通信システムおよび通信方法
【課題】隣接回線の漏話によるエラーの発生を抑制すると共に、十分な送信出力電力を確保して、データ通信を行うことができるようにする。
【解決手段】モデム装置2bと集合装置1との間の回線の通信を開始する際に、モデム装
置2bと集合装置1との間の回線の近隣にある端末装置2aと集合装置1との間の回線のSNRマージンを検出し、検出したSNRマージンとダウンシフトマージンβ及びダウンシフトマージン(β+1)と比較しながら、モデム装置2bと前記集合装置1との間の回線の送信電力を増加させる。
【解決手段】モデム装置2bと集合装置1との間の回線の通信を開始する際に、モデム装
置2bと集合装置1との間の回線の近隣にある端末装置2aと集合装置1との間の回線のSNRマージンを検出し、検出したSNRマージンとダウンシフトマージンβ及びダウンシフトマージン(β+1)と比較しながら、モデム装置2bと前記集合装置1との間の回線の送信電力を増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、xDSL(Digital Subscriber Line)通信の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションのような集合住宅では、集合住宅内の配線方式としてメタリックケーブルが使われている。このような集合住宅に高速回線を引き込む場合、共有スペースに集合装置を設け、この集合装置を局側の光ファイバに接続すると共に構内のメタリックケーブルに接続し、集合装置と各部屋のモデム装置との間を、xDSL(例えばVDSL(Very high bit-rate Digital Subscriber Line)方式でデータを伝送することが行われている。
【0003】
このような、集合住宅向けのxDSL高速メタル通信では、隣接回線からの漏話等、周囲の雑音の影響を受けやすい。そこで、周囲の雑音の変化に応じて、SNR(Signal to Noise Ratio(信号対雑音比))マージンを確保できるようにサブキャリアにビットを再割り当てし、雑音環境変化に応じた最適な帯域を確保するような制御が行われている。このような機能は、SRA(Seamless Rate Adaptation(シームレス・レート・アダプテーション))と呼ばれている。図17は、構内のメタリックケーブル100の構造を示すものである。図17は、10対サブユニットと称されるもので、4本の導体を撚り合わせたカッド101a、101b、101c、101d、101eからなる。
特許文献1には、パケットが一定時間流れない場合には、送信出力電力を低減させて、消費電力を低減させるようにしたDSLモデム装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−323301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図17に示したような構造のメタリックケーブルでは、特に、同一のカッド内の通信が開始されると、漏話による影響を強く受けることになる。また、同一カッド内でなくても、近接するカッドでの通信では、漏話による影響を受ける可能性が高い。例えば、カッド101a内のケーブル102aでデータ通信が行われている間に、ケーブル102bで他のデータ通信が開始されると、カッド101a内のケーブル102aのデータ通信では、漏話の影響を強く受け、カッド101a内のケーブル102aのデータ通信のSNRマージンが急激に低下する。このため、ケーブル102bでの通信を開始する際に、ケーブル102bでの通信電力を規定値まで瞬時に上げてしまうと、それまでデータ通信が行われていたケーブル102aでデータ通信のリンク断が発生するようなことが考えられる。
【0006】
このように、集合住宅向けのxDSL高速メタル通信では、データ通信を開始する際に、同一メタリックケーブル内の隣接回線への漏話等による影響が懸念される。また、特許文献1に記載されているようなモデム装置を使う場合にも、再び送信出力電力が増加されると、同一メタリックケーブル内の隣接回線に対して漏話による影響を与える虞がある。このため、データ通信を開始する際に、送信出力電力を規定値まで瞬時に増加させると、他の回線に妨害を与えてしまい、妨害を受けた回線でエラーが発生したり、リンク切れを起こしたりする等の問題が生じる。
【0007】
上述の課題を鑑み、本発明は、隣接回線の漏話によるエラーの発生を抑制すると共に、十分な送信出力電力を確保して、データ通信を行うことができる通信システムおよび通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る通信システムは、集合装置と、集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムであって、端末装置と集合装置との間の通信状態の信号対雑音比を検出する信号対雑音比検出部と、端末装置と集合装置との間の電力制御を行う送信出力制御部と、端末装置と集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するレート適応制御部とを備え、第1の端末装置と集合装置との間の通信を開始する際に、第2の端末装置と集合装置との間の信号対雑音比を検出し、検出した信号対雑音比と基準値と比較しながら、第1の端末装置と集合装置との間の送信出力電力を制御することを特徴とする。
【0009】
上記発明において、レート適応制御部は、基準値として下限基準値である第1の基準値と第1の基準値より大きい値である第2の基準値とを有し、測定した信号対雑音比が第1の基準値を下回れば、割り当てビット数を減じてビットレートを下げ、測定した信号対雑音比が第2の基準値を超えれば、割り当てビット数を増加させてビットレートを上げる制御を行い、送信出力電力の制御は、集合装置と第2の端末装置との間の信号対雑音比が第1の基準値より低下したら、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を一定にし、所定のタイムインターバルの経過後、レート適応制御により、集合装置と第2の端末装置との間の信号対雑音比が第2の基準値まで回復したら、再び、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を増加させる処理を繰り返して行うことを特徴とする。
【0010】
上記発明において、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を、漸次増加させることを特徴とする。
【0011】
上記発明において、さらに、第2の端末装置と集合装置との信号対雑音比を第2の基準値から第1の基準値に変化させるときの第1の端末装置の送信出力電力を記憶した記憶手段を備え、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を、記憶手段に記憶されている送信出力電力に基づいて瞬時に増加させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、集合装置と、集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムの通信方法であって、第1の端末装置と集合装置との間の通信を開始する際に、第2の端末装置と集合装置との間の信号対雑音比を検出するステップと、第2の端末装置と集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するステップと、検出した信号対雑音比と基準値と比較しながら、第1の端末装置と集合装置との間の送信出力電力を制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、送信出力電力を増加させる際に、隣接回線のSNRマージンの変動を検出し、SRA動作により隣接回線のSNRマージンが改善されるのを判定しながら、送信出力電力を増加させているので、隣接回線の漏話によるエラーの発生やリンク切れを抑制すると共に、十分な出力電力まで、送信出力電力を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の通信システムの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における集合装置とモデム装置との関係の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるSNRマージンの変化と送信電力の変化を示したグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。
【図10】本発明の第1の実施形態におけるSNRマージンの変化と送信電力の変化を示したグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態における集合装置とモデム装置との関係の説明図である。
【図14】本発明の第3の実施形態のフローチャートである。
【図15】本発明の第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図17】メタリックケーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の通信システムの概要を示すものである。図1に示すように、本発明の第1の実施形態の通信システムは、集合装置1と、複数のモデム装置(端末装置)2a、2b、…とから構成されている。集合装置1は、例えばマンションの共有スペースに設置されている。集合装置1は、光アクセス装置や光ファイバケーブル5を介して、通信網4に接続されると共に、構内のメタリックケーブル3を介して、モデム装置2a、2b、…に接続されている。
モデム装置2a、2b、…は、例えばマンションの各部屋に設定されている。モデム装置2a、2b、…には、それぞれ、パーソナルコンピュータ等のデータ通信機器が接続されている。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。
図2において、集合装置1は、送受信部11a、11b、…と、下り送信出力制御部12a、12b、…と、上りSNR測定部13a、13b、…と、SRA制御部14a、14b、…と、時間測定部15a、15b、…とを備えている。
送受信部11a、11b、…は、構内に設置されたモデム装置2a、2b、…との間で、VDSL方式でデータの送受信を行うものである。送受信部11a、11b、…は、少なくとも、モデム装置2a、2b、…に対応した数だけ用意されている。
【0017】
下り送信出力制御部12a、12b、…は、集合装置1側から、モデム装置2a、2b、…側にデータを送信する際の下りリンクの送信出力電力を制御している。下り送信出力制御部12a、12b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
上りSNR測定部13a、13b、…は、各モデム装置2a、2b、…から、集合装置1への上りリンクの回線のSNRを測定している。上りSNR測定部13a、13b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
【0018】
SRA制御部14a、14b、…は、SRA(Seamless rate adaptation:シームレス・レート・アダプテーション)の機能を実現するものである。SRAは、測定したSNRマージンと基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に応じて、リンクのビットレートを最適化するものである。すなわち、SRA制御では、一定時間内に検知したSNRが基準値を下回る程に減少すれば、サブキャリアに割り当てられるビット数を減じることによりビットレートを落としてSNRを増加させ、基準値を超える程に増加すれば、サブキャリアに割り当てるビット数を増加させることにより、ビットレートを上げて、SNRを減少させるように制御する。SRA制御部14a、14b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
【0019】
時間測定部15a、15b、…は、妨害を受けた通信のSNRマージンがダウンシフトマージンβより低下したのを受けて、妨害を与える通信の送信出力電力を一定にしてから、所定時間のタイムインターバルを設定するものである。ダウンシフトマージンβ(単位dB)は、SRA制御を起動するときの下限基準値(第1の基準値)である。ダウンシフトマージン(β+1)は、SRA制御から回復させるときの基準値(第2の基準値)であり、下限基準値よりも大きい値である。時間測定部15a、15b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
【0020】
モデム装置2a、2b、…は、それぞれ、送受信部51a、51b、…と、上り送信出力制御部52a、52b、…と、下りSNR測定部53a、53b、…とを備えている。
送受信部51a、51b、…は、それぞれ、例えばVDSL方式により、集合装置1とデータ通信を行うものである。
【0021】
上り送信出力制御部52a、52b、…は、モデム装置2a、2b、…側から集合装置1側にデータを送信する際の上りリンクの送信出力電力を制御している。
下りSNR測定部53a、53b、…は、集合装置1から各モデム装置2a、2b、…への下りリンクの回線のSNRを測定している。
前述したように、集合装置1と、各モデム装置2a、2b、…とは、構内のメタリックケーブル3を介して接続されている。構内のメタリックケーブル3では、例えば、同一カッド内のケーブルの間では、漏話雑音の影響を受けやすい。
ここでは、図3に示すように、集合装置1と、モデム装置2a及び2bとがあり、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信回線と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信回線とは、互いに、漏話の影響を受けやすい状態にあるとする。
【0022】
本発明の第1の実施形態では、以下に示すような処理により、このような状態でも、漏話の影響によるSNRマージンを改善しつつ、十分な送信出力電力で、通信を行えるようにしている。
例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されたとする。集合装置1とモデム装置2bとの間の通信を開始し、集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力を徐々に増大していくと、これに伴い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは低下していく。本発明の第1の実施形態では、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を一定にし、所定のインターバルの経過の後に、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが、ダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力が徐々に増大させる。以下、同様の処理が繰り返される。
【0023】
これにより、例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合に、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαをダウンシフトマージンβより小さい値に低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を十分に上げることができる。
【0024】
図4は、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合の、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαの変化と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力の変化を示したグラフである。
