通気性包装体及びその構成部材
【課題】 接着に際しての接着条件を緩和し、幅の広い接着条件においても、完全な密封、医療器具の滅菌処理時における時間の短縮、滅菌ガスの不存在などに加えて、特に、微細な繊維の飛散により医療器具を汚染することのない医療器具用包装体に好適な通気性包装体を提供する。
【解決手段】 一面の全面が一枚のプラスチック製シート２、他面が通気性シート４と易剥離性感熱性接着剤６の塗布されたプラスチック製フィルム３の２枚から構成され、前記プラスチック製シート２と通気性シート４とを熱融着、プラスチック製シート２とプラスチック製フィルム３および通気性シート４を、易剥離性感熱性接着剤により接着して通気性包装体１とする。
【解決手段】 一面の全面が一枚のプラスチック製シート２、他面が通気性シート４と易剥離性感熱性接着剤６の塗布されたプラスチック製フィルム３の２枚から構成され、前記プラスチック製シート２と通気性シート４とを熱融着、プラスチック製シート２とプラスチック製フィルム３および通気性シート４を、易剥離性感熱性接着剤により接着して通気性包装体１とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
この発明は、通気性を有する包装体、特に、通気性を利用した滅菌処理と滅菌状態の維持が良好に行える、医療器具用の包装・保管に好適な包装体及びその構成部材に関するものであって、包装技術分野に属するものである。
【背景技術】
【０００２】
注射器の針やシリンジなどを含め多くの医療器具は、滅菌処理が施された後に、その滅菌状態を維持した状態で、密封容器に保管される必要があるので、そのための密封容器が種々提供されている。
【０００３】
例えば、特開平１０−１２９７２０号公報（特許文献１）には、医療器具等を殺菌し密封保管するガス滅菌用包装体として、滅菌処理のために用いられる通気性の不織布シートの通気性が、接着のためのヒートシール剤によって損なわれる、あるいは開封する際に、接着した不織布シートが、その繊維質層にて破壊を生じて、微細な繊維を飛散させ、収納された医療器具を汚染するという問題点を解消するという包装体が提案されている。
【０００４】
この特許文献１で提案されたガス滅菌用包装体は、通気性の不織布シートと、内面に易剥離性のヒートシール剤がコーティング、もしくはラミネートされた合成樹脂シートとを重ね合わせ、その重ね合わせシートの外周端部に沿って互いに接着シールされていることを特徴とするものである。
【０００５】
また、特許第３３７６５４２号公報（特許文献２）においては、完全な密封が可能で、滅菌処理に時間が掛からず、残留ガスの殆んどない包装構造として、包装材本体を周縁部にフランジを設けたカップ形状とし、使用する接着剤を、接着した包装材本体と滅菌処理用シートを剥離する際に、加熱熔融して固化した接着剤が、滅菌処理用シート、包装材本体の双方に残る性質を有するものとするとともに、接着剤を包装材本体に積層したものが提案されている。
【０００６】
さらに、特開平１１−１９３０６７号公報（特許文献３）においては、開口面の外周に接着用周縁鍔を設けた合成樹脂製の容器本体と、ヒートシール接着が可能な透明樹脂シートとヒートシール接着剤をドットコーティングしたポリエチレン不織布からなる蓋シート体とよりなる容器が提案されている。
【特許文献１】特開平１０−１２９７２０号公報 （特許請求の範囲）
【特許文献２】特許第３３７６５４２号公報 （特許請求の範囲）
【特許文献３】特開平１１−１９３０６７号公報 （特許請求の範囲）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
前記特許文献１，２に記載の包装体は、いずれも、不織布シートなどの空気の通過を許容する通気性と細菌の通過を阻止するバクテリアバリア性とを有するシートと、空気の通過を阻止する非透気性と細菌の通過を阻止するバクテリアバリア性とを有する合成樹脂製シートを用い、合成樹脂製シート側にヒートシール剤、あるいはホットメルト接着剤を積層しているので、完全な密封が可能になるとともに、滅菌処理に時間が掛からず、滅菌ガスの残留が殆んどなく、滅菌ガスによる人体への悪影響を及ぼすことがなく、作業が容易であるという優れた効果を奏する医療用包装体であると認められる。
【０００８】
前記特許文献３に記載の容器は、特許文献１，２に記載の包装体が、いずれも、不織布シートなどの不透明性の材料が用いられているため、食品加工の容器に用いられた際は、食品の仕上がり具合は、蓋を容器より剥離しないと見ることができない。また、食品から出る油によっては、ポリエチレン不織布が変色、変質して見栄えが悪くなり油分を含んだ食品の加熱加工には適さない。さらには、医療器材の滅菌処理用として用いた際は、滅菌処理を行った医療器材の確認がシート状蓋により遮られるため、容器に入れた医療材料が判別できるように、別途容器に目印を入れることが求められる等の欠点を解消するものである。
【０００９】
しかしながら、特許文献１，２の提案で用いられている、ヒートシール剤、あるいはホットメルト接着剤は、単に、不織布シートと合成樹脂製シートを接着するというだけでなく、易剥離性である、あるいは、剥離する際に、加熱熔融して固化した接着剤が、滅菌処理用シート、包装材本体の双方に残る性質を有するという機能が求められるものである。
したがって、不織布シートと合成樹脂製シートの材質に応じて、用いられるヒートシール剤、あるいはホットメルト接着剤を慎重に選択しなければならないことに加え、接着に際しては、加熱温度、加熱時間や加圧条件などを精確に管理しなければ、目的とする効果を得られないという問題を有していた。
【００１０】
また、特許文献３の提案の容器は、蓋シート体の一部を透明なシートにして、内容物の確認を容易にするなどの特性が付与されるものであるが、ポリエチレン不織布と容器との接着は、ポリエチレン不織布にドットコーティングしたヒートシール接着剤を用いるというもので、特許文献１，２の提案で解決せんとした問題点を残すものである。さらに、求める透明性との兼ね合いもあって、蓋シート体を構成する不織布は、問題が発生しないように、小さいものとせざるを得ないもので、ポリエチレン不織布を容器から剥離しても開口部が小さく、内容物の取出しに苦労するものである。
【００１１】
