説明

速度因子

本発明は速度因子に関する。この速度因子に基づき抗体を分類することができる、すなわち、抗体を、それらの結合特性に従い、例えばエントロピーまたはエンタルピー的な抗原結合体として特徴づけることができる。速度因子に基づく分類は、詳細な熱力学的測定および/または算出を必要としない。速度因子は、37℃および13℃で測定された抗原・抗体複合体の会合速度定数kaの比である。本発明は、この速度因子を算出するのに2つの実験的測定しか必要とせず、高速・高スループットに適した方法である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
速度因子(velocity factor)は、37℃および13℃で測定された抗原・抗体複合体の会合速度定数の比であり、これを用いることで、詳細な熱力学的測定および計算を必要とすることなく、抗体を例えばエントロピーまたはエンタルピー的結合体として分類することができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
際だつ抗原特異性および並外れた抗原複合体安定性を有する高親和性抗体の作製は、診断および治療用抗体の開発における主目的である。
【0003】
タンパク質・タンパク質相互作用の熱力学的分析において広く利用されている技術は、熱量測定法である(Chaires, J. B., Ann. Rev. Biophys. 37 (2008) 135-51; Perozzo, R., et al., J. Recept. Signal Transduct. Res. 24 (1-2) (2004) 1-52; Li, L., et al., Chem. Biol. Drug Des. 71(6) (2008) 529-32; Liang, Y., Acta Biochim. Biophys. Sin. (Shanghai) 40(7) (2008) 565-76; Thielges, M. C., et al., Biochemistry 47(27) (2008) 7237-47)。反応熱量測定に必要なサンプル量は多く、例えば少なくとも125μg/mlの抗体濃度および少なくとも150μlのサンプル量である。さらに、反応熱量測定は高いサンプル純度を要求し、サンプル不純物やサンプル不均一性を許容しない。さらに、サンプルバッファーは、測定される熱力学的パラメーターの結果に直接影響する。さらに、反応熱量測定はもっぱら平衡熱力学を解くためのものである。
【0004】
表面プラズモン共鳴(SPR)計測(Roos, H., et al., J. Mol. Recognit. 11 (1-6) (1998) 204-210; Van Regenmortel, M. H., et al., J. Mol. Recognit. 11 (1-6) (1998) 163-167; Gunnarsson, K., Curr. Prot. Immunol. Chapter 18 (2001) Unit 18.6; Drake, A. W., et al., Anal. Biochem. 328 (1) (2004) 35-43; Kikuchi, Y., et al., J. Biosci. Bioeng. 100 (3) (2005) 311-7)は、温度依存的なカイネティクスプロフィールの迅速な測定を高スループットで実現する(例えば、Canziani, G. A., et al., Anal. Biochem. 325 (2004) 301-307; Saefsten, P., et al., Anal. Biochem. 353 (2006) 181-190; Leonard, P., et al., J. Immunol. Methods 323 (2007) 172-9を参照のこと)。
【0005】
Wassaf, D., et al.(Anal. Biochem. 351 (2006) 241-253)は、表面プラズモン共鳴マイクロアレイを用いた高スループットの抗体の親和性の順位付けを報告している。バイオセンサー技術を用いたタンパク質相互作用の熱力学的分析はRoos, H., et al., J. Mol. Recognit. 11 (1998) 204-210に報告されている。
【0006】
Wark, K. L., et al.(Adv. Drug. Deliv. Rev. 58 (2006) 657-670)は、抗体親和性を高める技術を報告している。BIAcore T100を用いた抗体フラグメント/抗原相互作用の高分解解析は、Anal. Biochem. 359 (2006) 112-119においてPapalia, G. A., et al.が報告している。Sagawa, T., et al.(Mol. Immunol. 39 (2003) 801-808)は、ハプテンに対する免疫反応時の抗体の進化の熱力学およびカイネティクスの局面を報告している。BIAcoreシステムおよびアプリケーションの概要は、Curr. Prot. Prot. Sci. (2006) page unit 19. 13においてJason-Moller, L., et al.が報告している。Gelb, W.,は、ペプチド研究のためのマイクロ熱量測定法を報告している(Proc. 4th Int. Peptide Sympos. (2007) page 1)。
【発明の概要】
【0007】
抗体の特徴づけには完全なカイネティクスの特徴づけは必要なく、37℃での会合速度定数および13℃での会合速度定数の測定が必要であることが分かった。その比は、抗体をそれらの結合特性に基づき分類するのに使用することができる。
【0008】
本明細書で報告する第一の局面は、抗体を選択する方法であって、速度因子が10以下の抗体を選択する工程を包含する方法である。
【0009】
一つの態様において、抗体を選択する方法は、以下の工程
a) 抗体のセットまたは抗体の集合または多数の抗体を提供する工程、
b) 温度依存的なカイネティクスデータを測定する工程、
c) 提供された抗体のすべてについて速度因子を算出する工程、
d) 速度因子が10以下の抗体を選択する工程
を包含する。
【0010】
一つの態様において、速度因子は0〜10である。別の態様において、速度因子は、13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比である。さらに別の態様において、温度依存的なカイネティクスデータは13℃および37℃で測定される。別の態様において、温度依存的なカイネティクスデータの測定は、表面プラズモン共鳴による。さらなる態様において、この方法は高スループットの方法である。さらに別の態様において、上記選択は、速度因子およびΔS゜‡ass値による。一つの態様において、表面プラズモン共鳴において抗原は表面プラズモン共鳴チップに固定される。さらなる態様において、温度依存的なカイネティクスデータは熱力学的平衡データおよび遷移状態の熱力学的データである。さらに別の態様において、温度依存的なカイネティクスデータは、線形形式のファントホッフおよびアイリングおよびアレニウスの式を用いて算出される。一つの態様において、ΔS゜‡assが200 J/mol*K未満(ΔS゜‡ass<200 J/mol*K)の抗体が選択される。一つの態様において、ΔS゜‡assが-200 J/mol*K〜200J/mol*Kの範囲の抗体が選択される。また一つの態様において、ΔS゜‡assが-150J/mol*K〜+100J/mol*Kの範囲の抗体が選択される。別の態様において、表面プラズモン共鳴は、1mg/mlカルボキシメチルデキストランを補充したHBS-EPバッファーを用いる。さらに別の態様において、抗体は各々、単一のハイブリドーマまたはB細胞により産生される。
【0011】
