説明

通信装置およびその制御方法

【課題】通信装置において、通信を途絶えさせることなく通信処理の担当を通信処理手段からメイン処理手段に切替える技術を提供する。
【解決手段】通信装置は、外部装置と通信するための通信手段と、通信装置における全体の制御を行うメイン処理手段と、通信手段による通信のための通信処理を行う通信処理手段と、メイン処理手段と前記通信処理手段とのいずれからも情報の書込み及び読出しが可能な格納手段と、通信処理の担当を前記通信処理手段からメイン処理手段に切替える切替え手段とを備え、通信処理手段が、切替え手段により通信処理の担当を切替える場合に切替え前の通信処理に使用されていた通信パラメータを格納手段に格納し、メイン処理手段が、格納手段に格納された通信パラメータを参照することにより、切替え後の通信処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の中央演算処理ユニットを備える通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機能を有する情報処理装置において、処理するデータおよび通信するデータ量が増大するのに伴い、通信や情報処理の性能向上が必要となってきている。そこで、特許文献1では、情報処理性能向上のために複数の中央演算処理ユニット(以下「CPU」という)を内蔵するマルチCPU方式が記載されている。
【0003】
一方、機能向上のために、通信機能を有する情報処理装置に複数のCPUが搭載されると、通信処理や情報処理中にCPUの負荷が軽くなり、動作していないCPUもオフせずに常にオン状態にするため、電力が無駄に消費されていた。そこで、特許文献2では、複数の機能ブロック構成を有する電子機器において、電力を無駄に消費しないように電子回路がブロックに分けられ、ブロックごとに電源をオン/オフ制御することで、電力を制御する技術が記載されている。
【0004】
CPUの消費電力の節約のために、CPUの動作クロックを変更することが考えられるが、動作クロックを低く設定しても、動作クロック周波数には下限があるので、その下限クロック周波数以上の電力の節約ができないという課題がある。そこで、特許文献3では、通信装置において、通信インターフェースの転送速度に応じて、CPUの動作クロックを変更する省電力技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−231088号公報
【特許文献2】特開平11−327706号公報
【特許文献3】特開2000−349854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、マルチCPU方式を採用する通信装置において、電力消費を節約するために、通信のための処理を行っていたCPUの電源をオフすると、一時的に通信が途絶えてしまうという課題があった。
【0007】
この課題を解決するため、本発明は、通信装置における全体の制御を行うメイン処理手段と通信手段による通信のための通信処理を行う通信処理手段とを有する通信装置において、通信を途絶えさせることなく通信処理の担当を通信処理手段からメイン処理手段に切替え可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の通信装置は、外部装置と通信するための通信手段と、前記通信装置における全体の制御を行うメイン処理手段と、前記通信手段による通信のための通信処理を行う通信処理手段と、前記メイン処理手段と前記通信処理手段とのいずれからも情報の書込み及び読だしが可能な格納手段と、前記通信処理の担当を前記通信処理手段から前記メイン処理手段に切替える切替え手段とを備え、前記通信処理手段が、前記切替え手段により前記通信処理の担当を切替える場合に、切替え前の通信処理に使用されていた通信パラメータを前記格納手段に格納し、前記メイン処理手段が、前記格納手段に格納された通信パラメータを参照することにより切替え後の通信処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信装置において、通信を途絶えさせることなく通信処理の担当を通信処理手段からメイン処理手段に切替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係る通信装置の構成図である。
【図2】実施形態1に係るプロセッサシステムのメモリマップを示す図である。
【図3】実施形態1に係る通信処理の切替え処理を説明するフローチャートである。
【図4】実施形態2に係る通信処理の切替え処理を説明するフローチャートである。
【図5】実施形態2に係る電源種別及び情報転送速度に応じた、通信処理を担当するCPUを示す図である。
【図6】実施形態3に係る通信処理の切替え処理を説明するフローチャートである。
