説明

通信装置及びその制御方法

【課題】ファイルを保護しつつ、使い勝手の良い通信装置を提供すること。
【解決手段】実施形態の通信装置20は、第1インターフェース35と、無線通信部21と、メモリ部24とを備える。メモリ部24は、第1インターフェース35からの第1アクセスのために用いられる第1領域PT1と、無線通信部21からの第2アクセスのために用いられる第2領域PT2とを備える。第1アクセスによる第2領域PT2への書き込み、及び第2アクセスによる第1領域PT1への書き込みは禁止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信装置及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リソースを制御するホストは唯一であった。例えばデジタルカメラに搭載されたSDTMメモリカードの場合、デジタルカメラのみがSDメモリカード内のファイルを制御する。
【0003】
しかし近年、無線LAN機能を搭載したSDメモリカードが登場してきている。このようなメモリカードでは、SDメモリ部に対して、デジタルカメラと無線LAN機能の2つのホストが存在する。そして、この2つのホストが、SDメモリ部のファイルに同時にアクセスすると、ファイル管理テーブルが同時に変更され、ファイルが破壊されるおそれがある。
【0004】
そのため、SDメモリ部に複数のホストから同時にアクセスできないように、デジタルカメラのOSによって排他制御が行われる。これにより、SDメモリ部に対するアクセスは、いずれか1つのホストに限定される。
【0005】
しかしながら、以上の構成であると、ファイルが破壊されることを防止出来るが、SDメモリカードの使い勝手が非常に悪くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−216011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ファイルを保護しつつ、使い勝手の良い通信装置及びその制御方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の無線通信装置は、第1インターフェースと、無線通信部と、メモリ部とを備える。メモリ部は、第1インターフェースからの第1アクセスのために用いられる第1領域と、無線通信部からの第2アクセスのために用いられる第2領域とを備える。第1アクセスによる第2領域への書き込み、及び第2アクセスによる第1領域への書き込みは禁止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態に係るメモリカードのブロック図。
【図2】第1実施形態に係るメモリカードのブロック図。
【図3】第1実施形態に係るNAND型フラッシュメモリのメモリ空間の概念図。
【図4】第1実施形態に係るマスターブートレコードの模式図。
【図5】第1実施形態に係るデジタルカメラの動作を示すフローチャート。
【図6】第1実施形態に係る無線通信部の動作を示すフローチャート。
【図7】第1実施形態に係る無線通信の模式図。
【図8】第2実施形態に係るメモリカードのブロック図。
【図9】第2実施形態に係るメモリカードのブロック図。
【図10】第2実施形態に係るNAND型フラッシュメモリのメモリ空間の概念図。
【図11】第2実施形態に係るファイルシステムコントローラの動作を示すフローチャート。
【図12】第2実施形態に係るNAND型フラッシュメモリのメモリ空間の概念図。
【図13】第2実施形態に係るNAND型フラッシュメモリのメモリ空間の概念図。
【図14】第3実施形態に係る無線通信の模式図。
【図15】SDコマンドの構成を示す概念図。
【図16】第3実施形態に係るメモリカードの動作を示すフローチャート。
【図17】第3実施形態に係るデータ書き込み方法を示すタイミングチャート。
【図18】第3実施形態に係るデータ読み出し方法を示すタイミングチャート。
【図19】第4実施形態に係るメモリカードのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態につき図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0011】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る通信装置及びその制御方法について、以下SDメモリカードを例に挙げて説明する。
【0012】
1.構成について
1.1 デジタルカメラについて
図1は、本実施形態に係るSDメモリカード(以下、単にメモリカードと呼ぶことがある)、並びにSDメモリカードの挿入されたデジタルカメラのブロック図である。
【0013】
図示するように、デジタルカメラ10はメモリカード20を有する。メモリカード20は、デジタルカメラ10に設けられた例えばカードスロットに挿入されて、デジタルカメラ10のSDホストインターフェース11に有線接続される。SDホストインターフェース11は、デジタルカメラ10とメモリカード20との間の通信を司る。そしてデジタルカメラ10は、SDホストインターフェース11を介してメモリカード20と通信する。
【0014】
1.2 メモリカードについて
メモリカード20は、SDホストインターフェース11を介してデジタルカメラ10から電源を供給されて動作する。メモリカード20の詳細について、図1及び図2を参照して説明する。図2はメモリカード20のブロック図である。
【0015】
図示するようにメモリカード20は、無線LANチップ21、SDデバイスインターフェース22、NANDコントローラ23、及びNAND型フラッシュメモリ24を備えている。
【0016】
NAND型フラッシュメモリ24は、データを不揮発に記憶する。
【0017】
NANDコントローラ23は、NAND型フラッシュメモリの動作を制御する。すなわち、NAND型フラッシュメモリ24に対するデータの書き込み、読み出し、及び消去等を実行する。
【0018】
SDデバイスインターフェース22は、無線LANチップ21との間の通信を司る。すなわちSDデバイスインターフェース22は、無線LANチップ21からの種々の命令及びデータをNANDコントローラ23へ転送し、またNANDコントローラ23からの種々の命令及びデータを無線LANチップへ転送する。
【0019】
無線LANチップ21は、大まかにはベースバンドチップ30、RF(radio frequency)チップ40、及びアンテナ50を備えている。ベースバンドチップ30は、無線LAN通信によって送受信されるデータのベースバンド処理を行うと共に、NANDコントローラ23への命令及びデータを発行する。RFチップ40は、無線LAN通信によって送受信されるアナログデータを処理する。アンテナ50は、データの送受信を行う。以下、それぞれについて説明する。
【0020】
RFチップ40はRF部41を備える。RF部41は、無線伝送路上で通信を行う際に使用する高周波数帯域の信号の授受を行い、送受信されるアナログデータの増幅等を行う。そして、アンテナ50からデータを送信、または受信する。RF部41は、例えばベースバンドチップ30とは別個のRFチップ40上に形成される。
