説明

通信端末装置及び通信方法

【課題】変調方式または伝送速度などの通信方式の異なる複数の対向機器との通信において、対向機器とのアンテナ間の整合特性を高め、広い通信領域を確保すること。
【解決手段】アンテナ1は、電磁誘導により近接通信を行う。GPS受信部8及び第2の通信部9は、現在の位置情報を取得する。R/W設置場所地図データベース7は、R/W装置の設置場所の情報を記憶する。座標照合部6は、設置場所の情報と位置情報とに基づいて、R/W装置を特定する。通信方式データベース5は、R/W装置の通信方式の情報を記憶する。通信方式選択部4は、座標照合部6により特定したR/W装置に対応する通信方式を、通信方式の情報より選択する。選択式整合回路2は、近接通信の際に、通信方式選択部4により選択した通信方式の共振周波数で共振させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末装置及び通信方法に関し、特に複数の外部の通信機器との間での電磁誘導を使用した近接通信を行う通信端末装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信相手と接触または密着する程度まで近接して通信を行う通信システムの開発要求が高まってきている。具体的には、電界または磁界の作用する、約10cm以下の近接領域において、電界或いは磁界を利用して通信を行う通信システムの開発要求が高まってきている。このような通信システムは、各種のサービスに用いられる。例えば、電話帳などの個人情報のデータが記憶された電子データを携帯電話機へ複写するサービスに用いられる。また、病院または薬局などでの電子カルテの読取または書込のサービスに用いられる。また、住民票または戸籍などの電子化された住民台帳データの閲覧または請求などのサービスに用いられる。また、個人の趣味の音楽または画像などの各種データを自己の携帯電話機などへ転送、複写または記憶させるサービスに用いられる。また、自動販売機などのプリペイド用として金額データを所望の電子機器へ読み取らせるサービスに用いられる。また、遊園地または駅などでのパスを用いた改札通過のサービスに用いられる。
【0003】
上記のサービス受ける際に用いられる機器として、外部の近接非接触通信機器(以下、「外部近接非接触通信機器」と記載する)との間で、近接非接触通信を行うことができる、近接非接触通信機能を備えた携帯通信機器の開発が各種検討されている。また、外部近接非接触通信機器としては、リーダライタ(以下「R/W」と記載する)装置などがある(例えば、特許文献1)。
【0004】
上記のR/W装置は、ユーザが受けられるサービスに応じて、異なる変調方式または伝送速度などを用いる。図1は、従来の複数のR/W装置とNFC(Near Field Communication)端末との通信の概念図である。各R/W装置は、異なる変調方式または伝送速度を使用する。従って、NFC端末は、図1に示すように、通信回路A、B、・・・、Nと、抵抗及びコンデンサから構成される共振条件の異なる整合回路と、コイルから構成されるアンテナとをR/W装置毎に有する。また、NFC端末は、各R/W装置と通信を行うために、受信応答回路と、コイルから構成されるアンテナと、抵抗及びコンデンサから構成される共振用の整合回路とを有する。また、NFC端末は、各R/W装置と通信を行う場合、整合回路の最適条件が異なる。従って、NFC端末は、全てのR/W装置と安定した通信を行うためには、整合回路を最大公約数的な条件にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−111483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1においては、R/W装置はサービスに応じて異なる変調方式または伝送速度などを用いるので、通信端末装置において共振周波数を固定した整合回路を有する場合、アンテナの誘導電流が低下し、通信領域を縮小させてしまうという問題がある。また、最大公約数的な条件の整合回路により各R/W装置と通信を行う場合には、R/W装置毎に最適な条件の整合回路により各R/W装置と通信を行う場合に比べて、通信領域が狭くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、変調方式または伝送速度などの通信方式の異なる複数の対向機器との通信において、対向機器とのアンテナ間の整合特性を高めることができ、広い通信領域を確保することができる通信端末装置及び通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の通信端末装置は、電磁誘導により近接通信を行う第1の通信手段と、現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、リーダライタ装置の設置場所の情報を記憶する第1の記憶手段と前記設置場所の情報と前記位置情報とに基づいて、リーダライタ装置を特定する照合手段と、リーダライタ装置毎の通信方式の情報を記憶する第2の記憶手段と、前記照合手段により特定したリーダライタ装置に対応する前記通信方式を、前記通信方式の情報より選択する選択手段と、前記近接通信の際に、前記選択手段により選択した前記通信方式の共振周波数で共振させる整合回路と、を有する構成を採る。
