説明

通信装置及び通信システム

【課題】FAXモデム及び音声コーデックを備えていない通信装置により、みなし音声方式のFAX通信を可能にする。
【解決手段】通信装置1内のFAX制御部で生成されたFAX送信データ(画像、プロトコル)は、通信装置2内のFAXモデム及び音声コーデックでVoIPデータ(G.711データ)に変換され、通信装置1に送られる。通信装置1では、VoIPデータがVoIPパケット化され、IP網及びゲートウェイ及びPSTNを介してG3FAX装置8に送られる。G3FAXから送信されたFAX信号は上記の経路を逆に辿ることで、通信装置1のFAX制御部に入力され、受信データ処理を受ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(Internet Protocol)網経由でG3ファクシミリ装置と通信を行う機能を備えた通信装置及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のファクシミリ装置は、アナログモデムを用い、PSTN(Public Switched Telephone Networks:公衆電話交換回線網)経由でITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)勧告T.30(以下、T.30と言う)のプロトコルを用いて通信を行うG3ファクシミリ装置が主流であったが、近年、IP網経由でファクシミリ通信を行うための規格として、ITU−T
勧告T.37、T.38(以下、T.37、T.38と言う)のプロトコルを用いて通信を行うインターネットファクシミリが実用化されている。
【0003】
T.37では、デジタル形式の画像データをTIFF(Tag Image File Format)形式などのメールの添付ファイルとして送受信する。これはメールサーバを経由し蓄積型の通信を行う一般的な電子メールと同様の技術であり、メール送信にはSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)、メール受信にはPOP3(Post Office Protocol Version3)を使用し、蓄積型インターネットファクシミリと呼ばれている。
【0004】
T.38は、デジタル形式の画像データをパケット化し、IP網上でIPアドレスやホスト名を持つ機器間の通信をリアルタイムで行う規格である。T.38では、呼制御にはITU−T勧告H.323プロトコル又はSIP(Session Initiation Protocol)を使用し、機器間の通信プロトコルはG3ファクシミリ通信と同様のITU−T勧告T.30を使用しており、リアルタイム型インターネットファクシミリと呼ばれている。
【0005】
また、アナログ信号であるG3ファクシミリ信号を音声信号とみなし、ITU−T勧告G.711(PCM)などの方式により符号化してVoIP(Voice over Internet Protocol)データとし、IP網上のVoIPデータパケットとしてリアルタイムでやりとりするみなし音声方式のファクシミリも知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ファクシミリモデムと、音声信号符号化/復号化装置(以下、音声コーデックと言う)と、リアルタイム転送制御部と、TCP/UDP/IP制御部とを備え、ファクシミリモデムによりデジタル形式のG3ファクシミリデータとアナログファクシミリ信号(みなし音声信号)との相互変換を行い、音声コーデックによりアナログファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換を行うことで、みなし音声方式のファクシミリ通信を行うファクシミリ装置が記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたファクシミリ装置では、みなし音声方式のファクシミリ通信、即ちVoIPデータパケット化されたG3ファクシミリデータを送受信するために、ファクシミリモデム、及び音声コーデック(VoIPコーデック)が必要であるため、それらを備えていない通信装置、例えばインターネット専用のファクシミリ装置やスマートフォン等に適用することが出来ないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ファクシミリモデム、及び音声コーデックを備えていない通信装置により、みなし音声方式のファクシミリ通信を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信装置は、デジタル形式のG3ファクシミリ送信データを生成するファクシミリ送信データ生成部と、デジタル形式のG3ファクシミリ受信データを処理するファクシミリ受信データ処理部と、VoIPデータパケットをIP網に対して送信するVoIPデータパケット送信部と、VoIPデータパケットを前記IP網から受信するVoIPデータパケット受信部と、デジタル形式のファクシミリデータとアナログ形式のファクシミリ信号との相互変換部、及びアナログ形式のファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換部を有する外部装置に対するデータ送受信部とを備え、前記外部装置により前記ファクシミリ送信データから変換されたVoIPデータを前記VoIPデータパケット送信部によりVoIPデータパケット化して送信し、前記VoIPデータパケット受信部で受信されたVoIPデータパケット内のVoIPデータを前記外部装置によりデジタル形式のファクシミリ受信データに変換して、前記ファクシミリ受信データ処理部に入力する通信装置である。
