説明

通信装置

【課題】通信ネットワークにおいて通信装置10a以外の通信装置10c、10dが無駄に電力を消費することを防ぐ。
【解決手段】通信ネットワークにおいて通信装置10aのID検出制御回路45が通信装置10bからの通信信号として通信装置10aのIDを受信したと判定したときには、ID検出制御回路45がメイン制御回路20にウエイクアップ信号を出力するので、メイン制御回路20がアクティブモードになる。ここで、通信ネットワークにおいて通信装置10aのIDを受信した通信装置10a以外の通信装置10c、10dがウエイクアップを行わない。このため、通信装置10aのIDを受信した通信装置10a以外の通信装置10c、10dが無駄に電力を消費することを防ぐことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の通信ネットワークにおいて、通信装置としてのノードが複数個、備えられ、複数個のノードが通信線としてのバスによって接続され、複数個のノードがスリープモードであるときに、複数個のノードがバス電圧をモニタしてこのバス電圧の変化を検知すると、ウエイクアップするように設定されているものがある。
【0003】
また、複数個のノードが全てスリープモードであるとき、複数個のノードが予め決められた起動順序に従って順次、ウエイクアップするように設定されているものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−185558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通信ネットワークでは、複数個のノードがスリープモードである場合には、複数個のノードがバス電圧の変化を検知するとそれぞれウエイクアップすることができるものの、複数個のノードのうち任意のノードだけウエイクアップさせることができない。例えば、複数個のノードのうち任意のノードをウエイクアップさせる場合に、任意のノードとともに、任意のノード以外のノードもウエイクアップすると、このウエイクアップしたノードにより無駄に電力を消費することになる。
【0006】
また、上記特許文献1では、複数個のノードが起動順序に従って順次ウエイクアップすることが記載されているだけで、複数個のノードのうち任意のノードだけウエイクアップさせることについて記載されていない。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、通信ネットワークを構成する通信装置において、通信装置自身のIDを受信したときに、ウエイクアップすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、他の通信装置との間で通信するアクティブモードと前記他の通信装置との間の通信を休止するスリープモードとのうち一方のモードから他方のモードに移行可能に構成されている通信回路(20)を有し、前記他の通信装置とともに通信ネットワークを構成する通信装置であって、
抵抗素子とコンデンサとから構成されて発振信号を出力する発振回路を構成するCR発振器(43)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記他の通信装置からの通信信号のローレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第1のカウンタ(42)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記他の通信装置からの通信信号のハイレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第2のカウンタ(41)と、
前記第1のカウンタのカウント値と前記第2のカウンタのカウント値との比を算出する比算出手段と、
前記比算出手段により算出された比が所定比であるか否かを判定することにより、前記他の通信装置からの通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定する第1の判定手段と、
前記通信信号のうちID領域を受信したと前記第1の判定手段が判定したときに、前記通信回路を前記アクティブモードに移行させるために、前記通信回路にウエイクアップ信号を出力する信号出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、当該通信装置において、他の通信装置からの通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したときには、信号出力手段が通信回路にウエイクアップ信号を出力するので、通信回路がアクティブモードになる。これにより、通信装置自身のIDを受信したときに、ウエイクアップする通信装置を提供することができる。
【0010】
ここで、通信ネットワークにおいてID領域に含まれるIDに対応する通信装置以外の通信装置は、ID領域を含む通信信号を受信しても、ウエイクアップを行わない。このため、ID領域のIDに対応する通信装置以外の通信装置が無駄に電力を消費することを防ぐことができる。
【0011】
IDとは、Identificationの略で、通信装置を識別するための登録符号である。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、通信回路がスリープモードであるときに、通信信号に含まれるID領域を受信したか否かについて判定手段が判定するために、CR発振器の発振信号を用いることになる。ここで、一般的に、CR発振器は、セラミック発振器や水晶発振器に比べて安価である傾向にある。このため、通信装置の製造コストを低減することが可能である。
【0013】
ここで、請求項1に記載の発明では、通信信号のローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比によって、通信信号に含まれるID領域を受信したか否かを判定している。
【0014】
ここで、CR発振器は、その温度変化により、発振周波数に変化が生じる可能性がある。しかし、通信信号の一般的なビットレートを考慮すれば、CR発振器の発振周波数の変化は非常に小さいものであるので、上述した比によって通信信号に含まれるID領域を受信したか否かを判定する判定は、十分問題なく、行うことができる。このため、ID領域を受信したか否かの判定に際して、誤判定が生じ難い。
【0015】
請求項2に記載の発明では、前記他の通信装置から送信される通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側にはハイレベル期間とローレベル期間とが設定されており、
前記比算出手段の算出を実施するために用いられるカウント値を得るための前記第1、第2のカウンタのカウントに先だって、前記第1のカウンタが前記通信信号のローレベル期間をカウントし、かつ前記第2のカウンタが前記通信信号のハイレベル期間をカウントするようになっており、