【0025】
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンα及び集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を示している。また、折線A1は集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαの変化を示し、折線B1は集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力の変化を示している。
【0026】
時刻t0で、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されると、時刻t0〜時刻t1では、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は徐々に増大し、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、漏話雑音の影響により、徐々に低下していく。
【0027】
時刻t1で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は、所定のインターバルTの間で、一定に保たれる。そして、所定のインターバルTの経過の後の時刻t2から、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。
時刻t2からは、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、SRA制御により徐々に回復していく。そして、時刻t3で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、ダウンシフトマージン(β+1)まで回復する。
【0028】
時刻t3で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、折線B1で示すように、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力が徐々に増大される。
時刻t3〜時刻t4では、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間で送信出力電力を徐々に増大していくのに伴い、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは低下していく。
【0029】
時刻t4で、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は一定に保たれ、所定のインターバルTの経過の後の時刻t5で、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。これにより、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが回復していく。
【0030】
時刻t6で、SRA制御により、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力が徐々に増大される。以下、送信出力電力がMAXになるまで、同様の処理が繰り返される。
【0031】
図4に示すように、このような処理により、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信のSNRマージンをダウンシフトマージンβより小さな値に低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を十分に上げることができるようになる。
図5及び図6は、本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。図5は、上り回線の信号処理のシーケンス図を示し、図6は、下り回線の信号処理のシーケンス図を示している。
【0032】
図5において、集合装置1とモデム装置2aとが通信中に(ステップS11)、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始されると(ステップS12)、集合装置1はモデム装置2bに、出力増加命令を送信する(ステップS13)。モデム装置2bは、出力増加命令を受信すると、モデム装置2bから集合装置1への上り回線の送信出力電力を徐々に増大させる(ステップS14)。モデム装置2bから集合装置1への上り回線の送信出力電力を増大させていくと、集合装置1とモデム装置2aとの間の上り回線のSNRマージンαが低下していく(ステップS15)。
【0033】
集合装置1は、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンを計測し(ステップS16)、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になると(ステップS17)、集合装置1はモデム装置2bに、出力増加停止命令を送信する(ステップS18)。
モデム装置2bは、出力増加停止命令を受信すると、モデム装置2bから集合装置1への上り回線の送信出力電力を一定にする(ステップS19)。
【0034】
また、集合装置1は、ステップS17で、モデム装置2aから集合装置1へのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことを検出すると、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS20)、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行う(ステップS21)。SRA制御が行われると、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく(ステップS22)。モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より改善し、(α>β+1)になると(ステップS23)と、集合装置1はモデム装置2bに、再び、出力増加命令を送信する(ステップS24)。以下、同様の処理が繰り返される。
【0035】
図6は、下り回線の信号処理のシーケンス図を示している。図6において、集合装置1とモデム装置2aとが通信中に(ステップS51)、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始されると(ステップS52)、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を徐々に増大させる(ステップS53)。集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を増大させていくと、モデム装置2bと集合装置1との間の下り回線のSNRマージンが低下していく(ステップS54)。
【0036】
モデム装置2bは、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線のSNRマージンを計測しており(ステップS55)、モデム装置2bは集合装置1に、このSNRマージンを定期的(例えば2秒毎)に送信している(ステップS56)。
集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になると(ステップS57)と、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を一定にする(ステップS58)。
【0037】
また、集合装置1は、ステップS57で、集合装置1からモデム装置2aへのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことを検出すると、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS59)、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行う(ステップS60)。SRA制御が行われると、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく(ステップS61)。集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より改善し、(α>β+1)になると(ステップS62)と、集合装置1は、再び、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を徐々に増大させる(ステップS63)。以下、同様の処理が繰り返される。
【0038】
図7及び図8は、本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。図7は、上り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示し、図8は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。
図7において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS101)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2bの上り回線以外で、SNRマージン低下がある上り回線があるかどうかを判定する(ステップS102)。SNRマージン低下がある上り回線がなければ、処理を終了する。
【0039】
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある上り回線がある場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加命令を送信し(ステップS103)、SNRマージン低下のある上り回線(ここでは、モデム装置2aから集合装置1への上り回線)のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS104)。
モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加停止命令を送信し(ステップS105)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS106)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS107)。
【0040】
SRA制御が行われると、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SNR動作を行っている間、モデム装置2aは、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する。モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し、最大値MAXに達していなければ、ステップS103に処理をリターンし、同様の処理が繰り返される。
【0041】
図8は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。図8において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS201)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2bとの下り回線以外で、SNRマージン低下がある下り回線があるかどうかを判定する(ステップS202)。SNRマージン低下がある下り回線がなければ、処理を終了する。
【0042】
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある下り回線がある場合には、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を徐々に増加させる(ステップS203)。そして、集合装置1は、SNRマージン低下のある下り回線(ここでは、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線)のSNRマージンを取得するために、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS204)、SNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS205)。
【0043】
集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの送信出力電力を一定にし(ステップS206)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS207)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS208)。
【0044】
SRA制御が行われると、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SNR動作を行っている間、集合装置1は、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS209)、集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する(ステップS210)。集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し、最大値MAXに達していなければ、ステップS103に処理がリターンされ、同様の処理が繰り返される。
【0045】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、モデム装置2aと集合装置1との通信中に、モデム装置2bと集合装置1との通信を行う際に、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンを判定し、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を一定にし、所定のタイムインターバルの経過後、SRA制御部を動作させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を増大させる処理を繰り返すように電力制御を行っている。これにより、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信のSNRマージンを低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信電力を規定値まで上げることができる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。図9に示すように、本発明の第2の実施形態では、前述の第1の実施形態の構成に加えて、集合装置1に、SRA動作出力記憶部16a、16b、…が備えられている。他の構成については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0047】
SRA動作出力記憶部16a、16b、…には、SRA動作になる時の送信出力電力、すなわち、妨害を受ける回線のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力が記憶される。この実施形態では、SRA動作出力記憶部16a、16bに記憶されている送信出力電力を用いることで、最大送信出力電力に設定するまでの時間を短縮できる。
前述の第1の実施形態と同様に、図3に示したように、集合装置1と、モデム装置2a及び2bとがあり、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信とは、互いに、漏話の影響を受けやすい状態にあるとする。本発明の第2の実施形態では、以下に示すような処理が行われる。
