説明

通信システム、通信装置及び通信方法

【課題】通信装置を制御するCPUのネットワーク上位ソフトウェアが自通信装置にとって必要であるデータのみを処理すればよいようにして、CPUの受信データの処理負荷を低減する。
【解決手段】他の通信装置からの伝送フレームを受信した通信装置は、受信フレーム廃棄判定手段439が、受信したフレームに含まれる情報である宛先番号としての宛先IPアドレス及び宛先ポート番号と、自通信装置の記憶装置に格納されている自通信装置が受付処理を行ってよいか否かを示す宛先IPアドレス及び宛先ポート番号とを比較して、受信したフレームを自通信装置で受付処理を行うべきか否かを判定する。LANコントローラドライバ421は、受信したフレームが自通信装置で受付処理を行うべきものでない場合、フレームの廃棄処理を行い、ネットワーク上位ソフトウェア411は、受信したフレームが自通信装置で受付処理を行うべきものであった場合、フレームの受付処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、通信装置及び通信方法に係り、特に、プロセス制御等のために用いて好適な同一ネットワーク上に複数の通信装置が接続されて構成される通信システム、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラント制御システム等は、ネットワークを介して複数の通信装置が相互に通信可能に接続されて構成された通信システムの各通信装置に接続される制御端末を介してプラントの制御を行っている。このような通信システムにおける各通信装置は、通信装置内の主メモリの内容を周期的に他の通信装置に送信して、ネットワーク内の全通信装置の主メモリの内容を一致化させるために、所定の周期でサイクリックに通信を行っている。このような通信でのデータの送信は、ネットワークに接続されている複数の通信装置におけるデータの同時性を保証するため、ブロードキャストにより行われている。
【0003】
図3は従来技術による通信装置の構成と通信装置相互間でのデータの転送を説明する図である。図3には、2台の通信装置を示しており、一方の通信装置を送信側、他方の通信装置を受信側としてデータの転送を説明する。なお、ネットワークには、図示していないがさらに多数の通信装置が接続されている。
【0004】
図3において、送信側となる通信装置A200は、CPUA201、LSIA202、主メモリA203、LANコントローラA204を備えて構成されている。そして、CPUA201とLSIA202との間、LSIA202と主メモリA203との間、LSIA202とLANコントローラA204との間は、バスにより接続されている。また、LANコントローラA204は、他の通信装置からデータを受信したときに、CPUA201へ割込信号205を出力することにより、CPUA201に他の通信装置からデータを受信したことを通知することができる。
【0005】
受信側となる通信装置B210も、通信装置Aと同様に、CPUB211、LSIB212、主メモリB213、LANコントローラB214を備えて構成されている。CPUB211とLSIB212との間、LSIB212と主メモリB213との間、LSIB212とLANコントローラB214との間は、バスにより接続される。また、LANコントローラBA214は、他の通信装置からデータを受信したときに、CPUB211へ割込信号215を出力することにより、CPUB211に他の通信装置からデータを受信したことを通知することができる。
【0006】
前述において、LSIA202、LSIB212は、CPUA201、B211とLANコントローラA204、B214との間のインターフェース機能を有する。
【0007】
通信装置A200の主メモリA203は、データを格納するエリアが境界で区切られており、データ1エリア206内にデータ1(207)、データ2エリア208内にデータ2(209)というように、送信すべき各データをそれぞれのエリア内に格納している。通信装置A200が通信装置B210や他の通信装置へネットワーク220を介してブロードキャストによりデータを転送する場合、通信装置A200のCPUA201は、LSIA202を経由しLANコントローラA204にブロードキャスト送信の実行命令を発行する。命令を受けたLANコントローラA204は、LSIA202を経由し、主メモリA203内の対象データをリードし、リードしたデータをデータフレームに乗せたフレームを生成し、そのフレーム221をネットワーク220に接続されている各通信装置へブロードキャスト送信する。
【0008】
