説明

通信システム、親局装置および子局装置の動作状態検出方法

【課題】
子局装置が自局に割り当てられた時間以外に上り信号を送信するような誤動作状態にあるかどうかを迅速に検出する。
【解決手段】
本発明に係る通信装置は、親局装置と複数の子局装置が伝送路を介して接続された通信システムにおいて、送信許可信号と送信する信号が入力されて、上り信号を送信する信号送信手段と、試験信号および試験信号の送信時間を指定する指定手段と、指定手段により指定された試験信号が信号送信手段に供給され、かつ、指定された時間に送信許可信号が信号送信手段に供給されないように、子局装置に対して指示する指示手段と、信号送信手段から送信される信号を受信する信号受信手段と、信号受信手段による受信結果に基づいて、子局装置の動作状態を検出する動作状態検出手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、親局装置と複数の子局装置を、伝送路を共用して通信を行う通信システム、この通信システムに用いられる光通信装置、および、この通信システムに用いられる子局装置の動作状態検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の子局装置(以下、単に子局と略記する)が伝送媒体を共用して、親局装置(以下、単に親局と略記する)との1対多接続を行う通信システムの一つとして、PON(Passive Optical Network)方式があり、例えば非特許文献1で規定されるGE−PON(Gigabit Ethernet(登録商標)‐PON)などがある。以下、説明の便宜上、光通信システム、特にPONシステムを例にとって記述する。
【0003】
これらのシステムでは、複数の子局が親局との通信に用いる伝送媒体を共用するため、上り方向(子局⇒親局)の通信において、各子局が自由に信号を送信させた場合、各子局からの信号が衝突してしまい通信ができなくなる。各子局からの信号を衝突させないようにする必要があるが、例えば、上述のGE−PONでは、時分割多重方式を用いて各子局から親局へ送信される信号の衝突を回避している。すなわち、子局から親局に対して送信する信号の波長は同じであるが、親局に対して信号を送信する時刻を親局が各子局に指定し、子局はその指定された時刻に信号を送信することにより、複数の子局からの信号を衝突させることなく、親局で区別して受け取ることができる。また、上り方向の信号(上り信号)と下り方向(親局⇒子局)の信号とで異なる周波数を用いることにより、上下方向においても信号が衝突しないようにしている。
【0004】
これらの子局では、子局内部に設けられた送信器が発光素子を有しており、発光素子が点滅することにより親局に対して光信号を送信する。通常、子局内に設置される送信器は、連続的に論理回路から送信されるデータ信号と送信器に対して時刻を指定して発光許可を与える発光許可信号を受けて発光し、信号を親局へと送信する。
【0005】
子局が誤動作、すなわち、割り当てられた時刻以外に発光(誤発光)するような故障をする場合がある。当該子局に割り当てられた時刻以外で発光すると、その時刻に割り当てられている他の子局からの信号と衝突してしまい、正常な通信ができなくなる。子局において自局に割り当てられていない時刻に発光する故障原因の多くは、論理的な故障ではなく、制御回路からの発光許可信号が短絡・断線して、光送信器の発光制御ができなくなるなどの電気的な偶発的故障であることが多い。
【0006】
正常な通信を行うためには故障した子局を特定し、その子局を修理または交換等することが必要となる。従来の光通信システムでは、子局に自局の電源を切る手段を搭載し、親局からの指示で子局の電源を切ることで発光を止める方法がある。この方法では、異常な子局の発光を止めたときに他の子局との通信が復旧することとなるため、親局の指示により親局配下の子局を順番に電源を停止していき、他の子局との通信が復旧した場合に、電源を停止した子局が故障した子局であると判定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−112746公報(図9、第6頁〜第7頁)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE−802.3−2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の光通信システムでは、子局を停止した後、正常な子局の通信復旧の有無を確認する必要があり、一台ずつ電源を停止して復旧確認するのは時間がかかるという問題があった。すなわち、各子局に対して指示を出した後、他の子局の通信復旧を認識して異常判定するため、一般には指示の送信後数秒から数十秒後の判定となる。また、子局の台数が増えればさらに長い時間を要することとなる。