【0009】
本発明の通信方法は、リーダライタ装置と通信する通信端末装置における通信方法であって、電磁誘導により近接通信を行うステップと、現在の位置情報を取得するステップと、記憶手段に記憶したリーダライタ装置の設置場所の情報と前記位置情報とに基づいて、リーダライタ装置を特定するステップと、前記照合手段により特定したリーダライタ装置に対応する通信方式を、記憶手段に記憶したリーダライタ装置毎の通信方式の情報より選択するステップと、前記近接通信の際に、前記選択した通信方式の共振周波数で共振させるステップと、を有するようにした。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、変調方式または伝送速度などの通信方式の異なる複数の対向機器との通信において、対向機器とのアンテナ間の整合特性を高めることができ、広い通信領域を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】従来の複数のR/WとNFC端末との通信の概念図
【図2】本発明の実施の形態1に係る通信端末装置の構成を示すブロック図
【図3】本発明の実施の形態1に係る選択式整合回路の構成を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態2に係る通信端末装置の構成を示すブロック図
【図5】本発明の実施の形態2に係るサービスデータベースに格納されるデータの一例を示す図
【図6】本発明の実施の形態2に係る通信端末装置の使用状態と通信方式選択部の状態の遷移の一例を示す図
【図7】本発明の実施の形態3に係る通信端末装置の構成を示すブロック図
【図8】本発明の実施の形態4に係る通信端末装置の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明における実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態1に係る通信端末装置100の構成を示すブロック図である。通信端末装置100は、例えばNFC端末である。
【0014】
通信端末装置100は、アンテナ1と、選択式整合回路2と、第1の通信部3と、通信方式選択部4と、通信方式データベース5と、座標照合部6と、R/W設置場所地図データベース7と、GPS受信部8と、第2の通信部9とから主に構成される。
【0015】
アンテナ1は、電磁誘導により、対向するR/W装置と近接通信を行う。また、アンテナ1は、近接通信の際に、選択式整合回路2により整合されて、所定の共振周波数で共振、所定のアンテナQで共振、または所定の共振周波数と所定のアンテナQとで共振し、受信した信号を選択式整合回路2を介して第1の通信部3へ出力する。
【0016】
選択式整合回路2は、通信方式選択部4の制御に従って、対向するR/W装置の種別毎にアンテナ整合条件を切り替えることにより、対向するR/W装置の種別毎にアンテナ1を整合させる。即ち、選択式整合回路2は、広い通信領域を確保するために、R/W装置の種別毎に最適なアンテナ整合条件でアンテナ1を共振させ、R/Wと通信を行う際に大きな電流を流して信号振幅を大きくする。ここで、R/W装置の種別とは、異なる用途に使用され、変調方式または伝送速度等の通信方式の異なるR/W装置を意味する。例えば、フェリカ(FeliCa登録商標)に使用されるR/W装置と、住民基本台帳カードの閲覧または請求に使用されるR/W装置とは種別が異なる。
【0017】
第1の通信部3は、アンテナ1により受信した信号を、選択式整合回路2を介して取得し、取得した信号を周波数変換、復調及び復号する。第1の通信部3は、例えばNFC通信における上記の処理を行う。
【0018】
通信方式選択部4は、通信端末装置100の周辺に存在するR/W装置の情報を、座標照合部6から取得する。また、通信方式選択部4は、取得したR/W装置の情報を用いて通信方式データベース5を参照することにより、通信方式データを取得して、座標照合部6において特定したR/W装置の通信方式を特定する。また、通信方式選択部4は、特定した通信方式に対するアンテナ整合を適した状態にするために、選択式整合回路2を制御する。ここで、通信方式としては、例えば、フェリカに使用する通信方式、または住民基本台帳カードに使用する通信方式である。
【0019】
通信方式データベース5は、R/W装置の種別と通信方式データとを対応付けたデータを格納するデータベースである。ここで、通信方式データとは、R/W装置の種別毎に、異なる、伝送速度、変調方式、共振周波数またはアンテナQ等を特定するデータであり、通信を開始する前に予め設定される。また、通信方式データは、通信端末装置100における通信を良好に行うために、整合回路を調整する際に必要とされるデータである。ここで、アンテナQとは、所望の周波数におけるVSWR(Voltage Standing Wave Ratio)のピークの立ち上がり及び立ち下がりの急峻性を示す値である。
【0020】