発明者は、かかる問題点、特に、接着に際しての接着条件を緩和して、言い換えれば、幅の広い接着条件においても、前記効果、すなわち、完全な密封、医療器具滅菌処理の際の時間の短縮、滅菌ガスの不存在などに加えて、特に、微細な繊維の飛散により医療器具を汚染することのない医療器具用包装体に好適な通気性包装体を提供すべく鋭意検討を行なった。
【００１２】
その結果、発明者は、上記課題が、包装体の一面を構成するシートを不織布などの通気性シートとプラスチック製フィルムとからなるものとし、通気性シートは他の面のプラスチック製シートと強固に接着させ、開封に際しての剥離部は、易剥離性感熱接着剤で接着されたプラスチック製シートおよび通気性シートとのプラスチック製フィルムの接着部とすることによって解決し得ることを見出して、この発明を完成したのである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
すなわち、この発明の請求項１に記載の発明は、
一面の全面が一枚のプラスチック製シート、他面が通気性シートと易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの２枚から構成され、
前記プラスチック製シートと通気性シートの、それぞれの端縁部の一部が熱融着され、
通気性シートが融着していない前記プラスチック製シートの端縁部と、前記易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの端縁部の一部が、易剥離性感熱性接着剤を介して接着され、
プラスチック製シートに融着または接着してない通気性シートと、プラスチック製フィルムのそれぞれの端縁部は、プラスチック製フィルムを表面側にして、易剥離性感熱性接着剤を介して接着していること
を特徴とする通気性包装体である。
【００１４】
また、この発明の請求項２に記載の発明は、
請求項１に記載の通気性包装体において、
前記通気性シートが、
細菌の通過を阻止する機能を有するものであること
を特徴とするものである。
【００１５】
また、この発明の請求項３に記載の発明は、
請求項１又は２に記載の通気性包装体において、
前記通気性シートが、
合成樹脂製の不織布または滅菌紙であること
を特徴とするものである。
【００１６】
また、この発明の請求項４に記載の発明は、
請求項１〜３のいずれかに記載の通気性包装体において、
前記易剥離性感熱性接着剤が、
ポリエチレン系又はポリプロピレン系の樹脂からなるものであること
を特徴とするものである。
【００１７】
また、この発明の請求項５に記載の発明は、
請求項１に記載の通気性包装体において、
前記易剥離性感熱性接着剤は、
その塗布厚が、１〜５０μｍであること
を特徴とするものである。
【００１８】
また、この発明の請求項６に記載の発明は、
請求項１に記載の通気性包装体において、
前記プラスチック製シートが、
単層又は複層のプラスチックシートであること
を特徴とするものである。
【００１９】
また、この発明の請求項７に記載の発明は、
請求項１〜６のいずれかに記載の通気性包装体において、
前記プラスチック製フィルムが、
通気性シートと接着している端縁部の外側に、プラスチック製フィルムをプラスチック製シートおよび通気性シートから剥離する際に、把持部となる端縁部を有しているものであること
を特徴とするものである。
【００２０】
また、この発明の請求項８に記載の発明は、
請求項７に記載の通気性包装体において、
前記プラスチック製フィルムの把持部が、
通気性シートの全表面を被覆可能な面積を有するものであること
を特徴とするものである。
【００２１】
さらに、この発明の請求項９に記載の発明は、
熱融着可能なプラスチック製シートと通気性シート、および易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムからなること
を特徴とする請求項１〜８のいずれかに記載の通気性包装体用構成部材である。
【００２２】
さらにまた、この発明の請求項１０に記載の発明は、
請求項９に記載の通気性包装体用構成部材において、
前記熱融着可能なプラスチック製シートと、易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムが一体化されたものであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【００２３】
この発明の通気性包装体においては、包装体を形成する通気性シートを、プラスチック製シートに熱融着して強固に接着させたもので、包装体の開口時に、通気性シートをプラスチック製シートから剥離するものではないため、それらの剥離に際して生じる微細な樹脂粉末や繊維粉末の飛散により、医療器具などを汚染するという問題点は全く存在し得ないものとなったのである。
【００２４】
また、通気性シートには接着剤が施されていないため、通気性シートのほぼ全面が、滅菌処理のための滅菌ガスの通過を可能とするため、滅菌処理に時間が掛からず、また、滅菌ガスが包装体内に残留することがなく、包装体中に存在する滅菌ガスにより人体が悪影響を受けることがない。
【００２５】
また、通気性シートとプラスチック製シートの熱融着は、プラスチック製シートの熱融解で行なうことができ、通気性シートが滅菌紙のような紙質であっても、全く問題なく行なえるのである。もちろん、プラスチック製シートがポリエチレンテレフタレートのように、熱融着し難いものであれば、内面にポリエチレンをラミネートしたものを用いればよく、その点にも何等問題を発生させない。
【００２６】
また、易剥離性感熱性接着剤を介して接着されるプラスチック製シートとフィルムは、共にプラスチックで、形状同一のものであるから、特に、同質の材料を使用すればなおさら、接着に際しての塗布面積、塗布量、さらには加熱条件、加圧条件等に従来のように、管理を厳しくしなくても行なえ、接着工程の簡易化が図られる。
【００２７】
さらに、通気性シートとプラスチック製フィルムの接着は、易剥離性感熱性接着剤を介して接着されるので、異質のもの同士の接着という問題は残存するが、通気性シートの外面、すなわち、容器の外側での接着であって、従来のものに比較して、問題の発生を著しく低下させるものである。
【００２８】