【0010】
本発明は上記の問題を解決するためになされたもので、子局装置が、自局に割り当てられた時間以外に上り信号を送信するような誤動作状態にあるかどうかを迅速に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る通信システムは、親局装置と複数の子局装置が伝送路を介して接続された通信システムにおいて、子局装置に設けられ、送信許可信号および送信する信号が供給されることにより、上り信号を送信する送信動作が実行可能となる信号送信手段と、子局装置の動作状態に応じて信号送信手段が送信する試験信号およびその送信時間を指定する指定手段と、指定手段により指定された試験信号が、指定手段により指定された送信時間に信号送信手段に供給され、かつ、指定された送信時間に送信許可信号が信号送信手段に供給されないように、子局装置に対して指示する指示手段と、子局装置の動作状態に応じて信号送信手段から送信される信号を受信する信号受信手段と、信号受信手段による受信結果に基づいて、子局装置の動作状態を検出する動作状態検出手段と、を備える。
【0012】
また、この発明に係る親局装置は、送信する信号と送信許可信号を供給されることにより、上り信号を送信する信号送信手段を備えた複数の子局装置が伝送路を介して接続された親局装置において、子局装置の動作状態を検出するために用いられ、子局装置の動作状態に応じて信号送信手段が送信する試験信号および試験信号を送信する時間を指定する指定手段と、指定手段により指定された試験信号を、指定手段において指定された時間に信号送信手段に供給し、かつ、指定手段において指定された時間に送信許可信号を信号送信手段に供給しないように、子局装置に対して指示する指示手段と、子局装置の動作状態に応じて信号送信手段から送信される信号を受信する信号受信手段と、信号受信手段による受信結果に基づいて、子局装置の動作状態を検出する動作状態検出手段と、を備える。
【0013】
上り方向の信号を送信する信号送信手段を備えた複数の子局装置と、子局装置に対して上り信号を送信する時間を指定する親局装置とを備え、かつ、子局装置が正常動作状態にある場合には、親局装置により指定された時間についての送信許可信号および送信する上り信号を供給されることにより、送信器の送信動作を実行可能となり、子局装置が誤動作状態にある場合には、親局装置により指定された時間以外に上り方向の信号を、子局装置の信号送信手段が送信するように構成された通信システムに適用可能な、子局装置の動作状態を検出する子局装置の動作状態検出方法であって、子局装置からその動作状態に応じて、上り信号として送信される試験信号および試験信号を送信する時間を指定する指定ステップと、指定ステップにおいて指定された試験信号を、指定ステップにおいて指定された時間に信号送信手段に供給し、かつ、指定ステップにおいて指定した時間に送信許可信号を信号送信手段に供給しないように、子局装置に対して指示する指示ステップと、指示ステップにおける指示に基づき、指示を受けた子局装置がその動作状態に応じて、指定ステップにおいて指定された時間に送信動作を実行する送信動作実行ステップと、信号送信ステップにおいて、子局装置の動作状態に応じて送信された信号を親局装置が受信する信号受信ステップと、信号受信ステップにおける受信結果に基づいて、子局装置の動作状態を検出する動作状態検出ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、子局装置が、自局に割り当てられた時間以外に上り信号を送信するような誤動作状態にあるかどうかを迅速に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1に示す光通信システムの構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1に示す光通信システムの異常の状況を説明するタイムチャートである。