【0021】
ベースバンドチップ30は、物理部31、MAC(medium access controller)部32、CPU(central processing unit)33、メモリコントローラ34、SDデバイスインターフェース35、SDホストインターフェース36、SRAM37、及びNOR型フラッシュメモリ38を備えている。これらは、同一基板上に形成される。
【0022】
物理部31は、無線LAN通信の送信データ及び受信データの物理層についての処理を行う。すなわち物理部31は、無線LANによるフレームの受信時には、RF部40から与えられる受信信号(アナログ信号)をA/D変換してデジタル信号を得る。更に、このデジタル信号につき復調処理を行う。すなわち、例えば直交周波数分割多重(OFDM:orthogonal frequency division multiplexing)復調及び誤り訂正復号を行って、受信フレームを得る。そして、得られた受信フレームをMAC部32へ出力する。
【0023】
他方、フレームの送信時には、物理部31は、MAC部32から送信フレームを受け取る。そして、受け取った送信フレームの冗長符号化及びOFDM変調を行い、更にD/A変換することによりアナログ信号を得て、このアナログ信号を送信信号としてRFチップ40へ出力する。そして、この送信フレームが、RFチップ40によってアンテナ50から無線送信される。
【0024】
MAC部32は、無線LAN通信の送信データ及び受信データのMAC層についての処理を行う。すなわちMAC部32は、フレームの受信時には、物理部31から受信フレームを受け取る。そして、受信フレームからMACヘッダを取り除いてパケットを組み立てる。なおパケットとは、送受信データがパーソナルコンピュータ等において扱えるデータ構造に組み立てられたものであり、フレームとは、無線通信により通信可能に組み立てられた送受信データのことである。フレームの送信時には、CPU33、またはデジタルカメラ10のSDホストインターフェース11からパケットを受け取る。そして、パケットにMACヘッダを付与して送信フレームを組み立て、これを物理部31へ出力する。
【0025】
CPU33は、オペレーティングシステム(OS)を実行し、無線LANチップ21全体の動作を制御する。そしてCPU33は、無線LANによる送信データ及び受信データについての処理を行う。また、無線LANによって受信したデータをNAND型フラッシュメモリ24に書き込むための処理や、無線LAN通信によって送信すべきデータをNAND型フラッシュメモリ24から読み出し、これを送信するための処理等を行う。
【0026】
メモリコントローラ34は、SRAM37及びその他のメモリ(例えばSDRAM(synchronous DRAM)25)に対するアクセスを制御する。
【0027】
SRAM37及びSDRAM25は、受信データ及び送信データを保持する。これらは、データを保持できる構成であれば良く、その他の半導体メモリであっても良いし、または半導体メモリ以外のハードディスクなどの記憶装置であっても良い。
【0028】
NOR型フラッシュメモリ38は、データを不揮発に記憶し、例えばCPU33が実行するOSを保持する。
【0029】
SDデバイスインターフェース35は、デジタルカメラ10との間の通信を司る。すなわちSDデバイスインターフェース35は、デジタルカメラ10のSDホストインターフェース11からの種々の命令及びデータを受信し、また必要なデータをSDホストインターフェース11へ転送する。
【0030】
SDホストインターフェース36は、NAND型フラッシュメモリ24との間の通信を司る。すなわちSDホストインターフェース36は、SDデバイスインターフェース22へ種々の命令及びデータを転送し、また必要なデータをSDデバイスインターフェース22から受信する。
【0031】
以上の構成において、デジタルカメラ10からメモリカード20に転送される写真や動画は、SDホストインターフェース11及びSDデバイスインターフェース35を介して、SRAM37やSDRAM25に格納される。前述の通り、SRAM37及びSDRAM25へのアクセスは、メモリコントローラ34を介して行われる。
【0032】
SRAM37やSDRAM25に格納されたデータの転送先は2つある。1つは無線LANの接続先である外部の端末(携帯電話、PDA、PC等の無線LAN通信機能を有する通信機器)であり、もう1つはメモリカード20に内蔵されているNAND型フラッシュメモリ24である。
【0033】
無線LANを用いて外部の端末へデータを転送する場合、データはCPU33によって処理され、その後MAC部32及び物理部31を通ってRF部41へ出力される。そしてデータは、最終的にRF部41からアンテナ50へ転送され、無線LANフレームとして送信される。外部の端末からデータを受信する場合には、上記と逆の処理が行われる。
【0034】
また、NAND型フラッシュメモリ24へデータを転送する場合、データはCPU33によって処理され、その後、SDホストインターフェース36及びSDデバイスインターフェース22を介してNANDコントローラ23へ転送される。NANDコントローラ23は、受信したアドレスを論理アドレスから物理アドレスへ変換し、データをNAND型フラッシュメモリ24に書き込む。NAND型フラッシュメモリ24からデータが読み出される場合には、上記と逆の処理が行われる。
【0035】
なお、無線LAN通信に必要とされる処理は,ソフトウェア及びハードウェアのどちらでも実施することが可能である。ハードウェアで実施するのであればその機能はMAC部32及び物理部31が実行し、ソフトウェアで実施するのであればCPU33が実行する。
【0036】
2.NAND型フラッシュメモリ24の管理方法について
次に、NAND型フラッシュメモリ24の管理方法について、図3を用いて説明する。図3は、NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間を示す概念図である。本例では、FAT(File Allocation table)ファイルシステムを用いて管理する場合を例に説明する。
【0037】
図示するように、NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間は、大まかにはマスターブートレコード(MBR:Master Boot Record)と、複数(本例では4個)のパーティションPT1〜PT4を含む。
【0038】
MBRは、例えば512バイトのサイズを有し、4つのパーティションPT1〜PT4に関する情報を保持する。より具体的には、NAND型フラッシュメモリ24が4つのパーティションPT1〜PT4に分割されていること、及び各パーティションPT1〜PT4の先頭クラスタ番号(換言すれば、各パーティションPT1〜PT4の先頭アドレス)の情報を保持する。MBRと第1パーティションPT1との間には、“0”データが書き込まれた領域が設けられる。この領域とMBRは隠しセクタであり、ユーザからは見えない。
【0039】
