56と、遅延回路56により遅延させた第2領域候補検出信号DRがハイレベル且つ受信信号Rslをロウレベル(ドミナント)の時にハイレベルを出力する論理回路57とを備え、論理回路57の出力を、第2領域検出クロックRCKとして特徴量判定回路28に供給するように構成されている。
【0108】
なお、スイッチ53は、受信信号Rslがレセッシブの時に接地側、ドミナントの時に定電流源52側に接続され、更に、スイッチ24がOFF状態の時には接地側に接続されるように設定されている。
【0109】
また、定電流源52が供給する電流の大きさ、コンデンサ51の容量、基準電圧Vref3の大きさは、コンデンサ51を連続充電する期間が、伝送符号の1ビット分に相当する期間以下の長さでは、充電電圧Vc3が基準電圧Vref3に達することがなく、それを超えた長さ(即ち、2ビット目に掛かる長さ)になると、充電電圧Vc3が基準電圧Vref3を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0110】
このように構成された第2領域検出回路26にて生成される第2領域候補検出信号DRは、図6,7に示すように、受信信号Rslの信号レベルが2ビット以上連続してレセッシブとなる領域(以下「候補領域」という)があると、その候補領域の2ビット目の途中でハイレベルとなり、受信信号Rslの信号レベルがドミナントに変化するタイミングでロウレベルに戻る。
【0111】
そして、候補領域が2ビットで構成されている場合は、遅延回路56で遅延させた第2領域候補検出信号DRが論理回路57に入力されるタイミングで、受信信号Rslはドミナント(ロウレベル)となっているため、論理回路57の出力である第2領域検出クロックRCKとして、遅延させた第2領域候補検出信号DRがそのまま出力され、一方、候補領域が3ビット以上で構成されている場合は、遅延させた第2領域候補検出信号DRが論理回路57に入力されるタイミングで、受信信号Rslはレセッシブ(ハイレベル)となるため、論理回路57の出力、即ち、第2領域検出クロックRCKはロウレベルのまま保持される。
【0112】
つまり、第2領域検出クロックRCKでは、レセッシブが2ビットだけ継続する領域である第2領域を検出した場合に発生するパルス信号だけで構成されることになる。
<終了タイミング検出回路>
図5に戻り、終了タイミング検出回路27は、電源電圧VCCを分圧する一対の抵抗からなり基準電圧(終了判定閾値)Vref4を発生させる分圧回路48と、反転入力端子に基準電圧Vref4が印加され、非反転入力端子にコンデンサ41の充電電圧Vc2が印加されたコンパレータ49と、電源電圧VCCを分圧する一対の抵抗からなり基準電圧(終了判定閾値)Vref5を発生させる分圧回路58と、反転入力端子に基準電圧Vref5が印加され、非反転入力端子にコンデンサ51の充電電圧Vc3が印加されたコンパレータ59と、コンパレータ49の出力SDおよびコンパレータ59の出力SRのうち少なくとも一方がハイレベルの時にハイレベルを出力する論理回路60とを備え、この論理回路60の出力を終了信号DTeとして各部に供給するように構成されている。
【0113】
なお、基準電圧Vref4の大きさは、定電流源42が供給する電流の大きさ、コンデンサ41の容量に基づき、コンデンサ41を連続充電する期間が、伝送符号の2ビット分に相当する期間以下の長さでは、充電電圧Vc2が基準電圧Vref4に達することがなく、それを超えた長さ(3ビット目に掛かる長さ)になると、充電電圧Vc2が基準電圧Vref4を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0114】
同様に、基準電圧Vref5の大きさは、定電流源52が供給する電流の大きさ、コンデンサ51の容量に基づき、コンデンサ51を連続充電する期間が、伝送符号の2ビット分に相当する期間以下の長さでは、充電電圧Vc3が基準電圧Vref5に達することがなく、それを超えた長さ(3ビット目に掛かる長さ)になると、充電電圧Vc3が基準電圧Vref5を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0115】
つまり、第1領域検出回路25および第2領域検出回路26の動作は、フレーム中に同一信号レベルが3ビット連続する箇所が現れた時点で停止するように構成されている。また、第1領域検出回路25および第2領域検出回路26の動作が停止すると、充電電圧Vc2,Vc3がリセットされるため、終了信号DTeの信号レベルは、ハイレベルに変化した後、すぐにロウレベルに戻る。
【0116】
<特徴量判定回路>
特徴量判定回路28は、終了信号DTeがハイレベルの時にリセットされると共に、第1領域検出回路25から供給される第1領域検出クロックDCKに従って動作する複数桁(本実施形態では2桁)のカウンタ61と、カウンタ61の出力Q0,Q1がいずれもハイレベル、即ち、カウント値が3の時にハイレベルを出力する論理回路62と、終了信号DTeがハイレベルの時にリセットされると共に、第2領域検出回路26から供給される第2領域検出クロックRCKに従って動作する複数桁(本実施形態では2桁)のカウンタ63と、カウンタ63の出力Q0,Q1がいずれもハイレベル、即ち、カウント値が3の時にハイレベルを出力する論理回路64と、論理回路62,64の出力がいずれもハイレベルの時にハイレベルを出力する論理回路65とを備え、この論理回路65の出力を無差別ウェイクアップ信号WAとして各部に供給するように構成されている。
【0117】
つまり、特徴量判定回路28は、起動パタン領域にて第1領域および第2領域が3回ずつ検出された場合に、無差別ウェイクアップ信号WAをアクティブレベル(ハイレベル)にする。
【0118】
<起動パタン判定回路の動作>
このように構成された起動パタン判定回路22は、待機状態検出信号DTwの立ち下がりエッジ、即ち開始タイミングで動作を開始する。
