説明

通電加熱方法および装置、ならびにこれを備えたプレス機械

【課題】ビス穴等の孔が穿設されている伝導性の構造体(ワーク)をプレス成形する際に、その孔周辺を含めて構造体全体を均一に所定の温度まで昇温させることができる通電加熱方法および装置、ならびにこれを備えたプレス機械を提供する。
【解決手段】孔が穿設されている伝導性の構造体に対して、前記孔を通過する少なくとも2方向の通電方向を有するように複数の電極を配し、かつ、該複数の電極に対して、所定のパターンで電流を通電するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の構造部材に適用される金属板などの伝導性構造体(ワーク)をプレスする際に適用される通電加熱方法および装置、ならびにこれを備えたプレス機械に関し、より詳細には、ビス穴等の孔が穿設されたワークを通電加熱した場合に、その孔周辺を含めてワーク全体を均一に所定の温度まで昇温させることができる通電加熱方法および装置、ならびにこれを備えたプレス機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の構造材料に用いられる金属板などの伝導性構造体(ワーク)は、プレス加工により所定の形状に加工された後に組み付けられる。このプレス加工は、上下動可能に設けられたパンチと、該パンチと対向するように配設されたダイとを備えているプレス機械によって実行される。
【0003】
近年、自動車の車体部品では、衝突時の安全性の向上ならびに車体重量の軽減化を図るために、これらのワーク材として高張力鋼板(引張強さ490[MPa]以上、降伏点294[MPa]以上で、炭素量が0.2[%]以下の構造用鋼)を使用する傾向にある。このような高張力鋼板からなる板状ワークをプレス加工する場合には、まず、板状ワークを600〜1000[℃]程度に加熱し、その後、この加熱されたワークを上述したようなプレス機械で成形加工するのが一般的である。
【0004】
プレス加工前にワークを加熱する方法としては、従来より、加熱炉を利用したものが知られていた。ところが、この加熱炉とプレス機械とは、互いに離れた場所に設置されるため、加熱した板状ワークをプレス機械に搬送する間にワークの温度が低下し、ワーク内の温度分布にムラが生じてしまうという問題があった。
【0005】
そこで、近年、例えば特許文献1に開示されているように、プレス機械に設けられた電極を介してワークに所定の電流を流し、この電流による通電加熱によってワークを電気的に加熱する方法が用いられている。この通電加熱方法では、ワーク(ブランク)を均一に高温域に加熱して、形状精度が良好な超高強度のプレス成形品を容易に得るために、ワークの両端部に電極を取り付けて該電極に供給する電力を電極毎に調整し、これにより、ワークの温度分布を調整するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−2485257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際に自動車等の構造材料として適用されるワークの中には、ビス穴等の孔が全く穿設されていない平板だけではなく、この孔がプレス成形前に穿設されている平板も含まれている。しかしながら、上述した特許文献1の通電加熱方法では、上述した孔を有していない板状ワークを加熱対象としており、孔を有する板状ワークについては全く想定されていなかった。以下、図1および図2を参照にしながら、孔が穿設された伝導性構造体(ワーク)を上記従来の方法で通電加熱した場合について説明する。
【0008】
図1では、同図(a)に示すように、ワーク1の左側から右側に一様電流Cが流れている。この場合、ワーク1に穿設されたビス穴2の上部および下部で電流Cが密になるとともに、ビス穴2の左部および右部で電流Cが疎となり、同図(b)に示すように、その電流密度に応じて、ビス穴2周辺の温度分布に高低差(高温部HI,低温部LW)が生じる。
【0009】
一方、図2では、同図(a)に示すように、ワーク1の下側から上側に一様電流Cが流れている。この場合、ワーク1に穿設されたビス穴2の左部および右部で電流Cが密になるとともに、ビス穴2の上部および下部で電流Cが疎となり、同図(b)に示すように、その電流密度に応じて、ビス穴2周辺の温度分布に高低差(高温部HI,低温部LW)が生じる。
【0010】
図1および図2から明らかなように、ビス穴2が穿設されたワーク1を上記従来の通電加熱方法で加熱すると、そのビス穴2周辺で電流分布が疎になる箇所と密になる箇所とが生じ、ワーク1の温度分布にバラツキが生じてしまう。特に、ワーク1として高張力鋼板を適用し、これを全体平均温度が高張力鋼板の加工に適した所望値(約900[℃])になるまで通電加熱した場合、電流Cが密になった箇所HIの温度が高張力鋼板の制限温度(約1400[℃])を超えて溶解する虞があり、その結果、ワーク1の成形精度を低下させるとともに、作業効率を悪化させてしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ビス穴等の孔が穿設されている伝導性の構造体(ワーク)をプレス成形する際に、その孔周辺を含めて構造体全体を均一に所定の温度まで昇温させることができる通電加熱方法および装置、ならびにこれを備えたプレス機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、孔が穿設されている伝導性の構造体を所定の温度まで昇温させる通電加熱方法であって、前記構造体に対して、前記孔を通過する少なくとも2方向の通電方向を有するように複数の電極を配すステップと、前記複数の電極に対して、所定のパターンで電流を通電するステップとを含んでいることにより、達成される。
【0013】
また、本発明の上記目的は、孔が穿設されている伝導性の構造体を所定の温度まで昇温させる通電加熱装置であって、前記構造体に対して、前記孔を通過する少なくとも2方向の通電方向を有するように配される複数の電極と、前記複数の電極に対して、所定のパターンで電流を通電する通電制御手段とを備えていることにより、達成される。