本明細書で報告する第二の局面は、少なくとも2つの抗原に対する交差反応性を有する抗体を得るための方法であって、速度因子が50以上の抗体を選択する工程を包含する方法である。一つの態様において、速度因子は50〜300である。
【0012】
本明細書で報告するさらなる局面は、抗体を産生するための方法であって、以下の工程
a) 抗体産生細胞のセット/抗体産生細胞の集合/多数の抗体産生細胞を提供する工程、
b) 速度因子が10以下の抗体を産生する抗体産生細胞を選択する工程、
c) 選択した細胞を培養する工程、
d) 選択し培養した細胞からまたはその培養培地から抗体を回収し、それによって抗体を得る工程
を包含する方法である。
【0013】
一つの態様において、抗体産生細胞は、単細胞として捕集される。さらなる態様において、捕集された単細胞は上記選択の前に培養される。別の態様において、抗体は上記選択の前に精製される。さらなる態様において、抗体は上記回収の後に精製される。特定の態様において、精製はプロテインAクロマトグラフィーによる。
【0014】
本明細書で報告する別の局面は、親抗体のヒト化型を選択する方法であって、以下の工程
a) 親抗体を提供する工程、
b) 該親抗体のヒト化型のセット/ヒト化型の集合/多数のヒト化型を提供する工程、
c) 提供されたすべての抗体の温度依存的なカイネティクスデータを測定する工程、
d) 提供されたすべての抗体について速度因子を算出する工程、
e) 親抗体の速度因子とヒト化型の速度因子を比較する工程、
f) 親抗体の速度因子の2倍未満の速度因子を有する抗体を選択することによって親抗体のヒト化型を選択する工程
を包含する、方法である。
【0015】
一つの態様において、上記選択は、親抗体の速度因子の125%未満の速度因子を有するヒト化型の選択であり、別の態様においては親抗体の速度因子の110%未満である。
【0016】
本明細書で報告するさらに別の局面は、本明細書で報告する方法によって選択された抗体の治療剤または診断剤としての使用である。本発明の一つの局面は、本明細書で報告する方法によって得られた抗体を含む薬学的組成物である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】例示の抗体の結合終点(Binding Late)(BL)および安定終点(Stability Late)(SL)の図。
【図2】549個のハイブリドーマ初代培養物の結合終点/複合体安定性プロット:丸で囲まれたデータスポットは十分な抗原反応シグナルおよび100%の複合体安定性を示し、四角で囲まれたデータスポットは不十分な抗原反応を示す。
【図3】25nM、50nM、75nMおよび100nMならびに漸増温度下での<IgGFCγM>R抗体捕捉システム 対 分析対象のモノクローナル抗体の二次抗体反応。
【図4a】抗体M D1.1の温度依存的な抗体・抗原相互作用の濃度依存的なセンサーグラムの例。カイネティクスは、HBS-EP pH 7.4中、25℃、会合時間3分、解離時間5分で測定し、ラングミュアモデルに従いフィッティングを行った。
【図4b】抗体M 9.3.1の温度依存的な抗体・抗原相互作用の濃度依存的なセンサーグラムの例。カイネティクスは、HBS-EP pH 7.4中、25℃、会合時間3分、解離時間15分で測定し、ラングミュア1.1モデルに従いフィッティングを行った。
【図5a】ファントホッフ、アイリングおよびアレニウスの線形式による熱力学的パラメーターの算出。例示のプロットは抗体M D1.1のものである。
【図5b】ファントホッフ、アイリングおよびアレニウスの線形式による熱力学的パラメーターの算出。例示のプロットは抗体M D1.1のものである。
【図5c】ファントホッフ、アイリングおよびアレニウスの線形式による熱力学的パラメーターの算出。例示のプロットは抗体M D1.1のものである。
【図6a】34個の例示の抗体の温度依存的解析の両対数プロット。
【図6b】3個の例示の抗体の温度依存的解析の両対数プロット:黒丸−温度上昇に伴い親和性が増す抗体、白丸−温度が上昇しても親和性が一定の抗体、四角−温度上昇に伴い親和性が低下する抗体。
【図7】抗原解離定数kd[l/s] 対 抗原会合速度定数ka[l/Ms]の両対数プロットによる速度マップ;等親和性線(isometric line)は、親和性が一定の領域を示す;13℃から37℃の+4℃ステップの温度勾配における、2つのヒト化抗体、抗体1(黒三角)および抗体2(白星)の温度依存的カイネティクスがプロットされている。会合速度の遅いものほどグラフの左側にきている。
【図8】表1のデータ。ΔS゜‡assをVFに対してプロットしている。データは、式y = y0 + A1*(1-exp(-x/t1)) + A2*(1-exp(-x/t2)); Y0 = -185.05789 +/- 36.83135; A1 = 399.74088 +/- 36.60886; t1 = 41.93317 +/- 9.834; A2 = 198.50729 +/- 29.933; t2 = 3.13298 +/- 1.32572; R2 = 0.97575に従う指数会合モデルに対してフィッティングした。VF =10の点線は、適当な相互作用の大部分がVF<10を示すことを表す。
【図9】短い点線による図8のプロットの4区画セグメント化。セグメントに1、2、3、4の番号を付けてある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本明細書で報告する方法は、速度因子の測定に基づくものである。速度因子に基づき抗体を分類することができる、すなわち、抗体をそれらの結合特性に従い、例えばエントロピーまたはエンタルピー的な抗原結合体として特徴づけることができる。速度因子に基づく分類は、詳細な熱力学の測定および/または算出を必要とせず、したがって、測定するパラメーターの量およびなすべき計算の数を減らすことができることが見出された。速度因子は、37℃および13℃で別個に測定された抗原・抗体複合体の会合速度定数(ka)の比である。この速度因子を算出するのに2つの実験的測定しか必要としないため、本発明は高速・高スループットに適した方法である。
【0019】
速度因子は、例えば、ヒト化抗体と、その起源となった親抗体を比較するのに使用することができる。速度因子はまた、ハイブリドーマおよび/またはB細胞の上清から直接的に抗体を評価するのにも使用できる。この場合予備的な精製は必要ではなく、測定はその粗上清から直接的に行うことができる。
【0020】
表面プラズモン共鳴に基づくカイネティクス法は、従来的な熱量測定法と比較していくつもの利点を有する:
− 高スループット処理が可能である点、
− サンプル消費量が少ない点、
− 結合性(avidity)ではなく親和性(affinity)を測定する点、および
− 粗細胞上清または複合的な培養混合物を使用する点。
【0021】
表面プラズモンバイオセンサー表面は、例えば粗細胞培養上清から抗体を捕捉するのに使用されるアフィニティーマトリックスである。したがって、サンプルとして粗く複合的な混合物を使用することができる。FIA(フローインジェクション分析)システムは複合体の会合フェーズおよび解離フェーズを個別にモニターできるので、相互作用パートナーの一方をセンサー表面に固定し、第二の化合物をフローシステムに注入することで、平衡状態および遷移状態の熱力学を測定することが可能となる。
【0022】
この技術を用いることで、以下の熱力学的パラメーター
− 自由標準結合エンタルピーΔG゜
− 標準結合エンタルピーΔH゜
− 標準結合エントロピーΔS゜
および以下の遷移状態パラメーター
− 自由標準会合エンタルピーΔG゜‡ass
− 標準会合エンタルピーΔH゜‡ass
− 標準会合エントロピーΔS゜‡ass
− 活性化エネルギーEaass
