説明

通信装置及びプログラム

【課題】 主信号に及ぼす影響が少なくなるようにMACアドレスの検索・学習を実行でき、負荷を軽減させてスループット低下を防止できる通信装置を提供する。
【解決手段】 入力ポートへのフレームから送信元アドレスを抽出して、そのMACアドレスが学習テーブルに登録されていなければ、そのMACアドレスとポート番号との組を学習テーブルに登録する。また、入力ポートへのフレームから宛先アドレスを抽出して学習テーブルを検索し、検索できれば、そこに記述されているポート番号の出力ポートにフレームを出力させ、検索できなければ、転送方向の全ての出力ポートにフレームを出力させる。但し、学習テーブルが高負荷のときには、宛先アドレスを抽出して行う動作だけを実行させ、送信元アドレスを抽出して行う動作を禁止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通信装置及びプログラムに関し、例えば、イーサネット(登録商標)のパケットを利用して通信を行う装置におけるMACアドレスの学習や学習したMACアドレスに基づいた制御に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、イーサネットのパケットなどを使用する通信装置のMACアドレスの学習方法として、例えば、特許文献1に記載の方法がある。
【0003】
特許文献1によれば、MACブロードキャストフレームを重複して受信させることのないように、MACフレームを受信したとき、受信したMACフレームから抽出した送信元アドレス(SA:Source Address)をキーとしてアドレス学習テーブルを検索し、この送信元アドレスがアドレス学習テーブルに登録(学習)され、既に学習されている場合はこれを登録しないで廃棄する手段を備えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−122303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年のネットワークトラヒックは増加しており、高トラヒックに対応するためにネットワークの帯域を増強する必要があり、例えば、1Gigabit/sec、10Gigabit/secなどの通信帯域が必要となってきた。これに伴い、通信装置のMACアドレスの学習をフレーム毎に行うためには、MACアドレス学習の高速化が必要である。
【0006】
しかし、高速化には、メモリの増大、処理の並列化、処理速度の向上のためのクロック速度の向上が必要であり、消費電力の増大やコストの上昇が懸念される。
【0007】
とはいえ、そのまま処理能力を向上させない場合、制御時間の増大やMACアドレス学習・検索の処理遅延によって、主信号の処理が間に合わないことによるフレーム廃棄、若しくはフラッディングが起こる可能性があり、結果としてスループットが低下する恐れがあった。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、主信号(ユーザデータ)に及ぼす影響が少なくなるようにMACアドレスの検索・学習を実行でき、負荷を軽減させてスループット低下を防止できる通信装置及びプログラムを提供しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の本発明は、同じポート番号が振られている第1網側入力ポートと第1網側出力ポートの組を複数有すると共に、同じポート番号が振られている第2網側入力ポートと第2網側出力ポートの組を複数有し、いずれかの第1網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第2網側出力ポートに与え、いずれかの第2網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第1網側出力ポートに与える通信装置において、(1)ポート番号とMACアドレスとの組を登録しているMACアドレス学習記憶手段と、(2)外部から与えられたMACアドレスを含む、ポート番号とMACアドレスとの組が上記MACアドレス学習記憶手段にあるか否かを検索させる検索手段と、(3)検索できないことを条件として、外部から与えられたMACアドレスとポート番号との組を上記MACアドレス学習記憶手段に登録する登録手段と、(4)入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから送信元MACアドレスを抽出してポート番号と共に、上記検索手段及び上記登録手段に与えて上記MACアドレス学習記憶手段への登録を促す送信元アドレス抽出手段と、(5)入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから宛先MACアドレスを抽出して上記検索手段に与えて、上記MACアドレス学習記憶手段から宛先MACアドレスに対応するポート番号を取得させる宛先アドレス抽出手段と、(6)宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できたときに、そのポート番号を有する出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定すると共に、宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できないときに、フレーム転送方向の全ての出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定して出力させる出力ポート設定手段と、(7)上記MACアドレス学習記憶手段の負荷を監視し、高負荷のときに、上記検索手段による上記送信元MACアドレスに基づいた検索と、上記登録手段の動作とを禁止させる高負荷時動作制限手段とを有することを特徴とする。