【0014】
また、本発明の上記目的は、前記複数の電極を、異なる2方向で相対する前記構造体の端部に配し、かつ、前記複数の電極に対して、異なる2方向のうちの一方向の電極間への印加と他方向の電極間への印加とを所定の時間間隔で交互に切り替えながら直流電流を通電することにより、効果的に達成される。
【0015】
また、本発明の上記目的は、前記孔の断面が正円形状であり、かつ、前記一方向の電極間に通電する時間間隔と前記他方向の電極間に通電する時間間隔との比が1:1に設定されていることにより、効果的に達成される。
【0016】
また、本発明の上記目的は、前記孔の断面が長円形状であり、前記一方向の電極間の通電方向が前記長円形状の長手方向と平行に設定されるとともに、前記他方向の電極間の通電方向が前記長穴形状の長手方向に対して垂直な短手方向と平行に設定され、かつ、前記一方向の電極間に通電する時間間隔と前記他方向の電極間に通電する時間間隔との比が前記長円形状の長手方向寸法と短手方向寸法との比に応じて調整されていることにより、効果的に達成される。
【0017】
また、本発明の上記目的は、前記直流電流の通電方向を切り替える時間間隔が0.01〜0.20[sec]であることにより、効果的に達成される。
【0018】
また、本発明の上記目的は、前記通電パターンの異なる複数の電極を、異なる2方向で相対する前記構造体の端部にそれぞれ配し、かつ、前記複数の電極に対して、それぞれ交流電流を印加することにより、効果的に達成される。
【0019】
また、本発明の上記目的は、前記電極が前記一方向の電極間の通電方向と前記他方向の電極間の通電方向とが垂直に交わるように配設されていることにより、効果的に達成される。
【0020】
さらに、本発明の上記目的は、上述した通電加熱方法において、前記通電ステップによって前記構造体が所定の温度まで昇温された後に、該構造体を所定の形状にプレス成形するステップをさらに含んでいることにより、効果的に達成される。
【0021】
また、本発明の上記目的は、上述した通電加熱装置を備えたプレス機械であって、前記通電手段によって前記構造体が所定の温度まで昇温された後に、該構造体を所定の形状に成形するプレス手段をさらに備えていることにより、達成される。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る通電加熱方法および装置、ならびにこれを備えたプレス機械によれば、ビス穴等の孔が穿設されている伝導性の構造体に対して孔を通過する少なくとも2方向に通電可能な複数の電極を備え、この複数の電極に対して所定のパターンで電流を印加するようになっている。これにより、一方向に一様電流を通電した場合に生じていた孔周辺の温度分布のバラツキが解消され、構造体全体を均一に加熱することができる。その結果、構造体の加工性が大幅に向上され、高精度なプレス成形加工が可能となり、かつ、構造体を短時間で所望の温度状態にすることができるので、作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の通電加熱方法をビス穴付き伝導性構造体(ワーク)に適用した場合を示す第1説明図である。
【図2】従来の通電加熱方法をビス穴付き伝導性構造体(ワーク)に適用した場合を示す第2説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る通電加熱装置を備えたプレス機械の概略構造を示す要部断面図である。
【図4】図3のプレス機械のプレス時の状態を概略的に示す要部断面図である。
【図5】図3のプレス機械のダイ上にビス穴付き伝導性構造体(ワーク)が配設された状態を概略的に示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る通電加熱装置における通電方向の切り替え制御例を示す説明図である。
【図7】本発明の実施形態に係る通電加熱装置の変形例を概略的に示す要部上面図である。
【図8】ビス穴付き伝導性構造体(ワーク)に対して横方向に一様電流を通電した場合の説明図である。
【図9】ビス穴付き伝導性構造体(ワーク)に対して縦方向に一様電流を通電した場合の説明図である。
【図10】実施例1および比較例1に係る評価実験シミュレーションの解析対象モデルとして用いた肉薄鋼板を示す概略斜視図である。
【図11】図10の肉薄鋼板を示す概略上面図である
【図12】評価実験シミュレーションの比較例1の結果を示す温度−時間特性グラフである。
【図13】評価実験シミュレーションの実施例1の結果を示す温度−時間特性グラフである。
【図14】実施例2および比較例2−1,2−2に係る評価実験シミュレーションの解析対象モデルとして用いた肉薄鋼板を示す概略上面図(a)および概略側面図(b)である。
【図15】図14の肉薄鋼板に穿設された孔を示す要部拡大図である。
【図16】評価実験シミュレーションの比較例2−1の結果を示す温度−時間特性グラフである。
【図17】評価実験シミュレーションの比較例2−2の結果を示す温度−時間特性グラフである。
【図18】評価実験シミュレーションの実施例2の結果を示す温度−時間特性グラフである。
【図19】図16ないし図18の結果を示す温度−時間特性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照にしながら本発明の実施形態について説明する。
【0025】
図3は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置を備えたプレス機械の概略構造を示す要部断面図であり、図4は、図3のプレス機械のプレス時の状態を概略的に示す要部断面図である。また、図5は、図3のプレス機械のダイ上にビス穴付き伝導性構造体(ワーク)が配設された状態を概略的に示す斜視図である。
【0026】
