説明

通気性材料層を含有する吸収物品

通気性バックシート材料層を含む吸収物品であって、前記層の少なくとも一部が、下記の条件または変数のいずれか、即ち液体接触、あるイオンの存在、温度、および/又はpHのいずれかに応答して自由体積の不連続変化を示すポリマー材料を含む、吸収物品。そのようなポリマー材料の一例は、等方相とネマチック相との間で相転移することができる側鎖液晶ポリマーである。自由体積の不連続変化は、通気性材料層の透過性の急激な変化を含むことになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、おむつ、生理用ナプキン、失禁ガード、吸収パンツ、パンティライナーなど、身体からの滲出液を吸収するための吸収物品に関し、前記物品は、吸収構造と、前記吸収構造の下に在る通気性バックシート材料とを有するものである。
【背景技術】
【0002】
通気性材料は、水蒸気透過性を提供し、且つ好ましくは液体の障壁となる材料である。そのような材料は、おむつ、生理用ナプキン、失禁ガード、吸収パンツ、パンティライナーなどの吸収物品のバックシート材料として、しばしば使用される。通気性液体障壁材料の例は、ミクロポーラスフィルム、アパーチャ付きで形成されたフィルム、および通常はいわゆるメルトブローン繊維である微細な繊維の障壁層を含む繊維性不織材料である。そのような不織材料は、内部メルトブローン障壁層および外部スパンボンデッド層を含むいわゆるSMS(スパンボンデッド・メルトブローン・スパンボンデッド)積層体の形をとってもよい。通気性液体障壁材料は、フィルムと繊維性不織布との間の積層体の形をとってもよい。通気性バックシート材料を組み込むことによって、物品から湿った空気を移動させることが可能になり、それによって快適さが増し、皮膚刺激の危険性が低下する。
【0003】
吸収物品の通気性バックシート材料に関連する主な欠点とは、通気性バックシートを通した液体による濡れの形での、漏れに対する保護レベルへの悪影響が及び、着用者の下着を汚すことである。これらの材料が、それを通した気体の通過のみ許容することを意図する場合であっても、いくらかの液体は拡散および毛管作用などの物理的メカニズムによって、材料内を通過する可能性がある。そのような、通気性バックシート材料を通した液体の漏れは、この物品が、分泌された体液を多量に吸収した場合、および身体運動中に使用された場合に、より頻繁になる可能性がある。液体がバックシート材料を通り抜けて実際に浸透しない場合であっても、その高い通気性によってバックシート材料の外側に凝縮し、そのために濡れた感覚が生じる。
【0004】
この問題は、従来技術において認識されており、通気性バックシート材料を通した液体の漏れの問題を低減させるために、種々の解決策が提示されてきた。したがって、少なくとも2層の通気性材料層を含む通気性バックシートを使用することが、特許文献1〜3に提案されている。
【0005】
特許文献4は別の解決策を提示しており、即ち、通気性バックシート材料の少なくとも1つの領域には、不溶性の液体膨潤性材料がコーティングされている。液体分泌物と接触すると、その材料は膨潤し、それ故にアパーチャを閉鎖することになり、それによって空気の透過性を低下させ、液体が層を通過するのを防止する。
【0006】
特許文献5は、繊維のある割合が液体膨潤性ポリマーから作製されている、繊維性不織ウェブを開示する。液体の存在下で、これらの繊維は膨潤して、ウェブ内を液体が通過するのを実質的に遮断することになる。ウェブは、通気性バックシート材料として使用してよい。
【0007】
特許文献6は、その孔内に、液体と接触すると膨潤する複数の微細な水膨潤性充填剤粒子を含む、ミクロポーラスフィルムを開示する。
【0008】
特許文献7は、液体膨潤性材料、例えばポリビニルアルコールでコーティングされたアパーチャ付きフィルムまたは繊維層の形をとる、通気性バックシート材料を開示する。
【0009】
しかし液体膨潤は、拡散に基づくやや遅いプロセスであり、これは膨潤が生じる前に、材料層を通して漏れが生じ得ることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4341216号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0710471号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0710472号明細書
