説明

通話電流制御方法と装置並びに交換機とプログラム

【課題】加入者端末への最大通話電流を加入者端末のオフフック数と連動して制御することで電力供給部の電力容量を適正化する通話電流制御方法と装置の提供。
【解決手段】加入者回路1−1〜1−nの回線状態監視部12で加入者端末2−1〜2−nのオフフックを検出すると通常電流制御部7に通知し、通常電流制御部7はオフフックカウンタ5を+1し、回線状態監視部12でオンフックを検出すると通常電流制御部7に通知し、通常電流制御部7はオフフックカウンタ5を−1することで、同時オフフック数を収集し、オフフックカウンタ5の同時オフフック数がオフフック閾値記憶部8の最大通話電流制限閾値を越えたとき、通常電流制御部7は最大通話電流制限オーダを制御オーダ送出部6−1〜6−nに送出し、加入者回路1−1〜1−nの通話電流供給回路11から加入者端末2−1〜2−nに供給する最大通話電流を制限する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換機の通話電流制御方法と装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
加入者交換機は、加入者回路の給電特性を制御する機能を有している。
【0003】
典型的な通話電流の制御機能として、
・対向装置や専用線等で通話電流の制限等がある場合に、通話電流を制限する、
・低消費電力化のために線路特性に合わせて回線毎に通話電流の制限を設定する、
・リモート局等の停電時等のバッテリー電源での運用における低電力化のために、通話電流を切り替える、
等の制御が行われている。
【0004】
また、加入者回路側での地絡等からの通話電流供給回路の保護対策のため、加入者回路単位での通話電流の制限が行われている。
【0005】
加入者端末の一斉発呼に対応して、給電特性を低消費電力に変更する構成として、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1においては、電流供給回路が、電話機への電流供給機能のほかに、加入者線の状態を監視して出力し、制御回路からの入力情報に応じて、電話機への給電特性を変更する機能を備えている。さらに、複数の電流供給回路の状態を監視する監視回路と、監視回路の出力情報を入力し、すべての電流供給回路の状態を判定し、設定された閾値を超えたとき、電流供給回路の特性を変更する制御回路を備え、複数個の電流供給回路の状態をモニタし、全体の消費電力を推定し、過大なときには、給電特性を低消費電力に切り換える結果、一斉発呼のような場合でも、全体の消費電力を低い値に抑えることを可能としている。
【0006】
また、加入者端末の種別に応じて、供給電流を可変させる構成として、特許文献2には、複数の加入者端末を収容する交換機において、加入者端末毎に設けられる加入者回路が、加入者端末から出力される所定の周波数信号を検出して加入者端末の種類を判別し、判別結果に応じて、加入者端末に供給する直流電流を変化させる構成が開示されている。特許文献2においては、例えば加入者端末が給電電流が少なくて済むモデム等に電流を供給する場合、その給電電流を少なくしている。
【0007】
さらに、特許文献3には、複数の加入者回路を収容する加入者交換機の加入者回路において、加入者回路毎に、通話電流制御回路を設け、加入者回路の通話状態を監視する加入者状態監視回路を備え、加入者状態監視回路の出力信号を識別する加入者回路制御回路を接続し、加入者回路制御回路の出力信号を通話電流制御回路に接続し、未通話の加入者回路を閉塞し、加入者回路における総発熱量を抑制する方式が開示されている。特許文献3において、加入者回路制御回路は、加入者状態信号を識別し、同一ユニット内の加入者の同時通話状態が一定基準以上になると、加入者回路制御回路から通話中以外の加入者回路の通話電流制御回路へ通話電流停止信号を送出し、通話電流停止信号を受けた通話電流制御回路は電源より供給されている通話電流の供給を停止し、一時的に、通話中以外の加入者の発信を不能にする。
【0008】
なお、接続端末数に応じて給電制御を行う構成として、特許文献4には、各端末から通知された最大消費電流値を用いて過電流制限値が算出され、過電流制限値と給電電流値との比較結果に基づき、給電停止の要否を判断する構成が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭59−81960号公報
【特許文献2】特開平11−215269号公報