本実施形態に係るプレス機械10は、板状の伝導性構造体(ワーク)1を所定の形状にプレス成形する装置であり、上下動可能に配設されたパンチ部11と、該パンチ部11と対向するように配設されたダイ部12とを有する成形型を備えている。加工対象となるワーク1は、自動車の車体部品などに適用される高張力鋼板等からなり、表面にはビス穴として適用される円孔2が穿設されている。なお、図3ないし図5に示すワーク1には、その中央付近に1つの孔2が穿設されているが、本発明はこれに限定されず、例えばワーク1の表面上に複数の孔2が穿設されていてもよい。
【0027】
プレス機械10の成形型は、パンチ部11の下面中央部に長手方向に沿って形成された凸部11aと、該凸部11aに対応するようにダイ部12の上面中央部に長手方向に沿って形成された凹部12aとを有している。プレス機械10は、図4に示すように、上述したパンチ部11およびダイ部12からなる金型でワーク1をプレスすることにより、ワーク1を断面ハット形状に成形する。
【0028】
また、本実施形態に係るプレス機械10は、電気的に発生させたジュール熱によってダイ部12上に配されたワーク1を加熱する通電加熱装置を備えている。この通電加熱装置は、加熱対象であるワーク1の端部に離間して配された複数の電極13と、該電極13に通電制御手段14を介して電流を供給する直流電源15とを有している。
【0029】
通電加熱装置の電極13は、図5に示すように、通電方向が異なる2種類の電極、すなわち、ワーク1の左右方向(短手方向)に通電するようにその両端部の外縁(辺)に沿って配された第1電極13aと、ワーク1の前後方向(長手方向)に通電するようにその両端部の外縁(辺)に沿って配された第2電極13bとから構成されている。また、この第1電極13aおよび第2電極13bは、互いの通電方向が垂直に交わり、かつ、互いの電極間に孔2が位置するように配されている。
【0030】
通電制御手段14は、ワーク1の左右方向に通電する各第1電極13aと接続している第1スイッチ16aと、ワーク1の前後方向に通電する各第2電極13bと接続している第2スイッチ16bと、直流電源15からそれぞれの電極13a,13bに供給する電流の強さ(電流量)を調整する電力調整部17とを有している。通電制御手段14の各スイッチ16a,16bは、第1電極13aと第2電極13bとが交互に通電するように、所定の時間間隔でそれぞれのON/OFFが切り替えられるように制御される。
【0031】
図6は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置における通電方向の切り替え制御例を示す説明図である。
【0032】
同図(a)に示す切り替え制御例では、第1スイッチのON時間と第2スイッチのON時間との比が1:1であり、かつ、第1スイッチ16aがONされると同時に第2スイッチ16bがOFFされ、一方、第2スイッチ16bがONされると同時に第1スイッチ16aがOFFされるようになっている。なお、この第1スイッチ16aおよび第2スイッチ16bを切り替える所定の時間間隔は、0.01〜0.20[sec]の範囲であることが好ましい。
【0033】
また、同図(b)に示す切り替え制御例では、第1スイッチのON時間と第2スイッチのON時間との比は、同図(a)の制御例と同様に1:1であるが、第1スイッチ16aのOFFから第2スイッチ16bのONまでの間、および第2スイッチ16bのOFFから第1スイッチ16aのONまでの間に、両スイッチ16a,16bがOFFになる所定のインターバルが設けられている。
【0034】
さらに、本実施形態に係る通電加熱装置では、ワーク1に穿設された孔2の断面形状やワーク1の材料特性などに応じて、第1スイッチのON時間と第2スイッチのON時間との割合を適宜調整することができ、同図(c),(d)に示す切り替え制御例では、第1スイッチのON時間と第2スイッチのON時間との比が2:1になっている。
【0035】
図示されていないが、通電加熱装置の各電極13a,13bは、それぞれを2次元または3次元方向に移動させる電極移動手段に連結されている。この電極移動手段は、例えば、図3に示すようにワーク1に通電加熱する際には、ダイ部12上に配されたワーク1に接触するように各電極13a,13bを移動させ、一方、図4に示すようにワーク1をプレス加工する際には、パンチ部11とダイ部12との間のスペースから各電極13a,13bを退避させる。
【0036】
また、本実施形態に係るプレス機械10は、通電加熱装置によって加熱されたワーク1の温度を測定する温度センサや、上述した成形型のプレス、通電加熱装置および電極移動手段の作動を制御する制御ユニットをさらに備えている。この制御ユニットは、マイクロコンピュータなどで構成され、入力装置を介して入力された信号あるいは予め記憶領域に記憶されているプログラムに基づいて、各手段の制御を実行するようになっている。そして、通電加熱装置によって加熱されたワーク1が所定の温度まで昇温したことが確認されると、パンチ部11をダイ部12に向かって可動し、ワーク1を所定の形状にプレス成形する。
【0037】
以上のように、本実施形態に係る通電加熱装置によれば、孔2が穿設されている板状ワーク1に対して、第1電極13aによる横方向通電および第2電極13bによる縦方向通電を所定の時間間隔で交互に切り替えながら加熱するようになっている。これにより、一方向に一様電流Cを通電した場合に生じていた孔2周辺の温度分布のバラツキが解消され、ワーク全体を均一に加熱することができる。この効果については、後述する実施例1,2において詳細に説明する。
【0038】
なお、本実施形態では、本発明による効果が最も発揮されるように、異なる2つの通電方向が直交するように第1電極13aおよび第2電極13bが配設されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ワーク1が矩形以外の形状で形成されているために異なる2つの通電方向が直交するように設定できない場合でも、上述した実施形態より多少効果は落ちるものの、孔2周辺の温度分布のバラツキを解消することができる。

