説明

通水制御装置及びそれを用いた液体注入回路

【課題】プライミング作業を煩雑化させることなく、フリーフローの発生を抑制し得る通水制御装置、及びそれを用いた液体注入回路を提供することにある。
【解決手段】第1の流路4と、第2の流路5と、第1の流路4に配置された弁部材20と、第2の流路5に配置された膜部材8とを備えた通水制御装置を用いる。弁部材20は、設定圧力以上の圧力で第1の流路4に供給され、且つ、第1の流路内4を一方向に流れる流体のみを通過させるように構成する。第2の流路5は、弁部材20の上流で第1の流路4から分岐し、弁部材20の下流で第1の流路4に合流するように形成する。膜部材8には、疎水性及び通気性を付与し、膜部材8によって、液体が第2の流路5を通過するのを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通水制御装置に関し、特には、患者への輸液の注入や薬剤投与の際にアンチフリーフロー機構として機能する通水制御装置、及びそれを用いた液体注入回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者に注入する輸液の流量を規定するため、輸液ポンプが利用されている。輸液ポンプは、輸液バックと穿刺針とを結ぶ輸液回路に取り付けられ、輸液回路を構成する輸液チューブに蠕動運動を付与することよって、設定された流量で輸液を送り出す。一般に、輸液ポンプとしては、フィンガ式輸液ポンプとローラ式輸液ポンプとが知られている。
【0003】
フィンガ式輸液ポンプは、輸液チューブに沿って一列に配置された複数のフィンガを備え、複数のフィンガを別々に往復運動させることによって、輸液チューブに蠕動運動を付与している。また、ローラ式輸液ポンプは、一対の回転ローラを備え、これらを円運動させることよって、輸液チューブに蠕動運動を付与している。
【0004】
但し、このような輸液ポンプを利用して輸液の注入を行った場合は、フリーフローが問題となることがある。フリーフローとは、輸液の終了後に、輸液チューブの穿刺針近くに設けられたクランプを閉め忘れた状態で輸液ポンプを取り外したことによって、輸液が必要量以上に患者の体内に注入されてしまうことをいう。
【0005】
また、フリーフローの問題は、シリンジポンプによる薬剤投与の場合においても生じることがある。例えば、患者が薬剤チューブを引っ張る等してシリンジがポンプ本体から外れた場合に、規定量以上の薬剤が患者に注入されてしまうことがある。更に、薬剤投与において、必要以上の薬剤が投与されてしまうと、患者の生命に関わる場合がある。よって、薬剤投与におけるフリーフローの防止は、輸液の場合よりも重要である。
【0006】
このようなフリーフローの問題を解決するため、例えば、設定圧力以上とならないと流体を通過させない弁装置(例えば、特許文献1参照)を液体注入回路に組み込む方法が考えられる。この弁装置を組み込んだ液体注入回路においては、フリーフロー発生時の低い圧力(落差圧)では弁が開かず、輸液等は流れないため、フリーフローの防止を図ることができると考えられる。
【特許文献1】特表2004−501686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、輸液ポンプを使用して輸液を送り出す場合は、輸液ポンプを稼動する前に、予めプライミングを行ってチューブ内の空気を押し出しておく必要がある。プライミングにおいては、少なくとも、輸液回路における、輸液バッグから輸液ポンプの取り付け箇所までが輸液で充填される。
【0008】
しかしながら、プライミングは自然落下による落差圧を利用して行われ、また弁は落差圧では開かないため、弁装置を輸液回路に組み込んでいると、チューブ内の空気を押し出すことは困難である。この場合、輸液は輸液バックの直下にある点滴筒のところまでしか流れることができず、プライミングできないという問題が発生する。更に、輸液ポンプは、構造上、吸引機能を備えていないため、輸液ポンプを稼動しても輸液は流れず、プライミングは不可能である。
【0009】
一方、弁装置が、プライミング後に、輸液回路に組み込まれるようにすれば、上記の問題を解決できると考えられるが、この場合は、プライミング作業が煩雑化し、医師や看護士の負担を大きくしてしまう。
【0010】