さらにまた、通気性シートとプラスチック製フィルムの接着は、易剥離性感熱性接着剤で行なわれるので、内容物の取出しに際する開封時に、容易に開封することができ、しかも、取出口を大きくすることができるため、医療器具などの内容物の取出しに支障を生じさせることのないものである。特に、プラスチック製フィルムの端縁部に把持部を設けることにより、開封がより容易になるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２９】
以下、この発明にかかる通気性包装体を、添付の図面を参照しながら具体的に詳細に説明する。なお、図１は、この発明の通気性包装体の断面図、図２は該通気性包装体の各構成部材の接着状態を説明する正面図である。
【００３０】
この発明の通気性包装体１は、従来のもの、例えば、特許文献１あるいは２に記載の医療用包装体と同様に、包装体１の一面に、細菌の通過を阻止する機能を有する通気性シート４が用いられているが、包装体１の一面全体に用いられているのではなく、プラスチック製フィルム３と協働して包装体１の一面を構成するもので、包装体１の他面は、従来のものと同様に、プラスチック製シート２で構成されるものである。
【００３１】
プラスチック製シート２は、空気および細菌の通過を阻止する、すなわち、非透気性とバクテリアバリア性を有するものであればよく、通常用いられている、単層又は複層のプラスチックシートが使用でき、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロンなどの単層、もしくはこれらのいずれかを積層、さらには、それらにアルミ箔などを積層した複層のシートで、熱により融解して、融着により気性シート４と熱融着できるもの、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムにポリエチレンフィルムを積層したものが好ましいものとして使用できる。
【００３２】
このプラスチック製シート２は、シート状のまま、プラスチック製フィルム３と通気性シート４からなるシートと重ね合せて袋状の包装体としても、図１に示されるように、収納物の形状に応じて、カップ状などに成形し、ブリスターパックのとして利用することもできる。
【００３３】
プラスチック製フィルム３も、空気および細菌の通過を阻止する、すなわち、非透気性とバクテリアバリア性を有するものであればよく、プラスチック製シート２と同様なものが用いられるが、プラスチック製シート２とは異なり、熱融着特性を要求されないので、より幅広く、各種の単層又は複層のプラスチックシートが使用できる。
【００３４】
これらのプラスチック製シート２や、プラスチック製フィルム３は、医療用包装体として、注射器の針やシリンジなどの医療器具を収納した後の、殺菌処理に対応できるようにするには、例えば、殺菌時に１１０℃以上の温度になる、高圧蒸気による殺菌に用いられる場合には、ポリプロピレンシートやポリプロピレン−ナイロン複合シートが選択されて使用される。
これらのプラスチック製シート２やプラスチック製フィルム３の厚みは、医療器具等の収納されるものの大きさや重量に応じて決定されるが、通常１ｍｍ以下の厚みのものが使用される。
【００３５】
プラスチック製フィルム３の一面には、プラスチック製シート２および通気性シート４との接着のために、易剥離性感熱性接着剤６が塗布されている。
【００３６】
かかる易剥離性感熱性接着剤６としては、包装体を形成するプラスチック製シート２やプラスチック製フィルム３を構成する樹脂の有する機械的強度よりも低い接着力を有するものが用いられる。
例えば、シートやフィルムの樹脂として、ポリエチレンを選択した場合、易剥離性感熱性接着剤６としては、特性、特に接着特性の異なる他種のポリエチレンや酢酸ビニルなどを共重合させたエチレン共重合体、あるいは、滑剤、充填材、撥油剤などの添加されたポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が用いられ、あるいは同様にしてポリプロピレン系樹脂が選択されて使用される。
【００３７】
また、易剥離性感熱性接着剤６は、開封時に問題を起すことなく剥離させるために、その塗布厚みを制限することが好ましく、通常、その厚みを５０μｍ以下にするのが好ましい。５０μｍを超えるようになると、開封時に、易剥離性感熱性接着剤６で剥離せず、前記した問題、すなわち、樹脂粉末や繊維粉末が発生するおそれが生じる。
なお、その厚みは、易剥離性感熱性接着剤６の接着力などを勘案して決められが、通常１μｍ以上で用いられる。
【００３８】
易剥離性感熱性接着剤６を、プラスチック製フィルム３の表面に形成させる方法としては、通常のフィルムラミネート法や共押出成形法が適用される。
それらは、本質的にヒートシール部のみに形成すればよいが、全面に形成する方が作業を容易にすることができる。因みに、ヒートシール部以外に施された易剥離性感熱性接着剤６は、未加熱では接着性を発揮しないため、包装体１に収納するもの等に何等不都合を与えることはない。
【００３９】
さらに、プラスチック製シート２とプラスチック製フィルム３が一体のもの、すなわち、一枚のシートまたはフィルムを折り曲げ、その一面をプラスチック製シート２とし、他の面をプラスチック製フィルム３とすることもでき、折り曲げて形成されるプラスチック製フィルム３の内面には、予め、上記した易剥離性感熱性接着剤６を塗布しておくことができる。
【００４０】
細菌の通過を阻止する通気性シート４としては、空気の通過を許容する透気性を有するもの、更には医療器具滅菌用として、細菌の通過を阻止するバクテリアバリア性とを有するシートであれば、特に材質に制限はない。
したがって、従来、この用途に使用されている、セルロース系繊維など天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの合成樹脂系繊維を主体とする合成繊維、又は天然繊維と合成繊維との複合繊維により調製された通気性の不織布シート、あるいは滅菌紙などが用いられるが、特に、ポリエチレン繊維からなる不織布が挙げられ、市販品としては、デュポン製のタイベック（商標）を挙げることができる。
通気性シート４は、包装体に求められる通気性に応じて、その大きさ、すなわち面積が定められるが、通常、包装体の全表面積の１／４〜１／２０の面積を有するものが用いられる。
【００４１】
これらのプラスチック製シート２、プラスチック製フィルム３および通気性シート４を用いた通気性包装体１は、以下のようにして、調製される。
【００４２】
