説明

通信方法

【課題】多重伝送路において通信方式を切り替える場合に通信タイミングを保証する通信方法を提供することを課題とする。
【解決手段】複数のノードが接続される多重伝送路において通信方式を切り替える場合の通信方法であって、各ノードが通信方式に設定されている通信時間が経過する毎に(S1、S2)、切替信号を多重伝送路に送信し(S5)、各ノードが切替信号に基づいて通信方式を切り替え(S7、S9)、さらに、各ノードが自ノードのスリープ可否を判断し(S3)、その判断結果に基づいて切替信号の送信要否を判断し(S4)、スリープ不可の場合に切替信号を送信し(S5)、スリープ可能の場合に切替信号を送信せず、切替信号送信区間において自ノードが切替信号を送信しなかった場合かつ他ノードの切替信号を受信しなかった場合に自ノードをスリープモードに移行する(S12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のノードが接続される多重伝送路において通信方式を切り替える場合の通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車載LAN[Local Area Network]として、CAN[Controller Area Network]の他に低コストなLIN[LocalInterconnect Network]がある。LINは、シングルマスタ/マルチスレーブ方式であり、マスタノードが予め決められたスケジュールに従って送信要求を出して、各ノードがその送信要求に従ってデータ(メッセージ)の送受信を行う。コストダウンを図るために、LINにおけるマルチマスタ化が検討されている。マルチマスタ化した場合、複数のマスタノードから同時に送信要求が出されることも考えられるので、通信方式が重要となる。
【0003】
例えば、LINバス上に複数のマスタノードが置かれた場合に、CSMA/CD[CarrierSense Access with Collision Detection]通信方式で通信を行うと、複数のノードから同時にメッセージを送信すると優先度の高いメッセージの送信が終了してから優先度の低いメッセージが送信されるので、メッセージの送信タイミングにズレ(遅れ)が生じる可能性があり、周期的にデータを取り入れる必要のあるノードで問題となる。また、TDMA[Time Division Multiple Access]通信方式で通信を行うと、予め決められたスケジュールに従って通信を行うので、スケジュール以外の通信が不可能である。したがって、マルチマスタのLINにおいて状況に応じて最適な通信を行うためには、複数の通信方式を切り替えて通信を行うことが望まれる。特許文献1には、動的に変化する様々な要因(例えば、データ通信路、送信側機器及び受信側機器の能力や負荷、データの更新頻度や参照頻度)に応じて複数の通信方式の中から最適な通信方式に切り替える方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−77294号公報
【特許文献2】特開2011−35439号公報
【特許文献3】特開平5−110575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
CSMA/CD通信方式とTDMA通信方式とを周期的に切り替える場合、各マスタノードにおいてタイマで切替タイミングを判断することになるので、マスタノード間にタイマの誤差があると、マスタノード間の切替タイミングにズレが発生する。例えば、CSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切り替えの場合、図5に示すように、各マスタノードで異なるタイマを用いているので、マスタノード間でCSMA/CD通信区間の終了判定でズレPLが発生すると、マスタノード間でTDMAの開始タイミングが異なり、TDMAにおける各マスタノードの割当区間が重複する場合がある。このような重複区間OLが発生すると、複数のマスタノードから同時に送信要求を出すなど、想定した通信が行えない可能性がある。また、上記の特許文献1の切替方法の場合、イベントによって通信方式が切り替わるので、通信方式の切替タイミングを保証できない。
【0006】
そこで、本発明は、多重伝送路において通信方式を切り替える場合に通信タイミングを保証する通信方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る通信方法は、複数のノードが接続される多重伝送路において通信方式を切り替える場合の通信方法であって、各ノードが所定時間経過する毎に切替信号を多重伝送路に送信する切替信号送信ステップと、各ノードが切替信号送信ステップで送信された切替信号に基づいて通信方式を切り替える通信方式切替ステップとを含むことを特徴とする。
【0008】
この通信方法では、各ノードが所定時間が経過する毎に切替信号を多重伝送路にそれぞれ送信する。所定時間は、各通信方式に設定されている通信時間(通信区間)である。そして、通信方法では、各ノードにおいて自ノード及び他ノードの切替信号に基づいて切替タイミングを判断し、その判断した切替タイミングで通信方式を切り替える。このように、この通信方法では、各ノードから切替信号を送信し、各ノードから送信された切替信号に基づいて通信方式の切替タイミングを判断することにより、ノード間で通信方式の切替タイミングを合わせることができ、ノード間の通信タイミングを保証することができる。