[実施形態の変形例]
図7は、本発明の実施形態に係る通電加熱装置の変形例を概略的に示す要部上面図である。なお、同図において、上述した実施形態と同一の部材には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
上述した実施形態に係る通電加熱装置は、通電方向が異なる第1電極13aおよび第2電極13bに対して、所定の時間間隔で交互に直流電流を通電する構成になっていたが、本変形例では、この通電加熱装置の構成が上記実施形態とは相違している。
【0040】
図7に示すように、本変形例に係る通電加熱装置は、ワーク1の左右方向(横方向)に通電するようにその両端部に相対して配された第1電極13Aaと、ワーク1の上下方向(縦方向)に通電するようにその両端部に相対して配された第2電極13bとを備え、それぞれの電極13Aa,13Abが、交流電源18a,18bに接続されている。そして、ワーク1を通電加熱する際には、上述した実施形態と同様の電極移動手段によって、ダイ部12上に配されたワーク1の端部に接触するように各電極13Aa,13Abが移動され、両方向の電極13Aa,13Abに対して交流電流が印加される。この通電によってワーク1が所望の温度に到達すると、電極移動手段によって各電極13Aa,13Abがパンチ部11とダイ部12との間のスペースから退避され、パンチ部11およびダイ部12からなる成形型によって、ワーク1のプレス加工が実行される。
【0041】
なお、ここでは図示されていないが、各電極13Aa,13Abと各交流電源18a,18bとの間に電力調整部が配設され、該電力調整部によって、供給電流の強さ(電流量)が任意に調整できるようになっていてもよい。
【0042】
以上のように、本発明の実施形態の変形例では、位相を90°ずらした異なる2方向の交流電流をワーク1に通電することにより、上述した実施形態と同様、一方向に一様電流Cを通電した場合に生じていた孔2周辺の温度分布のバラツキが解消され、ワーク全体を均一に加熱することができる。この効果については、後述する実施例3において詳細に説明する。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形して実施することができる。
【0044】
図1および図2に示したように、孔2が穿設された伝導性構造体(ワーク)1に所定の方向に沿って一様電流Cを通電した場合、幾何的条件により孔2の周辺に電流密度の疎密が生じ、その通電方向に応じてジュール熱の分布には規則性が見られる。したがって、一方向に通電し続けると、孔2の周辺に高温部HIと低温部LWとができてしまう。そこで、本発明の実施形態では、上述したように通電方向を切り替えることにより、この孔2周辺における温度分布のバラツキの抑制を図っている。後述する各実施例では、コンピュータを用いたFEM(有限要素法)解析による評価実験シミュレーションによって、本発明の実施形態および変形例の有効性について検証している。
【0045】
本実施例における評価実験シミュレーションの数値解析には、電気−熱連成解析が用いられる。まず、電場問題の数理モデルとして、通電時におけるワーク1の材料内部の電位ν[V]は、下記の数1に示す定常伝導微分方程式を満足する。
【0046】
【数1】

