説明

速読ゲートアンペロメトリ

試料中の分析対象物の濃度を判定するためのセンサシステム、装置及び方法が記載される。シーケンシャルな励起パルス及び緩和の複数のデューティサイクルを含む入力信号が、試料に入力される。励起パルスの入力の300ms以内に試料から出力される1以上の信号は、試料の分析対象物濃度と関連付けられて、分析の正確さ及び/又は精度を改善する。これらのすばやく測定された出力値から試料の分析対象物濃度を判定することは、ヘマトクリット効果、メディエータバックグラウンド、及び他のエラー源から起こる分析エラーを減少させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2007年12月10日出願の米国仮出願番号第61/012,729号、発明の名称“Rapid−read Gated Amperometry”の利益を主張し、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、生体液、たとえば全血、血清、血漿、尿、唾液、間質液、又は細胞内液の分析を提供する。通常、バイオセンサは、センサ片にある試料を分析する測定装置を有する。試料は普通、液体形状であり、生体液であることに加えて、生体液の誘導体、たとえば抽出物、希釈液、ろ過物、又は再構成沈殿物であってもよい。バイオセンサによって行われる分析は、生体液中の1以上の分析対象物、たとえばアルコール、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビン、遊離脂肪酸、トリグリセリド、タンパク質、ケトン、フェニルアラニン又は酵素の存在及び/又は濃度を判定する。分析は、生理学的な異常の診断及び処置に役立つことができる。たとえば、糖尿病患者は、バイオセンサを用いて、食餌及び/又は投薬の調整のために、全血中のグルコースレベルを判定してもよい。
【0003】
バイオセンサは、1以上の分析対象物を分析するように設計されてもよく、異なる試料体積を用いてもよい。いくつかのバイオセンサは、一滴の、たとえば体積0.25〜15マイクロリットル(μL)の全血を分析することができる。バイオセンサは、卓上型、携帯型等の測定装置を用いて実現され得る。携帯型測定装置は、ハンディタイプであってもよく、試料中の1以上の分析対象物の識別及び/又は数量化することを可能にする。携帯型測定装置の例は、Bayer HealthCare、Tarrytown, New YorkのAscensia Breeze(登録商標)及びElite(登録商標)メータを含み、一方、卓上型測定装置の例は、Austin,TexasのCH Instrumentsより入手可能なElectrochemical Workstationを含む。より短い分析時間を提供すると同時に、所望の正確さ及び/又は精度を満たすバイオセンサは、ユーザに実質的な利益を提供する。
【0004】
バイオセンサは、光学的及び/又は電気化学的方法を用いて、試料を分析する。いくつかの光学系では、分析対象物濃度は、光識別可能な種、たとえば分析対象物、又は分析対象物と反応する化学指示薬から形成される反応又は生成物と相互作用するか又はそれによって吸収される光を測定することによって判定される。他の光学系では、化学指示薬は、励起ビームによって照射されたときに、分析対象物に反応して蛍光発光するか又は発光する。光は電気出力信号、たとえば電流又は電位に変換されることができ、これは電気化学的方法からの出力信号に対して同様に処理され得る。いずれの光学系においても、バイオセンサは、光を測定し、それを試料の分析対象物濃度と関連付ける。
【0005】
電気化学バイオセンサでは、分析対象物濃度は、入力信号が試料に与えられたときに分析対象物又は分析対象物に反応する種の酸化還元すなわちレドックス反応によって生成される電気信号から判定される。入力信号は、単一パルス又は多重パルスとして、シーケンス又はサイクルで与えられてもよい。酸化還元酵素、たとえば酵素又は類似種を試料に添加して、レドックス反応中に第1の種から第2の種への電子の移動を向上させることができる。酵素又は類似種は、単一の分析対象物と反応するため、生成された出力信号の一部に特異性を提供する。いくつかの特異な酸化還元酵素及び対応する分析対象物の例を、以下の表1に挙げる。
【表1】

【0006】
メディエータを用いて、酵素の酸化状態を維持してもよい。以下の表2は、酵素と、特異な分析対象物とともに用いられるメディエータとのいくつかの従来の組み合わせを提供する。
【表2】

【0007】
電気化学バイオセンサは普通、センサ片の導電体と接続する電気接点を有する測定装置を含む。導体は、導電材料、たとえば固体金属、金属ペースト、導電性炭素、導電性炭素ペースト、導電性ポリマー等から作られ得る。導電体は通常、試料レザバ内に延びる作用電極、対電極、参照電極及び/又は他の電極に接続する。また、試料レザバ内に1以上の導電体が延びて、電極によって提供されない機能性を提供してもよい。
【0008】
多くのバイオセンサでは、センサ片は、生体の外側、内側、又は部分的に内側で用いられるように適合されてもよい。生体外で用いられる場合、生体液の試料は、センサ片の試料レザバ内に導入される。センサ片は、分析用に試料を導入する前、後又はその最中に測定装置に配置されてもよい。生体の内側又は部分的に内側の場合、センサ片は試料に絶えず浸漬されてもよく、又は試料が断続的に細片に導入されてもよい。センサ片は、多量の試料を部分的に隔離するか、又は試料に対して開放されたレザバを含んでもよい。同様に、試料は、連続的に細片を通って流れるか、又は分析のために中断させてもよい。
【0009】
測定装置は、電気接点を通して、センサ片の導電体に入力信号を与える。導電体は、電極を通して、試料レザバにある試料内に入力信号を運ぶ。分析対象物のレドックス反応は、入力信号に反応して電気出力信号を生成する。細片からの電気出力信号は、電流(アンペロメトリ又はボルタンメトリによって生成される)、電位(ポテンシオメトリ/ガルバノメトリによって生成される)、又は蓄積電荷(クーロメトリによって生成される)であってもよい。測定装置は、出力信号を測定して、生体液中の1以上の分析対象物の存在及び/又は濃度と関連付けるための処理能力を有していてもよい。