【特許文献4】国際公開第99/004739号パンフレット
【特許文献5】米国特許第5447788号明細書
【特許文献6】米国特許第5955187号明細書
【特許文献7】米国特許第6436508号明細書
【特許文献8】欧州特許第293482号明細書
【特許文献9】米国特許第3929135号明細書
【特許文献10】米国特許第4637819号明細書
【特許文献11】米国特許第4591523号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Allan S. Hoffman; Controlled Drug Delivery、第24章:「Intelligent」Polymers、1997、American Chemical Society
【非特許文献2】H−J. Schneider、L. Tianjun、およびN. Lomadze: Eur. J. Org. Chem. 2006、p.677〜692:「Dimension Changes in a Chemomechanical Polymer Containing Ethylenediamine and Alkyl Functions as Selective Recognition Units」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、通気性バックシート材料層を通した液体の漏れの危険性を低下させるという問題の、代替の解決策を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これは本発明によれば、前記通気性バックシートの少なくとも一部が、下記の条件または変数に応じて、即ち液体接触、あるイオンの存在、温度、および/またはpHに応じて自由体積の不連続変化を示すポリマー材料を含む、という事実により提供された。
【0014】
本発明の利点は、自由体積のこの不連続変化が、連続的なプロセスである液体膨潤よりも、かなり素早い迅速なプロセスであることである。さらに、この層は、自由体積の不連続変化の後も、少なくともある程度の水蒸気透過性を維持することができる。
【0015】
材料層は、アパーチャ付きフィルム、ミクロポーラスフィルム、マクロポーラスフィルム、ナノポーラスフィルム、モノリシックフィルム、繊維性不織布、およびこれらの積層体から選択される。
【0016】
一実施形態によれば、自由体積の不連続変化を示すポリマー材料は、前記材料層の少なくとも1つの面または領域へのコーティングの形で付着される。
【0017】
本発明の一態様では、材料層のアパーチャ/細孔の隣りおよび/または内部の領域が、自由体積の不連続変化を示すポリマー材料でコーティングされる。
【0018】
一実施形態によれば、非膨潤性のトポロジー変化するポリマー材料は、選択された温度で等方相とネマチック相との間の相転移することができる、側鎖液晶ポリマーである。
【0019】
他の実施形態によれば、バックシート材料の少なくとも一部は、側鎖液晶ポリマー材料を含むナノポーラスまたはモノリシックフィルムである。
【0020】
さらのほかの実施形態によれば、前記通気性バックシート材料は、体液で濡れることによって引き起こされた自由体積の不連続変化の後に、より低い程度の通気性を有する。この低下は、23℃でのASTM D 6701−01に従えば、24時間で、水蒸気透過速度(WVTR)(単位:g/m)が少なくとも10%低下すべきである。好ましくはこの低下は、少なくとも30%であり、より好ましくは少なくとも70%である。
【0021】
本発明の一態様では、自由体積の不連続変化は、尿や月経液などの体液との接触によって引き起こされた温度の変化によって誘発される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】温度又はpHが変化したときの、ポリマー材料内の自由体積の変化を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