【0119】
そして、起動用のID(=0x333)が設定されたフレームである起動フレームが通信路LNに送出された場合、図6に示すように、同一の信号レベルが3ビット連続する領域は、RTR,IDE,r0のところで初めて現れるため、この部分が境界ポイントとなり、SOFおよびIDの全体が起動パタン領域となる。
【0120】
そして、境界ポイントのr0に掛かるタイミングで充電電圧Vc2が基準電圧Vref4を超えることによって終了信号DTeがハイレベルになり、このタイミングが終了タイミングとなる。
【0121】
なお、起動パタン領域のビットパタンは、2ビット連続のドミナント(第1領域)、2ビット連続のレセッシブ(第2領域)が交互に3個ずつ並んだものとなるため、開始タイミングから終了タイミングの間に、第1領域検出回路25は第1領域の数と同数である3個のパルス信号からなる第1領域検出クロックDCKを発生させ、第2領域検出回路26も第2領域の数と同数である3個のパルス信号からなる第2領域検出クロックRCKを発生させる。
【0122】
つまり、第1領域検出クロックDCKに従って動作するカウンタ61のカウント値DCNTは、起動パタン領域で検出された第1領域の数を表し、また、第2領域検出クロックRCKに従って動作するカウンタ63のカウント値RCNTは、起動パタン領域で検出された第2領域の数を表す。
【0123】
この両カウント値DCNT,RCNT(特徴量)が、起動フレームに特有な起動量(いずれも3)と一致するため、3番目の第2領域が検出されカウント値RCNTが3(カウント値DCNTはそれより前のタイミングで3になっている)になった時点で無差別ウェイクアップ信号WAがアクティブレベルとなり、その信号レベルが終了タイミングまで保持される。
【0124】
一方、起動用ではない通常のID(=0x366)が設定されたフレームが通信路LNに送出された場合、図7に示すように、同一の信号レベルが3ビット連続する領域は、IDの最終ビット,RTR,IDEのところで初めて現れるため、この部分が境界ポイントとなり、SOFおよびIDの最終ビットを除く部分が起動パタン領域となる。
【0125】
つまり、境界ポイントのIDEに掛かるタイミングで充電電圧Vc2が基準電圧Vref4を超えることによって終了信号DTeがハイレベルになり、このタイミングが終了タイミングとなる。
【0126】
なお、起動パタン領域のビットパタンは、第1領域,第2領域,1ビットのドミナント,第2領域,第1領域,第2領域からなるため、開始タイミングから終了タイミングの間に、第1領域検出回路25は2個のパルス信号からなる第1領域検出クロックDCKを発生させ、第2領域検出回路26は3個のパルス信号からなる第2領域検出クロックRCKを発生させることになる。
【0127】
つまり、カウンタ61のカウント値DCNTは2、カウンタ63のカウント値RCNTは3となり、カウント値DCNTと起動量と一致しないため、無差別ウェイクアップ信号WAはアクティブレベルになることなく、非アクティブレベルのまま保持される。
【0128】
<指定パタン判定回路>
図8は、指定パタン判定回路23の詳細な構成を示す回路図である。図9,図10は、指定パタン判定回路23の各部の動作を示すタイミング図である。
【0129】
図8に示すように、指定パタン判定回路23は、受信信号Rslの供給経路に設けられ、無差別ウェイクアップ信号WAが非アクティブレベル(ロウレベル)からアクティブレベル(ハイレベル)に変化するエッジのタイミングでON状態となり、後述する許可信号ENがアクティブレベル(ロウレベル)から非アクティブレベル(ハイレベル)に変化するエッジのタイミングでOFF状態となるスイッチ71と、スイッチ71を介して供給される受信信号Rslの注目エッジ(レセッシブからドミナントに変化するエッジ)のタイミングを表すエッジ検出信号EDを生成するエッジ検出回路72と、スイッチ71を介して供給される受信信号Rslを、デューティ信号としてデコードすることで復号データDdcを生成するデューティ比デコーダ73と、エッジ検出信号EDおよび復号データDdcに基づいて、復号データDdcが当該ECUに割り当てられた起動コードと一致した場合にアクティブレベルとなる個別ウェイクアップ信号WUを生成するデータ比較回路74とを備えている。
【0130】
以下、指定パタン判定回路23を構成する各部の回路構成および動作について詳述する。
<エッジ検出回路>
エッジ検出回路72は、受信信号Rslの信号レベルを反転させる論理回路85と、受信信号Rslおよび論理回路85の出力、即ち、受信信号Rslの反転信号を入力とし、その両方がロウレベルの時に出力がハイレベルとなる論理回路86からなり、論理回路86の出力をエッジ検出信号EDとして出力する。
【0131】
このように構成されたエッジ検出回路72は、図9(a)に示すように、エッジ検出信号EDとして、受信信号Rslが注目エッジのタイミング毎に、論理回路85の遅延時間分の幅を有するパルス信号を出力する。
【0132】
<デューティ比デコーダ>
図8に戻り、デューティ比デコーダ73は、反転入力端と出力端との間に電荷を充放電可能なコンデンサ81aが接続されると共に、非反転入力端に基準電圧(符号判定閾値)Vref6が印加され、反転入力端に抵抗を介して受信信号Rslが印加されるように接続された演算増幅器からなる周知の積分回路81と、コンデンサ81aの両端を、エッジ検出信号EDがハイレベルの時に短絡させるスイッチ82と、反転入力端に積分回路81の出力Vyが印加され、非反転入力端に基準電圧Vref6が印加されたコンパレータ83と、D型フリップフロップからなり、コンパレータ83の出力CPyをエッジ検出信号EDのタイミングでラッチするラッチ回路84とを備え、ラッチ回路84の出力を復号データDdcとして出力するように構成されている。
【0133】
