説明

通風障子

【課題】摺上部を全開にして良好な通風性を確保した場合であっても、適切な位置の目隠しを確保し、さらに、採光上有効な面積が広く、意匠性に優れた通風障子を提供することにある。
【解決手段】框11と上桟12と下桟13とからなる枠内に、該框11の中央部に固定される固定部20と、上下方向に摺動可能な上部摺上部30,下部摺上部40を嵌め込み、上部摺上部30と固定部20と下部摺上部40の高さの比を1:2:1とし、さらに、上部摺上部30と固定部20と下部摺上部40にそれぞれ吹き寄せ部を形成し、該吹き寄せ部以外は太鼓張りとし、吹き寄せ部は一方にのみ障子紙を張って引き手用の凹部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内において間仕切りや出入り口の引き戸、さらには窓の内側の目隠しとして用いられる障子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅内において用いられている障子として、框と上桟及び下桟とからなる障子枠の内部に、上下方向に可動する2枚の摺上部を嵌め込んだ構成が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
また、障子の引き手は障子の縁の框に設けるのが一般的であり、框に凹部を彫り込んで引き手部材を埋め込んでいた。よって、上記のような障子枠内に摺上部を嵌め込んだ構成においても、障子枠に別途引き手を設ける必要があった。
【0004】
【特許文献1】特開平11−241572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的な住宅において、従来の摺上部を有する障子を取り付けた場合、摺上部を全開すると、摺上部が上部及び下部のいずれの場合も外部から覗かれ易いという問題があった。
【0006】
また、框に引き手を設ける場合、加工に手間がかかる上、引き手部材を埋め込むに十分な見付け幅を確保する必要があり、採光上有効な面積が減ってしまうという問題や、軽快感に欠ける意匠になりがちであるという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、摺上部を全開にして良好な通風性を確保した場合であっても、適切な位置の目隠しを確保しうる通風障子を提供することにあり、また、採光上有効な面積が広く、意匠性に優れた通風障子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、框と上桟及び下桟とで構成された枠内に固定部と摺上部とを嵌め込んだけんどん式の通風障子であって、
框の裏面側中央部に固定され、上桟及び下桟のそれぞれとの間に距離を有する固定部と、該固定部の上つばと上桟との間を塞ぐ上部摺上部と、該固定部の下つばと下桟との間を塞ぐ下部摺上部とを有し、
上部摺上部と下部摺上部が固定部よりも表面側に形成された框内の溝に上下方向に摺動可能に嵌め込まれており、
固定部、上部摺上部及び下部摺上部がそれぞれ竪子の間隔が狭い吹き寄せ部を少なくとも一箇所有し、該吹き寄せ部以外は障子紙が太鼓張りとなっており、
上部摺上部及び下部摺上部の吹き寄せ部が裏面側にのみ障子紙が張られており、
固定部の吹き寄せ部が表面側にのみ障子紙が張られていることを特徴とする。
【0009】
上記本発明の通風障子においては、枠の高さが2.0〜2.4mで、上部摺上部と固定部と下部摺上部の高さの比が1:2:1であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の通風障子は、摺上部を全開にした場合でも、障子の中央部は固定部によって目隠しされるため、外部より覗かれにくい。また、摺上部と固定部にそれぞれ設けた吹き寄せ部を引き手として利用するため、框に障子の引き手を設ける必要がなく、採光上有効な面積を広くとることができる。係る吹き寄せ部は摺上部の上下動の際の引き手としても利用できるため、摺上部のつばに引き手を設ける必要もなく、該つばの幅を狭くして上下方向においても採光上有効な面積を広くとることができる。さらに、上部摺上部と固定部と下部摺上部の高さの比を1:2:1とすることにより、上部摺上部を下げ、下部摺上部を上げた際に両摺上部と固定部とが完全に重なり、意匠上も優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の通風障子の好ましい実施形態を図面を用いて説明する。
【0012】
図1は、本発明の通風障子の一実施形態の構成を表面側から見た概略斜視図である。図中、11は框、12は上桟、13は下桟、20は固定部、30は上部摺上部、40は下部摺上部であり、21,31,41は吹き寄せ部である。また、図1の通風障子の枠を取った状態を表面側から見た概略斜視図を図2に、裏面側から見た概略斜視図を図3に、さらに、上下の摺上部12,13を上下動させて固定部20に重ねた状態を表面側から見た概略斜視図を図4(a)に、裏面側から見た概略斜視図を図4(b)に、それぞれ示す。また、図1の通風障子の垂直方向断面概略図(図1のA−A’相当)を図5に、水平方向断面概略図(図4(a)のA−A’相当)を図6にそれぞれ示す。図2〜図6において、22,32,42はつば、23,33,43は障子紙、24は横子、25,35は竪子である。
【0013】
本発明の通風障子は、2本の框11と上桟12、下桟13とからなる枠の内側に、固定部20と上部摺上部30と下部摺上部40とを嵌め込んでなり、固定部20は框11の裏面側中央部に固定されている。また、固定部20は枠の上桟12及び下桟13との間にそれぞれ所定の距離を有しており、この空き領域はそれぞれ上部摺上部30と下部摺上部40とによって塞がれている。上部摺上部30と下部摺上部40とは、図5、図6に示すように、固定部20よりも表面側に形成された框内の溝に上下方向に摺動可能に嵌め込まれており、上部摺上部30を下方に、下部摺上部40を上方に移動させた場合には、図4に示すように固定部20の表面側に重なる。尚、上部摺上部30と下部摺上部40とは、側面に板ばね(不図示)などを取り付け、所望の位置に停止するように構成されている。