【0010】
第2の本発明の通信プログラムは、同じポート番号が振られている第1網側入力ポートと第1網側出力ポートの組を複数有すると共に、同じポート番号が振られている第2網側入力ポートと第2網側出力ポートの組を複数有し、いずれかの第1網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第2網側出力ポートに与え、いずれかの第2網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第1網側出力ポートに与える通信装置に搭載されたコンピュータを、(1)ポート番号とMACアドレスとの組を登録しているMACアドレス学習記憶手段と、(2)外部から与えられたMACアドレスを含む、ポート番号とMACアドレスとの組が上記MACアドレス学習記憶手段にあるか否かを検索させる検索手段と、(3)検索できないことを条件として、外部から与えられたMACアドレスとポート番号との組を上記MACアドレス学習記憶手段に登録する登録手段と、(4)入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから送信元MACアドレスを抽出してポート番号と共に、上記検索手段及び上記登録手段に与えて上記MACアドレス学習記憶手段への登録を促す送信元アドレス抽出手段と、(5)入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから宛先MACアドレスを抽出して上記検索手段に与えて、上記MACアドレス学習記憶手段から宛先MACアドレスに対応するポート番号を取得させる宛先アドレス抽出手段と、(6)宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できたときに、そのポート番号を有する出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定すると共に、宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できないときに、フレーム転送方向の全ての出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定して出力させる出力ポート設定手段と、(7)上記MACアドレス学習記憶手段の負荷を監視し、高負荷のときに、上記検索手段による上記送信元MACアドレスに基づいた検索と、上記登録手段の動作とを禁止させる高負荷時動作制限手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、主信号に及ぼす影響が少なくなるようにMACアドレスの検索・学習を実行でき、負荷を軽減させてスループット低下を防止できる通信装置及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態に係る通信装置の構成を、MACアドレス学習・制御面から示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態の通信装置におけるMACアドレス学習部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態の通信装置におけるMACアドレス学習テーブル部の詳細構成を示すブロック図である。
【図4】第1の実施形態に係る通信装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】第2の実施形態に係る通信装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による通信装置及び通信プログラムの第1の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態に係る通信装置の構成を、MACアドレス学習・制御面から示すブロック図である。第1の実施形態の通信装置1におけるMACアドレス学習・制御構成は、ハードウェア的に構成されても良く、また、CPUと、CPUが実行するプログラムを中心としたソフトウェア的に構成されても良く、いずれにせよ、機能的には図1で表すことができる。
【0015】
この通信装置1は、レイヤ2の中継機能を担うブリッジ装置であり、例えば、イーサネットを採用しているLANと広域網との間の中継を行うものである。図1では、通信装置1が、LANケーブルを収容する端末側に2つのポート、広域網側に2つのポートを有し、送信方向にポートの振り分けが必要なものである。なお、ポート数は2に限定されないことは勿論である。
【0016】