また、本発明の通信装置は、送信画像ファイル生成部と、受信画像ファイル処理部と、VoIPデータパケットをIP網に対して送信するVoIPデータパケット送信部と、VoIPデータパケットを前記IP網から受信するVoIPデータパケット受信部と、画像ファイルとデジタル形式のG3ファクシミリデータとの相互変換部、デジタル形式のファクシミリデータとアナログファクシミリ信号との相互変換部、及びアナログファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換部を有する外部装置に対するデータ送受信部とを備え、前記外部装置により送信画像ファイルから変換されたVoIPデータを前記VoIPデータパケット送信部によりVoIPデータパケット化して送信し、前記VoIPデータパケット受信部で受信されたVoIPデータパケット内のVoIPデータを前記外部装置により受信画像ファイルに変換して、前記ファクシミリ受信データ処理部に入力する通信装置である。
また、本発明の通信システムは、VoIPデータパケット化されたG3ファクシミリデータを送受信する機能を有する通信装置と、デジタル形式のファクシミリデータとアナログ形式のファクシミリ信号との相互変換部、及びアナログ形式のファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換部を有する外部装置とを有する通信システムであって、前記通信装置は、デジタル形式のG3ファクシミリ送信データを生成するファクシミリ送信データ生成部と、デジタル形式のG3ファクシミリ受信データを処理するファクシミリ受信データ処理部と、VoIPデータパケットをIP網に対して送信するVoIPデータパケット送信部と、VoIPデータパケットを前記IP網から受信するVoIPデータパケット受信部と、前記外部装置に対するデータ送受信部とを備え、前記外部装置により前記ファクシミリ送信データから変換されたVoIPデータを前記VoIPデータパケット送信部によりVoIPデータパケット化して送信し、前記VoIPデータパケット受信部で受信されたVoIPデータパケット内のVoIPデータを前記外部装置によりデジタル形式のファクシミリ受信データに変換して、前記ファクシミリ受信データ処理部に入力し、前記外部装置は、前記通信装置からのデジタル形式のG3ファクシミリ送信データをG3アナログファクシミリ信号に変換し、当該ファクシミリ信号をVoIPデータに変換して前記通信装置に送信し、前記通信装置からのVoIPデータをG3アナログファクシミリ信号に変換し、当該ファクシミリ信号をデジタル形式のG3ファクシミリ受信データに変換して前記通信装置に送信する通信システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外部装置により、デジタル形式のファクシミリデータや画像ファイルとVoIPデータとの相互変換をG3アナログファクシミリ信号を介在させて行うことで、ファクシミリモデム及び音声コーデック(VoIPコーデック)を備えていない通信装置により、みなし音声方式のファクシミリ通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。
【図6】本発明の第3の実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。
【図7】本発明の第4の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。
【図8】本発明の第4の実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。
【図9】本発明の第5の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、ファクシミリをFAXと記載する。
【0013】
[第1の実施形態]
〈通信システムの使用環境〉
図1は本発明の第1の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。本実施形態の通信システムは、LAN(Local Area Network)3と、LAN3に接続されたn(nは1以上の整数)個の第1の通信装置1−1〜1−nと、第2の通信装置2とからなる。第1の通信装置1−1〜1−nは同じ構成を持っているため、以下の説明では、特に必要な場合以外は第1の通信装置1とする。