各パーティションPT1〜PT4は、BIOSパラメータブロック(BPB:BIOS parameter block)、FAT1、FAT2、ルートディレクトリエントリ(RDE:Root Directory Entry)、及びユーザ領域を含む。
【0040】
BPBは、1セクタが何バイトで構成されているか、1クラスタが何セクタで構成されているか、FAT1、FAT2のセクタ数、及びRDEのエントリ数(セクタ数)等の情報を保持する。BPBのサイズは、FATの規格上、512バイトと定められている。BPBは、各パーティションPT1〜PT4の先頭領域に設けられる。従って、BPBの場所(先頭セクタ番号)は、MBRに保持される各パーティションPT1〜PT4の先頭クラスタ番号から把握出来る。
【0041】
FAT1は、どのクラスタが使用中であるか、または未使用であるか、またクラスタチェーンの情報を保持する。すなわち、メモリ空間は、クラスタと呼ばれるある一定のサイズの空間の集合である。そして、書き込まれるデータ(ファイル)がクラスタサイズより大きい場合、クラスタ単位に分割されて記憶される。この際、データが書き込まれるクラスタは連続しない場合がある。すなわち、1つのデータが場所的に離れた複数のクラスタを使って記憶される。この際に、データがどのクラスタに分割されて書き込まれたか(クラスタチェーン)を管理するための管理データが、FATに記憶される。FAT1は、BPBに連続するアドレス領域に格納される。従って、FAT1の場所及びサイズは、BPBの情報から把握出来る。
【0042】
FAT2は、FAT1のバックアップである。FAT1とFAT2から、どのファイルが壊れているかを検出出来る。FAT2は、FAT1に連続するアドレス領域に格納される。従って、FAT2の場所及びサイズも、BPBの情報から把握出来る。
【0043】
RDEは、ルートディレクトリ上のファイルやディレクトリに関する情報を保持する。すなわち、RDEは複数のエントリを有し、各エントリに、ルートディレクトリ上のファイルやディレクトリの、名前、先頭クラスタ、属性、作成時刻、及びファイルサイズ等の情報を保持する。RDEは、FAT2に連続するアドレス領域に格納される。従って、RDEの場所及びサイズも、BPBの情報から把握出来る。
【0044】
以上のBPB、FAT1、FAT2、及びRDEは、FATファイルシステムのための管理情報と言うことが出来る。各パーティションPT1〜PT4の管理情報は、各パーティションPT1〜PT4のユーザ領域の情報を管理するためのものである。
【0045】
ユーザ領域は、正味のユーザデータを保持する領域であり、サブディレクトリもユーザ領域内に設けられる。
【0046】
図4は、上記MBRの構成を示す模式図である。図示するように、MBRの最初の領域にはブートストラップローダ(bootstrap loader)が格納され、それに引き続いてパーティションPT1〜PT4の情報(先頭クラスタ番号等)及びシグニチャが格納される。
【0047】
3.動作について
次に、上記構成のデジタルカメラ10及び無線LANチップ21の動作について説明する。
【0048】
3.1 デジタルカメラ10の動作について
まず、デジタルカメラ10の動作について、図5を参照して説明する。図5はデジタルカメラ10がNAND型フラッシュメモリ24を使用する際の動作を示すフローチャートである。
【0049】
まずデジタルカメラ10が起動されると(ステップS10)、デジタルカメラ10内のプロセッサは、デジタルカメラ10内のメモリからOSを読み出してこれを起動する(ステップS11)。
【0050】
デジタルカメラ10のプロセッサによって実行されるOSは、NAND型フラッシュメモリ24にアクセスし、MBRを読み出し(ステップS12)、これを解析する(ステップS13)。
【0051】
MBRを解析した結果、パーティションが2つ以上ある場合(ステップS14、YES)、OSは、そのうちの1つである第1パーティションを、データの読み出し及び書き込み(及び消去)可能な領域としてマウントする(見えるようにする)(ステップS15)。マウントとは、パーティションを認識する作業のことである。またその他のパーティションを、読み出しのみ可能な領域としてマウントする(ステップS16)。例えば図3及び図4の例であると、デジタルカメラ10は第1パーティションPT1に対しては、データの読み出し及び書き込み(及び消去)を自由に実行できるが、その他の第2〜第4パーティションPT2〜PT4については、データの読み出ししか実行できない。すなわち、デジタルカメラ10は、第1パーティションPT1からFATを読み出し、このFATによって第1パーティションPT1を管理する。そしてデジタルカメラ10は、第1パーティションPT1に自由にアクセスし、そしてアクセス内容に応じて第1パーティションPT1のFATを書き換える。しかし、その他のパーティションPT2〜PT4のFATを書き換えることは出来ない。
【0052】
他方、パーティションが1つだけである場合(ステップS14、NO)、OSはそのパーティションを、データの読み出し及び書き込み(及び消去)可能な領域としてマウントする(ステップS17)。
【0053】
3.2 無線LANチップ21の動作について
次に、無線LANチップ21の動作について、図6を参照して説明する。図6は無線LANチップ21がNAND型フラッシュメモリ24を使用する際の動作を示すフローチャートである。
【0054】
まず無線LANチップ21が起動されると(ステップS20)、無線LANチップ21内のプロセッサ(CPU33)は、例えばNOR型フラッシュメモリ38からOSを読み出してこれを起動する(ステップS21)。
【0055】
プロセッサ33によって実行されるOSは、NAND型フラッシュメモリ24にアクセスし、MBRを読み出し(ステップS22)、これを解析する(ステップS23)。
【0056】
MBRを解析した結果、パーティションが2つ以上ある場合(ステップS24、YES)、OSは、そのうちの1つであり、図5で説明した第1パーティションとは別の第2パーティションを、データの読み出し及び書き込み(及び消去)可能な領域としてマウントする(ステップS25)。またその他のパーティションを、読み出しのみ可能な領域としてマウントする(ステップS26)。例えば図3及び図4の例であると、デジタルカメラ10は第2パーティションPT2に対しては、データの読み出し及び書き込み(及び消去)を自由に実行できるが、その他の第1、第3、第4パーティションPT1、PT3、PT4については、データの読み出ししか実行できない。すなわち、無線LANチップ21は、第2パーティションPT2からFATを読み出し、このFATによって第2パーティションPT2を管理する。そして無線LANチップ21は、第2パーティションPT2に自由にアクセスし、そしてアクセス内容に応じて第2パーティションPT2のFATを書き換える。しかし、その他のパーティションPT1、PT3、PT4のFATを書き換えることは出来ない。
【0057】
他方、パーティションが1つだけである場合(ステップS24、NO)、OSはそのパーティションを、データの読み出し及び書き込み(及び消去)可能な領域としてマウントする(ステップS27)。
【0058】
4.本実施形態に係る効果