符号Port1I、Port2Iはそれぞれ、端末側の2つのポートの入力側を表しており、符号Port3O、Port4Oはそれぞれ、広域網側に2つのポートの出力側を表している。ポートPort1I、Port2IからポートPort3O、Port4Oへ向かう送信方向(以下、上り方向と呼ぶ)の伝送経路上には、Port1用MACアドレス学習部2−1、Port2用MACアドレス学習部2−2及び振り分け・フラッディング部3−Uが設けられている。
【0017】
また、符号Port3I、Port4Iはそれぞれ、広域網側の2つのポートの入力側を表しており、符号Port1O、Port2Oはそれぞれ、端末側に2つのポートの出力側を表している。ポートPort3I、Port4IからポートPort1O、Port2Oへ向かう送信方向(以下、下り方向と呼ぶ)の伝送経路上には、Port3用MACアドレス学習部2−3、Port4用MACアドレス学習部2−4及び振り分け・フラッディング部3−Dが設けられている。
【0018】
各MACアドレス学習部2−1〜2−4はそれぞれ、MACアドレス学習テーブル部4と接続され、MACアドレス学習テーブル部4と情報を授受できるようになされている。
【0019】
図2は、MACアドレス学習部2(2−1〜2−4)の詳細構成を示すブロック図である。MACアドレス学習部2は、SA抽出処理部10と、DA抽出処理部11とを有する。
【0020】
図3は、MACアドレス学習テーブル部4の詳細構成を示すブロック図である。MACアドレス学習テーブル部4は、MACアドレス学習テーブル20と、SA検索部21と、SA学習部22と、DA検索部23と、高負荷監視・通知部24とを有する。
【0021】
上り方向に係るMACアドレス学習部2−1、2−2のSA抽出処理部10はそれぞれ、対応する端末側ポートPort1I、Port2Iから入力された上りフレームから、送信元アドレスSAを抽出し、MACアドレス学習テーブル部4に通知するものである。下り方向に係るMACアドレス学習部2−3、2−4のSA抽出処理部10はそれぞれ、対応する広域網側ポートPort3I、Port4Iから入力された下りフレームから、送信元アドレスSAを抽出し、MACアドレス学習テーブル部4に通知するものである。
【0022】
MACアドレス学習テーブル部4においては、いずれかのMACアドレス学習部2−1〜2−4から、受信フレームの送信元アドレスSAが通知されると、SA検索部21がMACアドレス学習テーブル20上から検索し、MACアドレス学習テーブル20上に登録されていない状態(未学習)である場合は、SA学習部22が、MACアドレス学習テーブル20に学習対象の送信元アドレスSAの登録を行う。登録は、送信元アドレスSAとフレームが転送されてきたポート番号(端末側ポート番号又は広域網側ポート番号)をセットにして行う。上述した既登録の有無の判断は、送信元アドレスSAとポート番号のセット全体として判断し、2つの要素のうちの一方が異なる場合には、登録されていない状態(未学習)であると判断し、登録を行う。この際、同じ送信元アドレスSAを有するセットが登録されている場合には、そのセットをMACアドレス学習テーブル20から削除する。
【0023】
学習した送信元アドレスSAとフレームが転送されてきたポート番号は、逆方向へのフレーム転送時に宛先アドレスDA(Destination Address)を検索して、そのポートにフレーム転送を振り分けるために使用される。
【0024】
上り方向に係るMACアドレス学習部2−1、2−2のDA抽出処理部11はそれぞれ、対応する端末側ポートPort1I、Port2Iから入力された上りフレームから、宛先アドレスDAを抽出し、MACアドレス学習テーブル部4に通知し、受信フレームを与える広域網側ポートの情報を求め、返信されたる広域網側ポートの情報に応じて、振り分け・フラッディング部3−Uを制御するものである。下り方向に係るMACアドレス学習部2−3、2−4のDA抽出処理部11はそれぞれ、対応する端末側ポートPort3I、Port4Iから入力された上りフレームから、宛先アドレスDAを抽出し、MACアドレス学習テーブル部4に通知し、受信フレームを与える端末側ポートの情報を求め、返信されたる端末側ポートの情報に応じて、振り分け・フラッディング部3−Dを制御するものである。
【0025】
MACアドレス学習テーブル部4においては、いずれかのMACアドレス学習部2−1〜2−4から、受信フレームの宛先アドレスDAが通知されると、DA検索部23が、受信した宛先アドレスDAをキーにMACアドレス学習テーブル20を検索し、その検索結果に応じた送信先ポート情報を返信する。
【0026】
MACアドレス学習テーブル部4のDA検索部23は、MACアドレス学習テーブル20に受信した宛先アドレスDAが登録されていない状態(未学習)である場合には、送信先ポートへの振り分けを行わずに、フラッディング動作する(送信できるポート全てに同じデータを送信する)ことを指示する送信先ポート情報を返信する。
【0027】
これに対して、MACアドレス学習テーブル部4のDA検索部23は、MACアドレス学習テーブル20上に宛先アドレスDAが登録されている状態(学習済み)である場合は、宛先アドレスDAとセットで学習されているポート(広域網側ポート又は端末側ポート)へ振り分けることを指示する送信先ポート情報を返信する。
【0028】
