説明

通信装置

【課題】代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率を高めることが可能な通信装置を提供する。
【解決手段】MFP1が備える通信部21は、通常モードにおいて、SNMP要求に対して応答し、スリープモードにおいて、通電が停止される通常応答部22と、スリープモードにおいて、SNMP要求を受信した場合、代理応答を行う代理応答部23と、通常モードにおいて受信されたSNMP要求が有するオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うと判定された場合、該オブジェクトIDに対して、通常応答部22が応答した情報と関連付けて、該オブジェクトIDを代理応答部に記憶させる設定部26とを含む。代理応答部23は、設定されたオブジェクトIDを有するSNMP要求をスリープモードにおいて受信した場合、該オブジェクトIDと関連付けて記憶された情報を用いて代理応答を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自機の省電力制御を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からプリンタ、複合機といった画像形成装置に搭載された通信装置が知られている。これらの通信装置の中には、画像形成装置がスリープモードに移行すると共に、スリープモードに移行し、消費電力を低減する装置がある。例えば、下記特許文献1には、プリンタに搭載され、スリープモードに移行する通信装置が記載されている。
【0003】
特許文献1に記載された通信装置は、スリープモードにおいて、通電が停止されるので、ホストコンピュータから送信される情報取得要求に対して、応答ができない状態となる。このため、下記特許文献1に記載されたシステムは、通信装置を代理して応答する代理サーバを備えている。この代理サーバは、ネットワークに接続された複数のプリンタに関する情報を格納し、ホストコンピュータからの情報取得要求に対して、格納した情報を返信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−165653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のシステムでは、代理応答を行うために、プリンタの通信装置とは別体の代理サーバが設置されている。これに対して、通信装置自体が、スリープモードにおいて代理応答を行う代理応答部を備えることが考えられる。この場合、代理応答部には、通常モードで応答を行う通常応答部より電力消費量が小さいことが要求される。このため、代理応答部に搭載されるRAMは、容量が小さいことが好ましい。
【0006】
代理応答が必要な情報取得要求には、SNMP(Simple Network Management Protocol)要求がある。SNMPは、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)が、プリンタ等の通信装置の情報を取得するために利用される。SNMPでは、要求する情報毎にオブジェクトIDが設定されている。そして、PCがオブジェクトIDを含むSNMP要求を通信装置に送信し、通信装置がオブジェクトIDに対応する情報を返すことで、PCは、通信装置の状態を把握する。
【0007】
オブジェクトIDは、使用されるSNMPマネージャソフトによって異なる。このため、SNMPマネージャソフト毎に設定された全てのオブジェクトIDについて、代理応答部が十分な情報を記憶するには、比較的大きな記憶容量が必要となる。ここで、代理応答部の消費電力量を抑制するためにRAMの容量を小さくすると、代理応答部には、十分な情報を記憶できない場合がある。代理応答部は、代理応答が不可能なSNMP要求を受信した場合、自機を通常モードに復帰させ、通常応答部が応答することになる。受信したSNMP要求に対して、代理応答が不可能な場合が多いと、自機を通常モードにたびたび復帰させることになり、省電力効果が低下する。
【0008】
そこで本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率を高めることが可能な通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る通信装置は、通常モード及びスリープモードを含む電力モードの移行制御を行う電力制御部と、パケットの送受信を行う通信部とを備え、通信部は、スリープモードでは、電力制御部によって通電が停止され、通常モードでは、SNMP要求を受信した場合、該SNMP要求が有するオブジェクトIDに対応した情報を含む応答パケットを返信する通常応答部と、スリープモードにおいて、SNMP要求を受信した場合、代理応答を行う代理応答部と、代理応答の設定を行うオブジェクトIDの一覧を設定候補ID一覧として記憶する記憶部と、通常モードにおいて受信されたSNMP要求が有するオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うか否かを、設定候補ID一覧に基づいて判定する判定部と、判定部によって代理応答の設定を行うと判定されたオブジェクトIDと関連付けて、該オブジェクトIDについて通常応答部が応答した情報を代理応答部に記憶させ、代理応答の設定を行う設定部とを含み、代理応答部は、設定部によって設定されたオブジェクトIDを有するSNMP要求をスリープモードにおいて受信した場合、該オブジェクトIDと関連付けて記憶されている情報を用いて代理応答を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る通信装置によれば、通常モードでは、SNMP要求が受信された場合、応答パケットが、通常応答部によって返信される。この応答パケットには、SNMP要求に含まれたオブジェクトIDに対応した情報が含まれる。一方、SNMP要求に含まれたオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うか否かが、設定候補ID一覧に基づいて判定される。代理応答を行うと判定された場合、そのオブジェクトIDと関連付けて、応答パケットに含まれた情報が、代理応答部に記憶される。これにより、代理応答を行うオブジェクトIDが、代理応答部に設定される。そして、設定されたオブジェクトIDを有するSNMP要求が、スリープモードにおいて受信された場合、該オブジェクトIDと関連付けて記憶された情報を用いて、代理応答部による応答が行われる。以上により、通常モードにおいて実際に応答が行われたオブジェクトIDについて、代理応答が可能となる。一般的に、通常モードにおいて受信されたオブジェクトIDが、スリープモードにおいても受信される確率が高い。従って、代理応答を行う確率を高めることができる。一方、SNMPマネージャソフト毎に設定された全てのオブジェクトIDに関する情報を記憶する必要がないので、代理応答部の記憶容量を増大させる必要もない。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率を高めることができる。
【0011】
本発明に係る通信装置では、設定部が、通常応答部によって新たに応答が行われたオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行うことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、新たに通常応答部によって応答が行われたオブジェクトIDが、代理応答を行うオブジェクトIDとして優先して設定される。これにより、例えば、代理応答部の記憶容量が足りない場合には、古いオブジェクトIDより、新たに応答が行われたオブジェクトIDが、優先して設定される。この新たに応答が行われたオブジェクトIDの方が、古いオブジェクトIDより、次のスリープモードにおいて受信される確率が高い。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率をより高めることができる。
【0013】
本発明に係る通信装置では、記憶部が、設定候補ID一覧に含まれるオブジェクトIDのうち、優先して設定されるオブジェクトIDの一覧を優先ID一覧として記憶し、設定部は、優先ID一覧に含まれるオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行うことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、優先ID一覧に含まれるオブジェクトIDが、代理応答を行うオブジェクトIDとして優先して設定される。これにより、代理応答部の記憶容量が足りない場合には、優先ID一覧に含まれていないオブジェクトIDより、優先ID一覧に含まれているオブジェクトIDを優先して設定することができる。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率をより高めることができる。
【0015】
本発明に係る通信装置では、オブジェクトID毎に、受信した回数をカウントするカウント部を更に備え、設定部は、カウント部によるカウント数が多いオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行うが好ましい。
【0016】
この構成によれば、オブジェクトID毎に、受信した回数がカウントされ、カウント数の多いオブジェクトIDが、優先して代理応答を行うオブジェクトIDとして設定される。このため、実際に要求される確率が高いオブジェクトIDを優先して設定することができる。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率をより高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る通信装置によれば、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係るMFPの構成を示すブロック図である。