【0014】
LAN3にはルーター4が接続され、ルーター4はIP網5に接続される。IP網5上にはゲートウェイ6が設けられており、ゲートウェイ6にはPSTN7を介してG3FAX装置8が接続される。
【0015】
第1の通信装置1は、バス10と、それぞれがバス10に接続されたシステム制御部11、操作部12、スキャナ13、プリンタ14、FAX制御部15、LANI/F(インタフェース)16、SIP制御部17、及びVoIPパケット処理部18を備えている。ここで、FAX制御部15、SIP制御部17、及びVoIPパケット処理部18はハードウェア又はソフトウェアにより構成されている。
【0016】
システム制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えており、この装置全体の制御を行う。
【0017】
操作部12は、ユーザがこの装置を操作する際に押下する各種キー、この装置の動作状態などを表示するディスプレイ等からなる。スキャナ13は、原稿を読み取ってデジタル形式の画像データを生成する手段であり、プリンタ14は、画像データに基づいて、用紙に画像を印刷する手段である。
【0018】
FAX制御部15は、G3FAX用プロトコルデータ(T.30)の発生及び解析、並びに画像データの符号化(エンコード)/復号化(デコード)を行う。符号化形式はMH(Modified Huffman)、MR(Modified READ)、MMR(Modified Modified READ)等である。
【0019】
LANI/F16はLAN3を介して、第2の通信装置2やルーター4と通信を行うためのネットワークI/Fである。SIP制御部17はIP通信のための呼確立プロトコルの制御を行う。VoIPパケット処理部18は、VoIPデータのパケット化、及びVoIPパケットのアンパケット化によるVoIPデータの抽出を行う。
【0020】
第2の通信装置2は、バス20と、それぞれがバス20に接続されたシステム制御部21、操作部22、スキャナ23、プリンタ24、LANI/F25、音声コーデック26、FAXモデム27、及び画像コーデック28を備えている。ここで、音声コーデック26、FAXモデム27、及び画像コーデック28はハードウェア又はソフトウェアにより構成されている。
【0021】
システム制御部21、操作部22、スキャナ23、プリンタ24、LANI/F25は、それぞれ第1の通信装置1における同名の部分と同じ構成及び機能を持っている。
【0022】
音声コーデック26は、アナログ音声信号(ここでは、みなし音声信号であるG3FAX信号)をG.711データ(PCMデータ)にエンコードする機能、及びG.711データをアナログ音声信号にデコードする機能を持っている。つまり、アナログ音声信号とG.711データとの相互変換機能を備えている。
【0023】
FAXモデム27は、デジタル形式のFAXデータ(ここでは、G3プロトコルデータ及び画像データ)をアナログ形式のFAX信号(ここでは、G3プロトコル信号及び画像信号)に変換する機能、及びアナログ形式のFAX信号をデジタル形式のFAXデータに変換する機能を持っている。つまり、アナログ形式のG3FAX信号とデジタル形式のG3FAXデータとの相互変換機能を備えている。画像コーデック28は画像データの符号化(エンコード)/復号化(デコード)を行う。符号化形式はMH、MR、MMR等である。
【0024】
ルーター4は、LAN3上の通信装置とIP網5との間でデータの中継を行う。ゲートウェイ6は、IP網5とPSTN7との間のルーチング、プロトコル変換等を行う。
【0025】
以上の構成において、第1の通信装置1、第2の通信装置2がそれぞれ本発明における通信装置、外部装置に対応する。また、FAX制御部15がファクシミリ送信データ生成部及びファクシミリ受信データ処理部に対応する。また、VoIPパケット処理部18及びLANI/F16がVoIPデータパケット送信部、VoIPデータパケット受信部に対応する。また、LANI/F16は外部装置に対するデータ送受信部に対応する。第1の通信装置1、第2の通信装置2は、それぞれのLANI/F16,25によりLAN3を介してP2P(Peer to Peer)接続される。
【0026】
〈通信システムにおけるデータの流れ〉
図2は、本実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。ここでは、第1の通信装置1がG3FAX装置8との間でみなし音声方式のFAX通信を行う際のFAXデータ(画像データ、プロトコルデータ)の流れを説明する。この図において、第1の通信装置1及び第2の通信装置2内の各処理を示すブロックにおいて、〈 〉内は処理の主体を示す。即ち例えばSIP処理101の主体はSIP制御部17である。
【0027】
まず第1の通信装置1では、SIP制御部17がSIP処理101を行うことで、ルーター4、IP網5、ゲートウェイ6及びPSTN7経由で対向のG3FAX装置8との間の通信路を確立し(シーケンスS1)、通信路確立後はFAXデータ(プロトコルデータ、画像データ)のリアルタイムのやり取りでFAX通信を行う。