通信装置B210のLANコントローラB214は、通信装置A200からフレーム221を受信し、LSIB212を経由してフレーム221内のデータを主メモリB213の受信バッファとしてのデータエリアにライトする。LANコントローラB214は、主メモリB213へのライトが完了すると、CPUB211に対してデータの受信が完了したことを通知するため、割込信号215を出力する。この割込信号は、LANコントローラB214が他の通信装置から1つのフレームを受信する毎にCPUB211へ出力される。CPUB211が備える図示しないネットワーク上位ソフトウェアは、LANコントローラB214からの割込信号を検出すると、受信したフレーム内の受信データに対してIP、受信側の処理プログラムが必要とするUDP等のサム計算、受信バッファからネットワーク上位ソフトウェアのワークエリアへのデータのコピー、自通信装置で不要なデータの廃棄判定等を行う。
【0009】
なお、前述したような通信装置の従来技術として、例えば、特許文献1、特許文献2等に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平06−274463号公報
【特許文献2】特開昭62−254545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述した従来技術は、通信装置相互間でブロードキャストによるデータの通信を行っているため、通信装置を制御するCPUのネットワーク上位ソフトウェアが、受信データに対してIP、UDP等のサム計算、受信バッファからネットワーク上位ソフトウェアのワークエリアへのデータのコピー、自通信装置で不要なデータの廃棄判定等を行っている。このため、前述した従来技術は、ブロードキャストされてくるフレームの受信頻度が高くなると、受信側となる通信装置のLANコントローラからCPUへの割込頻度も高くなり、CPUのネットワーク上位ソフトウェアによるデータ受信処理の負荷が非常に大きくなり、CPU自身の処理負荷が非常に大きくなるという問題点を有している。
【0012】
すなわち、同一ネットワーク上に複数の通信装置が接続された通信システムにおいて、ネットワーク上の通信装置がブロードキャストによりデータを送信すると、そのデータは、全ての通信装置に送信される。そのため、ブロードキャストでのデータ送信が頻繁に行われると、通信装置は、自局にとって不要なデータを大量に受信して処理せざるを得ないことになる。通信装置は、受信した全てのデータに対して、ネットワーク上位ソフトウェアで、IP、UDP等のサム計算、受信バッファからネットワーク上位ソフトウェアのワークエリアへのコピー、自通信装置で不要なデータの廃棄等の処理を行わなければならず、受信するデータ量が多いほど、通信装置を制御するCPUの負荷も高くなることになる。
【0013】
本発明の目的は、前述した従来技術の問題点を解決し、通信装置を制御するCPUのネットワーク上位ソフトウェアが自通信装置にとって必要であるデータのみを処理することができるようにして、CPUの受信データの処理負荷を低減することを可能とした通信システム、通信装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば前記目的は、複数の通信装置がネットワークにより相互に通信可能に接続されて構成された通信システムにおいて、 前記複数の通信装置のそれぞれは、ネットワーク上位ソフトウェア及びLANコントローラドライバを有する中央演算処理装置と、主メモリと、受信フレーム廃棄判定手段と、伝送フレームを廃棄するか否かを示す情報を一時保管する廃棄ステータスレジスタとを有し、それぞれの通信装置が前記主メモリ内に保持しているデータを他の通信装置が保持するデータと一致化させるために相互に伝送フレームの送受信を行い、他の通信装置から送信されてきた伝送フレームを受信した通信装置は、前記受信フレーム廃棄判定手段が、受信した伝送フレームに含まれる情報である宛先番号としての宛先IPアドレス及び宛先ポート番号と、自通信装置の記憶装置に格納されている自通信装置が受付処理を行ってよいか否かを示す宛先IPアドレス及び宛先ポート番号とを比較して、受信した伝送フレームを自通信装置で受付処理を行うべきか否かを判定し、判定結果を前記廃棄ステータスレジスタに保持させ、前記LANコントローラドライバは、前記廃棄ステータスレジスタが、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものでないことを示していた場合、前記伝送フレームの廃棄処理を行い、前記ネットワーク上位ソフトウェアは、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものであることを示していた場合、前記伝送フレームの受付処理を行うことにより達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、他の通信装置からブロードキャスト送信されてきたデータを受信した通信装置のその通信装置を制御するCPUのネットワーク上位ソフトウェアが自通信装置にとって必要であるデータのみを処理すればよいので、CPUの受信データの処理負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による通信システムの構成とブロードキャストによるデータ送信とを説明する図である。
【図2】図1に示した通信システムにおいて各通信装置が自通信装置以外の全通信装置からブロードキャストされたデータを受信する動作を説明する図である。
【図3】従来技術による通信装置の構成と通信装置相互間でのデータの転送を説明する図である。
【図4】フレームヘッダ内の代表的なデータブロックを示すフレームヘッダのフォーマットの構成を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による通信装置の構成を示すブロック図である。
【図6】受信フレーム廃棄判定ブロックが廃棄判定を行い、LANコントローラドライバがフレームを廃棄するまでの処理動作を説明するフローチャートである。
【図7】主メモリの受信バッファ領域内の各ケースと、データ廃棄ステータスレジスタとの対応を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明による通信システム、通信装置及び通信方法の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施形態による通信システムの構成とブロードキャストによるデータ送信とを説明する図である。
【0019】
本発明の実施形態による通信システムは、通信装置A100を含む複数の通信装置A〜D…がネットワーク101を介して相互に通信可能に接続されて構成されている。各通信装置A〜D…には、それぞれ、制御端末A〜D…が接続されている。図1には、各通信装置A〜D…のそれぞれに、1台の制御端末A〜D…が接続されているものとして示しているが、各通信装置A〜D…のそれぞれに、複数台の制御端末が接続されていてもよい。そして、図示通信システムがプロセス制御に使用される場合、各制御端末は、プロセス内の各種センサ情報等の収集、各種アクチュエータ等の制御を行う。
【0020】
いま、通信装置A100がデータのブロードキャスト送信102を行うものとする。この場合、そのデータは、ネットワーク100に接続されている全ての通信装置に対して送信され、他の全ての通信装置で受信されることになる。データのブロードキャスト送信は、通信装置B110や、その他全ての通信装置においても、通信装置A100の場合と同様に行われる。
【0021】
図2は図1に示した通信システムにおいて各通信装置が自通信装置以外の全通信装置からブロードキャストされたデータを受信する動作を説明する図である。
【0022】
本発明の実施形態による通信システムにおいても、各通信装置は、ブロードキャスト送信されたデータが自通信装置局にとって必要なデータであるか否かに関わらず、全てのデータを受信する。そして、本発明の実施形態は、詳細を後述するように、通信装置を制御するCPUの処理負荷が大きくならないように、受信したデータが自通信装置にとって必要か不要か否かを判別し、不要なデータの廃棄を行っている。
【0023】
前述した本発明の実施形態による通信システムの構成は、従来技術の場合も同様である。また、前述した本発明の実施形態による通信システムのネットワークは、ループ状に接続されて構成されているように示しているが、ネットワークの構成は、必ずしもループ状である必要はない。
【0024】
次に、本発明の実施形態による通信装置について説明するが、その前に、ネットワークに接続されている複数の通信装置の1つが他の通信装置へデータを送信する際に生成するフレームのフレームヘッダの構成を説明する。
【0025】
図4はフレームヘッダ内の代表的なデータブロックを示すフレームヘッダのフォーマットの構成を示す図である。本発明の実施形態は、通信装置内のLSIが受信したフレームのフレームヘッダ内の値を基に、フレームすなわちデータの廃棄判定を行っている。なお、送信データは、フレームヘッダに続くデータ領域に格納される。
【0026】
フレームヘッダは、図4に示しているように、IEEE802.3で規定されるような宛先MACアドレス、送信元MACアドレス、フレーム・タイプを含むMACヘッダ300と、プロトコル番号、送信元IPアドレス、宛先IPアドレスを含むIPヘッダ310と、送信元ポート番号、受信側装置の処理プログラムが必要とする情報を持つ宛先ポート番号を含むUDPヘッダ320とにより構成される。本発明の実施形態は、このうち、MACヘッダ内のフレーム・タイプ301、IPヘッダ内のプロトコル番号311、宛先IPアドレス312、UDPヘッダ内の宛先ポート番号321をフレーム廃棄の判定対象であるデータブロックとして、これらのデータブロックの内容により、そのフレームを廃棄するか否かを判定している。
【0027】
図5は本発明の実施形態による通信装置の構成を示すブロック図である。図5には、通信装置A100を挙げて、その構成を示しているが、通信システムを構成する複数の通信装置は、全て同一に構成されている。