なお、基準電圧Vref6は、受信信号Rslがレセッシブ(ハイレベル)の時の電圧をVH、ドミナント(ロウレベル)の時の電圧をVLとして、両者の中間値、即ち、Vref6=(VH+VL)/2となるように設定されている。
【0134】
このように構成されたデューティ比デコーダ73では、図9(b)に示すように、注目エッジが検出される毎に積分回路81の出力であるコンデンサ81aの充電電圧(演算増幅器の出力端子側の電圧)Vyは基準電圧Vref6に初期化される。そして、受信信号Rslがロウレベルの間は、充電電圧Vyが一定の割合で増加し(即ち正極性の充電が行われ)、受信信号Rslがハイレベルに変化すると、充電電圧Vyは増加時と同じ一定の割合で減少する(負極正の充電が行われる)。
【0135】
つまり、連続する注目エッジの間に、受信信号Rslの信号レベルが、ロウレベルの期間よりハイレベルの期間の方が長ければ、その期間の終了時点で、充電電圧Vyは、基準電圧Vref6より小さくなり、逆に、ロウレベルの期間がハイレベルの期間より長ければ、その期間の終了時点で、充電電圧Vyは、基準電圧Vref6より大きくなる。換言すれば、連続する注目エッジの間を一つのデューティ符号とみなして、そのデューティ符号のデューティ比が50%以上であるか否かによって、デューティ符号を、2値のデジタルデータにデコードする。
【0136】
そして、起動フレームの指定パタン領域(即ち、データフィールド)では、4ビットの単位ブロック毎に必ず注目エッジが検出されるように設定されているため、指定パタン領域のビットパタンは、デューティ比デコーダ73によって、単位ブロック毎にデコードされることになる。
【0137】
<データ比較回路>
図8に戻り、データ比較回路74は、復号データDdcを入力とし、エッジ検出信号EDをシフトクロックとして動作する多段シフトレジスタからなるデコードデータ保持回路91と、複数のスイッチ等で構成され、当該ECU10に割り当てられた割当パタンに応じた信号レベルが設定される割当パタン設定回路93と、デコードデータ保持回路91に保持されたデコードデータと割当パタン設定回路93の設定内容とが一致した場合にハイレベルとなる比較データDcpを生成する比較器92とを備えている。
【0138】
またデータ比較回路74は、エッジ検出信号EDおよび待機状態検出信号DTwに基づいて、比較器92から所望の比較結果を示した比較データDcpが出力されるタイミングを表す許可信号EN、比較データDcpをラッチするタイミングを表すラッチクロックLCKを生成するタイミング生成回路94と、D型フリップフロップ回路からなり、許可信号ENがリセット端子に印加され、比較器92からの比較データDcpを、ラッチクロックLCKのタイミングでラッチするラッチ回路95とを備えており、ラッチ回路95にてラッチされた信号を、個別ウェイクアップ信号WUとして出力するように構成されている。
【0139】
なお、許可信号ENは、最後の単位ブロックと終了パタンとの間のタイミングでラッチ回路95の動作を許可するアクティブレベル(ロウレベル)に変化し、待機状態検出信号DTwが非アクティブレベルからアクティブレベルに変化するタイミングでラッチ回路95の動作を禁止する非アクティブレベル(ハイレベル)に変化するように生成される。また、ラッチクロックLCKは、許可信号ENがロウレベルになってから、終了パタンの注目エッジのタイミングまでの間に、ロウレベルからハイレベルに変化し、待機状態検出信号DTwが非アクティブレベルからアクティブレベルに変化するタイミングでロウレベルに戻るように生成される。
【0140】
このようなタイミング生成回路94は、スイッチ71を介して受信信号Rslが供給される期間、即ち、無差別ウェイクアップ信号WAがアクティブレベル(ハイレベル)に変化した後に発生する注目エッジの個数を考慮して、カウンタ,シフトレジスタ,ラッチ回路,遅延回路等を適宜組み合わせることにより、容易に作成することができるため、ここでは、その詳細についての説明は省略する。
【0141】
このように構成されたデータ比較回路74では、デューティ比デコーダ73でのデコード結果である復号データDdcが、デコードデータ保持回路91に順次保持され、比較器92によって、その保持内容と、割当パタン設定回路93の設定内容とが一致するか否かが比較される。
【0142】
この比較データDcpは、図10に示すように、最後の単位ブロックと終了パタンとの間の注目エッジのタイミングから、その次の注目エッジのタイミングまでの間だけ、全ての復号データDdcがデコードデータ保持回路91に保持され、割当パタンとの有効な比較結果を示す比較データDcpが得られる。この有効な比較結果が得られるタイミングで立ち上がるラッチクロックLCKにより、比較データDcpはラッチ回路95にラッチされる。
【0143】
図10では、指定パタン領域に設定された指定パタンをデコードすることで得られる指定コードが、割当パタンと一致した場合を示すものであり、ラッチクロックLCKが立ち上がるタイミングで、比較データDcpは一致を表す信号レベル(ハイレベル)となっているため、このタイミングでラッチ回路95の出力である個別ウェイクアップ信号WUがアクティブレベルに変化する。その後、待機状態検出信号DTwがアクティブレベルに変化したタイミングで、個別ウェイクアップ信号WUは非アクティブレベルに戻る。
【0144】
図11は、指定コードが、割当パタンと一致しなかった場合を示すものであり、ラッチクロックLCKが立ち上がるタイミングで、比較データDcpは、不一致を表す信号レベル(ロウレベル)となっているため、個別ウェイクアップ信号WUは非アクティブレベルのまま保持される。
【0145】
<効果>