【0010】
従来のアンペロメトリでは、センサ片の作用電極及び対電極間に定電位(電圧)が与えられるとき、読み出しパルス中に電流が測定される。測定された電流を用いて、試料中の分析対象物を定量化する。アンペロメトリは、電気化学的に活性であるため測定可能である種が、作用電極で、又はその近くで酸化されているか又は還元されている速度を測定する。バイオセンサのためのアンペロメトリック法の多くの変形が、たとえば米国特許第5,620,579号、5,653,863号、6,153,069号及び6,413,411号に記載されている。
【0011】
従来のアンペロメトリック法の欠点は、電位が与えられた後の電流の非定常状態の性質である。時間に対する電流変化の速度は、最初は非常に速く、基本的な拡散プロセスの性質が変化することに起因して、分析が進むに従って遅くなる。電極表面の、イオン化された測定可能な種の消費率が拡散速度と等しくなるまで、定常電流を得ることができない。このように、定常状態条件に達する前の過渡期の間に電流を測定する従来のアンペロメトリ法は、測定が定常状態期間中になされる場合よりも不正確さを提供する場合がある。
【0012】
バイオセンサの測定性能は、正確さ及び/又は精度によって定義される。正確さ及び/又は精度の増加は、バイオセンサの測定性能の増加を提供する。正確さは、参照分析対象物読み取り値と比較した、バイオセンサの分析対象物読み取り値のバイアスの観点から表されることがあり、より大きなバイアス値はより低い正確さを表し、一方で精度は、平均との関連で、複数の分析対象物読み取り値の間の広がり又は分散の観点から表されることがある。バイアスは、バイオセンサから判定された値と、受け入れられた基準値との差であり、「絶対バイアス」又は「相対バイアス」によって表現される場合がある。絶対バイアスは、mg/dL等の測定単位で表現され得る一方で、相対バイアスは、基準値についての絶対バイアス値のパーセンテージとして表現されることがある。基準値は、基準計器、たとえばYSI Inc., Yellow Springs, Ohioより入手可能なYSI2300 STAT PLUS(商標)によって得られてもよい。
【0013】
多くのバイオセンサは、分析に関連するエラーを修正するための1以上の方法を含む。エラーのある分析から得られる濃度値は、不正確な場合がある。これらの不正確な分析を修正する機能は、得られる濃度値の正確さを増大させ得る。エラー修正システムは、基準試料とは異なる1以上のエラー、たとえば試料ヘマトクリット含有量を補償してもよい。たとえば、従来のバイオセンサは、試料の実際のヘマトクリット含有量にかかわらず、全血試料に対して40%(v/v)のヘマトクリット含有量が推定されるグルコース濃度を報告するように構成され得る。これらのシステムでは、40%を下回るかそれを上回るヘマトクリットを含有する全血試料について行われる任意のグルコース測定は、「ヘマトクリット効果」に起因するエラー又はバイアスを含む。
【0014】
従来の、グルコース濃度を判定するためのバイオセンサのセンサ片では、グルコースは酵素によって酸化させる場合があり、これはその後メディエータに電子を移動させる。この還元型メディエータは、その後作用電極に向かい、ここで電気化学的に酸化される。酸化されるメディエータの量は、センサ片の作用電極と対電極との間を流れる電流と関連付けられ得る。定量的に、作用電極で測定される電流は、メディエータの拡散係数と正比例する。ヘマトクリット効果はこのプロセスを妨害するが、これは赤血球がメディエータの作用電極への拡散を妨げるためである。続いて、ヘマトクリット効果は、試料中のグルコースの量とは関係なく、作用電極で測定された電流の量に影響する。
【0015】
ヘマトクリットバイアスは、基準計器によって得られる基準グルコース濃度と、異なるヘマトクリットレベルを含有する試料用のバイオセンサから得られる、実験によるグルコース読み取り値との間の差を意味する。基準値と、バイオセンサから得られる値との間の差は、特定の全血試料間の変動するヘマトクリットレベルの結果として生じる。
【0016】
ヘマトクリット効果に加えて、測定可能な種の濃度が分析対象物濃度と互いに関連しない場合に測定の不正確さが起こる。たとえば、センサシステムが、分析対象物の酸化に反応して生成される還元型メディエータの濃度を判定する場合、分析対象物の酸化によって生成されないあらゆる還元型メディエータは、センサシステムが、メディエータバックグラウンドに起因して修正されたよりもより多くの分析対象物が試料内に存在することを示すことをもたらす。このように、「メディエータバックグラウンド」は、基本的な分析対象物濃度に反応しない計測可能種に起因する、測定された分析対象物濃度に導入されたバイアスである。
【0017】
これらの1以上の欠点を克服するために、従来のバイオセンサは、センサ片の機械的設計及び試薬の選択に関してのみならず、測定装置が細片に電位を与える方法に関しても、多数の技術を試みてきた。たとえば、アンペロメトリックセンサに対するヘマトクリット効果を減少させる従来の方法は、米国特許第5,708,247号及び5,951,836号に開示されるようにフィルタの使用、国際公開第WO2001/57510号に開示されるように与えられた電流の極性の反転、および試料固有の耐性を最大限にする方法によることを含む。
【0018】
細片に入力信号を付える多数の方法は、通例はパルス法、シーケンス又はサイクルと呼ばれ、判定された分析対象物濃度の不正確さに対処するために用いられてきた。たとえば、米国特許第4,897,162号では、入力信号は、混合されて三角形状の波を与える、上昇・下降する電圧電位の連続的な付与を含む。さらに、国際公開第WO2004/053476号及び米国特許出願公開第2003/0178322号ならびに第2003/0113933号は、さらに極性を変化させる、上昇・下降する電圧電位の連続的な付与を含む入力信号を記載している。
【0019】