まず、プラスチック製シート２と通気性シート４を積層し、プラスチック製シート２を熱融解させ、プラスチック製シート２と通気性シート４を熱融着させるために、加圧下に加熱する。
加圧や加熱の条件は、プラスチック製シート２を形成する樹脂の種類、厚みなどに応じて適宜選択され熱融着部５が形成される。
【００４３】
つぎに、プラスチック製シート２と通気性シート４が融着したものに、包装体１を形成するように、プラスチック製フィルム３を積層し、プラスチック製フィルム３の塗布された易剥離性感熱性接着剤６を用いて、プラスチック製フィルム３とプラスチック製シート２、またプラスチック製フィルム３と通気性シート４をヒートシールする。
【００４４】
以上のように、熱融着とヒートシール（熱接着）を使い分けて調製された包装体１は、ヒートシール部分が易剥離性感熱性接着剤６でヒートシールされているため、プラスチック製フィルム３および／またはプラスチック製シート２の端縁部を用いて剥離することが容易で、包装体１が開封される。
【００４５】
包装体１の開封をさらに容易にするため、プラスチック製フィルム３と通気性シート４のヒートシール部からプラスチック製フィルム３の端縁部を展延して剥離用把持部７を構成しておくことが好ましい。
また、この把持部７を通気性シート４の表面を被覆可能な面積を有するものにすると、通気性シート４を構成する、汚染されやすい不織布や滅菌紙を保護することができるので特に好ましい。
【００４６】
包装体１には、内容物の表示、製造者の名称、あるいは取扱い説明書などを印刷すること、さらには、その内容を示すラベルを貼ることが可能である。印刷は、包装体１を構成するフィルム、シートなどに予め印刷を施し、必要により、保護コーティングを施した上で適用することも可能である。
【００４７】
この発明の通気性包装体１は、注射器シリンジなどの医療用具の収納に適したもので、上記した包装体１の調製時、特に、プラスチック製フィルム３を積層し包装体１を調製する際に、収納物を収容した状態で、プラスチック製フィルム３とプラスチック製シート２および通気性シート２とを加熱体等を備えたシーラー等でヒートシールすることにより、それらを固着して、収納物を完全に密封するものである。
【００４８】
それらのシート、フィルムで密封された収納物については、通気性シート４の通気性を利用して、エチレンオキサイド、高圧蒸気、過酸化水素などのガス滅菌剤を用いて滅菌処理することができる。
ガス滅菌剤は、通気性シート４の融着された部分を除く全面で通過するため、ガス滅菌剤の通過が制約されることがない。
このため、滅菌処理に時間が掛からなくなるとともに、置換作用の繰り返しによって、密封内部におけるガス滅菌剤の残留を殆んどなくすることができる。
【００４９】
密封された収納物は、プラスチック製フィルム３と通気性シート４のヒートシール部、さらにはプラスチック製シート２とのヒートシール部を剥離することにより、通気性包装体１が開封され、取出しが可能になる。
開封の際には、易剥離性感熱性接着剤６が破断又はその界面で剥離されるため、通気性シート４を痛め、繊維粉末を飛散させることも、フィルムやシートからの樹脂粉末の飛散も生じない。
【産業上の利用可能性】
【００５０】
この発明の通気性包装体は、前記したように、従来製品の有する特性を維持したまま、通気性シートの破壊にともない生じる、樹脂粉末や繊維粉末による収納物の汚染を画期的に減少させたもので、種々の産業、特に医療用包装体として、医療の現場では勿論、医療品供給業界において、より幅広く利用されものである。
【図面の簡単な説明】
【００５１】
【図１】この発明にかかる通気性包装体の一例を示す断面図である。
【図２】図１における通気性包装体の各構成部材の接着状態を説明する正面図である。
【符号の説明】
【００５２】
１ 通気性包装体
２ プラスチック製シート
３ プラスチック製フィルム
４ 通気性シート
５ 熱融着部
６ 易剥離性感熱性接着剤
【技術分野】
【０００１】
この発明は、通気性を有する包装体、特に、通気性を利用した滅菌処理と滅菌状態の維持が良好に行える、医療器具用の包装・保管に好適な包装体及びその構成部材に関するものであって、包装技術分野に属するものである。
【背景技術】
【０００２】
注射器の針やシリンジなどを含め多くの医療器具は、滅菌処理が施された後に、その滅菌状態を維持した状態で、密封容器に保管される必要があるので、そのための密封容器が種々提供されている。
【０００３】
例えば、特開平１０−１２９７２０号公報（特許文献１）には、医療器具等を殺菌し密封保管するガス滅菌用包装体として、滅菌処理のために用いられる通気性の不織布シートの通気性が、接着のためのヒートシール剤によって損なわれる、あるいは開封する際に、接着した不織布シートが、その繊維質層にて破壊を生じて、微細な繊維を飛散させ、収納された医療器具を汚染するという問題点を解消するという包装体が提案されている。
【０００４】
この特許文献１で提案されたガス滅菌用包装体は、通気性の不織布シートと、内面に易剥離性のヒートシール剤がコーティング、もしくはラミネートされた合成樹脂シートとを重ね合わせ、その重ね合わせシートの外周端部に沿って互いに接着シールされていることを特徴とするものである。
【０００５】
また、特許第３３７６５４２号公報（特許文献２）においては、完全な密封が可能で、滅菌処理に時間が掛からず、残留ガスの殆んどない包装構造として、包装材本体を周縁部にフランジを設けたカップ形状とし、使用する接着剤を、接着した包装材本体と滅菌処理用シートを剥離する際に、加熱熔融して固化した接着剤が、滅菌処理用シート、包装材本体の双方に残る性質を有するものとするとともに、接着剤を包装材本体に積層したものが提案されている。
【０００６】
さらに、特開平１１−１９３０６７号公報（特許文献３）においては、開口面の外周に接着用周縁鍔を設けた合成樹脂製の容器本体と、ヒートシール接着が可能な透明樹脂シートとヒートシール接着剤をドットコーティングしたポリエチレン不織布からなる蓋シート体とよりなる容器が提案されている。
【特許文献１】特開平１０−１２９７２０号公報 （特許請求の範囲）
【特許文献２】特許第３３７６５４２号公報 （特許請求の範囲）
【特許文献３】特開平１１−１９３０６７号公報 （特許請求の範囲）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