以上説明したように、通信システム1では、スリープモードのECU10は、通信路LNを監視し、フレームの先頭(開始タイミング)からドミナントが3ビット連続する箇所(境界ポイント)までの領域(起動パタン領域)に設定されたビットパタンから抽出される特徴量(第1領域および第2領域の数)が、予め設定された起動量と一致するものを起動フレームとして認識し(無差別ウェイクアップ信号WAをアクティブレベルに変化させ)、更に、その起動フレームの指定パタン領域に設定されている指定パタンをデューティ信号とみなしてデコードした復号データDdcによって表される指定コードが、予め自ECU10に割り当てられた割当パタンと一致する場合に通常モードに遷移する(個別ウェイクアップ信号WUをアクティブレベルに変化させる)ようにされている。
【0146】
従って、通信システム1によれば、起動フレームを受信したか否かの判定のために、CANコントローラ14やクロック回路を動作させる必要がないため、スリープモードにあるECU10の消費電力を大幅に削減することができる。
【0147】
また、通信システム1によれば、起動フレームを受信した全てのノードが無条件に起動するのではなく、起動フレームにおいて指定したノードのみが起動するため、起動する必要のないノードが無駄に起動することがなく、当該通信システム1全体の消費電力を削減することができる。
【0148】
<変形例>
本実施形態では、同一の信号レベルが3ビット以上連続することを境界条件とし、起動フレーム用のIDとしてID=0x333を用いているが、境界条件やIDは、これに限るものではない。
【0149】
例えば、境界条件がそのままである場合、起動フレーム用のIDとしては、例えば、図12(a)に示すようにID=0x555や、図12(b)に示すようにID=0x249を用いることができる。図12(a)の場合、第1領域および第2領域のビット幅がいずれも1であり、起動量をいずれも6とすればよい。なお、第1領域および第2領域のビット幅を変更した場合には、第1領域検出回路25の分圧回路44で発生させる基準電圧Vref2および第2領域検出回路26の分圧回路54で発生させる基準電圧Vref3を、ビット幅に対応した大きさに変更すればよい。
【0150】
また、ドミナント(レセッシブは除外)が3ビット以上連続することを境界条件とした場合、例えば、図12(c)に示すようにID=0x7FFを用いることができる。この場合、第1領域のビット幅が1、第2領域のビット幅が5であり、起動量は、前者を3、後者が2に設定すればよい。境界条件からレセッシブに関する条件を除外することにより、第2領域の幅を、3ビット以上5ビット(スタッフビットの規定)以下に設定することが可能となる。
【0151】
また、例えば、図12(d)に示すようにID=0x084を用いることによって、ドミナントが5ビット連続することを境界条件とし、第1領域のビット幅が4ビット、第2領域のビット幅が1ビット、起動量をいずれも2としてもよい。
【0152】
また、本実施形態では、第1領域の数と第2領域の数をいずれもカウントしているが、いずれか一方だけをカウントするように構成してもよい。
<発明との対応>
本実施形態において、待機状態検出回路21が開始タイミング検出手段、第1領域検出回路25の一部(コンデンサ41,定電流源42,スイッチ43),第2領域検出回路26の一部(コンデンサ51,定電流源52,スイッチ53),終了タイミング検出回路27が境界ポイント検出手段、第1領域検出回路25,第2領域検出回路26,特徴量判定回路28が特徴量判定手段、指定パタン判定回路23が符号パタン判定手段に相当する。
【0153】
また、コンデンサ41,51が第1の容量性素子、定電流源42,52およびスイッチ43,53が第1の充電回路、第1領域検出回路25におけるコンデンサ41が第2の容量性素子、定電流源42およびスイッチ43が第2の充電回路、特徴量判定回路28におけるカウンタ61が第1領域カウント回路、第2領域検出回路26におけるコンデンサ51が第3の容量性素子、定電流源52およびスイッチ53が第3の充電回路、特徴量判定回路28におけるカウンタ63が第2領域カウント回路、待機状態検出回路21におけるコンデンサ31が第4の容量性素子、定電流源32およびスイッチ33が第4の充電回路、デューティ比デコーダ73におけるのコンデンサ81aが第5の容量性素子、積分回路81が第5の充電回路に相当する。
【0154】
更に、CANコントローラ14が通信制御手段、マイコン11が実行するウェイクアップ処理,スリープ処理およびマイコン11の一部であるクロック回路を起動停止するための構成が動作モード遷移手段に相当する。
【0155】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について説明する。
なお、第2実施形態では、起動用に用いるID、境界条件、および起動パタン判定回路22aの構成の一部が、第1実施形態とは異なるだけであるため、以下でこれら相違する部分を中心に説明する。
【0156】
<起動フレーム>
本実施形態では、受信信号Rslの信号レベルがドミナントからレセッシブに変化する立ち上がりエッジをカウントし、そのカウント数が2になること境界条件とする。
【0157】
そして、起動フレームとして、IDを0x078に設定したデータフレームを使用する。従って、このIDは、動作モードが通常モードにあるECU10同士の通信での使用が禁止されることになる。
【0158】
なお、起動フレームのDLC前までの領域をビットパタンで表すと、[0][0000(1)1111(0)000][0(1)00]となる。但し、最初の鈎括弧はSOF、二番目の鈎括弧はID、3番目の鈎括弧はRTR,IDE,r0を、また、(0)(1)はスタッフビットを表す。
【0159】
つまり、RTRと、その直後に挿入されるスタッフビットとの境界部分が、境界条件を満たす境界ポイントとなり、それ以前の領域(SOF,ID,RTR)が起動パタン領域となる。そして、起動パタン領域には、信号レベルがドミナントで且つ5ビット幅を有する二つの第1領域と、信号レベルがレセッシブで且つ5ビット幅を有する一つの第2領域とが交互に並んだビットパタンを有したものとなる。