他の従来の方法は、特定の電極構成を、その構成に適合された入力信号と組み合わせている。たとえば、米国特許第5,942,102号は、薄層セルによって提供される特定の電極構成を、連続的パルスと組み合わせて、対電極からの反応性生物が作用電極に達するようにする。この組み合わせを用いて、電流変化対時間が一定になり、それによって、電位ステップの間にメディエータが作用電極と対電極との間を移動する真の定常状態に到達するまで反応を推進させる。これらの方法はそれぞれ、さまざまな利点及び欠点が均衡しているが、いずれも理想的ではない。
【0020】
上記の記載からわかるように、改善されたバイオセンサ、特に分析対象物のよりいっそう正確な判定をより短時間で提供することができるものに対する継続的な要望がある。本発明のシステム、装置及び方法は、従来のシステムに関連する欠点の少なくとも1つを克服する。
【発明の概要】
【0021】
試料中の分析対象物の濃度を判定する方法が提供され、入力信号を試料に与えることを含み、入力信号は、180秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを有し、各デューティサイクルは励起パルス及び緩和を有する。測定可能種に反応する出力信号は、少なくとも1つのデューティサイクルの励起パルスの付与の300ミリ秒以内に測定される。試料中の分析対象物の濃度は、測定された出力信号に応じて判定される。デューティサイクルのそれぞれは、その間に電流が記録され得る固定された電位での励起と、緩和とを含む。パルスシーケンスは、端子読み出しパルスを含んでもよく、拡散隔壁層を含むセンサ片に与えられてもよい。判定された分析対象物濃度は、300ミリ秒以内の出力信号測定が欠如している同じ又は別の方法よりも、メディエータバックグラウンドに起因するバイアスがより少ないことを含む場合がある。入力信号のデューティサイクルの励起パルス中に定常状態に到達しない場合、一時的な過渡的電流データの使用を通して分析対象物の濃度が判定されてもよい。測定された電流にデータ処理が施されて、試料中の分析対象物の濃度が判定されてもよい。
【0022】
試料中の分析対象物の濃度を判定するための、センサ片を受けるために適合されたハンディ型測定装置が提供される。装置は、接点と、少なくとも1つのディスプレイと、接点とディスプレイとの間の電気的通信を確立する電気回路とを含む。回路は、電気チャージャとプロセッサとを含み、プロセッサは、記憶媒体と電気的に通信する。媒体は、コンピュータ可読ソフトウェアコードを含み、プロセッサによって実行されたときに、ソフトウェアコードはチャージャに、180秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号を接点間で実施させる。各デューティサイクルは、励起及び緩和を含む。プロセッサは、チャージャの励起付与の300ミリ秒以内に少なくとも2つの接点で、少なくとも1つの電流値を測定するように動作可能である。プロセッサはさらに、少なくとも1つの電流値に応じて、生体液中の分析対象物を判定するように動作可能である。
【0023】
試料中の分析対象物濃度を判定するためのバイオセンサシステムが提供される。システムは、細片によって形成されたレザバに近接した試料インターフェイスを有するセンサ片と、センサインターフェイスに接続されたプロセッサを有する測定装置とを含む。センサインターフェイスは試料インターフェイスと電気的に通信し、プロセッサは記憶媒体と電気的に通信する。プロセッサは、試料インターフェイスへの励起パルスの付与の300ミリ秒以内に、センサインターフェイスからの試料中の分析対象物濃度に応じて、出力信号値を判定する。励起パルスは、10秒以内の少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号の一部であり、各デューティサイクルは励起及び緩和を含む。
【0024】
試料中の分析対象物の濃度の判定における、ヘマトクリット効果に起因するバイアスを低減させる方法が提供され、試料に、180秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号を与えることとを含む。試料中の分析対象物の濃度が判定される出力信号は、励起パルスの付与の300ミリ秒以内に記録される。
【0025】
本発明は、以下の図面及び記載を参照して、よりよく理解され得る。図中の構成要素は、必ずしも原寸に比例しておらず、むしろ本発明の原理を図示することが重視されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】試料中の分析対象物の存在及び/又は濃度を判定するための、電気化学的分析方法を表す。
【図2】ゲートアンペロメトリ入力信号から生成された出力信号を図示するグラフである。
【図3A】図2に表された7つのパルスそれぞれから測定された3つの電流値それぞれから判定された分析対象物濃度に存在するヘマトクリットバイアスを示す。
【図3B】50、100及び400mg/dLのグルコースを含む試料のヘマトクリットバイアススパンを示す。
【図4】複数の全血試料に対する、図3AのP5からの第1及び第3の電流値のヘマトクリットバイアスを示す。
【図5】試料中の分析対象物濃度を判定するバイオセンサの概略図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
国際公開第WO2007/013915号、発明の名称“Gated Amperometry”では、パルス入力信号を用いて、試料中の分析対象物を分析する。入力信号は、交互の励起及び緩和期間を含む。本発明は、パルス入力信号からの出力信号を分析して、たとえばメディエータバックグラウンド及びヘマトクリット効果から生じるバイアスを低減させるシステム及び方法に関する。励起パルスの開始300ms以内に測定された出力信号値を相関させることによって、分析の正確さ及び/又は精度が改善され得る。
【0028】