前記特許文献１，２に記載の包装体は、いずれも、不織布シートなどの空気の通過を許容する通気性と細菌の通過を阻止するバクテリアバリア性とを有するシートと、空気の通過を阻止する非透気性と細菌の通過を阻止するバクテリアバリア性とを有する合成樹脂製シートを用い、合成樹脂製シート側にヒートシール剤、あるいはホットメルト接着剤を積層しているので、完全な密封が可能になるとともに、滅菌処理に時間が掛からず、滅菌ガスの残留が殆んどなく、滅菌ガスによる人体への悪影響を及ぼすことがなく、作業が容易であるという優れた効果を奏する医療用包装体であると認められる。
【０００８】
前記特許文献３に記載の容器は、特許文献１，２に記載の包装体が、いずれも、不織布シートなどの不透明性の材料が用いられているため、食品加工の容器に用いられた際は、食品の仕上がり具合は、蓋を容器より剥離しないと見ることができない。また、食品から出る油によっては、ポリエチレン不織布が変色、変質して見栄えが悪くなり油分を含んだ食品の加熱加工には適さない。さらには、医療器材の滅菌処理用として用いた際は、滅菌処理を行った医療器材の確認がシート状蓋により遮られるため、容器に入れた医療材料が判別できるように、別途容器に目印を入れることが求められる等の欠点を解消するものである。
【０００９】
しかしながら、特許文献１，２の提案で用いられている、ヒートシール剤、あるいはホットメルト接着剤は、単に、不織布シートと合成樹脂製シートを接着するというだけでなく、易剥離性である、あるいは、剥離する際に、加熱熔融して固化した接着剤が、滅菌処理用シート、包装材本体の双方に残る性質を有するという機能が求められるものである。
したがって、不織布シートと合成樹脂製シートの材質に応じて、用いられるヒートシール剤、あるいはホットメルト接着剤を慎重に選択しなければならないことに加え、接着に際しては、加熱温度、加熱時間や加圧条件などを精確に管理しなければ、目的とする効果を得られないという問題を有していた。
【００１０】
また、特許文献３の提案の容器は、蓋シート体の一部を透明なシートにして、内容物の確認を容易にするなどの特性が付与されるものであるが、ポリエチレン不織布と容器との接着は、ポリエチレン不織布にドットコーティングしたヒートシール接着剤を用いるというもので、特許文献１，２の提案で解決せんとした問題点を残すものである。さらに、求める透明性との兼ね合いもあって、蓋シート体を構成する不織布は、問題が発生しないように、小さいものとせざるを得ないもので、ポリエチレン不織布を容器から剥離しても開口部が小さく、内容物の取出しに苦労するものである。
【００１１】
発明者は、かかる問題点、特に、接着に際しての接着条件を緩和して、言い換えれば、幅の広い接着条件においても、前記効果、すなわち、完全な密封、医療器具滅菌処理の際の時間の短縮、滅菌ガスの不存在などに加えて、特に、微細な繊維の飛散により医療器具を汚染することのない医療器具用包装体に好適な通気性包装体を提供すべく鋭意検討を行なった。
【００１２】
その結果、発明者は、上記課題が、包装体の一面を構成するシートを不織布などの通気性シートとプラスチック製フィルムとからなるものとし、通気性シートは他の面のプラスチック製シートと強固に接着させ、開封に際しての剥離部は、易剥離性感熱接着剤で接着されたプラスチック製シートおよび通気性シートとのプラスチック製フィルムの接着部とすることによって解決し得ることを見出して、この発明を完成したのである。
【課題を解決するための手段】
【００１３】
すなわち、この発明の請求項１に記載の発明は、
一面の全面が一枚のプラスチック製シート、他面が通気性シートと易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの２枚から構成され、
前記プラスチック製シートと通気性シートの、それぞれの端縁部の一部が熱融着され、
通気性シートが融着していない前記プラスチック製シートの端縁部と、前記易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの端縁部の一部が、易剥離性感熱性接着剤を介して接着され、
プラスチック製シートに融着または接着してない通気性シートと、プラスチック製フィルムのそれぞれの端縁部は、プラスチック製フィルムを表面側にして、易剥離性感熱性接着剤を介して接着していること
を特徴とする通気性包装体である。
【００１４】
また、この発明の請求項２に記載の発明は、
請求項１に記載の通気性包装体において、
前記通気性シートが、
細菌の通過を阻止する機能を有するものであること
を特徴とするものである。
【００１５】
また、この発明の請求項３に記載の発明は、
請求項１又は２に記載の通気性包装体において、
前記通気性シートが、
合成樹脂製の不織布または滅菌紙であること
を特徴とするものである。
【００１６】
また、この発明の請求項４に記載の発明は、
請求項１〜３のいずれかに記載の通気性包装体において、
前記易剥離性感熱性接着剤が、
ポリエチレン系又はポリプロピレン系の樹脂からなるものであること
を特徴とするものである。
【００１７】
また、この発明の請求項５に記載の発明は、
請求項１に記載の通気性包装体において、
前記易剥離性感熱性接着剤は、
その塗布厚が、１〜５０μｍであること
を特徴とするものである。
【００１８】
また、この発明の請求項６に記載の発明は、
請求項１に記載の通気性包装体において、
前記プラスチック製シートが、
単層又は複層のプラスチックシートであること
を特徴とするものである。
【００１９】
また、この発明の請求項７に記載の発明は、
請求項１〜６のいずれかに記載の通気性包装体において、
前記プラスチック製フィルムが、
通気性シートと接着している端縁部の外側に、プラスチック製フィルムをプラスチック製シートおよび通気性シートから剥離する際に、把持部となる端縁部を有しているものであること
を特徴とするものである。
【００２０】
また、この発明の請求項８に記載の発明は、
請求項７に記載の通気性包装体において、
前記プラスチック製フィルムの把持部が、
通気性シートの全表面を被覆可能な面積を有するものであること
を特徴とするものである。
【００２１】
さらに、この発明の請求項９に記載の発明は、
熱融着可能なプラスチック製シートと通気性シート、および易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムからなること
を特徴とする請求項１〜８のいずれかに記載の通気性包装体用構成部材である。
【００２２】
さらにまた、この発明の請求項１０に記載の発明は、
請求項９に記載の通気性包装体用構成部材において、
前記熱融着可能なプラスチック製シートと、易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムが一体化されたものであること
を特徴とするものである。
【発明の効果】
【００２３】
この発明の通気性包装体においては、包装体を形成する通気性シートを、プラスチック製シートに熱融着して強固に接着させたもので、包装体の開口時に、通気性シートをプラスチック製シートから剥離するものではないため、それらの剥離に際して生じる微細な樹脂粉末や繊維粉末の飛散により、医療器具などを汚染するという問題点は全く存在し得ないものとなったのである。
【００２４】
また、通気性シートには接着剤が施されていないため、通気性シートのほぼ全面が、滅菌処理のための滅菌ガスの通過を可能とするため、滅菌処理に時間が掛からず、また、滅菌ガスが包装体内に残留することがなく、包装体中に存在する滅菌ガスにより人体が悪影響を受けることがない。
【００２５】
また、通気性シートとプラスチック製シートの熱融着は、プラスチック製シートの熱融解で行なうことができ、通気性シートが滅菌紙のような紙質であっても、全く問題なく行なえるのである。もちろん、プラスチック製シートがポリエチレンテレフタレートのように、熱融着し難いものであれば、内面にポリエチレンをラミネートしたものを用いればよく、その点にも何等問題を発生させない。
【００２６】
また、易剥離性感熱性接着剤を介して接着されるプラスチック製シートとフィルムは、共にプラスチックで、形状同一のものであるから、特に、同質の材料を使用すればなおさら、接着に際しての塗布面積、塗布量、さらには加熱条件、加圧条件等に従来のように、管理を厳しくしなくても行なえ、接着工程の簡易化が図られる。
【００２７】
さらに、通気性シートとプラスチック製フィルムの接着は、易剥離性感熱性接着剤を介して接着されるので、異質のもの同士の接着という問題は残存するが、通気性シートの外面、すなわち、容器の外側での接着であって、従来のものに比較して、問題の発生を著しく低下させるものである。
【００２８】
さらにまた、通気性シートとプラスチック製フィルムの接着は、易剥離性感熱性接着剤で行なわれるので、内容物の取出しに際する開封時に、容易に開封することができ、しかも、取出口を大きくすることができるため、医療器具などの内容物の取出しに支障を生じさせることのないものである。特に、プラスチック製フィルムの端縁部に把持部を設けることにより、開封がより容易になるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２９】
以下、この発明にかかる通気性包装体を、添付の図面を参照しながら具体的に詳細に説明する。なお、図１は、この発明の通気性包装体の断面図、図２は該通気性包装体の各構成部材の接着状態を説明する正面図である。
【００３０】
この発明の通気性包装体１は、従来のもの、例えば、特許文献１あるいは２に記載の医療用包装体と同様に、包装体１の一面に、細菌の通過を阻止する機能を有する通気性シート４が用いられているが、包装体１の一面全体に用いられているのではなく、プラスチック製フィルム３と協働して包装体１の一面を構成するもので、包装体１の他面は、従来のものと同様に、プラスチック製シート２で構成されるものである。
【００３１】
プラスチック製シート２は、空気および細菌の通過を阻止する、すなわち、非透気性とバクテリアバリア性を有するものであればよく、通常用いられている、単層又は複層のプラスチックシートが使用でき、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロンなどの単層、もしくはこれらのいずれかを積層、さらには、それらにアルミ箔などを積層した複層のシートで、熱により融解して、融着により気性シート４と熱融着できるもの、特に、ポリエチレンテレフタレートフィルムにポリエチレンフィルムを積層したものが好ましいものとして使用できる。
【００３２】
このプラスチック製シート２は、シート状のまま、プラスチック製フィルム３と通気性シート４からなるシートと重ね合せて袋状の包装体としても、図１に示されるように、収納物の形状に応じて、カップ状などに成形し、ブリスターパックのとして利用することもできる。
【００３３】
プラスチック製フィルム３も、空気および細菌の通過を阻止する、すなわち、非透気性とバクテリアバリア性を有するものであればよく、プラスチック製シート２と同様なものが用いられるが、プラスチック製シート２とは異なり、熱融着特性を要求されないので、より幅広く、各種の単層又は複層のプラスチックシートが使用できる。
【００３４】
これらのプラスチック製シート２や、プラスチック製フィルム３は、医療用包装体として、注射器の針やシリンジなどの医療器具を収納した後の、殺菌処理に対応できるようにするには、例えば、殺菌時に１１０℃以上の温度になる、高圧蒸気による殺菌に用いられる場合には、ポリプロピレンシートやポリプロピレン−ナイロン複合シートが選択されて使用される。
これらのプラスチック製シート２やプラスチック製フィルム３の厚みは、医療器具等の収納されるものの大きさや重量に応じて決定されるが、通常１ｍｍ以下の厚みのものが使用される。
【００３５】
プラスチック製フィルム３の一面には、プラスチック製シート２および通気性シート４との接着のために、易剥離性感熱性接着剤６が塗布されている。
【００３６】
かかる易剥離性感熱性接着剤６としては、包装体を形成するプラスチック製シート２やプラスチック製フィルム３を構成する樹脂の有する機械的強度よりも低い接着力を有するものが用いられる。
例えば、シートやフィルムの樹脂として、ポリエチレンを選択した場合、易剥離性感熱性接着剤６としては、特性、特に接着特性の異なる他種のポリエチレンや酢酸ビニルなどを共重合させたエチレン共重合体、あるいは、滑剤、充填材、撥油剤などの添加されたポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂が用いられ、あるいは同様にしてポリプロピレン系樹脂が選択されて使用される。
【００３７】
