説明

通信システム

【課題】 タイマを使用せず、LAN端末側から無線通信回線の切断を要求して迅速に切断でき、また、他に通信中の端末があればそのまま回線を維持でき、通信の信頼性を損なうことなく無線通信回線を効率的に利用できる通信システムを提供する。
【解決手段】 無線端末アダプタとLAN端末(イーサネット装置)とに、回線切断用IPアドレスを記憶しておき、無線端末アダプタが、接続するLAN端末のIPアドレスと通信状態(通信/非通信)とを記憶し、LAN端末が、サーバとの通信完了時に回線切断用IPアドレスを送信先とするパケットを送信し、無線端末アダプタが、LAN端末から送信先アドレスが回線切断用IPアドレスであるパケットを受信すると、送信元のLAN端末の通信状態を「非通信」として更新し、全てのLAN端末の通信状態が「非通信」であれば、無線端末アダプタとサーバとの間の無線回線を切断する処理を行う通信システムとしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークに接続するサーバとLAN(Local Area Network)端末との通信を行う通信システムに係り、特に通信切断時の処理を迅速に行って無線回線を効率的に利用できる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、イーサネット(Ethernet;登録商標)のインタフェースを備えたイーサネット装置と、W−CDMA(Wide band Code Division Multiple Access)等のパケット通信ネットワークの携帯端末とを接続し、パラレル(イーサネット)−シリアル変換を行う装置として、ダイヤルアップルータが知られている。
【0003】
ダイヤルアップルータは、回線接続機能や、PPP(Point to Point Protocol)機能を備え、ISP(Internet Service Provider)への接続処理や、イーサネット装置とサーバ間のアドレス変換処理を行うものである。
無線端末アダプタを用いることにより、イーサネット装置は、パケット通信網を介してサーバとの通信を行うことができるものである。
【0004】
ところで、携帯電話のパケット通信ネットワークは、セキュリティを確保するために、アクセスポイント毎に設けられた仮想閉域網(Virtual Private Network;VPN)と呼ばれるネットワークで運用されることが多い。
【0005】
[仮想閉域網を備えたシステムの概要:図8]
ここで、仮想閉域網を備えた通信ネットワークについて図8を用いて説明する。図8は、仮想閉域網を備えた通信ネットワークの概念を示す説明図である。
図8の通信ネットワークは、サーバαと、サーバβと、パケット通信ネットワークと、ダイヤルアップルータ20と、イーサネット装置aと、イーサネット装置bとを備えている。
パケット通信ネットワークは、アクセスポイントAを有しサーバαに接続する仮想閉域網Aと、アクセスポイントBを有しサーバβに接続する仮想閉域網Bとを備え、イーサネット装置と各仮想閉域網とがダイヤルアップルータ20で接続されている。
【0006】
ダイヤルアップルータ20は、イーサネットを介してイーサネット装置a及びイーサネット装置bと通信を行うと共に、アクセスポイントA、アクセスポイントBに接続して、パケット通信ネットワークの仮想閉域網を介してサーバα、サーバβと通信を行う。尚、ダイヤルアップルータ20の無線通信部は1回線である。
【0007】
各仮想閉域網(アクセスポイント)とイーサネット装置とは1対1に対応しており、ダイヤルアップルータ20は、仮想閉域網とイーサネット装置との対応付けを記憶している。
仮想閉域網Aは、イーサネット装置aに対応しており、イーサネット装置aがサーバαと通信を行う場合には、ダイヤルアップルータ20は、アクセスポイントAに接続してサーバαとパケット通信を行う。同様に、仮想閉域網Bはイーサネット装置bに対応している。
【0008】
仮想閉域網Aと仮想閉域網Bは、同じパケット通信ネットワーク上にあっても、それぞれ独立しており、これらの間のアクセスは禁止されている。
従って、イーサネット装置aがダイヤルアップルータ20で仮想閉域網Aのサーバαに接続した場合、ダイヤルアップルータ20が仮想閉域網Aに接続している間は、イーサネット装置bとサーバβとは通信できないものである。