【図2】代理応答の設定処理を示すフロー図である。
【図3】代理応答処理を示すフロー図である。
【図4】変形例に係るMFPの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、図1を参照して、実施形態に係る通信装置が搭載されたMFP(Multifunction Peripheral)1を例にして説明する。図1は、MFP1の構成を示すブロック図である。
【0020】
MFP1は、プリント、スキャン、FAX(ファクシミリ)を含む画像処理を行う複合機である。また、MFP1は、LAN(ローカルエリアネットワーク)90を介してパーソナルコンピュータ(PC)3から送信されるジョブ要求を受信し、上記の画像処理を実行する。
【0021】
このMFP1は、自機の省電力制御を行う。ジョブ要求が所定時間なかった場合に、MFP1は、通常モードからスリープモードへ移行する。スリープモードでは、FAXの着信を検知する部分とパケットの代理応答を行う部分(代理応答部23)とを除き、通電が停止される。このスリープモードにおいてPC3からパケットが受信された場合、代理応答部23によって代理応答が可能な場合は、代理応答が行われる。代理応答が不可能な場合は、通常モードに復帰後、応答が行われる。
【0022】
引き続いて、MFP1を構成する各構成要素について順に説明する。MFP1は、上記の画像処理を実行するために、プリンタ10、スキャナ11、NCU(Network Control Unit)12、モデム13、FAX制御部14、コーディック15、及び画像記憶部16を備えている。
【0023】
本実施形態のプリンタ10は、電子写真方式により印刷を行うプリンタである。スキャナ11は、CCD等によって構成され、原稿を光学的に読み取って画像データを生成する。NCU12は、モデム13と接続され、モデム13と公衆電話回線(PSTN)91との接続を制御する。FAX制御部14が、NCU12及びモデム13を制御することにより、FAXの送受信が行われる。
【0024】
コーディック15は、スキャナ11によって生成された画像データを符号化圧縮し、符号化圧縮されている画像データを復号化する。画像記憶部16は、コーディック15によって符号化圧縮された画像データ、FAXデータ、PC3から送信されたプリントデータ等を記憶する。
【0025】
また、MFP1は、ユーザから操作を受け付けるために、操作部17及び表示部18を備えている。操作部17は、各種のキーを備えて構成され、ユーザから各種の操作を受け付ける。表示部18は、例えば液晶ディスプレイを含んで構成され、各種の情報を表示する。
【0026】
このMFP1は、自機を統合的に制御するための制御部19を備えている。この制御部19は、物理的には、CPU、フラッシュROM、SDRAM、及び、電池に接続されたSRAM等を備えている。フラッシュROMには、各種のプログラムが記憶されている。SDRAMは、主記憶メモリとして使用される。電池に接続されたSRAMには、短縮ダイヤル、エラー情報、及び各種の設定等が記憶される。
【0027】
制御部19は、機能的な構成要素として、電力制御部20を有している。電力制御部20は、自機の電力モードの移行制御を行う。ユーザによってMFP1の電源が投入された際には、MFP1は、まず、通常モードとなる。通常モードは、全ての構成要素に電力が供給された状態である。一定時間以上、ユーザからの操作が無い場合に、電力制御部20は、通常モードからスリープモードへ電力モードを移行する。
【0028】
電力制御部20は、スリープモードでは、NCU12の一部及び代理応答部23を除く各構成要素に対する通電を停止する。NCU12の一部に電力を供給するのは、FAXの着信を検出するためである。NCU12は、スリープモードにおいて、FAXの着信を検出した場合、起動信号を出力する。また、代理応答部23は、スリープモードにおいて、応答不可能な要求パケットを受信した場合、起動信号を出力する。電力制御部20は、スリープモードにおいて、NCU12又は代理応答部23から起動信号が出力された場合、全ての構成要素に対して通電を開始し、電力モードを通常モードに復帰させる。
【0029】
MFP1が備える通信部21は、LAN90を介してパケットの送受信を行うネットワークインターフェースとして機能する。通信部21は、機能的な構成要素として、通常モードにおいてパケットの送受信を行う通常応答部22と、スリープモードにおいて代理応答を行う代理応答部23とを有する。更に、通信部21は、代理応答の設定を行うための機能的な構成要素として、記憶部24、判定部25、及び設定部26を有している。
【0030】