【0028】
送信信号として、FAX制御部15のFAX送信データ生成処理102により生成されたデジタル形式のFAX送信データ(G3プロトコルデータ、画像データ)がLANI/F16及びLAN3経由で第2の通信装置2に送られる(シーケンスS2)。
【0029】
第2の通信装置2に送られたデジタル形式のFAX送信データはFAXモデム27によりアナログ形式のFAX送信信号に変換され、音声コーデック26によりアナログ形式のFAX送信信号からG.711データ(VoIPデータ)に変換される(G.711データ生成処理201)。
【0030】
G.711データはLANI/F25、LAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内のLANI/F16からVoIPパケット処理部18に送られる(シーケンスS3)。
【0031】
第1の通信装置1では、VoIPパケット処理部18によりG.711データがVoIPパケット化され、LANI/F16、LAN3、ルーター4、IP網5、ゲートウェイ6、及びPSTN7経由で対向のG3FAX装置8に送信される(処理103、シーケンスS4)。
【0032】
次に受信信号の説明を行う。
G3FAX装置8から送信されたFAX信号は、PSTN7、ゲートウェイ6、IP網5、ルーター4、LAN3、及びLANI/F16経由で第1の通信装置1のVoIPパケット処理部18に送られる(シーケンスS5)。
【0033】
VoIPパケット処理部18は、VoIPパケットをアンパケット化してG.711データ(VoIPデータ)を取り出し(処理104)、LANI/F16及びLAN3経由で第2の通信装置2に送る(シーケンスS6)。
【0034】
第2の通信装置2では、G.711データが音声コーデック26によりアナログ形式のFAX受信信号に変換され、アナログ形式のFAX受信信号がFAXモデム27によりデジタル形式のFAX受信データに変換される(FAX受信データ生成処理202)。デジタル形式のFAX受信データは、LANI/F25、LAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16からFAX制御部15に送られ(シーケンスS7)、所定の受信処理(プロトコルデータの解析、画像データの復号化)を受ける(FAX受信データ処理105)。
【0035】
以上の動作において、FAX送信データは、スキャナ13からの画像データをFAX制御部15で圧縮(エンコード)したものである。また、FAX受信データについては、FAX制御部15で伸長(デコード)して生の画像データに変換し、プリンタ14で印字する。
【0036】
このように本発明の第1の実施形態の通信システムによれば、第2の通信装置2により、FAXデータとG.711データとの相互変換を行うことで、FAXモデム及び音声コーデック(VoIPコーデック)を備えていない第1の通信装置1により、みなし音声方式のFAX通信を行うことが出来る。このため、低価格の通信装置によりみなし音声方式のFAX通信が可能となる。
【0037】
なお、以上の説明では、シーケンスS2及びS7で第1の通信装置1と第2の通信装置2との間で送受される画像データを圧縮符号化された形式のデータとしたが、生データとすることもできる。この場合、第2の通信装置2の画像コーデック28により画像データの符号化/復号化を行う。この符号化はG.711データ生成処理201の前に行われ、復号化はFAX受信データ生成処理202の後に行われる。
【0038】
[第2の実施形態]
〈通信システムの使用環境〉
図3は本発明の第2の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。この図において、図1(第1の実施形態)と同一又は対応部分には図1と同じ参照符号を付した。
【0039】
本実施形態の通信システムは、第1の実施形態の通信システムにおける第1の通信装置1、第2の通信装置2に、それぞれT.38パケット処理部19、29を付加したものであり、それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。
【0040】
T.38パケット処理部19、29は、FAXデータに対するT.38パケット化機能、及びT.38パケットのアンパケット化によるパケット内のFAXデータ抽出機能を持っている。
【0041】
〈通信システムにおけるデータの流れ〉
図4は、本実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。この図において、図2(第1の実施形態)と同一又は対応部分には図2と同じ参照符号を付した。
【0042】