以上のように、本実施形態に係る構成であると、ファイルを保護しつつ、使い勝手の良い通信装置を提供出来る。本効果につき、以下説明する。
【0059】
一例として、従来のデジタルカメラに接続されたSDメモリへのアクセス方法を考える。SDメモリにアクセスするには、デジタルカメラをホストとしてSDインターフェース経由でアクセスする方法と、パソコンをホストとしてUSBインターフェース経由でアクセスする方法の二通りがある。しかし、これらのホストが同時にリソース(SDメモリ)へアクセスすることはできない。同時にアクセスしようとすると,パソコンからのアクセスが優先され、デジタルカメラからのアクセスはできない仕様になっている。
【0060】
このように排他制御が設けられている理由は、ファイルの保存場所を管理しているファイル管理テーブル(FATファイルシステムのFAT1、FAT2領域)を保護するためである。仮に、デジタルカメラとパソコンが同時にSDメモリへアクセスできたとする。すると、デジタルカメラに搭載されているOSと、パソコンに搭載されているOSとが、別々にファイル管理テーブルを取得し、保持する。すなわち、内容の異なるファイル管理テーブルがそれぞれのOS上に作成される。この状態でファイル管理テーブルをそれぞれのホストがSDメモリへ書き込むと、後で書き込んだホスト(例えばデジタルカメラ)のファイル管理テーブルが有効になり、その直前に書き込んだホスト(例えばパソコン)のファイル情報は上書きされ、無効化される。
【0061】
ここで、無線LANチップを搭載したSDメモリカードの場合を考える。このようなSDメモリカードが挿入されたデジタルカメラは、写真を撮影するだけでなく、無線LANによって別の端末から写真を受け取ることが出来る。すなわち、SDメモリには2つのホストが存在する。そして、1つのSDメモリに対して2つの異なるホスト(デジタルカメラと無線LAN)がファイル操作を行うと、ファイル管理テーブルに矛盾が発生する。
【0062】
このような問題が発生するのは、前述したデジタルカメラとパソコンとの関係と同様である。すなわち、SDメモリカードのデータ保存領域であるNAND型フラッシュメモリに対して、2つのホストが別々にファイルシステムを制御しようとするからである。
【0063】
具体的には、無線LANチップに搭載されたOSと、デジタルカメラに搭載されたOSとが、SDメモリカードのファイルシステムであるFAT16やFAT32を構成するFAT領域をそれぞれ取得する。そして、それぞれがFAT領域を更新し、更新の後、これをNAND型フラッシュメモリに書き戻す。その結果、最新のファイル管理テーブルのみが有効になり、その直前に書き込んだホストのファイル情報は上書きされて無効化される。
【0064】
このような問題を解決するには、無線LANからの書き込みを行っている間、デジタルカメラからの書き込みを制限する方法が考えられる。しかし、この方法では、無線LANを用いて例えば巨大な動画ファイルの転送をしている期間は、カメラによる撮影ができない。すなわち、ユーザは、無線LANによるファイル転送が終了するまで待たされることになる。よって、この方法では、無線LANによるファイル転送は可能になるが、その間、撮影が出来なくなり、使い勝手が非常に悪くなる、という問題がある。
【0065】
この点、本実施形態に係る構成であると、SDメモリカード10のNAND型フラッシュメモリ24を、予め複数のパーティションPT1〜PT4に分割している(図3参照)。そして、それぞれのパーティションにFATを用意して、その情報をMBRに格納する。更に、各ホストに別々のパーティションを、書き込み用として割り当てる。
【0066】
これにより各ホストは、NAND型フラッシュメモリ24が複数の領域に区切られていることを認識する。そして各ホストは、割り当てられたパーティションについてのFATをそれぞれ保持することで、割り当てられたパーティションに対してのみ、データの書き込みを実行出来る。
【0067】
例えば図3において、第1パーティションPT1がデジタルカメラ10に割り当てられ、第2パーティションPT2が無線LANチップ21に割り当てられていたと仮定する。すると、デジタルカメラ10は、第1〜第4パーティションPT1〜PT4の存在を認識し、これらの領域からデータを読み出すことは出来るが、書き込み(及び消去)は第1パーティションPT1に対してのみ、実行出来る。また無線LANチップ21は、第1〜第4パーティションPT1〜PT4からデータを読み出すことは出来るが、書き込み(及び消去)は第2パーティションPT1に対してのみ、実行出来る。
【0068】
そのため、デジタルカメラ10によって記録された情報(FAT)が、無線LANチップ21によって書き換えられることを抑制出来ると共に、無線LANチップ21によって記録された情報(FAT)が、デジタルカメラ10によって書き換えられることを抑制出来る。
【0069】
このように、予めリソースを複数の領域に区切ることで、各ホストが操作可能な領域を明確にできる。そして、本方法によれば、同一アドレスに対する複数のホストからの書き込みが発生しない。よって、複数のホストからのアクセスを許容しつつ、ファイルシステムが壊れる心配がなく、安全にファイルを操作することが可能になる。
【0070】
なお、本実施形態では4つのパーティションが設けられる場合を例に説明したが、パーティションの数は4つに限られるものではなく、少なくともホストの数だけあれば良い。図7は、パーティションの数が2つの場合について示している。図示するように、デジタルカメラ10のCPU12は、第1パーティションPT1のFATを保持し、デジタルカメラ10の書き込みアクセスは第1パーティションPT1に対してのみ許容される。他方、アクセスポイント61を介した別のデジタルカメラ60は、第2パーティションPT2のFATを保持し、デジタルカメラ60の書き込みアクセスは第2パーティションPT2に対してのみ許容される。
【0071】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る通信装置及びその制御方法について説明する。本実施形態は、上記第1実施形態において、NAND型フラッシュメモリ24を複数の領域に区切るのではなく、アドレス変換を行うことによってファイルを保護するものである。以下では、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0072】
1.構成について
図8は、本実施形態に係るメモリカード、並びにSDメモリカードの挿入されたデジタルカメラのブロック図である。また図9は、メモリカードのより詳細なブロック図である。
【0073】
図示するように、本実施形態に係るメモリカード20は、第1実施形態で説明した構成において、ファイルシステムコントローラ70及びSDホストインターフェース71を新たに設け、無線LANチップ21内のSDホストインターフェース36を廃したものである。
【0074】