通信部21は、物理的には、通常応答部22、記憶部24、判定部25、及び設定部26の機能を発揮するチップと、代理応答部23の機能を発揮するチップとの2つのチップを含んで構成されている。それぞれのチップが、演算を行うCPU、プログラム等を記憶するROM、各種データを記憶するRAM等を有している。
【0031】
通常モードでは、通常応答部22の機能を有するチップに電力が供給され、通常応答部22、記憶部24、判定部25、及び設定部26の機能が発揮される。スリープモードでは、通常応答部22の機能を有するチップに対する通電が停止される。代理応答部23の機能を有するチップには、スリープモードにおいても電力が供給され、代理応答機能が発揮される。
【0032】
通信部21の各構成要素について詳細に説明する。通常応答部22は、通常モードにおいて、LAN90を介してパケットの送受信を行うネットワークインターフェースとして機能する。また、通常応答部22は、画像データが添付された電子メールの送受信を行うことにより、IFAX機能を発揮する。更に、通常応答部22は、PC3を介して行われるユーザからの操作を受け付ける。
【0033】
通信部21が送受信するパケットには、SNMP(Simple Network Management Protocol)パケットがある。SNMPパケットは、例えば、PC3が、MFP1の情報を取得するために利用される。MFP1の情報には、ジョブの蓄積状況、用紙カセット内の用紙の有無、トナーの有無の情報等が含まれる。
【0034】
SNMPでは、要求する情報毎にオブジェクトIDが設定されている。PC3が、オブジェクトIDを含むSNMP要求をMFP1へ送信し、MFP1が、オブジェクトIDに対応する情報を返すことで、PC3は、MFP1の状態を把握することができる。SNMPマネージャソフトは複数あり、SNMPマネージャソフト毎、かつ、要求する情報毎に、オブジェクトIDが設定されている。
【0035】
通常モードでは、通常応答部22が、SNMP要求を受信した場合、該SNMP要求に含まれるオブジェクトIDに対応した情報を含む応答パケットを返信する。より詳細には、通常応答部22は、受信したSNMP要求を解析し、SNMPマネージャソフト毎に設定されたオブジェクトIDに該当する情報を把握する。そして、通常応答部22は、受信したオブジェクトIDに該当する情報を、例えば、メイン制御部19から取得し、取得した情報を含む応答パケットを生成し、返信する。
【0036】
スリープモードにおいては、通常応答部22に対する通電が停止されるので、通常応答部22は、パケットの応答を行うことができなくなる。このため、スリープモードでは、代理応答部23が、SNMPパケットについて代理応答を行う。代理応答部23は、消費電力及びコストを抑えるために、比較的スペックの低いCPU、ROM、RAMから構成されている。このため、代理応答部23の通信機能は、通常応答部22より制限されている。
【0037】
特に、RAMの容量が小さいため、代理応答部23は、複数のSNMPマネージャソフト毎に設定された全てのオブジェクトIDについて、応答を行うために必要な全ての情報記憶することはできない。このため、通常モードにおいて通常応答部22による応答が行われたオブジェクトIDについて、代理応答部23がスリープモードにおいて代理応答を行うことができるように、代理応答の設定が行われる。この代理応答の設定を行うための記憶部24、判定部25、及び設定部26について説明する。
【0038】
記憶部24は、設定候補ID一覧を記憶している。この設定候補ID一覧は、代理応答の設定を行うオブジェクトIDの一覧である。すなわち、設定候補ID一覧は、代理応答部23に設定することにより、代理応答が可能となるオブジェクトIDの一覧である。この設定候補ID一覧は、予め記憶部24に記憶されている。
【0039】
判定部25は、通常モードにおいて、SNMP要求が受信された場合に、該SNMP要求が有するオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うか否かを設定候補ID一覧に基づいて判定する。判定部25は、受信したオブジェクトIDが、設定候補ID一覧に含まれていれば、代理応答の設定を行うと判定する。一方、判定部25は、受信したオブジェクトIDが、設定候補ID一覧に含まれていなければ、代理応答の設定を行わないと判定する。
【0040】
設定部26は、代理応答の設定を行うと判定されたオブジェクトIDを、代理応答部23に設定する。具体的には、設定部26は、代理応答の設定を行うと判定されたSNMP要求のヘッダー情報と、通常応答部22が応答した情報とを関連付けて、代理応答部23に記憶させる。SNMP要求のヘッダー情報には、パケットがSNMP要求である旨の情報、オブジェクトID等が含まれる。
【0041】
設定部26は、通常モードにおいて、SNMP要求が受信された順に、オブジェクトIDを代理応答部23に設定する。そして、代理応答部23の空き容量が足りなくなった場合、新たに応答が行われたオブジェクトIDを優先して設定する。すなわち、設定部23は、代理応答部23の空き容量が足りなくなった場合、最も古いオブジェクトIDの設定を代理応答部23から削除し、新たに応答が行われたオブジェクトIDを設定する。