振り分け・フラッディング部3−Uは、各MACアドレス学習部2−1、2−2のDA抽出処理部11の制御下で、上り方向のフレームを、出力用の広域網側ポートPort3O若しくはPort4Oに振り分け、又は、出力用の広域網側ポートPort3O及びPort4Oの双方に送出するものである。また、振り分け・フラッディング部3−Dは、各MACアドレス学習部2−3、2−4のDA抽出処理部11の制御下で、下り方向のフレームを、出力用の端末側ポートPort1O若しくはPort2Oに振り分け、又は、出力用の端末側ポートPort1O及びPort2Oの双方に送出するものである。
【0029】
以上では、MACアドレス学習に関する基本的な構成、機能を説明したが、この第1の実施形態の通信装置1は、MACアドレス学習テーブル部4に高負荷監視・通知部24を設け、MACアドレス学習部2のSA抽出処理部10は、高負荷監視・通知部24が高負荷アラームを発している状況では、送信元アドレスSAの抽出を行わないことを特徴としている。以下では、このような特徴構成、機能を設けた意味合いについて説明する。
【0030】
上述のように、MACアドレス学習においては、1フレームの処理について送信元アドレス検索、送信元アドレス学習、宛先アドレス検索の3つの機能が実施され、これら3つの機能は、上り方向と下り方向の双方向で実施される必要であり、MACアドレス学習テーブル部4が3つの機能×2方向=6つの機能を処理することが必要となる。
【0031】
このような前提下において、広帯域なパケット転送、未学習のパケット、Lengthが短いショートパケットなどが連続した場合には、MACアドレス学習テーブル部4での処理が間に合わなくなる可能性がある。
【0032】
そこで、この第1の実施形態では、MACアドレス学習テーブル部4での処理が間に合わなくなる前に、MACアドレス学習部2が、MACアドレス学習テーブル部4からの高負荷アラームを受け取り、負荷を軽減するためのMAC学習軽減モードに移行する。負荷を軽減するためのMAC学習軽減モードとは、MACアドレス学習部2が高負荷アラームを受け取っている間、送信元アドレスを抽出してMACアドレス学習テーブル部4に与えるのを中止することにより、送信元アドレス検索、送信元アドレス学習の2つの機能をスキップし、MACアドレス学習テーブル部4が宛先アドレス検索のみ実施させるモードである。
【0033】
このMAC学習軽減モードの導入により、ユーザデータのフレーム廃棄を防ぎ、スループット低下を防ぐことができる。
【0034】
但し、このとき送信元アドレス検索、送信元アドレス学習の2つをスキップするため、フレームを受信しても未学習となり、反対方向のフレームを処理する場合に、宛先アドレス検索を実施しても検出はできず、送信先ポートへ振り分けられず、フラッディング動作となる欠点がある。
【0035】
因みに、宛先アドレス検索をもスキップさせた場合、送信元アドレス学習の有無に拘らず、振り分け機能が機能しないため、全てのフレームがフラッディング処理となって余計なフレーム送信を増大させる、若しくは、振り分けができないことによるフレーム廃棄が起こる可能性がある。そのため、第1の実施形態では、宛先アドレス検索はフレーム毎に実施するものとした。
【0036】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態に係る通信装置1の動作を説明する。以下では、図4のフローチャートを参照しながら、ある入力用のポートPort1I、Port2I、Port3I又はPort4Iに転送すべきフレームが入力された際の動作を説明する。
【0037】
フレームが入力されると(ステップS101)、そのフレームの入力ポートに対応するMACアドレス学習部2において、MACアドレス学習テーブル部4が高負荷の状態に近いことを示す高負荷アラームがMACアドレス学習テーブル部4から出されているかどうかを判定する(ステップS102)。MACアドレス学習部2がこの際にMACアドレス学習テーブル部4が高負荷アラームを発しているか否かを見にいくようにしても良く、また、MACアドレス学習テーブル部4がMACアドレス学習部2内の高負荷アラームフラグを操作することとしておき、MACアドレス学習部2がこの際に内蔵フラグの状態を見にいくようにしても良い。
【0038】
例えば、高負荷監視・通知部24は、MACアドレス学習テーブル20に登録されている、MACアドレスとポート番号とのセットの数が第1の閾値を越えている場合に高負荷アラームを発する。これに代え、又は、これに加え、高負荷監視・通知部24は、MACアドレス学習テーブル20に登録されているセット数が第2の閾値(第1の閾値より小さい)を越えており、しかも、最新所定時間でのセットの増加数が、増加数に係る閾値を越えている場合に高負荷アラームを発する。さらに例えば、セットの増加数や増加率だけに基づいて、高負荷アラームを発するか否かを決めても良い。セットの数をパラメータにするのではなく、MACアドレス学習テーブル20というメモリへのアクセス(書き込み、読出しなど)回数や割合(所定時間当たりのアクセス率)をパラメータとして、高負荷か否かを判断するようにしても良い。
【0039】
高負荷アラームが出されている場合には、通信装置1は、直ちに後述するステップS107に移行(スキップ)する。この移行は、送信元アドレス検索及び送信元アドレス学習の省略になっている。
【0040】