座標照合部6は、GPS受信部8より取得した座標データと、第2の通信部9より取得した位置情報と、R/W設置場所地図データベース7より取得したR/W設置場所地図データとに基づいて、通信端末装置100の周辺に存在するR/W装置を探索して特定する。そして、座標照合部6は、特定したR/W装置の情報を探索結果として通信方式選択部4へ出力する。また、座標照合部6は、R/W設置場所地図データベース7を参照する際に、通信端末装置100の現在の位置に応じて、参照する範囲をあらかじめ任意に設定する。座標照合部6は、例えば、地方においては設置されているR/W装置の数が少なく、R/W装置の種別も限定されているため、参照する範囲を数km〜数10kmに設定する。一方、座標照合部6は、多数の種別の異なるR/W装置が設置されている都会の商業施設などの場所では、参照する範囲を数10m以下に設定する。これにより、座標照合部6は、R/W装置の探索を容易に行うことができる。また、R/W装置の情報としては、例えば、駅、コンビニエンスストアまたは市役所等の建物の種類を識別する情報である。
【0021】
R/W設置場所地図データベース7は、設置されたR/W装置の種別とR/W装置の設置場所とを対応付けたR/W設置場所地図データを格納するデータベースである。
【0022】
GPS受信部8は、GPS信号を受信し、受信したGPS信号の演算を行うことにより、通信端末装置100の現在の位置情報を示す座標データを取得する。そして、GPS受信部8は、取得した座標データを座標照合部6へ出力する。
【0023】
第2の通信部9は、携帯電話で用いられる通信方式により通信を行い、通信端末装置100の現在の位置情報を取得する。そして、第2の通信部9は、取得した位置情報を座標照合部6へ出力する。なお、通信端末装置100の現在の位置情報を取得するGPS受信部8及び第2の通信部9は、何れか一方のみを具備してもよいし、図2に示すように両方を具備しても良い。
【0024】
次に、選択式整合回路2の詳細な構成について、図3を用いて説明する。図3は、選択式整合回路2の構成を示すブロック図である。
【0025】
選択式整合回路2は、アンテナ1に並列に接続されたコンデンサC0により共振回路が構成される。また、選択式整合回路2は、アンテナ1と並列に接続する複数のスイッチSW1、SW2、・・・、SWnを有する。また、選択式整合回路2は、スイッチSW1と直列に接続する抵抗R1と、スイッチSW1及び抵抗R1と直列に接続するコンデンサC1とを有する。また、選択式整合回路2は、スイッチSW2と直列に接続する抵抗R2と、スイッチSW2及び抵抗R2と直列に接続するコンデンサC2とを有する。また、選択式整合回路2は、スイッチSWnと直列に接続する抵抗Rnと、スイッチSWn及び抵抗Rnと直列に接続するコンデンサCnとを有する。抵抗R1、R2、・・・、Rnは、アンテナQ制御を行う。コンデンサC1、C2、・・・、Cnは、共振周波数制御を行う。
【0026】
上記の構成を有する選択式整合回路2において、スイッチSW1、SW2、・・・、SWnの何れか1つまたは複数をONにすることにより、対向するR/W装置と適した条件で通信を行うために、共振周波数、アンテナQ、または共振周波数及びアンテナQを適した状態に設定する。具体的には、スイッチSW1をONにすることにより、共振回路の共振周波数を下げることができる。または、スイッチSW1をONにすることにより、共振回路のアンテナQを小さくすることができる。または、スイッチSW1をONにすることにより、共振回路の共振周波数を下げることができるとともに、アンテナQを小さくすることができる。また、スイッチSW2、・・・、SWnについても同様である。
【0027】
なお、スイッチSW1と、抵抗R1と、コンデンサC1とは、直列に配置されていれば、互いに任意の順番で配置することができ、同様の効果を得ることができる。また、通信方式選択部4により、スイッチSW1、・・・、SWnのいずれかがONしている状態を維持できれば、コンデンサC0が無い構成とすることも可能である。
【0028】
このように、本実施の形態によれば、通信端末装置と対向するR/W装置毎に、最適な整合状態に選択的に切り換えることにより、アンテナに流れる電流を増加させることができるとともに、大きな信号を受信することができる。この結果、対向するR/W装置とのアンテナ間の整合特性を高めることができ、広い通信領域を確保することができる。
【0029】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る通信端末装置400の構成を示すブロック図である。
【0030】
図4に示す通信端末装置400は、図2に示す実施の形態1に係る通信端末装置100に対して、通信プロトコル認識部21と、サービス判定部22と、サービスデータベース23とを追加し、通信方式選択部4の代わりに通信方式選択部24を有する。なお、図4において、図2と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0031】
通信端末装置400は、アンテナ1と、選択式整合回路2と、第1の通信部3と、通信方式データベース5と、座標照合部6と、R/W設置場所地図データベース7と、GPS受信部8と、第2の通信部9と、通信プロトコル認識部21と、サービス判定部22と、サービスデータベース23と、通信方式選択部24とから主に構成される。