また、易剥離性感熱性接着剤６は、開封時に問題を起すことなく剥離させるために、その塗布厚みを制限することが好ましく、通常、その厚みを５０μｍ以下にするのが好ましい。５０μｍを超えるようになると、開封時に、易剥離性感熱性接着剤６で剥離せず、前記した問題、すなわち、樹脂粉末や繊維粉末が発生するおそれが生じる。
なお、その厚みは、易剥離性感熱性接着剤６の接着力などを勘案して決められが、通常１μｍ以上で用いられる。
【００３８】
易剥離性感熱性接着剤６を、プラスチック製フィルム３の表面に形成させる方法としては、通常のフィルムラミネート法や共押出成形法が適用される。
それらは、本質的にヒートシール部のみに形成すればよいが、全面に形成する方が作業を容易にすることができる。因みに、ヒートシール部以外に施された易剥離性感熱性接着剤６は、未加熱では接着性を発揮しないため、包装体１に収納するもの等に何等不都合を与えることはない。
【００３９】
さらに、プラスチック製シート２とプラスチック製フィルム３が一体のもの、すなわち、一枚のシートまたはフィルムを折り曲げ、その一面をプラスチック製シート２とし、他の面をプラスチック製フィルム３とすることもでき、折り曲げて形成されるプラスチック製フィルム３の内面には、予め、上記した易剥離性感熱性接着剤６を塗布しておくことができる。
【００４０】
細菌の通過を阻止する通気性シート４としては、空気の通過を許容する透気性を有するもの、更には医療器具滅菌用として、細菌の通過を阻止するバクテリアバリア性とを有するシートであれば、特に材質に制限はない。
したがって、従来、この用途に使用されている、セルロース系繊維など天然繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどの合成樹脂系繊維を主体とする合成繊維、又は天然繊維と合成繊維との複合繊維により調製された通気性の不織布シート、あるいは滅菌紙などが用いられるが、特に、ポリエチレン繊維からなる不織布が挙げられ、市販品としては、デュポン製のタイベック（商標）を挙げることができる。
通気性シート４は、包装体に求められる通気性に応じて、その大きさ、すなわち面積が定められるが、通常、包装体の全表面積の１／４〜１／２０の面積を有するものが用いられる。
【００４１】
これらのプラスチック製シート２、プラスチック製フィルム３および通気性シート４を用いた通気性包装体１は、以下のようにして、調製される。
【００４２】
まず、プラスチック製シート２と通気性シート４を積層し、プラスチック製シート２を熱融解させ、プラスチック製シート２と通気性シート４を熱融着させるために、加圧下に加熱する。
加圧や加熱の条件は、プラスチック製シート２を形成する樹脂の種類、厚みなどに応じて適宜選択され熱融着部５が形成される。
【００４３】
つぎに、プラスチック製シート２と通気性シート４が融着したものに、包装体１を形成するように、プラスチック製フィルム３を積層し、プラスチック製フィルム３の塗布された易剥離性感熱性接着剤６を用いて、プラスチック製フィルム３とプラスチック製シート２、またプラスチック製フィルム３と通気性シート４をヒートシールする。
【００４４】
以上のように、熱融着とヒートシール（熱接着）を使い分けて調製された包装体１は、ヒートシール部分が易剥離性感熱性接着剤６でヒートシールされているため、プラスチック製フィルム３および／またはプラスチック製シート２の端縁部を用いて剥離することが容易で、包装体１が開封される。
【００４５】
包装体１の開封をさらに容易にするため、プラスチック製フィルム３と通気性シート４のヒートシール部からプラスチック製フィルム３の端縁部を展延して剥離用把持部７を構成しておくことが好ましい。
また、この把持部７を通気性シート４の表面を被覆可能な面積を有するものにすると、通気性シート４を構成する、汚染されやすい不織布や滅菌紙を保護することができるので特に好ましい。
【００４６】
包装体１には、内容物の表示、製造者の名称、あるいは取扱い説明書などを印刷すること、さらには、その内容を示すラベルを貼ることが可能である。印刷は、包装体１を構成するフィルム、シートなどに予め印刷を施し、必要により、保護コーティングを施した上で適用することも可能である。
【００４７】
この発明の通気性包装体１は、注射器シリンジなどの医療用具の収納に適したもので、上記した包装体１の調製時、特に、プラスチック製フィルム３を積層し包装体１を調製する際に、収納物を収容した状態で、プラスチック製フィルム３とプラスチック製シート２および通気性シート２とを加熱体等を備えたシーラー等でヒートシールすることにより、それらを固着して、収納物を完全に密封するものである。
【００４８】
それらのシート、フィルムで密封された収納物については、通気性シート４の通気性を利用して、エチレンオキサイド、高圧蒸気、過酸化水素などのガス滅菌剤を用いて滅菌処理することができる。
ガス滅菌剤は、通気性シート４の融着された部分を除く全面で通過するため、ガス滅菌剤の通過が制約されることがない。
このため、滅菌処理に時間が掛からなくなるとともに、置換作用の繰り返しによって、密封内部におけるガス滅菌剤の残留を殆んどなくすることができる。
【００４９】
密封された収納物は、プラスチック製フィルム３と通気性シート４のヒートシール部、さらにはプラスチック製シート２とのヒートシール部を剥離することにより、通気性包装体１が開封され、取出しが可能になる。
開封の際には、易剥離性感熱性接着剤６が破断又はその界面で剥離されるため、通気性シート４を痛め、繊維粉末を飛散させることも、フィルムやシートからの樹脂粉末の飛散も生じない。
【産業上の利用可能性】
【００５０】
この発明の通気性包装体は、前記したように、従来製品の有する特性を維持したまま、通気性シートの破壊にともない生じる、樹脂粉末や繊維粉末による収納物の汚染を画期的に減少させたもので、種々の産業、特に医療用包装体として、医療の現場では勿論、医療品供給業界において、より幅広く利用されものである。
【図面の簡単な説明】
【００５１】
【図１】この発明にかかる通気性包装体の一例を示す断面図である。
【図２】図１における通気性包装体の各構成部材の接着状態を説明する正面図である。
【符号の説明】
【００５２】
１ 通気性包装体
２ プラスチック製シート
３ プラスチック製フィルム
４ 通気性シート
５ 熱融着部
６ 易剥離性感熱性接着剤
【特許請求の範囲】
【請求項１】