本発明の目的は、上記問題を解消し、プライミング作業を煩雑化させることなく、フリーフローの発生を抑制し得る通水制御装置、及びそれを用いた液体注入回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明における通水制御装置は、第1の流路と、第2の流路と、前記第1の流路に配置された弁部材と、前記第2の流路に配置された膜部材とを備え、前記弁部材は、設定圧力以上の圧力で第1の流路に供給され、且つ、前記第1の流路内を一方向に流れる流体のみを通過させ、前記第2の流路は、前記弁部材の上流で前記第1の流路から分岐し、前記弁部材の下流で前記第1の流路に合流するように形成され、前記膜部材は、疎水性及び通気性を有し、前記第2の流路を液体が通過するのを阻止することを特徴とする。
【0012】
また、上記目的を達成するため、本発明における液体注入回路は、上記本発明における通水制御装置と、第1のチューブと、第2のチューブとを少なくとも備え、前記第1の流路の一端に、前記第1のチューブが接続され、前記第1の流路の他端に、前記第2のチューブが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明における通水制御装置においては、第1の流路に備えられた弁部材と、第2の流路に備えられた膜部材とによって、フリーフローの発生は抑制される。また、第2の流路に備えられた膜部材は、液体は通過させないが、気体は通過させるため、本発明における通水制御装置を輸液回路等の液体注入回路に取り付けて、自然落下によるプライミングを行った場合、液体は膜部材のところまで到達できる。本発明における通水制御装置によれば、プライミング作業を煩雑化させることなく、フリーフローの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明における通水制御装置は、第1の流路と、第2の流路と、前記第1の流路に配置された弁部材と、前記第2の流路に配置された膜部材とを備え、前記弁部材は、設定圧力以上の圧力で第1の流路に供給され、且つ、前記第1の流路内を一方向に流れる流体のみを通過させ、前記第2の流路は、前記弁部材の上流で前記第1の流路から分岐し、前記弁部材の下流で前記第1の流路に合流するように形成され、前記膜部材は、疎水性及び通気性を有し、前記第2の流路を液体が通過するのを阻止することを特徴とする。
【0015】
上記本発明における通水制御装置は、両端が開口した第1の筒体及び第2の筒体を備え、前記第2の筒体は、その一方の開口が前記第1の筒体の一方の開口から露出し、且つ、他方の開口が前記第1の筒体の内部に位置するように前記第1の筒体に挿入され、そして、前記他方の開口に対向する位置で、前記弁部材と前記第1の筒体との間に第1の隙間が形成され、前記弁部材と前記第2の筒体との間に第2の隙間が形成されるように、前記弁部材を保持し、前記弁部材は、弾性材料で形成され、且つ、前記流体が前記設定圧力以上の圧力で供給されると弾性変形して前記流体を通過させ、前記膜部材は、前記弁部材と前記第1の筒体との間の隙間を塞ぐように配置され、前記第1の流路は、前記第2の筒体の一方の開口から、前記第2の筒体の他方の開口及び前記弁部材を経由し、前記第1の筒体の他方の開口に至るまでの流路によって構成され、前記第2の流路は、前記第1の隙間及び前記第2の隙間によって構成されている態様であっても良い。
【0016】
また、上記本発明における通水制御装置は、両端が開口した第1の筒体及び第2の筒体を備え、前記第2の筒体は、その一方の開口が前記第1の筒体の一方の開口から露出し、且つ、他方の開口が前記第1の筒体の内部に位置するように前記第1の筒体に挿入され、そして、前記第1の筒体に挿入されている部分において、その側壁を貫通する貫通孔を備え、前記弁部材は、前記貫通孔を覆う弾性部材で形成され、且つ、前記流体が前記設定圧力以上の圧力で供給されると、それが前記貫通孔を通過できるように弾性変形し、前記膜部材は、前記第2の筒体の他方の開口を塞ぐように配置され、前記第1の流路は、前記第2の筒体の一方の開口から、前記貫通孔及び前記弁部材を経由し、前記第1の筒体の他方の開口に至るまでの流路によって構成され、前記第2の流路は、前記第2の筒体の内部の前記貫通孔が設けられたところから、前記第2の筒体の他方の開口を経由し、前記膜部材に至るまでの流路によって構成されている態様であっても良い。
【0017】