【図7】実施形態3に係るQoS種別及び通信モードに応じた、通信処理を担当するCPUを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態1>
本発明の実施形態に係る、パケットデータなどの情報転送速度の可変な通信装置の構成を、図1を参照して説明する。通信装置は、プロセッサシステム1、IEEE802.11nに準拠し、外部の機器との通信を担う送受信部としての無線LAN通信部2、メモリ3、外部接続部4、出力部5、入力部6および電源監視部7から構成される。ここで、外部接続部4は、当該通信装置の外部と接続する。出力部5は、当該通信装置の状態やデータを出力する。入力部6は、ユーザーにより指示される各種設定や、データを入力する。電源監視部7は、電源種別やバッテリ残量を把握する。
【0012】
プロセッサシステム1は、次の構成をとる。メイン処理を行うメインCPU102は、プロセッサシステム1の全体の制御を担う。例えば、通信装置がプリンタの場合、メインCPU102は印刷に関する各種処理を行い、通信装置がカメラの場合、メインCPU102は撮像に関する各種処理を行う。通信専用CPU101は、無線LAN通信部2による通信のための処理(以下、通信処理)を行う。ここで、通信処理とは、TCP/IP処理、暗号鍵の交換等のWPA(Wi-Fi Protected Access)処理、IPアドレス解決処理等である。
【0013】
一般的に通信処理は処理負荷が大きく、メインCPU102が通信処理を行うと印刷や撮像等のメイン処理に影響を与える可能性があるので、通信専用CPU101が通信処理を担当する。一方、本実施形態では、情報転送速度が所定の閾値よりも低い場合には、通信処理を通信専用CPU101ではなく、メインCPU101が行うことで、スループットを維持しつつ通信装置全体の省電力化を図っている。
【0014】
共有レジスタ103は、通信専用CPU101とメインCPU102との間で情報を共有するためのレジスタである。メモリコントローラ104は、メモリ3の書込みおよび読出しを制御する。無線LAN通信部用インターフェース105は、無線LAN通信部2との間でデータを授受する。入力部用インターフェース106は、入力部6との間でデータを授受する。出力部用インターフェース107は、出力部5との間でデータを授受する。外部接続部用インターフェース108は、外部接続部4との間でデータを授受する。通信専用CPU用電源制御部109は、通信専用CPU101への電力供給を制御する。
【0015】
通信専用バス110は、通信専用CPU101と無線LAN通信部用インターフェース105、転送速度検知部113およびバスブリッジ112をつなぐバスである。メインバス111は、入力部用インターフェース106、出力部用インターフェース107、外部接続部用インターフェース108、共有レジスタ103、電源監視部7およびメモリコントローラ104の間を相互につなぐバスである。
【0016】
バスブリッジ112は、通信専用バスを流れるデータとメインバスを流れるデータとを中継する。転送速度検知部113は、無線LAN通信部2が通知する情報転送速度を受け取り、後述のメモリマップ上のOx7FFFFFFF番地に、その値を書き込む。
【0017】
図2は、実施形態1に係るプロセッサシステムのメモリ3におけるメモリマップである。0x00000000〜0FFFFFFF番地は、通信専用CPU用の通信処理プログラム実行領域である。0x10000000〜0x1FFFFFFF番地は、メインCPU用の通信処理プログラム実行領域である。0x7FFF0000〜0x7FFF3FFF番地は、通信処理切替え時用データ保持領域である。これは、通信処理をメインCPUと通信専用CPU間で切替える際に、それまでの通信処理を途絶えさせないために使用される。0x7FFF4000〜0x7FFFFFFF番地は、CPU間通信用データ保持領域である。これは、メインCPUと通信専用CPUとの間で所定のデータを共有するために使用される。
【0018】
図1および図2の構成における通信処理の切替え処理に関して、図3を用いてメインCPU102の動作を説明する。ここでは、通信処理を切替える情報転送速度の閾値を、54Mbpsと仮定して説明する。S301で、メインCPU102は、メモリ3の0x7FFFFFFF番地に書かれている、現在の情報転送速度を確認する。そして情報転送速度が54Mbpsを超えているかどうかを確認する。
【0019】
S301がYesの場合、S302へ進む。S302で、メインCPU102は、自身で通信処理を現在実行しているかどうかを確認する。実行していない(No)場合は、そのまま終了する。実行している(Yes)場合はS303へ進む。S303で、メインCPU102は、通信処理を通信専用CPU101へ切替えるための処理をおこなう。