【特許文献3】特開昭58−64857号公報
【特許文献4】特開2006−50850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以下は本発明者達の検討内容である。
【0011】
上記いずれの通話電流の制御においても、複数の加入者端末の同時オフフック(OFF HOOK)数によって通話電流を制御する構成とはされていない。
【0012】
例えば、加入者交換機の収容加入者数とトラヒック量を事前に予測し、該予測に基づき電力設備を配備した場合について検討する。
【0013】
この場合、予測されたトラヒック量に基づき配備された電力設備の能力を超えたバースト的な呼が発生した際には、最悪、システムダウンを引き起こす可能性がある(第1の課題)。
【0014】
また、予測されたトラヒック量の変動が大きい場合には、第1の課題のシステムダウンを回避するために、最大トラヒック量を考慮した電力容量が必要とされる。
【0015】
しかしながら、電力設備配備後、実際のトラヒック量の変動が予測を下回ると、余剰な設備が生じる結果となり、経済性、装置構成上に問題がある(第2の課題)。
【0016】
また、昨今のダイアルアップやxDSL(xDigital Subscriber Line)を中心とした加入者交換機経由でのインターネットアクセスの増加が、平均保留時間を増加させたように、従来の音声トラヒックを想定していた交換機での通話電流の制御機能のみならず、今後のニーズにフレキシブルに対応できる通話電流の制御が提供されるべきである(第3の課題)。
【0017】
したがって、本発明の目的は、上記課題に鑑みて創案されたものであって、その目的は、加入者端末への最大通話電流を加入者端末のオフフック数と連動して制御することで、電力設備、電力容量の適正化を可能とする、通話電流制御方法と装置ならびにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の1つの側面(アスペクト)に係る方法において、交換機が収容する複数の加入者端末の同時オフフック数を集計し、複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第1の閾値を越えている場合、加入者端末に供給する通話電流の制限を行う。
【0019】
本発明に係る方法において、通話電流が制限された状態で、複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第2の閾値を下回った場合、通話電流の制限を解除する、ようにしてもよい。
【0020】
本発明に係る方法において、前記第1の閾値は、前記第2の閾値よりも大である(ヒステリシスを設ける)か、前記第2の閾値と等しい。
【0021】
本発明に係る方法において、通常通話電流のほかに、最大電流が通常通話電流特性よりも小さく設定された特性の通話電流(「最大通話電流制限通話電流」という)を用意しておき、同時オフフック数が前記第1の閾値を越えている場合、加入者端末に最大通話電流制限通話電流を供給する。
【0022】
本発明に係る方法において、加入者端末に供給する通話電流を、互いに電流値が異なる複数種用意しておき、複数の加入者端末の同時オフフック数に応じて、段階的に、通話電流を変更するようにしてもよい。
【0023】
本発明に係る方法において、前記交換機内の複数の加入者回路は、共通の電力供給部から電力供給を受け、対応する複数の加入者端末に通話電流をそれぞれ供給するようにしてもよい。
【0024】
本発明に係る方法において、前記電力供給部を構成する複数のユニットのうち少なくとも1つのユニットに障害発生時、障害ユニットの電力供給量相当分を差し引いた値に対応する通話電流を、加入者端末に供給する、ようにしてもよい。
【0025】
本発明の他の側面に係る通話電流制限装置において、交換機が収容する複数の加入者端末の同時オフフック数を集計する手段と、複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第1の閾値を越えている場合、加入者端末に供給する通話電流の制限を行う手段と、を備える。
【0026】
本発明に係る通話電流制限装置において、通話電流が制限されている状態で、複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第2の閾値を下回った場合、通話電流の制限を解除する手段を備えている。
【0027】