【0009】
[ダイヤルアップルータによるアドレス変換:図9]
次に、ダイヤルアップルータによるアドレス変換(マスカレード機能)について図9を用いて説明する。図9は、ダイヤルアップルータによるアドレス変換を示す説明図である。
図9では、サーバ10と、ダイヤルアップルータ20と、イーサネット装置30とが通信を行う場合を示している。
図9に示すように、イーサネット装置30とダイヤルアップルータ20との間は、LAN通信が行われる区間であり、ダイヤルアップルータ20とサーバ10との間は、無線通信が行われる区間である。
サーバ10、ダイヤルアップルータ20、イーサネット装置30にはそれぞれ、IPアドレスが付与されている。
【0010】
そして、イーサネット装置30は、サーバ10宛のLANパケットを送信する際には、送信元にイーサネット装置30のIPアドレスを、送信先にサーバ10のIPアドレスを書き込んだLANパケットを送信する。
ダイヤルアップルータ20は、当該LANパケットを受信すると、送信元を自己の(ダイヤルアップルータ20の)IPアドレスに変換して、無線通信ネットワークを介してサーバ10に無線パケットを送信する。
【0011】
また、ダイヤルアップルータ20は、サーバ10から自己宛の無線パケットを受信した場合には、アクセスポイント名から対応するイーサネット装置30を特定し、送信先のIPアドレスを、当該イーサネット装置30のIPアドレスに変換してLANパケットを生成し、イーサネットで送信する。
【0012】
尚、複数のイーサネット装置30が同一のアクセスポイントを介して同一のサーバ10に接続する場合には、サーバ10において各イーサネット装置30を識別する情報を備え、サーバ10からイーサネット装置30に対してのパケットには当該識別情報が含まれ、ダイヤルアップルータは識別情報に基づいてイーサネット装置30を特定し、アドレス変換を行う。
このようにして、ダイヤルアップルータ20のアドレス変換が行われるものである。
【0013】
[従来の通信システムにおける切断時の処理:図10]
ここで、従来の通信システムにおける切断時の処理について図10を用いて説明する。図10は、従来の通信システムにおける通信の概略を示すシーケンス図である。
図10に示すように、従来の通信システムは、イーサネット装置と、無線端末アダプタと、無線端末と、サーバとを備えている。尚、無線端末アダプタと無線端末とを含む構成が図8,9に示したダイヤルアップルータ20に相当するものである。
そして、従来の通信システムでは、無線端末アダプタに無線通信監視タイマを備え、通信完了後、一定時間以上送受信が為されないと、無線通信を切断するようになっていた。
【0014】
図10に示すように、イーサネット装置からSYNパケットによる通信要求(400)があると、無線端末アダプタは当該要求を無線端末に送出し(402)、無線端末から応答があると(404)、サーバと無線端末アダプタ間のPPP接続処理が行われ、無線端末アダプタは、SYNパケットをサーバに送信し(406)、サーバは、SYNパケットを受信すると、無線端末アダプタにSYN+ACKを応答する(408)。
【0015】
無線端末アダプタが、SYN+ACKをイーサネット装置に送信し(410)、イーサネット装置からACKを受信して(412)、それをサーバに送信すると(414)、イーサネット装置とサーバとの間でデータ通信が行われる状態となる。
【0016】
そして、イーサネット装置から通信完了を示すFINパケットが送信されると(416)、無線端末アダプタは、それを受信してサーバに送信し(418)、サーバからのACKを受信すると(420)、無線通信監視タイマを起動して計時を開始し、イーサネット装置にACKを送信する(422)。
【0017】
そして、パケットの送受信がないまま無線通信監視タイマがタイムアップした場合には、無線端末アダプタは、まず、LAN区間のPPP切断を行い、次にサーバ−無線端末アダプタ間の無線区間の切断処理を行って(424〜428)、サーバ−無線端末アダプタ間の切断が完了する。
このようにして、従来の通信システムにおける切断の処理が行われる。
【0018】
このように、従来の通信システムでは、無線通信監視タイマに基づいて無線端末アダプタ無線通信端末間の通信切断を行うため、イーサネット装置から主体的に切断を行うことができない。