【0160】
<起動パタン判定回路>
図13は、起動パタン判定回路22aの構成を示す回路図、図14,図15は、起動パタン判定回路22aの各部の動作を示すタイミング図である。なお、図中に示す括弧内の数字は、フレームの先頭から何ビット目であるかを示すものである。
【0161】
図13に示すように、起動パタン判定回路22aは、第1実施形態における起動パタン判定回路22と同様にスイッチ24,第1領域検出回路25a,第2領域検出回路26a,終了タイミング検出回路27a,特徴量判定回路28aからなる。
【0162】
<第1領域検出回路>
第1領域検出回路25aは、第1実施形態における第1領域検出回路25から遅延回路46,論理回路47を削除した構成を有しており、コンパレータ45の出力を、第1領域検出クロックDCKとして特徴量判定回路28aに供給するように構成されている。
【0163】
また、第1領域検出回路25aにおいて、定電流源42が供給する電流の大きさ、コンデンサ41の容量、基準電圧Vref2の大きさは、コンデンサ41を連続充電する期間が、伝送符号の4ビット分に相当する期間以下の長さである場合は、充電電圧Vc2が基準電圧Vref2に達することがなく、それを超えた長さ(即ち、5ビット目に掛かる長さ)になると、充電電圧Vc2が基準電圧Vref2を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0164】
<第2領域検出回路>
また、第2領域検出回路26aも、第1実施形態における第2領域検出回路26から遅延回路56,論理回路57を削除した構成を有しており、コンパレータ55の出力を、第2領域検出クロックRCKとして特徴量判定回路28aに供給するように構成されている。
【0165】
また、第2領域検出回路26aにおいて、定電流源52が供給する電流の大きさ、コンデンサ51の容量、基準電圧Vref3の大きさは、コンデンサ51を連続充電する期間が、伝送符号の4ビット分に相当する期間以下の長さである場合は、充電電圧Vc3が基準電圧Vref3に達することがなく、それを超えた長さ(即ち、5ビット目に掛かる長さ)になると、充電電圧Vc3が基準電圧Vref3を超えるような大きさとなるように設定されている。
【0166】
<終了タイミング検出回路>
終了タイミング検出回路27aは、スイッチ24を介して供給される受信信号Rslの歪みを除去するために設けられたロウパスフィルタ96と、ロウパスフィルタ96を介して供給される受信信号Rslを入力クロックとして、受信信号Rsl中の立ち上がりエッジの個数をカウントするカウンタ97と、カウンタ97の出力の一桁目Q0が0且つ二桁目Q1が1の時、即ち、カウント値が境界数である2になった時に、アクティブレベル(ハイレベル)となる終了信号DTeを生成する論理回路98とを備えている。なお、カウンタ97は、終了信号DTeがアクティブレベルの時に、カウント値がクリアされるように接続されている。
【0167】
<特徴量判定回路>
特徴量判定回路28aは、終了信号DTeがハイレベルの時にリセットされると共に、第1領域検出回路25aから供給される第1領域検出クロックDCKに従って動作する複数桁(本実施形態では2桁)のカウンタ61と、カウンタ61の出力Q0,Q1のうち1桁目Q0がロウレベル且つ2桁目Q1がハイレベル、即ち、カウント値が2の時にハイレベルを出力する論理回路62aと、終了信号DTeがハイレベルの時にリセットされると共に、第2領域検出回路26から供給される第2領域検出クロックRCKに従って出力の信号レベルが交互に切り替わるように接続されたトグル回路(1桁のカウンタ)63aと、論理回路62およびトグル回路63aの出力がいずれもハイレベルの時にハイレベルを出力する論理回路65とを備え、この論理回路65の出力を無差別ウェイクアップ信号WAとして各部に供給するように構成されている。
【0168】
つまり、特徴量判定回路28aは、起動パタン領域にて第1領域が2回,第2領域が1回検出された場合に、無差別ウェイクアップ信号WAをアクティブレベル(ハイレベル)にする。
【0169】
<起動パタン判定回路の動作>
このように構成された起動パタン判定回路22aは、待機状態検出信号DTwの立ち下がりエッジ、即ち開始タイミングで動作を開始する。
【0170】
そして、起動用のID(=0x078)が設定されたフレームである起動用フレームが通信路LNに送出された場合、図14に示すように、受信信号Rslの信号レベルがドミナントからレセッシブに変化する立ち上がりエッジが、IDの4ビット目とその直後に挿入されたスタッフビットととの境界のタイミング、およびRTRとその直後に挿入されたスタッフビットとの境界のタイミングで発生する。つまり、終了タイミング検出回路27aの動作により、後者のタイミングで、終了信号DTeがアクティブレベルに変化し、このタイミングが終了タイミング(境界ポイント)となる。
【0171】
なお、起動パタン領域のビットパタンは、5ビット連続のドミナントである第1領域と、5ビット連続のレセッシブである第2領域とが、第1領域,第2領域,第1領域の順に並んだものとなるため、開始タイミングから終了タイミングの間に、第1領域検出回路25aは第1領域の数と同数である2個のパルス信号からなる第1領域検出クロックDCKを発生させ、第2領域検出回路26aは第2領域の数と同数である1個のパルス信号からなる第2領域検出クロックRCKを発生させる。
【0172】
つまり、第1領域検出クロックDCKに従って動作するカウンタ61のカウント値DCNTは、起動パタン領域で検出された第1領域の数を表し、また、第2領域検出クロックRCKに従って動作するトグル回路63aの出力(カウント値)RCNTは、起動パタン領域で検出された第2領域の数を表す。
【0173】