【0032】
第1の通信部3は、アンテナ1により受信した信号を、選択式整合回路2を介して取得し、取得した信号を周波数変換、復調及び復号して通信プロトコル認識部21へ出力する。第1の通信部3は、例えばNFC通信を行う際の上記の処理を行う。
【0033】
通信プロトコル認識部21は、第1の通信部3から取得した信号を解析して、近接通信で使用する通信プロトコルを判別する。また、通信プロトコル認識部21は、判別した通信プロトコルに従った近接通信により提供されるサービス及び使用状態を識別し、識別結果をサービス判定部22へ出力する。
【0034】
サービス判定部22は、通信プロトコル認識部21から取得した識別結果を用いて、サービスデータベース23に格納されるデータを参照することにより、サービスの継続使用の有無を判定する。そして、サービス判定部22は、判定結果を通信方式選択部24へ出力する。ここで、サービスの継続使用有りとは、現状の整合状態を維持して設定した共振周波数を維持することを意味する。また、サービスの継続使用無しとは、現状の整合状態を維持せずに、整合状態の変更が可能であることを意味する。なお、サービス判定部22における上記処理の詳細については後述する。
【0035】
サービスデータベース23は、サービスと使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータをデータベースとして格納する。
【0036】
座標照合部6は、GPS受信部8より取得した座標データと、第2の通信部9より取得した位置情報と、R/W設置場所地図データベース7より取得したR/W設置場所地図データとに基づいて、通信端末装置400の周辺に存在するR/W装置を探索して特定する。そして、座標照合部6は、特定したR/W装置の情報を探索結果として通信方式選択部24へ出力する。また、座標照合部6は、R/W設置場所地図データベース7を参照する際に、通信端末装置400の現在の位置に応じて、参照する範囲をあらかじめ任意に設定する。
【0037】
通信方式選択部24は、通信端末装置400の周辺に存在するR/W装置の情報を、座標照合部6から取得する。また、通信方式選択部24は、取得したR/W装置の情報を用いて通信方式データベース5を参照することにより、通信方式データを取得して、座標照合部6において特定したR/W装置の通信方式を特定する。また、通信方式選択部24は、特定した通信方式の対向するR/Wに対するアンテナ整合を適した状態にするために、選択式整合回路2を制御する。この際、通信方式選択部24は、サービス判定部22において判定されたサービスの継続使用の有無の判定結果に基づいて、選択式整合回路2の制御状態を変更する。具体的には、通信方式選択部24は、判定結果が継続使用無しの場合には、上記の実施の形態1と同様に座標照合部6の探索結果を用いて選択式整合回路2を制御する。また、通信方式選択部24は、判定結果が継続使用有りの場合には、座標照合部6の探索結果に関わらず、選択式整合回路2の制御状態を維持する。
【0038】
選択式整合回路2は、通信方式選択部24の制御に従って、対向するR/W装置の種別毎にアンテナ整合条件を切り替えることにより、対向するR/W毎にアンテナ1を整合させる。即ち、選択式整合回路2は、広い通信領域を確保するために、R/W装置の種別毎に最適なアンテナ整合条件でアンテナ1を共振させ、R/Wと通信を行う際に大きな電流を流して信号振幅を大きくする。
【0039】
図5は、サービスデータベース23に格納されるデータの一例を示す図である。
【0040】
図5において、状態維持の「○」は、サービスの継続使用有りを意味する。即ち、状態維持の「○」は、「入場」または「商品購入(改札内)」の際の選択式整合回路2の制御状態を、次に「退場」または「商品購入(改札外)」を行うまで維持することを意味する。これらの、「入場」、「商品購入(改札内)」、「退場」及び「商品購入(改札外)」の識別は、座標照合部6においてR/W装置を特定することにより可能である。また、状態維持の「×」は、サービスの継続使用無しを意味する。
【0041】
図5の場合において、通信プロトコル認識部21が、サービスとしてSuica(登録商標)、及び使用状態として「入場」または「商品購入(改札内)」を識別した場合には、サービス判定部22は、サービスデータベース23に格納される図5の情報を参照することにより、選択式整合回路2の整合状態を継続するものと判定する。その後、座標照合部6が、退場ゲートまたは改札外の商品購入器に設置されるR/W装置を特定した場合には、通信方式選択部24は、選択式整合回路2の整合状態を変更可能に制御する。
【0042】
一方、通信プロトコル認識部21が、TASPO(登録商標)に使用される通信方式を識別した場合には、サービス判定部22は、サービスデータベース23に格納される図5の情報を参照することにより、サービスの継続使用無しを判定する。この場合には、通信方式選択部24は、上記の実施の形態1と同様に選択式整合回路2を制御する。
【0043】
図6は、通信端末装置400の使用状態と通信方式選択部24の状態の遷移の一例を示す図である。なお、図6において、上から順番に時系列に並んでいる。