【0020】
S301がNoの場合、S304へ進む。S304で、メインCPU102は、通信専用CPU101が通信処理を実行中かを確認する。現在通信専用CPUで通信処理を実行中でない場合は、そのまま終了する。現在通信専用CPU101で通信処理を実行中の場合は、S305に進む。S305で、メインCPU102は、通信処理を自身で行うための切替え処理をおこなう。S306で、メインCPU102は、通信専用CPU101の電源をオフするように通信専用CPU用電源制御部109に指示する。
【0021】
情報転送速度が小さい場合は、通信専用CPU101が通信処理を担当してもスループットの向上はそれほど望めないため、余計な電力を消費することになりかねない。また、メインCPU102が通信処理を行ったとしても、スループットにほとんど影響はないと考えられる。そこで、情報転送速度が所定の閾値よりも小さい場合には、メインCPU102が通信処理を担当し、通信専用CPU101への電力供給を停止することにより、スループットを維持しつつ電力消費を削減することができる。
【0022】
S303において、メインCPU102から通信専用CPU101への通信処理の切替えは、次のように行われる。まずメインCPU102は、現在の通信処理を途絶えさせず継承させるために必要な通信処理の通信パラメータであるパケットシーケンス番号や動的暗号キー等の現在のパラメータ値を通信処理切替え時用データ保持領域(0x7FFF0000〜0x7FFF4000番地)に書込み格納する。通信専用CPU101は、この領域に書かれた値を参照することにより、通信処理を途絶えさせず継続させることが可能となる。
【0023】
また、CPUの切替え後、通信処理は、通信専用CPU101が担当することになる。このため、システムとして適切に動作させるために、CPU101間通信用データ保持領域(0x7FFF4000〜0x7FFFFFFF番地)に、SSID (Service Set Identifier)や、IPアドレス等の現在の値を書き込む。
【0024】
S305において、通信専用CPU101からメインCPU102への通信処理の切替えは次のように行われる。通信専用CPU101は、現在の通信処理を途絶えさせず継承させるために必要な通信処理の通信パラメータであるパケットシーケンス番号や動的暗号キーを、通信処理切替え時用データ保持領域(0x7FFF0000〜0x7FFF3FFF番地)に書込み格納する。メインCPU102は、この領域に書き込まれた値を参照することにより、通信処理を途絶えさせず継承させることが可能となる。
【0025】
以上の処理により、情報転送速度が閾値を超える場合であれば、高速通信させるために通信専用CPU101が通信処理を担当し、情報転送速度が閾値以下であれば、メインCPU102が通信処理を担当するよう切替えられる。情報転送速度が大きい場合は通信専用CPU101が通信処理を行うので、メインCPU102による処理負荷が軽減される。一方、情報転送速度が小さい場合には、メインCPU102が通信処理を行い、通信専用CPU101への電力供給をオフするので、消費電力を抑制することができる。
【0026】
転送速度検知部113は、実施形態1では独立して備えられているが、この検知部は、通信専用CPU101または、メインCPU102上のプログラムなどで実現しても良い。また、上記説明では、メインCPU102が通信処理を担当する際には通信専用CPU101への電力供給をオフしていたが、完全にオフにしなくてもよく、一部の回路への電力供給のみオフするようにしてもよい。すなわち、通信専用CPU用電源制御部109が通信専用CPU101への電力供給を制限すればよい。
【0027】
このように、本実施形態によれば、情報転送速度に応じて通信処理の担当をメインCPU102と通信専用CPU101間で切替えることにより、スループットを維持しつつ消費電力を削減することができる。また、通信処理の担当を切替える際にはパケットシーケンス番号等の通信パラメータをメモリ3上の所定の領域に書き込むことで、通信処理を途絶えさせず継続させることが可能となる。なお、上記通信パラメータを格納する場所として、メモリ3の代わりに共有レジスタ103を使用しても構わない。
【0028】
<実施形態2>
実施形態に係る通信装置の構成は、図1に示す構成と同じである。実施形態2では、通信装置は、電力供給状態、すなわちバッテリで動作するバッテリモードにあるか、あるいは外部電源で動作する通常電源モードにあるかによって、通信処理の担当の切替え条件である情報転送速度の閾値を変更する例を示す。図4は、この切替え処理のフローチャートを示す。
【0029】