この両カウント値DCNT,RCNT(特徴量)が、起動フレームに特有な起動量(前者が2,後者が1)と一致するため、2番目の第1領域が検出されカウント値RCNTが2(カウント値DCNTはそれより前のタイミングで1になっている)になった時点で無差別ウェイクアップ信号WAがアクティブレベルとなり、その信号レベルが終了タイミングまで保持される。
【0174】
一方、起動用ではない通常のID(=0x07C)が設定されたフレームが通信路LNに送出された場合、図15に示すように、2番目の立ち上がりエッジは、2個目のスタッフビットとIDの5ビット目との境界のタイミングで発生する。
【0175】
つまり、このタイミングが終了タイミング(境界ポイント)となり、それ以前の11ビットの領域が起動パタン領域となる。
この場合、起動パタン領域のビットパタンは、第1領域,第2領域,1ビットのドミナントが順に並んだものとなるため、開始タイミングから終了タイミングの間に、第1領域検出回路25aは第1領域の数と同数である1個のパルス信号からなる第1領域検出クロックDCKを発生させ、第2領域検出回路26aは第2領域の数と同数である1個のパルス信号からなる第2領域検出クロックRCKを発生させることになる。
【0176】
つまり、カウンタ61のカウント値DCNTは1、トグル回路63aのカウント値RCNTは1となり、カウント値DCNT(1)と起動量(2)とが一致しないため、無差別ウェイクアップ信号WAはアクティブレベルになることなく、非アクティブレベルのまま保持される。
【0177】
<効果>
このように本実施形態では、境界ポイントの検出に用いる境界条件と、起動フレームに設定する起動用のIDとが異なるだけであり、その他については第1実施形態の場合と全く同様に動作するため、第1実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0178】
なお、本実施形態における終了タイミング検出回路27aが、請求項9に記載の境界ポイント検出手段に相当する。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様にて実施することが可能である。
【0179】
例えば、上記実施形態では、レシーバ16を二つのコンパレータCP1,CP2で構成し、動作モードによって使用するコンパレータを切り替えるように構成されているが、レシーバを一つのコンパレータCP1で構成し、コンパレータCP1の出力を受信データRxDとしてマイコン11に供給するか、受信信号Rslとして起動フレーム検出部17に供給するかを、動作モードによって切り替えるようにしてもよい。
【0180】
上記実施形態では、待機状態検出回路21と第2領域検出回路26aとが、レセッシブの期間を測定するための回路(コンデンサ31,53、定電流源32,52、スイッチ33,53)を個別に備えているが、両検出回路21,26aが共通の回路(コンデンサ,定電流源,スイッチ)を用いるように構成してもよい。
【0181】
上記実施形態の指定パタン判定回路23では、デューティ比デコーダ73が、指定パタン領域に設定された単位ブロック毎のビットパタンをデューティ信号とみなして、単位ブロック内における二つの信号レベルの期間の長さを比較することで、クロックを用いることなくデコードを行っているが、例えば、図16に示す指定パタン判定回路23aのように、起動フレームを認識した(無差別ウェイクアップ信号WAがアクティブになった)場合に、受信信号Rslからクロック信号を再生するPLL回路101を動作させ、そのPLL回路101が発生させたクロックに従って、デコーダ102がデータフィールドのビットパタンをデコードするように構成してもよい。この場合、データ比較回路103は、エッジ検出信号EDの代わりに、PLL回路101が発生させたクロックに基づいて許可信号ENやラッチクロックLCKを発生させればよい。また、この場合、起動フレームの指定パタン領域に設定するビットパタンは、複数ビットからなる単位ブロック毎に設定されたものであって、CANコントローラ14で使用するクロックより精度の低いクロックでのデコードが可能なパタンであればよい。なお、ここでは、PLL回路101が本発明(請求項14)におけるクロック生成回路、デコーダ102がデコーダ回路に相当する。
【0182】
上記実施形態では、ドミナントが6ビット以上連続した場合に待機状態であると判断しているが、これに限るものではなく、スタッフの挿入によりフレーム中で許容される同一レベルの最大連続数をNとして、N+1ビット以上11ビット以下であればよい。なお、11ビットとは、ACKデリミッタ(1ビット)、EOF(7ビット)、フレーム間に挿入されるインターミッション(3ビット)を合計したビット数である。
【符号の説明】
【0183】
1…通信システム 10(10a〜10d)…電子制御ユニット(ECU) 11…マイクロコンピュータ(マイコン) 12…トランシーバ 13…電源回路 14…CANコントローラ 15…ドライバ 16…レシーバ 17…起動フレーム検出部 18…ウェイクアップ制御部 21…待機状態検出回路 22,22a…起動パタン判定回路 23,23a…指定パタン判定回路 24,33,43,53,71,82…スイッチ 25,25a…第1領域検出回路 26,26a…第2領域検出回路 27,27a…終了タイミング検出回路 28,28a…特徴量判定回路 31,41,51,81a…コンデンサ 32,42,52…定電流源 34,44,48,54,58…分圧回路 35,45,49,55,59,83…コンパレータ 46,56…遅延回路 47,57,60,62,62a,64,65,85,86,98…論理回路 61,63,97…カウンタ 63a…トグル回路 72…エッジ検出回路 73…デューティ比デコーダ 74.103…データ比較回路 81…積分回路 84,95…ラッチ回路 91…デコードデータ保持回路 92…比較器 93…割当パタン設定回路 94…タイミング生成回路 96…ロウパスフィルタ 101…PLL回路 