【0009】
本発明の上記通信方法では、自ノードのスリープ可否を判断し、該判断結果に基づいて切替信号の送信要否を判断する送信判断ステップを含む構成としてもよい。さらに、本発明の上記通信方法では、切替信号送信区間において自ノードが切替信号を送信しなかった場合かつ他ノードの切替信号を受信しなかった場合に自ノードをスリープモードに移行するスリープ移行ステップを含む構成としてもよい。
【0010】
この通信方法では、自ノードのスリープ可否(自ノードでの通信の要否)を判断し、スリープ不可(自ノードでの通信が必要)な場合には切替信号を送信し、スリープ可(自ノードでの通信が不要)な場合には切替信号を送信しない。これによって、自ノードでの通信が不要な場合には切替信号の送信を削減できる。さらに、この通信方法では、切替信号送信区間において自ノードが切替信号を送信しなかった場合かつ他ノードの切替信号を受信しなかった場合(対象の全てのノードでの通信が不要な場合)に自ノードをスリープモードに移行する。これによって、切替信号によってスリープの可否を判断できるので、特別にスリープ用の信号を送信することなくスリープモードに移行でき、効率的な通信が可能となる。
【0011】
本発明の上記通信方法では、各ノードの切替信号に基づいて自ノードのタイマを補正する補正ステップを含む構成としてもよい。このように、この通信方法では、各ノードで通信方式の切替タイミングでタイマをそれぞれ補正するので、ノード間のタイマの誤差を低減でき、次回以降のノード間の切替タイミングのズレを抑制できる。
【0012】
本発明の上記通信方法では、切替信号送信ステップは、CSMA/CD通信方式に設定されている通信時間が経過する毎に切替信号を多重伝送路に送信し、通信方式切替ステップは、切替信号送信ステップで送信された切替信号に基づいてCSMA/CD通信方式からTDMA通信方式に切り替える構成にすると好適である。
【0013】
この通信方法では、各ノードにおいてCSMA/CD通信方式の通信時間(通信区間)が経過する毎に切替信号を多重伝送路にそれぞれ送信し、各ノードにおいて自ノード及び他ノードの切替信号に基づいてCSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切替タイミングを判断し、その判断した切替タイミングでTDMA通信方式に切り替える。これによって、各ノードでTDMA通信方式への切替タイミングを合わせることができ、TDMA通信において各ノードの割当区間が重なることがなく、複数のノードから同時に送信することがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各ノードから切替信号を送信し、各ノードから送信された切替信号に基づいて通信方式の切替タイミングを判断することにより、ノード間で通信方式の切替タイミングを合わせることができ、ノード間の通信タイミングを保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施の形態に係るLIN通信システムの構成図である。
【図2】CSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切替方法の説明図である。
【図3】スリープ移行可否判断方法の説明図であり、(a)がスリープ移行不可の場合であり、(b)がスリープ移行可能の場合である。
【図4】各マスタノードにおけるCSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切替処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】ノード間でCSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切替タイミングにズレが生じた場合である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る通信方法の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施の形態では、本発明に係る通信方法を、車両に搭載されるLIN通信システムにおける通信方式の切替処理に適用する。本実施の形態に係るLIN通信システムは、バスがシングルワイヤ方式であり、LINバス(多重伝送路)に複数のノード(ECU[Electronic Control Unit])が接続されている。特に、本実施の形態に係るLIN通信システムは、複数のマスタノードと複数のスレーブノードを有するマルチマスタ/マルチスレーブ方式である。
【0018】
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係るLIN通信システム1について説明する。図1は、本実施の形態に係るLIN通信システムの構成図である。図2は、CSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切替方法の説明図である。図3は、スリープ移行可否判断方法の説明図である。
【0019】