【0044】
図6において、タバコの自動販売機には、通信方式がTypeAのTASPOのR/W装置が設置されており、駅には通信方式がフェリカのSuicaのR/W装置が設置されている。駅において改札を通過して入場(ステップST601)した通信端末装置400は、必ず改札を通過して退場(ステップST602)するため、SuicaのTypeA方式の状態を維持する。これにより、仮に通信端末装置400が位置情報を取得できない状態になっても、改札から退場する際に、R/W装置と安定した通信を行うことができる。改札などのシステムで使用されるR/W装置においては、高速に安定して通信できることが望ましいため、本実施の形態の通信端末装置400は有効である。また、通信端末装置400は、整合状態を維持している場合において、通信領域が狭くなるなどの影響はあるものの、他の通信方式による通信は可能である。例えば、改札入場後に、改札内に設置されているタバコ販売機でタバコを購入(ステップST603)することは可能である。
【0045】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1の効果に加えて、同一の通信方式を所定時間内に再び使用する可能性の高い使用状態において、整合回路の制御状態を維持するので、高速に安定した通信を行うことができる。
【0046】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3に係る通信端末装置700の構成を示すブロック図である。
【0047】
図7に示す通信端末装置700は、図4に示す実施の形態2に係る通信端末装置400に対して、第2の通信部9の代わりに第2の通信部30を有し、R/W設置場所地図データベース7の代わりにR/W設置場所地図データベース31を有し、通信方式データベース5の代わりに通信方式データベース32を有するとともに、サービスデータベース23の代わりにサービスデータベース33を有する。なお、図7において、図1及び図4と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
通信端末装置700は、アンテナ1と、選択式整合回路2と、第1の通信部3と、座標照合部6と、GPS受信部8と、通信プロトコル認識部21と、サービス判定部22と、通信方式選択部24と、第2の通信部30と、R/W設置場所地図データベース31と、通信方式データベース32と、サービスデータベース33とから主に構成される。
【0049】
第2の通信部30は、携帯電話で用いられる通信方式により通信を行い、通信端末装置700の現在の位置情報を取得する。そして、第2の通信部30は、取得した位置情報を座標照合部6へ出力する。また、第2の通信部30は、R/W設置場所地図データを、携帯電話網を介して取得する。また、第2の通信部30は、R/Wの種別と通信方式データとを対応付けたデータを、携帯電話網を介して取得する。また、第2の通信部30は、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを、携帯電話網を介して取得する。また、第2の通信部30は、取得したR/W設置場所地図データを、R/W設置場所地図データベース31に書き込む。また、第2の通信部30は、取得したR/Wの種別と通信方式データとを対応付けたデータを、通信方式データベース32に書き込む。また、第2の通信部30は、取得したサービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを、サービスデータベース33に書き込む。第2の通信部30は、例えば、新駅の開業またはコンビニエンスストアの新規出店等の際に、各データベースに格納する上記のデータまたは情報を取得する。
【0050】
R/W設置場所地図データベース31は、R/W装置の種別とR/Wの設置場所とを対応付けたR/W設置場所地図データを格納するデータベースである。また、R/W設置場所地図データベース31は、第2の通信部30により取得した、R/W装置の設置場所の情報を格納する。
【0051】
通信方式データベース32は、R/Wの種別と通信方式データとを対応付けたデータを格納するデータベースである。また、通信方式データベース32は、第2の通信部30により取得した、R/W装置の種別と対応付けられた通信方式データを格納する。
【0052】
サービスデータベース33は、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータをデータベースとして格納する。また、サービスデータベース33は、第2の通信部30により取得した、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを格納する。これにより、サービスデータベース33は、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを適宜更新することができる。
【0053】
座標照合部6は、GPS受信部8より取得した座標データと、第2の通信部30より取得した位置情報と、R/W設置場所地図データベース31より取得したR/W設置場所地図データとに基づいて、通信端末装置700の周辺に存在するR/W装置を探索して特定する。そして、座標照合部6は、特定したR/W装置の情報を探索結果として通信方式選択部24へ出力する。