本発明に係る通話電流制限装置において、通常通話電流のほかに、最大電流が通常通話電流特性よりも小さく設定された特性の通話電流(「最大通話電流制限通話電流」という)を用意しておき、同時オフフック数が前記第1の閾値を越えている場合、加入者端末に最大通話電流制限通話電流を供給するようにしてもよい。
【0028】
本発明に係る通話電流制限装置において、加入者端末に供給する通話電流を、互いに電流値が異なる複数種用意しておき、複数の加入者端末の同時オフフック数に応じて、段階的に、通話電流を変更する構成としてもよい。
【0029】
本発明に係る交換機は、上記本発明に係る通話電流制限装置を備える。
【0030】
本発明に係る交換機において、複数の加入者端末に対して通話電流の供給をそれぞれ行う複数の加入者回路と、前記複数の加入者回路に対して共通に設けられた電力供給部と、を備え、前記複数の加入者回路は、前記電力供給部から電力供給を受け、対応する複数の加入者端末に通話電流をそれぞれ供給する。
【0031】
本発明に係る交換機において、前記通話電流制御装置は、カウンタと、前記第1の閾値を少なくとも記憶する記憶部と、通話電流制御部と、前記通話電流制御部からの指示を受け、対応する前記加入者回路の通話電流供給回路の設定を行う複数の制御オーダ送出部と、を備えている。
【0032】
本発明に係る交換機において、加入者端末に対応する加入者回路の回線状態監視部は、加入者端末のオフフックを検出すると、前記通話電流制御部に通知し、前記通話電流制御部は、前記回線状態監視部からのオフフックの通知に応答して、前記カウンタのカウント値を1つカウントアップする。前記回線状態監視部は、前記加入者端末のオンフック(ON HOOK)時に、前記通話電流制御部に通知し、前記通話電流制御部は、前記回線状態監視部からのオンフックの通知に応答して、前記カウンタのカウント値を1つカウントダウンする。前記通話電流制御部は、前記カウンタのカウント値が、前記記憶部に記憶される前記第1の閾値を越えたとき、通話電流制限の指示を、前記制御オーダ送出部に送出し、前記加入者回路の通話電流供給部は、前記制御オーダ送出部からの通話電流制限の設定に基づき、加入者端末に供給する通話電流を制限する。
【0033】
本発明に係る交換機において、前記通話電流制御部は、前記カウンタのカウント値が、前記記憶部に記憶される第2の閾値を下回ったとき、通話電流制限の解除指示を、前記制御オーダ送出部に送出し、前記加入者回路の通話電流供給部は、前記制御オーダ送出部からの通話電流制限の設定解除を受け、加入者端末に供給する通話電流の制限を解除する構成としてもよい。
【0034】
本発明に係る交換機において、前記電力供給部が複数のユニットからなり、前記電力供給部の複数のユニットの障害を検出する手段を備え、前記電力供給部の少なくとも1つのユニットに障害発生時、前記加入者回路は、障害ユニットの電力供給量相当分を差し引いた値に対応する通話電流を加入者端末に供給する構成としてもよい。
【0035】
本発明の他の側面に係るコンピュータプログラムは、交換機が収容する複数の加入者端末の同時オフフック数を計数するカウンタの出力と、通話電流を制限するか否かの判別に用いられる第1の閾値を記憶する記憶部とを参照し、前記カウンタで計数された同時オフフック数が、前記第1の閾値を越えている場合、加入者端末に供給する通話電流の制限を行うように制御する処理を、コンピュータに実行させるプログラムよりなる。
【0036】
本発明に係るプログラムは、前記カウンタの出力と、通話電流を制限を解除するか否かの判別に用いられる第2の閾値を記憶する記憶部とを参照し、通話電流が制限されている状態で、前記カウンタで計数された同時オフフック数が前記第2の閾値を下回ったとき、通話電流の制限を解除するように制御する処理を、前記コンピュータに実行させるプログラムよりなる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、加入者端末への最大通話電流を加入者端末のオフフック数と連動して制御することで、電力設備、電力容量の適正化を実現可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
上記した本発明についてさらに詳細に説述すべく添付図面を参照して実施例を説明する。本発明は、加入者交換機において、通話電流制御部は、加入者端末のオフフック数に基づき、加入者回路の通話電流供給回路を制御し、収容している加入者端末への最大通話電流を制御する。加入者端末への最大通話電流を端末のオフフック数と連動して制御することで、電力供給部の電力容量を適正化することができる。