【0042】
本実施形態に係る代理応答部23は、ICMP要求、及び、ARP要求について、代理応答を行うように設定されていてもよい。ICMP要求は、ICMP(Internet Control Message Protocol)によって、接続状況を確認するために相手からの応答を要求するパケットである。ARP要求は、ARP(Address Resolution Protocol)によって、MACアドレスを問い合わせるために応答を要求するパケットである。ICMP要求及びARP要求についても、代理応答部23は、それぞれのヘッダー情報を記憶している。また、代理応答部23は、ヘッダー情報と関連付けて、応答する情報を記憶している。
【0043】
代理応答部23は、スリープモードにおいて、パケットを受信した場合、受信したパケットのヘッダーと、設定されているヘッダー情報とを比較し、一致するか否かを判定する。代理応答部23は、SNMP要求のヘッダー情報と一致した場合、該ヘッダー情報と関連付けて記憶された情報を含む応答パケットを生成し、返信する。すなわち、代理応答部23は、設定されたオブジェクトIDを含むSNMP要求を受信した場合、該オブジェクトIDと関連付けて記憶された情報を用いて代理応答を行う。
【0044】
また、代理応答部23は、設定されたICMP要求又はARP要求のヘッダー情報と一致するパケットについては、関連付けて記憶された情報を含む応答パケットを返信する。このように、代理応答部23は、設定されたヘッダー情報と一致するパケットについては、代理応答が可能と判断し、関連付けて記憶された情報を用いて代理応答を行う。
【0045】
一方、代理応答部23は、設定されたヘッダー情報と一致しないパケットについては、代理応答が不可能と判断し、起動信号を出力する。これにより、MFP1が通常モードに復帰し、通常応答部22が、応答を行う。なお、代理応答部23には、画像処理等のジョブ要求ついて、代理応答の設定がされていないので、代理応答部23は、ジョブ要求を受信した場合、起動信号を出力することになる。この場合、MFP1が通常モードに復帰した後、通常応答部22が応答を行い、要求された画像処理が行われる。
【0046】
引き続いて、MFP1の動作について説明する。まず、図2を参照して、通常モードにおける代理応答を設定する処理について説明する。図2は、代理応答の設定処理を示すフロー図である。本処理は、通常モードにおいて、LAN90からSNMP要求を受信した場合に行われる。
【0047】
まず、ステップS101において、SNMP要求が受信されると、ステップS102へ処理が移行する。ステップS102では、受信したSNMP要求に含まれるオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うか否かが判定される。SNMP要求に含まれるオブジェクトIDが、設定候補ID一覧に含まれていない場合、代理応答の設定を行わないと判定される。この場合、代理応答の設定が行われずに、処理が終了する。
【0048】
一方、受信されたSNMP要求に含まれるオブジェクトIDが、設定候補ID一覧に含まれている場合、代理応答の設定を行うと判定され、処理がステップS103へ移行する。ステップS103では、受信されたSNMP要求に含まれるオブジェクトIDについて、代理応答の設定が行われる。すなわち、オブジェクトIDと、該オブジェクトIDに対して通常応答部22が応答した情報とが関連付けて、代理応答部23に記憶される。
【0049】
なお、ステップS103において、代理応答部23の空き容量が足りないと設定部26によって判断された場合、最も古いオブジェクトIDの設定が削除され、ステップS101において受信されたオブジェクトIDが設定される。これにより、新たに応答が行われたオブジェクトIDを優先して、代理応答を行うオブジェクトIDとして設定することができる。また、同一のオブジェクトIDについて、既に代理応答の設定がされている場合は、古い設定を削除し、新たな情報と関連付けて該オブジェクトIDを代理応答部23に記憶させてもよい。これにより、オブジェクトIDに対応する情報を更新することができる。
【0050】
次に、図3を参照して、代理応答部23による代理応答処理について説明する。図3は、代理応答処理を示すフロー図である。本処理は、スリープモードにおいて、LAN90からパケットを受信した場合に行われる。
【0051】
まず、ステップS111において、パケットが受信されると、ステップS112へ処理が移行する。ステップS112では、受信したパケットについて、代理応答が可能か否かが判断される。これは、代理応答部23に設定されたヘッダー情報のうち、受信したパケットのヘッダー情報と一致するヘッダー情報が記憶されているか否かに基づいて、判断される。
【0052】