一面の全面が一枚のプラスチック製シート、他面が通気性シートと易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの２枚から構成され、
前記プラスチック製シートと通気性シートの、それぞれの端縁部の一部が熱融着され、
通気性シートが融着していない前記プラスチック製シートの端縁部と、前記易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの端縁部の一部が、易剥離性感熱性接着剤を介して接着され、
プラスチック製シートに融着または接着してない通気性シートと、プラスチック製フィルムのそれぞれの端縁部は、プラスチック製フィルムを表面側にして、易剥離性感熱性接着剤を介して接着していること
を特徴とする通気性包装体。
【請求項２】
前記通気性シートが、
細菌の通過を阻止する機能を有するものであること
を特徴とする請求項１に記載の通気性包装体。
【請求項３】
前記通気性シートが、
合成樹脂製の不織布または滅菌紙であること
を特徴とする請求項１又は２に記載の通気性包装体。
【請求項４】
前記易剥離性感熱性接着剤が、
ポリエチレン系又はポリプロピレン系の樹脂からなるものであること
を特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の通気性包装体。
【請求項５】
前記易剥離性感熱性接着剤は、
その塗布厚が、１〜５０μｍであること
を特徴とする請求項１に記載の通気性包装体。
【請求項６】
前記プラスチック製シートが、
単層又は複層のプラスチックシートであること
を特徴とする請求項１に記載の通気性包装体。
【請求項７】
前記プラスチック製フィルムが、
通気性シートと接着している端縁部の外側に、プラスチック製フィルムをプラスチック製シートおよび通気性シートから剥離する際に、把持部となる端縁部を有しているものであること
を特徴とする請求項１〜６のいずれかに記載の通気性包装体。
【請求項８】
前記プラスチック製フィルムの把持部が、
通気性シートの全表面を被覆可能な面積を有するものであること
を特徴とする請求項７に記載の通気性包装体。
【請求項９】
熱融着可能なプラスチック製シートと通気性シート、および易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムからなること
を特徴とする請求項１〜８のいずれかに記載の通気性包装体用構成部材。
【請求項１０】
前記熱融着可能なプラスチック製シートと、易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムが一体化されたものであること
を特徴とする請求項９に記載の通気性包装体用構成部材。
【請求項１】
一面の全面が一枚のプラスチック製シート、他面が通気性シートと易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの２枚から構成され、
前記プラスチック製シートと通気性シートの、それぞれの端縁部の一部が熱融着され、
通気性シートが融着していない前記プラスチック製シートの端縁部と、前記易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムの端縁部の一部が、易剥離性感熱性接着剤を介して接着され、
プラスチック製シートに融着または接着してない通気性シートと、プラスチック製フィルムのそれぞれの端縁部は、プラスチック製フィルムを表面側にして、易剥離性感熱性接着剤を介して接着していること
を特徴とする通気性包装体。
【請求項２】
前記通気性シートが、
細菌の通過を阻止する機能を有するものであること
を特徴とする請求項１に記載の通気性包装体。
【請求項３】
前記通気性シートが、
合成樹脂製の不織布または滅菌紙であること
を特徴とする請求項１又は２に記載の通気性包装体。
【請求項４】
前記易剥離性感熱性接着剤が、
ポリエチレン系又はポリプロピレン系の樹脂からなるものであること
を特徴とする請求項１〜３のいずれかに記載の通気性包装体。
【請求項５】
前記易剥離性感熱性接着剤は、
その塗布厚が、１〜５０μｍであること
を特徴とする請求項１に記載の通気性包装体。
【請求項６】
前記プラスチック製シートが、
単層又は複層のプラスチックシートであること
を特徴とする請求項１に記載の通気性包装体。
【請求項７】
前記プラスチック製フィルムが、
通気性シートと接着している端縁部の外側に、プラスチック製フィルムをプラスチック製シートおよび通気性シートから剥離する際に、把持部となる端縁部を有しているものであること
を特徴とする請求項１〜６のいずれかに記載の通気性包装体。
【請求項８】
前記プラスチック製フィルムの把持部が、
通気性シートの全表面を被覆可能な面積を有するものであること
を特徴とする請求項７に記載の通気性包装体。
【請求項９】
熱融着可能なプラスチック製シートと通気性シート、および易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムからなること
を特徴とする請求項１〜８のいずれかに記載の通気性包装体用構成部材。
【請求項１０】
前記熱融着可能なプラスチック製シートと、易剥離性感熱性接着剤の塗布されたプラスチック製フィルムが一体化されたものであること
を特徴とする請求項９に記載の通気性包装体用構成部材。
【図１】
【図２】
【図２】
【公開番号】特開２００７−３０２２９２（Ｐ２００７−３０２２９２Ａ）
【公開日】平成１９年１１月２２日（２００７．１１．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−１３２３１１（Ｐ２００６−１３２３１１）
【出願日】平成１８年５月１１日（２００６．５．１１）
【出願人】（５９８０１４２９４）株式会社静幸産業 (4)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年１１月２２日（２００７．１１．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年５月１１日（２００６．５．１１）
【出願人】（５９８０１４２９４）株式会社静幸産業 (4)
【Ｆターム（参考）】
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