切替え条件の決定方法について、メインCPU102の動作を、図4に従って説明する。この例では、通信処理を切替える通信速度の閾値を、第1閾値の50Mbpsまたは第2閾値の100Mbpsであると仮定して説明する。S401で、最初に、メインCPU102は、電力制御のための電源監視部7からの情報に基づき、通信装置が通常電源モードで駆動中かあるいはバッテリモードで駆動中かを判断する。バッテリモードで駆動中であれば、ステップ402へ進む。バッテリ駆動中でなければ、ステップ403へ進む。
【0030】
S402で、メインCPU102は、情報転送速度が100Mbps以上の場合に通信専用CPU101が通信処理を行い、100Mbpsを超えない場合はメインCPU102が通信処理を行うことに決定する。すなわち、通信処理を切替える情報転送速度の閾値を100Mbpsに決定する。
【0031】
S403で、メインCPU102は、情報転送速度が50Mbpsの閾値以上の場合に通信専用CPU101が通信処理を行い、50Mbpsを超えない場合はメインCPU102が通信処理を行うことに決定する。すなわち、通信処理を切替える情報転送速度の閾値を50Mbpsに決定する。
【0032】
そして、メインCPU102は、決定した閾値に基づいて、実施形態1で説明した図3の処理を行う。通信処理をメインCPU102と通信専用CPU101間で切替える動作は、実施形態1で説明した動作と同じであるため説明を省略する。
【0033】
このように、実施形態2では、電源種別及び情報転送速度に応じて通信処理を担当するCPUが異なるが、その関係を図5に示す。図に示されるように、バッテリ駆動時は、情報伝送速度が第2閾値である100Mbpsを超えない場合には、通信処理をメインCPU102が行い、第2閾値以上の場合には、通信処理を通信専用CPU101が行うよう切替えられる。そして、電源接続時の通常電源モード時は、情報転送速度が第1閾値以上の場合には、通信処理を通信専用CPU101が行い、第1閾値を超えない場合には、メインCPU102が通信処理を行うよう切替えられる。
【0034】
通信専用CPU101が使用されないときは、実施形態1と同様に、通信専用CPUの電源はオフされる。これにより、バッテリ駆動時は、できるだけ通信専用CPU101を使する必要がなくなるので、通信装置は、省電力動作が可能となる。なお、上記説明では電源種別に応じて情報転送速度の閾値を変更する例について説明したが、バッテリ残量も加味して情報伝送速度の閾値を変更するようにしてもよい。例えば電源接続時の情報転送速度の閾値を50Mbps、バッテリ駆動時でバッテリ残量が所定の閾値よりも大きい時は100Mbps、バッテリ残量が該閾値よりも小さい時は150Mbps、というようにしてもよい。
【0035】
<実施形態3>
本実施形態では、情報転送速度以外の情報に基づいて、通信処理を担当するCPUを切替える例について説明する。本実施形態に係る通信装置の構成は、図1に示す構成と同じである。なお、本実施形態の通信装置はIEEE802.11eにも準拠し、QoS(Quality of Service)制御を行うことができるものとする。802.11eでは、通信データの種別に応じて送信優先度が異なっており、送信優先度は音声>ビデオ>ベストエフォート>バックグラウンドの順である。
【0036】
また、通信装置は、通信モードとして、IEEE802.11規格の802.11b、802.11g、802.11n方式のいずれかにより通信するものとする。ここでは、通信データの種別の識別の結果に応じて、マルチCPU方式のCPU切替え処理が制御される例を示す。図6は、この切替え処理のフローチャートを示す。
【0037】
通信処理の切替え処理について、メインCPU102の動作を、図6に従って説明する。S601で、メインCPU102は、現在の通信モードが11bまたは11gモード(第1通信モード)であるかを検知し判断する。現在の通信モードが11bまたは11gモードである場合、S602へ進む。11bまたは11gでない通信モード(第2通信モード)、すなわち11nの場合、S605へ進む。
【0038】
S602で、メインCPU102は、現在の通信データ種別が『音声』であるかを判断する。『音声』である場合、S603へ進む。『音声』でない場合、すなわち、『ビデオ』、『ベストエフォート』、『バックグラウンド』のいずれかである場合はS604へ進む。S603で、メインCPU102は、現在、通信専用CPU101が使用されていない場合、通信専用CPU101に切替える処理を行う。S604で、メインCPU102は、現在、通信専用CPU101が使用されている場合、通信処理を自身に切替える処理を行う。
【0039】
S605で、メインCPU102は、現在の通信データ種別が『バックグランド』であるかを判断する。『バックグランド』である場合、S606へ進む。『バックグランド』でない場合、つまり『音声』、『ビデオ』、『ベストエフォート』のいずれかである場合はS607へ進む。S606で、メインCPU102は、現在、通信専用CPU101が使用されている場合、通信処理を自身に切替える処理を行う。S607で、メインCPU102は、現在、通信専用CPU101が使用されていない場合、通信専用CPU101に切替える処理を行う。