前記第1のカウンタのカウント値と前記第2のカウンタのカウント値との比が所定条件を満たすか否かを判定することにより、前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したか否かを判定する第2の判定手段を備え、
前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したと前記第2の判定手段が判定した後に生じる前記通信信号の立ち下がり時、或いは立ち上がり時にて、前記比算出手段の算出を実施するために用いられるカウント値を得るための前記第1、第2のカウンタのカウントを開始することを特徴とする。
【0016】
請求項3に記載の発明では、他の通信装置との間で通信するアクティブモードと前記他の通信装置との間の通信を休止するスリープモードとのうち一方のモードから他方のモードに移行可能に構成されている通信回路(20)を有し、前記他の通信装置とともに通信ネットワークを構成する通信装置であって、
抵抗素子とコンデンサとから構成されて発振信号を出力する発振回路を構成するCR発振器(43)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、他の通信装置から受信される通信信号のうち所定期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準として計測する計測手段とを備え、
前記所定期間は所定個の1ビットデータを含む期間であって、その期間に亘って信号レベルがハイレベルおよびローレベルのうち一方のレベルに設定されており、前記通信信号のうち前記所定期間に対して先頭側および後端側の信号レベルが一方のレベルと異なるレベルになっており、
前記計測手段による計測結果に基づいて前記通信信号の1ビットのデータの時間長を算出する第1の算出手段と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記他の通信装置から出力される通信信号のうちローレベル期間およびハイレベル期間を前記1ビットのデータの時間長を周期としてサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によりサンプリングされた結果に基づいて前記ローレベル期間を構成する1ビットのデータの個数と前記ハイレベル期間を構成する1ビットのデータの個数を算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段により算出される前記ローレベル期間を構成する1ビットのデータの個数と前記ハイレベル期間を構成する1ビットのデータの個数とがそれぞれ予め設定された個数であるか否かを判定することにより、前記通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定する第1の判定手段と、
前記通信信号のうち前記ID領域を受信したと前記第1の判定手段が判定したときに、前記通信回路を前記アクティブモードに移行させるために、前記通信回路にウエイクアップ信号を出力する信号出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様、通信装置において、通信信号に含まれるID領域を受信したときには、信号出力手段が通信回路にウエイクアップ信号を出力するので、通信回路がアクティブモードになる。これにより、請求項1に記載の発明と同様に、通信装置自身のIDを受信したときに、ウエイクアップする通信装置を提供することができる。これに伴い、ID領域のIDに対応する通信装置以外の通信装置が無駄に電力を消費することを防ぐことができる。
【0018】
請求項3に記載の発明では、通信信号のうち所定期間を計測するために、CR発振器を用いている。このため、請求項1に記載の発明と同様、通信装置の製造コストを低減することが可能である。
【0019】
ここで、上述の請求項1に記載の発明では、通信信号のローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比によって、通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定している。このため、互いに異なる2つのIDでも、ローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比が同一の場合には、2つのIDを判別することができない。
【0020】
これに対して、請求項3に記載の発明では、通信信号のうちローレベル期間を構成するデータの個数とハイレベル期間を構成するデータの個数とがそれぞれ予め設定された個数であるか否かを判定することにより、通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定している。このため、請求項3に記載の発明によれば、互いに異なる2つのIDにおいて、ローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比が同一の場合でも、2つのIDを判別することができる。したがって、認識することができるIDの個数を増やすことができる。
【0021】
請求項4に記載の発明では、前記通信信号のうち前記IDに対する先頭側にはハイレベル期間とローレベル期間とが設定されており、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記サンプリング手段のサンプリングに先だって、前記通信信号のローレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第1のカウンタ(42)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記サンプリング手段のサンプリングに先だって、前記通信信号のハイレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第2のカウンタ(41)と、
前記第1のカウンタのカウント値と前記第2のカウンタのカウント値との比が所定条件を満たすか否かを判定することにより、前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したか否かを判定する第2の判定手段を備え、
前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したと前記第2の判定手段が判定した後に生じる前記通信信号の立ち下がり時、或いは立ち上がり時にて、前記サンプリング手段のサンプリングを開始することを特徴とする。
【0022】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態における通信ネットワークの構成を示す図である。
【図2】図1の通信装置の電気回路構成を示す図である。
【図3】図2のCR発振回路の回路構成を示す図である。