また、無線端末アダプタの無線回線は1回線であるため、無線回線の有効利用を図るために無線通信監視タイマの監視時間を短く設定して運用することが多い。
【0019】
[関連技術]
尚、通信システムに関する技術としては、特開2010−68365号公報「無線通信装置」(株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、無線端末アダプタを備え、LANを介して複数のデータ端末装置と接続すると共に、無線通信を介して各データ端末装置に対応するサーバに接続可能な無線通信装置が、データ端末装置の優先順位を記憶しておき、優先順位に応じてデータ端末とサーバとの通信を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2010−68365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来の通信システムでは、通信中のイーサネット装置側から主体的に無線通信回線を切断することができず、無線通信監視タイマが満了するまでは他のイーサネット装置が他のアクセスポイントに接続できず不便であり、また、無線通信監視タイマの監視時間を短く設定すると、意図しない場合にも回線が切断されてしまうといった不具合が発生しやすいという問題点があった。
【0022】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、無線通信監視タイマを使用せずに、イーサネット装置側から無線通信回線の切断を要求して迅速に切断することができ、また、他のイーサネット装置が通信中であれば、回線を切断せず通信を維持することができ、通信の信頼性を維持すると共に無線通信回線を効率的に利用することができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、無線回線を介してサーバに接続する無線端末と、LAN回線に接続されるLAN端末と、無線端末とLAN端末に接続し、LAN端末とサーバとのデータ通信を実現する無線端末アダプタとを備えた通信システムであって、LAN端末と無線端末アダプタが、予め回線切断用のIPアドレスを記憶しておき、LAN端末が、サーバとの通信が完了すると、回線切断用のIPアドレスを送信先アドレスとするパケットを無線端末アダプタに送信し、無線端末アダプタが、接続される全てのLAN端末のIPアドレスと「通信」又は「非通信」の通信状態とを記憶し、LAN端末からサーバのIPアドレスを送信先とするパケットを受信すると、当該パケットの送信元のLAN端末の通信状態を「通信」として更新し、LAN端末から回線切断用のIPアドレスを送信先とするパケットを受信すると、当該パケットの送信元のLAN端末の通信状態を「非通信」として更新すると共に、記憶されている全てのLAN端末の通信状態が「非通信」であれば、無線回線を切断する処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、無線回線を介してサーバに接続する無線端末と、LAN回線に接続されるLAN端末と、無線端末とLAN端末に接続し、LAN端末とサーバとのデータ通信を実現する無線端末アダプタとを備えた通信システムであって、LAN端末と無線端末アダプタが、予め回線切断用のIPアドレスを記憶しておき、LAN端末が、サーバとの通信が完了すると、回線切断用のIPアドレスを送信先アドレスとするパケットを無線端末アダプタに送信し、無線端末アダプタが、接続される全てのLAN端末のIPアドレスと「通信」又は「非通信」の通信状態とを記憶し、LAN端末からサーバのIPアドレスを送信先とするパケットを受信すると、当該パケットの送信元のLAN端末の通信状態を「通信」として更新し、LAN端末から回線切断用のIPアドレスを送信先とするパケットを受信すると、当該パケットの送信元のLAN端末の通信状態を「非通信」として更新すると共に、記憶されている全てのLAN端末の通信状態が「非通信」であれば、無線回線を切断する処理を行う通信システムとしているので、LAN端末側から無線回線の切断を要求して迅速に切断することができると共に、他に通信中のLAN端末がある場合には、無線回線を切断せずに通信を維持することができ、通信の信頼性を損なうことなく無線回線を効率的に利用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムの概略構成ブロック図である。