代理応答が不可能と判断された場合、処理が、ステップS113へ移行する。ステップS113では、起動信号が出力され、MFP1が通常モードに復帰する。続いて、ステップS114では、ステップS111において受信されたパケットに対する応答が、通常応答部22によって行われる。
【0053】
一方、ステップS112において、代理応答が可能であると判断された場合、処理が、ステップS115へ移行する。ステップS115では、ステップS111において受信されたパケットのヘッダーと一致するヘッダー情報が、SNMP要求のヘッダー情報である場合、受信されたオブジェクトIDと関連付けて記憶された情報が特定される。そして、該情報を含む応答パケットが、代理応答部23によって返信される。
【0054】
また、ステップS115では、ステップS111において受信されたパケットのヘッダーと一致するヘッダー情報が、ICMP要求又はARP要求のヘッダー情報である場合、関連付けて記憶された情報を含む応答パケットが、代理応答部23によって返信される。以上により、ステップS115では、MFP1を通常モードに復帰させることなく、代理応答が行われる。
【0055】
以上説明した本実施形態に係るMFP1によれば、通常モードにおいてSNMP要求が受信された場合、該SNMP要求に含まれるオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うか否かが、設定候補ID一覧に基づいて判定される。代理応答の設定を行うと判定された場合、オブジェクトIDが、代理応答部23に設定される。そして、設定されたオブジェクトIDを含むSNMP要求がスリープモードにおいて受信された場合、該オブジェクトIDと関連付けて記憶された情報を用いて、代理応答部23による応答が行われる。以上により、通常モードにおいて実際に応答が行われたオブジェクトIDについて、代理応答が可能となる。一般的に、通常モードにおいて受信されたオブジェクトIDが、スリープモードにおいても受信される確率が高い。従って、代理応答を行う確率を高めることができる。一方、SNMPマネージャソフト毎に設定された全てのオブジェクトIDに関する情報を記憶する必要がないので、代理応答部の記憶容量を増大させる必要もない。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率を高めることができる。
【0056】
また、MFP1では、新たに通常応答部22によって応答が行われたオブジェクトIDが、優先して設定される。このため、代理応答を行うオブジェクトIDの設定を最新状況に合わせて自動的に更新することができる。そして、新たに応答が行われたオブジェクトIDの方が、古いオブジェクトIDより、次のスリープモードにおいて受信される確率が高い。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率をより高めることができる。
【0057】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、代理応答部23の記憶容量が足りなくなった場合に、新たに応答が行われたオブジェクトIDを優先して設定することとしたが、これに限られない。この他に、優先度を考慮して代理応答の設定を行う2つの変形例について、説明する。
【0058】
第1の変形例では、優先して設定されるオブジェクトIDを予め記憶し、該オブジェクトIDを優先して設定する。この場合、記憶部24は、設定候補ID一覧に含まれるオブジェクトIDのうち、優先して設定されるオブジェクトIDの一覧を優先ID一覧として予め記憶する。そして、設定部26は、代理応答部23の記憶容量が足りなくなった場合、受信したオブジェクトIDが、優先ID一覧に含まれているか否かを判断する。
【0059】
受信したオブジェクトIDが、優先ID一覧に含まれている場合、設定部26は、既に設定されているオブジェクトIDのうち、優先ID一覧に含まれていないオブジェクトIDの設定を削除し、受信したオブジェクトIDを代理応答部23に設定する。受信したオブジェクトIDが、優先ID一覧に含まれていない場合、設定部26は、受信したオブジェクトIDを新たに設定しない。以上により、優先ID一覧に含まれるオブジェクトIDを優先して、代理応答を行うオブジェクトIDとして設定する。
【0060】
この第1の変形例に係る構成によれば、代理応答部23の記憶容量が足りない場合には、優先ID一覧に含まれていないオブジェクトIDの設定より、優先ID一覧に含まれているオブジェクトIDを優先して設定することができる。従って、受信頻度の高いオブジェクトIDを優先ID一覧に含めることにより、受信頻度の高いオブジェクトIDが、優先して設定される。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率をより高めることができる。
【0061】