LIN通信システム1は、図1に示すように、複数のマスタノード2(第1マスタノード2a,第2マスタノード2b,・・・,第nマスタノード2n)と複数のスレーブノード3(第1スレーブノード3a,第2スレーブノード3b,・・・,第mスレーブノード3m)からなり、複数のマスタノード2と複数のスレーブノード3がLINバス4に接続されており、各ノード2,3間でLINバス4を介してメッセージを送受信する。LIN通信システム1では、複数のマスタノード2から送信要求をそれぞれ出し、その送信要求に応じて各ノード2,3でデータを送受信する。
【0020】
LIN通信システム1は、通信での柔軟性と確実性を兼ね備えた通信を可能とするために、2つの通信方式(CSMA/CD通信方式とTDMA通信方式)を切り替えて通信を行う。特に、LIN通信システム1は、複数のマスタノード2間で通信の同期をとるために、CSMA/CD通信方式からTDMA通信方式へ切り替える際に切替パルスを用いて切替タイミングを合わせ、この切替パルスを利用してスリープ移行可否判断も行う。本実施の形態では、各マスタノード2におけるCSMA/CD通信からTDMA通信へ切替処理(スリープ移行可否判断処理も含む)について詳細に説明する。
【0021】
CSMA/CD通信方式では、アービトレーションによりメッセージの優先度に応じて通信を行い、各マスタノード2が自身のタイミングでメッセージを送信する。したがって、外部又は内部からの各種イベントによって起動するようなメッセージ(データ)は、CSMA/CD通信区間で送信される。
【0022】
TDMA通信方式では、各マスタノード2に通信区間(一定の帯域)が時分割で割り当てられており、各マスタノード2が予め決められた通信スケジュールに従ってメッセージを送信する。しかがって、時間的に制約が厳しいメッセージ(データ)は、TDMA通信区間で送信される。
【0023】
LIN通信システム1では、CSMA/CD通信方式とTDMA通信方式とが、CSMA/CD通信区間とTDMA通信区間で規定される一定の時間周期で交互に行われる。CSMA/CD通信区間は、CSMA/CD通信で送信するメッセージ数等に応じて任意の時間が設定される。TDMA通信区間は、通信スケジュールに応じて時間が設定される。
【0024】
LIN通信システム1では、CSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切り替え時に各マスタノード2においてタイマによる時間制御と切替パルスの送信による切替タイミング判断が行われる。なお、TDMA通信方式では各メッセージを送信する毎にノード間で同期が取られるので、TDMA通式方式からCSMA/CD通信方式への切り替えでは上記のようなタイマによる時間制御や切替パルスの送信を行わない。
【0025】
各マスタノード2における切替処理について説明する。マスタノード2では、CSMA/CD通信を開始するとタイマでその通信の経過時間を計測し、CSMA/CD通信区間が経過した否かを判定する。CSMA/CD通信区間が経過したと判定すると、マスタノード2では、通常、切替パルスをLINバス4に送信する。切替パルスは、一定時間のドミナント信号(Low信号)である。この一定時間は、通常のメッセージに含まれる最大のドミナント信号よりも十分に長く、マスタノード2間の切替パルスの送信タイミングがずれた場合でも十分にドミナントが重なる時間が設定される。LINバス4上では、1つ以上のマスタノード2から切替パルス(ドミナント信号)が送信されると、ドミナント(Low状態)となる。したがって、複数のマスタノード2から切替パルスをそれぞれ送信した場合、最初に送信された切替パルス(ドミナント信号)の立ち下がりエッジから最後に送信された切替パルス(ドミナント信号)の立ち上がりエッジまでLINバス4がドミナントとなる。
【0026】
図2には、3つのマスタノード2a,2b,2cの場合を示している。この例の場合、最初に、第2マスタノード2bにおいてタイマ計測でCSMA/CD通信区間の経過を判定し、切替パルスPbを送信する。その後に、第3マスタノード2cにおいてタイマ計測でCSMA/CD通信区間の経過を判定し、切替パルスPcを送信する。最後に、第1マスタノード2aのタイマ計測でCSMA/CD通信区間の経過を判定し、切替信号Paを送信する。したがって、切替パルスPbのドミナント信号の立ち下がりエッジから切替パルスPaのドミナント信号の立ち上がりエッジまで、LINバス4がドミナントになる。
【0027】
マスタノード2では、LINバス4を監視し、一定時間以上のドミナントにおける立ち上がりを判定する。そして、マスタノード2では、一定時間以上のドミナントにおける立ち上がりを判定した場合、その立ち上がりエッジに合わせてTDMA通信を開始する。ここでは、各マスタノード2が、自身が送信した切替パルス及び他のマスタノード2が送信した切替パルスに基づいてTDMA通信への切替タイミングを判断している。この際、マスタノード2では、自身が切替パルスを送信したタイミング(タイマ計測でCSMA/CD通信区間の経過を判定したタイミング)とドミナントの立ち上がりのタイミングに基づいて、自身のタイマの誤差を補正する。
【0028】