【図2】複数のイーサネット装置を備えた場合の本通信システムの概略構成図である。
【図3】本通信システムの無線端末アダプタ4の構成ブロック図である。
【図4】無線端末アダプタ4のRAM部に記憶されている情報を示す説明図である。
【図5】本通信システムにおけるシーケンスを示すシーケンス図である。
【図6】複数のイーサネット装置が無線端末アダプタに接続されている場合のシーケンス例を示すシーケンス図である。
【図7】無線端末アダプタにおける処理を示すフローチャートである。
【図8】仮想閉域網を備えた通信ネットワークの概念を示す説明図である。
【図9】ダイヤルアップルータによるアドレス変換を示す説明図である。
【図10】従来の通信システムにおける通信の概略を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る通信システムは、無線回線切断用のIPアドレスを無線端末アダプタ及びイーサネット装置に記憶しておくと共に、無線端末アダプタが、自己に接続されるイーサネット装置のIPアドレス及び各イーサネット装置の通信状態(通信又は非通信)を記憶しておき、イーサネット装置が、サーバとの通信完了時に無線回線切断用のIPアドレスを送信先とするパケットを送信し、無線端末アダプタが、通信中のイーサネット装置から無線回線切断用のIPアドレスを受信した場合には、当該イーサネット装置の通信状態を非通信にすると共に、他のイーサネット装置の通信状態を確認して、全てのイーサネット装置の通信状態が非通信であった場合に、サーバ−無線端末アダプタ間の無線通信を切断するものであり、無通信監視タイマを用いることなく、通信中のイーサネット装置から主体的且つ迅速に無線通信を切断することができ、無線通信回線を効率的に利用することができ、また、他に通信中のイーサネット装置があれば、そのまま通信を維持できるものである。
【0027】
[実施の形態に係る通信システムの構成]
本発明の実施の形態に係る通信システム(本通信システム)を含む全体の構成は、図8に示した通信システムと同様であり、パケット通信ネットワークの仮想閉域網を用いてサーバとイーサネット装置との通信を実現するものである。
但し、ダイヤルアップルータとイーサネット装置の構成及び動作が一部従来とは異なっている。
【0028】
本通信システムの構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムの概略構成ブロック図である。
図1に示すように、本通信システムは、無線端末3と、無線端末アダプタ4と、イーサネット装置5とを備え、無線通信回線を介して基地局2に接続し、サーバ1との通信を行う。尚、無線端末3と無線端末アダプタ4とを備えた構成が、図8,9のダイヤルアップルータに相当している。
また、イーサネット装置5は、請求項に記載したLAN端末に相当する。
【0029】
無線端末3は、アンテナを備え、パケット通信ネットワークを介して基地局2と無線通信を行う。
イーサネット装置5は、例えば、自動販売機等の外部機器であり、イーサネット回線を介して無線端末アダプタ4に接続し、サーバ1との通信を行う。
そして、本通信システムの特徴として、イーサネット装置5は、予め無線回線切断用の特定のIPアドレスを記憶しておき、サーバ1との通信が完了した場合には、自発的に当該回線切断用のIPアドレスを無線端末アダプタ4に送信するものである。
【0030】
無線端末アダプタ4は、イーサネット装置5とサーバ1との通信を実現するための各種処理を行うものであり、シリアルインタフェース及びイーサネットインタフェースを備え、無線端末3とシリアル通信を行うと共に、イーサネット回線を介してイーサネット装置5と通信を行う。
サーバ1とイーサネット装置5とが通信を行う場合、無線端末アダプタ4は、IPアドレスの変換や、シリアル−イーサネットの変換を行い、無線端末2の制御も行う。
また、本通信システムの特徴として、無線端末アダプタ4は、通信中のイーサネット装置5から送信先アドレスが回線切断用のIPアドレスであるパケットを受信すると、無線回線切断処理を開始する。無線端末アダプタ4の構成及び動作については後述する。
【0031】
[複数のイーサネット装置に接続する場合:図2]