一方、高負荷アラームが出されていない場合、MACアドレス学習テーブル部4において、送信元アドレスSAがMACアドレス学習テーブル20から検索され、過去の学習の有無が判別される(ステップS103、S104)。
【0041】
MACアドレス学習テーブル20から検索できない場合(すなわち、学習した結果が存在しない場合)には、送信元アドレスSAがMACアドレス学習テーブル20に登録(学習)される(ステップS105)。
【0042】
MACアドレス学習テーブル20から送信元アドレスSAが検索できた場合(すなわち、学習した結果が存在する場合)には、MACアドレス学習テーブル20の学習(登録)結果の更新が実行される(ステップS106)。MACアドレス学習に上限を設けている場合、MACアドレス学習テーブルの長時間アクセスされなくなった登録情報を削除するためにエージングタイマなどが設けられていることがある。このエージングタイマをクリアすることなどが、このステップS106での更新処理に該当する。
【0043】
高負荷か否かを、セットの総数や増加数や増加率で判断する方法を採用している場合であれば、ステップS105やS106の処理の終了後に、高負荷か否かを改めて判断するステップを設けるようにしても良い。
【0044】
高負荷アラームが出されていた場合には直ちに、高負荷アラームが出されていない場合には上述した送信元アドレスに係る処理の終了後に、MACアドレス学習テーブル部4において、宛先アドレスDAがMACアドレス学習テーブル20から検索され、過去の学習の有無が判別される(ステップS107、S108)。
【0045】
MACアドレス学習テーブル20から宛先アドレスDAが検索できた場合(すなわち、学習した結果が存在する場合)には、テーブル20で、そのアドレスとセットにされているポートが、今回の受信フレームを出力するポートとして指定され(ステップS109)、これに対して、MACアドレス学習テーブル20から宛先アドレスDAが検索できない場合(すなわち、学習した結果が存在しない場合)には、今回の転送方向の全ての出力ポートが、今回の受信フレームをコピー(フラッディング)して出力するポートとして指定される(ステップS110)。
【0046】
最後に、指定ポートから、受信フレームを送出させ、図4に示す一連の処理を終了する(ステップS111)。
【0047】
(A−3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、MACアドレス学習において、MACアドレス学習テーブル部での処理が間に合わないときに、送信元アドレス検索、送信元アドレス学習(学習結果の更新を含む)を省略し、宛先アドレス検索のみを実施させるようにしたので、MACアドレス学習テーブル部での処理が間に合わないことによるユーザデータのフレーム廃棄を防ぎ、スループット低下を防ぐことができる。
【0048】
(B)第2の実施形態
次に、本発明による通信装置及び通信プログラムの第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0049】
(B−1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の通信装置も、機能的構成は、上述した第1の実施形態に係る図1〜図3で表すことができる。
【0050】
但し、第2の実施形態は、MACアドレス学習部2(2−1〜2−4)のSA抽出処理部10が、対応する入力ポートPort1I〜Port4Iから入力されたフレームの送信元アドレスDAを抽出する機能に加え、そのフレームが優先フレームか否かを判定する機能を有する点が、第1の実施形態と異なっている。また、第2の実施形態は、MACアドレス学習テーブル部4の高負荷監視・通知部24が、MACアドレス学習テーブル20の高負荷状態を2段階に分けて判定し、高負荷状態の中で低いときに第1の高負荷アラームを発し、高負荷状態の中で高いときに第2の高負荷アラームを発する点が、第1の実施形態と異なっている。
【0051】
優先フレームか否かを判定できるようにする方法は任意であり、ユーザが指定可能とする。例えば、フレームの一部に優先フレームであることを表す情報を盛り込むようにしても良い。例えば、DSCP(Differentiated Services Code Point)に優先設定を行う。また例えば、パケット(フレーム)の種別で優先フレームを設定するようにしても良い。エラーメッセージや制御メッセージを取り扱うICMP(Internet Control Message Protocol)パケットを優先させるように指定しても良い。さらに例えば、MACアドレス学習テーブル20の他に、優先フレームテーブルを設けて、SA抽出処理部10が参照できるようにしても良い。この場合において、優先フレームテーブルには、MACアドレスとポートとの組で優先フレームを特定させるようにしても良く、宛先及び送信元となる2つのMACアドレスの組で優先フレームを特定させるようにしても良い。
【0052】
第1の実施形態の場合、高負荷の状態に近いことを示す高負荷アラームがある場合、送信元アドレス検索、送信元アドレス学習(登録)を省略させて、MACアドレス学習テーブル部4の負荷を抑えることができるようにした。しかし、フレームの中には、送信元アドレス検索、送信元アドレス学習を省略させたくないフレームもあり得ることが考えられ、そのため、第2の実施形態では、優先フレームという概念を導入し、一般フレームとは多少処理を変えるようにした。
【0053】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、図5のフローチャートを参照しながら、ある入力用のポートPort1I、Port2I、Port3I又はPort4Iに転送すべきフレームが入力された際の、第2の実施形態に係る通信装置1の動作を説明する。なお、図5において、上述した第1の実施形態に係る図4との同一、対応ステップには同一符号を付して示している。
【0054】
フレームが入力されると(ステップS101)、そのフレームの入力ポートに対応するMACアドレス学習部2において、第1又は第2の高負荷アラームがMACアドレス学習テーブル部4から出されているかどうかを判定する(ステップS201、S202)。
【0055】
第1の高負荷アラームが出されていない場合には(ステップS201で否定結果)、送信元アドレスSAを検索する処理(ステップS103)に移行し、これ以降、第1の実施形態で説明した処理を実行する。
【0056】
また、高負荷状態の中でも高い方を表す第2の高負荷アラームが出されている場合には(ステップS202で肯定結果)、入力フレームが優先フレームか否かを確認することなく、宛先アドレスDAを検索する処理(ステップS107)に移行し、これ以降、第1の実施形態で説明した処理を実行する。従って、この場合には、送信元アドレス検索、送信元アドレス学習(登録)は実行されない。
【0057】
さらに、高負荷状態の中でも低い方を表す第1の高負荷アラームが出されているが、高負荷状態の中でも高い方を表す第2の高負荷アラームが出されていない場合には(ステップS202で否定結果)、入力フレームが優先フレームか否かが判別される(ステップS203)。
【0058】
入力フレームが優先フレームでなければ(言い換えると、一般フレームであると)、第1の高負荷アラームが出されているので、宛先アドレスDAを検索する処理(ステップS107)に移行し、これ以降、第1の実施形態で説明した処理を実行する。従って、この場合には、送信元アドレス検索、送信元アドレス学習(登録)は実行されない。
【0059】
これに対して、入力フレームが優先フレームであれば、第1の高負荷アラームが出されているが、送信元アドレスSAを検索する処理(ステップS103)に移行し、これ以降、第1の実施形態で説明した処理を実行する。
【0060】
(B−3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様な効果を奏することができる。
【0061】
さらに、第2の実施形態によれば、MACアドレス学習テーブル部での負荷が高いことを示す高負荷アラームを2段階にし、第1段階の高負荷アラームの状態では優先フレームに限定して送信元アドレス検索、送信元アドレス学習を実行するようにしたので、優先度が高いフレームについて適切な出力ポートの設定を行うことができる。
【0062】
(C)他の実施形態
上記各実施形態においては、端末側のLANと、広域網との中継を行う通信装置に本発明を適用したものを示したが、通信装置が中継する2つの網は、上記組み合わせに限定されるものではない。例えば、2つのLAN間で中継する通信装置に本発明を適用することも可能である。
【0063】
上記各実施形態では、上り方向と下り方向とで、高負荷アラームを出す基準(閾値)が同じものを示したが、方向によって、高負荷アラームを出す基準(閾値)を変えるようにしても良い。また、一方向だけ、高負荷アラームに基づく制御を適用するようにしても良い。
【0064】
上記第2の実施形態では、優先フレームと一般フレームとで処理をスキップする条件を変えたものを示したが、優先フレームも、優先度が異なる複数の優先フレームを設け、各優先度で処理をスキップする条件を変更するようにしても良い。また、上り方向と下り方向の一方向だけ優先フレームと一般フレームとの概念を導入するようにしても良い。さらに、上り方向と下り方向とで優先フレームの段階数を変えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1…通信装置、Port1I、Port2I…上り方向入力ポート、Port3O、Port4O…上り方向出力ポート、Port3I、Port4I…下り方向入力ポート、Port1O、Port2O…下り方向出力ポート、2、2−1〜2−4…MACアドレス学習部、3−U…上り方向振り分け・フラッディング部、3−D…下り方向振り分け・フラッディング部、4…MACアドレス学習テーブル部、10…SA抽出処理部、11…DA抽出処理部、20…MACアドレス学習テーブル、21…SA検索部、22…SA学習部、23…DA検索部、24…高負荷監視・通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じポート番号が振られている第1網側入力ポートと第1網側出力ポートの組を複数有すると共に、同じポート番号が振られている第2網側入力ポートと第2網側出力ポートの組を複数有し、いずれかの第1網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第2網側出力ポートに与え、いずれかの第2網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第1網側出力ポートに与える通信装置において、