【0048】
例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されたとする。集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されると、集合装置1とモデム装置2aとの間は、その漏話雑音の影響を受け、SNRマージンαが低下する。SRA動作出力記憶部16bには、モデム装置2aのSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβまで低下することになるモデム装置2bの送信出力電力γが記憶されている。
【0049】
集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力を増大すると、これに伴い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは低下していく。本発明の第2の実施形態では、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を一定に保ち、所定のインターバルの経過の後に、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが、ダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、集合装置1とモデム装置2bとの間で、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、送信出力電力を増大させる。以下、同様の処理が繰り返される。
【0050】
これにより、例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合に、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαをダウンシフトマージンβより小さな値に低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を十分に上げることができる。この場合、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を増大させる際に、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力に基づいて、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γまで瞬時に増大させているので、制御時間の短縮が図れる。
【0051】
図10は、本発明の第2の実施形態において、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合の、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信のSNRマージンαの変化と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力の変化を示したグラフである。
【0052】
時刻t10で、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されると、時刻t10〜時刻t11では、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力に基づいて、瞬時に増大する。これに伴い、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、漏話雑音の影響により、SNRマージンはダウンシフトマージンβまで瞬時に低下する。
【0053】
時刻t11で、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は、所定のインターバルTの間で、一定に保たれる。そして、所定のインターバルTの経過の後の時刻t12から、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。
時刻t12からは、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、SRA制御により徐々に回復していく。そして、時刻t13で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、ダウンシフトマージン(β+1)まで瞬時に回復する。
【0054】
時刻t13で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、折線B11で示すように、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力が増大する。
時刻t13〜時刻t14では、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間で送信出力電力の増大に伴い、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、SNRマージンはダウンシフトマージンβまで、瞬時に低下する。
【0055】
時刻t14で、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は一定に保たれ、所定のインターバルTの経過の後の時刻t15で、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。これにより、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが回復していく。
【0056】
時刻t16で、SRA制御により、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間で、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、送信出力電力が瞬時に増大していく。以下、同様の処理が繰り返される。
図4と図9とを比較すれば分かるように、本発明の第2の実施形態では、妨害を受けた通信のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)までが回復したときの送信出力電力γが記憶されているので、最大電力に設定するまでの時間を短縮できる。
図11及び図12は、本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。図11は、上り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示し、図12は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。
【0057】
図11において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS301)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある上り回線があるかどうかを判定する(ステップS302)。SNRマージン低下がある上り回線がなければ、処理を終了する。
【0058】
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある上り回線がある場合には、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されているかどうかを判定する(ステップS303)。
【0059】
ステップS303で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されている場合には、モデム装置2bに、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、出力増加命令を送信する(ステップS304)。SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γは、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力であるから、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンは、ダウンシフトマージンβに瞬時に上がる。
【0060】
ステップS303で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されていない場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加命令を送信し(ステップS305)、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS306)。
【0061】
モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加停止命令を送信し(ステップS307)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS308)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS309)。
SRA制御が行われると、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SRA動作を行っている間、モデム装置2aは、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する。
【0062】
モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γを記憶する(ステップS311)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し(ステップS312)、最大値MAXに達していなければ、ステップS103に処理をリターンし、同様の処理が繰り返される。
【0063】
図12は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。図12において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS401)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある下り回線があるかどうかを判定する(ステップS402)。SNRマージン低下がある下り回線がなければ、処理を終了する。
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある下り回線がある場合には、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されているかどうかを判定する(ステップS403)。
【0064】
ステップS403で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されている場合には、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の電力を増加させる(ステップS404)。SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γは、SNRマージンが(β+1)からβになる送信出力電力であるから、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンは、ダウンシフトマージンβに瞬時に上がる。
【0065】
ステップS403で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されていない場合には、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の電力を徐々に増加させる(ステップS405)。そして、集合装置1は、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS406)、SNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS407)。
【0066】
集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの電力を一定にし(ステップS408)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS409)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS410)。
SRA制御が行われると、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SNR動作を行っている間、集合装置1は、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS411)、集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する(ステップS412)。集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γを記憶する(ステップS413)。そして、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し、最大値MAXに達していなければ、ステップS403に処理をリターンし、同様の処理が繰り返される。
【0067】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態では、SRA動作出力記憶部16a、16b、…に、SRA動作時の送信出力、すなわち、妨害を受ける回線のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信電力γが記憶され、このSRA動作出力記憶部16a、16bに記憶されている送信電力γを用いて、送信出力電力を瞬時に増加させているので、最大送信出力電力に設定するまでの時間を短縮できる。
【0068】
<第3の実施形態>
前述までの説明では、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始する際に、それまで通信を行っている集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンに漏話による影響を与えないように、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を増大させるような制御を行っていた。しかしながら、集合装置1に繋がっているモデム装置は、これに限られるものではない。また、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を増大させるような制御を行おうとするときに、既に、別のモデム装置で、電力を増大させるような制御が行われている可能性がある。
【0069】
この第3の実施形態は、このように、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を増大させるような制御を行おうとするときに、既に、別のモデム装置で、電力を増大させるような制御が行われている場合の処理に関する。
つまり、図13に示すように、集合装置1には、モデム装置2a、2bが接続されていると共に、モデム装置2x、2yが接続されているとする。集合装置1とモデム装置2aとの間の通信と、集合装置1とモデム装置2bとの間との通信では、漏話の影響を受け易いものとする。また、集合装置1とモデム装置2xとの間の通信と、集合装置1とモデム装置2yとの間との通信では、漏話の影響を受け易いものとする。
【0070】