通気性
「通気性」という用語は、空気透過性および水蒸気透過性の材料を指す。好ましくはこの材料は、液体を浸透させ難く、または液体障壁特性を有する。
【0024】
膨潤
「膨潤」という用語は、液体の吸収によって引き起こされた、材料の体積の増加を指す。膨潤は、通常はxyz方向に等方的に生じる連続プロセスである。
【0025】
自由体積
材料の自由体積という用語は、差v−vを指し、即ち、材料の全体積と、原子および分子によって占有された実際の体積vとの間の差を指す。
【0026】
ポリマー材料の自由体積は、陽電子消滅寿命分光法(PALS)を使用することによって、測定することができる。薄膜によるPALSを使用することによって、高真空システム内で発生した数keVのよう電子の静電気的集束ビームが材料に注入される。陽電子は、材料内での衝突を通して、初期ビームエネルギー(数keV)から数eVに低下する。衝突により低下したエネルギーは、空隙サイズと相関させることができ、この技法の基礎を形成することができる。
【0027】
自由体積の不連続変化
言及される自由体積の変化は、下記の条件または変数のいずれか、即ち液体接触、あるイオンの存在、温度、および/またはpHのいずれかによって誘発された急激な変化である。この自由体積の変化は、液体の吸収によって引き起こされた膨潤に依存しない。少なくともある場合には、自由体積の変化は、xy方向において実質的に異方的に生ずる。
【0028】
好ましい実施形態の説明
本発明による通気性材料は、アパーチャ付きフィルム、ミクロポーラスフィルム、マクロポーラスフィルム、ナノポーラスフィルム、モノリシックフィルム、繊維性不織布、およびこれらの積層体でよい。アパーチャまたは細孔は、その寸法が様々でよいが、典型的には、ミクロポーラスフィルムおよびマクロポーラスフィルムのアパーチャは、その平均直径が5μmから600μmのものである。例えば、本発明による通気性層として使用される2次元平面ミクロポーラスフィルムは、5μmから200μmの直径を有するアパーチャを有してよく、適切な2次元マクロポーラスフィルムは、90μmから600μmの平均直径を有する。アパーチャは、好ましくは層の全面に均等に分布されるが、層の、ある領域にのみ分布されてもよい。適切なミクロポーラスフィルムおよびマクロポーラスフィルムは、例えば特許文献8に開示されているように、当技術分野における任意の知られている方法によって、作製することができる。
【0029】
アパーチャ付きで形成されたフィルムは、層の水平面を超えて拡がる離散した開口、したがって隆起を形成する開口であって、特許文献9に記載されているような漏斗タイプのものでよい、離散した開口を有するフィルムを含む。適切な肉眼的に拡張したフィルムのその他の例は、特許文献10および特許文献11に記載されている。
【0030】
ナノポーラスフィルムは、平均直径が1μmよりも小さい細孔を有するフィルムである。ナノポーラスフィルムは、ミクロメカニカル変形によって作製することができ、これは例えば、ポリマーに埋め込まれた無機粒子の形をとる充填ポリマーを延伸することによる、ミクロポーラスフィルムおよびマクロポーラスフィルムに関するものと同様の技法である。無機粒子の代わりに、非混和性ポリマーをポリマーマトリックスに導入してよい。
【0031】
モノリシックフィルムは、細孔が存在しない全体的に均一な構成を提供する。モノリシック通気性フィルムは、ポリマー鎖間の自由体積により、フィルムを通してある気体および液体蒸気を移動させることが可能である。高速の透湿は、フィルムの片面の蒸気の比較的高い濃度および圧力によって、促進される。
【0032】
従来のモノリシックフィルムは、より薄いフィルムでより高いWVTR値が得られるよう、水蒸気透過速度(WVTR)性能を修正するために、フィルムの厚さを変化させる必要がある。
【0033】
液体障壁特性を有する不織材料の例は、平均直径が一般に10ミクロンよりも小さい繊度を有するメルトブローン繊維から作製されたウェブと、メルトブローンウェブおよびその他のウェブ、例えばスパンボンドウェブの積層体である。
【0034】