ポート番号とMACアドレスとの組を登録しているMACアドレス学習記憶手段と、
外部から与えられたMACアドレスを含む、ポート番号とMACアドレスとの組が上記MACアドレス学習記憶手段にあるか否かを検索させる検索手段と、
検索できないことを条件として、外部から与えられたMACアドレスとポート番号との組を上記MACアドレス学習記憶手段に登録する登録手段と、
入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから送信元MACアドレスを抽出してポート番号と共に、上記検索手段及び上記登録手段に与えて上記MACアドレス学習記憶手段への登録を促す送信元アドレス抽出手段と、
入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから宛先MACアドレスを抽出して上記検索手段に与えて、上記MACアドレス学習記憶手段から宛先MACアドレスに対応するポート番号を取得させる宛先アドレス抽出手段と、
宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できたときに、そのポート番号を有する出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定すると共に、宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できないときに、フレーム転送方向の全ての出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定して出力させる出力ポート設定手段と、
上記MACアドレス学習記憶手段の負荷を監視し、高負荷のときに、上記検索手段による上記送信元MACアドレスに基づいた検索と、上記登録手段の動作とを禁止させる高負荷時動作制限手段と
を有することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
フレームとして、一般フレームの他に優先フレームを用意し、
上記高負荷時動作制限手段は、入力されたフレームが優先フレームの場合に高負荷と判断する基準を、入力されたフレームが一般フレームの場合に高負荷と判断する基準より高め、入力されたフレームが優先フレームの場合には、上記検索手段による上記送信元MACアドレスに基づいた検索と、上記登録手段の動作とを禁止させ難くしている
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
同じポート番号が振られている第1網側入力ポートと第1網側出力ポートの組を複数有すると共に、同じポート番号が振られている第2網側入力ポートと第2網側出力ポートの組を複数有し、いずれかの第1網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第2網側出力ポートに与え、いずれかの第2網側入力ポートから入力されたフレームを所定の第1網側出力ポートに与える通信装置に搭載されたコンピュータを、
ポート番号とMACアドレスとの組を登録しているMACアドレス学習記憶手段と、
外部から与えられたMACアドレスを含む、ポート番号とMACアドレスとの組が上記MACアドレス学習記憶手段にあるか否かを検索させる検索手段と、
検索できないことを条件として、外部から与えられたMACアドレスとポート番号との組を上記MACアドレス学習記憶手段に登録する登録手段と、
入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから送信元MACアドレスを抽出してポート番号と共に、上記検索手段及び上記登録手段に与えて上記MACアドレス学習記憶手段への登録を促す送信元アドレス抽出手段と、
入力ポートに対応して設けられ、対応した入力ポートに入力されたフレームから宛先MACアドレスを抽出して上記検索手段に与えて、上記MACアドレス学習記憶手段から宛先MACアドレスに対応するポート番号を取得させる宛先アドレス抽出手段と、
宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できたときに、そのポート番号を有する出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定すると共に、宛先MACアドレスに対応するポート番号が取得できないときに、フレーム転送方向の全ての出力ポートを入力されたフレームを出力させる出力ポートに設定して出力させる出力ポート設定手段と、
上記MACアドレス学習記憶手段の負荷を監視し、高負荷のときに、上記検索手段による上記送信元MACアドレスに基づいた検索と、上記登録手段の動作とを禁止させる高負荷時動作制限手段と
して機能させることを特徴とする通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−70251(P2013−70251A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207525(P2011−207525)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】