第2の変形例では、オブジェクトID毎に受信した回数をカウントし、カウント数が多いオブジェクトIDを優先して設定する。この場合、図4に示すように、第2の変形例に係るMFP1Aは、通信部21Aを備える。通信部21Aは、上述した通信部21の構成要素に加えて、オブジェクトID毎に受信した回数をカウントするカウント部27を更に備える。カウント部27の機能は、例えば、通常応答部22の機能を有するチップに搭載される。
【0062】
カウント部27は、通常モードにおいて、オブジェクトID毎に受信した回数をカウントする。記憶部24は、オブジェクトID毎に、カウント部27によるカウント数を記憶する。設定部26は、代理応答部23の記憶容量が足りなくなった場合、新たに受信したオブジェクトIDのカウント数と、既に代理応答部23に設定されたオブジェクトIDのうち最もカウント数の小さいオブジェクトIDのカウント数とを比較する。
【0063】
そして、設定部26は、新たに受信したオブジェクトIDのカウント数の方が大きい場合、最もカウント数の小さい設定済みのオブジェクトIDを削除し、新たに受信したオブジェクトIDを設定する。一方、設定部26は、新たに受信したオブジェクトIDのカウント数の方が小さい場合、該オブジェクトIDについて、設定を行わない。以上の処理により、設定部26は、カウント数が多いオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行う。従って、実際に応答を要求される確率の高いオブジェクトIDを優先して設定することができる。従って、代理応答部の記憶容量を増大させることなく、代理応答が可能な確率をより高めることができる。
【0064】
本発明は、上記変形例に限定されるものではなく更なる変形も可能である。例えば、上記実施形態では、本発明の通信装置が搭載された装置として、複数の画像処理機能を有するMFPについて説明したが、単機能のプリンタ等であってもよいし、画像処理機能を有していなくてもよい。また、上記実施形態では、通常応答部22、記憶部24、判定部25、及び設定部26を1チップで構成するとしたが、複数のチップで構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 MFP
10 プリンタ
11 スキャナ
12 NCU
13 モデム
14 FAX制御部
19 メイン制御部
20 電力制御部
21 通信部
22 通常応答部
23 代理応答部
24 記憶部
25 判定部
26 設定部
27 カウント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常モード及びスリープモードを含む電力モードの移行制御を行う電力制御部と、
パケットの送受信を行う通信部とを備え、
前記通信部は、
前記スリープモードでは、前記電力制御部によって通電が停止され、前記通常モードでは、SNMP要求を受信した場合、該SNMP要求が有するオブジェクトIDに対応した情報を含む応答パケットを返信する通常応答部と、
前記スリープモードにおいて、SNMP要求を受信した場合、代理応答を行う代理応答部と、
代理応答の設定を行うオブジェクトIDの一覧を設定候補ID一覧として記憶する記憶部と、
前記通常モードにおいて受信されたSNMP要求が有するオブジェクトIDについて、代理応答の設定を行うか否かを、前記設定候補ID一覧に基づいて判定する判定部と、
前記判定部によって代理応答の設定を行うと判定されたオブジェクトIDと関連付けて、該オブジェクトIDについて前記通常応答部が応答した前記情報を前記代理応答部に記憶させ、代理応答の設定を行う設定部と、
を含み、
前記代理応答部は、前記設定部によって設定されたオブジェクトIDを有するSNMP要求を前記スリープモードにおいて受信した場合、該オブジェクトIDと関連付けて記憶されている前記情報を用いて代理応答を行うことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記通常応答部によって新たに応答が行われたオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記設定候補ID一覧に含まれるオブジェクトIDのうち、優先して設定されるオブジェクトIDの一覧を優先ID一覧として記憶し、
前記設定部は、前記優先ID一覧に含まれるオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
オブジェクトID毎に、受信した回数をカウントするカウント部を更に備え、
前記設定部は、前記カウント部によるカウント数が多いオブジェクトIDを優先して、代理応答の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227730(P2012−227730A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93494(P2011−93494)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】