適切な通気性材料は、アパーチャ付きの、ミクロポーラスフィルム、マクロポーラスフィルム、ナノポーラスフィルム、またはモノリシックフィルムと、不織ウェブとの積層体の形をとってもよい。
【0035】
通気性材料は、23℃でASTM D 6701−01により測定したときに、24時間で少なくとも500g/mの水蒸気透過率を有するべきである。
【0036】
本発明によれば、通気性材料は、下記の条件のいずれか、即ち液体接触、および/またはあるイオンの存在、および/または温度および/またはpHのある閾値を通過したときのいずれかに応答して、自由体積の急激な不連続変化を示すポリマー材料を含む。自由体積のこの不連続変化は、液体が構造内に吸収されて材料の体積の連続変化を引き起こす膨潤プロセスとは、異なっている。
【0037】
本明細書で使用される液体という用語は、尿、月経液、および便などを含む体液など、水を少なくとも75重量%含有する任意の流体を指す。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー材料は、自由体積の不連続変化と液体の吸収によって引き起こされた膨潤特性との両方を示すことが、可能と考えられる。
【0039】
通気性材料の全体または一部のみは、自由体積の不連続変化を示す前記ポリマー材料からなることができる。
【0040】
自由体積の不連続変化を示すポリマー材料は、通気性材料の少なくともある領域へのコーティングとして、さらに付着させてもよい。例えば、材料の片側表面のみにまたは通気性材料のアパーチャの周囲および/または内部の領域のみに、付着させてもよい。
【0041】
通気性材料が繊維性不織ウェブである場合、繊維の全てまたはある割合は、自由体積の不連続変化を示すポリマー材料のものでよい。或いは、前記ポリマー材料は、個々の繊維のコーティングとして、または不織ウェブの全体またはある領域のコーティングとして、付着させてもよい。
【0042】
ポリマー材料の自由体積は、ポリマー分子によって占有されておらず且つ上述の陽電子消滅寿命分光法(PALS)によって測定される、ポリマー材料の体積と定義される。自由体積の不連続変化は、非常に迅速で急激なプロセスであり、例えば、数秒間または数分間で生じる連続プロセスである液体の吸収によって引き起こされる膨潤よりも、さらに迅速に生ずる。適切なポリマーの例は、下記のポリマー群に見出すことができる。
【0043】
側鎖液晶ポリマー
本発明の目的に適切な側鎖液晶ポリマーは、ポリマーの透過特性を変化させる温度誘発性の相転移を行うことができるポリマーである。相転移は、選択された温度で、等方相とネマチック相との間で生じる。そのネマチック相では、側鎖は共通軸と並行になる傾向があり、一方、その等方相では、側鎖は全ての方向で無作為に配向するが、これは、より多くの空間を必要とする構成を意味する。これは、ポリマー分子によって占有されていない自由体積が、ネマチック相よりも等方相で大きいことを意味し、したがってポリマーの透過性特性は、材料が相を変化させる場合に変化することになる。
【0044】
側鎖液晶ポリマーの例は、(i)n−アルキル基が少なくとも12個の炭素を含有する、少なくとも1種のn−アルキルアクリレートまたはメタクリレートと、(ii)アクリル酸、メタクリル酸、およびメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルから選択された1種または複数のコモノマーとから得られる。具体的な例は、長(C2H4−C8F17)パーフルオロ側鎖を保持するアクリレートモノマー50モル%と、長アルキル鎖、例えばC17H35を保持するメタクリレートモノマー50モル%との、ブチルアセテートでのラジカル共重合によって得られるコポリマーである。そのようなポリマーは、35℃程度の温度、したがって体温付近で、ネマチック相から等方相への相転移を行うことができる。この相転移は、温度閾値を過ぎたときに素早く生じる。相転移は、通常は可逆的である。
【0045】
使用することができる温度応答性側鎖液晶ポリマーのその他の例は、Intelimer(登録商標)という商標でLandec Corp.から入手可能である。
【0046】