【0040】
従って、以上のフローチャートによる処理結果をまとめると、通信モードおよび通信データ種別に応じて通信処理を担当するCPUの関係は、図7に示すようになる。11bまたは11g(第1通信モード)により通信している場合には、通信データの種別が音声である場合のみ通信専用CPU101が通信処理を担当し、それ以外の種別の場合はメインCPU102が担当する。
【0041】
11bまたは11gにより通信している際には、高速な無線通信ができないため、通信専用CPU101を使用したとしても、消費電力に対するスループットの向上があまり期待できない可能性がある。そこで、音声のように、転送遅延をできるだけ小さくする必要があるデータ種別のときだけ通信専用CPU101を使用することにより、余計な電力消費を抑えることができる。
【0042】
一方、11nで通信している際は、高速な無線通信ができるため、データ種別が音声の時だけでなく、ビデオ、バックグランドのときも通信専用CPU101を使用する。ただし、データ種別がバックグランドのときには、通信を高速で処理する必要がないため、11nで通信していたとしてもメインCPU102が通信処理に使用される。通信専用CPU101が使用されないときは、実施形態1および2と同様に、通信専用CPU101の電源はオフされ、省電力動作が可能となることは言うまでもない。
【0043】
なお、S602では、データ種別が音声の場合のみ通信専用CPU101を使用するものとしたが、ビデオの送信時もできるだけ転送遅延を抑えた方がよいため、通信専用CPU101を使用するようにしてもよい。また、S605では、データ種別がバックグラウンドの場合のみメインCPU102を使用するものとして説明したが、ベストエフォートの場合もメインCPU102を使用するようにしてもよい。すなわち、切替え条件となるデータ種別は適宜変更することが可能である。
【0044】
以上の構成により、実施形態3では、通信データの種別に応じて、通信専用CPU101の使用を制御することで、省電力での動作が可能となるとともに、音声通信時のデータ転送の遅延を小さくできるという効果を生み出す。また、通信モードに応じて、通信処理の担当を切替えるデータ種別を変更することにより、スループットの維持と省電力化とを実現することができる。
【0045】
なお、上記説明では通信モードに応じて、通信処理の担当を切替えるデータ種別を変更するものとしたが、情報転送速度に応じて変更するようにしてもよい。例えば、図6のS601において、通信モードを判定する代わりに、情報転送速度が所定の閾値以上か否かを判定するようにしてもよい。以上で述べた通信を担当するCPUの切替え処理は、メインCPUのみで実行されるものに限定されず、現在、通信処理を実行しているCPUが実行する形態でも良い。
【0046】
また、切替えの条件は、以上で述べたものに限定されず、802.11nのチャネルボンディング技術及びMIMO(Multi-Input Multi Output)技術の使用の有無によって、通信を担当するCPUの切替え処理を実行しても良い。なお、チャネルボンディングの技術とは、無線LANの隣接する2つのチャンネルを束ねて通信する技術であり、通常は1チャンネル分の20MHz幅で通信するところを2チャンネル分の40MHzで通信することで、伝送速度を2倍強にする技術である。また、MIMOとは、送信データをあらかじめ複数の信号(ストリーム)に分割し,それらを複数のアンテナから同一チャンネルで同時送信する技術である。
【0047】
更に、無線LAN通信部2による通信プロトコルよりも上位層の通信プロトコルであるRTP(Real-time Transport Protocol)の使用の有無によって、通信を担当するCPUの切替え処理を実行しても良い。また、FTP(File Transfer Protocol)、PTP(Picture Transfer Protocol)等の上位層の通信プロトコルを利用して、CPUの切替え処理を実行しても良い。すなわち、無線LAN通信部2による通信プロトコルよりも上位層における所定の通信プロトコルを使用しているか否かに従って、所定のCPUに切替えるようにしても良い。
【0048】
また、上述した複数の条件を組み合わせてメインCPU102と通信専用CPU102間で通信処理を切替えるようにしても良い。
【0049】
<その他の実施例>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
外部装置と通信するための通信手段と、