− 自由標準解離エネルギーΔG゜‡diss
− 標準解離エンタルピーΔH゜‡diss
− 標準解離エントロピーΔS゜‡diss、および
− 解離エネルギーEadiss
の算出をすることができる。非線形ファントホッフ式を使用する場合はΔCp値も測定できる。
【0023】
一般的には、SPRに基づくカイネティックな抗体スクリーニング(例えば、Steukers, M., et al., J. Immunol. Methods 310 (2006) 126-135; Rich, R. L., et al., Anal. Biochem. 361 (2007) 1-6)に続く第二ステップとして、より高分解能の熱力学的SPR分析が行われる。
【0024】
抗体産生細胞を培養し、得られた細胞培養上清を分析、一つの態様では高スループット分析に供し、その中で温度依存的なカイネティクスデータを生成し、速度因子および遷移状態(TS)の熱力学的特性を算出する。本明細書で報告する方法に従う抗体の選択は、その熱力学的挙動に基づき行われる。
【0025】
高親和性の抗体は、その抗原複合体会合速度定数ka[l/Ms]の温度依存的な加速および抗原複合体解離速度定数kd[l/s]の維持または減速により特徴づける。驚くべきことに、そのような抗体は、結合平衡における大きなエントロピー変化を示す抗原相互作用メカニズムにより特徴づけられる。したがって、熱量測定以外の手段によりリスク評価を行い、そのエントロピー的寄与がどのような結果からもたらされたのかを決定しなければならない。交差的な抗原結合の危険がある複合体会合フェーズから、または、抗原のコンフォメーション変化の潜在的誘導を含む、複合体の抗原相互作用そのものを示す複合体解離フェーズから。一つの態様において、エントロピー的寄与は、解離エントロピーΔS゜‡dissの大きな正のまたは大きな負の変化がおこる抗体・抗原複合体の解離ステップからもたらされる。
【0026】
高親和性の抗体はまた、解離速度定数kd[l/s]が驚くべきことにかつ予想外にも温度上昇に伴い減少する抗原解離フェーズに由来する熱力学的異常を示し得る。そのような抗体は、熱力学的パラメーター、例えばi)負またはほぼゼロの解離活性化エネルギーEadiss[kJ/mol]を示す解離フェーズ、ii)負の解離エンタルピーΔH゜‡diss[kJ/mol]およびiii)大きな負の解離エントロピーΔS゜‡diss[kJ/mol]によって特徴づけられる。これはこの効果の全く理論的な取り扱いであり制限とされるべきでないことに留意されたい。したがって、一つの態様において、解離活性化エネルギーEadiss、解離エンタルピーΔH゜‡dissおよび解離エントロピーΔS゜‡dissが測定され、i)負またはほぼゼロの解離活性化エネルギーEadiss[kJ/mol]、ii)負の解離エンタルピーΔH゜‡diss[kJ/mol]およびiii)負の解離エントロピーΔS゜‡diss[kJ/mol]を有する抗体が選択される。
【0027】
このように、本明細書で報告する方法は、速度因子およびΔS゜‡ass値に基づく多数の高親和性抗体からの抗体の選択を実現する。
【0028】
捕集された単細胞クローンはスクリーニング前に培養され得、一つの態様においてはRPMI 1640培地を用いて100 mlスピナー培養フラスコ中で培養される。別の態様において、抗体は、温度依存的なカイネティクスデータの測定前に、すなわち熱力学的スクリーニング前に、プロテインAセファロース(商標)カラムクロマトグラフィーによって上清から精製される。一つの態様において、熱力学的スクリーニングのためのシステムバッファーはHBS-EPである。別の態様において、サンプルバッファーには、非特異的なセンサーマトリックス効果を減らすために1 mg/mlカルボキシメチルデキストランを補充する。
【0029】
SPRに基づく測定を利用するほとんどの刊行物は、センサー表面提示技術として抗体捕捉システムを使用していない。通常、抗体またはそのフラグメントはセンサーに共有結合により固定される。この技術が高スループットフォーマットに使用できないのは、その表面が多目的の抗体提示に適しておらず、リガンドによって固定されるセンサー数により技術的に制限されるためである。
【0030】
熱力学的スクリーニングを行うため、適当な温度依存的な二次抗体複合体安定性を有する種特異的な捕捉システムが構築され得る。バイオセンサーは、様々なエピトープ特異性を有する抗体の結合特性を高スループットフォーマットで測定するため、最適化手順によりキャリブレートする必要がある。熱力学的スクリーニングは、温度依存的なデータセットを提供する(図3を参照のこと)。低い温度では、捕捉システムの会合速度が低下するため、低い反応が観察される(図5を参照のこと)。高い温度では、会合速度が加速する。
【0031】
さらに、13℃未満の温度では、捕捉システムの会合のカイネティクスが十分な抗体反応には遅すぎることが見出された。13℃未満および37℃超での抗体の抗原結合カイネティクスの測定は、ファントホッフ、アイリングおよびアレニウスの式に従う非線形性データを提供する。
【0032】
一つの態様において、熱力学的スクリーニングは、13℃または17℃および37℃の温度で実施する。この温度範囲では、線形形式のファントホッフ式に従う熱力学的平衡データの簡単な計算ならびに線形アイリング式および線形アレニウス式に従う遷移状態の熱力学の簡単な計算が可能であることが見出された(Wear, M. A., et al., Anal. Biochem. 359 (2006) 285-287; 図5を参照のこと)。一つの態様において、高スループットスクリーニング(HTS)を実現するため、すべての測定が同じ条件下で行われる。
【0033】
以下の式が計算に使用できる:
a)アレニウス式:
(I) k = A*e(-Ea/R*T)
b)ファントホッフの計算:
(II) ΔG゜ = ΔH゜-T*ΔS゜
(III) ΔG゜ = -R*T*lnKD
(IV) lnKD = -1/T*(ΔH゜/R)/傾き - (ΔS゜/R)/切片
(V) R*T*lnKD = ΔH゜T0 - T*ΔS゜T0 + ΔC゜p(T-T0) - T*ΔCp゜ln(T/T0)
c)アイリングの会合フェーズ:
(VI)ka = (kb*T/h)*e(-ΔG゜‡/R*T)
(VII)lnka/T = -1/T*(ΔH゜‡/R)/傾き + (ΔS゜‡*R+lnkb/h)/切片
(VIII)ka = A*e-Ea/R*T
(IX) lnka = lnA/切片 - (1/T*Ea/R)/傾き
d)アイリングの解離フェーズ:
(X)kd = (kb*T/h)*e(-ΔG゜‡/R*T)
(XI)lnkd/T = -1/T*(ΔH゜‡/R)/傾き + (ΔS゜‡/R+lnkb/h)/切片
(XII)kd = A*e-Ea/R*T
(XIII)lnkd = lnA/切片 - (1/T*Ea/R)/傾き
ここで、
ΔH゜ − 標準結合エンタルピー、
ΔS゜ − 標準結合エントロピー、
ΔG゜ − 自由標準結合エンタルピー、
T*ΔS゜ - エントロピー項、
ΔH゜‡ass − 標準会合結合エンタルピー、
ΔS゜‡ass − 標準会合結合エントロピー、
ΔG゜‡ass − 標準会合自由結合エンタルピー、
Eaass - 会合アレニウスパラメーター、
ΔH゜‡diss − 標準解離結合エンタルピー、
ΔS゜‡diss − 標準解離結合エントロピー、
ΔG゜‡diss − 標準解離自由結合エンタルピー、
Eadiss - 解離アレニウスパラメーター、
KD − 親和性定数、
ka − 会合速度定数、
kb − ボルツマン定数 = (1.3806503 X 10-23 m2kgs-2K-1)、
kd − 解離速度定数、
h − プランク定数、
Cp − モル熱容量。
【0034】