【実施例】
【0039】
図1は、本発明の第1の実施例のシステム構成を示す図である。図1を参照すると、複数の加入者端末(アナログ端末)を収容する交換機は、加入者端末2−1、2−2、・・・2−n(ただし、nは2以上の整数)と加入者線3−1、3−2、・・・3−nで接続され、それぞれが通話電流供給回路11と回線状態監視部12を備えた加入者回路1−1、1−2、・・・1−nと、加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの通話電流供給回路11に電力を供給する電力供給部4と、加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの回線状態監視部12からの監視結果を受け取る通話電流制御部7と、同時オフフック数に関する閾値を記憶するオフフック閾値記憶部8と、アップダウンカウンタよりなるオフフックカウンタ5と、通話電流制御部7からの指示(最大通話電流設定オーダ)を受け、該オーダをそれぞれ加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの通話電流供給回路11に送出する制御オーダ送出部6−1、6−2、・・・6−nを備えている。
【0040】
加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの通話電流供給回路11は、電力供給部4から供給される通話電流を、対応する加入者端末2−1、2−2、・・・2−nにそれぞれ供給する。
【0041】
加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの回線状態監視部12は、対応する加入者線3−1、3−2、・・・3−nの状態をそれぞれ監視し、加入者線3−1、3−2、・・・3−nにそれぞれ流れるループ電流を検出し、ループ電流が一定の電流値以上である場合、オフフックとみなし、検出結果を、通話電流制御部7に通知する。
【0042】
制御オーダ送出部6−1、6−2、・・・6−nは、通話電流制御部7からの最大通話電流設定オーダに基づき、加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの通話電流供給回路11へ、最大通話電流設定値を送出する。
【0043】
通話電流制御部7は、加入者回路1−1、1−2、・・・1−nの回線状態監視部12からのオフフック情報をオフフックカウンタ5に通知する。
【0044】
通話電流制御部7は、オフフックカウンタ5のカウント値(オフフック数)とオフフック閾値記憶部8に保持されている最大通話電流制限起動閾値情報と最大通話電流制限解除閾値情報とから、最大通話電流設定値を判定し、制御オーダ送出部6−1、6−2、・・・6−nに、最大通話電流設定オーダを送出する。
【0045】
制御オーダ送出部6−1、6−2、・・・6−nに送出される最大通話電流設定オーダとしては、通常の通話電流を流す通常通話電流オーダと、最大通話電流を小さくする最大通話電流制限オーダとを有する。
【0046】
オフフック閾値記憶部8は、最大通話電流制限機能を有効にするためのオフフック数の閾値である最大通話電流制限起動閾値と、最大通話電流制限機能を無効にするオフフック数の閾値である最大通話電流制限解除閾値を記憶保持する。
【0047】
なお、図1では、加入者回路1−1、1−2、・・・1−nのうち要部が示されており、本発明とは直接関係しない構成は省略されている。
【0048】
図2は、図1に示した実施例の動作を説明する図である。以下では、3つの加入者を収容した加入者交換機として説明する。図2では、説明の簡単化のため、加入者端末を3つとした例が示されているが、本発明はかかる構成にのみ限定されるものでないことは勿論である。
【0049】
加入者回路1−1は、加入者端末2−1に接続され、加入者回路1−1の回線状態監視部12は、加入者の発呼のために加入者端末2−1の加入者線3−1を監視している。
【0050】
加入者端末2−1の受話器を上げる(オフフック)と、ループが形成され、加入者回路1−1の通話電流供給回路11から、通話電流aが流れる。
【0051】
加入者回路1−1の回線状態監視部12は、通話電流aを監視し、一定時間の通話電流aを検出すると、通話電流制御部7に対し、オフフックが発生したことを通知する。
【0052】