図1は、試料中の分析対象物の存在及び/又は濃度を判定するための、電気化学分析100を表す。110では、試料がバイオセンサに導入される。120では、試料中の分析対象物の一部がレドックス反応を受ける。130では、電子が分析対象物からメディエータに任意的に移動される。140では、測定可能種が入力信号によって電気化学的に励起される。150では、出力信号が生成されて測定される。160では、試料が緩和することが可能になり、170では、さらなる励起パルスが入力される。180では、出力信号から試料の存在及び/又は濃度が判定され、190では、濃度が表示され、記憶される等され得る。
【0029】
110では、バイオセンサ、たとえばセンサ片のセンサ部分に試料が導入される。センサ片は、少なくとも1つの作用電極及び少なくとも1つの対電極を含む。電極は、1以上の試薬層を含んでもよい。作用電極は、試薬層と一体化しているか、又は試薬層とは別の拡散障壁層を含んでもよい。作用電極が別個の拡散障壁層を含む場合、試薬層は、拡散障壁層上に配置されてもよいか又は配置されなくてもよい。
【0030】
拡散障壁層は、測定可能種が滞留し得る内部体積を有する多孔質空間を提供する。拡散障壁層の細孔は、測定可能種が拡散障壁層内に拡散し得る一方で、物理的により大きな試料成分、たとえば赤血球が実質的に除外されるように選択されてもよい。従来のセンサ片は、さまざまな材料を用いて、作用電極の表面から赤血球をろ過しているが、拡散障壁層は、内部多孔質空間を提供して、試料から測定可能種の一部を収容して隔離する。拡散障壁層のより詳細な処置は、米国特許出願公開第2007/0246357号に見出すことができる。
【0031】
図1の120では、試料中に存在する分析対象物の一部が、たとえば酸素還元酵素によって、化学的又は生化学的に酸化又は還元される。このことは、試料が試薬を水和させるときに生じる。酸化又は還元の際、130において電子は、任意的には分析対象物とメディエータとの間を移動し得る。このように、イオン化された測定可能種が、たとえば分析対象物又はメディエータから形成される。試薬に初期時間遅延、すなわち「インキュベーション期間」を与えて、分析対象物と反応させることが有益である場合がある。好ましくは、初期時間遅延は1〜10秒であってもよい。初期時間遅延のより詳細な処置は、米国特許第5,620,579号及び5,653,863号に見出すことができる。
【0032】
図1の140では、測定可能種は、120からの帯電させた分析対象物又は130からの帯電させたメディエータであってもよく、入力信号によって電気化学的に励起(酸化又は還元)される。入力信号は、電気信号、たとえば電流又は電位であってもよく、設定されたシーケンスでパルスを発するか又はオンオフする。入力信号は、緩和によって切り離された励起パルスのシーケンスである。アンペロメトリックパルスの間、励起中に付与された電位は、好ましくはその期間全体にわたって実質的に一定の電圧及び極性で付与される。これは、データ記録中に複数の電位及び/又は極性を介して電圧が変化するか又は「掃引される」いくつかの従来の励起とはまさに対称をなす。
【0033】
緩和の間、電気信号はオフになる。オフは、電気信号が存在しない期間を含み、好ましくは電気信号が存在するが本質的に振幅を有さない期間を含まない。電気信号は、電気回路を開閉することによって、オンとオフとの間でそれぞれ切り替えられてもよい。電気回路は、機械的、電気的又は他の方法によって開閉されてもよい。
【0034】
入力信号は、1以上のパルス間隔を有していてもよい。パルス間隔は、パルスと、デューティサイクルを構成する緩和との合計である。各パルスは、振幅及び幅を有する。振幅は、電気信号の電位、電流等の強度を示す。振幅は、たとえばアンペロメトリの間、パルスの間、変動するか又は実質的に一定であってもよい。パルス幅は、パルスの継続時間である。入力信号におけるパルス幅は、変動するか又は実質的に同じであってもよい。各緩和は緩和幅を有し、これは緩和の継続時間である。入力信号における緩和幅は、変動するか又は実質的に同じであってもよい。
【0035】
デューティサイクルの励起及び緩和の幅を調整することによって、ゲート入力信号は、分析の正確さ及び/又は精度を増大させ得る。任意の特定の理論にとらわれることは望まないが、この正確さ及び/又は精度の増大は、作用電極で励起された測定可能種の、拡散障壁層の内部からの取り出しに起因する可能性がある。赤血球及び他の試料成分のために拡散速度の変動を有している場合がある拡散障壁層外の測定可能種とは対照的に、拡散障壁層内の測定可能種は、導体に対して比較的一定の拡散速度を有している場合がある。たとえば、そして米国特許出願公開第2007/0246357号、発明の名称「Concentration Determination in a Diffusion Barrier Layer」に記載されるように、パルス幅は、拡散障壁層に対する測定可能種の励起を実質的に制限するように選択されてもよい。
【0036】
好ましい入力信号は、30、10又は5秒未満の間に適用される、少なくとも3、4、6、8又は10のデューティサイクルを含む。より好ましくは、少なくとも3つのデューティサイクルが10秒以内に適用される。7秒未満で適用される少なくとも4つのデューティサイクルを含む入力信号は、現在特に好ましい。好ましくは、各励起パルスの幅は、0.1〜2秒の間から、より好ましくは0.2〜1秒の間から独立して選択される。現在、特に好ましい入力信号パルス幅は、0.3〜0.8秒の間から独立して選択される。好ましいパルス間隔は、3、2.5又は1.5秒未満の範囲である。現在、0.3〜0.5秒のパルス幅と、0.7〜2秒のパルス間隔とを有する入力信号が特に好ましい。入力信号は、他のパルス幅及び間隔を有していてもよい。
【0037】
図1の150では、バイオセンサは、測定可能種及び入力信号に反応して出力信号を生成する。出力信号、たとえば1以上の電流値は、連続的又は断続的に測定されてもよく、また時間の関数として記録されてもよい。出力信号は、最初に減衰するもの、増大した後に減衰するもの、定常状態に到達するもの、及び過渡的なものを含んでもよい。定常状態の電流は、時間に対する電流の変化が実質的に一定である、たとえば±10又は±5%以内である場合に観察される。従来の定常状態の又はゆっくりと減衰する電流の代わりに、一時的な(急速に減衰する)電流値がパルス入力信号から得られてもよい。