【0028】
本発明の実施形態による通信装置は、そのハードウェアとして、CPU410、主メモリ420、LSI430、LANコントローラ440を備えて構成されている。CPU410は、ソフトウェアとして、データ受信通知後の処理を行うネットワーク上位ソフトウェア411と、このネットワーク上位ソフトウェア411へのデータ受信通知と受信データの廃棄を行うLANコントローラドライバ412とを有している。これらのソフトウェア411、412は、CPU410に制御されて実行されることにより、それぞれの機能が構築される。
【0029】
主メモリ420は、その構成の詳細について図示しないが、送信データ格納エリア、受信バッファエリア、受信データ格納エリア、自局(自通信装置)受信許可ポート番号指定ビットエリア、その他、CPU410がその処理等のために使用するエリア等を備えて構成されているが、図5には、自局受信許可ポート番号指定ビットエリア421と、他の通信装置からネットワーク及びLANコントローラ440を経由して受信するデータを格納する受信バッファエリア422とだけを示している。
【0030】
自局受信許可ポート番号指定ビットエリア421は、規格により定められている全65536種類のポート番号に合わせて65536bit(8192B)の容量を有し、自局受信許可ポート番号指定ビットエリア領域の先頭をポート番号0、最終をポート番号65535とし、受信を許可するポート番号に対応する自局受信許可ポート番号指定ビット位置に、システムを管理している管理者であるユーザが1を設定する。
【0031】
受信バッファエリア422は、リングバッファであり、LANコントローラ440で受信された他の通信装置からの受信フレーム450を、受信フレームであるケース423毎に格納するエリアである。1つのケース423の容量は、受信フレーム450の最大長1518Bより大きく、後述するデータ廃棄ステータスレジスタとの対応付けが容易な2のべき乗の数である2KBである。
【0032】
LSI430は、データの廃棄ステータスを反映する廃棄ステータスレジスタ431、受信フレーム450を格納する主メモリ420の受信バッファエリア422の先頭アドレスを指定する受信バッファの主メモリアドレスレジスタ432、受信フレーム450のヘッダ内のフレーム・タイプ301がどこに位置するかを指定するフレーム・タイプのアドレスレジスタ433、受信フレーム450のヘッダ内のプロトコル番号311がどこに位置するかを指定するプロトコル番号のアドレスレジスタ434、受信フレーム450のヘッダ内の宛先IPアドレス312がどこに位置するかを指定する宛先IPアドレスのアドレスレジスタ435、宛先IPアドレスのサブネットマスクを設定するサブネットマスク設定レジスタ436、受信フレーム450のヘッダ内の宛先ポート番号がどこに位置するかを指定する宛先ポート番号のアドレスレジスタ437、自局受信許可ポート番号指定ビットエリア421の先頭アドレスを指定するビットエリアの主メモリアドレスレジスタ438、及び、受信フレーム廃棄判定ブロック439を備えて構成されている。
【0033】
受信フレーム廃棄判定ブロック439は、他の通信装置からLANコントローラ440を経由して受信したフレーム450のヘッダが主メモリ420の受信バッファ格納エリア422の該当ケース423に格納される間に、並行して、受信フレーム450のヘッダ内のフレーム・タイプ312、プロトコル番号311、宛先IPアドレス312、宛先ポート番号321を各レジスタで指定されたアドレスをもとに順にスヌープし、その都度データが廃棄対象であるか否かを判定する。宛先ポート番号が廃棄対象であるかの判定は、主メモリ420の自局受信許可ポート番号指定ビットエリア421をリードし、そのリードデータと照らし合わせることにより行う。受信フレーム廃棄判定ブロック439は、前述した判定を行い、受信フレーム450が廃棄対象であった場合、廃棄ステータスレジスタ431の対象ビットに1を立てる。
【0034】
LANコントローラ440は、受信したフレーム450を主メモリ420の受信バッファエリア422に格納した後、LANコントローラドライバ412に受信完了を通知する割込信号を出力する。
【0035】
受信LANコントローラドライバ412は、割込通知を受けると、廃棄ステータスレジスタ431をリードして、廃棄ステータスが上がっているか否か、すなわち、廃棄ステータスレジスタ431の対象ビットに1が立っているか否かをチェックする。LANコントローラドライバ412は、このチェックの結果、フレーム450が廃棄対象でなければIP、UDP等の処理を行うネットワーク上位ソフトウェア411にフレーム450の受信を通知し、フレーム450が廃棄対象であれば、受信したフレーム450を廃棄し、ネットワーク上位ソフトウェア411に対するフレーム受信の受信通知を行わない。なお、受信LANコントローラドライバ412での受信したフレーム450の廃棄は、ネットワーク上位ソフトウェア411に対するフレーム受信の受信通知を行わないだけでよい。なぜらら、受信バッファ422は、サイクリックに使用されているので、古いケースから順に廃棄されていくからである。
【0036】
ネットワーク上位ソフトウェア411は、LANコントローラドライバ412から受信通知を受けた後に、受信したフレームのIP、UDP等のサム計算や受信バッファからネットワーク上位ソフトウェアのワークエリアへのコピー等の処理を行う。ネットワーク上位ソフトウェア411は、前述したように、廃棄対象でないフレームのIP、UDP等のサム計算や受信バッファからネットワーク上位ソフトウェアのワークエリアへのコピー等の処理を行えばよく、ネットワーク上位ソフトウェアで不要なデータに対してIP、UDP等のサム計算、ワークエリアへのコピー、データ廃棄を行う必要が無くなり、他の通信装置からブロードキャストによるデータの送信が頻発した場合にも、従来技術の場合に比べてネットワーク上位ソフトウェアの処理負荷、すなわち、CPU411の処理負荷が低減することになる。
【0037】
図6は受信フレーム廃棄判定ブロック439が廃棄判定を行い、LANコントローラドライバ412がフレームを廃棄するまでの処理動作を説明するフローチャートであり、次に、図6を参照して、受信フレームを廃棄する際の処理を詳細に説明する。本発明の実施形態における図6に示すフローの例では、受信フレームのフレーム・タイプがIP、かつ、プロトコル番号がUDP、かつ、宛先IPアドレスがブロードキャスト、かつ、宛先ポート番号が自局受信許可でない場合に受信フレームの廃棄を行うこととしている。
【0038】
(1)LANコントローラ440は、他の通信装置からのフレーム450の受信待機状態から受信フレームの先頭を検出する(ステップ500、501)。
【0039】
(2)受信したフレームのフレームヘッダは、先頭から順にLSI430に入力されていく。LSI430の受信フレーム廃棄判定ブロック439は、フレーム・タイプのアドレスレジスタ433の値と受信したフレーム450のアドレスとが一致したデータをスヌープし、フレーム・タイプがIPであるか否かを判定する。フレーム・タイプには、IPとARPとの2種類があり、フレーム・タイプがARPの場合、ステップ500からの処理に戻り、フレームの受信待機状態となる(ステップ502)。
【0040】
(3)ステップ502の判定で、フレーム・タイプがIPであった場、受信フレーム廃棄判定ブロック439は、プロトコル番号のアドレスレジスタ434の値と受信したフレームのアドレスとが一致したデータをスヌープし、プロトコル番号がUDPであるか否かを判定する。プロトコル番号がUDP以外であった場合、ステップ500からの処理にもどり、フレームの受信待機状態となる(ステップ503)。
【0041】
(4)ステップ503の判定で、プロトコル番号がUDPであった場合、受信フレーム廃棄判定ブロック439は、宛先IPアドレスのアドレスレジスタ435の値と受信したフレームのアドレスとが一致したデータをスヌープし、スヌープしたデータをサブネットマスク設定レジスタ436で指定された値でマスクする(ステップ504)。
【0042】
(5)その後、受信フレーム廃棄判定ブロック439は、宛先IPアドレスがブロードキャストであるか否かを判定し、宛先IPアドレスが、個々の宛先を示している等でブロードキャストではなかった場合、ステップ500からの処理に戻り、フレームの受信待機状態となる(ステップ505)。
【0043】
(6)ステップ505の判定で、宛先IPアドレスがブロードキャストであった場合、受信フレーム廃棄判定ブロック439は、宛先ポート番号のアドレスレジスタ437の値と受信フレームのアドレスとが一致したデータをスヌープすると共に、同時に、受信フレームのアドレスと受信バッファの主メモリアドレスレジスタ432の値とを比較することにより、受信バッファのケース番号をスヌープする(ステップ506)。
【0044】
(7)次に、受信フレーム廃棄判定ブロック439は、スヌープした宛先ポート番号に対応する主メモリの自局受信許可ポート番号指定ビットエリア421をリードし、対応する自局受信許可ポート番号指定ビットエリアのビットが1か否かを判定して、スヌープした宛先ポート番号が廃棄対象であるか否かを判定し、宛先ポート番号が自局受信許可ポート番号となっていて、フレームが廃棄対象でないか否かを判定し、フレームが廃棄対象でなかった場合、ステップ500からの処理に戻り、フレームの受信待機状態となる(ステップ507、508)。
【0045】
(8)ステップ508の判定で、フレームが廃棄対象であった場合、フレーム・タイプ、プロトコル番号、宛先IPアドレス、宛先ポート番号の全てで受信したフレームが廃棄対象であることを示していたため、既にスヌープしてある受信バッファのケース番号に対応する廃棄ステータスレジスタ431にデータの廃棄を意味する1をセットする。なお、フレームが廃棄対象であると判定するのは、フレーム・タイプ、プロトコル番号、宛先IPアドレス、宛先ポート番号の全てが、受信したフレームが廃棄対象であることを示していなくても、それらの一部だけであってもよい(ステップ509)。