通話電流制御部7は、加入者回路1−1の回線状態監視部12から受信したオフフック状態の通知に応答して、オフフックカウンタ5を1つ加算(インクリメント)する。
【0053】
また、加入者端末2−1の受話器を下ろす(オンフック)と、ループが解除され、加入者回路1−1の回線状態監視部12では、通話電流aを検出できなくなり、一定時間の通話電流aが検出されない場合、オンフックと判断する。加入者回路1−1の回線状態監視部12は、通話電流制御部7に対してオンフックが発生したことを通知する。
【0054】
通話電流制御部7は、加入者回路1−1の回線状態監視部12から受信したオンフック状態の通知に応答して、オフフックカウンタ5を1つ減算(デクリメント)する。
【0055】
加入者端末2−1への着呼においても、加入者端末2−1の受話器が上がる(オンフック)と、ループが形成され、通話電流aが流れ、加入者回路1−1の回線状態監視部12がオフフック状態と判断し、通話電流制御部7に対して、オフフックが発生したことを通知する。
【0056】
この時も、通話電流制御部7は、加入者回路1−1の回線状態監視部12から受信したオフフック状態の通知に応答して、オフフックカウンタ5を1つ加算する。
【0057】
加入者回路1−2、加入者回路1−3も、加入者回路1−1と同様な動作により、それぞれ、加入者端末2−2、2−3の回線状態に基づいて、通話電流制御部7に対してオフフック状態、オンフック状態を通知する。この結果、通話電流制御部7は、収容する全ての加入者端末2−1、2−2、2−3の同時オフフック数を認識(監視)することができる。
【0058】
オフフック閾値記憶部8は、
・通話電流制限の起動のためのオフフック数の第1の閾値(「通話電流制限起動閾値」という)と、
・通話電流制限の解除のためのオフフック数の第2の閾値(「通話電流制限解除閾値」という)を保持している。
【0059】
これらの閾値は、加入者の収容数と電源容量、予測されるトラヒック数を基に、局状に合わせて設定されるが、好ましくは、
[最大通話電流制限起動閾値] > [最大通話電流制限解除閾値] ・・・(1)
の関係に設定される。
【0060】
また、通話電流制御部7は、最大通話電流制限の起動状態を保持している。すなわち、加入者端末に最大通話電流制限オーダを送出済みであるか否かの状態を例えばフラグとして保持する。
【0061】
最大通話電流制限が起動されていない場合には、オフフックカウンタ5に保持されている全加入者端末のオフフックの総計と、オフフック閾値記憶部8に保持されている最大通話電流制限起動閾値を比較し、
[全加入者端末のオフフック数] > [最大通話電流制限起動閾値] ・・・(2)
の場合、最大通話電流制限を起動する。
【0062】
最大通話電流制限の起動時には、通話電流制御部7から、制御オーダ送出部6−1、6−2、6−3に対して、最大通話電流制限オーダを送出する。
【0063】
最大通話電流制限オーダを受信した制御オーダ送出部6−1、6−2、6−3は、それぞれ加入者回路1−1、1−2、1−3の通話電流供給回路11に対して、予め定められた最大通話電流設定値を送出する。
【0064】
加入者回路1−1、1−2、1−3の通話電流供給回路11は、対応する制御オーダ送出部6−1、6−2、6−3からの最大通話電流設定値に基づき、対応する加入者端末2−1、2−2、2−3に対して、最大通話電流が小さい給電特性の通話電流(例えば図5の最大通話電流制限特性参照)をそれぞれ供給する。
【0065】
以降、最大通話電流制限が解除されるまで、加入者回路1−1、1−2、1−3の通話電流供給回路11は、対応する加入者線3−1、3−2、3−3に対して最大通話電流が制限された通話電流が供給される。
【0066】
また、この時、
[通常の通話電流値] > [最大通話電流制限用通話電流値] ・・・(3)
の関係が保たれている。
【0067】
図5に、通話電流特性の一例を示す。図5において、横軸は、加入者線路抵抗+電話機オフフック抵抗であり、縦軸は通話電流である。最大通話電流が制限された特性においては、最大の通話電流は、通常通話電流特性の通話電流よりも小とされる。
【0068】
最大通話電流制限が起動されている場合には、オフフックカウンタ5に保持されている全加入者端末のオフフック数と、オフフック閾値記憶部8に保持されている最大通話電流制限起動閾値を比較し、
[全加入者端末のオフフック数] < [最大通話電流制限解除閾値] ・・・(4)
となった際に、最大通話電流制限解除を起動する。