【0038】
図2は、ゲートアンペロメトリック入力信号から生成された出力信号を図示するグラフである。時間に応じてグラフ化される場合、各励起パルスは結果として、減衰する初期高電流値を有する過渡的な減衰プロファイルをもたらす。バイオセンサによって与えられた入力信号には、8つのパルス及び7つの緩和、合計7つのデューティサイクルが含まれていた。図2は、第1のデューティサイクルを省略し、8つのパルスに続いて緩和がなかったことを示す。パルスは約200mVで与えられ、パルス幅約0.4秒を有していた。デューティサイクルのパルス間隔は約1.4秒であり、約1秒の緩和幅を提供した。矩形波パルスが用いられていたが、センサシステム及び試験試料に適合する他の波形を用いてもよい。
【0039】
バイオセンサは、図2の各パルスの間に出力信号を断続的に測定し、記憶装置に3つの電流値を記録した。出力信号値は、各パルス開始後約125msに始まる、約125ミリ秒(ms)の間隔で記録された。連続する記録の間の間隔は、同じでもよく、又は異なっていてもよい。図2では、出力信号からの3つの電流値が記録されて、パルス番号及び添え字による測定番号を示す文字Iで標識付けされた。このようにして、第5のパルスに対して測定された第3の電流値は、i5、3として標識付けされる。
【0040】
図3Aは、図2に示された7つのパルスそれぞれから測定された3つの電流値それぞれから判定された、分析対象物濃度値に存在するヘマトクリットバイアスを示し、より大きなヘマトクリットエラーが、Y軸上のより大きな絶対数値によって表現される。パルスごとに、第1の電流値は3つの値の最小ヘマトクリットバイアスを示し、第1及び第3の値の間のバイアス差が、続くパルスごとにより大きくなった。また、測定電流間のより低い平均ヘマトクリットバイアスが、続くパルスごとに観察されたが、さらなるパルスがそれぞれ分析の長さを延長させた。このように、P8からの電流値がヘマトクリットエラーをほぼ含まなかった一方で、P5からの第1の電流値は、ヘマトクリットエラーと分析時間との間の好ましいバランスを提供することができる。さらに興味深いのは、P5について測定された第1の電流値が、3秒よりも後に取得されたP8からの第3の電流値とほぼ同じヘマトクリットエラーを有していた。これらの結果は、パルス幅の初めに測定された電流値が、最小ヘマトクリットエラーを含むことを立証する。
【0041】
図3Bは、50、100及び400mg/dLのグルコースを含む試料のヘマトクリットバイアススパンを示し、よりY軸上の大きなスパンがより大きなヘマトクリットエラーを表現する。図3Aにあるように、第1の電流値は、各パルス中に測定された4つの電流値の最小ヘマトクリットバイアスを示し、第1及び第4の値の間のバイアス差は、続くパルスごとにより大きくなった。パルスごとに測定された第1の電流値中の予想外に低いヘマトクリットバイアスは、より高いグルコース濃度レベル400mg/dLでより顕著であった。このように、減衰の初期においてなされる電流測定から得られる正確さの改善は、全血試料のグルコース濃度の増大にしたがって向上した。
【0042】
図4は、変動するヘマトクリット及びグルコース含有量を含む複数の全血試料の、図3AのP5からの第1及び第3の電流値のヘマトクリットバイアスを示す。第1の電流値i5,1が0.18のR相関を示した一方で、第3の電流値i5,1は、R相関0.08と、50%を超える減少を示した。減衰の初期に取られた電流値から得られた改善された分析対象物濃度の正確さは予想外であり、減衰の後半の定常状態部分でなされた測定から正確さが達成されるという従来の教示とちょうど正反対である。これらの結果は、改善された正確さ及び/又は精度が、減衰の急速に変化する一時的部分の初期でなされた測定から得られる場合があることを反直感的に立証する。
【0043】
好ましくは、分析対象物濃度を判定するための出力電流値は、励起パルス付与の300ms未満で測定される。より好ましくは、試料の分析対象物濃度を判定するために用いられる出力電流値は、励起パルス付与から175ms未満又はパルス付与の10〜150ms以内で測定される。よりさらに好ましくは、分析対象物濃度を判定するための出力電流値は、励起パルス付与の30〜150ms以内で測定される。現在は、励起パルス付与の60〜150ms以内で測定された出力電流値から分析対象物の濃度を判定することが特に好ましい。好ましくは、分析対象物出力電流値を測定して、試料中の分析対象物の濃度を判定するためのパルスは、初期励起パルスを11秒またはそれ以下以内与えること、より好ましくは、初期パルスを7秒以下以内与えることが適用される。
【0044】
図1の160では、試料は緩和を受ける。測定装置は、センサ片を通して回路を開き、これにより緩和が可能になる。緩和160の間、励起140中に存在する電流は、実質的に少なくとも2分の1に、好ましくは一桁に、より好ましくはゼロに減少する。好ましくは、ゼロ電流状態は、開回路又は実質的にゼロ電流を提供するための当業者に周知の他の方法によって提供される。好ましくは、出力信号は、緩和160の間は記録されない。
【0045】
緩和160の間、イオン化剤、たとえば酸化還元酵素は、分析対象物と反応して、電位の影響を受けずにさらなる測定可能種を生成することがある。たとえば、グルコースオキシダーゼ及び試薬としてのフェリシアン化物メディエータを含むグルコースバイオセンサは、緩和160中に電位の干渉を受けることなく、試料の分析対象物濃度に反応して、さらなるフェロシアン化物(還元メディエータ)を生じさせる。
【0046】
図1の170では、バイオセンサは所望の期間中、作用電極及び対電極に入力信号からのパルスを付与し続ける。励起140及び緩和160を含むデューティサイクルが繰り返されてもよく、又は異なるパルス幅及び/又は間隔を有するデューティサイクルが適用されてもよい。
【0047】