ファイルシステムコントローラ70は、デジタルカメラ10及び無線LANチップ21からのNAND型フラッシュメモリ24へのアクセスを受け付ける。そして、必要に応じてアドレス変換を行い、アドレスとデータとを、SDホストインターフェース71及びSDデバイスインターフェース22を介してNANDコントローラ23へ出力する。より具体的には、デジタルカメラ10と無線LANチップ21との両方から、同時に同じアドレスに対して書き込み命令があった際、一方のアドレスを別の異なるアドレスに変換する。また、デジタルカメラ10と無線LANチップ21の一方のデータを保持するアドレスに対して、他方から書き込み命令があった際、この書き込み命令に対応するアドレスを別の異なるアドレスに変換する。
【0075】
2.NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間について
次に、NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間について、図10を用いて説明する。図10は、NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間を示す概念図である。
【0076】
図示するように本実施形態では、NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間は、複数のパーティションに分割されることなく、1つのFAT(FAT1、FAT2)によって管理される。すなわち、同一のFATによって、デジタルカメラ10からのデータと無線LANチップ21からのデータの両方が管理される。
【0077】
3.動作について
次に、本実施形態に係るメモリカード20の動作について、図11を用いて説明する。図11は、NAND型フラッシュメモリ24に対して書き込みアクセスがあった際の、特にファイルシステムコントローラ70の動作に着目したフローチャートである。
【0078】
図示するようにファイルシステムコントローラ70は、デジタルカメラ10及び/または無線LANチップ21から書き込みアクセスを受け付けると(ステップS30)、ファイルシステムコントローラ70は、当該アドレスが別のホストからのアクセスと重複しているか否かを判断する(ステップS31)。
【0079】
アドレスが重複しているケースは、例えばデジタルカメラ10と無線LANチップ21の両方から同時に同じアドレスに書き込みアクセスが為された場合や、デジタルカメラ10と無線LANチップ21とのいずれか一方からのデータを保持する領域に、他方から書き込みアクセスが為された場合が該当する。後者については、NAND型フラッシュメモリ24から読み出したFATを参照することによって判断することが出来る。
【0080】
アドレスが重複している場合(ステップS31、YES)、ファイルシステムコントローラ70は、書き込みアクセスについてのアドレスを変換する(ステップS32)。そして、変換されたアドレスに対する書き込み命令を発行して、これをSDホストインターフェース71及びSDデバイスインターフェース22を介してNANDコントローラ23へ出力する(ステップS33)。
【0081】
デジタルカメラ10と無線LANチップ21の両方から同時に同じアドレスへ書き込みアクセスが為された場合であれば、その少なくとも一方からの書き込みアクセスについてのアドレスを変換する。そして、無線LANチップ21からのアクセスに関してのみアドレス変換する場合であれば、無線LANチップ21からのデータに関しては、変換されたアドレスへの書き込み命令を発行する。他方、デジタルカメラ10からのデータに関しては、アドレス変換することなく、デジタルカメラ10から受信したアドレスへの書き込み命令を発行する。逆の場合もまた同様である。場合によっては、両方の書き込みアクセスについてアドレス変換を行っても良い。
【0082】
アドレスが重複していないケースは、例えばデジタルカメラ10と無線LANチップ21の両方から同時に異なるアドレスに書き込みアクセスが為された場合や、デジタルカメラ10と無線LANチップ21との一方から書き込みアクセスが為され、そのアドレスが、デジタルカメラ10のデータを保持する領域ではない場合が該当する。
【0083】
この場合(ステップS31、NO)、ファイルシステムコントローラ70は、アドレス変換を行うことなく(ステップS34)、それぞれのホストから受信したアドレスへの書き込み命令を発行する(ステップS35)。
【0084】
4.本実施形態に係る効果
本実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、本実施形態に係る構成であると、メモリカード20はファイルシステムコントローラ70を有する。そして、各ホストはファイルシステムを所有せず、ファイルシステムの管理をファイルシステムコントローラ70が行っている。つまり、FATの書き換えはファイルシステムコントローラ70が行い、各ホストは行わない。この際、ファイルシステムコントローラ70は、複数のホストから同じアドレス領域にアクセスがあった場合、アドレス変換を行って、同じアドレス領域にアクセスされないようにする。
【0085】
この様子を図12及び図13に示す。図12及び図13は、NAND型フラッシュメモリ24のメモリ空間の模式図である。例えば図12に示すように、デジタルカメラ10及び無線LANチップ21から、アドレスADD1の領域R1に同時に書き込みアクセスがあったとする。するとこの場合、ファイルシステムコントローラ70は図13に示すように、一方のホスト(図13の例では無線LANチップ21)からの書き込みアクセスについてアドレス変換を行う。その結果、無線LANチップ21からのデータは、領域R1ではなく、アドレスADD2の領域R2に書き込まれる。そしてファイルシステムコントローラ70は、デジタルカメラ10からのデータは領域R1に存在し、無線LANチップ21からのデータは領域R2に存在することを、FATに記録する。
【0086】
以上のように、ファイルシステムコントローラ70によってFATを一元管理することで、ファイルの破壊を防止しつつ、複数のホストからの書き込みアクセスに対応することが出来る。
【0087】
なお、アドレス変換を行って書き込みを実行した旨をどこかに記憶しておく必要は特に無い。その後のデータの読み出しや消去にあたっては、FATを参照して、ファイル名によって必要なデータを指定できるからである。
【0088】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る通信装置及びその制御方法について説明する。本実施形態は、上記第2実施形態と同様にファイルシステムコントローラを用いる例に関し、第2実施形態において、デジタルカメラ10及び無線LANチップ21の発行するSDコマンドに、SDインターフェースとは異なるプロトコルによる命令を埋め込むものである。以下では、第2実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0089】
1.本実施形態の概念について
まず、本実施形態の概念について、図14を用いて説明する。図14は、デジタルカメラ10及び無線LANチップ21への書き込みアクセスが為される様子を示す概念図である。
【0090】