更に、上記本発明における通水制御装置は、両端が開口した第1の筒体及び第2の筒体を備え、前記第2の筒体は、その一方の開口が前記第1の筒体の一方の開口から露出し、且つ、他方の開口が前記第1の筒体の内部に位置するように前記第1の筒体に挿入され、前記弁部材が、前記第2の筒体の前記他方の開口を覆い、且つ、これを閉塞可能に形成された傘状の弁部と、前記弁部から突出し、且つ、前記第2の筒体の前記他方の開口から前記第2の筒体の内部に挿入される突出部と、前記突出部の突出方向側の端部から前記弁部に向かう方向に沿って前記弁部材を貫通する貫通孔とを備え、前記突出部は、前記第2の筒体の内部に挿入されたときに、前記第2の筒体の内面との間に前記第1の流路の一部を構成する隙間が存在するよう形成され、且つ、前記弁部によって前記第2の筒体の前記他方の開口を閉塞させた状態で前記第2の筒体に固定され、更に、前記流体が設定圧力以上の圧力で前記隙間を介して供給され、それによって前記弁部が押圧されると、弾性変形して前記弁部による閉塞を解除し、前記第1の流路は、前記第2の筒体の一方の開口から、前記隙間、及び前記弁部による閉塞が解除されたときの前記弁部と前記第2の筒体との間を経由し、前記第1の筒体の他方の開口に至るまでの流路によって構成され、前記第2の流路は、前記弁部材を貫通する貫通孔によって構成され、前記膜部材は、前記貫通孔を塞ぐように配置されている態様であっても良い。
【0018】
本発明における液体注入回路は、上記本発明における通水制御装置と、第1のチューブと、第2のチューブとを少なくとも備え、前記第1の流路の一端に、前記第1のチューブが接続され、前記第1の流路の他端に、前記第2のチューブが接続されていることを特徴とする。
【0019】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における通水制御装置について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態1における通水制御装置の外観を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態1における通水制御装置を流体の流れ方向に沿って切断して得られる断面図である。図3は、本発明の実施の形態1における通水制御装置を図2に示した切断面に垂直な面で切断して得られる断面図である。図4は、図2及び図3に示した弁部材を示す斜視図であり、弁部材の一部分については断面で示している。
【0020】
図1〜図3に示すように、通水制御装置は、第1の流路4と、第2の流路5と、第1の流路4に配置された弁部材20と、第2の流路に配置された膜部材8とを備えている。図2及び図3に示すように、弁部材20は、第1の流路4内を一方向に流れる流体のみを通過させる一方弁である。また、弁部材20は、設定圧力以上の圧力で第1の流路4に供給されている流体のみを通過させる。図3に示すように、第2の流路5は、弁部材20の上流で第1の流路4から分岐し、弁部材20の下流で第1の流路4に合流するように形成されている。更に、膜部材8は、疎水性及び通気性を有し、第2の流路5を液体が通過するのを阻止する。
【0021】
本実施の形態1においては、図2及び図3に示すように、通水制御装置は、両端が開口した第1の筒体1及び第2の筒体10を備えている。第2の筒体10は、その一方(上流側)の開口11aが第1の筒体1の一方(上流側)の開口2から露出し、他方(下流側)の開口11aが第1の筒体1の内部に位置するように第1の筒体1に挿入される。
【0022】
具体的には、第2の筒体10は、開口11a及び11bが設けられた内筒11と、その外側に同心円状に設けられた外筒12とを備えている。内筒11と外筒12とは、リング状の連結部材13によって連結されている。図1〜図3に示した例では、内筒11、連結部材13及び外筒12は、一体的に形成されている。外筒12は、その外面で第1の筒体1の内面に密着し、第2の筒体10を第1の筒体1に固定させている。
【0023】
また、外筒12の下流側の端部は、内筒11の開口11bよりも下流側に突き出し、更に弁部材20を保持するための保持部14を備えている。保持部14は、外筒12の中心軸に向かって突出するように形成され、後述する弁部材20の突起部21に嵌合し、これによって弁部材20を保持している。このように、第2の筒体10は、下流側の開口11bに対向する位置で、弁部材20を保持している。
【0024】