ここで、上記数1の境界条件は、下記の数2で与えられる。
【0047】
【数2】

なお、各数式において、σは電気伝導率[1/(Ω・m)],∂/∂nは外向きを正とした法線方向微分である。また、通電時におけるワーク1の材料内部に発生するジュール熱ΔH[W/(sec・m)]は、下記の数3を満足する。
【0048】
【数3】

一方、非定常熱伝導問題の数理モデルとして、ワーク1の材料内部の温度T[K]は、下記の数4に示すジュール熱を用いた非定常熱伝導方程式を満足する。
【0049】
【数4】

ここで、上記数4の境界条件は、下記の数5で与えられる。
【0050】
【数5】

なお、各数式において、λは熱伝導率[W/(m・K)],Cは定圧比熱[J/(kg・K)],ρは密度[kg/m],hは熱伝達率[W/(m・K)],Tは外部温度[K],tは時間[sec]である。
【0051】
次に、ワーク1に穿設された円孔2周辺の支配方程式について説明する。ワーク1の材料物性値等が一定である条件下において、図8に示すようにビス穴付き伝導性構造体(ワーク)1の横方向に一様電流(点線矢印C)を通電した場合、半径aを有する円孔2周辺の電流密度(極座標表示)は、下記の数6,数7で表される。
【0052】
【数6】

【0053】
【数7】

なお、上記数1,数2において、Jは無限遠での一様電流Cの密度である。よって、図8に示すようにワーク1の横方向に一様電流Cを通電した場合のジュール熱は、上記数3より下記の数8を満足する。
【0054】
【数8】

一方、図9に示すようにワーク1の縦方向に一様電流Cを通電した場合のジュール熱は、下記の数9を満足する。
【0055】
【数9】

ワーク1に対する通電方向の切り替えを、横方向、縦方向、横方向、縦方向、・・・と微小時間(例えば0.1[sec])間隔で繰り返し行った場合のジュール熱は、下記の数10のように近似することができる。
【0056】
【数10】

よって、非定常熱伝導方程式は、上記数4から下記の数11を満足する。
【0057】
【数11】

上記数10および数11から明らかなように、ワーク1に対する通電方向を、微小時間間隔で異なる2方向(横方向および縦方向)に切り替えることにより、ジュール熱が同心円状に分布する。また、rが∞(無限大)の領域では、ジュール熱が一様に分布するため、均一な温度分布となる。
【実施例1】
【0058】
図10は、実施例1および比較例1の評価実験シミュレーションの解析対象モデルとして用いたワーク(肉薄鋼板)1(1)を示す概略斜視図であり、図11は、その上面図である。同図において、このワーク1(1)の各種寸法は、以下のとおりである。
【0059】
縦幅(長手方向の幅)L: 100[cm]
横幅(短手方向の幅)W: 50[cm]
板厚t: 1.2[cm]
孔直径D: 0.5[cm]
また、このワーク1(1)の材料物性値は、以下の表1に示すとおりである。
【0060】
【表1】