【0069】
最大通話電流制限の解除時には、通話電流制御部7から、制御オーダ送出部6−1、6−2、6−3に対し、通常通話電流オーダを送出する。
【0070】
通常通話電流オーダを受信した制御オーダ送出部6−1、6−2、6−3は、それぞれ加入者回路1−1、1−2、1−3の通話電流供給回路11に対して、通常の通話電流送出指示を出力する。加入者回路1−1、1−2、1−3の通話電流供給回路11は、対応する加入者端末2−1、2−2、2−3に対して、通常の通話電流をそれぞれ供給する。
【0071】
以降、通話電流制限が起動されるまで、加入者回路1−1、1−2、1−3の通話電流供給回路11は加入者回線に対し、通常の通話電流を供給する。
【0072】
図3は、本実施例における通話電流制御部7の判定処理を説明するフローチャートである。通話電流制御部7が制御動作を開始する(S1)。
【0073】
オフフックカウンタ5で全加入者端末のオフフック数をカウントし(S2)、
[全加入者端末のオフフック数] > [最大通話電流制限起動閾値]
の場合(S3のYes)、通話電流制御部7は、最大通話電流制限オーダを送出する(S4)。
【0074】
最大通話電流制限が起動されている場合、
[全加入者端末のオフフック数] < [最大通話電流制限解除閾値]
のとき(S5のYes)、通話電流制御部7は、通常通話電流制限オーダを送出する(S6)。
【0075】
本実施例においては、以下の作用効果を奏する。
【0076】
予測されたトラフィック量に基づき配備された電力設備の能力を超えたバースト的な呼に対しても、耐え得る可用性の高い交換システムを提供出来る。
【0077】
トラフィック量の変動が大きい場合にも、最大トラフィック量を考慮した電力容量を必要としない。このため、余剰な電力配備が不要となり、経済的効果や装置構成の簡略化をもたらす。
【0078】
なお、図1に示した実施例では、n台の加入者端末2−1〜2−nとn台の加入者回線3−1〜3−nを収容する加入者交換機の構成が示されているが、本発明は、加入者端末の数と加入者交換機の加入者回路の収容数に制限を設けるものではない。また、図3を参照して説明した通話電流制御部7の制御手順は、コンピュータ上で動作するプログラム制御によって実現してもよいことは勿論である。この場合、オフフックカウンタ5はコンピュータのソフトウエア(メモリ又はレジスタ)で実現してもよい。
【0079】
次に、本発明の第2の実施例を説明する。本発明の第2の実施例の基本構成は、前記第1の実施例と同様であるが、オフフック閾値記憶部の機能について、設定される通話電流制限閾値として、以下のような例も挙げられる。
【0080】
[最大通話電流制限起動閾値] = [最大通話電流制限解除閾値] ・・・(5)
【0081】
最大通話電流制限閾値において、最大通話電流制限の起動と解除を1つの閾値とすることで、最大通話電流制限閾値近傍のオフフック数の加入者が通話中の場合に、新たなオフフック、オンフックが発生することで、最大通話電流制限の起動と解除が頻繁に切り替わり、通話中の加入者の通話品質に影響を及ぼす可能性がある。
【0082】
そこで、最大通話電流制限起動閾値と最大通話電流制限解除閾値に、式(6)のように、差を持たせ、ヒステリシスな動作をさせる前記実施例の方が、動作安定性、通話品質の点で、好ましい。
【0083】
[最大通話電流制限起動閾値] > [最大通話電流制限解除閾値] ・・・(6)
【0084】
次に、本発明の第3の実施例を説明する。本実施例の基本構成は、前記第1の実施例と同様であるが、通話電流を、互いに電流値が異なる例えばN種類用意し、加入者のオフフック数に応じて、段階的に通話電流を変更する。
【0085】
本実施例では、通話電流をN種類持つことで、段階的な通話電流の変化をもたせることが出来る。通常、通話電流に差がある程、通話品質に差を生じる。
【0086】
本実施例においては、N種類の最大通話電流を段階的に切り替える構成としたため、最大通話電流切り替え時には、2種類のみの通話電流時の通常通話電流と最大通話電流制限用通話電流の品質の差よりも、通話品質への影響を少なくすることができる、という効果を奏する。
【0087】
図4は、本発明の第4の実施例の構成を示す図である。図4を参照すると、本実施例では、電力供給部4をN重化し、障害監視部9を備えている。
【0088】