図4に示すように、本実施形態では、第1の通信装置1は、SIP処理101による通信路確立(シーケンスS1)の後、第1の通信装置1は下記の処理106を行う。まずFAX制御部15がデジタル形式のFAX送信データを生成する(FAX送信データ生成処理)。次にはT.38パケット処理部19がデジタル形式のFAX送信データをパケット化する(T.38パケット化処理)。つまり、処理106は、図2のFAX送信データ生成処理102の後にT.38パケット化処理を付加したものである。処理106により生成されたT.38パケットデータはLANI/F16及びLAN3経由で第2の通信装置2に送られる(シーケンスS2a)。
【0043】
第2の通信装置2に送られたT.38パケットデータは下記の処理203を受ける。まずT.38パケット処理部29がアンパケット化によりFAX送信データを抽出する(FAX送信データ抽出処理)。次いで第1の実施形態と同様に、FAXモデム27によりアナログ形式のFAX送信信号に変換され、音声コーデック26によりアナログ形式のFAX送信信号からG.711データに変換される(G.711データ生成処理)。つまり、処理203は、図2のG.711データ生成処理201の前にFAX送信データ抽出処理を付加したものである。
【0044】
処理203により生成されたG.711データはLANI/F25及びLAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16からVoIPパケット処理部18に送られる(シーケンスS3)。
【0045】
送信信号に対する以後の処理(処理103)及び動作シーケンス(S4)は第1の実施形態と同じである。また、受信信号に対する処理104及び動作シーケンスS5、S6も第1の実施形態と同じである。
【0046】
シーケンスS6により第2の通信装置2に送られたG.711データは下記の処理204を受ける。まず音声コーデック26によりアナログ形式のFAX受信信号に変換され、アナログ形式のFAX受信信号がFAXモデム27によりデジタル形式のFAX受信データに変換される(FAX受信データ生成処理)。次にデジタル形式のFAX受信データがT.38パケット処理部29によりパケット化される(処理204)。つまり、処理204は、図2のFAX受信データ生成処理202の後にT.38パケット化処理を付加したものである。
【0047】
T.38パケットデータは、LANI/F25及びLAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16からT.38パケット処理部19に送られる(シーケンスS7a)。T.38パケット処理部19は、T.38パケットをアンパケット化してFAX受信データを抽出してFAX制御部15に送り、FAX制御部15はFAX受信データに対して受信処理を施す(処理107)。つまり、処理107は、図2のFAX受信データ処理105の前にT.38アンパケット化処理を付加したものである。
【0048】
以上、本実施形態における第1の通信装置1がG3FAX装置8との間でみなし音声方式のFAX通信を行う場合の動作について説明したが、この第1の通信装置1は、通信相手装置がT.38に対応している場合は、T.38パケット処理部19の出力をLANI/F16、LAN3、ルーター4、及びIP網5経由で通信相手装置に送信し、通信相手装置からのT.38パケットを同じ経路で受信することが出来る。従って、本実施形態の通信システムは、T.38に対応する通信装置を有効活用することが出来る。また、本実施形態の通信システムは、第1の実施形態と同じ動作、即ちT.38パケット処理部を使用せずにみなし音声方式のFAX通信を行うことも出来る。
【0049】
[第3の実施形態]
〈通信システムの使用環境〉
図5は本発明の第3の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。この図において、図1(第1の実施形態)と同一又は対応部分には図1と同じ参照符号を付した。
【0050】
本実施形態の通信システムは、第1の実施形態の通信システムにおける第1の通信装置1からFAX制御部15を取り除くとともに画像ファイル処理部1aを付加し、第2の通信装置2から画像コーデック28を取り除くとともにFAX制御部2a及び画像ファイル処理部2bを付加したものである。それ以外の構成は第1の実施形態と同じである。ここで、画像ファイル処理部1aが本発明の送信画像ファイル生成部及び受信画像ファイル処理部に対応する。
【0051】
画像ファイル処理部1a、2bは、FAX通信用の画像ファイル(TIFF、PDF等、イメージのファイル)を扱い、ビットマップイメージのファイル化機能、及びファイルのレンダリング(ビットマップイメージ化)機能を持っている。
【0052】
〈通信システムにおけるデータの流れ〉
図6は、本実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。この図において、図2(第1の実施形態)と同一又は対応部分には図2と同じ参照符号を付した。
【0053】
図6に示すように、本実施形態では、第1の通信装置1は、SIP処理101による通信路確立(シーケンスS1)の後、送信時は、スキャナ13で生成されたデジタル形式の画像データを基に画像ファイル処理部1aにより画像ファイルが生成され(画像ファイル生成処理108)、LANI/F16及びLAN3経由で第2の通信装置2に送られる(シーケンスS2b)。
【0054】
第2の通信装置2に送られた画像ファイルは以下の処理205を受ける。まず画像ファイル処理部2bによりレンダリングされてビットマップの画像データとなる(画像データ生成処理)。次にFAX制御部2aがビットマップの画像データの符号化(MH、MR、MMR等)又はプロトコルデータの生成を行う(FAX送信データ生成処理)。次いで第1の実施形態と同様に、FAXモデム27がFAX送信データをアナログ形式のFAX送信信号に変換し、音声コーデック26がアナログ形式のFAX送信信号をG.711データに変換する。つまり、処理205は、図2のG.711データ生成処理201の前に画像データ生成処理及びFAX送信データ生成処理を付加したものである。
【0055】
処理205により生成されたG.711データはLANI/F25及びLAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16からVoIPパケット処理部18に送られる(シーケンスS3)。
【0056】
送信信号に対する以後の処理(処理103)及び動作シーケンス(S4)は第1の実施形態と同じである。また、受信信号に対する処理104及び動作シーケンスS5、S6も第1の実施形態と同じである。
【0057】
シーケンスS6により第2の通信装置2に送られたG.711データ下記の処理206を受ける。まず音声コーデック26によりアナログ形式のFAX信号に変換され、アナログ形式のFAX受信信号がFAXモデム27によりデジタル形式のFAX受信データに変換され、デジタル形式のFAX受信データに対してFAX制御部2aによりプロトコルデータの解析及び画像データの復号化が行われ、画像ファイル処理部2bにより画像データが画像ファイル化される。つまり、処理206は、図2のFAX受信データ生成処理202の後にFAX受信データ処理及び画像ファイル生成処理を付加したものである。
【0058】
処理206により生成された画像ファイルは、LANI/F25及びLAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16から画像ファイル処理部1aに送られる(シーケンスS7b)。画像ファイル処理部1aは、送られてきた画像ファイルをレンダリングし、ビットマップ化する。このビットマップデータは、例えばプリンタ14に送られ、印字される。
【0059】
本実施形態の通信システムによれば、第1の通信装置1と第2の通信装置2との間で送受するデータが画像ファイルであるため、第1の通信装置1にはFAX制御部が不要となる。このため、第1の通信装置1の構成を一般的な通信端末やスマートフォンに準じたものに変更する(スキャナ13及びプリンタ14の除去、カメラの付加等)ことで、それらの通信装置でもみなし音声方式のFAX通信が可能となる。
【0060】
[第4の実施形態]
〈通信システムの使用環境〉
図7は本発明の第4の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。この図において、図5(第3の実施形態)と同一又は対応部分には図5と同じ参照符号を付した。
【0061】
本実施形態の通信システムは、第3の実施形態の通信システムにおける第1の通信装置1、第2の通信装置2に、それぞれT.37パケット処理部1b、2cを付加したものであり、それ以外の構成は第3の実施形態と同じである。
【0062】
T.37パケット処理部1b、2cは、FAXデータに対するT.37パケット化機能、及びT.37パケットのアンパケット化によるパケット内のFAXデータ抽出機能を持っている。
【0063】
〈通信システムにおけるデータの流れ〉
図8は、本実施形態の通信システムにおけるデータの流れを示す図である。この図において、図6(第3の実施形態)と同一又は対応部分には図6と同じ参照符号を付した。
【0064】
図8に示すように、本実施形態では、第1の通信装置1は、SIP処理101による通信路確立(シーケンスS1)の後、第1の通信装置は下記の処理110を行う。まず画像ファイル処理部1aが画像ファイルを生成し(画像ファイル生成処理)、次にT.37パケット処理部1bが画像ファイルをパケット化する(T.37パケット化処理)。つまり、処理110は、図6の画像ファイル生成処理108の後にT.37パケット化処理を付加したものである。T.37パケットデータはLANI/F16及びLAN3経由で第2の通信装置2に送られる(シーケンスS2c)。
【0065】
第2の通信装置2に送られたT.37パケットデータは以下の処理207を受ける。まずT.37パケット処理部2cがアンパケット化により画像ファイルを抽出する(画像ファイル抽出処理)。次いで第3の実施形態と同様に、画像ファイル処理部2bによる画像データ生成処理、FAX制御部2aによるFAX送信データ生成処理、FAXモデム27及び音声コーデック26によるG.711データ生成処理を受ける。つまり、処理207は、図6の処理205の前にT.37パケットのアンパケット化による画像データ抽出処理を付加したものである。
【0066】
処理207により生成されたG.711データはLANI/F25及びLAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16からVoIPパケット処理部18に送られる(シーケンスS3)。
【0067】
送信信号に対する以後の処理(処理103)及び動作シーケンス(S4)は第3の実施形態と同じである。また、受信信号に対する処理104及び動作シーケンスS5、S6も第3の実施形態と同じである。
【0068】
シーケンスS6により第2の通信装置2に送られたG.711データは下記の処理208を受ける。まず音声コーデック26によりアナログ形式のFAX受信信号に変換され、次にアナログ形式のFAX受信信号がFAXモデム27によりデジタル形式のFAX受信データに変換される(FAX受信データ生成処理)。デジタル形式のFAX受信データに対してFAX制御部2aによりプロトコルデータの解析及び画像データの復号化が行われ(FAX受信データ処理)、画像ファイル処理部2bにより画像データが画像ファイル化される(画像ファイル生成処理)。次いで画像ファイルがT.37パケット処理部2cによりパケット化される(T.37パケット化処理)。つまり、処理208は、図6の処理206の後にT.37パケット化処理を付加したものである。
【0069】
T.37パケット化された画像ファイル(T.37パケットデータ)は、LANI/F25及びLAN3経由で第1の通信装置1に送られ、第1の通信装置1内でLANI/F16からT.37パケット処理部1bに送られる(シーケンスS7c)。以後下記の処理111を行う。T.37パケット処理部1bはT.37パケットをアンパケット化して画像ファイルを抽出し(T.37アンパケット化処理)、画像ファイル処理部1aは画像ファイルをレンダリングし、ビットマップ化する(画像データ生成処理)。つまり、処理111は、図6の画像データ生成処理109の前にT.37アンパケット化処理を付加したものである。
【0070】
本実施形態の通信システムによれば、第1の通信装置1と第2の通信装置2との間で送受するデータがT.37パケットであるため、第3の実施形態と同様、第1の通信装置1にはFAX制御部が不要となる。このため、第1の通信装置1の構成を一般的な通信端末やスマートフォンに準じたものに変更することで、それらの通信装置でもみなし音声方式のFAX通信が可能となる。
【0071】
また、この第1の通信装置1は、通信相手装置がT.37に対応している場合は、T.37パケット処理部1bの出力をLANI/F16、LAN3、ルーター4、及びIP網5経由で通信相手装置に送信し、通信相手装置からのT.37パケットを同じ経路で受信することが出来る。従って、本実施形態の通信システムは、T.37に対応する通信装置を有効活用することが出来る。また、本実施形態の通信システムは、第3の実施形態と同じ動作、即ちT.37パケット処理部を使用せずにみなし音声方式のFAX通信を行うことも出来る。
【0072】
[第5の実施形態]
図9は本発明の第5の実施形態の通信システムの使用環境を示す図である。この図において、図3(第2の実施形態)と同一又は対応部分には図3と同じ参照符号を付した。
【0073】
本実施形態の通信システムは、第2の実施形態の通信システムにおける第1の通信装置1に無線PAN(Personal Area Network)I/F1cを付加するとともに、第2の通信装置2におけるLANI/F25を無線PANI/F2dに代えたものである。無線PANとしては、UWB(Ultra Wide Band)、Bluetooth(登録商標)等がある。
【0074】
本実施形態の通信システムでは、第1の通信装置1と第2の通信装置2との間のデータ送受をそれぞれの無線PANI/F1c,2d間のアドホック通信で行う。それ以外は第2の実施形態と同じである。
【0075】
なお、以上説明した第1〜第4の実施形態では、第1の通信装置1−1〜1−nが同じ構成を持つシステムとしたが、異なる構成の第1の通信装置、例えば第1の実施形態(図1)の第1の通信装置1−1と、第2の実施形態(図3)の第1の通信装置1−1が混在するシステムとすることも出来る。また、第4の実施形態(図7)の第1の通信装置1−nを第2の実施形態(図3)の第1の通信装置1−nに代えたシステムとすることも出来る。
【符号の説明】
【0076】
1−1〜1−n…第1の通信装置、2…第2の通信装置、3…LAN、4…ルーター、5…IP網、6…ゲートウェイ、7…PSTN、8…G3FAX装置、15,2a…FAX制御部、16,25…LANI/F、17…SIP制御部、18…VoIPパケット処理部、19,29…T.38パケット処理部、1a,2b…画像ファイル処理部、1b,2c…T.37パケット処理部、1c,2d…無線PANI/F、26…音声コーデック、27…FAXモデム、28…画像コーデック。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特許第4059113公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル形式のG3ファクシミリ送信データを生成するファクシミリ送信データ生成部と、