【0014】
本発明の通風障子は、上記したように上部と下部とにそれぞれ摺上部30,40を設けて開放可能とし、最も視界を遮りたい中央部は固定部20によって常に遮断されている。よって、当該通風障子を配置した場所の条件によって、適宜、上下摺上部30,40を上下方向に摺動させることにより、外部からの視界を遮りつつ、良好な通風性を確保することができる。
【0015】
本発明においては、固定部20、上部摺上部30及び下部摺上部40がそれぞれ竪子の間隔が狭い吹き寄せ部21,31,41を有しており、該吹き寄せ部21,31,41以外は障子紙23,33,43が太鼓張りされている。また、固定部20の吹き寄せ部21は表面側にのみ障子紙23が張られ、上部摺上部30の吹き寄せ部31及び下部摺上部40の吹き寄せ部41は裏面側にのみ障子紙33,43が張られている。そのため、表面側では吹き寄せ部31,41が、裏面側では吹き寄せ部21がそれぞれ凹部を形成しており、該凹部が本発明の通風障子を水平方向に移動させる際の引き手となる。さらに、吹き寄せ部31,41については、上部摺上部30及び下部摺上部40を上下に摺動させる際の引き手としても用いられる。即ち、本発明の通風障子においては、これら吹き寄せ部21,31,41を引き手として用いるため、別途引き手を設ける必要がなく、框やつばに引き手を設けるための見付け幅を確保する必要がない。
【0016】
尚、図1〜図3に示した例においては、吹き寄せ部21,31,41を水平方向中央部に1本ずつ形成しているが、特に当該形態に限定されるものではなく、図7に示すように水平方向両端にそれぞれつばと竪子で形成しても良く、また、図8に示すように、中央部と両端とに形成してもかまわない。
【0017】
本発明の通風障子は通常2.0〜2.4mの高さで構成される。特に好ましい形態としては、上部摺上部30と固定部20と下部摺上部40の高さの比を1:2:1とする。即ち、上部摺上部30を下方に、下部摺上部40を上方にそれぞれ移動させた際に、図4に示すように、上部摺上部30と下部摺上部40とが固定部20に完全に重なり、良好な意匠性が得られる。特に、それぞれの吹き寄せ部、つば、竪子や横子の組子が互いに重なり合うように構成しておく。具体的には、図5に示す、上部摺上部40の高さ(L3)及び下部摺上部30の高さ(L4)を固定部20の高さ(L2)の1/2に設定する。さらに、各部材のつば22,32,42の幅(T21,T3,T4)を一致させ、固定部20においては、中央に横子24を設け、該横子24の幅(T22)をつば32,43の幅(T3,T4)の2倍とする。これにより、上部摺上部30及び下部摺上部40が固定部20に重なり合った際には、つばや組子の重なりにずれがなく、半透明の障子紙を通して重なったつばや組子が視認され、意匠性に富むものとなる。
【0018】
上記した高さ及び高さの比で通風障子を構成することにより、上部摺上部30を全開した場合には開口部の下端の高さは床面より凡そ1.4〜1.8mとなり、隣室を歩行する標準的な身長の成人の視線を遮ることができる。また、下部摺上部40を全開にした場合においても開口部の上端の高さは床面より凡そ0.4〜0.6mとなるので、通風障子に近接して床面に直に座らない限りは隣室を歩行する標準的な身長の成人の視線を遮ることができる。
【0019】
尚、図1〜図3には、必要最小限の組子を形成した例を示したが、通常の障子の如く細かな格子状の組子を用いても良く、所望の意匠を付与することが可能である。
【0020】
また、図5,図6においては、枠やつば、組子をアルミ等で成形した形態を示したが、従来のように木製で構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の通風障子の一実施形態の構成を表面側から見た概略斜視図である。
【図2】図1の通風障子の枠を取った状態を表面側から見た概略斜視図である。
【図3】図1の通風障子の枠を取った状態を裏面側から見た概略斜視図である。
【図4】図2及び図3の通風障子の摺上部と固定部を重ねた状態の概略斜視図である。
【図5】図1の通風障子の垂直方向断面概略図である。
【図6】図1の通風障子の水平方向断面概略図である。
【図7】図1とは異なる位置に吹き寄せ部を設けた例の概略斜視図である。
【図8】図1に異なる位置の吹き寄せ部を加えた例の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
11 框
12 上桟
13 下桟
20 固定部
30 上部摺上部
40 下部摺上部
21,31,41 吹き寄せ部
22,32,42 つば
23,33,43 障子紙
24 横子
25,35 竪子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
框と上桟及び下桟とで構成された枠内に固定部と摺上部とを嵌め込んだけんどん式の通風障子であって、
框の裏面側中央部に固定され、上桟及び下桟のそれぞれとの間に距離を有する固定部と、該固定部の上つばと上桟との間を塞ぐ上部摺上部と、該固定部の下つばと下桟との間を塞ぐ下部摺上部とを有し、
上部摺上部と下部摺上部が固定部よりも表面側に形成された框内の溝に上下方向に摺動可能に嵌め込まれており、
固定部、上部摺上部及び下部摺上部がそれぞれ竪子の間隔が狭い吹き寄せ部を少なくとも一箇所有し、該吹き寄せ部以外は障子紙が太鼓張りとなっており、
上部摺上部及び下部摺上部の吹き寄せ部が裏面側にのみ障子紙が張られており、
固定部の吹き寄せ部が表面側にのみ障子紙が張られていることを特徴とする通風障子。
【請求項2】
枠の高さが2.0〜2.4mで、上部摺上部と固定部と下部摺上部の高さの比が1:2:1である請求項1に記載の通風障子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−303144(P2007−303144A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−132286(P2006−132286)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】