更に、本実施の形態1では、第1の流路4は、第2の筒体10の上流側の開口11aから、第2の筒体10の下流側の開口11b及び弁部材20を経由し、第1の筒体1の下流側の開口3に至るまでの流路によって構成されている。図2及び図3において、実線で示す矢印は、第1の流路4を通過する流体の流れを示している。
【0025】
また、本実施の形態1では、上述した第2の筒体10による弁部材20の保持は、弁部材20と第1の筒体1との間に第1の隙間6が形成され、弁部材20と第2の筒体10との間に第2の隙間7が形成されるように行われている。更に、図3に示すように保持部14の一部分には、貫通孔15が形成されている。第2の隙間7、貫通孔15、及び第1の隙間6は、連通し、一連の流路を構成している。本実施の形態1では、この流路が第2の流路5となっている。
【0026】
第2の流路5は、上述したように、弁部材20の上流で第1の流路4から分岐し、弁部材20の下流で第1の流路4に合流しており、第1の流路4のバイパス流路となっている。図3において、破線で示す矢印は、第2の流路5を通過する流体(気体)の流れを示している。
【0027】
また、本実施の形態1では、膜部材8は、第2の筒体10の突起部14の下面に貼り付けられており、弁部材20と第1の筒体1との間の隙間5を塞ぐように配置されている。このため、内筒11の上流側の開口11aから供給され、第2の隙間7及び貫通孔15を通る流体のうち、気体は第2の流路5を通過するが、液体は膜部材8によってせき止められる。
【0028】
本実施の形態1において、膜部材8は、疎水性と通気性とを兼ね備えたものであれば良く、特に限定されるものではない。具体的には、膜部材8は、JIS L 1092のB法に規定の耐水圧試験によって測定される耐水圧が0.01MPa以上、好ましくは0.1MPa以上であるのが好ましい。膜部材8の形成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン他)、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。膜部材8は、これらの材料によって多孔質層や不織布を形成することによって得ることができる。
【0029】
また、本実施の形態1においては、図2〜図4に示すように、弁部材20は、弾性材料で形成されている。弁部材20は、第1の流路4を流れる流体が設定圧力以上の圧力で供給されると、弾性変形して流路を開き、流体を通過させる。
【0030】
具体的には、図4に示すように、弁部材20は、一対の弁23及び24と、第2の筒体10に取り付けるための環状の突起部21と、第2の流路5を形成するための外壁22とを備え、これらは一体的に形成されている。また、弁23と弁24とは、両者が合わさったときに、設定された方向(図中上から下に向かう方向)に向けて突き出した口ばし状となるように形成されている。
【0031】
この構成により、弁23と弁24とは、設定された方向以外の方向(図中下から上に向かう方向)から供給された流体に対しては開かず、これらの侵入を阻止する。一方、設定された方向から、設定圧力以上の圧力で流体が供給されると、図2に示すように、弁23及び弁24は弾性変形し、両者の間に隙間が生じ、流体が通過することになる。
【0032】
本実施の形態1においては、設定圧力の調整は、弁23及び24の厚みや形成材料等を適宜選択することによって行うことができる。また、設定圧力は、フリーフローが防止できるように設定すれば良い。例えば、本実施の形態1における通水制御装置が、輸液回路に適用されるのであれば、設定圧力は、通常の輸液の際の自然落下による落差圧よりも高い圧力に設定すれば良い。
【0033】
また、弁部材20を形成する弾性材料としては、各種ゴム材料や各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。具体的には、ゴム材料としては、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素性ポリエチレン系等の熱可塑性エラストマーが挙げられる。更に、これらの材料うち、最も好ましい材料としては、シリコンゴムが挙げられる。また、弁部材20の作製は、金型による一体成形によって行うことができる。
【0034】