図12は、上述した数理原理を適用した評価実験シミュレーションの比較例1の結果を示す温度−時間特性グラフである。この比較例1では、従来の加熱方法と同様に、ワーク1(1)に対して2.4×10[A]の一様電流Cを一定方向(横方向)に沿って通電し、この通電を合計3秒間実行した後にそのワーク1を6秒間放冷した場合をシミュレーションしている。同図グラフにおいて、実線(MAX(1−1))は、ワーク1(1)中の最高温度箇所(主に図1(b)に示す高温部HI)の温度変位を示し,同図グラフ中に示されている点線(MIN(1−1))は、ワーク1(1)中の最低温度箇所(主に図1(b)に示す低温部LW)の温度変位を示している。
【0061】
同図グラフには示されていないが、3秒間の通電後、孔2(1)周辺以外のワーク1(1)全体領域の温度は、約900[℃]で均一化されていた。その一方で、孔2(1)周辺部では、図1(b)に示すような局所的な温度差が生じていた。特に、高温部HIの温度は約1400[℃]であり、一方、低温部LWの温度は約650[℃]であった。また、この高温部HIおよび低温部LWの温度は、6秒間の放冷後でもワーク1(1)全体の均一化温度(約900[℃])に対して誤差平均値が5%程度あった。
【0062】
このように、孔2(1)周辺部の温度分布にバラツキが生じている状態でワーク1(1)をプレス成形した場合、そのワーク1(1)を高い成形精度でプレス成形するのは非常に困難である。また、ワーク1(1)の温度分布が均一化するまで放冷するにしても、その状態に達するまでに長い時間を要してしまう。
【0063】
図13は、評価実験シミュレーションの実施例1の結果を示す温度−時間特性グラフである。この実施例1では、上述した実施形態と同様、図6(a)に示すスイッチング制御によって、ワーク1(1)に対して2.4×10[A]の一様電流Cを0.1[sec]間隔で交互に切り替えながら横方向と縦方向(すなわち第1電極13aと第2電極13b)に通電し、この通電を合計0.8秒間実行した後にそのワーク1(1)を6秒間放冷した場合をシミュレーションしている。
【0064】
同図グラフにおいて、実線(MAX(1))は、ワーク1(1)中の最高温度箇所の温度変位を示し,同図グラフ中に示されている点線(MIN(1))は、ワーク1(1)中の最低温度箇所の温度変位を示している。なお、図1,図2を参照にしながら説明したように、ワーク1(1)の孔2(1)周辺の温度分布は、通電方向により異なる。したがって、図13中のMAX(1)およびMIN(1)の数値は、その瞬間時における最高温度箇所および最低温度箇所の温度を示している。
【0065】
同図グラフには示されていないが、0.8秒間通電した時点で、孔2(1)周辺以外のワーク1(1)全体領域の温度は、約900[℃]で均一化されていた。この時点の最高温度箇所の温度は、約1300[℃]であり、最低温度箇所の温度は、上記ワーク1(1)全体領域と同様、約900[℃]であった。また、6秒間放冷させた時点の最高温度箇所および最低温度箇所の温度は、ワーク1(1)全体の均一温度(約900[℃])に対して誤差平均値が2%以内に抑えられていた。
【0066】
さらに、上述した比較例1では、高温部HIおよび低温部LWが、ワーク1(1)の孔2(1)中心から半径aの2倍以上の領域まで及んでいたが、本実施例1では、通電加熱中に高温または最低となる箇所は、ワーク1(1)の孔2(1)中心から半径aの2倍未満の領域であり、半径aの2倍以上の領域は、均一温度分布になっていた。
【0067】
以上のように、本発明の実施形態に係る通電加熱方法を用いた実施例1によれば、一方向に一様電流Cを通電した比較例に較べ、ワーク1(1)全体を均一に加熱することができるとともに、ワーク1(1)を短時間で所望の温度(ここでは約900[℃])まで昇温させることができる。
【0068】
なお、ここでは具体的に検討されていないが、複数の孔2(1)がワーク1(1)に穿設されている場合であっても、本実施形態に係る通電加熱方法を適用してワーク1(1)を加熱することにより、各孔2(1)周辺のジュール熱が上記数10のように近似されるので、温度分布のバラツキを解消して、ワーク1(1)全体を均一に昇温させることができる。
【0069】
また、本実施例では、加熱対象であるワーク1(1)が平板形状に設定されているが、本実施形態に係る通電加熱方法は、表面に多少の曲面や凹凸が形成されているワークに対しても適用可能であり、上述した実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例2】
【0070】
次に、ワークに穿設された孔の断面形状が正円ではない例について説明する。以下で説明する実施例2および比較例2−1,2−2の評価実験シミュレーションに用いる数理モデルの原理は、上記数1〜数9と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0071】
図14は、本実施例2および比較例2の評価実験シミュレーションの解析対象モデルとして用いたワーク(肉薄鋼板)を示す概略上面図(a)および概略側面図(b)であり、図15は、そのワークに穿設された孔を示す要部拡大図である。
【0072】
図14において、このワーク1(2)の各種寸法は、以下のとおりである。
【0073】
縦幅(長手方向の幅)L: 100[cm]
横幅(短手方向の幅)W: 50[cm]
板厚t: 1.2[cm]
また、図15において、ワーク1(2)の中央付近に穿設された孔2(2)の断面形状は、直径φ=0.5[cm]の2つの正円が隣接した状態で納まる長穴であり、各種寸法は以下のとおりである。
【0074】
孔縦幅D1: 0.5[cm]
孔横幅D2: 1.0[cm]
さらに、このワーク1(2)の材料物性値は、以下の表2に示すとおりである。
【0075】
【表2】