次に、無線端末アダプタ4が、複数のイーサネット装置に接続する場合の本通信システムの構成について図2を用いて説明する。図2は、複数のイーサネット装置を備えた場合の本通信システムの概略構成図である。
図2に示すように、複数のイーサネット装置5(イーサネット装置5-1,5-2,...,5-n)を備えるシステムでは、無線端末アダプタ4にハブ51を接続し、各イーサネット装置5-1,5-2,...,5-nはハブ51を介して通信端末アダプタ4に接続するようになっている。
【0032】
ハブ51は、無線端末アダプタ4のイーサネットインタフェースに接続されるイーサネットを複数に分岐するものである。
尚、図2の構成の場合、複数のイーサネット装置5が同一のサーバ1に接続されるようにしてもよい。
【0033】
[無線端末アダプタ4の構成:図3]
次に、本通信システムの無線端末アダプタ4の構成について図3を用いて説明する。図3は、本通信システムの無線端末アダプタ4の構成ブロック図である。
図3に示すように、無線端末アダプタ4は、制御部41と、入出力部42と、入出力部43と、ROM部44と、RAM部45とを備えている。
【0034】
入出力部42は、シリアルインタフェース部であり、無線端末3に対する入出力を行う。
入出力部43は、イーサネットインタフェース部であり、イーサネット装置5に対する入出力を行う。
【0035】
ROM部44は、制御部41における処理プログラムを記憶している。
RAM部45は、データや各種パラメータ等を記憶している。従来と同様に、RAM部45には、予め当該無線端末アダプタ4に接続するイーサネット装置5のIPアドレスや対応するアクセスポイントが記憶されている。
更に、本無線端末アダプタ4の特徴として、RAM部45には、回線切断用の特定のアドレス(切断用IPアドレス)と、各イーサネット装置5の通信状態(「通信」又は「非通信」)を記憶している。
尚、RAM部45は、請求項に記載した記憶部に相当する。
【0036】
制御部41は、本無線端末アダプタ4全体の制御を行う。
また、本無線端末アダプタ4の特徴部分として、制御部41は、通信中のイーサネット装置5から、予めRAM部45に記憶されている回線切断用のアドレスを受信した場合には、無線回線切断の処理を行う。制御部41の処理については後で説明する。
【0037】
[イーサネット装置5の構成及び動作]
イーサネット装置5は、少なくとも、制御部と、記憶部と、イーサネットインタフェース部とを備え、無線端末アダプタ4を介してサーバ1と通信を行う。
そして、本通信システムの特徴として、記憶部には無線端末アダプタ4と同じ切断用IPアドレスが記憶されている。
【0038】
そして、イーサネット装置5の制御部は、サーバ1との通信が完了すると、切断用IPアドレスを送信先とするパケットを生成して、無線端末アダプタ4に送信する。
イーサネット装置5の制御部は、サーバ1への切断要求(FIN)送信(図10の処理416)後、サーバ1からのACKを受信(図10の処理422)することにより、サーバ1との通信が完了したと判断し、切断用IPアドレスを送信先とするパケットを送信する。
【0039】
[RAM部45に記憶される情報:図4]
次に、本無線端末アダプタ4のRAM部45に記憶されている情報について図4を用いて説明する。図4は、無線端末アダプタ4のRAM部に記憶されている情報を示す説明図である。
図4に示すように、本無線端末アダプタ4のRAM部45には、予め、切断用IPアドレスが記憶されている。
切断用IPアドレスは、無線回線の切断を指示するものである。図4の例では、切断用IPアドレスとして、「9.8.7.6」が記憶されている。
【0040】
更に、本無線端末アダプタ4のRAM部45には、当該無線端末アダプタ4に接続するイーサネット装置5のIPアドレスと、各イーサネット装置5の通信状態が記憶されている。ここでは、通信状態は「通信」又は「非通信」として記憶されている。
イーサネット装置5のIPアドレスは予め記憶されており、システム運用状態になると、各イーサネット装置5の通信状態が記憶される。尚、デフォルトの通信状態(非通信)を予め記憶しておいてもよい。
【0041】