以上のように、本実施の形態1における通水制御装置は、第1の流路4に弁部材20を備え、第2の流路5に膜部材8を備えており、設定圧力より小さな圧力で供給された液体が通水制御装置を通過するのを防止している。また、液体は設定圧力以上の圧力でなければ、通水制御装置を通過できないが、気体は弁部材20が開かなくても常に通水制御装置を通過できる。このため、本実施の形態1における通水制御装置を液体注入回路に適用すれば、それを液体注入回路に取り付けた状態でのプライミングを可能にすると共に、背景技術の欄において述べたフリーフローの発生を抑制できる。
【0035】
ここで、図5を用いて、図1〜図4に示した通水制御装置を備えた、本実施の形態1における液体注入回路について説明する。図5は、本発明の実施の形態1における液体注入回路の全体構成を示す構成図である。図5における例では、液体注入回路は、輸液ポンプが取り付けられる輸液回路である。なお、本発明において、液体注入回路は輸液回路に限定されるものではなく、その他、薬剤注入回路、観血式血圧測定法で使用される採血回路(Aライン)等であっても良い。
【0036】
図5に示すように、輸液回路は、輸液バック31と、点滴筒32と、クランプ33と、通水制御装置30と、穿刺針34とを備えている。また、通水制御装置1の流入側に接続されたチューブ37は、点滴筒32に接続されている。更に、チューブ37には、輸液の流れ方向に沿って、順に、輸液ポンプ36とクランプ33とが取り付けられている。また、通水制御装置30の排出側に接続されたチューブ38は、穿刺針34に接続されている。なお、チューブ35は点滴筒32と輸液バック31とを接続している。
【0037】
この構成により、クランプ33を閉め忘れた状態(開いた状態)で輸液ポンプ36を取り外してしまっても、通水制御装置30により、輸液がそれ以上先に流れることはなく、フリーフローの発生は抑制される。また、図3に示したように第2の流路5と膜部材8とによって通水制御装置30には通気性が付与されている。よって、落差圧により、チューブ35の内部と、チューブ37の内部における点滴筒32から通水制御装置30までの部分とに、輸液を充填することができる。
【0038】
また、落差圧のみでは、穿刺針34と通水制御装置30との間の部分に輸液を充填することはできないが、この部分への輸液の充填は、通水制御装置30まで輸液を充填した後に輸液ポンプ36を稼動することによって行うことができる。このように、本実施の形態1によれば、通水制御装置を輸液回路等の液体注入回路に取り付けた状態でプライミングを行うことができ、医師や看護士の作業の煩雑化が抑制される。
【0039】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2における通水制御装置について、図6及び図7を参照しながら説明する。図6は、本発明の実施の形態2における通水制御装置を流体の流れ方向に沿って切断して得られる断面図である。図7は、本発明の実施の形態2における通水制御装置を図6に示した切断面に垂直な面で切断して得られる断面図である。
【0040】
図6及び図7に示すように、本実施の形態2における通水制御装置は、弁部材25の構成において、実施の形態1における通水制御装置と異なっている。また、このため、弁部材25を保持する第2の筒体10の一部分の構成や、第1の流路4及び第2の流路5の構成においても、実施の形態1における通水制御装置と異なっている。以下に、実施の形態1との相違点を説明する。なお、以下の相違点以外については、実施の形態2における通水制御装置は、実施の形態1における通水制御装置と同様に構成されている。
【0041】
具体的には、本実施の形態2においては、内筒11は、連結部材13に連結している部分よりも更に下流側に突き出している。また、内筒11の下流側に突き出した部分の側壁には、それを貫通する貫通孔16が設けられている。貫通孔16は、後述するように第1の流路4の一部を構成する。また、本実施の形態2では、第2の筒体11の下流側の開口11bを塞ぐように、膜部材8が設けられている。
【0042】
更に、弁部材25は、弾性材料で形成されたチューブで構成されており、内筒11の下流側に突き出した部分に被せられ、貫通孔16を覆っている。弁部材25を形成するための弾性材料としては、実施の形態1で述べたものが挙げられる。また、弁部材25は、金型成形によって形成されていても良いし、押出成形によって形成されていても良いが、寸法精度に優れる点から金型成形によって形成されているのが好ましい。
【0043】