図1の180では、バイオセンサが、パルス付与の300ms以内に記録された出力信号値を分析して、試料中の分析対象物の濃度を判定する。さらなる電流、時間及び/又は他の値をさらに分析してもよい。190では、分析対象物濃度値が表示され、後の参照のために記憶され、及び/又はさらなる算出に用いられ得る。
【0048】
図5は、パルス入力信号を用いて生体液試料中の分析対象物濃度を判定するバイオセンサ500の概略的な表示を図示する。バイオセンサ500は、測定装置502とセンサ片504とを含み、これらは卓上装置、携帯型又はハンディ型装置等を含むあらゆる分析機に組み込まれ得る。バイオセンサ500を使用して、グルコース、尿酸、乳酸、コレステロール、ビリルビン等のものを含む分析対象物濃度を判定し得る。特定の構成が示されているが、バイオセンサ500は、さらなる構成要素を有するものを含む他の構成を有していてもよい。
【0049】
センサ片504は、レザバ508と、開口1212を有するチャネル510とを形成するベース506を有する。レザバ508及びチャネル510は、通気孔を有する蓋で覆われていてもよい。レザバ508は、部分的に閉鎖された容積を画定する。レザバ508は、液体試料、たとえば水膨潤性ポリマー又は多孔質のポリマーマトリックスを保持することを補助する組成物を含有していてもよい。試薬は、レザバ508及び/又はチャネル510内に付着させてもよい。試薬は、1以上の酵素、結合剤、メディエータ及び類似した種を含んでもよい。また、センサ片504は、レザバ508に近接して配置された試料インターフェイス514を有していてもよい。試料インターフェイス514は、レザバ508を部分的又は完全に取り囲んでもよい。センサ片504は他の構成を有していてもよい。
【0050】
試料インターフェイス514は、作用電極及び対電極に接続された導体を有する。電極は、実質的に同平面か、又は1より多くの平面にあってもよい。電極と蓋との間で、他の分離距離が用いられてもよい。電極は、レザバ508を形成するベース506の表面上に配置されてもよい。電極は、レザバ508内に延びるか又は突出してもよい。誘電層が、導体及び/又は電極を部分的に覆ってもよい。試料インターフェイス514は、他の電極及び導体を有していてもよい。
【0051】
測定装置502は、センサインターフェイス518及びディスプレイ520に接続された電気回路516を含む。電気回路516は、信号発生器524と、任意的の温度センサ526と、記憶媒体528とに接続されたプロセッサ522を含む。
【0052】
信号発生器524は、プロセッサ522に応答してセンサインターフェイス518に電気入力信号を提供する。電気入力信号は、センサインターフェイス518によって試料インターフェイス514に送信されて、生体液試料に電気入力信号を与えることができる。電気入力信号は、電位又は電流であってもよく、一定、可変、又は、たとえばAC信号がDC信号オフセットとともに付与される場合のようにそれらの組み合わせであってもよい。電気入力信号は、単一パルス又は多重パルス、シーケンス又はサイクルとして付与されてもよい。また、信号発生器524は、センサインターフェイスからの出力信号を、発生器−記録器として記録する。
【0053】
任意的の温度センサ526は、センサ片504のレザバ内の試料の温度を判定する。試料の温度は、測定されるか、出力信号から算出されるか、又は周囲温度又はバイオセンサシステムに組み込まれている装置の温度の測定値と同じか又はほぼ同じであると仮定されてもよい。サーミスタ、温度計、又は他の温度検知装置を用いて温度を測定してもよい。他の手法を用いて試料温度を判定してもよい。
【0054】
記憶媒体528は、磁気、光学、又は半導体メモリ、別の記憶装置等であってもよい。記憶媒体528は、固定された記憶装置、メモリカード等の着脱可能な記憶装置、遠隔アクセスされるもの等であってもよい。
【0055】
プロセッサ522は、記憶媒体528に記憶されたコンピュータ可読ソフトウェアコード及びデータを用いて、分析対象物分析及びデータ処理を実施する。プロセッサ522は、センサインターフェイス518にセンサ片504が存在することに反応して、センサ片504への試料の付与で、ユーザ入力に反応して等によって、分析対象物の分析を開始してもよい。プロセッサ522は、信号発生器524が、センサインターフェイス518に電気入力信号を提供するよう指示する。プロセッサ522は、任意の温度センサ526からの試料温度を受信してもよい。プロセッサ522は、センサインターフェイス518からの出力信号を受信する。出力信号は、試料中の分析対象物のレドックス反応に応じて生成される。プロセッサ522は、信号発生器524からの励起パルスの付与の300ms以内に出力信号を測定する。出力信号は、プロセッサ522内の1以上の相関式を用いて、試料の分析対象物濃度と関連付けられる。分析対象物の分析結果は、ディスプレイ520に出力されてもよく、記憶媒体528に記憶されてもよい。
【0056】
分析対象物濃度及び出力信号に関する相関式は、グラフィカルに、数学的に、又はそれらの組み合わせ等で表現されてもよい。相関式は、記憶媒体528に記憶されたプログラム番号(PNA)表、別のルックアップ表等によって表現されてもよい。分析対象物の分析の実施に関する命令は、記憶媒体528に記憶されたコンピュータ可読ソフトウェアコードによって提供されてもよい。コードは、オブジェクトコード、又は本明細書に記載された機能性を記述するか又は制御する任意の他のコードであってもよい。分析対象物の分析からのデータは、プロセッサ522での減衰率、K定数、比率等の判定を含む1以上のデータ処理がされてもよい。
【0057】
センサインターフェイス518は、センサ片504の試料インターフェイス514内の導体と接続するか又は電気的に通信する接点を有する。センサインターフェイス518は、信号発生器524からの電気入力信号を、接点を通して試料インターフェイス514内のコネクタに送信する。また、センサインターフェイス518は、試料からの出力信号を、接点を通してプロセッサ522及び/又は信号発生器524に送信する。
【0058】
ディスプレイ520は、アナログ又はディジタルであってもよい。ディスプレイは、数値の読み取り値を表示するように適合されたLCDディスプレイであってもよい。