ここでは、以下のような状態を想定するものとする。集合装置1とモデム装置2xとが通信を行っている間に、集合装置1とモデム装置2yとの通信が開始され、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中である。ここで更に、集合装置1とモデム装置2aとが通信を行っている間に、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始され、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理が必要になったとする。
本発明の第3の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの電力制御処理を開始する場合には、それまで行われている集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了するのを待って、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしている。
【0071】
図14は、本発明の第3の実施形態のフローチャートである。図14において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定し(ステップS501)、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定すると、集合装置1は、他に電力制御処理が実行されているかどうかを判定する(ステップS502)。他に電力制御処理が実行されていなければ、第1及び第2の実施形態で説明したような、通常の電力制御処理が行われる(ステップS503)。
【0072】
他に電力制御処理が実行中の場合には、集合装置1は、それまで実行中の電力制御処理を継続して行う。すなわち、それまで、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が行われていたら、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を増大させ、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を一定に保ち、所定のタイムインターバルの経過後、SRA制御部を動作させ、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を徐々に増大させる処理が繰り返される(ステップS504)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了したかどうかを判定する(ステップS505)。
【0073】
ステップS505で、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了したと判定されると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行う。すなわち、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を一定に保ち、所定のタイムインターバルの経過後、SRA制御部を動作させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させる処理が繰り返される(ステップS506)。
【0074】
このように、本発明の第3の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始される場合には、それまで行われている集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了するのを待って、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしている。
【0075】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。この実施形態も、前述の第3の実施形態と同様に、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始される場合の電力制御処理に関するものである。
前述の第3の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行う場合には、それまで行われている集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了するのを待って、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしていた。
【0076】
これに対して、この実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行う場合には、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理と並列的に、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしている。
【0077】
図15及び図16は、本発明の第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。図15において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定し(ステップS601)、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定すると、集合装置1は、他に電力制御処理が実行されているかどうかを判定する(ステップS602)。他に電力制御処理が実行されていなければ、第1及び第2の実施形態で説明したような、通常の電力制御処理が行われる(ステップS603)。
【0078】
他に電力制御処理が実行中の場合には、集合装置1は、既に行われている電力制御処理と、今回の電力制御処理とを並列的に動作させる(ステップS604)。
図16は、ステップS603の並列的に動作させる電力制御を示すフローチャートである。図16において、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理として、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を徐々に増大させ(ステップS701)、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する(ステップS702)。そして、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定すると、ステップS705に処理が進められる。
【0079】
また、これと並行して、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理として、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させ(ステップS703)、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する(ステップS704)。そして、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定すると、ステップS705に処理が進められる。
ステップS705で、集合装置1は、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したのは、集合装置1とモデム装置2xとの間か、集合装置1とモデム装置2aとの間かを判定する。
【0080】
ステップS705で、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したのは、集合装置1とモデム装置2xとの間なら、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を一定に保つと共に、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を一定に保ち(ステップS706)、所定のタイムインターバルの経過後(ステップS707)、集合装置1とモデム装置2xとの間のSRA制御部を動作させる(ステップS708)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したかどうかを判定し(ステップS709)、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS710)、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703にリターンする。
【0081】
ステップS705で、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したのは、集合装置1とモデム装置2aとの間なら、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を一定に保つと共に、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を一定に保ち(ステップS711)、所定のタイムインターバルの経過後(ステップS712)、集合装置1とモデム装置2aとの間のSRA制御部を動作させる(ステップS713)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したかどうかを判定し(ステップS714)、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS715)、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703にリターンする。
【0082】
ステップS710で、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達した場合には、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS716)、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703に進み、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達したら、処理は終了となる。
【0083】
ステップS715で、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達した場合には、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS717)、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703に進み、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達したら、処理は終了となる。
【0084】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始される場合には、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する処理と、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する処理とを並列的に行うようにしている。このように、処理を並列的に行わせることで、処理速度の向上が図れる。
【0085】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 集合装置
2a、2b… モデム装置
3 メタリックケーブル
4 通信網
5 光ファイバケーブル
11a、11b、… 送受信部
12a、12b、… 下り送信出力制御部
13a、13b、… 上りSNR測定部
14a、14b、… SRA制御部
15a、15b、… 時間測定部
16a、16b、… SRA動作出力記憶部
51a、51b、… 送受信部
52a、52b、… 下りSNR送信出力制御部
53a、53b、… 上り送信出力制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、xDSL(Digital Subscriber Line)通信の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
マンションのような集合住宅では、集合住宅内の配線方式としてメタリックケーブルが使われている。このような集合住宅に高速回線を引き込む場合、共有スペースに集合装置を設け、この集合装置を局側の光ファイバに接続すると共に構内のメタリックケーブルに接続し、集合装置と各部屋のモデム装置との間を、xDSL(例えばVDSL(Very high bit-rate Digital Subscriber Line)方式でデータを伝送することが行われている。
【0003】
このような、集合住宅向けのxDSL高速メタル通信では、隣接回線からの漏話等、周囲の雑音の影響を受けやすい。そこで、周囲の雑音の変化に応じて、SNR(Signal to Noise Ratio(信号対雑音比))マージンを確保できるようにサブキャリアにビットを再割り当てし、雑音環境変化に応じた最適な帯域を確保するような制御が行われている。このような機能は、SRA(Seamless Rate Adaptation(シームレス・レート・アダプテーション))と呼ばれている。図17は、構内のメタリックケーブル100の構造を示すものである。図17は、10対サブユニットと称されるもので、4本の導体を撚り合わせたカッド101a、101b、101c、101d、101eからなる。
特許文献1には、パケットが一定時間流れない場合には、送信出力電力を低減させて、消費電力を低減させるようにしたDSLモデム装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−323301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図17に示したような構造のメタリックケーブルでは、特に、同一のカッド内の通信が開始されると、漏話による影響を強く受けることになる。また、同一カッド内でなくても、近接するカッドでの通信では、漏話による影響を受ける可能性が高い。例えば、カッド101a内のケーブル102aでデータ通信が行われている間に、ケーブル102bで他のデータ通信が開始されると、カッド101a内のケーブル102aのデータ通信では、漏話の影響を強く受け、カッド101a内のケーブル102aのデータ通信のSNRマージンが急激に低下する。このため、ケーブル102bでの通信を開始する際に、ケーブル102bでの通信電力を規定値まで瞬時に上げてしまうと、それまでデータ通信が行われていたケーブル102aでデータ通信のリンク断が発生するようなことが考えられる。
【0006】
このように、集合住宅向けのxDSL高速メタル通信では、データ通信を開始する際に、同一メタリックケーブル内の隣接回線への漏話等による影響が懸念される。また、特許文献1に記載されているようなモデム装置を使う場合にも、再び送信出力電力が増加されると、同一メタリックケーブル内の隣接回線に対して漏話による影響を与える虞がある。このため、データ通信を開始する際に、送信出力電力を規定値まで瞬時に増加させると、他の回線に妨害を与えてしまい、妨害を受けた回線でエラーが発生したり、リンク切れを起こしたりする等の問題が生じる。
【0007】
上述の課題を鑑み、本発明は、隣接回線の漏話によるエラーの発生を抑制すると共に、十分な送信出力電力を確保して、データ通信を行うことができる通信システムおよび通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る通信システムは、集合装置と、集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムであって、端末装置と集合装置との間の通信状態の信号対雑音比を検出する信号対雑音比検出部と、端末装置と集合装置との間の電力制御を行う送信出力制御部と、端末装置と集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するレート適応制御部とを備え、第1の端末装置と集合装置との間の通信を開始する際に、第2の端末装置と集合装置との間の信号対雑音比を検出し、検出した信号対雑音比と基準値と比較しながら、第1の端末装置と集合装置との間の送信出力電力を制御することを特徴とする。
【0009】
上記発明において、レート適応制御部は、基準値として下限基準値である第1の基準値と第1の基準値より大きい値である第2の基準値とを有し、測定した信号対雑音比が第1の基準値を下回れば、割り当てビット数を減じてビットレートを下げ、測定した信号対雑音比が第2の基準値を超えれば、割り当てビット数を増加させてビットレートを上げる制御を行い、送信出力電力の制御は、集合装置と第2の端末装置との間の信号対雑音比が第1の基準値より低下したら、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を一定にし、所定のタイムインターバルの経過後、レート適応制御により、集合装置と第2の端末装置との間の信号対雑音比が第2の基準値まで回復したら、再び、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を増加させる処理を繰り返して行うことを特徴とする。
【0010】
上記発明において、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を、漸次増加させることを特徴とする。
【0011】
上記発明において、さらに、第2の端末装置と集合装置との信号対雑音比を第2の基準値から第1の基準値に変化させるときの第1の端末装置の送信出力電力を記憶した記憶手段を備え、集合装置と第1の端末装置との間の送信出力電力を、記憶手段に記憶されている送信出力電力に基づいて瞬時に増加させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、集合装置と、集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムの通信方法であって、第1の端末装置と集合装置との間の通信を開始する際に、第2の端末装置と集合装置との間の信号対雑音比を検出するステップと、第2の端末装置と集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するステップと、検出した信号対雑音比と基準値と比較しながら、第1の端末装置と集合装置との間の送信出力電力を制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、送信出力電力を増加させる際に、隣接回線のSNRマージンの変動を検出し、SRA動作により隣接回線のSNRマージンが改善されるのを判定しながら、送信出力電力を増加させているので、隣接回線の漏話によるエラーの発生やリンク切れを抑制すると共に、十分な出力電力まで、送信出力電力を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態の通信システムの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における集合装置とモデム装置との関係の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるSNRマージンの変化と送信電力の変化を示したグラフである。
【図5】本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第2の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。
【図10】本発明の第1の実施形態におけるSNRマージンの変化と送信電力の変化を示したグラフである。
【図11】本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第3の実施形態における集合装置とモデム装置との関係の説明図である。
【図14】本発明の第3の実施形態のフローチャートである。
【図15】本発明の第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図17】メタリックケーブルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の通信システムの概要を示すものである。図1に示すように、本発明の第1の実施形態の通信システムは、集合装置1と、複数のモデム装置(端末装置)2a、2b、…とから構成されている。集合装置1は、例えばマンションの共有スペースに設置されている。集合装置1は、光アクセス装置や光ファイバケーブル5を介して、通信網4に接続されると共に、構内のメタリックケーブル3を介して、モデム装置2a、2b、…に接続されている。
モデム装置2a、2b、…は、例えばマンションの各部屋に設定されている。モデム装置2a、2b、…には、それぞれ、パーソナルコンピュータ等のデータ通信機器が接続されている。
【0016】
図2は、本発明の第1の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。
図2において、集合装置1は、送受信部11a、11b、…と、下り送信出力制御部12a、12b、…と、上りSNR測定部13a、13b、…と、SRA制御部14a、14b、…と、時間測定部15a、15b、…とを備えている。
送受信部11a、11b、…は、構内に設置されたモデム装置2a、2b、…との間で、VDSL方式でデータの送受信を行うものである。送受信部11a、11b、…は、少なくとも、モデム装置2a、2b、…に対応した数だけ用意されている。
【0017】
下り送信出力制御部12a、12b、…は、集合装置1側から、モデム装置2a、2b、…側にデータを送信する際の下りリンクの送信出力電力を制御している。下り送信出力制御部12a、12b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
上りSNR測定部13a、13b、…は、各モデム装置2a、2b、…から、集合装置1への上りリンクの回線のSNRを測定している。上りSNR測定部13a、13b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
【0018】
SRA制御部14a、14b、…は、SRA(Seamless rate adaptation:シームレス・レート・アダプテーション)の機能を実現するものである。SRAは、測定したSNRマージンと基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に応じて、リンクのビットレートを最適化するものである。すなわち、SRA制御では、一定時間内に検知したSNRが基準値を下回る程に減少すれば、サブキャリアに割り当てられるビット数を減じることによりビットレートを落としてSNRを増加させ、基準値を超える程に増加すれば、サブキャリアに割り当てるビット数を増加させることにより、ビットレートを上げて、SNRを減少させるように制御する。SRA制御部14a、14b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
【0019】
時間測定部15a、15b、…は、妨害を受けた通信のSNRマージンがダウンシフトマージンβより低下したのを受けて、妨害を与える通信の送信出力電力を一定にしてから、所定時間のタイムインターバルを設定するものである。ダウンシフトマージンβ(単位dB)は、SRA制御を起動するときの下限基準値(第1の基準値)である。ダウンシフトマージン(β+1)は、SRA制御から回復させるときの基準値(第2の基準値)であり、下限基準値よりも大きい値である。時間測定部15a、15b、…は、送受信部11a、11b、…に対応した数だけ設けられる。
【0020】
モデム装置2a、2b、…は、それぞれ、送受信部51a、51b、…と、上り送信出力制御部52a、52b、…と、下りSNR測定部53a、53b、…とを備えている。
送受信部51a、51b、…は、それぞれ、例えばVDSL方式により、集合装置1とデータ通信を行うものである。
【0021】
上り送信出力制御部52a、52b、…は、モデム装置2a、2b、…側から集合装置1側にデータを送信する際の上りリンクの送信出力電力を制御している。
下りSNR測定部53a、53b、…は、集合装置1から各モデム装置2a、2b、…への下りリンクの回線のSNRを測定している。
前述したように、集合装置1と、各モデム装置2a、2b、…とは、構内のメタリックケーブル3を介して接続されている。構内のメタリックケーブル3では、例えば、同一カッド内のケーブルの間では、漏話雑音の影響を受けやすい。
ここでは、図3に示すように、集合装置1と、モデム装置2a及び2bとがあり、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信回線と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信回線とは、互いに、漏話の影響を受けやすい状態にあるとする。
【0022】
本発明の第1の実施形態では、以下に示すような処理により、このような状態でも、漏話の影響によるSNRマージンを改善しつつ、十分な送信出力電力で、通信を行えるようにしている。
例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されたとする。集合装置1とモデム装置2bとの間の通信を開始し、集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力を徐々に増大していくと、これに伴い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは低下していく。本発明の第1の実施形態では、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を一定にし、所定のインターバルの経過の後に、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが、ダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力が徐々に増大させる。以下、同様の処理が繰り返される。
【0023】
これにより、例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合に、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαをダウンシフトマージンβより小さい値に低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を十分に上げることができる。
【0024】
図4は、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合の、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαの変化と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力の変化を示したグラフである。
【0025】
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンα及び集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を示している。また、折線A1は集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαの変化を示し、折線B1は集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力の変化を示している。
【0026】
時刻t0で、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されると、時刻t0〜時刻t1では、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は徐々に増大し、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、漏話雑音の影響により、徐々に低下していく。
【0027】
時刻t1で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は、所定のインターバルTの間で、一定に保たれる。そして、所定のインターバルTの経過の後の時刻t2から、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。
時刻t2からは、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、SRA制御により徐々に回復していく。そして、時刻t3で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、ダウンシフトマージン(β+1)まで回復する。
【0028】
時刻t3で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、折線B1で示すように、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力が徐々に増大される。
時刻t3〜時刻t4では、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間で送信出力電力を徐々に増大していくのに伴い、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは低下していく。
【0029】
時刻t4で、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B1で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は一定に保たれ、所定のインターバルTの経過の後の時刻t5で、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。これにより、折線A1で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが回復していく。
【0030】
時刻t6で、SRA制御により、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力が徐々に増大される。以下、送信出力電力がMAXになるまで、同様の処理が繰り返される。
【0031】
図4に示すように、このような処理により、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信のSNRマージンをダウンシフトマージンβより小さな値に低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を十分に上げることができるようになる。
図5及び図6は、本発明の第1の実施形態の動作を示すシーケンス図である。図5は、上り回線の信号処理のシーケンス図を示し、図6は、下り回線の信号処理のシーケンス図を示している。
【0032】
図5において、集合装置1とモデム装置2aとが通信中に(ステップS11)、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始されると(ステップS12)、集合装置1はモデム装置2bに、出力増加命令を送信する(ステップS13)。モデム装置2bは、出力増加命令を受信すると、モデム装置2bから集合装置1への上り回線の送信出力電力を徐々に増大させる(ステップS14)。モデム装置2bから集合装置1への上り回線の送信出力電力を増大させていくと、集合装置1とモデム装置2aとの間の上り回線のSNRマージンαが低下していく(ステップS15)。
【0033】