本実施例においては、N段階の通話電流送出機能を有することで、電力供給部4の障害時に、通話電流制御部7に対し、障害監視部9が障害情報を通知する。通話電流制御部7は、電力供給部4の1つが故障した時には、通話電流を(N−1)/Nとし、電力供給部4の2つが故障した時には、通話電流を(N−2)/Nとする。本実施例によれば、電力供給部4の故障時の暫定的対応としても効果を有する。
【0089】
本実施例において、障害監視部9、あるいは、通話電流制御部7における制御は、コンピュータ上で動作するプログラム制御によって実現してもよいことは勿論である。
【0090】
ある固定的な加入者交換機の電力容量において、通常通話電流では許容されないトラフィック量の増加に対応するため、固定的に最大通話電流を制限する手法(比較例)も可能ではあるが、通常、近距離加入者の通話電流の低下は、通話品質の低下を引き起こすため、常用には向かず、本発明のほうが優れている。
【0091】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の第1の実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施例の通話電流制御部の動作を説明するための流れ図である。
【図4】本発明の第4の実施例の構成を示す図である。
【図5】通話電流特性を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1−1〜1−n 加入者回路
2−1〜2−n 加入者端末
3−1〜3−n 加入者線
4 電力供給部
5 オフフックカウンタ
6−1〜6−n 制御オーダ送出部
7 通話電流制御部
8 オフフック閾値記憶部
9 障害監視部
11 通話電流供給回路
12 回線状態監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換機が収容する複数の加入者端末の同時オフフック数を集計し、
複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第1の閾値を越えている場合、加入者端末に供給する通話電流の制限を行う、ことを特徴とする通話電流制御方法。
【請求項2】
通話電流が制限された状態で、複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第2の閾値を下回った場合、通話電流の制限を解除する、ことを特徴とする請求項1記載の通話電流制御方法。
【請求項3】
前記第1の閾値は、前記第2の閾値よりも大であるか、又は、前記第2の閾値と等しい、ことを特徴とする請求項2記載の通話電流制御方法。
【請求項4】
加入者端末に供給する通常通話電流のほかに、最大電流が通常通話電流特性よりも小さく設定された特性の通話電流(「最大通話電流制限通話電流」という)を用意しておき、
同時オフフック数が前記第1の閾値を越えている場合、加入者端末に前記最大通話電流制限通話電流を供給する、ことを特徴とする請求項1記載の通話電流制御方法。
【請求項5】
加入者端末に供給する通話電流を、互いに電流値が異なる複数種、用意しておき、
複数の加入者端末の同時オフフック数に応じて、段階的に、通話電流を変更する、ことを特徴とする請求項1記載の通話電流制御方法。
【請求項6】
前記交換機内の複数の加入者回路は、共通の電力供給部から電力供給を受け、対応する複数の加入者端末に通話電流をそれぞれ供給する、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の通話電流制御方法。
【請求項7】
前記電力供給部が複数のユニットからなり、該複数のユニットのうち少なくとも1つのユニットに障害発生時、障害ユニットの電力供給量相当分を差し引いた値に対応する通話電流を、加入者端末に供給する、ことを特徴とする請求項6記載の通話電流制御方法。
【請求項8】
交換機が収容する複数の加入者端末の同時オフフック数を集計する手段と、
複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第1の閾値を越えている場合、加入者端末に供給する通話電流の制限を行う手段と、
を備えたことを特徴とする通話電流制御装置。
【請求項9】
通話電流が制限されている状態で、複数の加入者端末の同時オフフック数が予め定められた第2の閾値を下回った場合、通話電流の制限を解除する手段を備えている、ことを特徴とする請求項8記載の通話電流制御装置。
【請求項10】
前記第1の閾値は、前記第2の閾値よりも大であるか、又は、前記第2の閾値と等しい、ことを特徴とする請求項9記載の通話電流制御装置。