そして、無線端末アダプタ4の制御部41が、各イーサネット装置5からのパケットを監視し、送信先がサーバ1であるパケットを受信すると、送信元のイーサネット装置5の通信状態を「通信」としてRAM部45に記憶し、送信先が切断用IPアドレスであるパケットを受信すると、送信元のイーサネット装置5の通信状態を「非通信」として更新する。
【0042】
[無線端末アダプタ4の動作]
次に、本無線端末アダプタ4の動作の概要について説明する。
無線端末アダプタ4は、図10に示したシーケンスにより、イーサネット装置5からサーバ1への接続要求を受信すると、RAM部45に記憶された当該イーサネット装置5の通信状態を「通信」とする。そして、通信状態にあるイーサネット装置5から、送信先が切断用IPアドレス以外のパケットを受信すると、パケットに従って処理を行う。
尚、接続要求に限らず、送信先アドレスがサーバ1のIPアドレスであった場合には、当該イーサネット装置5の通信状態を「通信」としてもよい。
【0043】
また、無線端末アダプタ4は、通信状態にあるイーサネット装置5から、送信先が切断用IPアドレスであるパケットを受信すると、当該イーサネット装置5の通信状態を「非通信」とする。
そして、無線端末アダプタ4は、全てのイーサネット装置5の通信状態が「非通信」となっていれば、無線端末アダプタ4とサーバ1との間の無線回線を切断する。
【0044】
本通信システムの特徴として、無線端末アダプタ4は、通信状態が「通信」となっているイーサネット装置5が1台でもあれば、無線回線を切断せず、そのまま維持する。
これは、複数のイーサネット装置5が同時に同一のサーバ1に接続している場合に、ある1つのイーサネット装置5からの回線切断要求によって他のイーサネット装置5の通信を切断してしまうのを防ぐためであり、これによって通信の信頼性を維持できるものである。
【0045】
[本通信システムにおけるシーケンス:図5]
次に、本通信システムにおけるシーケンスについて図5を用いて説明する。図5は、本通信システムにおけるシーケンスを示すシーケンス図である。図5では、無線端末アダプタ4にイーサネット装置5が1台のみ接続されている場合を示している。
尚、無線端末アダプタ4にイーサネット装置5が1台しか接続されていない場合には、イーサネット装置5の通信状態を記憶しなくてもよい。
【0046】
図5に示すように、予め、回線切断用IPアドレスとして「9.8.7.6」を無線端末アダプタ4とイーサネット装置5とに設定する(100)。
また、無線端末アダプタ4にイーサネット装置5のIPアドレスを登録する(102)。
【0047】
そして、図10に示した通信開始のシーケンスを行って、イーサネット装置5とサーバ1とが通信状態になると、無線端末アダプタ4は、イーサネット装置5から受信するパケットを監視し、パケットの送信先IPアドレスとして、「9.8.7.6」以外のIPアドレスが設定されている場合には、無線通信回線を介してサーバにパケットを送信する(106)。
【0048】
また、送信先IPアドレスとして、「9.8.7.6」が設定されている場合には、無線端末アダプタ4は、サーバ−無線端末アダプタ間PPP切断処理を行って(110,112,114)サーバ−無線端末アダプタ間PPP切断が完了する。
つまり、本通信システムの無線端末アダプタ4は、通信中のイーサネット装置5から、回線切断用IPアドレスを受信すると、無線回線を切断する処理を行う。
【0049】
[複数のイーサネット装置が接続されている場合:図6]
次に、図2に示したように、複数のイーサネット装置5が無線端末アダプタ4に接続されている場合のシーケンスの例について図6を用いて説明する。図6は、複数のイーサネット装置が無線端末アダプタに接続されている場合のシーケンス例を示すシーケンス図である。
図6では、イーサネット装置No.1とイーサネット装置No.2の2台のイーサネット装置がハブ51を介して無線端末アダプタ4に接続されている場合のシーケンスを示しており、イーサネット装置No.1とイーサネット装置No.2とは、同一のサーバ1に接続するものとしている。
【0050】
まず、無線端末アダプタ4と、イーサネット装置No.1とイーサネット装置No.2に、回線切断用IPアドレスとして、「9.8.7.6」を登録しておく(200)。また、イーサネット装置No.1及びNo.2のIPアドレスを無線端末アダプタ4に登録しておく(202)。
【0051】
無線端末アダプタ4は、RAM部45に記憶されているイーサネット装置No.1、No.2の通信状態を「非通信」とする(204)。
そして、図10に示した通信開始のシーケンスを行って、各イーサネット装置5とサーバ1とが通信状態になる。ここでは、イーサネット装置No.1、No.2が共に通信状態となったことを示している。
イーサネット装置No.1、No.2が通信状態になると、無線端末アダプタ4は、RAM部45に記憶されているイーサネット装置No.1、No.2の通信状態をどちらも「通信」にする(206)。
【0052】
無線端末アダプタ4は、イーサネット装置No.1、No.2からのパケットを監視する。イーサネット装置No.1が、サーバ1との通信を完了して送信先IPアドレスが「9.8.7.6」であるパケットを送信すると(208)、無線端末アダプタ4は、イーサネット装置No.1の通信状態を「非通信」とする(210)。しかし、この時点では、イーサネット装置No.2が通信状態であるため、無線端末アダプタ4は、無線回線の切断処理は行わない。
【0053】
その後、イーサネット装置No.1から送信先がサーバ宛のIPパケットが送信されると(212)、無線端末アダプタ4は、イーサネット装置No.1の通信状態を「通信」として更新する(214)。
【0054】
そして、イーサネット装置No.2が、サーバ1との通信が完了して送信先IPアドレスが「9.8.7.6」であるパケットを送信すると(216)、無線端末アダプタ4は、イーサネット装置No.2の通信状態を「非通信」とする(218)。このときは、イーサネット装置No.1の通信状態が「通信」であるため、無線端末アダプタ4は無線回線の切断処理を行わない。
【0055】
その後、再びイーサネット装置No.1とサーバ1との通信が完了して、イーサネット装置No.1が送信先IPアドレスが「9.8.7.6」であるパケットを送信すると(220)、無線端末アダプタ4は、イーサネット装置No.1の通信状態を「非通信」とする(222)。
【0056】
無線端末アダプタ4は、登録されている全てのイーサネット装置5の通信状態が「非通信」となったことを確認し、まず、LAN区間のPPP切断を行い、次に、サーバ−無線端末アダプタ間のPPP切断処理を行って(224,226,228)、サーバ−無線端末アダプタ間のPPP切断が完了する。
【0057】
このように、本通信システムでは、サーバ1との通信完了時に、イーサネット装置5から主体的に切断要求として回線切断用IPアドレスを送信先とするパケットを送信することにより、無線端末アダプタ4は、迅速に切断処理を行うことができ、無線回線の有効利用を図ることができるものである。
【0058】
また、複数のイーサネット装置5が同一のサーバ1に接続する場合には、回線切断用IPアドレスを受信すると、送信元のイーサネット装置5の通信状態を「非通信」とした後、他のイーサネット装置5の通信状態を確認し、全てのイーサネット装置5の通信状態が「非通信」の場合に限って無線回線の切断処理を行うようにしており、通信状態にある他のイーサネット装置5の通信を維持することができるものである。
つまり、本通信システムでは、無線端末アダプタ4が回線切断用IPアドレスを受信した場合でも、他に通信中のイーサネット装置があれば、無線回線は切断せずシステムとしての通信は維持されるものである。
【0059】
[無線端末アダプタにおける処理:図7]
次に、無線端末アダプタの制御部43における処理について図7を用いて説明する。図7は、無線端末アダプタにおける処理を示すフローチャートである。
図7に示すように、無線端末アダプタの制御部43は、イーサネット装置5からのIPパケットを受信すると(300)、送信先アドレスがサーバのIPアドレスかどうかを判断し(302)、サーバのIPアドレスであれば(Yesの場合)、当該イーサネット装置5の通信状態を「通信」にする(304)。そして、無線端末アダプタ4は、受信パケットに応じた処理を行う(320)。
【0060】
また、処理302で、送信先アドレスがサーバのIPアドレスではなかった場合(Noの場合)、無線端末アダプタ4は、送信先アドレスが回線切断用IPアドレスであるかどうかを判断し、回線切断用IPアドレスではなかった場合(Noの場合)、処理320に移行する。
【0061】
また、処理306で、送信先アドレスが回線切断用IPアドレスであった場合(Yesの場合)、無線端末アダプタ4は、当該イーサネット装置5の通信状態を「非通信」にする(308)。