自由結合エンタルピーΔG゜の温度依存性は、13℃〜37℃の範囲の各温度で式ΔG゜ = -R*T*lnKDを用いて算出できる。その値が一定の場合、線形形式のファントホッフ式を使用できる。ΔG゜が変化する場合、非線形形式が好ましい。
【0035】
熱力学的スクリーニングにおいて得られるデータは、図6a)に示されるような両対数プロットで視覚化することができる。この図において、カイネティックな速度定数(kon)ka[l/Ms]および(koff)kd[l/s]が、それぞれ、X軸およびY軸に示されている。等親和性線(実線)は同じ親和性の領域を示し、その親和性はダイアグラムの右側に太字で示されている。kd/kaの比が平衡定数KD[M]を提供するので、各データ点はそれぞれの温度での親和性に相当する。上部の矢印は、13℃または17℃から始まり37℃で終わる+4℃ステップの温度勾配を表している。線で結ばれたものが、各抗体の温度依存的な親和性の傾向である。
【0036】
3つの例示の親和性の傾向を図6b)に示す。この速度マップでは、3つの例示の抗体の+4℃ステップのKDが示されており、そのうちの一つは温度上昇に伴い親和性も上昇する抗体であり、一つは温度が上昇しても親和性が一定の抗体であり、そして一つは温度上昇に伴い親和性が低下する抗体である。たいていの抗体は、抗原複合体の安定性を失うことにより親和性の低下を示す(図6bにおいて四角で示されている抗体のように)。親和性は、konおよびkoffが上昇しても不変である(白丸)。治療用または診断用抗体は、好ましくは、温度上昇に伴ってkonおよびkoffの上昇を示すかまたはkonの加速およびkoffの減速を示すものである。同様に、温度が高くなると親和性が増加し複合体は安定を得る(黒丸)。
【0037】
図6に示されるような温度依存的なカイネティクスのモニタリングは、温度非依存的または温度亢進性の抗原複合体安定性を有する抗体を選択する根拠となる。
【0038】
図7は、ヒト化プロセスにより得ることのできる2つの抗体1型および2型の2つの異なる温度依存的カイネティクスを例示的に示すものである。このようなプロセスでは、ヒト生殖系重鎖および軽鎖ベースの配列の異なる組み合わせを用いて、マウスの親抗体のフレームワーク配列を置き換えることができる。その目的は、ヒト化モノクローナル抗体(mAb)、好ましくはその親抗体と比較して熱力学、特異性および安定性が変化していない抗体を選択することである。抗体2は、抗体1と異なり、示される温度勾配においてその会合速度定数kaを強く加速させることが確認できる。
【0039】
両方の抗体とも37℃で同様の親和性で抗原に結合するため、親和性は抗体を識別するのに適した選択パラメーターではない。
【0040】
両方の抗体はそのエントロピー的寄与に関して大きく異なっているので、より良い追加の選択パラメーターはΔS゜‡assである。例えば、ヒト化抗体1型はΔS゜‡ass = 70 +/- 15 J/mol*K(アイリング式、R2 = 0.9601)を示し、ヒト化抗体2型はΔS゜‡ass = 350 +/- 70 J/mol*K(アイリング式、R2 = 0.9530)の結合エントロピーを示す。ヒト化抗体2型の方が結合エントロピーが高いことは、13℃〜37℃の温度勾配における会合速度定数kaの加速が大きいことに反映されている。
【0041】
温度上昇による抗体・抗原複合体形成の加速、個別には高温での会合速度定数kaの上昇は、抗体・抗原会合フェーズのエントロピーΔS゜‡assと相関していることが見出された。
【0042】
28個の抗体の抗原結合相互作用を熱力学的に定量化した。それらの会合フェーズエントロピーΔS゜‡assおよび速度因子VF(ka(37℃)/ka(13℃))を算出した(表1を参照のこと)。
【0043】
(表1)アイリング式に従い算出した28個の抗体のΔS゜‡ass;すべての値がR2>95%を示す。SE:計算誤差 VF:速度因子

【0044】
表1は、6個の異なる抗原に結合する、28個の異なるマウス、ヒトキメラおよびヒト化マウス抗体、マウスまたはヒト起源のFabおよびFab'2フラグメントのデータを示す。抗原はすべてタンパク質性、高次構造性の抗原であり、それらの分子量が異なる。速度因子VFはΔS゜‡assと相関しており、したがって、小さいVF値は負のまたは小さいΔS゜‡ass値と相関している。負のΔS゜‡assは、エンタルピー誘導性の抗体・抗原相互作用を示し、正のΔS゜‡ass値はエントロピー/エンタルピー的相互作用を示し、3桁のΔS゜‡ass値は完全なエントロピー誘導性の相互作用を表していることが見出された。したがって、本明細書では、特異的結合抗体を選択する方法であって、以下の工程:
a) 多数の抗体を提供する工程、
b) 37℃での各抗体の抗原に対する会合速度定数および13℃での各抗体の抗原に対する会合速度定数を測定する工程、
c) 13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比を算出する工程、
d) 比が10以下かつΔS゜‡ass値が100 J/mol*K以下の抗体を選択することにより特異的結合抗体を選択する工程
を包含する方法を報告する。
【0045】
一つの態様において、上記選択は、ΔS゜‡ass値が50 J/mol*K以下の抗体の選択である。
【0046】
ΔS゜‡assが高いほど交差的な抗体結合の可能性が高くなる。
【0047】
小さいまたは負のΔS゜‡assは、特異性および単一特異的結合と相関している。
【0048】
許容できる誤差しか生じないパラメーターを算出するために線形化可能な高品質のデータを生成する作業であるアイリングおよびアレニウスの式に従うデータの線形化により、会合フェーズの熱力学を測定する必要がないことが見出された。本明細書で報告する方法を使用すれば、2点のみの温度、すなわち13℃および37℃でカイネティクスデータを測定するだけで十分なのである。
【0049】
これらの実験データに基づき、適当なカイネティクスモデルを使用することによりka(37℃)値およびka(13℃)値を決定する。その後、速度因子(VF)=ka(37℃)/ka(13℃)を算出し、図8に示される特性曲線に従いΔS゜‡assを評価する。
【0050】
2桁のVF値は3桁のΔS゜‡ass値と相関し、交差的結合のリスクが高いことを示す。図8のデータを、指数会合関数y = y0 + A1*(1-exp(-x/t1)) + A2*(1-exp(-x/t2))によりモデル化した。
【0051】
この指数関数式のグラフにより、望まないエントロピー誘導性の結合体を選択するリスクを最小限に抑えることができる。ΔS゜‡assは、代理パラメーターVFにより推定される。ΔS゜‡assとは異なり、VFは、機器が利用しやすいパラメーターである。
【0052】
図8は、ΔS゜‡assが計算式パラメーターA1 = 399.74088 +/- 36.60886 J/mol*Kでプラトー値に達することを示す。
【0053】
関連性がより高いデータは、10未満の小さなVF値によって特徴付けられ、小さいΔS゜‡assの標準偏差を示す。
【0054】
フィッティングパラメーターA2(A2 = 198.50729 +/- 29.933 J/mol*K)は、曲線の変曲点でのΔS゜‡assである。
【0055】
ΔS゜‡assがA2より大きい(ΔS゜‡ass>A2)抗体が境界線となる、すなわち、それらはさらなる処理作業に適さない。図8は、分析したほとんどの抗体が10未満(<10)のVF値を有することを示している。これらの抗体は、診断または製薬用途で使用することができる。
【0056】
ΔS゜‡assがA2より大きい抗体は、VFが50より大きいことと相関しており、例えば、別の抗原に対する交差反応性を示す。
【0057】
したがって、本明細書では、交差反応性の抗体を選択する方法であって、以下の工程