【0054】
サービス判定部22は、通信プロトコル認識部21から取得した識別結果を用いて、サービスデータベース33に格納されるデータを参照することにより、サービスの継続使用の有無を判定する。そして、サービス判定部22は、判定結果を通信方式選択部24へ出力する。
【0055】
通信方式選択部24は、通信端末装置700の周辺に存在するR/W装置の情報を、座標照合部6から取得する。また、通信方式選択部24は、取得したR/W装置の情報を用いて通信方式データベース32を参照することにより、通信方式データを取得して、座標照合部6において特定したR/W装置の通信方式を特定する。また、通信方式選択部24は、特定した通信方式の対向するR/W装置に対するアンテナ整合を適した状態にするために、選択式整合回路2を制御する。この際、通信方式選択部24は、サービス判定部22において判定されたサービスの継続使用の有無の判定結果に基づいて、選択式整合回路2の制御状態を変更する。具体的には、通信方式選択部24は、判定結果が継続使用無しの場合には、上記の実施の形態1と同様に座標照合部6の探索結果を用いて選択式整合回路2を制御する。また、通信方式選択部24は、判定結果が継続使用有りの場合には、座標照合部6の探索結果に関わらず、選択式整合回路2の制御状態を維持する。
【0056】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1及び実施の形態2の効果に加えて、R/W装置の設置場所の更新、使用される通信方式の追加、またはサービスの継続使用の条件変更の際などに、携帯電話網を使用してデータベースを最新のデータに更新することができる。この結果、使用環境に変化があった状態であっても安定した通信を行うことができる。
【0057】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4に係る通信端末装置800の構成を示すブロック図である。
【0058】
図8に示す通信端末装置800は、図7に示す実施の形態3に係る通信端末装置700に対して、第1の通信部3の代わりに第1の通信部40を有する。なお、図8において、図1、図4及び図7と同一構成である部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
通信端末装置800は、アンテナ1と、選択式整合回路2と、座標照合部6と、GPS受信部8と、通信プロトコル認識部21と、サービス判定部22と、通信方式選択部24と、第2の通信部30と、R/W設置場所地図データベース31と、通信方式データベース32と、サービスデータベース33と、第1の通信部40とから主に構成される。
【0060】
第1の通信部40は、アンテナ1により受信した信号を、選択式整合回路2を介して取得し、取得した信号を周波数変換、復調及び復号して通信プロトコル認識部21へ出力する。第1の通信部40は、例えばNFC通信を行う際の上記の処理を行う。
【0061】
また、第1の通信部40は、R/W設置場所地図データを、NFC通信網を介して取得する。また、第1の通信部40は、R/Wの種別と通信方式データとを対応付けたデータを、NFC通信網を介して取得する。また、第1の通信部40は、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを、NFC通信網を介して取得する。また、第1の通信部40は、取得したR/W設置場所地図データを、R/W設置場所地図データベース31に書き込む。また、第1の通信部40は、取得したR/Wの種別と通信方式データとを対応付けたデータを、通信方式データベース32に書き込む。また、第1の通信部40は、取得したサービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを、サービスデータベース33に書き込む。第1の通信部40は、例えば、新駅の開業またはコンビニエンスストアの新規出店等の際に、各データベースに格納する上記のデータまたは情報を取得する。
【0062】
通信プロトコル認識部21は、第1の通信部40から取得した信号を解析して通信方式を識別し、識別結果をサービス判定部22へ出力する。
【0063】
R/W設置場所地図データベース31は、設置されたR/Wの種別とR/Wの設置場所とを対応付けたR/W設置場所地図データを格納するデータベースである。また、R/W設置場所地図データベース31は、第2の通信部30により取得した、R/W装置の設置場所の情報を格納する。また、R/W設置場所地図データベース31は、第1の通信部40により取得した、R/W装置の設置場所の情報を格納する。
【0064】
通信方式データベース32は、R/Wの種別と通信方式データとを対応付けたデータを格納するデータベースである。また、通信方式データベース32は、第2の通信部30により取得した、R/W装置の種別と対応付けられた通信方式データを格納する。また、通信方式データベース32は、第1の通信部40により取得した、R/W装置の種別と対応付けられた通信方式データを格納する。