図2に示す例の場合、第1マスタノード2aが送信した切替パルスPaのドミナント信号の立ち上がりが最も遅いので、この立ち上がりタイミングがLINバス4上でのドミナントの立ち上がりタイミングとなり、この立ち上がりエッジに合わせて、各マスタノード2a,2b,2cがTDMA通信を開始する。その結果、マスタノード2a,2b,2c間で同期がとれた状態でTDMA通信が開始され、第1マスタノード2aの割当区間、第2マスタノード2bの割当区間、第3マスタノード2cの割当区間が重ならない。
【0029】
ちなみに、CSMA/CD通信の実際の区間長さは、予め設定されている一定時間のCSMA/CD通信区間に切替パルス送信区間が加えられることになる。この切替パルス送信区間は、最小の長さが切替パルスに設定されるドミナント信号の一定時間であり(送信された全ての切替パルスの送信タイミングが一致している場合)、マスタノード2間の切替パルスの送信タイミングのズレ量に応じて長くなる。
【0030】
さらに、マスタノード2では、上記の切替パルスを用いてスリープ状態への移行可否を判断する。具体的には、マスタノード2では、CSMA/CD通信区間が経過したと判定した場合、自ノードがスリープ可能か否かを判定する。スリープ可能か否かの判定は、例えば、自ノードからの送信要求があるか否かで判定する。マスタノード2では、スリープ可能と判定した場合には切替パルスを送信せず、スリープ不可と判定した場合には切替パルスを送信する。
【0031】
マスタノード2では、CSMA/CD通信区間が経過したと判定した後の切替パルス送信区間の間、LINバス4を監視し、一定時間以上のドミナントがあるか否かを判定する。上記したように、1つ以上のマスタノード2から切替パルス(ドミナント信号)が送信されている場合には、LINバス4上ではドミナント(Low状態)となる。したがって、LINバス4上で一定時間以上のドミナントがない場合、全てのマスタノード2から切替パルスが送信されなかったことになり、全てのマスタノード2がスリープ可能な状態である。そこで、マスタノード2では、一定時間以上のドミナントがあると判定した場合(LIN通信システム1全体としてスリープ不可)にはTDMA通信に移行し、一定時間以上のドミナントがないと判定した場合(LIN通信システム1全体としてスリープ可能)にはスリープ状態に移行する。スリープ状態に移行すると、LIN通信システム1での通信が行われない。ちなみに、スリープ状態から通信を開始する場合(あるマスタノード2で送信要求がある場合)、そのマスタノード2からウェイクアップ信号を送信する。
【0032】
図3には、3つのマスタノード2a,2b,2cの場合を示している。図3(a)の例の場合、第1マスタノード2aと第2マスタノード2bでスリープ不可と判定し、切替パルスPa,Pbを送信し、第3マスタノード2cでスリープ可能と判定し、切替パルスを送信しない。この場合、LINバス4上では一定時間以上のドミナント(Low状態)となり、スリープ不可であり、TDMA通信に移行する。図3(b)の例の場合、全てのマスタノード2a,2b,2cでスリープ可能と判定し、切替パルスを送信しない。この場合、LINバス4上ではリセッシブ(High状態)となり、スリープ可能であり、スリープ状態に移行する。
【0033】
図1〜図3を参照して、LIN通信システム1の各マスタノード2における切替処理の流れを図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、各マスタノードにおけるCSMA/CD通信方式からTDMA通信方式への切替処理の流れを示すフローチャートである。
【0034】
マスタノード2では、CSMA/CD通信を開始すると、タイマによる時間計測でCSMA/CD通信区間の満了を確認し(S1)、通信区間を満了したか否かを判定する(S2)。S2で満了していないと判定した場合、マスタノード2では、CSMA/CD通信区間の満了確認を継続する(S1)。S2で満了したと判定した場合、マスタノード2では、自ノードのスリープ可否を確認し(S3)、スリープ可能か否かを判定する(S4)。
【0035】
S4にてスリープ不可と判定した場合、マスタノード2では、切替パルスをLINバス4に送信する(S5)。そして、マスタノード2では、LINバス4を監視し(S6)、LINバス4上でドミナントが立ち上がったか否かを判定する(S7)。S7にて立ち上がっていないと判定した場合、マスタノード2では、LINバス4の監視を継続する(S6)。S7にて立ち上がったと判定した場合、マスタノード2では、自ノードのタイマを補正し(S8)、ドミナントの立ち上がりエッジに合わせてTDMA通信に移行する(S9)。
【0036】
S4にてスリープ可能と判定した場合、マスタノード2では、LINバス4を監視し(S10)、一定時間以上のドミナントがあるか否かを判定する(S11)。S11にて一定時間以上のドミナントがあると判定した場合(他のマスタノード2で切替パルスを送信していることを確認した場合)、マスタノード2では、上記と同様に、LINバス4を監視し(S6)、ドミナントが立ち上がったか否かを判定し(S7)、立ち上がった場合にはタイマを補正し(S8)、立ち上がりエッジに合わせてTDMA通信に移行する(S9)。S11にて一定時間以上のドミナントがないと判定した場合(自ノードも含めて全てのマスタノード2で切替パルスを送信していないことを確認した場合)、マスタノード2では、スリープ状態に移行する(S12)。
【0037】
このLIN通信システム1によれば、各マスタノード2から切替パルスを送信し、各マスタノード2から送信された切替パルスに基づいてTDMA通信への切替タイミングを判断することにより、マスタノード2間でTDMA通信への切替タイミングを合わせることができ、マスタノード2間の通信タイミングを保証することができる。特に、TDMA通信方式への切替時に適用しているので、マスタノード2間でTDMA通信への切替タイミングの同期が取れており、TDMA通信においてマスタノード2間で割当区間が重なることがなく、複数のマスタノード2が同時に送信することがない。
【0038】
また、LIN通信システム1によれば、切替パルスとしてドミナント信号を利用することにより、LINバス4のドミナントを監視することによって、各マスタノード2の切替パルスを個々に確認することなく、各マスタノード2についての切替パルスの送信/非送信及び最後に送られた切替パルス(ドミナント信号)の立ち上がりの判断を簡単に行うことができる。
【0039】
また、LIN通信システム1によれば、切替パルスを利用してスリープ状態への移行可否判断を行うことにより、切替パルス(ドミナント信号)によってスリープの可否も判断できるので、特別にスリープ用の信号を送信することなくスリープ状態に移行でき、効率的な通信が可能となる。
【0040】
また、LIN通信システム1によれば、各マスタノード2でTDMA通信への切替タイミングでタイマをそれぞれ補正するので、マスタノード2間のタイマの誤差を低減でき、次回以降のマスタノード2間の切替タイミングのズレを極力抑制できる。
【0041】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0042】
例えば、本実施の形態では車両に搭載されるLIN通信システムに適用したが、CAN等の他の通信システムにも適用可能であり、車載以外の通信システムにも適用可能である。また、本実施の形態ではCSMA/CD通信方式とTDMA通信方式とを切り替える場合に適用したが、他の通信方式の切り替えにも適用可能である。また、本実施の形態ではマルチマスタのマスタ/スレーブ関係のノード構成に適用し、マスタノードでの切替処理に適用したが、ノードの構成については他の構成でもよい。
【0043】
また、本実施の形態では切替信号を利用してスリープ移行可否判断も行う構成としたが、スリープ移行可否判断を行わない構成でもよい。また、本実施の形態では各マスタノードで自ノードのタイマを補正する構成としたが、タイマの補正を行わない構成としてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では切替信号としてドミナント信号を送信し、LINバスのドミナントを監視することによってTDMA通信への切替タイミングを判断したが、切替信号としては他の信号を利用してもよいし、切替信号に基づく切替タイミングの判断も他の方法でもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…LIN通信システム、2,2a,2b,2c,2n…マスタノード、3,3a,3b,3m…スレーブノード、4…LINバス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノードが接続される多重伝送路において通信方式を切り替える場合の通信方法であって、
各ノードが所定時間経過する毎に切替信号を多重伝送路に送信する切替信号送信ステップと、
各ノードが前記切替信号送信ステップで送信された切替信号に基づいて通信方式を切り替える通信方式切替ステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
自ノードのスリープ可否を判断し、該判断結果に基づいて切替信号の送信要否を判断する送信判断ステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の通信方法。
【請求項3】
切替信号送信区間において自ノードが切替信号を送信しなかった場合かつ他ノードの切替信号を受信しなかった場合に自ノードをスリープモードに移行するスリープ移行ステップを含むことを特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項4】
各ノードの切替信号に基づいて自ノードのタイマを補正する補正ステップを含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項5】
前記切替信号送信ステップは、CSMA/CD通信方式に設定されている通信時間が経過する毎に切替信号を多重伝送路に送信し、
前記通信方式切替ステップは、前記切替信号送信ステップで送信された切替信号に基づいてCSMA/CD通信方式からTDMA通信方式に切り替えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−55534(P2013−55534A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192830(P2011−192830)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(508237823)株式会社OTSL (11)
【Fターム(参考)】