a) 多数の抗体を提供する工程、
b) 37℃での各抗体の抗原に対する会合速度定数および13℃での各抗体の抗原に対する会合速度定数を測定する工程、
c) 13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比を算出する工程、
d) 比が50以上かつΔS゜‡ass値が200 J/mol*K以上の抗体を選択することによって交差反応性の抗体を選択する工程
を包含する方法を報告する。
【0058】
一つの態様において、上記選択は、ΔS゜‡ass値が300 J/mol*K以上の抗体の選択である。
【0059】
図8は、4つの区画にセグメント化することができる(図9を参照のこと)。0<VF<20の因子が選択されるスクリーニング結果を示す。第3セグメントの抗体は20より大きいVF因子を示し(VF>20)、それらのΔS゜‡ass値が大きいため選択されない。これらの抗体は交差的抗原結合の可能性があり、より詳細に分析しその標的結合メカニズムを解明する必要がある。
【0060】
図9に基づく分類は、大きな抗体集団のΔS゜‡assベースの高スループットスクリーニングを実現するのに使用できる。例えば、本明細書で報告する方法は、最適なヒト重鎖および軽鎖の構成をその親抗体と同様の最適な性能について体系的に試験する抗体のヒト化プロセスにおいて使用することができる。
【0061】
表1に示される抗体8、9、17、18、20、21、22および31は、ヒト化プロセスの異なる段階に対応する。そのVF値からヒト化プロセスを追跡することができる。親マウス抗体8は小さいVF値および負のΔS゜‡assを示す。キメラ抗体9でもVF値およびΔS゜‡assは変化していない。異なるVL/VH鎖配列の組み合わせを有する完全ヒト化抗体は、VF値の差異を示し、したがってΔS゜‡assの差異を示す。最後に選択されたのは、最小のVFおよびΔS゜‡assを示す抗体31であり、抗体21および抗体20は、熱力学的不安定性、細胞培養アッセイにおける低い機能性および/または交差的な抗原結合性が理由で選択されなかった。
【0062】
表1は、図9に示されるダイアグラムが抗体フラグメントにも使用できることを示している。
【0063】
本明細書で報告する方法はまた、抗体または抗体産生細胞を得るために、例えば細胞混合物から、一つの態様においてはハイブリドーマまたはB細胞から、または別の態様においては、捕集された単一ハイブリドーマもしくはB細胞からそれらを得るために使用できる。ここでは、エンタルピー的結合挙動を示す完全成熟抗体を同定することが重要であるため、潜在的に不均一な成熟度の抗体は除かれる。
【0064】
本明細書で報告する方法は、高スループットフォーマットで使用できる。一般に、ΔS゜‡ass値は、R2>95%のアイリング式に従い遷移状態パラメーターを算出するのに適した線形相関を得るために幅広い温度範囲および可能な限り多くのデータ点を使用することから時間のかかる測定に基づき算出される。
【0065】
本明細書で報告する方法では、13℃および37℃というわずか2つの温度ならびに縮小版の「2 over 2」カイネティクスモデルを使用するだけで、会合速度に対する正確な速度因子を得ることができる。本発明の方法は、高スループットのΔS゜‡ass測定に欠かせないものである。高安定性の抗原複合体形成抗体の同定のための高スループットカイネティクススクリーニングとVF因子の高スループット測定を組み合わせることで、クラス内最高の抗体を選択できる。
【0066】
例えば、表2のVF値をΔS゜‡ass/VFダイアグラムで表すと、1F8と名付けられたモノクローナル抗体が高い会合フェーズエントロピーを示さないことが分かる。このことは異なる実験フォーマットでも確認されている。全16のバッファー条件の平均VF値は4である。参考表1におけるVF値は、同様のバッファー条件下で4である。この実験は、ΔS゜‡assの代理としてVF因子を使用する高スループットΔS゜‡ass分析の適用性を実証している。
【0067】
(表2)16の異なるバッファー条件における抗体1F8/抗原相互作用の速度因子(VF = ka(37℃)/ka(13℃))を示すマトリックス。すべての相互作用は、KCl濃度を変え、異なるpH値としつつPBS中で測定した。したがって抗体1F8は図9の第1セグメントに収まるであろう。

【0068】
本明細書で報告する方法により選択された抗体は、組み換え産生することができる。抗体の組み換え産生法は当技術分野で公知であり、原核および真核細胞におけるタンパク質発現ならびにそれに続く抗体の単離および通常は薬学的に許容出来る純度への精製を含む。上記の抗体の宿主細胞中での発現に関して、軽鎖および重鎖の各々をコードする核酸は標準的な方法により発現ベクターに挿入することができる。発現は、CHO細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、HEK293細胞、COS細胞、PER.C6(R)細胞、酵母または大腸菌(E. coli)細胞のような適当な原核または真核宿主細胞において行うことができ、抗体を細胞(上清または溶解後の細胞)から回収することができる。抗体の組み換え産生の一般的方法は当技術分野で周知であり、例えば、Makrides, S. C., Protein Expr. Purif. 17 (1999) 183-202; Geisse, S., et al., Protein Expr. Purif. 8 (1996) 271-282; Kaufman, R. J., Mol. Biotechnol. 16 (2000) 151-160; Werner, R. G., Drug Res. 48 (1998) 870-880のレビュー記事に記載されている。
【0069】
本願において使用する用語「宿主細胞」は、本発明に従い抗体を生成するよう操作することのできる任意の種の細胞系を表す。一つの態様において、HEK293細胞およびCHO細胞が宿主細胞として使用される。本明細書において使用する場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という表現は、相互に置換可能に使用され、このような表示はすべて、その子孫を包含する。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」という語は、その初代対象細胞および、継代数に関係なく、その細胞由来の培養物を包含する。また、意図的なまたは意図しない変異により、すべての子孫がDNA内容に関して完全に同一ではない可能性があることを理解されたい。オリジナルの形質転換細胞において選択されたのと同じ機能または生物学的活性を有する変種の子孫も包含されるのである。
【0070】
NS0細胞中での発現は、例えば、Barnes, L. M., et al., Cytotechnology 32 (2000) 109-123; Barnes, L. M., et al., Biotech. Bioeng. 73 (2001) 261-270に記載されている。一過的発現は、例えば、Durocher, Y., et al., Nucl. Acids Res. 30 (2002) E9に記載されている。可変ドメインのクローニングは、Orlandi, R., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 (1989) 3833-3837; Carter, P., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1992) 4285-4289; およびNorderhaug, L., et al., J. Immunol. Methods 204 (1997) 77-87に記載されている。一過的発現系(HEK293)は、Cytotechnology 30 (1999) 71-83の中でSchlaeger, E. -J., and Christensen, K.によって、およびJ. Immunol. Methods 194 (1996) 191-199の中でSchlaeger, E. -J.によって報告されている。
【0071】
用語「特異的に結合」は、解離定数(= KDiss)が少なくとも10-8 mol/l以下、すなわち10-9 mol/lまたは10-8〜10-13 mol/lの範囲の抗体またはFabフラグメントの結合を表す。
【0072】
以下の実施例および図面は本発明の理解を助ける目的で提供されるものであり、本発明の真の範囲は添付の特許請求の範囲に示されている。本発明の意図から逸脱することなく示される手法に改変を加えることができることを理解されたい。
【実施例】
【0073】
実施例1
マウスの免疫
8〜12週齢のBalb/cマウスを、完全フロイントアジュバント中にKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)融合体として配合した100μgの抗原による腹腔内免疫に供した。
【0074】
免疫は、最初のブースト、最初のブーストの6週後、10週後および14週後、の4回行った。二回目および三回目の免疫は、不完全フロイントアジュバントを用いて行った。最後のブーストは、ハイブリドーマ融合を行う3日前に、100μgの抗原を用いi.v.で行った。ハイブリドーマ初代培養物の作製は、Kohler and Milstein(Kohler, G., et al., Nature 256 (1975) 495-497)に従い行った。ハイブリドーマを限界希釈により96ウェルマイクロタイタープレート(MTP)に単離し、製造元のマニュアルに従うELISA法により抗原結合についてスクリーニングした。ELISAにおける抗原結合によりポジティブな着色を示した初代ハイブリドーマ細胞培養物をカイネティクススクリーニングプロセスに移行させた。
【0075】
実施例2
CM5センサーチップの準備
ソフトウェアV.1.1制御のBIAcore A100システムを以下のように準備した:BIAcore CM5センサー(シリーズS)をシステムに取り付け、製造元の推奨に従い流体力学的に設定した。
【0076】
マウス抗体を分析する場合、ポリクローナルウサギ抗IgG抗体<IgGFCγM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてフローセルに固定した。
【0077】
ヒトキメラまたは完全ヒト化抗体を用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体pAb<h-IgG,Fcg-Frag>G-IgG(IS)(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0078】
マウスIgG FabまたはFab'2フラグメントを用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体<MFab>G-IgG(IS)(Bethyl L. Cat. No. A90-100A-5 v.9.8.2000)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0079】
ヒトまたはヒト化IgG FabまたはFab'2フラグメントを用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体<huFab'2>G-IgG(Jackson Immuno Research Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0080】
実施例3
初代ハイブリドーマ培養上清のカイネティクスクリーニング
実施例1で行った異なる免疫刺激由来のハイブリドーマ培養上清を以下のとおりに処理した。
【0081】
実施例2で得たセンサーチップのスポット2および4を参照として使用した(1-2、5-4)。抗体をセンサー表面に捕捉するため、ハイブリドーマ培養上清を、ランニングバッファーHBS-EP(10mM HEPES pH 7.4、150mM NaCl、1mM EDTA、0.05% P20、BIAcore)で1:5希釈し、30μl/分で1分間注入した。その後、各抗原を、会合時間2〜3分の間、30μl/分で注入した。解離フェーズを5〜15分間モニターした。最後に、100mMリン酸の2分間の注入により表面を再生させた。
【0082】
センサーは、抗体の捕捉および再生のサイクルを繰り返すことにより事前調整した。
【0083】
初代ハイブリドーマの選択には以下の手順を用いた:結合終点(BL)の参照点は、抗原注入の終了直前に設定した。安定終点(SL)の参照点は、複合体解離フェーズの終了直前に設定した。BLおよびSLのデータをグラフ表示した(図1)。これらのデータを使用し、式(XIV):
(XIV)(1 - [BL(RU) - SL(RU)/BL(RU)])
を用いて抗原複合体の安定性を算出した(図2を参照のこと)。例えば、丸で囲まれたデータスポットは十分な抗原反応シグナルおよび100%の複合体安定性を示し、四角で囲まれたデータスポットは不十分な抗原反応を示す。
【0084】
このようにして、抗原反応シグナルおよび複合体安定性に基づき上位10%のハイブリドーマを選択した。
【0085】
実施例4
ハイブリドーマのクローニングおよび抗体の生成
実施例3に従い選択した抗体産生ハイブリドーマ初代培養物を、コントロールソフトウェアV4.1.2の下でセルソーターFACSAria(Becton Dickinson)を用いてサブクローニングした。捕集した単クローンを24ウェルプレート中でさらなる増殖のために適当な条件下でインキュベートし、続いて、製造元の指示に従うELISA法を用いて溶液中の抗体濃度を測定した後、実施例5に従う熱力学的スクリーニングプロセスに移した。
【0086】
実施例5
熱力学的スクリーニング
選択した抗体を、抗原・抗体複合体の熱安定性を測定するためおよび熱力学的特性を算出するために温度依存的なカイネティクスの測定を行う熱力学的スクリーニングによって特徴づけた。
【0087】
CM5センサーシリーズSを、コントロールソフトウェアV1.1.1下で動作しているBIAcore T100システムに取り付け、0.1% SDS、50mM NaOH、10mM HClおよび100mM H3PO4を含有する混合物を100μl/分で1分間注入することにより事前調整した。
【0088】
マウス抗体を分析する場合、ポリクローナルウサギ抗IgG抗体<IgGFCgammaM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてフローセルに固定した。
【0089】
ヒトキメラまたは完全ヒト化抗体を用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体pAb<h-IgG,Fcg-Frag>G-IgG(IS)(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0090】
マウスIgG FabまたはFab'2フラグメントを用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体<MFab>G-IgG(IS)(Bethyl L. Cat. No. A90-100A-5 v.9.8.2000)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0091】
ヒトまたはヒト化IgG FabまたはFab'2フラグメントを用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体<huFab'2>G-IgG(Jackson Immuno Research Laboratories, Inc)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0092】
異なる温度で同様の二次抗体反応レベルを達成するよう、参照抗体の濃度値を調節した。
【0093】
異なる温度でのカイネティクスの測定を20μl/分で行い、流速をそれぞれ30μl/分、50μl/分、100μl/分とした。抗原のサンプル注入は、複合体の会合フェーズ中にリガンドの飽和または結合平衡への到達が達成されるよう、それぞれ30秒間、90秒間、180秒間または他の適当な注入時間行った(図4aを参照のこと)。解離速度は、最初に最大300秒間、およびさらに15分間モニターした(図4bを参照のこと)。抗原の注入は、少なくとも5つの濃度の異なる濃度ステップで繰り返した。アッセイの再現性を管理するため、対照として一つの濃度ステップを二度分析した。フローセル1は参照として用いた。抗原注入の代わりにバッファー注入を使用し、バッファーシグナルの減算によるデータの二重参照を行った。捕捉システムは、100mM H3PO4を100μl/分で2分間注入することにより再生した。13℃、17℃および21℃においても量的な表面再生が確実になされるよう、再生手順を最適化した。これらの温度では、再生溶液を三回注入し、25℃、29℃、33℃および37℃では再生溶液を一回注入した。
【0094】
得られたデータを1:1 二成分ラングミュア相互作用モデルに従い評価し、異なる温度における会合速度定数ka[l/Ms]、解離速度定数kd[l/s]および生じた親和性定数KD[M]を算出した。熱力学的平衡データを、線形形式のファントホッフ式に従い算出した。遷移状態の熱力学をBIAcore T100評価ソフトウェアV.1.1.1またはプログラムOrigin 7SRI v.7.0300を用いてアイリングおよびアレニウスの式に従い算出した。
【0095】
実施例6
RUMAX値を均一にする調整の効果についての実施例
BIAcore T100デバイスにCM5シリーズS BIAcoreセンサーを取り付け、6000 RUの<IgGFCyM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc., USA)を製造元の指示に従い各フローセルに固定した。非最適化実験では、HBS-EPバッファー(0.05% P20)中、40nMの捕捉抗体を20μl/分で使用した。サンプルバッファーは1 mg/ml CMD(カルボキシメチルデキストラン)を補充したシステムバッファーとした。
【0096】
抗原は、1.2nM、4nM、11nM、33nM、100nMおよび300nMの6つの濃度ステップで、二次抗体の捕捉後に注入し、11nMを二重対照として使用し、0nMを参照として使用した。抗原は会合2分間の間100μl/分で注入し、解離を5分間とし、その後に30μl/分で15分間のHBS-EP洗浄および3μl/分で3分間の10 mMグリシンpH 1.7による再生を行った。濃度依存的な測定を、4℃、11℃、18℃、25℃、32℃および40℃で行った。
【0097】
最適化システムでは、捕捉される抗体を15℃で100nM、20℃で80nM、25℃で60nM、30℃で50nM、35℃で40nMおよび40℃で40nMの異なる濃度ステップで3分の会合時間の間注入したことを除いて上記と同様のものを使用した。
【0098】
最後に、BIAcore評価ソフトウェアを用いてカイネティクスおよび熱力学を測定した。
【0099】
実施例7
速度因子の測定および算出
CM5センサーシリーズSをBIAcore T100システムに取り付けた。
【0100】
マウス抗体を使用する場合、ポリクローナルウサギ抗IgG抗体<IgGFCyM>R(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてフローセルに固定した。
【0101】
ヒトキメラまたは完全ヒト化抗体を用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体pAb<h-IgG,Fcg-Frag>G-IgG(IS)(Jackson ImmunoResearch Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0102】
マウスIgG FabまたはFab'2フラグメントを用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体<MFab>G-IgG(IS)(Bethyl L. Cat. No. A90-100A-5 v.9.8.2000)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0103】
ヒトまたはヒト化IgG FabまたはFab'2フラグメントを用いる場合、ポリクローナルヤギ抗体<huFab'2>G-IgG(Jackson Immuno Research Laboratories, Inc.)を製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じてすべてのフローセルに固定した。
【0104】
サンプルバッファーは、非特異的なセンサーマトリックス効果を減らすため、1 mg/mlカルボキシメチルデキストランを補充したシステムバッファーとした。13℃〜37℃の温度勾配におけるカイネティクスの測定は、100μl/分で行った。
【0105】
組み換え合成ヒト全長抗原1、組み換えヒト抗原2(10kDa)、組み換えヒト抗原3ヒトFC-キメラ(R & D Systems、160kDa)、組み換えヒト抗原4(29 kDa)または組み換えヒト抗原5(72kDa)の分析物注入は、180秒間行った。解離速度は最大900秒間モニターした。抗原の注入は、少なくとも5つの濃度の異なる濃度ステップで繰り返した。アッセイの再現性を管理するため、対照として一つの濃度ステップを二度分析した。フローセル1は参照として用いた。抗原注入の代わりにバッファーのブランク注入を使用し、バッファーシグナルの減算によるデータの二重参照を行った。
【0106】
各アッセイの前に、センサー表面に設置されている各抗体の滴定実験により、13℃〜37℃の温度範囲におけるRUMAX値の均一化の調整を行った(温度依存的な滴定実験について詳細に記載されている節を参照のこと)。カイネティクスは、13℃、17℃、21℃、25℃、29℃、33℃および37℃の温度勾配で測定した。捕捉システムは、30μl/分で15秒間のHBS-ETバッファーによるバッファー洗浄により再生し、その後、30μl/分で15秒間の10mMグリシン pH 1.5、それに続くpH 1.7の10mMグリシンの1分間の注入および30秒間の注入により再生した。
【0107】
得られたデータを1:1 二成分ラングミュア相互作用モデルに従い評価し、各温度における会合速度定数ka[l/Ms]、解離速度定数kd[l/s]および生じた親和性定数KD[M]を算出した。熱力学的平衡データを、線形形式および非線形形式のファントホッフ式に従い算出した。遷移状態の熱力学は、BIAcore T100評価ソフトウェアV.1.1.1を用いてアイリングおよびアレニウスの式に従い算出した。画像評価は、Origin 7SRI v.7.0300を用いて行った。
【0108】
速度因子(VF)は、37℃および13℃での抗原複合体会合速度ka(1/Ms)の商として算出した。指数会合フィッティング曲線y = y0 + A1*(1-exp(-x/t1)) + A2*(1-exp(-x/t2))を使用した。
【0109】
実施例8
高スループット速度因子分析