【0059】
使用中、分析用の液体試料は、液体を開口512に導入することによってレザバ508内に移送される。液体試料は、チャネル510を通って流れ、レザバ508を充填させると同時に先に収容されていた空気を追い出す。液体試料は、チャネル510及び/又はレザバ508に付着させた試薬と化学反応する。
【0060】
センサ片502は、測定装置502に近接して配置される。近接は、試料インターフェイス514がセンサインターフェイス508と電気的及び/又は光学的に通信する位置を含む。電気的通信は、センサインターフェイス518内の接点と、試料インターフェイス514内の導体との間の入力及び/又は出力信号の移動を含む。光学的通信は、試料インターフェイス514内の光の入口と、センサインターフェイス508内の検出器との間の光の移動を含む。光学的通信は、試料インターフェイス502内の光の入口と、センサインターフェイス508内の光源との間の光の移動をさらに含む。
【0061】
本発明のさまざまな実施形態を説明してきたが、当業者においては、本発明の範囲内で他の実施形態及び実施が可能であることは明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物を考慮することを除き、制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の分析対象物の濃度を判定する方法であって、
10秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号であって、デューティサイクルのそれぞれが励起パルス及び緩和を含む、入力信号を試料に与えることと、
少なくとも1つのデューティサイクルの励起パルスの付与の300ミリ秒以内に、測定可能種に反応する出力信号を測定することと、
測定された出力信号に応じて、試料中の分析対象物の濃度を判定することと、
を含む方法。
【請求項2】
入力信号が、7秒以内に少なくとも4つのデューティサイクルを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
0.1〜2秒の励起のパルス幅を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
0.3〜0.8秒の励起のパルス幅を含む、請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのデューティサイクルのパルス間隔が、3秒未満である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
励起のパルス幅が0.3〜0.5秒であり、パルス間隔が0.7〜2秒である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項7】
出力信号が、デューティサイクルのうち1つの励起パルスの付与の175ミリ秒未満以内に測定される、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
出力信号が、デューティサイクルのうち1つの励起パルスの付与の60〜150ミリ秒以内に測定される、請求項1〜6のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
出力信号が測定されるデューティサイクルが、試料への初期励起パルスの付与の11秒以下以内に適用される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
出力信号が測定されるデューティサイクルが、試料への初期励起パルスの付与の7秒以下以内に適用される、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
センサ片に試料を導入すること、及び、試料中の分析対象物からセンサ片内のメディエータに少なくとも1つの電子を移動することをさらに含み、入力信号が、測定可能種を電気化学的に励起し、測定可能種が、分析対象物、メディエータ及びそれらの組み合わせから構成される群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
励起が、実質的に一定の電圧を有する、請求項1〜11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
入力信号が、矩形波の励起を含む、請求項1〜12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
本方法から判定される分析対象物の濃度が、10秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号が欠如しかつデューティサイクルのうち1つの励起パルスの付与の300ミリ秒以内に測定可能種に反応する出力信号を測定することが欠如している同じ又は別の方法から判定される分析対象物の濃度よりも少ないバイアスを含む、請求項1又は3〜13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
入力信号の付与中に、時間の関数として少なくとも1つの電流を記録することをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
判定が、出力信号の少なくとも1つの電流に、少なくとも1つのデータ処理を施すことを含む、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
拡散障壁層の内側に測定可能種を励起させることと、
拡散障壁層の外に測定可能種を実質的に励起から除外することと、
をさらに含む、請求項1〜16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
緩和が開回路に対応する、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