そして、無線端末アダプタ4は、RAM部45に記憶されている通信状態を参照して、全てのイーサネット装置5が非通信状態であるかどうかを確認して、全てのイーサネット装置5が非通信状態でない場合には、処理300に戻って次のパケットを待ち受ける。
【0062】
処理310で、全てのイーサネット装置5が非通信状態であった場合には、無線端末アダプタ4は、無線端末アダプタ−サーバ間のPPP切断処理を実施し(312)、無線回線が切断される。
このようにして、無線端末アダプタ4における処理が行われる。
【0063】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る通信システムによれば、無線端末アダプタ4とイーサネット装置5とに、回線切断用IPアドレスを記憶しておくと共に、無線端末アダプタ4が、接続する全てのイーサネット装置5のIPアドレスと通信状態とをRAM部45に記憶し、イーサネット装置5が、サーバ1との通信完了時に、回線切断用IPアドレスを送信先とするパケットを無線端末アダプタ4に送信し、無線端末アダプタ4が、イーサネット装置5から送信先アドレスがサーバ1であるパケットを受信すると、当該送信元のイーサネット装置5の通信状態を「通信」として更新し、イーサネット装置5から送信先アドレスが回線切断用IPアドレスであるパケットを受信すると、当該送信元のイーサネット装置5の通信状態を「非通信」として更新し、全てのイーサネット装置5の通信状態が「非通信」であるかどうかを判断して、全てのイーサネット装置5の通信状態が「非通信」である場合に、無線端末アダプタ4とサーバ1との間の無線回線を切断する処理を行う通信システムとしているので、サーバ1との通信が完了した場合には、イーサネット装置5側から回線切断用アドレスを送信することにより、無通信時間タイマによる無駄な待ち時間を無くして迅速に無線回線を切断することができ、無線回線を効率的に利用することができ、また、同一のサーバ1に複数のイーサネット装置5が接続している場合に、他のイーサネット装置5の通信が意図しないのに切断されてしまうのを防ぐことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、通信切断時の処理を迅速に行って無線通信回線を効率的に利用できる通信システムに適している。
【符号の説明】
【0065】
1...サーバ、 2...基地局、 3...無線端末、 4...無線端末アダプタ、 5...イーサネット装置、 31...アンテナ、 51...ハブ、 41...制御部、 42,43...入出力部、 44...ROM部、 45...RAM部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線回線を介してサーバに接続する無線端末と、LAN回線に接続されるLAN端末と、前記無線端末と前記LAN端末に接続し、前記LAN端末と前記サーバとのデータ通信を実現する無線端末アダプタとを備えた通信システムであって、
前記LAN端末と前記無線端末アダプタが、予め回線切断用のIPアドレスを記憶しておき、
前記LAN端末が、前記サーバとの通信が完了すると、前記回線切断用のIPアドレスを送信先アドレスとするパケットを前記無線端末アダプタに送信し、
前記無線端末アダプタが、接続される全てのLAN端末のIPアドレスと「通信」又は「非通信」の通信状態とを記憶し、LAN端末から前記サーバのIPアドレスを送信先とするパケットを受信すると、当該パケットの送信元のLAN端末の通信状態を「通信」として更新し、LAN端末から前記回線切断用のIPアドレスを送信先とするパケットを受信すると、当該パケットの送信元のLAN端末の通信状態を「非通信」として更新すると共に、記憶されている全てのLAN端末の通信状態が「非通信」であれば、無線回線を切断する処理を行うことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−186697(P2012−186697A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48987(P2011−48987)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】