図16は、上述した数理原理を適用した評価実験シミュレーションの比較例2−1の結果を示す温度−時間特性グラフである。この比較例2−1では、従来の加熱方法と同様に、ワーク1(2)に対して電流密度4.75E+07[A/m]の一様電流Cを横方向に沿って3秒間通電した場合をシミュレーションしている。
【0076】
同図グラフにおいて、黒塗り丸形のプロット(MAX(2−1))は、孔2(2)の周縁上下部に生じるワーク1(2)中の最高温度箇所の温度変位を示し,同図グラフ中に示されている白抜き丸形のプロット(MIN(2−1))は、孔2(2)の周縁左右部に生じるワーク1(2)中の最低温度箇所の温度変位を示している。この比較例2−1では、孔2(2)周辺の温度分布に大きなバラツキが生じ、3秒経過時点における最高温度箇所および最低温度箇所の温度は、それぞれ944.4[℃]および652.8[℃]であった。一方、3秒経過時点における孔2(2)周辺以外のワーク1(2)全体領域の温度は、約720[℃]で均一化されていた。
【0077】
図17は、上述した数理原理を適用した評価実験シミュレーションの比較例2−2の結果を示す温度−時間特性グラフである。この比較例2−2では、従来の加熱方法と同様に、ワーク1(2)に対して電流密度4.75E+07[A/m]の一様電流Cを縦方向に沿って3秒間通電した場合をシミュレーションしている。
【0078】
同図グラフにおいて、黒塗り三角形のプロット(MAX(2−2))は、孔2(2)の周縁左右部に生じるワーク1(2)中の最高温度箇所の温度変位を示し,同図グラフ中に示されている白抜き三角形のプロット(MIN(2−2))は、孔2(2)の周縁上下部に生じるワーク1(2)中の最低温度箇所の温度変位を示している。この比較例2−2においても、ワーク1(2)の孔2(2)周辺の温度分布に大きなバラツキが生じ、3秒経過時点における最高温度箇所および最低温度箇所の温度は、1124[℃]および567.6[℃]であった。一方、3秒経過時点における孔2(2)周辺以外のワーク1(2)全体領域の温度は、約720[℃]で均一化されていた。
【0079】
図16に示した比較例2−1の結果と図17に示した比較例2−2の結果とを対比すると、縦方向に通電した比較例2−2は、横方向に通電した比較例2−1よりも最高温度(MAX)と最低温度(MIN)との差が大きくなっている。したがって、ワーク1(2)に対して、実施例1のように一様電流Cを0.1[sec]間隔で交互に切り替えながら横方向と縦方向とに通電した場合、すなわち、横方向の電極間に通電する時間間隔と縦方向の電極間に通電する時間間隔との比が1:1に設定されている場合、孔2(2)周辺の温度分布のバラツキを十分に解消することはできない。そこで、比較例2−1,2−2における孔2(2)周辺のジュール熱、ならびに孔2(2)の孔縦幅D1と孔横幅D2の比に着目し、後述する実施例2における横方向の電極間に通電する時間間隔と縦方向の電極間に通電する時間間隔との比を、2:1に決定した。
【0080】
図18は、上述した数理原理を適用した評価実験シミュレーションの実施例2の結果を示す温度−時間特性グラフであり、この実施例2では、上述した実施形態の図6(c)に示すスイッチング制御によって、ワーク1(2)に対して電流密度4.75E+07[A/m]の一様電流Cを縦方向と横方向とに、それぞれ2:1の時間間隔で交互に通電した場合をシミュレーションしている。
【0081】
図18のグラフにおいて、黒塗り四角形のプロット(MAX(2))は、その瞬間時における最高温度箇所の温度を示し、そのうち小さいプロットは横方向通電のインターバル終了時における最高温度箇所の温度であり、大きいプロットは縦方向通電のインターバル終了時における最高温度箇所の温度である。一方、白抜き四角形のプロット(MAX(2))は、その瞬間時における最高温度箇所の温度を示し、そのうち小さいプロットは横方向通電のインターバル終了時における最低温度箇所の温度であり、大きいプロットは縦方向通電のインターバル終了時における最低温度箇所の温度である。この実施例2では、3秒経過時点における最高温度箇所の温度は840[℃]であり、最低温度箇所の温度は704[℃]であった。この最低温度箇所に該当する孔2(2)周辺領域の温度は、孔2(2)周辺以外のワーク1(2)全体領域の温度と略同値であった。
【0082】
図19は、図16ないし図18の結果を示す温度−時間特性グラフである。同図から明らかなように、実施例2の通電加熱方法では、一方向に一様電流Cを通電した比較例2−1,2−2の通電加熱方法に較べ、通電加熱時の最高温度箇所と最低温度箇所の温度差を緩和することができ、ワーク1(1)全体を均一に加熱することができる。すなわち、本実施例2のように、孔2の断面形状が正円ではない場合でも、通電方向の切替タイミングを孔2の断面形状に応じて適宜調整すれば、上述した実施例1と同様の効果を得ることができる。また、本実施例2では、最小温度箇所の温度を比較例2−1,2−2に較べて高くすることができるので、通電加熱時間の短縮化を図る上でも有用である。
【実施例3】
【0083】
次に、図7を参照にしながら説明した本発明の実施形態の変形例に係る通電加熱方法について検証する。図8,9に示した半径aの円孔2が穿設されたワーク1に対し、図7に示すような装置によって、直交する異なる2方向の交流電流を通電した場合、ワーク1の材料物性値等が一定である条件下においては、円孔2周辺の電流密度(極座標表示)は、下記の数12,数13で表される。
【0084】
【数12】

【0085】
【数13】

なお、上記数12,数13において、Jは無限遠での電流密度である。よって、この場合のジュール熱は、上記数3より下記の数14を満足する。
【0086】
【数14】

ここで、ワーク1に対して印加する交流電流の周波数が十分に大きいとすると、数14の式を下記の数15のように近似することができる。
【0087】
【数15】

よって、この場合の非定常熱伝導方程式は、上記数4から下記の数16を満足する。
【0088】
【数16】

以上のように、実施例3に係る通電加熱方法によれば、上記数16の非定常熱伝導方程式が上述した実施例の数11と同一になることから、直交する異なる2方向の交流電流をワーク1に印加しても、孔2周辺の発熱量の偏りを解消できることは自明であり、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0089】
以上、本発明の実施形態および実施例について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0090】
1・・・伝導性構造体(ワーク)
2・・・孔(ビス穴)
10・・・プレス機械
11・・・パンチ部
12・・・ダイ部
13,13A・・・電極
13a,13Aa・・・第1電極(横方向通電用)
13b,13Ab・・・第2電極(縦方向通電用)
14・・・通電制御手段
15・・・直流電源
16・・・スイッチ
16a・・・第1スイッチ(横方向通電用)
16b・・・第2スイッチ(縦方向通電用)
17・・・電力調整部
18a,18b・・・交流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が穿設されている伝導性の構造体を所定の温度まで昇温させる通電加熱方法であって、
前記構造体に対して、前記孔を通過する少なくとも2方向の通電方向を有するように複数の電極を配するステップと、
前記複数の電極に対して、所定のパターンで電流を通電するステップと
を含んでいることを特徴とする通電加熱方法。
【請求項2】
前記複数の電極を、異なる2方向で相対する前記構造体の端部に配し、かつ、
前記複数の電極に対して、異なる2方向のうちの一方向の電極間への印加と他方向の電極間への印加とを所定の時間間隔で交互に切り替えながら直流電流を通電する請求項1に記載の通電加熱方法。
【請求項3】
前記孔の断面は、正円形状であり、かつ、
前記一方向の電極間に通電する時間間隔と前記他方向の電極間に通電する時間間隔との比は、1:1に設定されている請求項2に記載の通電加熱方法。
【請求項4】
前記孔の断面は、長円形状であり、
前記一方向の電極間の通電方向は、前記長円形状の長手方向と平行に設定されるとともに、前記他方向の電極間の通電方向は、前記長穴形状の長手方向に対して垂直な短手方向と平行に設定され、かつ、
前記一方向の電極間に通電する時間間隔と前記他方向の電極間に通電する時間間隔との比は、前記長円形状の長手方向寸法と短手方向寸法との比に応じて調整されている請求項2に記載の通電加熱方法。
【請求項5】
前記直流電流の通電方向を切り替える時間間隔は、0.01〜0.20[sec]である請求項2ないし4のいずれかに記載の通電加熱方法。
【請求項6】
前記通電パターンの異なる複数の電極を、異なる2方向で相対する前記構造体の端部にそれぞれ配し、かつ、
前記複数の電極に対して、それぞれ交流電流を印加する請求項1に記載の通電加熱方法。
【請求項7】
前記電極は、一方向の電極間の通電方向と他方向の電極間の通電方向とが垂直に交わるように配設されている請求項2ないし6のいずれかに記載の通電加熱方法。
【請求項8】
前記通電ステップによって前記構造体が所定の温度まで昇温された後に、該構造体を所定の形状にプレス成形するステップをさらに含んでいる請求項1ないし7のいずれかに記載の通電加熱方法。
【請求項9】
孔が穿設されている伝導性の構造体を所定の温度まで昇温させる通電加熱装置であって、
前記構造体に対して、前記孔を通過する少なくとも2方向の通電方向を有するように配された複数の電極と、
前記複数の電極に対して、所定のパターンで電流を通電する通電制御手段と
を備えていることを特徴とする通電加熱装置。
【請求項10】
前記複数の電極は、異なる2方向で相対する前記構造体の端部に配され、かつ、
前記通電制御手段は、前記複数の電極に対して、異なる2方向のうちの一方向間の電極間への印加と他方向の電極間への印加とを所定の時間間隔で交互に切替ながら直流電流を通電する請求項9に記載の通電加熱装置。
【請求項11】
前記孔の断面は、正円形状であり、かつ、
前記一方向の電極間に通電する時間間隔と前記他方向の電極間に通電する時間間隔との比は、1:1に設定されている請求項10に記載の通電加熱装置。
【請求項12】
前記孔の断面は、長円形状であり、
前記一方向の電極間の通電方向は、前記長円形状の長手方向と平行に設定されるとともに、前記他方向の電極間の通電方向は、前記長穴形状の長手方向に対して垂直な短手方向と平行に設定され、かつ、
前記一方向の電極間に通電する時間間隔と前記他方向の電極間に通電する時間間隔との比は、前記長円形状の長手方向寸法と短手方向寸法との比に応じて調整されている請求項10に記載の通電加熱装置。
【請求項13】
前記通電制御手段は、前記直流電流の通電方向を0.01〜0.20[sec]の時間間隔で切り替える請求項10ないし12のいずれかに記載の通電加熱装置。
【請求項14】
前記通電パターンの異なる複数の電極は、異なる2方向で相対する前記構造体の端部にそれぞれ配され、かつ、
前記通電制御手段は、前記複数の電極に対して、それぞれ交流電流を印加する請求項9に記載の通電加熱装置。
【請求項15】
前記複数の電極は、一方向の電極間の通電方向と他方向の電極間の通電方向とが垂直に交わるように配設されている請求項10ないし14のいずれかに記載の通電加熱装置。
【請求項16】
前記請求項9ないし15のいずれかに記載の通電加熱装置を備えたプレス機械であって、
前記通電手段によって前記構造体が所定の温度まで昇温された後に、該構造体を所定の形状に成形するプレス手段をさらに備えていることを特徴とするプレス機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−125897(P2011−125897A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286205(P2009−286205)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)