温度の切替えは、例えば、体液との接触によって引き起こされる温度変化によって、誘発することができる。この変化は、液体そのものの温度によって引き起こすことができ、または蒸発作用によって引き起こすことができる。液体が蒸発する場合、冷却効果が得られ、したがって、ポリマーが蒸発する液体に接触している領域の温度は、低下することになる。その相転移温度に到達すると、ポリマーは、自由体積の急な不連続変化を受けることになり、ポリマー鎖間の自由体積がより小さいネマチック(結晶)相に切り替わる。そのような場合、相転移は、液体接触によって引き起こされる温度変化によって得られる。
【0047】
水溶液中で下限臨界溶液温度(LCST)を有するポリマーまたはゲル
下限臨界溶液温度(LCST)の定義は、それよりも低いと線状ポリマーが溶媒と混和するポリマーの臨界温度であり、それよりも高いとポリマーが非混和性になる、即ちポリマーが沈殿するポリマーの臨界温度である。
【0048】
例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(ポリNIPA)の温度は、その化学的性質に影響を及ぼす。ポリNIPAは、2個の官能基、イソプロピル基およびアミド基を有する。LCSTよりも低いと、アミド基と水との間の水素結合によって、ポリNIPAは水に溶解し、親水性になる。LCSTよりも高いと、イソプロピル基に疎水的な相互作用が生じ、ポリマーを疎水性にして、それ自体を崩壊させる。この形成においてポリマーを保持するには、臨界温度が維持されなければならない。より低い温度に戻ることにより、臨界温度に再度到達するまで溶液中でポリマーと溶媒とが混合される。
【0049】
化学的に架橋したゲルのこの現象は、ゲルが完全に水和し膨潤している状態にある、LCSTよりも低いときに明らかにされる。LCSTよりも高いと、ゲルは沈殿し収縮する。この状態を図1に示す。LCSTの通過は不連続であり、ゲルの自由体積に著しい影響を与える。
【0050】
化学的に架橋したポリNIPAは、一例である。約34℃のLCSTを有するポリNIPAゲルは、下記の方法で合成することができる。
【0051】
Erlenmayerフラスコ(250ml)を使用して、蒸留水に溶かした10〜25重量%のn−NIPA溶液を調製する。1〜5モル%MBAの形をとる架橋剤を、溶解したNIPA溶液に添加する。この溶液を50mlのガラスバイアルに移し、窒素ガスを溶液中に1分間バブリングする。開始剤Kを溶液に添加し、窒素ガスを1分間にわたりバブリングする。ガラスバイアルを閉じ、30℃で12時間振盪させる。ゲルを、一晩の間、蒸留水に入れ、アセトンで抽出する。ポリマーを、室温でまたは30℃の真空中で乾燥させる。
【0052】
温度およびpH感受性ポリマー
温度およびpH感受性の両方の基を含有するあるコポリマーは、pHがpH感受性成分のpKよりも高く上昇したときに、温度感受性成分のLCST現象が多かれ少なかれ排除されるように、調整することができる。ごく少量の、例えば10モル%のpH感受性モノマーは、pHがpH感受性成分のpKよりも高く上昇した場合、大部分を占める温度感受性成分のLCST現象を排除するのに十分なものになり得ることが、示されている(非特許文献1)。そのようなポリマーの例は、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)及びアクリル酸(AAc)のランダムコポリマーであり、但しこのNIPAAmは温度感受性成分であり、AAcはpH感受性成分である。好ましい例は、80〜98重量%、好ましくは85〜95重量%のNIPAAmと、2〜20重量%、好ましくは5〜15重量%のAAcとのランダムコポリマーである。そのようなコポリマーは、pH 4.0で体温よりわずかに低いLSCTを有し、pH 7.4で60℃を超える著しく高い温度のLCSTを有する。ポリマーのLCSTは、ポリマー中のpH感受性成分の量を調節することによって、設定することができる。そのようなポリマーは、酸条件で、例えば酸超吸収材料などの酸成分を含有する吸収物品で、使用するのに適していると考えられる。
【0053】
イオン感受性ポリマー