CM5センサーシリーズSをBIAcore A100システムに取り付け、検出スポットを製造元の指示に従い流体力学的に設置した。
【0110】
ポリクローナルウサギIgG抗体<IgGFCyM>R(Jackson ImmunoResearch Labratories, Inc.)を、各フローセルの検出スポット1および5に4kRUで固定した。800RUの<IgGFCyM>Rを、各フローセルのスポット2および4に固定した。カップリングは、製造元の指示に従いEDC/NHS化学反応を通じて行った。サンプルバッファーは、非特異的なセンサーマトリックス効果を減らすため、1 mg/mlカルボキシメチルデキストランを補充したシステムバッファーとした。
【0111】
基本バッファーシステムはPBS(リン酸緩衝生理食塩水)とした。このバッファーを、4つの異なるpH条件:pH 6.8、pH 7.0、pH 7.4およびpH 7.8ならびに4つの異なるKCl濃度:2.7mM、54mM、162mMおよび324mMに調整した。16の異なるサンプルバッファー条件を試験した。
【0112】
捕捉させるmAbは、その後の抗原相互作用の測定においてRUMAX値が均一になるよう、37℃における60nMから13℃における240nMの間の異なる濃度ステップで、10μl/分、1分間注射した。
【0113】
13℃〜37℃の温度勾配におけるカイネティクスの測定は、30μl/分で行った。組み換えヒト抗原1〜84(9.4kDa)の分析物注入は180秒間行った。解離速度は600秒間モニターした。抗原注入は、60nMおよび240nMの二つの濃度ステップで繰り返した。抗原注入の代わりにバッファーのブランク注入を使用し、バッファーシグナルの減算によるデータの二重参照を行った。
【0114】
捕捉システムは、30μl/分のHBS-ETバッファーによる15秒間のバッファー洗浄により再生し、その後、30μl/分で90秒間の10mMグリシン pH 1.5、それに続く同バッファーの30秒間×2の注入により再生した。
【0115】
得られたカイネティクスデータは、二つの抗原濃度を使用するだけでカイネティクスを算出できるよう二つの異なるリガンド密度のセンサーマトリックスを用いる「2 over 2」カイネティクスモデルに従い評価した。各温度における会合速度定数ka[l/Ms]、解離速度定数kd[l/s]および生じた親和性定数KD[M]を、BIAcore A100評価ソフトウェア 1.1を用いて算出した。
【0116】
熱力学的平衡データは、線形形式のファントホッフ式に従いカイネティクスデータから算出した。遷移状態の熱力学は、エクセルを用いてアイリング式に従い算出した。画像評価は、Origin 7SRI v.7.0300を用いて行った。会合フェーズの速度因子(VF)は、37℃および13℃での抗原複合体会合速度ka(1/Ms)の商として算出した。解離速度の速度因子は、13℃および37℃でのkd(l/s)の商として算出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体を得るための方法であって、
a) 多数の抗体を提供する工程、
b) 37℃での各抗体のその抗原に対する会合速度定数および13℃での各抗体のその抗原に対する会合速度定数を測定する工程、
c) 13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比を算出する工程、
d) 比が10以下の抗体を選択し、それによって抗体を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記測定する工程が、表面プラズモン共鳴を用いる点で特徴づけられる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記選択が、比を算出しかつΔS゜‡assを測定することによる点で特徴づけられる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
表面プラズモン共鳴において、抗原が表面プラズモン共鳴チップに固定されている点で特徴づけられる、請求項2〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
200 J/mol*K未満のΔS゜‡assを有する抗体が選択される点で特徴づけられる、請求項3または4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
抗体が各々、単一のハイブリドーマまたはB細胞により産生されたものである点で特徴づけられる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも2つの抗原に対する交差反応性を有する抗体を得るための方法であって、
a) 多数の抗体を提供する工程、
b) 37℃での各抗体の抗原に対する会合速度定数および13℃での各抗体の同じ抗原に対する会合速度定数を測定する工程、
c) 13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比を算出する工程、
d) 比が50以上の抗体を選択し、それによって少なくとも2つの抗原に対する交差反応性を有する抗体を得る工程
を含む、方法。
【請求項8】
抗体を産生するための方法であって、
a) 多数の抗体産生細胞を提供する工程、
b) 各抗体産生細胞により産生される各抗体の、抗原に対する37℃および13℃での会合速度定数を測定する工程、
c) 13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比を算出する工程、
d) 比が10以下の抗体を産生する抗体産生細胞を選択する工程、
e) 選択した細胞を培養する工程、
f) 選択し培養した細胞からまたはその培養培地から抗体を回収し、それによって抗体を産生する工程
を含む、方法。
【請求項9】
工程a)の抗体産生細胞が単細胞として捕集される点で特徴づけられる、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記選択前に、捕集された単細胞を培養する追加の工程を包含する点で特徴づけられる、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
ヒト化抗体を得るための方法であって、
a) 親抗体を提供する工程、
b) 該親抗体のヒト化型のセットを提供する工程、
c) 37℃および13℃での各ヒト化抗体型のその抗原に対する会合速度定数を測定する工程、
d) 13℃での会合速度定数に対する37℃での会合速度定数の比を算出する工程、
e) 親抗体の比とヒト化型の比を比較する工程、
f) 親抗体の比の2倍未満の比を有するヒト化型をヒト化抗体として選択し、それによってヒト化抗体を得る工程
を含む、方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか一項記載の方法により得られた抗体の、治療剤または診断剤としての使用。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項記載の方法により得られた抗体を含む、薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−501819(P2013−501819A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525172(P2012−525172)
【出願日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062115
【国際公開番号】WO2011/023623
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】