【図4】図1の通信ネットワークの通信で用いられる通信信号の構成を示す図である。
【図5】図2のID検出回路の作動を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2実施形態におけるID検出回路の作動を示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態のID検出回路においてID検出制御回路のサンプリングタイミングを示す図である。
【図8】本発明の変形例におけるCR発振回路の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0025】
(第1実施形態)
本発明の通信装置が適用された車載通信ネットワークの第1の実施形態について図1を参照して説明する。図1は車載通信ネットワークの構成を模式的に示す図である。
【0026】
車載通信ネットワーク1は、通信装置10a、10b、10c、10dから構成されている。通信装置10a、10b、10c、10dは、電子制御装置やセンサ装置などの各種の機器に適用されるもので、LAN用ケーブル15で接続されている。このことにより、通信装置10a、10b、10c、10dは、ローカルエリアネットワーク(LAN)で接続されていることになる。通信装置10a、10b、10c、10dのうちいずれか2つの通信装置の間でローカルエリアネットワークを介して通信を行う。
【0027】
通信装置10a、10b、10c、10dは、それぞれ共通して、メイン制御回路およびID検出回路を備えている。メイン制御回路は、ローカルエリアネットワークを介して他の通信装置との間で通信を行うためのものである。ID検出回路は、メイン制御回路がスリープモードであるときに、他の通信装置から出力される通信装置自身のIDを受信するために設けられている。
【0028】
本実施形態の通信装置10a、10b、10c、10dには、それぞれを識別するためのIDが設定されている。IDとは、Identificationの略で、通信装置を個々に識別するための登録符号である。
【0029】
以下、メイン制御回路およびID検出回路の構成を説明するために、通信装置10a、10b、10c、10dのうち通信装置10aを代表例として、通信装置10aの構成について図2を参照して説明する。図2は、通信装置10aの回路構成を示すブロック図である。
【0030】
通信装置10aは、メイン制御回路20およびID検出回路30を備えている。メイン制御回路20は、本発明の通信回路を構成するもので、マイクロコンピュータなどから構成されて、メイン制御回路20は、通信装置10a以外の他の通信装置10b、10c、10dとの間でデジタル信号にてローカルエリアネットワークを介して通信を行う。本実施形態のローカルエリアネットワークとしては、CAN(Controller Area Network)が用いられている。
【0031】
メイン制御回路20は、アクティブモードとスリープモードとのうち一方から他方に移行可能に構成されている。アクティブモードは、他の通信装置10b、10c、10dとの間の通信を行う状態であり、スリープモードは他の通信装置10c、10dとの間の通信を休止する状態である。
【0032】
ID検出回路30は、エッジ検出回路40、カウンタ41、42、CR発振器43、比較器44、およびID検出制御回路45から構成されている。エッジ検出回路40は、ローカルエリアネットワークを介して他の通信装置10b、10c、10dから出力される通信信号の立ち下がり、および立ち上がりを検出する。
【0033】
カウンタ41は、第2のカウンタを構成するもので、通信信号のハイレベル期間(すなわち、H幅)をCR発振器43から出力される発振信号の周期を基準としてカウントする。
【0034】
カウンタ42は、第1のカウンタおよび計測手段を構成するもので、通信信号のローレベル期間(すなわち、L幅)をCR発振器43から出力される発振信号の周期を基準としてカウントする。ここで、本実施形態の発振信号の周期は、通信信号の1ビットのデータの時間長に比べて極めて短い時間である。CR発振器43は、コンデンサ、抵抗素子等から構成されて発振を行う発振回路である。本実施形態のCR発振器43の詳細については後述する。
【0035】
比較器44は、比算出手段を構成するもので、カウンタ41のカウント値Hに対するカウンタ42のカウント値Lの比H/Lを算出する。ID検出制御回路45は、第1、第2の判定手段および信号出力手段を構成するもので、後述するように、比較器44により算出される比H/Lに基づいて通信信号のうち通信装置10aのIDを含むID領域を受信したか否かを判定する。なお、本実施形態のID検出制御回路45は、第1、第2の算出手段およびサンプリング手段を構成している。
【0036】
次に、本実施形態のCR発振器43の詳細について図3を用いて説明する。図3はCR発振器43の回路構成を示す回路図である。
【0037】
CR発振器43は、NANDゲート50、NOTゲート51、52、抵抗素子R1〜R6、およびコンデンサC1〜C3から構成されている。
【0038】
NANDゲート50の出力端子はNOTゲート51の入力端子に接続されている。NOTゲート51の出力端子はNOTゲート52の入力端子に接続されている。NOTゲート52の出力端子は、CR発振器43の出力端子OUTを構成するもので、NANDゲート50の2つの入力端子のうち一方の端子に接続されている。2つの入力端子のうち一方の端子以外の他の端子は、後述するように、イネーブル信号ENとしてのリセット信号が入力される。
【0039】
コンデンサC1は共通接続端子60とグランド(図中GNDと記す)との間に接続されている。共通接続端子60はNANDゲート50の出力端子とNOTゲート51の入力端子とが接続されている部位である。コンデンサC2は共通接続端子61とグランドとの間に接続されている。共通接続端子61はNOTゲート51の出力端子とNOTゲート52の入力端子とが接続されている部位である。コンデンサC3は、NOTゲート52の出力端子とグランドとの間に接続されている。
【0040】
抵抗素子R1は、電源のプラス電極(図中VDDと記す)とNANDゲート50のプラス電源端子との間に接続されている。抵抗素子R2は、NANDゲート50のマイナス電源端子とグランドとの間に接続されている。抵抗素子R3は、電源のプラス電極とNOTゲート51のプラス電源端子との間に接続されている。抵抗素子R4は、NOTゲート51のマイナス電源端子とグランドとの間に接続されている。抵抗素子R5は、電源のプラス電極とNOTゲート52のプラス電源端子との間に接続されている。抵抗素子R6は、NOTゲート52のマイナス電源端子とグランドとの間に接続されている。
【0041】
次に、CR発振器43の作動の詳細について説明する。
【0042】
まず、NANDゲート50には、後述するメイン制御回路20からのリセット信号としてのハイレベル信号とNOTゲート52の出力信号としてのローレベル信号とが入力されると、NANDゲート50の出力信号のレベルはハイレベルとなる。
【0043】
これに伴い、NANDゲート50の出力端子からコンデンサC1に電流が流れてコンデンサC1に電荷が蓄積される。このため、コンデンサC1のプラス端子とマイナス端子との間の電圧が上昇する。この電圧が第1の閾値を越えると、NOTゲート51の出力信号のレベルがローレベルとなる。このため、コンデンサC2からNOTゲート51の出力端子側に電流が流れてコンデンサC2の電荷が減少する。これにより、コンデンサC2のプラス端子とマイナス端子との間の電圧が下降する。この電圧が第2の閾値より小さくなると、NOTゲート52の出力信号のレベルがハイレベルとなる。
【0044】
このようにハイレベルに変化したNOTゲート52の出力信号がNANDゲート50に入力されると、NANDゲート50の出力信号のレベルはローレベルとなる。
【0045】
これに伴い、コンデンサC1からNANDゲート50の出力端子側に電流が流れてコンデンサC1の電荷が減少する。このため、コンデンサC1のプラス端子とマイナス端子との間の電圧が下降する。この電圧が第1の閾値より低くなると、NOTゲート51の出力信号のレベルがハイレベルとなる。このため、NOTゲート51の出力端子からコンデンサC2に電流が流れてからコンデンサC2に電荷が蓄積される。これにより、コンデンサC2のプラス端子とマイナス端子との間の電圧が上昇する。この電圧が第2の閾値より大きくなると、NOTゲート52の出力信号のレベルがローレベルとなる。
【0046】
このようにローレベルに変化したNOTゲート52の出力信号がNANDゲート50に入力されると、上述のように、NANDゲート50の出力信号のレベルおよびNOTゲート51、52の出力信号のレベルが変化する。このため、NOTゲート52の出力信号のレベルはハイレベルとローレベルとが交互に繰り返される。すなわち、CR発振器43は発振して、NOTゲート52の出力信号としての発振信号を出力することになる。
【0047】
なお、NANDゲート50の2つの入力端子のうち一方の入力端子にリセット信号としてのローレベル信号が入力されているときには、他方の入力端子に入力される信号レベルが変化しても、NANDゲート50の出力信号がローレベルを維持するので、NOTゲート51、52の出力信号のレベルは変化しない。このため、CR発振器43の発振は停止することになる。
【0048】
次に、本実施形態の通信装置10aの具体的な作動の説明に先だって、本実施形態のCANにおける通信信号の構成について説明する。通信信号は、フレームを複数個、時間軸上並べられた構成になっている。図4(a)〜(c)に、通信信号において時間軸上に並べられた前側のフレームの後端側の構成と後側のフレームの先頭側の構成とを示している。図4(a)〜(c)において、A、B、C、D、E、Fは立ち下がり、或いは立ち上がりのタイミングを示す。
【0049】
フレームの先頭部分(図4(a)中のB−C期間)には、スタートオブフレーム(SOF)が配置される。スタートオブフレーム(SOF)は、信号レベルが1ビット数分ローレベルになる領域である。スタートオブフレーム(SOF)の後端側(図4(a)中のC−D期間)には、1ビット分ハイレベルになる領域が設定されている。この領域の後端側には、IDを格納するためのID領域が配置される。
【0050】
ID領域は、ローレベル期間とこのローレベル期間の後端側に配置されるハイレベル期間とから構成されている。つまり、通信信号において図4中のタイミングDの立ち下がりの後でID領域が始まることになる。ローレベル期間とは、信号レベルが所定ビット数分ローレベルになる期間である。ハイレベル期間とは、信号レベルが所定ビット数分ハイレベルになる期間である。ここで、IDは、ローレベル期間を構成する1ビットデータの個数(ビット数)とハイレベル期間を構成する1ビットデータの個数との組合せによって設定されている。
【0051】
図4(a)〜(c)のID領域には、それぞれ異なるIDが設定されている。図4(a)のID領域において、ローレベル期間は5ビットのデータから構成され、ハイレベル期間は5ビットのデータから構成されている。図4(b)のID領域において、ローレベル期間は4ビットのデータから構成され、ハイレベル期間は5ビットのデータから構成されている。図4(c)のID領域において、ローレベル期間は3ビットのデータから構成され、ハイレベル期間は5ビットのデータから構成されている。
【0052】
ID領域の後端側には、通信データ等が配置される。また、フレームの後端側(図4(a)中のA−Bの領域)には、フレームの終わりを示す領域が設定されている。この領域は、10ビット分以上に亘って信号レベルがローレベルになる領域である。
【0053】
次に、本実施形態の車載通信ネットワークの作動の具体例として、通信装置10aが通信装置10bからの通信信号によりウエイクアップする例について図5(a)、(b)を参照して説明する。図5(a)はID検出回路30の作動を示すフローチャートであり、図5(b)は図5(b)中のステップS100の詳細を示すフローチャートである。
【0054】
まず、メイン制御回路20が通信装置10c〜10dとの間の通信が所定期間以上停止すると、リセット信号をID検出回路30に出力してメイン制御回路20がスリープモードになる。ID検出回路30は、メイン制御回路20からのリセット信号を受けると、ステップS100において、通信装置10b、10c、10dのうちいずれかからIDを受信したか否かを判定する。ID検出回路30は、IDを受信していないときには、ステップS100の判定を繰り返す。一方、ID検出回路30は、通信装置10aのIDを含むID領域を有する通信信号を、例えば通信装置10bから受信したときには、YESと判定してステップS200に進んで、ウエイクアップ信号をメイン制御回路20に出力する。これに伴い、メイン制御回路20は、アクティブモードとなり、通信装置10c〜10dとの間の通信を開始する。これに加えて、メイン制御回路20は、リセット信号としてのローレベル信号をID検出回路30に出力する。これにより、CR発振器43は、リセット信号としてのローレベル信号を受けると発振を停止する。
【0055】
以下、ID検出回路30の図5(a)のステップS100の判定の詳細について説明する。
【0056】
まず、CR発振器43がメイン制御回路20からのリセット信号としてハイレベル信号を受けると、発振を開始して発振信号をカウンタ41、42に出力する。
【0057】
カウンタ41がリセット信号を受けるとリセットされる。これに伴い、カウンタ41がCR発振器43からの発振信号に基づいて通信信号のうちハイレベル期間のカウントを開始する。カウンタ42がCR発振器43からの発振信号に基づいて通信信号のうちローレベル期間のカウントを開始する。
【0058】
その後、エッジ検出回路40が、ステップS110において、通信信号の立ち上がりを検出したときにはYESとする。
【0059】
これに伴い、ステップS120において、比較器44がカウンタ41のカウント値Hに対するカウンタ42のカウント値Lの比H/Lを算出する。その後、ステップS130において、ID検出制御回路45が、比H/Lが10以上であるか否かを判定する。
【0060】
ここで、カウンタ41が通信信号のフレーム(図4中の前側のフレーム)の後端側のハイレベル期間(図4(a)〜(c)のA−B間)をカウントし、かつカウンタ42がフレーム(図4中の後側のフレーム)の先頭側(すなわち、SOF)のローレベル期間(図4(a)〜(c)のB−C間)をカウントした場合には、カウンタ41のカウント値Hに対するカウンタ42のカウント値Lの比H/Lが10以上となる。このため、ID検出制御回路45が、比H/Lが10以上であるとして、通信信号のフレームの先頭側のSOFを受信したとして、ステップS130でYESと判定する。
【0061】
次に、上記通信信号の立ち上がりの後に生じた1回目の立ち下がり(図4(a)〜(c)中のDのタイミング)をエッジ検出回路40が検出したときにはステップS140でYESとする。これに伴い、ステップS150において、ID検出制御回路45がリセット信号をカウンタ41、42に出力する。このため、カウンタ41、42がリセットされてカウンタ41、42がカウントを開始する。つまり、上記通信信号の立ち上がりの後に生じた1回目の立ち下がり時にて、カウンタ41、42がカウントを開始することになる。
【0062】
次に、上記通信信号の立ち上がりの後に生じた2回目の立ち下がり(図4(a)〜(c)中のFのタイミング)をエッジ検出回路40が検出したときにはステップS140でYESとする。
【0063】
このとき、カウンタ41が通信信号のフレームのうちタイミングE−F間(図4(a)〜(c)参照)のハイレベル期間をカウントし、かつカウンタ42がフレームのうちタイミングD−E間(図4(a)〜(c)参照)のローレベル期間をカウントすることになる。
【0064】
次に、比較器44がカウンタ41のカウント値Hに対するカウンタ42のカウント値Lの比H/Lを算出する。これに伴い、ID検出制御回路45は、ステップS180において、比較器44により算出された比H/Lが所定比に一致するか否かを判定する。所定比は、通信装置毎に予め設定されたIDに対応するものであって、本実施形態の所定比は、通信装置10aのIDに対応する比が用いられている。このことにより、通信信号のうちタイミングD−F間のID領域に含まれるIDが通信装置10aのIDに一致するか否かを判定することになる。
【0065】
比H/Lが所定比に一致しないときには、ステップS180にて、通信信号のうちID領域に含まれるIDが通信装置10aのIDに一致しないとしてNOとして、ステップS110に戻る。
【0066】
比H/Lが所定比に一致するときには、ステップS180にて、通信信号のうちID領域が通信装置10aのIDに一致するとしてYESとして、図5(a)のステップS200に移行する。これにより、ウエイクアップ信号をメイン制御回路20に出力する。これに伴い、メイン制御回路20は、アクティブモードとなる。
【0067】
以上説明した本実施形態によれば、通信装置10aにおいて、ID検出制御回路45が通信装置10aのIDを含むID領域を有する通信信号を例えば通信装置10bから受信したと判定したときには、ID検出制御回路45がメイン制御回路20にウエイクアップ信号を出力するので、メイン制御回路20がアクティブモードになる。
【0068】
ここで、通信ネットワークにおいて通信装置10aのIDに対応する通信装置10a以外の通信装置10c、10dは、ウエイクアップを行わない。このため、通信装置10aのIDに対応する通信装置10a以外の通信装置10c、10dが無駄に電力を消費することを防ぐことができる。
【0069】
本実施形態によれば、メイン制御回路20がスリープモードであるときに、ID検出回制御回路45が通信装置10aのIDを受信したか否かを判定するために、CR発振器43の発振信号をカウンタ41、42に与えることになる。ここで、一般的に、CR発振器43は、セラミック発振器や水晶発振器に比べて安価である傾向にある。このため、通信装置のID検出回路30の製造コストを低減することが可能である。
【0070】
ここで、本実施形態では、通信信号のローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比H/Lによって、通信信号のうち通信装置10aのIDを含むID領域を受信したか否かを判定している。ここで、CR発振器43は、その温度変化により、発振周波数に変化が生じる可能性がある。しかし、通信信号の一般的なビットレートを考慮すれば、CR発振器43の発振周波数の変化は非常に小さいものであるので、上述した比H/Lによって通信信号に含まれるID領域を受信したか否かを判定する判定は、十分問題なく、行うことができる。このため、ID領域を受信したか否かの判定に際して、誤判定が生じ難い。
【0071】
本実施形態では、上述の如く、通信信号のローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比H/Lによって、通信信号のうち通信装置10aのIDを含むID領域を受信したか否かを判定している。
【0072】
従来の通信ネットワークでは、複数の通信装置のうち1つの通信装置がスリープモードであるときにバス電圧の変化を監視して、バス電圧の変化を検知するとウエイクアップするものがある。この場合、ノイズによりバス電圧の変化が生じたときにも、そのバス電圧の変化を検知した通信装置が誤ってウエイクアップする恐れがある。
【0073】
これに対して、本実施形態では、比H/Lによって、通信信号のうち通信装置10aのIDを含むID領域を受信したか否かを判定するので、ノイズにより通信装置10aがウエイクアップすることを未然に防ぐことができる。
【0074】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、通信装置10aが通信信号のうちハイレベル期間のカウント値Hとローレベル期間のカウント値Lとの比H/Lを用いて、通信信号のうち通信装置10aのIDを含むID領域を受信したか否かを判定した例について説明したが、これに代えて、本実施形態では、通信信号のうちハイレベル期間を構成する1ビットデータの個数KHとローレベル期間を構成する1ビットデータの個数KLとをそれぞれ算出して、これら算出された個数KH、KLを用いて、通信信号のうち通信装置10aのIDを含むID領域を受信したか否かを判定する例について説明する。
【0075】
本実施形態では、ID検出制御回路45は繰り返し通信信号をサンプリングするアナログ/デジタル変換回路の機能をも有する。そして、本実施形態では、ID検出回路30の作動が上記第1実施形態に対して異なる。そこで、以下、図6を用いてID検出回路30の作動について説明する。図6は図5(b)に代えて用いられるもので、ID検出回路30の作動を示すフローチャートである。図6において図5(b)と同一の符号は同一ステップを示し、この同一ステップについては説明を省略する。
【0076】
まず、ステップS110、S120、S130において、エッジ検出回路40、カウンタ41、42が上記第1実施形態と同様に作動する。そして、ステップS130において、ID検出制御回路45が、比H/Lが10以上であるとしてYESと判定したときには、カウンタ41がタイミングA−B間のハイレベル期間をカウントし、かつカウンタ42がタイミングB−C間のローレベル期間をカウントした判定する。通信信号のうちタイミングB−C間のローレベル期間は、請求項3に記載の所定期間に対応するもので、1個の1ビットデータから構成されているものである。
【0077】
ここで、図7に示すように、通信信号においてタイミングB−C間のローレベル期間に対して通信信号の先頭側の信号レベル(図中A−B間の信号レベル)は、ハイレベルになっており、通信信号においてタイミングB−C間のローレベル期間に対して通信信号の後端側の信号レベル(図中C−D間の信号レベル)はハイレベルになっている。このため、タイミングBの立ち下がりからタイミングCの立ち上がりまでの期間をカウントすることにより、1ビットデータの時間長を測ることができる。
【0078】
そこで、ステップS130において、ID検出制御回路45が、比H/Lが10以上であるとしてYESと判定したときには、ID検出制御回路45は、ステップS135において、カウンタ42のカウンタ値K2を1ビットのデータの時間長(すなわち、1ビットデータの時間幅)Tとして設定する。
【0079】
次に、ステップS140において、上記通信信号の立ち上がりの後に生じた1回目の立ち下がり(図4(a)〜(c)中のDのタイミング)をエッジ検出回路40が検出したときには、ID検出制御回路45がYESとして、ステップS190に進む。
【0080】
このステップS190において、ID検出制御回路45は、上記1ビットのデータの時間長Tをサンプリング周期として、通信信号のサンプリングを開始する。つまり、上記通信信号の立ち上がりの後に生じた1回目の立ち下がり時にて、通信信号のサンプリングを開始することになる。図7中のS1、S2、S3、・・・S10は、ID検出制御回路45のサンプリングのタイミングを示している。タイミングS1は、1回目のサンプリングのタイミングであり、タイミングS2、S3、・・・S10は、2回目以降のサンプリングタイミングである。
【0081】
ここで、1回目のサンプリングは、1回目の立ち下がり後にて上記1ビットのデータの時間長Tの半分の時間(=T/2)が経過したタイミングに行われる。二回目以降のサンプリングは、1回目のサンプリングの後、時間長Tを1周期として繰り返し行われる。このことにより、1ビットのデータの開始時間と終了時間との間の中間のタイミングに繰り返しサンプリングが行われることになる。
【0082】
このようなタイミングS1、S2、S3、・・・S10にてID検出制御回路45が通信信号をサンプリングした結果、タイミングS1、S2、S3、・・・S10にて通信信号の信号レベルがローレベルであるかハイレベルであるかが判別される。この判別により、ID検出制御回路45は、ステップS190において、タイミングE−Fの間(図4(a)〜(c)参照)のハイレベル期間を構成するデータ個数KHとタイミングD−Eの間(図4(a)〜(c)参照)のローレベル期間を構成するデータ個数KLを求める。
【0083】
ここで、データ個数KH、KLの組合せにより通信信号のID領域に含まれるIDが設定されることになる。そこで、ステップS195において、ID検出制御回路45は、データ個数KH、KLがそれぞれ予め設定された個数であるか否かを判定する。
【0084】
このことにより、通信装置10aのIDを含むID領域を通信信号として受信したか否かを判定する。つまり、通信信号のうちタイミングD−F間の符号が通信装置10aのIDに一致するか否かを判定することになる。
【0085】
データ個数KH、KLがそれぞれ予め設定された個数に一致しないときには、ステップS195にて、通信信号のうちタイミングD−F間の符号が通信装置10aのIDに一致しないとしてNOとする。つまり、通信装置10aのIDを含むID領域を通信信号として受信していないとして、ステップS110に戻る。
【0086】
データ個数KH、KLがそれぞれ予め設定された個数に一致するときには、通信信号のうちタイミングD−F間の符号が通信装置10aのIDに一致するとして、ステップS195でYESとする。つまり、通信装置10aのIDを含むID領域を通信信号として受信したと判定することになる。これに伴い、上記第1実施形態と同様、図5のステップS200に移行して、ウエイクアップ信号をメイン制御回路20に出力する。
【0087】
以上説明した本実施形態によれば、比較器44は、通信信号のうちタイミングB−C間のローレベル期間のカウンタ値K1を1ビットのデータの時間長として、タイミングE−F間のローレベル期間を構成する1ビットデータの個数KHと、タイミングD−E間のハイレベル期間を構成する1ビットデータの個数KLとをそれぞれ算出する。これに加えて、ID検出制御回路45は、個数KH、KLがそれぞれ予め設定された個数であるか否かを判定することにより、通信信号のうちタイミングD−F間の符号が通信装置10aのIDに一致するか否かを判定することになる。これにより、ID検出制御回路45は、通信信号のうちタイミングD−F間の符号が通信装置10aのIDに一致すると判定したときには、上記第1実施形態と同様、ウエイクアップ信号をメイン制御回路20に出力してメイン制御回路20をアクティブモードにすることができる。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
本実施形態では、通信信号のうちローレベル期間を構成する1ビットデータの個数KLとハイレベル期間を構成する1ビットデータの個数KHとがそれぞれ予め設定された個数であるか否かを判定することにより、通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定する。
【0089】
一方、上記第1実施形態では、ローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比によって、通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定している。このため、互いに異なる2つのIDでも、ローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比が同一の場合には、2つのIDを判別することができない。
【0090】
これに対して、本実施形態では、上述の如く、信信号のうちローレベル期間を構成する1ビットデータの個数KLとハイレベル期間を構成する1ビットデータの個数KHとを用いて、通信信号のうちID領域を受信したか否かを判定する。このため、互いに異なる2つのIDにおいて、ローレベル期間のカウント値とハイレベル期間のカウント値との比が同一の場合でも、2つのIDを判別することができる。したがって、認識することができるIDを増やすことができる。
【0091】
(他の実施形態)
上述の第1、第2実施形態では、CR発振器43として、図3の回路図に示すものを用いた例について説明したが、これに代えて、コンデンサや抵抗素子を備えて発振回路を構成するものであれば、どうような回路構成のものでもよく、例えば、図8のCR発振器43を用いてもよい。
【0092】
図6のCR発振器43は、周知のウィーンブリッジ回路を構成するもので、オペアンプ70、抵抗素子R7、R8、R9、R10、コンデンサC4、C5、およびトランジスタ71から構成されている。
【0093】
オペアンプ70の非反転入力端子(+)には、コンデンサC4と抵抗素子R7との間の共通接続端子71に接続されている。コンデンサC4は、オペアンプ70の非反転入力端子(+)とグランドとの間に配置されている。抵抗素子R8は、オペアンプ70の非反転入力端子(+)とグランドとの間でコンデンサC4に対して並列に接続されている。抵抗素子R7およびコンデンサC5は、オペアンプ70の非反転入力端子(+)とオペアンプ70の出力端子との間に直列に接続されている。
【0094】
オペアンプ70の反転入力端子(−)は、抵抗素子R9、R10の間の共通接続端子72に接続されている。抵抗素子R9は、オペアンプ70の反転入力端子(−)とグランドとの間に接続されている。抵抗素子R10は、オペアンプ70の反転入力端子(−)とオペアンプ70の出力端子との間に直列に接続されている。このため、オペアンプ70の出力電圧が抵抗素子R9、R10により分圧された分圧電圧が共通接続端子72からオペアンプ70の反転入力端子(−)に与えられることになる。
【0095】
オペアンプ70のプラス側電源入力端子は、電源のプラス電極(図中VDDと記す)に接続され、オペアンプ70のマイナス側電源入力端子はトランジスタ71を介してグランドに接続されている。トランジスタ71のベース端子にメイン制御回路20からのリセット信号としてハイレベル信号が入力されたときに、トランジスタ71がオンする。このため、オペアンプ70のマイナス側電源入力端子がトランジスタ71を介してグランドに接続されてオペアンプ70が電源から電力供給されることになる。
【0096】
ここで、コンデンサC4、C5および抵抗素子R7、R8は、オペアンプ70の出力信号のうち所定周波数帯の信号成分だけを通過させるバンドパスフィルタ回路を構成している。このため、オペアンプ70の出力信号のうち所定周波数帯の信号成分だけオペアンプ70の非反転入力端子(+)に帰還される。このため、この帰還される信号成分と抵抗素子R9、R10による分圧電圧との差分がオペアンプ70により増幅される。このことにより、オペアンプ70から上記所定周波数帯内の周波数を有する正弦波信号が発振信号として出力されることになる。
【0097】
上記第1、第2実施形態では、図5(b)(或いは図6)のステップS130において、通信信号のうちタイミングA−B間およびタイミングB−C間(図4、図7)を受信したか否かを判定するために、比H/Lが10以上であるか否かを判定した例を示したが、処理を簡素化するために、比H/Lが10以上であるか否かを判定するのではなく、比H/Lが8以上であるか否かを判定してもよい。
【0098】
すなわち、カウンタ41のカウント値Hを2進数で示した場合において、カウンタ41のカウント値HのうちLSB側の2ビットのデータを削除した残りの値がカウント値Hを8で割算した値(=(カウント値H)/8)になる。この割算した値が1以上であるか否かを判定することにより、比H/Lが8以上であるか否かを判定することができる。
【0099】
そこで、カウンタ41のカウント値HのうちLSB側の2ビットのデータを削除して残りの値(=(カウント値H)/8)を求めるとともに、この残りの値が1より大きいか否かを判定することにより、カウンタ41のカウント値Hが8以上であるか否かを判定することができる。カウンタ41のカウント値Hが8以上であるときには、ステップS130でYESと判定し、カウンタ41のカウント値Hが8未満であるときには、ステップS130でNOと判定する。これにより、割り算を用いることなく、比較的簡素な処理で、ステップS130の判定を実現することができる。
【0100】
上記第2実施形態では、請求項3に記載の発明に係る通信信号の所定期間として、図7中のタイミングB−C間のローレベル期間を用いた例を示したが、これに代えて、図7中のタイミングA−B間のハイレベル期間を用いてもよい。
【0101】
ここで、A−B間のハイレベル期間は、10個のデータから構成されている期間であって、その期間に亘って信号レベルがハイレベルに設定されている。通信信号においてタイミングA−B間のハイレベル期間に対して通信信号の先頭側の信号レベルがローレベルになっており、通信信号においてタイミングA−B間のハイレベル期間に対して後端側の信号レベルがローレベルになっている。
【0102】
上記第1、第2実施形態では、図4中のタイミングD−F間のID領域がローレベル期間の後端側にハイレベル期間が配置される通信信号を用いた例を示したが、これに限らず、ID領域がハイレベル期間の後端側にローレベル期間が配置される通信信号を用いてもよい。
【0103】
この場合、上記第1実施形態では、ID領域を構成するハイレベル期間が開始される立ち上がり時にて、カウンタ41、42がカウントを開始することになる。上記第2実施形態では、ID領域を構成するハイレベル期間が開始される立ち上がり時にて、ID検出制御回路45による通信信号のサンプリングを開始することになる。
【0104】
上記第1、第2実施形態では、通信ネットワークを構成する通信装置10a、10b、10c、10dとしては有線にて通信を行うものを示したが、これに限らず、通信装置10a、10b、10c、10dとしては無線にて通信を行うものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 車載通信ネットワーク
10a 通信装置
10b 通信装置
10c 通信装置
10d 通信装置
20 メイン制御回路
30 ID検出回路
40 エッジ検出回路
41 カウンタ
42 カウンタ
43 CR発振器
44 比較器
45 ID検出制御回路
50 NANDゲート
51 NOTゲート
52 NOTゲート
R1 抵抗素子
R2 抵抗素子
R3 抵抗素子
R4 抵抗素子
R5 抵抗素子
R6 抵抗素子
R7 抵抗素子
R8 抵抗素子
R9 抵抗素子
R10 抵抗素子
C1 コンデンサ
C2 コンデンサ
C3 コンデンサ
C4 コンデンサ
C5 コンデンサ
70 オペアンプ
71 トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の通信装置との間で通信するアクティブモードと前記他の通信装置との間の通信を休止するスリープモードとのうち一方のモードから他方のモードに移行可能に構成されている通信回路(20)を有し、前記他の通信装置とともに通信ネットワークを構成する通信装置であって、
抵抗素子とコンデンサとから構成されて発振信号を出力する発振回路を構成するCR発振器(43)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記他の通信装置からの通信信号のローレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第1のカウンタ(42)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記他の通信装置からの通信信号のハイレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第2のカウンタ(41)と、
前記第1のカウンタのカウント値と前記第2のカウンタのカウント値との比を算出する比算出手段と、
前記比算出手段により算出された比が所定比であるか否かを判定することにより、前記他の通信装置からの通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定する第1の判定手段と、
前記通信信号のうちID領域を受信したと前記第1の判定手段が判定したときに、前記通信回路を前記アクティブモードに移行させるために、前記通信回路にウエイクアップ信号を出力する信号出力手段と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記他の通信装置から送信される通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側にはハイレベル期間とローレベル期間とが設定されており、
前記比算出手段の算出を実施するために用いられるカウント値を得るための前記第1、第2のカウンタのカウントに先だって、前記第1のカウンタが前記通信信号のローレベル期間をカウントし、かつ前記第2のカウンタが前記通信信号のハイレベル期間をカウントするようになっており、
前記第1のカウンタのカウント値と前記第2のカウンタのカウント値との比が所定条件を満たすか否かを判定することにより、前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したか否かを判定する第2の判定手段を備え、
前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したと前記第2の判定手段が判定した後に生じる前記通信信号の立ち下がり時、或いは立ち上がり時にて、前記比算出手段の算出を実施するために用いられるカウント値を得るための前記第1、第2のカウンタのカウントを開始することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
他の通信装置との間で通信するアクティブモードと前記他の通信装置との間の通信を休止するスリープモードとのうち一方のモードから他方のモードに移行可能に構成されている通信回路(20)を有し、前記他の通信装置とともに通信ネットワークを構成する通信装置であって、
抵抗素子とコンデンサとから構成されて発振信号を出力する発振回路を構成するCR発振器(43)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、他の通信装置から受信される通信信号のうち所定期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準として計測する計測手段とを備え、
前記所定期間は所定個の1ビットデータを含む期間であって、その期間に亘って信号レベルがハイレベルおよびローレベルのうち一方のレベルに設定されており、前記通信信号のうち前記所定期間に対して先頭側および後端側の信号レベルが一方のレベルと異なるレベルになっており、
前記計測手段による計測結果に基づいて前記通信信号の1ビットのデータの時間長を算出する第1の算出手段と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記他の通信装置から出力される通信信号のうちローレベル期間およびハイレベル期間を前記1ビットのデータの時間長を周期としてサンプリングするサンプリング手段と、
前記サンプリング手段によりサンプリングされた結果に基づいて前記ローレベル期間を構成する1ビットのデータの個数と前記ハイレベル期間を構成する1ビットのデータの個数を算出する第2の算出手段と、
前記第2の算出手段により算出される前記ローレベル期間を構成する1ビットのデータの個数と前記ハイレベル期間を構成する1ビットのデータの個数とがそれぞれ予め設定された個数であるか否かを判定することにより、前記通信信号のうち当該通信装置のIDを含むID領域を受信したか否かを判定する第1の判定手段と、
前記通信信号のうち前記ID領域を受信したと前記第1の判定手段が判定したときに、前記通信回路を前記アクティブモードに移行させるために、前記通信回路にウエイクアップ信号を出力する信号出力手段と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記通信信号のうち前記IDに対する先頭側にはハイレベル期間とローレベル期間とが設定されており、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記サンプリング手段のサンプリングに先だって、前記通信信号のローレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第1のカウンタ(42)と、
前記通信回路が前記スリープモードであるときに、前記サンプリング手段のサンプリングに先だって、前記通信信号のハイレベル期間を前記CR発振器から出力される発振信号を基準としてカウントする第2のカウンタ(41)と、
前記第1のカウンタのカウント値と前記第2のカウンタのカウント値との比が所定条件を満たすか否かを判定することにより、前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したか否かを判定する第2の判定手段を備え、
前記通信信号のうち前記ID領域に対する先頭側に設定されるハイレベル期間とローレベル期間とを受信したと前記第2の判定手段が判定した後に生じる前記通信信号の立ち下がり時、或いは立ち上がり時にて、前記サンプリング手段のサンプリングを開始することを特徴とする請求項3に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−160836(P2012−160836A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18029(P2011−18029)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】