102…デコーダ、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信路に接続されたノード間の通信にNRZ(Non Return to Zero)符号を用い、前記ノードは、前記通信路に送出されるフレームの生成規則によって許容される同一信号レベルのビットの最大連続数である許容連続ビット数に相当する期間を超えて、前記通信路の信号レベルが、該通信路において劣位な信号レベルであるレセッシブのまま継続した状態を待機状態として、前記通信路が待機状態になった後、該通信路において優位な信号レベルであるドミナントに変化すると、これをフレームの先頭として認識すると共に、前記通信路を介した通信を停止して消費電力を抑制するための動作モードであるスリープモードの時に、所定の起動フレームが前記通信路に送出されると、前記通信路を介した通信を実行可能な動作モードである通常モードに遷移するように構成された通信システムであって、
前記起動フレームは、当該フレームが起動用のフレームであることを示すためのビットパタンを設定するための領域である起動パタン領域と、起動対象となるノードを指定するためのビットパタンを設定するための領域である指定パタン領域とを有し、且つ、ビットパタンが予め設定された境界条件を満たすフレーム中の箇所を境界ポイントとして、フレームの先頭から前記境界ポイントまでの領域が前記起動パタン領域として用いられ、
前記ノードは、信号レベルがドミナントであり且つ予め設定された第1のビット幅を有する領域を第1領域、信号レベルがレセッシブであり且つ予め設定された第2のビット幅を有する領域を第2領域として、前記起動パタン領域で検出される前記第1領域の数および前記第2領域の数のうち少なくとも一方を特徴量とし、該特徴量が予め設定された起動量と一致し、且つ、該フレームの指定パタン領域で検出されるビットパタンが自ノードを指定するために予め割り当てられた割当パタンと一致する場合に、通常モードに遷移することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
ドミナントがM(Mは2以上の整数)ビット以上連続するフレーム中の箇所を前記境界ポイントとし、
前記第1領域のビット幅がMビット未満に設定されると共に、前記第2領域のビット幅が、前記許容連続ビット数以下に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
信号レベルがレセッシブからドミナントに変化するエッジおよびドミナントからレセッシブに変化するエッジのうち少なくとも一方を注目エッジとして、フレームの先頭からカウントして予め設定された境界数個目の注目エッジが検出されるフレーム中の箇所を前記境界ポイントとすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記指定パタン領域では、複数ビットからなる単位ブロック毎に符号化されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信路における通信プロトコルとして、CAN(Controller Area Network)を用い、CANにおけるデータフレームのDLCより前の領域を前記起動パタン領域、データフィールドを前記指定パタン領域として使用することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
NRZ符号(Non Return to Zero)を用いて通信を行う通信路に接続され、前記通信路を介した通信を停止して消費電力を抑制するための動作モードであるスリープモードの時に、所定の起動フレームが前記通信路に送出されると、前記通信路を介した通信を実行可能な動作モードである通常モードに遷移するように構成されたノードにおいて、前記通信路を介した信号を送受信するために使用されるトランシーバであって、
前記通信路に送出されるフレームの生成規則によって許容される同一信号レベルのビットの最大連続数である許容連続ビット数に相当する期間を超えて、前記通信路の信号レベルが、該通信路において劣位な信号レベルであるレセッシブのまま継続した状態を待機状態として、前記通信路が待機状態になった後、該通信路において優位な信号レベルであるドミナントに変化したタイミングを開始タイミングとして検出する開始タイミング検出手段と、
前記動作モードがスリープモードの時に、前記開始タイミング検出手段で開始タイミングが検出されると、前記フレームのビットパタンが予め設定された境界条件を満たす箇所を境界ポイントとして検出する境界ポイント検出手段と、
信号レベルがドミナントであり且つ予め設定された第1のビット幅を有する領域を第1領域、信号レベルがレセッシブであり且つ予め設定された第2のビット幅を有する領域を第2領域、前記開始タイミング検出手段にて開始タイミングが検出されてから前記境界ポイント検出手段にて境界ポイントが検出されるまでの領域を起動パタン領域として、前記起動パタン領域で検出される前記第1領域の数および前記第2領域の数の少なくとも一方を特徴量とし、該特徴量が予め設定された起動量と一致するか否かを判定する特徴量判定手段と、
前記特徴量判定手段により、前記特徴量が前記起動量と一致すると判定されると、前記フレームの予め設定された指定パタン領域に示された符号パタンと予め設定された割当パタンとを比較して、両者が一致する場合に、前記起動フレームを受信したことを示すウェイクアップ信号を出力する符号パタン判定手段と、
を備えることを特徴とするトランシーバ。
【請求項7】
前記境界ポイント検出手段は、前記フレームにおいて同一信号レベルがM(Mは2以上の整数)ビット以上連続していることを前記境界条件として用い、
前記第1領域および第2領域のビット幅がMビット未満に設定されていることを特徴とする請求項6に記載のトランシーバ。
【請求項8】
前記境界ポイント検出手段は、
電荷を充放電可能な第1の容量性素子と、
前記通信路の信号レベルがレセッシブおよびドミナントのうちいずれか一方の信号レベルの時に、前記第1の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、前記通信路の信号レベルがいずれか他方の信号レベルの時に、前記第1の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する第1の充電回路と、
を備え、
前記第1の充電回路による充電がMビットに相当する期間以上継続した時の前記第1の容量性素子の充電電圧に相当する大きさに設定された終了判定閾値と、前記第1の容量性素子の充電電圧とを比較することで、同一信号レベルがMビット以上連続する領域を検出することを特徴とする請求項7に記載のトランシーバ。
【請求項9】
前記境界ポイント検出手段は、
レセッシブからドミナントに変化するエッジおよびドミナントからレセッシブに変化するエッジのうち少なくとも一方を注目エッジとして、前記フレームにおいて前記注目エッジをカウントした値が予め設定された境界数に達することを前記境界条件として用いることを特徴とする請求項6に記載のトランシーバ。
【請求項10】
前記特徴量判定手段は、
電荷を充放電可能な第2の容量性素子と、
前記通信路の信号レベルがレセッシブの時に、前記第2の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、前記通信路の信号レベルがドミナントの時に、前記第2の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する第2の充電回路と、
前記第2の充電回路による充電が前記第1のビット幅に相当する期間継続した時の前記第2の容量性素子の充電電圧に相当する大きさ設定された第1閾値を、前記第2の容量性素子の充電電圧が超えた回数を前記第1領域の数としてカウントする第1領域カウント回路と、
を備えることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載のトランシーバ。
【請求項11】
前記特徴量判定手段は、
電荷を充放電可能な第3の容量性素子と、
前記通信路の信号レベルがドミナントの時に、前記第3の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、前記通信路の信号レベルがレセッシブの時に、前記第3の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する第3の充電回路と、
前記第3の充電回路による充電が前記第2のビット幅に相当する期間継続した時の前記第3の容量性素子の充電電圧に相当する大きさ設定された第2閾値を、前記第3の容量性素子の充電電圧が超えた回数を前記第2領域の数としてカウントする第2領域カウント回路と、
を備えることを特徴とする請求項6乃至請求項10のいずれか1項に記載のトランシーバ。
【請求項12】
前記開始タイミング検出手段は、
電荷を充放電可能な第4の容量性素子と、
前記通信路の信号レベルがドミナントの時に、前記第4の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットし、前記通信路の信号レベルがレセッシブの時に、前記第4の容量性素子を一定の大きさの充電電流で充電する第4の充電回路と、
を備え、
前記第4の充電回路による充電が前記許容連続ビット数に相当する期間以上継続した時の前記第4の容量性素子の充電電圧に相当する大きさ設定された待機判定閾値と、前記第4の容量性素子の充電電圧とを比較することで、待機状態にあるか否かを判断することを特徴とする請求項6乃至請求項11のいずれか1項に記載のトランシーバ。
【請求項13】
前記符号パタンは、レセッシブからドミナントに変化するエッジまたはドミナントからレセッシブに変化するエッジのいずれか一方を注目エッジとして、該注目エッジで区切られた複数ビットで構成され、且つデューティ比が異なる2種類のパタンからなり、
前記符号パタン判定手段は、
電荷を充放電可能な第5の容量性素子と、
一定の大きさの正極性の充電電流または一定の大きさの負極性の充電電流を、前記通信路の信号レベルが変化する毎に交互に切り替えて前記第5の容量性素子に供給することで該第5の容量性素子を充放電すると共に、前記注目エッジが検出される毎に、前記第3の容量性素子の充電電圧を初期電圧にリセットする第5の充電回路と、
を備え、
前記注目エッジが検出される毎に、前記第5の充電回路がリセットする前の前記第5の容量性素子の充電電圧が、予め設定された符号判定閾値より大きいか否かによって、前記符号パタンが0,1のいずれに該当するかを判定することを特徴とする請求項6乃至請求項12のいずれか1項に記載のトランシーバ。
【請求項14】
前記符号パタン判定手段は、
前記通信路上の信号に基づき、受信したフレームに同期したクロックを生成するクロック生成回路と、
前記クロック生成回路にて生成されたクロックを用いて、前記符号パタンを復号するデコーダ回路と、
からなることを特徴とする請求項6乃至請求項12のいずれか1項に記載のトランシーバ。
【請求項15】
請求項6乃至請求項14のいずれか1項に記載のトランシーバと、
前記トランシーバを介して信号を送受信する通信制御手段と、
前記動作モードが通常モードの時に、予め設定されたスリープ条件が満たされると、動作モードがスリープモードに遷移し、前記動作モードがスリープモードの時に、前記トランシーバからウェイクアップ信号が出力されると、前記動作モードを通常モードに復帰させる動作モード遷移手段と、
を備えることを特徴とするノード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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