【0065】
サービスデータベース33は、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータをデータベースとして格納する。また、サービスデータベース33は、第2の通信部30により取得した、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを格納する。また、サービスデータベース33は、第2の通信部30により取得した、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを格納する。これにより、サービスデータベース33は、サービスと、使用状態と、サービスの継続使用の有無の情報とを対応付けたデータを適宜更新することができる。
【0066】
このように、本実施の形態によれば、上記の実施の形態1〜実施の形態3の効果に加えて、第2の通信部によりデータベースが更新できない状態、または第2の通信部の機能が無い構成であっても、データベースのデータを最新状態に更新することができる。この結果、使用環境に変化があった状態であっても安定した通信を行うことができる。
【0067】
なお、上記の実施の形態1〜実施の形態4において、上述した実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施し得るものである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明にかかる通信端末装置及び通信方法は、特に複数の外部の通信機器との間での電磁誘導を使用した近接通信を行うのに好適である。
【符号の説明】
【0069】
1 アンテナ
2 選択式整合回路
3、40 第1の通信部
4、24 通信方式選択部
5、32 通信方式データベース
6 座標照合部
7、31 R/W設置場所地図データベース
8 GPS受信部
9、30 第2の通信部
21 通信プロトコル認識部
22 サービス判定部
23、33 サービスデータベース
100、400、700、800 通信端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導により近接通信を行う第1の通信手段と、
現在の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
リーダライタ装置の設置場所の情報を記憶する第1の記憶手段と
前記設置場所の情報と前記位置情報とに基づいて、リーダライタ装置を特定する照合手段と、
リーダライタ装置の通信方式の情報を記憶する第2の記憶手段と、
前記照合手段により特定したリーダライタ装置に対応する前記通信方式を、前記通信方式の情報より選択する選択手段と、
前記近接通信の際に、前記選択手段により選択した前記通信方式の共振周波数で共振させる整合回路と、
を有する通信端末装置。
【請求項2】
前記近接通信の受信信号を解析して前記近接通信で使用する通信プロトコルを判別する判別手段と、
通信プロトコルに従った前記近接通信により提供されるサービスの使用状態と前記共振周波数を維持するか否かの情報とを対応付けたサービス情報を記憶する第3の記憶手段とをさらに具備し、
前記整合回路は、前記判別手段により判別した通信プロトコルと前記サービス情報とに基づいて、前記共振周波数での共振を維持する請求項1記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記設置場所の情報または前記通信方式の情報を携帯電話網を介して取得し、取得した前記設置場所の情報を前記第1の記憶手段に記憶して前記設置場所の情報を更新し、取得した前記通信方式の情報を前記第2の記憶手段に記憶して前記通信方式の情報を更新する第2の通信手段をさらに具備する請求項1記載の通信端末装置。
【請求項4】
前記第1の通信手段は、前記近接通信により前記設置場所の情報または前記通信方式の情報を取得し、取得した前記設置場所の情報を前記第1の記憶手段に記憶して前記設置場所の情報を更新し、取得した前記通信方式の情報を前記第2の記憶手段に記憶して前記通信方式の情報を更新する請求項1記載の通信端末装置。
【請求項5】
リーダライタ装置と通信する通信端末装置における通信方法であって、
電磁誘導により近接通信を行うステップと、
現在の位置情報を取得するステップと、
記憶手段に記憶したリーダライタ装置の設置場所の情報と前記位置情報とに基づいて、リーダライタ装置を特定するステップと、
前記照合手段により特定したリーダライタ装置に対応する通信方式を、記憶手段に記憶したリーダライタ装置の通信方式の情報より選択するステップと、
前記近接通信の際に、前記選択した通信方式の共振周波数で共振させるステップと、
を有する通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−217043(P2011−217043A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82032(P2010−82032)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】