よって、本実施の形態2においては、内筒11の内部に供給された液体が設定圧力より小さい場合は、貫通孔16を覆う弁部材25と開口11bを覆う膜部材8とによって、液体はせき止められる。一方、液体が設定圧力以上の圧力で供給されると、弁部材25は、図7において破線で示すように変形し、弁部材25と内筒11との間に隙間が形成される。この結果、液体は、貫通孔16、及び形成された隙間を通って、第1の筒体1の開口3へと流れる。なお、内筒11の内部に供給された気体は、開口11b及び膜部材8を介して、常に、通水制御装置を通過できる。
【0044】
本実施の形態2では、第1の流路4は、内筒11の上流側の開口11aから、貫通孔16及び弁部材25を経由し、第1の筒体1の下流側の開口3に至るまでの流路によって構成されている(図7参照)。また、第2の流路5は、内筒11の内部の貫通孔16が設けられたところから、内筒11の下流側の開口11bを経由して、膜部材8に至るまでの流路によって構成されている。
【0045】
このように、本実施の形態2における通水制御装置も、実施の形態1と同様に、設定圧力より小さな圧力で供給された液体が通水制御装置を通過するのを防止している。また、気体は、常に、本実施の形態2における通水制御装置を通過できる。よって、本実施の形態2における通水制御装置を液体注入回路に適用した場合も、実施の形態1における通水制御装置と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3における通水制御装置について、図8及び図9を参照しながら説明する。図8(a)及び(b)は、本発明の実施の形態3における通水制御装置を流体の流れ方向に沿って切断して得られる断面図であり、図8(a)は弁が閉じた状態を示し、図8(b)は弁が開いた状態を示している。図9(a)〜(c)は、図8(a)及び(b)に示した弁部材を示す図であり、図9(a)は上面図、図9(b)は図9(a)中の切断線A−A´に沿って切断して得られた断面図、図9(c)は図9(a)中の切断線B−B´に沿って切断して得られた断面図である。
【0047】
本実施の形態3における通水制御装置は、第2の筒体17及び弁部材40の構成において、実施の形態1における通水制御装置と異なっている。以下に、実施の形態1との相違点を説明する。なお、以下の相違点以外については、実施の形態3における通水制御装置は、実施の形態1における通水制御装置と同様に構成されている。
【0048】
具体的には、本実施の形態3においては、第2の筒体17は、一つの円筒のみを備えている。弁部材40は、傘状の弁部41と突出部42とを備えている。弁部材40も、実施の形態1で示した弾性材料によって一体的に形成されている。
【0049】
弁部41は、第2の筒体17の下流側の開口17bを覆うように、即ち、傘の直径が開口17bの直径より大きくなるように形成されている。また、弁部41の上流側(傘の裏側)には、環状の接触面45が形成されている。このため、弁部41は、開口17bの周辺領域と密着して、開口17bを閉塞することができる。
【0050】
突出部42は、弁部41の傘の裏側部分から突出するように形成されている。また、図8及び図9に示すように、突出部42は、下流側の開口17bから第2の筒体17の内部に挿入され、更に、弁部41によって下流側の開口17bを閉塞させた状態で、第2の筒体17に固定されている。
【0051】
突出部42の第2の筒体17への固定は、突出部42の表面に設けられた突起44を、第2の筒体17の内部に設けられた段差17cに引っ掛けることによって行われている。また、突起44及び段差17cの位置は、突起44を段差17cに引っ掛けたときに、弁部41の接触面45が開口17bの周辺領域に密着するように調整されている。
【0052】
また、図8(a)、図8(b)、及び図9(c)に示すように、突出部42は、第2の筒体17の内部に挿入されたときに、第2の筒体17の内面との間に、第1の流路4を構成する隙間が存在するようにも形成されている。具体的には、突出部42は側面に凹部43を備えており、この凹部43によって、第1の流路4を構成する隙間が形成される。
【0053】
よって、第2の筒体17の内部に供給された液体は、凹部43と第2の筒体17の内面との間の隙間を通り、その後、弁部41を押圧する。このとき、この液体が設定圧力以上の圧力で供給されていると、図8(b)に示すように、突出部42は、伸張方向に弾性変形し、弁部41の接触面45と開口17bの周辺領域との密着を解除する。この結果、液体は、弁部41の接触面45と開口17bの周辺領域との間を通って、第1の筒体1の開口3へと流れる。
【0054】
本実施の形態3では、第1の流路4は、第1の筒体の上流側の開口11aから、凹部43と第2の筒体17の内面との間、及び接触面45と開口17bの周辺領域との間を経由し、第1の筒体1の下流側の開口3に至るまでの流路によって構成されている。
【0055】
また、弁部材40は、それを貫く貫通孔46を備えている。貫通孔46は、突出部42の突出方向側の端部から弁部41に向かう方向に沿って設けられている。本実施の形態3では、この貫通孔46が第2の流路5を構成している。また、貫通孔46の下流側の開口を塞ぐように、即ち、弁部41の頂点付近を覆うように膜部材8が貼り付けられている。よって、第2の筒体17の内部に供給された気体は、貫通孔46及び膜部材8を介して、常に、通水制御装置を通過できる。なお、本実施の形態3においては、膜部材8は、貫通孔46の内部に配置されていても良いし、貫通孔46の上流側の開口を塞ぐように配置されていても良い。
【0056】
このように、本実施の形態3における通水制御装置も、実施の形態1と同様に、設定圧力より小さな圧力で供給された液体が通水制御装置を通過するのを防止している。また、気体は、常に、本実施の形態3における通水制御装置を通過できる。よって、本実施の形態3における通水制御装置を液体注入回路に適用した場合も、実施の形態1における通水制御装置と同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明における通水制御装置及び液体注入回路は、輸液回路や薬液注入回路の構成部品として適用でき、産業上の利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1における通水制御装置の外観を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1における通水制御装置を流体の流れ方向に沿って切断して得られる断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1における通水制御装置を図2に示した切断面に垂直な面で切断して得られる断面図である。
【図4】図4は、図2及び図3に示した弁部材を示す斜視図であり、弁部材の一部分については断面で示している。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1における液体注入回路の全体構成を示す構成図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態2における通水制御装置を流体の流れ方向に沿って切断して得られる断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態2における通水制御装置を図6に示した切断面に垂直な面で切断して得られる断面図である。
【図8】図8(a)及び(b)は、本発明の実施の形態3における通水制御装置を流体の流れ方向に沿って切断して得られる断面図であり、図8(a)は弁が閉じた状態を示し、図8(b)は弁が開いた状態を示している。
【図9】図9(a)〜(c)は、図8(a)及び(b)に示した弁部材を示す図であり、図9(a)は上面図、図9(b)は図9(a)中の切断線A−A´に沿って切断して得られた断面図、図9(c)は図9(a)中の切断線B−B´に沿って切断して得られた断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 第1の筒体
2 第1の筒体の上流側の開口
3 第1の筒体の下流側の開口
4 第1の流路
5 第2の流路
6、7 隙間
8 膜部材
10、17 第2の筒体
11 内筒
11a、17a 第2の筒体の上流側の開口
11b、17b 第2の筒体の下流側の開口
12 外筒
13 連結部材
14 保持部
15、16 貫通孔
17c 段差
20、25、40 弁部材
21 突起部
22 外壁
23、24 弁
41 弁部
42 突出部
43 凹部
44 突起
45 接触面
30 通水制御装置
31 輸液バック
32 点滴筒
33 クランプ
34 穿刺針
35、37、38 チューブ
36 輸液ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の流路と、第2の流路と、前記第1の流路に配置された弁部材と、前記第2の流路に配置された膜部材とを備え、
前記弁部材は、設定圧力以上の圧力で第1の流路に供給され、且つ、前記第1の流路内を一方向に流れる流体のみを通過させ、
前記第2の流路は、前記弁部材の上流で前記第1の流路から分岐し、前記弁部材の下流で前記第1の流路に合流するように形成され、
前記膜部材は、疎水性及び通気性を有し、前記第2の流路を液体が通過するのを阻止することを特徴とする通水制御装置。
【請求項2】
両端が開口した第1の筒体及び第2の筒体を備え、
前記第2の筒体は、その一方の開口が前記第1の筒体の一方の開口から露出し、且つ、他方の開口が前記第1の筒体の内部に位置するように前記第1の筒体に挿入され、そして、前記他方の開口に対向する位置で、前記弁部材と前記第1の筒体との間に第1の隙間が形成され、前記弁部材と前記第2の筒体との間に第2の隙間が形成されるように、前記弁部材を保持し、
前記弁部材は、弾性材料で形成され、且つ、前記流体が前記設定圧力以上の圧力で供給されると弾性変形して前記流体を通過させ、
前記膜部材は、前記弁部材と前記第1の筒体との間の隙間を塞ぐように配置され、
前記第1の流路は、前記第2の筒体の一方の開口から、前記第2の筒体の他方の開口及び前記弁部材を経由し、前記第1の筒体の他方の開口に至るまでの流路によって構成され、
前記第2の流路は、前記第1の隙間及び前記第2の隙間によって構成されている請求項1に記載の通水制御装置。
【請求項3】
両端が開口した第1の筒体及び第2の筒体を備え、
前記第2の筒体は、その一方の開口が前記第1の筒体の一方の開口から露出し、且つ、他方の開口が前記第1の筒体の内部に位置するように前記第1の筒体に挿入され、そして、前記第1の筒体に挿入されている部分において、その側壁を貫通する貫通孔を備え、
前記弁部材は、前記貫通孔を覆う弾性部材で形成され、且つ、前記流体が前記設定圧力以上の圧力で供給されると、それが前記貫通孔を通過できるように弾性変形し、
前記膜部材は、前記第2の筒体の他方の開口を塞ぐように配置され、
前記第1の流路は、前記第2の筒体の一方の開口から、前記貫通孔及び前記弁部材を経由し、前記第1の筒体の他方の開口に至るまでの流路によって構成され、
前記第2の流路は、前記第2の筒体の内部の前記貫通孔が設けられたところから、前記第2の筒体の他方の開口を経由し、前記膜部材に至るまでの流路によって構成されている請求項1に記載の通水制御装置。
【請求項4】
両端が開口した第1の筒体及び第2の筒体を備え、
前記第2の筒体は、その一方の開口が前記第1の筒体の一方の開口から露出し、且つ、他方の開口が前記第1の筒体の内部に位置するように前記第1の筒体に挿入され、
前記弁部材が、前記第2の筒体の前記他方の開口を覆い、且つ、これを閉塞可能に形成された傘状の弁部と、前記弁部から突出し、且つ、前記第2の筒体の前記他方の開口から前記第2の筒体の内部に挿入される突出部と、前記突出部の突出方向側の端部から前記弁部に向かう方向に沿って前記弁部材を貫通する貫通孔とを備え、
前記突出部は、前記第2の筒体の内部に挿入されたときに、前記第2の筒体の内面との間に前記第1の流路の一部を構成する隙間が存在するよう形成され、且つ、前記弁部によって前記第2の筒体の前記他方の開口を閉塞させた状態で前記第2の筒体に固定され、更に、前記流体が設定圧力以上の圧力で前記隙間を介して供給され、それによって前記弁部が押圧されると、弾性変形して前記弁部による閉塞を解除し、
前記第1の流路は、前記第2の筒体の一方の開口から、前記隙間、及び前記弁部による閉塞が解除されたときの前記弁部と前記第2の筒体との間を経由し、前記第1の筒体の他方の開口に至るまでの流路によって構成され、
前記第2の流路は、前記弁部材を貫通する貫通孔によって構成され、
前記膜部材は、前記貫通孔を塞ぐように配置されている請求項1に記載の通水制御装置。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれかに記載の通水制御装置と、第1のチューブと、第2のチューブとを少なくとも備え、
前記第1の流路の一端に、前記第1のチューブが接続され、前記第1の流路の他端に、前記第2のチューブが接続されていることを特徴とする液体注入回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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