あるイオンと接触すると寸法が変化するポリマーが、知られている。一例は、化学機械的ポリマーを生成するドデシルアミンおよびドデシルトリアミンで処理されたポリメチルメタクリレートであり、これは水溶液中であるイオンと接触すると、大きな巨視的運動をする。イオンは、尿中に存在するNa又はClイオンでよい。そのようなポリマーは、非特許文献2に記載されている。このポリマーもpH感受性である。
【0054】
イオンおよび/またはpH感受性ポリマーのその他の例は、コラーゲンなどの、ある種のタンパク質である。
【0055】
通気性材料の例
本発明による通気性材料は、上述のように、多くの種々の方法で、例えばアパーチャ付きフィルム、ミクロポーラスフィルム、マクロポーラスフィルム、ナノポーラスフィルム、モノリシックフィルム、繊維性不織布、およびこれらの積層体で実現することができる。吸収物品のバックシート材料として有用な通気性材料の一例は、Landec. Corp.から入手可能なIntelimer(登録商標)のナノポーラスフィルムまたはモノリシックフィルムである。フィルムは、全体的に前記ポリマーのものでよく、またはその他のポリマーと組み合わせてもよい。
【0056】
Intelimer(登録商標)ポリマーは、尿や血液などの体液の湿潤温度よりもわずかに高くなるよう選択された温度で、即ち環境温度に応じて5〜50℃の温度範囲で、自由体積の不連続変化を受ける。この温度よりも高いと、ポリマーは、ポリマー鎖間の自由体積が、空気および水蒸気が通るのに十分大きい等方(非晶質)構造を有することになる。吸収物品が体液で濡れており、液体がバックシート材料まで達している場合、蒸発プロセスは、体液が蒸発し始めたときに開始され、蒸気がバックシートを通って逃げていく。これは冷却効果をもたらし、したがって、バックシートが蒸発する体液と接触する領域の温度は、尿や血液などの体液の湿潤温度まで低下することになる。この温度に達すると、ポリマーは、自由体積の急激な不連続変化を受け、ネマチック(結晶)相に切り替わることになり、この状態のポリマー鎖間の自由体積はより小さく、したがってフィルムの透過性は低下する。これは迅速で効果的な封止作用をもたらし、バックシートを通した液体の漏れの危険性が低下することになる。空気および蒸気に対する透過性も、当然ながら低下することになるが、ある程度までは維持することができる。
【0057】
吸収物品のバックシート材料として有用な通気性材料の別の例は、アパーチャ付きまたは多孔質フィルムであり、特にミクロポーラスフィルムまたはマクロポーラスフィルムであり、この場合、アパーチャまたは細孔のみが、側鎖液晶ポリマー、例えばIntelimer(登録商標)ポリマーでコーティングされており、体温よりわずかに低い温度で、即ち20〜40℃の温度範囲で、好ましくは25〜35℃の温度範囲で、自由体積の不連続変化を受けることができる。前記ポリマーがそのネマチック(結晶)状態にある場合、アパーチャまたは細孔の開口領域がより小さくなるが、これは空気および水蒸気に対する透過性、したがって通気性が高いことを意味する。しかし、体温に近い温度の分泌された体液が、フィルムおよび側鎖液晶ポリマーと接触する場合、前記ポリマーは、ポリマー鎖間の自由体積がより大きいその等方(非晶質)構造に即座に切り替わることになり、したがってポリマーは、アパーチャまたは細孔の開口領域の比較的より大きい部分を満たす。これは、フィルムを通した液体の漏れに対して効果的な封止をもたらすことになる。空気および蒸気に対する透過性は、当然ながら低下することになるが、少なくともある程度までは維持することができる。
【0058】
本発明による通気性バックシート材料のさらにその他の例では、ポリNIPAが、例えば薄膜として不織材料上に付着される。付着され、そのより多くの空間を必要とする状態から凝固し、それによって、容易に通気可能な不織材料が得られる。体液で濡れると、ポリNIPAフィルムは、そのLCSTに移行し、そのより収縮された状態に切り替わり、したがって、不織材料中の繊維がより近接して一緒になり、不織材料の平均孔径が減少する。ポリNIPAは、線状ポリNIPAの形またはゲルの形で使用してよい。ポリNIPAの代わりに、コラーゲンなどのpH及び/またはイオン感受性ポリマーを使用してもよい。
【0059】
吸収物品の通気性バックシート材料
本発明による通気性材料は、おむつ、生理用ナプキン、失禁ガード、吸収パンツ、パンティライナーなどの吸収物品の、通気性バックシートとして使用される。そのような物品は、典型的には液体透過性トップシート材料、液体不透過性バックシート材料、およびそれらの間に閉じ込められた吸収コアを含む。吸収物品のバックシートとして通気性材料を使用することにより、それを、気体、例えば水蒸気または空気が通過できるようになる。このように、使用前およびバックシートが乾燥したままの間は、吸収物品は、水蒸気および空気に対して透過性である。体液との接触後、自由体積の不連続変化を示すポリマー材料は、上述の手法のいずれかによって、より嵩高くない構造と、より嵩高く、より大きい自由体積を有する空間を必要とする構造との間で迅速に切り替わり、またその逆も同様であり、したがって、材料のアパーチャのサイズ、したがって通気性材料の透過性が低下する傾向にある。空気、水蒸気、および/または液体に対する透過性は、低下することになる。自由体積の変化は、体液に接触しているこれらの材料領域でのみ生じることになるので、水蒸気透過性は、材料のほかの領域では維持されることになり、したがって材料は、自由体積が変化した後も、少なくともある程度の水蒸気透過性を維持することになる。
【0060】
材料が分泌された体液に触れるとすぐに、この体液で濡れた材料の部分のみのアパーチャはそのサイズが小さくなり、そのような液体接触によって引き起こされまたは体液との接触によって引き起こされた温度変化に起因しまたはこれらの組合せに起因して、それを通した液体の漏れが防止されるので、自由体積の不連続変化を示すポリマー材料を通気性バックシートに組み込むことによって、材料の透過性、即ち通気性を、漏れまたは凝縮の無い状態で従来の通気性バックシート材料よりも高くすることが可能になる。このように、より高い多孔率が、従来の通気性バックシート材料よりも本発明による材料で可能になり、それでも液体の漏れは回避される。これは、改善された通気性と、通気性バックシートを通した体液の漏れに対するより高い安全性とにより、着用者にとって快適さがさらに高くなることを意味する。
【0061】
自由体積の不連続変化は、体液中のイオンの存在および/またはpHの変化によって引き起こすこともできる。
【0062】
自由体積の不連続変化を示すポリマー材料は、通気性バックシートの選択された領域だけに付着させてよい。例えば、バックシートの片面にのみ、好ましくは物品の吸収コアに向けて配置される側面に、付着させる。これにより、ポリマー材料は確実に、体液が吸収コア内を通過するとすぐにこの体液と接触し、その自由体積を即座に切り替えることができ、したがって体液で濡れるのを防止する。さらに、通気性バックシートのアパーチャの周囲および/または内部のみに付着させてもよい。追加のバックシート層は、通気性バックシート材料の着用者に面しまたは下着に面する面に、配置されてもよく、前記の追加の層も、当然ながら通気性であるべきであるが、自由体積の不連続変化を示す任意のポリマー材料を必ずしも含有する必要はない。
【0063】
実験室試験
多孔質材料の液体透過性に対する温度(EHECのLSCTよりも低いまたは高い)の影響を調べるために、温度応答性ポリマーEHECで処理した多孔質材料の実験室試験を行った。
【0064】
試験溶液:
2重量%のEHEC(エチルヒドロキシエチルセルロース)DVT 96002(LCST、約34.5℃)を、水に溶解する。
【0065】
試験サンプル:
Hollingsworth & Vose社製の濾紙Lot番号4042169、およびLibeltex社製の不織布−T2(NW−T2)50gsm。
【0066】
処理:
サンプルを、試験溶液中に10分間浸漬した。その後、サンプルを室温で乾燥させた。
【0067】
使用した機器:
温度計、Microtherma2、ホットプレート−Labotech EM3300T、タイマ、フィンピペット−0.5μl〜10μlおよび20μl〜200μl。
【0068】
試験設定:
2つの異なる表面温度について、試験をした。一方の場合には、表面温度がEHECのLCSTよりも低く、他方の場合には高かった。低温の面は23℃の温度を有し、高温の面は約38℃の温度を有していた。2つの異なる温度、37℃および23℃の0.9% NaCl溶液の液滴を、処理した面に置き、液滴が吸収され/蒸発する時間を測定した。5μl〜50μlの間の種々のサイズの液滴について試験をした。結果を表1に示す。
【0069】
低温面の低温の液滴の吸収は、150秒後に生じた。高温面に置かれた高温の液滴は、ポリマーのLCSTよりも高い温度では、吸収が生じなかった。5μlのサイズの液滴は、1450〜1500秒後に蒸発した。自由体積が低下した場合、高温の液滴は吸収されないので、EHECのLCSTよりも高い温度で作用するときの吸収の遅延または消失は、ポリマーの自由体積の低下に関連する。LCSTよりも低い温度で作用する場合(低温の液滴および面)、吸収は150秒後に生じた。LCSTよりも高い温度で作用する場合(高温の液滴および面)、液滴は吸収されないが、1450秒後に蒸発する。
【0070】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収構造と、前記吸収構造の下に在る通気性バックシート材料とを有する、おむつ、生理用ナプキン、失禁ガード、吸収パンツ、パンティライナーなどの身体からの滲出液を吸収するための吸収物品であって、前記通気性バックシート材料の少なくとも一部が、下記の条件または変数のいずれか、即ち液体接触、あるイオンの存在、温度、および/又はpHのいずれかに応答して自由体積の不連続変化を示すポリマー材料を含むことを特徴とする吸収物品。
【請求項2】
前記バックシート材料が、アパーチャ付きフィルム、ミクロポーラスフィルム、マクロポーラスフィルム、ナノポーラスフィルム、モノリシックフィルム、繊維性不織布、およびこれらの積層体から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の吸収物品。
【請求項3】
自由体積の不連続変化を示す前記ポリマー材料が、前記バックシート材料層の少なくとも1つの面または領域に、コーティングの形で付着されることを特徴とする、請求項1または2に記載の吸収物品。
【請求項4】
前記フィルムおよび/または不織材料のアパーチャ/細孔の隣りおよび/または内部の領域が、自由体積の不連続変化を示す前記ポリマー材料でコーティングされることを特徴とする、請求項3に記載の吸収物品。
【請求項5】
自由体積の不連続変化を示す前記ポリマー材料が、選択された温度で等方相とネマチック相との間で相転移することができる側鎖液晶ポリマーであることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の吸収物品。
【請求項6】
前記バックシート材料の少なくとも一部が、側鎖液晶ポリマー材料を含むナノポーラスまたはモノリシックフィルムであることを特徴とする、請求項5に記載の吸収物品。
【請求項7】
前記通気性バックシート材料が、体液で濡れることによって引き起こされた自由体積の不連続変化の後に、より低い程度の通気性を有することを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の吸収物品。
【請求項8】
前記自由体積の不連続変化が、尿または月経液などの体液との接触によって引き起こされた温度の変化により誘発されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の吸収物品。

【図1】
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【公表番号】特表2010−511477(P2010−511477A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540209(P2009−540209)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【国際出願番号】PCT/SE2007/050957
【国際公開番号】WO2008/069752
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(506215320)エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー (157)
【Fターム(参考)】