【0046】
(9)他の装置からのフレーム450の受信が終了すると、LANコントローラ440がLANコントローラドライバ412に対して受信完了を通知する割込通知を行うので、これを受けたLANコントローラドライバ412は、LSI430内の廃棄ステータスレジスタ431の値をリードすることにより、受信したフレームの廃棄が指示されていた場合、その受信したフレームのデータの廃棄を行った後、ステップ500からの処理に戻り、フレームの受信待機状態となる(ステップ510)。
【0047】
本発明の実施形態による通信装置は、前述で説明したような処理を行うことにより、LANコントローラドライバ412が、廃棄すべきフレームのデータを廃棄し、フレームの受信通知をネットワーク上位ソフトウェア411へ行うことがない。
【0048】
このため、ネットワーク上位ソフトウェア411は、廃棄対象でないフレームのIP、UDP等のサム計算や受信バッファからネットワーク上位ソフトウェアのワークエリアへのコピー等の処理を行えばよく、ネットワーク上位ソフトウェアで不要なデータに対してIP、UDP等のサム計算、ワークエリアへのコピー、データ廃棄を行う必要が無くなり、他の通信装置からブロードキャストによるデータの送信が頻発した場合にも、従来技術の場合に比べてネットワーク上位ソフトウェア411の処理負荷、すなわち、CPU410の処理負荷が低減することになる。
【0049】
図7は主メモリ420の受信バッファ領域422内の各ケースと、データ廃棄ステータスレジスタ431との対応を説明する図である。図7に示す例では、図7(a)に示すように、主メモリ600の領域のうち、受信バッファ601の容量を128KB、すなわち、受信フレーム最大64ケース分であるとする。また、データ廃棄ステータスレジスタ610のビットの数は、図7(b)に示すように、受信バッファのケース数と等しくするため、計64ビットとする。
【0050】
図7において、受信バッファのケース0(602)に格納した他の局通信装置からの受信データが廃棄対象である場合、データ廃棄ステータスレジスタ610の最上位ビットである63ビット目611に1がセットされる。また、受信バッファのケース63(603)に格納した他の通信装置からの受信データが廃棄対象である場合、データ廃棄ステータスレジスタ610の最下位ビットである0ビット目(612)に1がセットされる。LANコントローラドライバは、このようなレジスタ値をリードして、受信したデータが廃棄対象であるか否かを判別している。
【0051】
前述した本発明の実施形態での処理は、プログラムにより構成し、本発明が備えるCPUに実行させることができ、また、それらのプログラムは、FD、CDROM、DVD等の記録媒体に格納して提供することができ、また、ネットワークを介してディジタル情報により提供することができる。
【符号の説明】
【0052】
100、110 通信装置A、B
101 ネットワーク
400 通信装置A
410 CPU
411 ネットワーク上位ソフトウェア
412 LANコントローラドライバ
420 主メモリ
421 自局受信許可ポート番号指定ビットエリア
422 受信バッファ
423 ケースN
430 LSI
431 廃棄ステータスレジスタ
432 受信バッファの主メモリアドレスレジスタ
433 フレーム・タイプのアドレスレジスタ
434 プロトコル番号のアドレスレジスタ
435 宛先IPアドレスのアドレスレジスタ
436 サブネットマスク設定レジスタ
437 宛先ポート番号のアドレスレジスタ
438 ビットエリアの主メモリアドレスレジスタ
439 受信フレーム廃棄判定ブロック
440 LANコントローラ
450 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信装置がネットワークにより相互に通信可能に接続されて構成された通信システムにおいて、
前記複数の通信装置のそれぞれは、ネットワーク上位ソフトウェア及びLANコントローラドライバを有する中央演算処理装置と、主メモリと、受信フレーム廃棄判定手段と、伝送フレームを廃棄するか否かを示す情報を一時保管する廃棄ステータスレジスタとを有し、それぞれの通信装置が前記主メモリ内に保持しているデータを他の通信装置が保持するデータと一致化させるために相互に伝送フレームの送受信を行い、
他の通信装置から送信されてきた伝送フレームを受信した通信装置は、前記受信フレーム廃棄判定手段が、受信した伝送フレームに含まれる情報である宛先番号としての宛先IPアドレス及び宛先ポート番号と、自通信装置の記憶装置に格納されている自通信装置が受付処理を行ってよいか否かを示す宛先IPアドレス及び宛先ポート番号とを比較して、受信した伝送フレームを自通信装置で受付処理を行うべきか否かを判定し、判定結果を前記廃棄ステータスレジスタに保持させ、