【図3】本発明の実施の形態1に示す子局装置の動作状態を検出する検出方法についてのフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態1に示す特殊ループバック指示と、誤動作子局の判定方法を示すシーケンス図である。
【図5】本発明の実施の形態2に示す特殊ループバック指示を一斉送信した場合の、誤動作子局の判定方法を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
本発明を適用した通信システムについて、PONシステムを例にとり説明する。図1に、本発明の実施の形態1に係るPONシステムの構成図を示す。図1に示すPONシステムは、親局に3つの子局が接続されている。親局と子局間の通信には時分割多重方式を用いて通信を行うものとし、上り方向(子局→親局)の通信と下り方向(親局→子局)の通信とで、異なる波長を用いることにより、信号が衝突しないようにしている。なお、図1では、1つの親局に対して、3つの子局が接続されている構成について示しているが、本発明は親局に接続される子局の数に制限はなく、3つ以外の子局が接続される場合にも当然に適用することができる。
【0017】
図1において、親局であるOLT(局側通信装置、Optical Line Terminal)1と、子局である複数のONU(加入者側通信装置、Optical Network Unit)3a〜3c(以下、1つのONUを特定しない場合、または、OLT1に接続されたONUを総称する場合はONU3という)が光ファイバ10を介して接続されており、光ファイバ10は光分配器2によって子局3の数に対応して分岐されている。子局3bは、波長多重分離手段4、光受信器5、光送信器6、および論理回路7を備えており、加入者端末11が接続されている。なお、図1においては省略しているが、ONU3a,3cも同様の構成となっている。
【0018】
波長多重分離手段4は、異なる波長である上り信号と下り信号の波長を分離し、下り信号については、分離した後に光受信器5へ転送する。光受信器5は、波長多重分離手段4から受信した光信号を電気信号に変換し、その電気信号を論理回路7へ転送する。論理回路7は、光送信器6に対して2つの信号を供給する出力端子を備えており、OLT1へ送信する信号(以下、適宜、単に送信信号と略記する)および送信許可信号としての発光許可信号を送信し、光送信器6を制御する。ここで、送信信号9は、送信するデータのビットにあわせて信号のH/Lを入力する主信号入力であり、送信信号9に基づいて送信器6に設けられた発光素子が点滅することによりOLT1へ信号を送信する。また、送信信号は連続信号であり、指定された時刻には、データ信号を、指定された時刻以外では特定の意味を持たない信号、例えば、アイドル信号を送信する。また、発光許可信号8は、ONUの光送信器6の発光状態または無発光状態を制御する送信イネーブル信号入力である。光送信器6は、送信信号9および発光許可信号8を論理回路7より入力された場合にのみ、OLT1に対して信号を送信するように構成されている。
【0019】
まず、正常な動作および異常が発生した場合の動作について、図2を参照して説明する。図2において、横軸は時間を表しており、縦軸は光ファイバ10を伝搬する光信号の強度を表している。なお、ここでは上り方向の通信についてのみ説明する。図2に示すように、上り方向の通信において、各ONUはOLTから指定された時間にのみ信号を送信することにより、各ONUから送信される信号が衝突しないようにしている。OLTからONU3bに対して送信する下り方向の信号には、ONU3bを介して加入者端末11に転送する信号の他に、ONU3bに対する制御信号が含まれる。
【0020】
この制御信号により、上り方向でONU3bの送信が許可された時間(図2ではt=t00からt=t01まで)を指示する。この送信時間では、加入者端末11からのデータ信号を含む上り信号が論理回路7から電気信号として光送信器6に送られる。同時に光送信器6に対して、ONUの光送信器6内に設けられた発光素子を発光状態にするような発光許可信号が送られ、指定された時間だけ発光するように制御している。同様に、ONU3cに対してはt=t10〜t=t11を指定して送信許可を与えている。各ONUが正常に動作している場合、指定された時間内のみ信号を送信することによりお互いの信号が衝突することなく、正常な通信を行うことができる。
【0021】
一方、ONU3bに故障が発生し、図1に示すようにONU3bの送信器または論理回路の発光許可信号に係る部分に故障12が発生したとすると、図2に示すように、ONU3bが自局に割り当てられた時間(t=t00〜t01)以外でも発光することとなる。ONU3cに割り当てられた時間(t=t10〜t=t11)では、ONU3bからの信号とONU3cからの信号が重なりあうこととなり、OLT側で区別することができなくなる。したがって、正常な通信を行うことができず、故障したONUを修理または交換する必要がある。なお、ONU3bは、正常にデータ信号は送信器6に供給されている(論理的には正常に動作)ため、子局3bの割り当て時間には、正常な信号が送信されているが、それ以外の時間では、例えば、アイドル信号を送信し続けるなど、意味のあるデータは出力されない。
【0022】
次に、誤動作装置の検出処理動作について説明する。
図3に、実施の形態1に係る光通信システムにおける誤発光装置検出処理のフローチャートを示す。ここでは、OLT1において、ONU3との通信状態を監視し、ONUとの通信において異常が検出された場合に検出処理を行うものとする。また、OLTに接続されるONUの数をNとし、各ONUについて番号(#1〜#N)を設定して、#1から順に検出処理を行うものとする。なお、ONU3aおよびONU3cは正常動作状態にあり、ONU3bは、指定された時間以外にも信号を送信する誤動作状態にあるものとする。
【0023】
まず、OLTにおいてOLTとONU間の通信状態を監視し(ステップS1)、通信状態の異常を検出した場合に、パラメータnを初期化する(ステップS2)。次に、OLTからONU#1(3a)に対して、後述する検出処理を行うための指示(以下、特殊ループバック指示とする)を送信する(ステップS3)。特殊ループバック指示は、OLTからONUへ送信される制御信号に含まれる。ここで、特殊ループバック指示とは、OLTからONUに対し、送信する時間を指定して、検出処理を行うための特定の信号(以下、試験信号(テストデータ)とする)を送信する指示、および、この指定した時間にONUの光送信器を無発光状態にするような指示である。すなわち、送信信号9として試験信号を論理回路7から送信器6へ供給するよう指示するが、発光許可信号8については論理回路7から送信器6へ送信しないよう指示する。なお、送信器において指定された時間については発光許可信号を認識しないような設定としてもよい。
【0024】
ここで、試験信号について説明する。試験信号は、OLT1と各子局間でパターンの相互認識がされている必要がある。ここでは、OLTがONUに対して送信した、特殊ループバック指示が含まれる制御信号をそのまま返信するものとして説明する。
【0025】
特殊ループバック指示が含まれる制御信号を受信したONUは、この指示に基づいて処理を行うが、正常動作状態にあるONUと、故障すなわち誤動作状態にあるONUとで異なる動作をすることとなる(ステップS4)。正常なONU3aがこの特殊ループバック指示含む制御信号を受信した場合においては、この特殊ループバック指示に従い、送信信号9として指定された試験信号(ここでは、この特殊ループバック指示含む制御信号そのまま)を光送信器6に入力するが、発光許可信号8が入力されないため実際には発光せず、上り信号は送信されない。
【0026】
一方、誤動作状態にあるONU3bにこの特殊ループバック指示を送信した場合、子局3bではこの特殊ループバック指示に従って、論理回路7は光送信器6に対して、送信信号9として試験信号を供給する。一方、発光許可信号8に関しては、故障により発光制御が利かない、すなわち、発光許可信号8が指定された時間以外にも出続けるため、子局3aから発光許可が与えられていない時間にでも上り信号が送信されることとなる。したがって、誤動作状態にあるONU3bは発光許可信号8が供給されないように指示されたにもかかわらず、故障により発光許可信号が供給され続けるため、OLT1に対して試験信号が送信されることとなる。
【0027】
本発明に係る検出方法を実施した場合において、OLT側で受信する信号およびOLTにおける指示を行ったONU判断方法について説明する。OLTは、特殊ループバック指示を行ったONUから、試験信号を受信した場合に、その特殊ループバック指示を行ったONUが誤動作状態にあると判断する。
【0028】
誤動作状態にあるONU3bに対して、特殊ループバック指示を送信した場合には、上述のようにONU3bから送信された試験信号を受信することとなる。したがって、ONU3bは誤動作状態にあると判断することができる。一方、正常なONU3bに対して特殊ループバック指示を送信した場合には、この指示に従って上り信号は送信されないため、OLTにより指定された時間に対応する時間に試験信号は受信しない(ステップS5)。なお、正常なONU3aに対して特殊ループバック指示を送信した場合でも、特殊ループバック指示を送信していない故障したONU3bからは常時信号が送信されているため、ONU3aに対する特殊ループバック指示において指定した時間であっても何らかの信号が届くこととなる。しかし、故障したONU3bから届く信号はアイドル信号などの特定の意味を持たない信号であり、試験信号は届かない。ここでは、試験信号を受信したかどうかを判断基準とすることにより、ONU3aは正常動作状態にあると判断することができる。
【0029】
OLT1が試験信号を受信し、特殊ループバック指示を送信したONUが誤動作状態にあると判断した場合には、このONUの交換修理を行う(ステップS6)。OLTが試験信号を受信せず、特殊ループバック指示を送信したONUが正常であると判断した場合には、n=NすなわちすべてのONUに対して検査が終了した場合には終了し(ステップS7)、それ以外の場合には、nに1を加えて(ステップS8)次のONUに対して特殊ループバック指示を与え、故障したONUが検出されるまでこの動作を繰り返す。これにより、複数のONUから故障したONUを検出することができる。
【0030】
これらの子局と親局のやり取りを図4に示すシーケンス図を用いて説明する。ONUのいずれかに故障が疑われる場合、まずOLTからONU3aに特殊ループバック指示を送信する。正常動作状態にあるONU3aでは、この特殊ループバック指示を受信した場合でも、指定された時間に試験信号を送信せず、指定された時間に対応する時間にOLTでは試験信号を受信しないのでONU3aは正常と判断する。次に、誤動作状態にあるONU3bに対して特殊ループバック指示を送信する。特殊ループバック指示では、発光を禁止しているが、ONU3bでは故障により発光制御が利かないため、ONU3bから時刻t=t30からt=t31の間に試験信号が送信され、OLTで受信される。OLTにおいて誤動作状態にあるONUは、試験信号を受信してすぐ判定できるため、ONU1台分の判定時間はOLTから特殊ループバック指示を送信してから、誤動作子局から返信された試験信号を受信するまでの時間となる。実装方法にもよるが、特殊ループバック指示送信から誤動作子局の判定まで100ミリ秒程度で判定が可能となり、従来の検出方法と比べて大幅に検出時間を短縮することができる。
【0031】
実施の形態1に係る光通信システムでは、上述のような構成をしているため、子局が故障し、自局に割り当てられた時間以外でも発光する場合(誤動作状態)においても、書く子局の動作状態を迅速に検出することができ、また、迅速に複数の子局のうちその誤動作状態にある子局を検出することができる。
【0032】
なお、ここでは、ONUは試験信号として、OLTから送信された制御信号をそのまま返信する場合について示したが、OLTとONUにおいて試験信号のパターンが相互認識されていればよく、これに限ったものではない。例えば、予め本発明に係る検出方法に用いる試験信号を定めてOLTおよび各ONU内のメモリ等に保存しておき、各ONUはOLTから特殊ループバック指示を受けた場合、メモリ等を参照してOLTに対して試験信号を送付するような構成としてもよい。また、ONUごとに異なる試験信号を予め定めて各ONU内のメモリ等に保存しておくようにしてもよい。この場合、OLTにおいて信号を受信した場合に、受信した信号がどのONUから送信されたかが区別できるため、検出精度を向上させることができる。また、各ONUに複数種類の試験信号を保存しておき、OLTから特殊ループバック指示において、ONUごとにどの試験信号を送信するかを指示し、OLTが受信した信号がどのONUから送信された信号であるかを区別するような構成としてもよい。
【0033】
なお、実施の形態1に係る光通信システムは、従来の光通信システムにおいて設けられているループバック機能を拡張することによっても実現することもできる。ここで、ループバック機能とは、各子局の正常動作を確認する目的で設けられた機能で、親局から子局に対し、時間を指定して、親局から送信した信号を、子局から親局に送り返すことで通信の正常性を確認する試験機能(ループバック機能)である。本発明は、このループバック機能を拡張し、信号を送信するが、光送信器への発光指示は無意とする特殊なループバック指示を定義することにより実施することもできる。
【0034】
したがって、上述の特許文献1に記載の光通信システムのように、子局側に親局からの指示により電源を切る手段を実装する必要はなく、本発明に係る光通信システムでは、従来の光通信システムに設けられているループバック機能を拡張することにより、容易に実現することができ、製造コストを抑えることができるという効果が得られる。
【0035】
本実施の形態では、PONシステムを例にとり、本発明を適用した通信システムについて説明したが、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り他の通信システムに適用できることは言うまでもない。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、子局1台ずつ順番に特殊ループバック指示を送信するシステムについて示したが、実施の形態2に係る光通信システムでは、複数の子局に対して、異なる送信時間を指定して、一斉に特殊ループバック指示を送信する構成としている。実施の形態2に係る光通信システムの構成は、実施の形態1と同様であり、図1に示す通りである。
【0037】
次に、誤発光装置の検出処理動作について説明する。図5に、実施の形態2に係る光通信システムにおけるOLTと複数のONUの信号のやり取りを示すシーケンス図を示す。図5に示すように、OLTは配下のONUに対して一斉に特殊ループバック指示を送信する。OLT1は、ONU3aに対してはt=t00〜t01、ONU3bに対してはt=t10〜t11、ONU3cに対してはt=t20〜t21を指定して特殊ループバック指示を送信するものとする。特殊ループバック指示を受信した正常動作状態にあるONUの動作、および、誤動作状態にあるONUの動作については、実施の形態1に示す場合と同様である。また、OLTにおける、正常動作状態および誤動作状態にあるONUからの信号受信および誤動作装置検出の方法についても実施の形態1に示す場合と同様である。
【0038】
実施の形態2に係る光通信システムでは、OLTにおいて一度の手順で済み、実施の形態1の場合と比べさらに簡易かつ迅速に誤動作装置の検出を行うことができる。
【0039】
なお、ここでは、OLTから各ONUに異なる時間を指定して、特殊ループバック指示を送信する場合について示したが、ONUごとに異なる内容の試験信号を指定して、同じ時間に送信させるようにしても良い。この場合、子局ごとに異なる試験信号を保存しておき、また、親局は子局が保存する。例えば、各ONUの登録番号と組み合わせるような構成としてもよい。誤動作状態にあるONUが一つであれば、誤動作状態にあるONUのみから信号が送信されるため、信号を受信したOLTは、受け取った信号の内容を解読し、受け取った試験信号を指定したONUが誤動作状態にあると判断することができる。これにより、さらに迅速に誤発光装置の検出処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
1 OLT、2 光分配器、3a,c ONU(正常)、3b ONU(異常)、4 波長多重分離手段、5 光受信器、6 光送信器、7 論理回路、8 発光許可信号、9 送信信号、10 光ファイバ、11 加入者端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親局装置と複数の子局装置が伝送路を介して接続された通信システムにおいて、
前記子局装置に設けられ、送信許可信号および送信する信号が供給されることにより、上り信号を送信する送信動作が実行可能となる信号送信手段と、
前記子局装置の動作状態に応じて前記信号送信手段が送信する試験信号およびその送信時間を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された試験信号が、前記指定手段により指定された送信時間に前記信号送信手段に供給され、かつ、前記指定された送信時間に前記送信許可信号が前記信号送信手段に供給されないように、前記子局装置に対して指示する指示手段と、
前記子局装置の動作状態に応じて前記信号送信手段から送信される信号を受信する信号受信手段と、
前記信号受信手段による受信結果に基づいて、前記子局装置の動作状態を検出する動作状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記信号送信手段は、前記子局装置が正常動作状態にある場合は前記指定手段により指定された送信時間に上り信号を送信し、前記子局装置が誤動作状態にある場合は前記指定手段により指定された送信時間以外にも上り信号を送信し、
前記動作状態検出手段は、前記子局装置が前記正常動作状態にあるか、前記誤動作状態にあるかを検出すること、
を特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記動作状態検出手段は、前記指示手段により指示された前記子局装置から、前記指定手段により指定した送信時間に対応する時間に、前記試験信号が届いた場合に、前記子局装置が前記誤動作状態にあると判断し、
前記子局装置から、前記指定手段により前記指定された送信時間に対応する時間に、前記試験信号が届かない場合に、前記子局装置は前記正常動作状態にあると判断すること、
を特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
前記指定手段は、前記複数の子局装置に対してそれぞれ異なる送信時間を指定し、
前記指示手段は、前記複数の子局装置に対して順次前記指示を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記指示手段は、前記複数の子局装置に対して一斉に前記指示を行うこと、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
送信する信号と送信許可信号を供給されることにより、上り信号を送信する信号送信手段を備えた複数の子局装置が伝送路を介して接続された親局装置において、
前記子局装置の動作状態を検出するために用いられ、前記子局装置の動作状態に応じて前記信号送信手段が送信する試験信号および前記試験信号を送信する時間を指定する指定手段と、
前記指定手段により指定された試験信号を、前記指定手段において指定された時間に前記信号送信手段に供給し、かつ、前記指定手段において指定された時間に前記送信許可信号を前記信号送信手段に供給しないように、前記子局装置に対して指示する指示手段と、
前記子局装置の動作状態に応じて前記信号送信手段から送信される信号を受信する信号受信手段と、
前記信号受信手段による受信結果に基づいて、前記子局装置の動作状態を検出する動作状態検出手段と、
を備えたことを特徴とする親局装置。
【請求項7】
上り信号を送信する信号送信手段を備えた複数の子局装置と、前記子局装置に対して前記上り信号を送信する時間を指定する親局装置とを備え、かつ、前記子局装置が正常動作状態にある場合には、前記親局装置により指定された時間についての送信許可信号および送信する上り信号を供給されることにより、前記送信器の送信動作を実行可能となり、前記子局装置が誤動作状態にある場合には、前記親局装置により指定された時間以外に上り方向の信号を、前記信号送信手段が送信するように構成された通信システムに適用可能な、前記子局装置の動作状態を検出する子局装置の動作状態検出方法であって、
前記子局装置からその動作状態に応じて、前記上り信号として送信される試験信号および前記試験信号を送信する時間を指定する指定ステップと、
前記指定ステップにおいて指定された試験信号を、前記指定ステップにおいて指定された時間に前記信号送信手段に供給し、かつ、前記指定ステップにおいて指定した時間に前記送信許可信号を前記信号送信手段に供給しないように、前記子局装置に対して指示する指示ステップと、
前記指示ステップにおける指示に基づき、前記指示を受けた子局装置がその動作状態に応じて、前記指定ステップにおいて指定された時間に前記送信動作を実行する送信動作実行ステップと、
前記信号送信ステップにおいて、前記子局装置の動作状態に応じて送信された信号を前記親局装置が受信する信号受信ステップと、
前記信号受信ステップにおける受信結果に基づいて、前記子局装置の動作状態を検出する動作状態検出ステップと、
を備えたことを特徴とする子局装置の動作状態検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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