デジタル形式のG3ファクシミリ受信データを処理するファクシミリ受信データ処理部と、
VoIPデータパケットをIP網に対して送信するVoIPデータパケット送信部と、
VoIPデータパケットを前記IP網から受信するVoIPデータパケット受信部と、
デジタル形式のファクシミリデータとアナログ形式のファクシミリ信号との相互変換部、及びアナログ形式のファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換部を有する外部装置に対するデータ送受信部とを備え、
前記外部装置により前記ファクシミリ送信データから変換されたVoIPデータを前記VoIPデータパケット送信部によりVoIPデータパケット化して送信し、前記VoIPデータパケット受信部で受信されたVoIPデータパケット内のVoIPデータを前記外部装置によりデジタル形式のファクシミリ受信データに変換して、前記ファクシミリ受信データ処理部に入力する通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載された通信装置において、
前記ファクシミリ送信データ、前記ファクシミリ受信データは、画像データ及びプロトコルデータである通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載された通信装置において、
前記画像データは符号化されている通信装置。
【請求項4】
請求項1に記載された通信装置において、
T.38パケット処理部を有し、前記ファクシミリ送信データ、前記ファクシミリ受信データはT.38パケットデータである通信装置。
【請求項5】
送信画像ファイル生成部と、
受信画像ファイル処理部と、
VoIPデータパケットをIP網に対して送信するVoIPデータパケット送信部と、
VoIPデータパケットを前記IP網から受信するVoIPデータパケット受信部と、
画像ファイルとデジタル形式のG3ファクシミリデータとの相互変換部、デジタル形式のファクシミリデータとアナログファクシミリ信号との相互変換部、及びアナログファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換部を有する外部装置に対するデータ送受信部とを備え、
前記外部装置により送信画像ファイルから変換されたVoIPデータを前記VoIPデータパケット送信部によりVoIPデータパケット化して送信し、前記VoIPデータパケット受信部で受信されたVoIPデータパケット内のVoIPデータを前記外部装置により受信画像ファイルに変換して、前記ファクシミリ受信データ処理部に入力する通信装置。
【請求項6】
請求項5に記載された通信装置において、
T.37パケット処理部を有し、前記送信画像ファイル、前記受信画像ファイルはT.37パケットデータである通信装置。
【請求項7】
VoIPデータパケット化されたG3ファクシミリデータを送受信する機能を有する通信装置と、デジタル形式のファクシミリデータとアナログ形式のファクシミリ信号との相互変換部、及びアナログ形式のファクシミリ信号とVoIPデータとの相互変換部を有する外部装置とを有する通信システムであって、
前記通信装置は、デジタル形式のG3ファクシミリ送信データを生成するファクシミリ送信データ生成部と、デジタル形式のG3ファクシミリ受信データを処理するファクシミリ受信データ処理部と、VoIPデータパケットをIP網に対して送信するVoIPデータパケット送信部と、VoIPデータパケットを前記IP網から受信するVoIPデータパケット受信部と、前記外部装置に対するデータ送受信部とを備え、
前記外部装置により前記ファクシミリ送信データから変換されたVoIPデータを前記VoIPデータパケット送信部によりVoIPデータパケット化して送信し、前記VoIPデータパケット受信部で受信されたVoIPデータパケット内のVoIPデータを前記外部装置によりデジタル形式のファクシミリ受信データに変換して、前記ファクシミリ受信データ処理部に入力し、
前記外部装置は、前記通信装置からのデジタル形式のG3ファクシミリ送信データをG3アナログファクシミリ信号に変換し、当該ファクシミリ信号をVoIPデータに変換して前記通信装置に送信し、前記通信装置からのVoIPデータをG3アナログファクシミリ信号に変換し、当該ファクシミリ信号をデジタル形式のG3ファクシミリ受信データに変換して前記通信装置に送信する通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−5107(P2013−5107A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132520(P2011−132520)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】