第2実施形態と同様、デジタルカメラ10及び無線LANチップ21のOSは、ファイルシステムを管理しない。これらのOSは、ファイル制御の命令をファイルシステムコントローラ70に対して出すだけである。この時に発行される命令は、SMB(Server Message Block)プロトコル(RFC 1001, 1002)やFTP(File Transfer Protocol)プロトコル(RFC 697, 959, 1639, 2228, 2389, 2428, 2640, 3659)、WebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)プロトコル(RFC 2518)といった、ファイルを制御するプロトコルに順ずる。
【0091】
SMBやFTP、WebDAVといったプロトコルは、元来、TCP/IP上で複数のホストがサーバ上のファイルを制御するために利用してきたプロトコルであった。しかし本実施形態では、これらをSDインターフェース上で利用することにより、ファイルアクセスの排他制御を実現する。
【0092】
例えば,SMBは、SMBクライアントがSMBサーバの所有するファイルにアクセスするため、SMBサーバが一括してファイルシステムを管理し、SMBクライアントはサーバに対してファイルを読み書きする命令を発行するに留めることで、ファイルシステムに矛盾が発生しないようにしていた。たとえ複数のクライアントからファイルの作成命令が発行されたとしても、サーバ側で命令を排他制御するため、ファイルシステムに矛盾は生じないのである。これはFTPやWebDAVも同じである。
【0093】
この機能をSDインターフェース上で実現するため、ファイルシステムコントローラ70がSMBサーバの役割を担い、デジタルカメラ10や無線LAN21といったホストがSMBクライアントとして振舞う。これによって、SDインターフェースを用いたSMBプロトコルを実現する。ファイルシステムはSMBサーバを担当するファイルシステムコントローラ70のみが制御するため、複数ホストから同時にアクセスしてもファイルシステムが破壊されることはない。
【0094】
そして、デジタルカメラ10と無線LANチップ21のOSは、SDコマンドの一つであるCMD56にSMBプロトコルをカプセル化して、ファイルシステムコントローラ70と送受信する。図15は、コマンドCMD56の構成を示す表である。
【0095】
CMD56によるSMBプロトコルのカプセル化について説明する。CMD56は、ベンダーコマンドと呼ばれるコマンドであり、コマンドの持つ意味は、各ユーザが自由に決めてよいとされているSDコマンドである。CMD56では、コマンドを発行した後に、データの送受信を行うことが許されている。CMD56にSMBプロトコルをカプセル化するとは、CMD56に続けて送信されるデータとしてSMBプロトコルを送信することを意味している。図14では、このことを概念的に示している。後述する図17は、CMD56にSMBプロトコルをカプセル化した時のイメージであり、ホストが、CMD56を発行した後に、データ転送処理部でSMBプロトコルを発行している様子を示す。
【0096】
以上により、ファイルシステムコントローラ70においてファイルシステムの整合を図る。
【0097】
2.動作について
次に、本実施形態にメモリカード20の動作について説明する。
【0098】
2.1 基本的な動作について
まず、図16を用いて基本的な動作について説明する。図16は、NAND型フラッシュメモリ24に対してアクセスするための動作の大まかな流れを示すフローチャートである。
【0099】
図示するように、まずホスト(デジタルカメラ10及び/または無線LANチップ21のOS)は、SMBプロトコルに従って、データの書き込み、読み出し、及び消去等のファイル制御命令を発行する(ステップS40)。もちろん、FTPやWebDAVプロトコルに従ってもよいが、以下ではSMBプロトコルに従う場合を例に説明する。
【0100】
引き続きホストは、発行したファイル制御命令を、SDコマンドのCMD56にカプセル化する、すなわちCMD56内に埋め込み、これをファイルシステムコントローラ70に送信する(ステップS41)。
【0101】
ファイルシステムコントローラ70は、受信したCMD56から、SMBプロトコルに従ったファイル制御命令を取り出す(ステップS42)。そしてファイルシステムコントローラ70は、NAND型フラッシュメモリ24のFATを更新すると共に、取り出したファイル制御命令に対応するSDコマンド(CMD17、CMD18、CMD24、CMD25、CMD38等)を発行し、これをSDホストインターフェース71及びSDデバイスインターフェース22を介してNANDコントローラ23へ出力する(ステップS43)。
【0102】
2.2 データの書き込みの具体例
次に、データを書き込む際の動作の具体例について、図17を用いて説明する。図17は、デジタルカメラ10からNAND型フラッシュメモリ24にデータを書き込む場合の信号の授受を示すタイムチャートである。なお、無線LANチップ21がホストとなる場合も同様である。
【0103】
図示するように、まずデジタルカメラ10はCMD56を発行し、これをファイルシステムコントローラ70に送信する。この際、デジタルカメラ10は、CMD56のArgumentフィールドに“0”を設定する。CMD56のArgumentフィールドに“0”を設定した場合、クライアント(本例ではデジタルカメラ10)からサーバ(本例ではファイルシステムコントローラ70)へプロトコルを送信することを意味する。
【0104】
引き続きデジタルカメラ10は、SMBプロトコルに従ったデータ(書き込み命令)を発行して、ファイルシステムコントローラ70へ送信する。書き込み命令を認識したファイルシステムコントローラ70は、NAND型フラッシュメモリ24から読み出したファイルシステム(FAT)を更新する。
【0105】
更に、デジタルカメラ10はCMD56を発行し、これをファイルシステムコントローラ70に送信する。この際、デジタルカメラ10は、CMD56のArgumentフィールドに“1”を設定する。CMD56のArgumentフィールドに“1”を設定した場合は、サーバ側でプロトコルの処理が成功したか否かの結果を取得することを意味する。
【0106】
このCMD56に応答してファイルシステムコントローラ70は、SMBプロトコルの処理結果(例えばファイルシステムを更新出来たか否か)をデジタルカメラ10に返す。処理結果が正常であれば、デジタルカメラ10は書き込みデータをファイルシステムコントローラ70へ転送し、ファイルシステムコントローラ70はこの書き込みデータをNAND型フラッシュメモリ24へ転送する。
【0107】
2.3 データの読み出しの具体例
データの読み出し動作も、書き込み時と基本的に同様である。図18は、デジタルカメラ10からNAND型フラッシュメモリ24にデータを書き込む場合の信号の授受を示すタイムチャートである。なお、無線LANチップ21がホストとなる場合も同様である。
【0108】
読み出し時には、デジタルカメラ10からSMBプロトコルとして読み出し命令が与えられる。そしてファイルシステムコントローラ70によってSMBプロトコルを正常に処理出来れば、NAND型フラッシュメモリ24からファイルシステムコントローラ70へ、そしてファイルシステムコントローラ70からデジタルカメラ10へ読み出しデータが転送される。
【0109】
3.本実施形態に係る効果
本実施形態に係る構成によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0110】
本来、SMBやFTP、WebDAVといったプロトコルは、TCP/IP上に設置されたマシン間で利用される、ネットワーク用のプロトコルである。本実施形態では、SDインターフェースを用いて接続されたデジタルカメラ10とファイルシステムコントローラ70間、及び無線LANチップ21とファイルシステムコントローラ70間で、これらのプロトコルを利用する。この際、デジタルカメラ10と無線LANチップ21がクライアントであり、ファイルシステムコントローラ70がサーバの役割を果たす。
【0111】
SMB、FTP、及びWebDAVプロトコルでは、下位プロトコルとしてTCP/IPを利用する。しかし本実施形態では、デジタルカメラ10と無線LANチップ21間がSDインターフェースで接続されている。従って、TCP/IPの代わりにSDコマンドのCMD56を使用する。
【0112】
CMD56は、ベンダーごとに自由に利用することが許されているSDコマンドである。そして本実施形態では、本コマンドにSMB、FTP、及びWebDAVプロトコルをカプセル化することで、ファイルの送受信、ファイル一覧の取得、ファイルの移動、及びファイルの削除を行う。
【0113】
そして、ファイルシステムコントローラ70は、SDコマンドのCMD56によってカプセル化されたSMBプロトコルを解析し、SMBプロトコルに従って、NAND型フラッシュメモリ24を制御する。
【0114】
従って、複数のホストが同時にSMBプロトコルを含んだCMD56を送信したとしても、ファイルシステムコントローラ70による排他制御により、プロトコルが混ざることはなく、ファイルシステムに矛盾が発生することもない。すなわち、ファイルを保護しつつ、複数のホストからの同時アクセスを可能とすることが出来る。
【0115】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る通信装置及びその制御方法について説明する。本実施形態は、上記第2、第3実施形態において、無線LANチップがファイルシステムコントローラ70の機能を兼ねるものである。以下では、第2、第3実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0116】
図19は、本実施形態に係るメモリカード、並びにメモリカードの挿入されたデジタルカメラのブロック図である。
【0117】
図示するように、本実施形態に係るメモリカード20は、第1実施形態で説明した図1の構成において、第2、第3実施形態で説明したファイルシステムコントローラ70を、無線LANチップ21内に設けたものである。
【0118】
このように、ホスト(無線LANチップ21)に、CMD56にカプセル化されたSMBプロトコル等を処理する余裕があれば、ファイルシステムコントローラ70を別途設けることなく、この機能をホストに実行させることが出来る。そしてこの場合には、チップの数を減らすことが出来る。
【0119】
[変形例等]
以上のように、実施形態に係る通信装置20は、第1インターフェース35と、無線通信部21と、メモリ部24とを備える。メモリ部24は、第1インターフェース35からの第1アクセスのために用いられる第1領域PT1と、無線通信部21からの第2アクセスのために用いられる第2領域PT2とを備える。第1アクセスによる第2領域PT2への書き込み、及び第2アクセスによる第1領域PT1への書き込みは禁止される。
【0120】
これにより、複数のホストからの同時アクセスを許容すると共に、同一の領域にデータが書き込まれることによりデータが破壊されることを防止出来る。その結果、通信装置の使い勝手を向上出来る。
【0121】
なお、上記実施形態は一例に過ぎず、種々の変形が可能である。例えば、NAND型フラッシュメモリ24は、NOR型フラッシュメモリ等の他のフラッシュメモリであっても良いし、フラッシュメモリ以外の半導体メモリであってもよい。また、上記実施形態ではカードデバイスの例について説明したが、メモリカード20は例えばデジタルカメラ10等のホストに内蔵されたメモリであっても良い。更に、SDインターフェースに対応したメモリに限定されることもない。
【0122】
更に、ホストとしてデジタルカメラと無線LANを例に挙げたが、パソコン、Bluetooth(登録商標)、テレビ、またはPDA等でもよい。更に、第3、第4実施形態においてファイルを制御するプロトコルは、SMB、FTP、及びWebDAV以外のものであってもよい。すなわち、SDインターフェースで定義されたコマンドにカプセル化するコマンドは、SDインターフェースとは異なるその他の適切なプロトコルに従ったコマンドを選択出来る。
【0123】
また、第1実施形態では、1つのホストに1つのパーティションを割り当てる場合を例に説明した。しかし、パーティションに余裕がある場合には、1つのホストに複数のパーティションを割り当てても良い。また、第1実施形態では、各ホストは、割り当てられたパーティション以外については、書き込みは禁止されるが読み出しは許可される場合について説明した。しかし、書き込みだけでなく読み出しも禁止してもよい。
【0124】
更に、上記実施形態は可能な限り組み合わせて実施することができ、また可能な限り単独で実施することも出来る。また上記実施形態においてフローチャートを用いて説明した動作も、可能な限りその順序を入れ替えることが出来る。
【0125】
すなわち、上記実施形態は、以下のものを含む。すなわち、
1.第1インターフェース(I/F35@図1)と、無線通信部(wLAN21@図1)と、前記第1インターフェースからの第1アクセスのために用いられる第1領域(PT1@図3, またはR1@図13)と、前記無線通信部からの第2アクセスのために用いられる第2領域(PT2@図3, またはR2@図13)とを備えるメモリ部(NAND24@図1)とを具備し、前記第1アクセスによる前記第2領域への書き込み、及び前記第2アクセスによる前記第1領域への書き込みは禁止される通信装置。
2.上記1において、前記第1、第2領域はそれぞれ、前記第1、第2領域内の情報をファイルシステムによって管理するテーブル(FAT1,FAT2@図3)を有する。
3.上記1または2において、前記メモリ部は、前記第1、第2領域が含まれることを示す情報(MBR@図3)を保持する第3領域を更に備える。
4.上記1において、前記第1、第2アクセスを調停して、前記第1アクセスによる書き込みを前記第1領域(R1@図13)に対して実行し、前記第2アクセスによる書き込みを前記第2領域(R2@図13)に対して実行するコントローラ(ファイルシステムコントローラ70@図8)を更に備える。
5.上記4において、前記コントローラは、前記第1、第2アクセスが同じアドレスに対して同時に為された際、少なくともいずれか一方のアドレスを変換する。
6.上記4において、前記第1、第2アクセスは、ファイル制御を行うプロトコルをカプセル化したSDコマンドによって行われる。
7.上記6において、前記SDコマンドは、SDインターフェース規格におけるCMD56であり、前記プロトコルは、SMB(Server Message Block)、FTP(File Transfer Protocol)、及びWebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)の少なくともいずれかである。
8.上記6または7において、前記第1インターフェースはSDインターフェースであり、前記ファイルシステムコントローラは、受信した前記第1、第2アクセスから前記プロトコルを取り出し、該プロトコルに従って前記メモリ部への命令を発行する。
9.上記4〜8において、前記第1、第2領域内の情報は、ファイルシステムによる同一のテーブル(FAT1,FAT2@図10)によって管理される。
10.上記2または9において、前記ファイルシステムはFAT(File Allocation Table)である。
11.メモリ部の第1領域から、前記メモリ部が第1、第2パーティション(PT1,PT2@図3)を有することを示す第1情報(MBR@図3)を読み出すステップと、前記第1情報(MBR@図3)に基づいて第1ホスト(DSC10@図1)が、前記第1パーティションをファイルシステムによって管理する第1テーブルを、該第1パーティションから読み出すステップと、前記第1情報に基づいて、無線通信機能を有する第2ホスト(wLAN@図3)が、前記第2パーティションをファイルシステムによって管理する第2テーブルを、該第2パーティションから読み出すステップとを具備する通信装置の制御方法。
12.上記11において、前記第1ホストは、前記第1パーティションに対する書き込みが許可されると共に、前記第2パーティションに対する書き込みが禁止され、前記第2ホストは、前記第2パーティションに対する書き込みが許可されると共に、前記第1パーティションに対する書き込みが禁止される。
13.第1ホスト(DSC10@図1)から、メモリ部における第1アドレス領域(R1@図12)への書き込みアクセスを受信するステップと、無線通信機能を有する第2ホスト(wLAN@図3)から、前記第1アドレス領域(R1@図12)への書き込みアクセスを受信するステップと、前記第1、第2ホストの少なくともいずれか一方からの前記アクセスに対して、書き込み先を前記第1アドレス領域から、該第1アドレス領域と異なる第2アドレス領域(R2@図13)に変更するステップとを具備する通信装置の制御方法。
14.上記13において、前記第1、第2アドレス領域内の情報は、ファイルシステムによる同一のテーブル(FAT1,FAT2@図10)によって管理される。
15.上記13または14において、前記第1、第2ホストからのアクセスは、ファイル制御を行うプロトコルをカプセル化したSDコマンドによって行われる。
16.上記15において、前記SDコマンドは、SDインターフェース規格におけるCMD56であり、前記プロトコルは、SMB(Server Message Block)、FTP(File Transfer Protocol)、及びWebDAV(Web-based Distributed Authoring and Versioning)の少なくともいずれかである。
17.上記15または16において、前記第1インターフェースはSDインターフェースであり、前記ファイルシステムコントローラは、受信した前記第1、第2アクセスから前記プロトコルを取り出し、該プロトコルに従って前記メモリ部への命令を発行する。
18.上記11または14において、前記ファイルシステムはFATである。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
10、60…デジタルカメラ、11、36、71…SDホストインターフェース、12、33…CPU、20…メモリカード、21…無線LANチップ、22、35…SDデバイスインターフェース、23…NANDコントローラ、24…NAND型フラッシュメモリ、30…ベースバンドチップ、31…物理部、32…MAC部、34…メモリコントローラ、37…SDRAM、38…NOR型フラッシュメモリ、40…RFチップ、41…RF部、50…アンテナ、61…アクセスポイント、70…ファイルシステムコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1インターフェースと、
無線通信部と、
前記第1インターフェースからの第1アクセスのために用いられる第1領域と、前記無線通信部からの第2アクセスのために用いられる第2領域とを備えるメモリ部と
を具備し、前記第1アクセスによる前記第2領域への書き込み、及び前記第2アクセスによる前記第1領域への書き込みは禁止される
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第1、第2領域はそれぞれ、前記第1、第2領域内の情報をファイルシステムによって管理するテーブルを有する
ことを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記メモリ部は、前記第1、第2領域が含まれることを示す情報を保持する第3領域を更に備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の通信装置。
【請求項4】
メモリ部の第1領域から、前記メモリ部が第1、第2パーティションを有することを示す第1情報を読み出すステップと、
前記第1情報に基づいて第1ホストが、前記第1パーティションをファイルシステムによって管理する第1テーブルを、該第1パーティションから読み出すステップと、
前記第1情報に基づいて、無線通信機能を有する第2ホストが、前記第2パーティションをファイルシステムによって管理する第2テーブルを、該第2パーティションから読み出すステップと
を具備することを特徴とする通信装置の制御方法。
【請求項5】
前記第1ホストは、前記第1パーティションに対する書き込みが許可されると共に、前記第2パーティションに対する書き込みが禁止され、
前記第2ホストは、前記第2パーティションに対する書き込みが許可されると共に、前記第1パーティションに対する書き込みが禁止される
ことを特徴とする請求項4記載の通信装置の制御方法。
【請求項6】
第1ホストから、メモリ部における第1アドレス領域への書き込みアクセスを受信するステップと、
無線通信機能を有する第2ホストから、前記第1アドレス領域への書き込みアクセスを受信するステップと、
前記第1、第2ホストの少なくともいずれか一方からの前記アクセスに対して、書き込み先を前記第1アドレス領域から、該第1アドレス領域と異なる第2アドレス領域に変更するステップと
を具備することを特徴とする通信装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−203475(P2012−203475A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65032(P2011−65032)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】