前記通信装置における全体の制御を行うメイン処理手段と、
前記通信手段による通信のための通信処理を行う通信処理手段と、
前記メイン処理手段と前記通信処理手段とのいずれからも情報の書込み及び読出しが可能な格納手段と、
前記通信処理の担当を前記通信処理手段から前記メイン処理手段に切替える切替え手段と
を備え、
前記通信処理手段が、前記切替え手段により前記通信処理の担当を切替える場合に、切替え前の通信処理に使用されていた通信パラメータを前記格納手段に格納し、
前記メイン処理手段が、前記格納手段に格納された通信パラメータを参照することにより切替え後の通信処理を行う
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信パラメータは、パケットシーケンス番号、又は暗号キーを少なくとも含むことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
更に、前記通信装置は、前記切替え手段による切替えに応じて、前記通信処理手段への電力供給を制限する電力制御手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
更に、前記通信装置は、前記通信手段における情報転送速度を検知する検知手段を備え、
前記切替え手段が、前記検知手段により検知した情報転送速度に応じて、前記通信処理の担当を切替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記切替え手段は、前記検知手段により検知した情報転送速度が所定の閾値よりも小さい場合に、前記通信処理の担当を切替えることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
更に、前記通信装置は前記通信装置への電力供給状態を確認する確認手段を備え、
前記確認手段により確認した電力供給状態に応じて、前記切替え手段により切替える際の前記閾値の値を変更することを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
更に、前記通信装置は前記通信手段により通信するデータの種別を識別する識別手段を備え、
前記切替え手段が、前記識別手段により識別したデータの種別に応じて、前記通信に関する処理の担当を切替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記通信手段により通信する際の通信モードに応じて、前記切替え手段により切替える際の前記データの種別を変更することを特徴とする請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記切替え手段が、前記通信手段が隣接する複数のチャンネルを束ねて通信するチャネルボンディングを使用して通信しているか否かに応じて、前記通信処理の担当を切替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項10】
前記切替え手段が、前記通信手段がMIMO(Multi-Input Multi Output)を使用して通信しているか否かに応じて、前記通信処理の担当を切替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記切替え手段が、前記通信手段による通信よりも上位層における所定の通信プロトコルを使用しているか否かに応じて、前記通信処理の担当を切替えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項12】
外部装置と通信するための通信手段と、通信装置における全体の制御を行うメイン処理手段と、前記通信手段による通信のための通信処理を行う通信処理手段と、前記メイン処理手段と前記通信処理手段とのいずれからも情報の書込み及び読出しが可能な格納手段と、を有する通信装置の制御方法であって、
前記通信処理手段が、前記通信処理の担当を前記通信処理手段から前記メイン処理手段に切替える際に、切替え前の通信処理に使用されていた通信パラメータを前記格納手段に格納し、
前記メイン処理手段が、前記格納手段に格納された通信パラメータを参照することにより切替え後の通信処理を行う
ことを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項13】
請求項12記載の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−160140(P2011−160140A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19464(P2010−19464)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】