前記LANコントローラドライバは、前記廃棄ステータスレジスタが、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものでないことを示していた場合、前記伝送フレームの廃棄処理を行い、
前記ネットワーク上位ソフトウェアは、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものであることを示していた場合、前記伝送フレームの受付処理を行うことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記受信フレーム廃棄判定手段が、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきか否かの判定に使用する情報として、前記宛先番号に加えて、フレーム・タイプ及びプロトコル番号を使用することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記廃棄ステータスレジスタの各ビットと前記受信した個々の伝送フレームを格納している前記主メモリの領域とが関連付けられていることを特徴とする請求項1または2記載の通信システム
【請求項4】
前記受信した個々の伝送フレームを格納する主メモリの領域は、伝送フレームの最大長より大きく、かつ、2のべき乗であることを特徴とする請求項3記載の通信システム。
【請求項5】
複数の通信装置がネットワークにより相互に通信可能に接続されて構成された通信システムにおける通信装置において、
前記複数の通信装置のそれぞれは、ネットワーク上位ソフトウェア及びLANコントローラドライバを有する中央演算処理装置と、主メモリと、受信フレーム廃棄判定手段と、伝送フレームを廃棄するか否かを示す情報を一時保管する廃棄ステータスレジスタとを有し、それぞれの通信装置が前記主メモリ内に保持しているデータを他の通信装置が保持するデータと一致化させるために相互に伝送フレームの送受信を行い、
他の通信装置から送信されてきた伝送フレームを受信した通信装置は、前記受信フレーム廃棄判定手段が、受信した伝送フレームに含まれる情報である宛先番号としての宛先IPアドレス及び宛先ポート番号と、自通信装置の記憶装置に格納されている自通信装置が受付処理を行ってよいか否かを示す宛先IPアドレス及び宛先ポート番号とを比較して、受信した伝送フレームを自通信装置で受付処理を行うべきか否かを判定し、判定結果を前記廃棄ステータスレジスタに保持させ、
前記LANコントローラドライバは、前記廃棄ステータスレジスタが、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものでないことを示していた場合、前記伝送フレームの廃棄処理を行い、
前記ネットワーク上位ソフトウェアは、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものであることを示していた場合、前記伝送フレームの受付処理を行うことを特徴とする通信装置。
【請求項6】
複数の通信装置がネットワークにより相互に通信可能に接続されて構成された通信システムにおける通信方法において、
前記複数の通信装置のそれぞれは、ネットワーク上位ソフトウェア及びLANコントローラドライバを有する中央演算処理装置と、主メモリと、受信フレーム廃棄判定手段と、伝送フレームを廃棄するか否かを示す情報を一時保管する廃棄ステータスレジスタとを有し、それぞれの通信装置が前記主メモリ内に保持しているデータを他の通信装置が保持するデータと一致化させるために相互に伝送フレームの送受信を行い、
他の通信装置から送信されてきた伝送フレームを受信した通信装置は、前記受信フレーム廃棄判定手段が、受信した伝送フレームに含まれる情報である宛先番号としての宛先IPアドレス及び宛先ポート番号と、自通信装置の記憶装置に格納されている自通信装置が受付処理を行ってよいか否かを示す宛先IPアドレス及び宛先ポート番号とを比較して、受信した伝送フレームを自通信装置で受付処理を行うべきか否かを判定し、判定結果を前記廃棄ステータスレジスタに保持させ、
前記LANコントローラドライバは、前記廃棄ステータスレジスタが、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものでないことを示していた場合、前記伝送フレームの廃棄処理を行い、
前記ネットワーク上位ソフトウェアは、前記受信した伝送フレームが自通信装置で受付処理を行うべきものであることを示していた場合、前記伝送フレームの受付処理を行うことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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