集合装置1は、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンを計測し(ステップS16)、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になると(ステップS17)、集合装置1はモデム装置2bに、出力増加停止命令を送信する(ステップS18)。
モデム装置2bは、出力増加停止命令を受信すると、モデム装置2bから集合装置1への上り回線の送信出力電力を一定にする(ステップS19)。
【0034】
また、集合装置1は、ステップS17で、モデム装置2aから集合装置1へのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことを検出すると、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS20)、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行う(ステップS21)。SRA制御が行われると、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく(ステップS22)。モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より改善し、(α>β+1)になると(ステップS23)と、集合装置1はモデム装置2bに、再び、出力増加命令を送信する(ステップS24)。以下、同様の処理が繰り返される。
【0035】
図6は、下り回線の信号処理のシーケンス図を示している。図6において、集合装置1とモデム装置2aとが通信中に(ステップS51)、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始されると(ステップS52)、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を徐々に増大させる(ステップS53)。集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を増大させていくと、モデム装置2bと集合装置1との間の下り回線のSNRマージンが低下していく(ステップS54)。
【0036】
モデム装置2bは、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線のSNRマージンを計測しており(ステップS55)、モデム装置2bは集合装置1に、このSNRマージンを定期的(例えば2秒毎)に送信している(ステップS56)。
集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になると(ステップS57)と、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を一定にする(ステップS58)。
【0037】
また、集合装置1は、ステップS57で、集合装置1からモデム装置2aへのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことを検出すると、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS59)、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行う(ステップS60)。SRA制御が行われると、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく(ステップS61)。集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より改善し、(α>β+1)になると(ステップS62)と、集合装置1は、再び、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を徐々に増大させる(ステップS63)。以下、同様の処理が繰り返される。
【0038】
図7及び図8は、本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。図7は、上り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示し、図8は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。
図7において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS101)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2bの上り回線以外で、SNRマージン低下がある上り回線があるかどうかを判定する(ステップS102)。SNRマージン低下がある上り回線がなければ、処理を終了する。
【0039】
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある上り回線がある場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加命令を送信し(ステップS103)、SNRマージン低下のある上り回線(ここでは、モデム装置2aから集合装置1への上り回線)のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS104)。
モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加停止命令を送信し(ステップS105)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS106)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS107)。
【0040】
SRA制御が行われると、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SNR動作を行っている間、モデム装置2aは、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する。モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し、最大値MAXに達していなければ、ステップS103に処理をリターンし、同様の処理が繰り返される。
【0041】
図8は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。図8において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS201)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2bとの下り回線以外で、SNRマージン低下がある下り回線があるかどうかを判定する(ステップS202)。SNRマージン低下がある下り回線がなければ、処理を終了する。
【0042】
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある下り回線がある場合には、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の送信出力電力を徐々に増加させる(ステップS203)。そして、集合装置1は、SNRマージン低下のある下り回線(ここでは、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線)のSNRマージンを取得するために、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS204)、SNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS205)。
【0043】
集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの送信出力電力を一定にし(ステップS206)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS207)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS208)。
【0044】
SRA制御が行われると、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SNR動作を行っている間、集合装置1は、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS209)、集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する(ステップS210)。集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し、最大値MAXに達していなければ、ステップS103に処理がリターンされ、同様の処理が繰り返される。
【0045】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、モデム装置2aと集合装置1との通信中に、モデム装置2bと集合装置1との通信を行う際に、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンを判定し、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を一定にし、所定のタイムインターバルの経過後、SRA制御部を動作させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を増大させる処理を繰り返すように電力制御を行っている。これにより、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信のSNRマージンを低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信電力を規定値まで上げることができる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、本発明の第2の実施形態の通信システムにおける集合装置及びモデム装置の機能ブロック図である。図9に示すように、本発明の第2の実施形態では、前述の第1の実施形態の構成に加えて、集合装置1に、SRA動作出力記憶部16a、16b、…が備えられている。他の構成については、前述の第1の実施形態と同様である。
【0047】
SRA動作出力記憶部16a、16b、…には、SRA動作になる時の送信出力電力、すなわち、妨害を受ける回線のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力が記憶される。この実施形態では、SRA動作出力記憶部16a、16bに記憶されている送信出力電力を用いることで、最大送信出力電力に設定するまでの時間を短縮できる。
前述の第1の実施形態と同様に、図3に示したように、集合装置1と、モデム装置2a及び2bとがあり、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信とは、互いに、漏話の影響を受けやすい状態にあるとする。本発明の第2の実施形態では、以下に示すような処理が行われる。
【0048】
例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されたとする。集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されると、集合装置1とモデム装置2aとの間は、その漏話雑音の影響を受け、SNRマージンαが低下する。SRA動作出力記憶部16bには、モデム装置2aのSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβまで低下することになるモデム装置2bの送信出力電力γが記憶されている。
【0049】
集合装置1とモデム装置2bとの間で、送信出力電力を増大すると、これに伴い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは低下していく。本発明の第2の実施形態では、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力を一定に保ち、所定のインターバルの経過の後に、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御を行い、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが、ダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、集合装置1とモデム装置2bとの間で、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、送信出力電力を増大させる。以下、同様の処理が繰り返される。
【0050】
これにより、例えば、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合に、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信のSNRマージンαをダウンシフトマージンβより小さな値に低下させることなく、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を十分に上げることができる。この場合、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力を増大させる際に、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力に基づいて、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γまで瞬時に増大させているので、制御時間の短縮が図れる。
【0051】
図10は、本発明の第2の実施形態において、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始された場合の、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信のSNRマージンαの変化と、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信の送信出力電力の変化を示したグラフである。
【0052】
時刻t10で、集合装置1とモデム装置2aとの間の通信中に、集合装置1とモデム装置2bとの間の通信が開始されると、時刻t10〜時刻t11では、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力に基づいて、瞬時に増大する。これに伴い、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、漏話雑音の影響により、SNRマージンはダウンシフトマージンβまで瞬時に低下する。
【0053】
時刻t11で、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は、所定のインターバルTの間で、一定に保たれる。そして、所定のインターバルTの経過の後の時刻t12から、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。
時刻t12からは、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、SRA制御により徐々に回復していく。そして、時刻t13で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、ダウンシフトマージン(β+1)まで瞬時に回復する。
【0054】
時刻t13で、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、折線B11で示すように、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力が増大する。
時刻t13〜時刻t14では、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間で送信出力電力の増大に伴い、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαは、SNRマージンはダウンシフトマージンβまで、瞬時に低下する。
【0055】
時刻t14で、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージンβより低下すると、折線B11で示すように、集合装置1とモデム装置2bとの間の送信出力電力は一定に保たれ、所定のインターバルTの経過の後の時刻t15で、集合装置1とモデム装置2aとの間で、SRA制御が行われる。これにより、折線A11で示すように、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαが回復していく。
【0056】
時刻t16で、SRA制御により、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間で、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、送信出力電力が瞬時に増大していく。以下、同様の処理が繰り返される。
図4と図9とを比較すれば分かるように、本発明の第2の実施形態では、妨害を受けた通信のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)までが回復したときの送信出力電力γが記憶されているので、最大電力に設定するまでの時間を短縮できる。
図11及び図12は、本発明の第2の実施形態の動作を示すフローチャートである。図11は、上り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示し、図12は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。
【0057】
図11において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS301)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある上り回線があるかどうかを判定する(ステップS302)。SNRマージン低下がある上り回線がなければ、処理を終了する。
【0058】
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある上り回線がある場合には、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されているかどうかを判定する(ステップS303)。
【0059】
ステップS303で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されている場合には、モデム装置2bに、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、出力増加命令を送信する(ステップS304)。SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γは、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力であるから、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンは、ダウンシフトマージンβに瞬時に上がる。
【0060】
ステップS303で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されていない場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加命令を送信し(ステップS305)、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS306)。
【0061】
モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、モデム装置2bに、出力増加停止命令を送信し(ステップS307)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS308)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS309)。
SRA制御が行われると、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SRA動作を行っている間、モデム装置2aは、モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する。
【0062】
モデム装置2aから集合装置1への上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γを記憶する(ステップS311)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し(ステップS312)、最大値MAXに達していなければ、ステップS103に処理をリターンし、同様の処理が繰り返される。
【0063】
図12は、下り回線の信号処理を行う場合の集合装置1の処理を示している。図12において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると(ステップS401)、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある下り回線があるかどうかを判定する(ステップS402)。SNRマージン低下がある下り回線がなければ、処理を終了する。
集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、SNRマージン低下がある下り回線がある場合には、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されているかどうかを判定する(ステップS403)。
【0064】
ステップS403で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されている場合には、SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γに基づいて、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の電力を増加させる(ステップS404)。SRA動作出力記憶部16bに記憶されている送信出力電力γは、SNRマージンが(β+1)からβになる送信出力電力であるから、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンは、ダウンシフトマージンβに瞬時に上がる。
【0065】
ステップS403で、SRA動作出力記憶部16bに、SNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γが記憶されていない場合には、集合装置1からモデム装置2bへの下り回線の電力を徐々に増加させる(ステップS405)。そして、集合装置1は、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS406)、SNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下し、(α<β)になったかどうかを判定する(ステップS407)。
【0066】
集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のSNRマージンαがSRA制御の動作を行うダウンシフトマージンβより低下したことが検出された場合には、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの電力を一定にし(ステップS408)、所定のインターバルTの経過を待ち(ステップS409)、SRA制御部14aを動作させる(ステップS410)。
SRA制御が行われると、集合装置1からモデム装置2aへの下り回線のビットレートが下げられ、SNRマージンが改善していく。SNR動作を行っている間、集合装置1は、モデム装置2aからのSNRマージンの情報を受信し(ステップS411)、集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったかどうかを判定する(ステップS412)。集合装置1からモデム装置2aへの上り回線のSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)より大きくなったことが検出されると、集合装置1は、SRA動作出力記憶部16bに、集合装置1とモデム装置2aとの間のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信出力電力γを記憶する(ステップS413)。そして、集合装置1は、集合装置1からモデム装置2bへの下り送信出力電力Wが最大値MAXに達したかどうかを判定し、最大値MAXに達していなければ、ステップS403に処理をリターンし、同様の処理が繰り返される。
【0067】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態では、SRA動作出力記憶部16a、16b、…に、SRA動作時の送信出力、すなわち、妨害を受ける回線のSNRマージンがダウンシフトマージン(β+1)からダウンシフトマージンβになる送信電力γが記憶され、このSRA動作出力記憶部16a、16bに記憶されている送信電力γを用いて、送信出力電力を瞬時に増加させているので、最大送信出力電力に設定するまでの時間を短縮できる。
【0068】
<第3の実施形態>
前述までの説明では、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始する際に、それまで通信を行っている集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンに漏話による影響を与えないように、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を増大させるような制御を行っていた。しかしながら、集合装置1に繋がっているモデム装置は、これに限られるものではない。また、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を増大させるような制御を行おうとするときに、既に、別のモデム装置で、電力を増大させるような制御が行われている可能性がある。
【0069】
この第3の実施形態は、このように、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を増大させるような制御を行おうとするときに、既に、別のモデム装置で、電力を増大させるような制御が行われている場合の処理に関する。
つまり、図13に示すように、集合装置1には、モデム装置2a、2bが接続されていると共に、モデム装置2x、2yが接続されているとする。集合装置1とモデム装置2aとの間の通信と、集合装置1とモデム装置2bとの間との通信では、漏話の影響を受け易いものとする。また、集合装置1とモデム装置2xとの間の通信と、集合装置1とモデム装置2yとの間との通信では、漏話の影響を受け易いものとする。
【0070】
ここでは、以下のような状態を想定するものとする。集合装置1とモデム装置2xとが通信を行っている間に、集合装置1とモデム装置2yとの通信が開始され、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中である。ここで更に、集合装置1とモデム装置2aとが通信を行っている間に、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始され、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理が必要になったとする。
本発明の第3の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの電力制御処理を開始する場合には、それまで行われている集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了するのを待って、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしている。
【0071】
図14は、本発明の第3の実施形態のフローチャートである。図14において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定し(ステップS501)、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定すると、集合装置1は、他に電力制御処理が実行されているかどうかを判定する(ステップS502)。他に電力制御処理が実行されていなければ、第1及び第2の実施形態で説明したような、通常の電力制御処理が行われる(ステップS503)。
【0072】
他に電力制御処理が実行中の場合には、集合装置1は、それまで実行中の電力制御処理を継続して行う。すなわち、それまで、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が行われていたら、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を増大させ、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を一定に保ち、所定のタイムインターバルの経過後、SRA制御部を動作させ、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を徐々に増大させる処理が繰り返される(ステップS504)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了したかどうかを判定する(ステップS505)。
【0073】
ステップS505で、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了したと判定されると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行う。すなわち、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を一定に保ち、所定のタイムインターバルの経過後、SRA制御部を動作させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、再び、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させる処理が繰り返される(ステップS506)。
【0074】
このように、本発明の第3の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始される場合には、それまで行われている集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了するのを待って、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしている。
【0075】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。この実施形態も、前述の第3の実施形態と同様に、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始される場合の電力制御処理に関するものである。
前述の第3の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行う場合には、それまで行われている集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が終了するのを待って、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしていた。
【0076】
これに対して、この実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行う場合には、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理と並列的に、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理を行うようにしている。
【0077】
図15及び図16は、本発明の第4の実施形態の動作を示すフローチャートである。図15において、集合装置1とモデム装置2bとの通信を開始すると、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの電力の増大の影響により、集合装置1とモデム装置2b以外の回線で、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定し(ステップS601)、SNRマージン低下がある回線があるかどうかを判定すると、集合装置1は、他に電力制御処理が実行されているかどうかを判定する(ステップS602)。他に電力制御処理が実行されていなければ、第1及び第2の実施形態で説明したような、通常の電力制御処理が行われる(ステップS603)。
【0078】
他に電力制御処理が実行中の場合には、集合装置1は、既に行われている電力制御処理と、今回の電力制御処理とを並列的に動作させる(ステップS604)。
図16は、ステップS603の並列的に動作させる電力制御を示すフローチャートである。図16において、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理として、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を徐々に増大させ(ステップS701)、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する(ステップS702)。そして、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定すると、ステップS705に処理が進められる。
【0079】
また、これと並行して、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力制御処理として、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させ(ステップS703)、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する(ステップS704)。そして、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定すると、ステップS705に処理が進められる。
ステップS705で、集合装置1は、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したのは、集合装置1とモデム装置2xとの間か、集合装置1とモデム装置2aとの間かを判定する。
【0080】
ステップS705で、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したのは、集合装置1とモデム装置2xとの間なら、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を一定に保つと共に、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を一定に保ち(ステップS706)、所定のタイムインターバルの経過後(ステップS707)、集合装置1とモデム装置2xとの間のSRA制御部を動作させる(ステップS708)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したかどうかを判定し(ステップS709)、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS710)、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703にリターンする。
【0081】
ステップS705で、SNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したのは、集合装置1とモデム装置2aとの間なら、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を一定に保つと共に、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を一定に保ち(ステップS711)、所定のタイムインターバルの経過後(ステップS712)、集合装置1とモデム装置2aとの間のSRA制御部を動作させる(ステップS713)。そして、集合装置1は、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したかどうかを判定し(ステップS714)、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージン(β+1)まで回復したら、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS715)、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703にリターンする。
【0082】
ステップS710で、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達した場合には、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS716)、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703に進み、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達したら、処理は終了となる。
【0083】
ステップS715で、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力が最大値MAXに到達した場合には、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達したかどうかを判定し(ステップS717)、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達していなければ、ステップS701及びS703に進み、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力が最大値MAXに到達したら、処理は終了となる。
【0084】
以上説明したように、本発明の第4の実施形態では、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力制御処理が実行中の間に、さらに、集合装置1とモデム装置2bとの通信が開始される場合には、集合装置1とモデム装置2yとの間の電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2xとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する処理と、集合装置1とモデム装置2bとの間の電力を徐々に増大させ、集合装置1とモデム装置2aとのSNRマージンαがダウンシフトマージンβより低下したかどうかを判定する処理とを並列的に行うようにしている。このように、処理を並列的に行わせることで、処理速度の向上が図れる。
【0085】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0086】
1 集合装置
2a、2b… モデム装置
3 メタリックケーブル
4 通信網
5 光ファイバケーブル
11a、11b、… 送受信部
12a、12b、… 下り送信出力制御部
13a、13b、… 上りSNR測定部
14a、14b、… SRA制御部
15a、15b、… 時間測定部
16a、16b、… SRA動作出力記憶部
51a、51b、… 送受信部
52a、52b、… 下りSNR送信出力制御部
53a、53b、… 上り送信出力制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合装置と、前記集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムであって、
前記端末装置と前記集合装置との間の通信状態の信号対雑音比を検出する信号対雑音比検出部と、
前記端末装置と前記集合装置との間の電力制御を行う送信出力制御部と、
前記端末装置と前記集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するレート適応制御部とを備え、
前記第1の端末装置と前記集合装置との間の通信を開始する際に、前記第2の端末装置と前記集合装置との間の信号対雑音比を検出し、前記検出した信号対雑音比と前記基準値と比較しながら、前記第1の端末装置と前記集合装置との間の送信出力電力を制御する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記レート適応制御部は、前記基準値として、下限基準値である第1の基準値と当該第1の基準値より大きい値である第2の基準値とを有し、測定した信号対雑音比が前記第1の基準値を下回れば、割り当てビット数を減じてビットレートを下げ、測定した信号対雑音比が第2の基準値を超えれば、割り当てビット数を増加させてビットレートを上げる制御を行い、
前記送信出力電力の制御は、前記集合装置と前記第2の端末装置との間の信号対雑音比が前記第1の基準値より低下したら、前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を一定にし、所定のタイムインターバルの経過後、前記レート適応制御により、前記集合装置と前記第2の端末装置との間の信号対雑音比が前記第2の基準値まで回復したら、再び、前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を増加させる処理を繰り返して行う
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を、漸次増加させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
さらに、前記第2の端末装置と前記集合装置との信号対雑音比を前記第2の基準値から前記第1の基準値に変化させるときの前記第1の端末装置の送信出力電力を記憶した記憶手段を備え、
前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を、前記記憶手段に記憶されている送信出力電力に基づいて瞬時に増加させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
集合装置と、前記集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムの通信方法であって、
前記第1の端末装置と前記集合装置との間の通信を開始する際に、前記第2の端末装置と前記集合装置との間の信号対雑音比を検出するステップと、
前記第2の端末装置と前記集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するステップと、
前記検出した信号対雑音比と前記基準値と比較しながら、前記第1の端末装置と前記集合装置との間の送信出力電力を制御するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【請求項1】
集合装置と、前記集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムであって、
前記端末装置と前記集合装置との間の通信状態の信号対雑音比を検出する信号対雑音比検出部と、
前記端末装置と前記集合装置との間の電力制御を行う送信出力制御部と、
前記端末装置と前記集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するレート適応制御部とを備え、
前記第1の端末装置と前記集合装置との間の通信を開始する際に、前記第2の端末装置と前記集合装置との間の信号対雑音比を検出し、前記検出した信号対雑音比と前記基準値と比較しながら、前記第1の端末装置と前記集合装置との間の送信出力電力を制御する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記レート適応制御部は、前記基準値として、下限基準値である第1の基準値と当該第1の基準値より大きい値である第2の基準値とを有し、測定した信号対雑音比が前記第1の基準値を下回れば、割り当てビット数を減じてビットレートを下げ、測定した信号対雑音比が第2の基準値を超えれば、割り当てビット数を増加させてビットレートを上げる制御を行い、
前記送信出力電力の制御は、前記集合装置と前記第2の端末装置との間の信号対雑音比が前記第1の基準値より低下したら、前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を一定にし、所定のタイムインターバルの経過後、前記レート適応制御により、前記集合装置と前記第2の端末装置との間の信号対雑音比が前記第2の基準値まで回復したら、再び、前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を増加させる処理を繰り返して行う
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を、漸次増加させる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
さらに、前記第2の端末装置と前記集合装置との信号対雑音比を前記第2の基準値から前記第1の基準値に変化させるときの前記第1の端末装置の送信出力電力を記憶した記憶手段を備え、
前記集合装置と前記第1の端末装置との間の送信出力電力を、前記記憶手段に記憶されている送信出力電力に基づいて瞬時に増加させる
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
集合装置と、前記集合装置との間でデータ通信を行う少なくとも第1及び第2の端末装置とからなる通信システムの通信方法であって、
前記第1の端末装置と前記集合装置との間の通信を開始する際に、前記第2の端末装置と前記集合装置との間の信号対雑音比を検出するステップと、
前記第2の端末装置と前記集合装置との間で測定した信号対雑音比と基準値とを比較して割り当てビット数を増減させ、雑音環境変化に適応したビットレートに制御するステップと、
前記検出した信号対雑音比と前記基準値と比較しながら、前記第1の端末装置と前記集合装置との間の送信出力電力を制御するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−211333(P2011−211333A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74917(P2010−74917)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】
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