【請求項11】
加入者端末に供給する通常通話電流のほかに、最大電流が通常通話電流特性よりも小さく設定された特性の通話電流(「最大通話電流制限通話電流」という)を用意しておき、 同時オフフック数が前記第1の閾値を越えている場合、加入者端末に前記最大通話電流制限通話電流を供給する、ことを特徴とする請求項8記載の通話電流制御装置。
【請求項12】
加入者端末に供給する通話電流を、互いに電流値が異なる複数種用意しておき、
複数の加入者端末の同時オフフック数に応じて、段階的に、通話電流を変更する、ことを特徴とする請求項8記載の通話電流制御装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1項に記載の通話電流制御装置を備えた交換機。
【請求項14】
複数の加入者端末に対して通話電流の供給をそれぞれ行う複数の加入者回路と、
前記複数の加入者回路に対して共通に設けられた電力供給部と、
を備え、
前記複数の加入者回路は、前記電力供給部から電力供給を受け、対応する複数の加入者端末に通話電流をそれぞれ供給する、ことを特徴とする請求項13記載の交換機。
【請求項15】
前記通話電流制御装置が、
カウンタと、
前記第1の閾値を少なくとも記憶する記憶部と、
通話電流制御部と、
前記通話電流制御部からの指示を受け、対応する前記加入者回路の通話電流供給回路の設定を行う複数の制御オーダ送出部と、
を備え、
加入者端末に対応する加入者回路の回線状態監視部は、加入者端末のオフフックを検出すると、前記通話電流制御部に通知し、
前記通話電流制御部は、前記回線状態監視部からのオフフックの通知に応答して、前記カウンタのカウント値を1つカウントアップし、
前記回線状態監視部は、前記加入者端末のオンフック時に、前記通話電流制御部に通知し、
前記通話電流制御部は、前記回線状態監視部からのオンフックの通知に応答して、前記カウンタのカウント値を1つカウントダウンし、
前記通話電流制御部は、前記カウンタのカウント値が、前記記憶部に記憶される前記第1の閾値を越えたとき、通話電流制限の指示を、前記制御オーダ送出部に送出し、
前記加入者回路の通話電流供給部は、前記制御オーダ送出部からの通話電流制限の設定に基づき、加入者端末に供給する通話電流を制限する、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の交換機。
【請求項16】
前記通話電流制御部は、前記カウンタのカウント値が、前記記憶部に記憶される第2の閾値を下回ったとき、通話電流制限の解除指示を、前記制御オーダ送出部に送出し、
前記加入者回路の通話電流供給部は、前記制御オーダ送出部からの通話電流制限の設定解除を受け、加入者端末に供給する通話電流の制限を解除する、ことを特徴とする請求項15に記載の交換機。
【請求項17】
前記電力供給部が複数のユニットからなり、
前記電力供給部の複数のユニットの障害を検出する手段を備え、
前記電力供給部の少なくとも1つのユニットに障害発生時、
前記加入者回路は、障害ユニットの電力供給量相当分を差し引いた値に対応する通話電流を加入者端末に供給する、ことを特徴とする請求項14記載の交換機。
【請求項18】
交換機が収容する複数の加入者端末の同時オフフック数を計数するカウンタの出力と、通話電流を制限するか否かの判別に用いられる第1の閾値を記憶する記憶部とを参照し、
前記カウンタで計数された同時オフフック数が、前記第1の閾値を越えている場合、加入者端末に供給する通話電流の制限を行うように制御する処理を、
コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項19】
請求項18記載のプログラムにおいて、
前記カウンタの出力と、通話電流の制限を解除するか否かの判別に用いられる第2の閾値を記憶する記憶部とを参照し、通話電流が制限されている状態で、前記カウンタで計数された同時オフフック数が前記第2の閾値を下回ったとき、通話電流の制限を解除するように制御する処理を、前記コンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−27611(P2009−27611A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190883(P2007−190883)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】