緩和が少なくとも0.5秒である、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
出力信号が過渡的な減衰を含み、分析対象物濃度が過渡的な減衰から判定される、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
試料が、生体液、生体液の派生物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
測定が、携帯型測定装置によって行われる、請求項1〜21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
試料中の分析対象物の濃度を判定するためのハンディ型測定装置であって、
装置がセンサ片を受けるように適合され、
装置が、
接点と、
少なくとも1つのディスプレイと、
接点とディスプレイとの間の電気的通信を確立する電気回路とを含み、
電気回路が、電気チャージャと、電気的に通信するプロセッサとを含み、コンピュータ可読ソフトウェアコードを含む記憶媒体と電気的に通信するプロセッサが、コンピュータ可読ソフトウェアコードがプロセッサによって実行されたときに、チャージャに10秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号を接点間で実施させ、デューティサイクルのそれぞれが励起及び緩和を含み、
プロセッサが、チャージャの励起付与の300ミリ秒以内に少なくとも2つの接点で、少なくとも1つの電流値を測定するように動作可能であり、
プロセッサが、少なくとも1つの電流値に応じて、生体液中の分析対象物濃度を判定するように動作可能である、装置。
【請求項24】
装置が携帯型である、請求項23記載の装置。
【請求項25】
チャージャが、実質的に一定の電圧で励起を実施するように動作可能である、請求項23又は24記載の装置。
【請求項26】
プロセッサが、減衰の過渡的な部分の間に、少なくとも1つの電流値を測定するように動作可能である、請求項23〜25のいずれか一項記載の装置。
【請求項27】
試料が、生体液、生体液の派生物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23〜26のいずれか一項記載の装置。
【請求項28】
請求項2〜20のいずれか一項の1以上の限定を含む、請求項23〜27のいずれか一項記載の装置。
【請求項29】
試料中の分析対象物濃度を判定するためのバイオセンサシステムであって、
細片によって形成されたレザバに近接した試料インターフェイスを有するセンサ片と、
センサインターフェイスに接続されるプロセッサを有する測定装置であって、センサインターフェイスが試料インターフェイスとの電気的通信を有し、プロセッサが記憶媒体との電気的通信を有する、測定装置とを含み、
プロセッサが、試料インターフェイスへの励起パルスの付与の300ミリ秒以内に、センサインターフェイスからの試料中の分析対象物濃度に応じて、出力信号値を判定し、
励起パルスが、10秒以内の少なくとも3つのデューティサイクルを含む入力信号の一部であり、デューティサイクルのそれぞれが励起及び緩和を含む、システム。
【請求項30】
測定装置が携帯型である、請求項29記載のシステム。
【請求項31】
励起パルスが、実質的に一定の電圧を有する、請求項29又は30記載のシステム。
【請求項32】
試料中の分析対象物の濃度に応じた出力信号値が、減衰の過渡的な部分の間に測定される、請求項29〜31のいずれか一項記載のシステム。
【請求項33】
試料が、生体液、生体液の派生物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項29〜32のいずれか一項記載のシステム。
【請求項34】
請求項2〜20のいずれか一項の1以上の限定を含む、請求項29〜33のいずれか一項記載のシステム。
【請求項35】
試料中の分析対象物の濃度の判定におけるバイアスを低減させる方法であって、
試料に入力信号を与えることであって、入力信号が10秒以内に少なくとも3つのデューティサイクルを含み、デューティサイクルのそれぞれが励起パルス及び緩和を含む、ことと、
少なくとも1つのデューティサイクルの励起パルスの付与の300ミリ秒以内に、測定可能種に応じた出力信号を測定することと、
測定された出力信号に応じて、試料中の分析対象物の濃度を判定することと、
を含む方法。
【請求項36】
バイアスの少なくとも一部が、ヘマトクリット効果に起因する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
試料が、生体液、生体液の派生物、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項35又は36記載の方法。
【請求項38】
出力信号が過渡的な減衰を含み、分析対象物濃度が過渡的な減衰から判定される、請求項35〜37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
請求項2〜20のいずれか一項の1以上の限定を含む、請求項35〜38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
本明細書中に開示されたあらゆる新規事項。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−506964(P2011−506964A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538008(P2010−538008)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/080865
【国際公開番号】WO2009/075951
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507021757)バイエル・ヘルスケア・エルエルシー (33)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC