説明

造形方法

【課題】造形物の張り出し部分に作用する力に対して機械的な強度を高めることの可能な造形方法を提供する。
【解決手段】上層であるスラリー層21bに結着領域を形成するとき、下層であるスラリー層21aの結着領域22a上から下層の未結着領域23a上へ延びるように上層に結着領域を形成するとともに、上層に浸透したUVインクIが下層の結着領域22aと下層の未結着領域23aとの境界に染み出すように、前記上層では、前記境界の直上を含む第一の領域に対し該第一の領域以外の第二の領域よりも前記結着液の塗布量を大きくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、結着液を介して結着された粒体からなる層を積み重ねることにより造形物を形成する造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、造形物を迅速に試作する方法(ラピッドプロトタイピング)として積層造形法が多用されている。積層造形法では、造形物のモデルが三次元CAD等によって多数の二次元断面層に分割される。そして、各二次元断面層に対応する層状構造体が順に積層されることによって、上述した造形物が形成される。
【0003】
具体的には、例えば特許文献1に記載のように、まず、セラミックや金属等を含む粒体が層状に形成される。次いで、粒体同士を結着させる結着液が、粒体からなる層の一部に吐出される。そして、粒体間の空隙に浸透した結着液がそれの硬化とともに粒体同士を結着することによって、上記層状構造体に対応する結着領域が上記層内に形成される。以後同様に、これら粒体からなる層の形成と結着液の吐出とが交互に繰り返されて、複数の上記層からなる積層体が形成される。そして、結着領域以外の未結着領域が積層体から除去されることによって、複数の結着領域が積層された造形物が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2729110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した造形方法では、上層の結着領域が形成される際に、下地である下層の結着領域が該下層の未結着領域によって囲まれている。そのため、下層の結着領域上と下層の未結着領域上とを繋ぐように上層の結着領域が形成されれば、上層の結着領域が下層の結着領域上から張り出すような構造体を形成することもできる。一方、このように上層の結着領域が下層の結着領域上から張り出す造形物では、上層の下面と下層の端面とからなる角部が形成される。そして、上層の結着領域に外力が作用すると、上述した角部において、上記外力に伴う応力が集中するようになる。
【0006】
特に、上述した積層体に液体を流して未結着領域を除去する際には、張り出した結着領域に液体の圧力が直接作用するため、それに伴う応力が角部に集中するようになる。それゆえに、上述した造形方法には、上層に作用する力に対し、角部の近傍で機械的な強度を高めることが強く求められている。
【0007】
この発明は、こうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、造形物の張り出し部分に作用する力に対して機械的な強度を高めることの可能な造形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、粒体を含む層を形成する層形成工程と、結着液を前記層の一部に浸透させた後に該結着液を硬化することによって、前記粒体同士が結着した層状構造体を前記層に形成する結着工程と、前記層状構造体を含む前記層から前記層状構造体以外の部位を取り除く除去工程とを含み、前記層形成工程と前記結着工程とを交互に繰り返して前記層状構造体を含む前記層からなる積層体を形成したのち前記除去工程が実施されることにより、
前記層状構造体を積層させたかたちの造形物が造形される造形方法であって、第(k+1)層目(kは1以上の整数)の結着領域を、第k層目の結着領域上から第k層目の未結着領域上へ張り出すように形成する場合に、前記第(k+1)層目の結着工程において、前記第k層目の結着領域と前記第k層目の未結着領域との境界の直上を含む第一の領域に対し該第一の領域以外の第二の領域よりも前記結着液の塗布量を大きくする。
【0009】
この発明によれば、下層の結着領域上から下層の未結着領域上へ延びるように上層の結着領域が形成される際、下層における結着領域と未結着領域との境界に、上層の結着液が染み出すようになる。これにより、下層における結着領域と未結着領域との境界にまで、上層の結着液が浸透するようになる。その結果、上層の結着液を硬化させた後には、上層における結着領域の下面と下層における結着領域の端面とからなる角部で、上記染み出した結着液が粒体同士を結着するようになる。そのため、染み出した結着液が粒体同士を境界付近で結着する分、上記角部における応力が境界付近で分散されるようになる。また、結着液の塗布量を大きくすることによって応力を分散しているため、上層において結着液の密度が低下すること、ひいては上層の機械的な強度が低くなることもない。それゆえに、造形物における機械的な強度を高めることができる。
【0010】
この発明において、前記第(k+1)層目の前記第一の領域の結着工程において、前記第k層目の未結着領域上では、前記結着液の塗布位置が前記境界の直上に近くなるに連れて前記結着液の塗布量を大きくすることが好ましい。
【0011】
この造形方法によれば、上層から下層に染み出す結着液の量が、下層の境界の直上に近くなるほど大きくなる。そのため、上層における結着領域の下面と下層における結着領域の端面とからなる角部では、該角部を構成する上層の厚みが、下層における境界に近くなるほど大きくなる。そして、下層の結着領域に向けて拡大するテーパ状の部分を介して、下層の結着領域と上層の結着領域とが連結する。それゆえに、上層における結着領域の下面と下層における結着領域の端面とのなす角度が小さくなる分、角部における応力の集中がより緩和され、造形物における機械的な強度をより高めることができる。
【0012】
この発明において、前記第(k+1)層目の結着工程において、前記第(k+1)層目の表面における単位面積当たりの前記塗布量を二値化し、前記第一の領域には、第一の塗布量で前記結着液を塗布し、前記第二の領域には、前記第一の塗布量よりも小さい第二の塗布量で前記結着液を塗布することが好ましい。
【0013】
この発明によれば、結着液の塗布量を、第一の塗布量と第二の塗布量とに切り替えるという簡易な塗布制御の態様によって、上記の効果を得ることができる。
この発明において、前記第(k+1)層目の結着工程において、前記結着液を液滴にして吐出する吐出ヘッドを用い、前記吐出ヘッドを前記第(k+1)層目に対して走査しつつ、前記吐出ヘッドから前記第(k+1)層目に向けて複数の前記液滴を同じサイズで吐出し、前記第一の領域では、一回の走査における吐出間隔を前記第二の領域よりも短くすることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、上層の結着領域に対して吐出ヘッドを一回だけ走査する間に、結着液の部分的な増量を行う。これにより、吐出ヘッドの走査回数を増やすことなく効率的に造形物を形成することができる。
【0015】
この発明は、疎水性の粒体と、水系溶媒と、該水系溶媒に溶解された両親媒性固体ポリマーとを含むスラリーから前記粒体を含む層を形成し、前記除去工程では、水系の液体を流すことによって、前記層状構造体を含む前記層から前記層状構造体以外の部位を取り除くことが好ましい。
【0016】
この発明によれば、層を形成する材料として、疎水性の粒体が水系溶媒中に懸濁されたスラリーを用いている。そのため、造形物の形成に際してスラリーに振動等が与えられたとしても、疎水性の粒体は水系溶媒中に保持されることから、粒体の飛散が抑制されるようになる。しかも、こうして粒体の飛散を抑制する溶媒として、水系溶媒を用いるようにしているため、粒体が溶媒に溶解することや、粒体が溶媒を吸収して膨潤することに起因して、粒体が変性することを抑制できる。さらに、スラリーの構成材料として、両親媒性固体ポリマーを加えている。こうした両親媒性固体ポリマーは、その疎水性の部位において疎水性の粒体と親和性を有するとともに、その親水性の部位において水系溶媒と親和性を有する。そのため、疎水性の粒体は、両親媒性固体ポリマーを介することによって、水系溶媒中に均一に分散することが可能になる。それゆえに、こうした造形用スラリーを用いて形成された造形物においては、その形成材料である疎水性の粒体が均一に存在するようになる。
【0017】
そして、上記造形方法では、積層体から未結着領域を水系の液体によって除去するようにしている。この際、上記層を構成するスラリーが水系溶媒及び両親媒性固体ポリマーを含んで構成されるため、未結着領域は、水系の液体によって容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一および第二の実施形態における造形方法の手順を示すフローチャート。
【図2】(a)(b)(c)造形方法の各工程における層の断面構造を手順に沿って示す断面図。
【図3】(a)(b)(c)造形方法の各工程における層の断面構造を手順に沿って示す断面図。
【図4】(a)第一の実施形態における上層の吐出位置を上層の断面構造に対応付けて示す図、(b)第一の実施形態における上層の吐出位置ごとの吐出量を示すグラフ。
【図5】第一の実施形態における上層に含まれる結着領域の断面構造を角部の拡大図とともに示す図。
【図6】(a)第二の実施形態における上層の吐出位置を上層の断面構造に対応付けて示す図、(b)第二の実施形態における上層の吐出位置ごとの吐出量を示すグラフ。
【図7】第二の実施形態における上層に含まれる結着領域の断面構造を角部の拡大図とともに示す図。
【図8】(a)変形例における上層の吐出位置を上層の断面構造に対応付けて示す図、(b)変形例における上層の吐出位置ごとの吐出量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一の実施形態)
以下、本発明の造形方法における第一の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。まず、造形方法に用いられる造形用スラリーの組成について説明する。本実施形態に用いられる造形用スラリーは、3つの材料である疎水性粒体、水系溶媒、及び両親媒性固体ポリマーが混練された懸濁物である。
【0020】
上記疎水性粒体は、造形用スラリーを用いて形成される造形物の主要な構成材料である。疎水性粒体には、疎水性の樹脂の粒体、例えばアクリル樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末、アクリルシリコーン樹脂粉末、ポリエチレン樹脂粉末、及びポリエチレンアクリル酸共重合樹脂粉末を用いることができる。なお、本実施形態における疎水性粒体とは、100gの水系溶媒に対して1g以上溶解しない粒体のことである。
【0021】
上記水系溶媒に対しては、造形物を構成する疎水性粒体の溶解度が上述のように低い。そのため、溶媒への溶解や溶媒の吸収に起因する疎水性粒体の変性が起こり難い。それゆえに、疎水性粒体の飛散を抑制する媒質として好ましい。なお、水系溶媒とは水、及び無機塩の水溶液等の非有機系溶媒を含むものであって、このうち水が水系溶媒として用いられることが好ましい。また、上記水系溶媒は、水に水溶性の有機溶媒を添加したものであってもよい。
【0022】
上記両親媒性固体ポリマーは、上記疎水性粒体とともに造形物を構成する材料である。この固体ポリマーは両親媒性であることから、親水性の部分による水系溶媒との親和性によって水系溶媒に溶解するとともに、その疎水性の部分による疎水性粒体との親和性によって該疎水性粒体の溶媒中への分散作用を発現する。両親媒性固体ポリマーとしては、主鎖である炭化水素鎖と、側鎖である親水性の官能基とを有する材料を用いることができる。中でも、直鎖炭化水素鎖を有しているものの、他の材料と比較して親水性が高いポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0023】
上記3つの材料が混練されたスラリー中では、両親媒性固体ポリマーが有する疎水性の部分によって、疎水性粒体同士が互いに架橋された状態にもなる。そのため、造形物の形成に際して、スラリーに振動等が与えられたとしても、疎水性の粒体は、粒体間の架橋によって形成された構造中に保持されることから、粒体の飛散が抑制されるようになる。
【0024】
また、疎水性粒体は、疎水性の部分において相互作用している両親媒性固体ポリマーが有する親水性の部分を介して、水系溶媒中に均一に分散される。そのため、こうしたスラリーを用いて形成された造形物においては、形成材料である疎水性粒体が均一に存在することになる。なお、こうした両親媒性固体ポリマーは、それ自体が造形物の形成材料であることから、造形物の形成時には、形成途中の、あるいは完成した造形物から両親媒性固体ポリマーを取り除くといった操作を必要としない。
【0025】
次に、上記組成のスラリーを用いた造形方法について説明する。まず、造形方法に含まれる各工程の流れについて、図1〜図3を参照して説明する。
造形方法では、まず、犠牲層形成工程(ステップS11:図2(a))にて、例えばガラス基板やプラスチックシート等の基板11上に、例えば厚さが200μmになるように、上記スラリーが塗布される。これによって、スラリーからなる層の最下層としての犠牲層12が形成される。なお、スラリーの塗布には、公知の方法であるスキージ法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、及びスピンコート法等、基板11上に略均一な厚さを有したスラリーの層を形成可能な方法を用いることができる。
【0026】
次いで、スラリー層形成工程(ステップS12:図2(b))にて、厚さが100μmになるように上記スラリーが塗布されて、これによりスラリー層21aが形成される。なお、スラリー層21aの形成に際しても、犠牲層12の形成時と同様、上記公知の方法を用いることができる。
【0027】
そして、吐出工程(ステップS13:図2(c))では、上記スラリー層21aのうち、造形物20(図3)の一部である結着領域22aとなる部位に、結着液としての紫外線硬化樹脂を含んだUVインクIが吐出される。この際、UVインクIを液滴にして吐出する吐出ヘッド31が用いられ、この吐出ヘッド31がスラリー層21aに対して一方向に走査されつつ、吐出ヘッド31からスラリー層21aに向けてUVインクIの液滴が吐出される。
【0028】
ここで、スラリー層21a内には、上記両親媒性固体ポリマーによる疎水性粒体の架橋構造が形成されることによって、疎水性粒体同士は互いに所定の空間を有して配置されて
いるとともに、空間中には水系溶媒が充填されている。そのため、スラリー層21aの上方から、該スラリー層21aの表面に向かって吐出されたUVインクIは、スラリー層21aの表面から上述の空間を通って等方的に浸透する。ちなみに、スラリー層21a中の両親媒性固体ポリマーにおける疎水性の領域が、UVインクIに対する親和性を有していることから、UVインクIがスラリー層21a中に浸透しやすくもなる。
【0029】
なお、UVインクIには、カチオンを活性種とする重合反応によって硬化するカチオン重合型の紫外線硬化樹脂を含むものと、ラジカルを活性種とする重合反応によって硬化するラジカル重合型の紫外線硬化樹脂を含むものとがある。本実施形態においては、これらのいずれに属するUVインクIも用いることができる。ただし、当該UVインクIは、結着領域22aとなる部位に吐出された後、結着領域22aに含まれる疎水性粒体と共々、硬化させるものである。そのため、UVインクI、特に紫外線硬化樹脂と疎水性粒体とには、相溶性を有する材料を選択することが好ましい。つまり、UVインクIと疎水性粒体とに同系の材料を用いること、例えばアクリル系のUVインクIと、アクリル樹脂粉末とを用いることが好ましい。あるいは、UVインクIと、該UVインクIと同系の材料が表面に導入された疎水性粒体とを用いること、例えばアクリル系UVインクIとアクリルシリコーン樹脂粉末とを用いることが好ましい。ここでいう同系とは、疎水性粒体を構成する繰り返し単位構造の主骨格と、UVインクIに含まれる樹脂の単位構造の主骨格とが同一であることを意味している。また同系とは、該単位構造における側鎖官能基や該単位構造における主骨格の一部が異なるものの、疎水性液状体と上記樹脂との相互作用が疎水性粒体間の相互作用と略同じになる程度に、該単位構造の主骨格同士が一部重複することを意味している。それゆえに、疎水性粒体及び上記樹脂がそれぞれ共重合体である場合には、これらに含まれる原子の組成比が一致していないものも同系であるとする。
【0030】
続いて、紫外線照射工程(ステップS14:図3(a))にて、上記スラリー層21a全体に紫外線Lが照射され、これによって結着領域22aに含まれる粒体同士がUVインクIを介して結着し硬化される。なお、上述した吐出工程と紫外線照射工程とによって結着工程が構成されている。また紫外線照射工程に利用される紫外線Lは、スラリー層21aの全体に照射されなくともよく、少なくとも結着領域22aとなる部位に照射されればよい。また、紫外線Lの照射は、例えば上記吐出ヘッド31に搭載された紫外線照射装置によって、結着領域22aとなる部位へのUVインクIの吐出と交互に行うことや、該吐出ヘッド31とは別に設けられた紫外線照射装置によって、スラリー層毎に行うこと、あるいは複数のスラリー層に対して一度に行うことができる。
【0031】
上述のようなUVインクIの吐出と紫外線Lの照射とによって、粒体同士が結着された層状構造体である結着領域22aが形成され、造形物20の一部がこの結着領域22aによって形成される。他方、スラリー層21aのうち、結着領域22aとなる部位以外には、造形用スラリーのみからなる未結着領域23aが形成される。そのため、図3(b)に示されるように、上層の結着領域22bが下層の結着領域22aから張り出す場合には、張り出した部分の下側が下層の未結着領域23aに支持される。それゆえに、下層における結着領域22aの端面と上層における結着領域22bの下面とからなる角部が形成されるものの、下層の未結着領域23aがその角部に充填される限り、同角部に応力が集中することを抑制できる。
【0032】
上記スラリー層形成工程(ステップS12)から上記紫外線照射工程(ステップS14)までの3工程は、造形物20を構成する結着領域の全てが形成されるまで順に繰り返し実施される。例えば、図3(b)に示されるように、造形物20が5層のスラリー層21a,21b,21c,21d,21eから構成される場合、上記3工程が順に5回繰り返される。このように、層形成工程から紫外線照射工程までの3工程を順に繰り返すことにより、複数の層から構成される積層体を形成することができるため、当該造形方法によっ
て形成される造形物20の形状に係る自由度が高くなる。
【0033】
造形物20を構成する結着領域22a,22b,22c,22d,22eが全て形成されると、未結着領域除去工程(ステップS15:図3(c))にて、スラリー層21a,21b,21c,21d,21eの積層体から、未結着領域23a,23c,23d,23eが除去される。未結着領域23a,23c,23d,23eの除去は、上記基板11とともに積層体を水系の液体中、例えば水中に浸すこと、積層体に水を所定の圧力で流すこと等によって行うことができる。そして、上記犠牲層形成工程、スラリー層形成工程、吐出工程、紫外線照射工程、及び未結着領域除去工程が実施されることによって、各結着領域22a,22b,22c,22d,22eが積層された造形物が形成される。
【0034】
次に、下層の結着領域上から張り出すように上層の結着領域が形成される場合について、その上層の吐出工程を詳しく説明する。図4(a)(b)は、該上層におけるUVインクIの吐出位置と上層の表面における単位面積当たりの吐出量とを対応付けた図であって、図3(a)の工程後に実施される吐出工程について示す図である。なお、図4(a)においては、図示されるスラリー層21bの全てが結着領域となるように吐出工程が実施される。
【0035】
図4に示されるように、下層の結着領域上と該下層の未結着領域上とを繋ぐように上層の結着領域が形成される場合、上層に対するUVインクIの吐出量は、該UVインクIの吐出位置における下方が、下層における結着領域と未結着領域との境界の近傍であるか否かによって大きく異なる。
【0036】
具体的には、図4に示されるように、未結着領域23aと結着領域22aとの境界の直上からUVインクIの吐出位置が十分に離れている場合、単位面積当たりにおけるUVインクIの吐出量は基準量Q1に保たれる。一方、UVインクIの吐出位置が下層の結着領域22aの直上に近くなると、未結着領域23a上と結着領域22a上との双方において、単位面積当たりのUVインクIの吐出量は、基準量Q1よりも増やされる。この際、下層の未結着領域23a上では、UVインクIの吐出位置が下層の結着領域22a上に近くなるに連れて、単位面積当たりのUVインクIの吐出量は大きくなる。そして、UVインクIの吐出位置が未結着領域23aと結着領域22aとの境界の直上になると、基準量Q1に対する増加分が染み出し量Q2に達する。
【0037】
なお、基準量Q1とは、上層における厚さ方向の全体にわたりUVインクIが拡散し、かつ、該UVインクIが下層には染み出さない吐出量である。また、染み出し量Q2とは、上層に吐出されたUVインクIのうち、上層から下層へ染み出す量であって、かつ、下層に染み出したUVインクIが下層の下面には達しない量である。これら基準量Q1及び染み出し量Q2は、UVインクIの組成、上層及び下層を構成するスラリーの組成、上層の厚さによって適宜変更されるものである。
【0038】
次に、上述のような吐出量で吐出されたUVインクIによって形成される結着領域の構造について図5を参照して詳しく説明する。図5は、上層における結着領域22bの断面構造の一部を拡大して示す部分断面図である。
【0039】
上述したように、UVインクIが基準量Q1より多く吐出された領域(高吐出領域S)では、上層に浸透したUVインクIが、下層の結着領域22a、下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界、及び下層の未結着領域23aに染み出す。この際、下層の結着領域22aに染み出したUVインクIは、下層の結着領域22aには浸透せずに、下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界に浸透する。そして、下層の結着領域22aがUVインクIの硬化物を含むため、より親和性の高い結着領域22aの
端面に沿ってUVインクIは浸透する。一方、下層の未結着領域23aに染み出したUVインクIは、下層の表面から未結着領域23a内へ等方的に浸透する。また、吐出量が大きい部位の下方ほど、UVインクIの浸透する領域が大きくなる。
【0040】
その結果、図5に示されるように、上層の結着領域22bの下面と下層の結着領域22aの端面とからなる角部には、支持補助部24bが形成される。そして、結着領域22bから未結着領域23aに染み出すUVインクIの量が、下層の結着領域22aに近くなるほど大きくなるため、上述した支持補助部24bの厚みは、結着領域22aに近くなるほど大きくなる。そして、下層の結着領域22aに向けて拡大するようなテーパ状の支持補助部24bを介して、下層の結着領域22aと上層の結着領域22bとが連結される。
【0041】
したがって、上層の結着領域22bの下面と下層の結着領域22aの端面とのなす角度が小さくなる分、角部における応力の集中が緩和され、造形物における機械的な強度、特に、下層の結着領域22aと上層の結着領域22bとから構成される角部における機械的な強度を高めることができる。また、UVインクIの量を大きくすることによって上記応力を分散しているため、上層におけるUVインクIの密度の低下による強度の低下を招くこともない。これにより、造形物における機械的な強度を高めることができ、ひいては、造形物に液体を流して未結着領域を除去する際や、造形物の形成過程や完成後においても、造形物が崩壊する虞を低減できるようになる。
【0042】
また、このようなUVインクIの部分的な増量は、以下のような吐出制御の態様で実現することができる。例えば、UVインクIの液滴の数量が単位面積当たりに等しい前提であれば、結着領域22aと未結着領域23aとの境界の直上を含む領域、すなわち上記高吐出領域Sにおいて、液滴の容量を他の領域よりも大きくする。あるいは、UVインクIの液滴の容量が上層の全体で等しい前提であれば、上記高吐出領域Sにおいて、液滴の数量を他の領域よりも大きくする。なお、本実施形態では、高吐出領域SにおいてUVインクIの吐出間隔を他の領域よりも短くし、これによって高吐出領域Sにおける液滴の数量を大きくしている。このような構成によれば、上層に対して吐出ヘッド31が一回だけ走査されることによって、上述したUVインクIの部分的な増量が実現できる。
【0043】
なお、高吐出領域Sの範囲は、下層の結着領域22aから張り出す上層部分の長さ、下層の結着領域22aのうちで上層を支持する部分の長さ、上層の厚さ等によって、互いに異なるものである。例えば、下層の結着領域22aから張り出す上層部分の長さが大きくなれば、該上層部分に作用する外力によって、より大きな応力が角部に集中するようになる。また、下層の結着領域22aの長さが小さくなる場合も、同様に、より大きな応力が角部に集中するようになる。また、上層の厚さが小さくなるほど、該上層の機械的な強度が低くなる。そのため、一つの造形物内においても、下層の結着領域22aから張り出す上層部分の長さ、下層の結着領域22aの長さ、及び上層の厚さ、これらに応じ、高吐出領域Sの範囲、すなわち支持補助部24bのサイズを適宜変更することが好ましい。
【0044】
ちなみに、下記条件のもとで造形物を形成する場合、角部における応力の緩和と造形物における形状精度の維持との均衡を図る上で、UVインクIの基準量Q1に対する染み出し量Q2の割合は、5%〜25%が望ましく、さらには15%〜20%が望ましい。また、UVインクIの吐出量を基準量Q1より大きくする区間(高吐出領域S)の距離d1は、スラリー層の厚みの3倍以下であることが望ましく、スラリー層の厚さが100μmの場合、距離d1は300μm以下であることが望ましい。
・(A)疎水性粒体 シャリーヌR−170S(粒径30μm)(日信化学工業(株)製)(シャリーヌ:登録商標)
・(B)水系溶媒 水
・(C)両親媒性固体ポリマー ポバールJP−03(日本酢ビ・ポバール(株)製)
・組成比 (A):(B):(C)=7:3.1:0.22(単位g)
・各スラリー層の厚さ 100μm
・UVインク アクリル系のUVインク
以上説明したように、本実施形態における造形方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0045】
(1)上層であるスラリー層21bに浸透するUVインクIが下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界に染み出すようになる。そのため、下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界周辺の未結着領域23aにまで、上層のUVインクIが浸透する。その結果、上層のUVインクIを硬化させた後には、上層における結着領域22bの下面と下層における結着領域22aの端面とからなる角部で、上記染み出したUVインクIが粒体同士を結着するようになる。そのため、染み出したUVインクIが粒体同士を結着する分、上記角部における応力が分散されるようになる。また、UVインクIの量を大きくすることによって上記応力を分散しているため、上層におけるUVインクIの密度の低下による強度の低下を招くこともない。それゆえに、造形物における機械的な強度を向上させることができる。
【0046】
(2)上層から下層に染み出すUVインクIの量が、下層の結着領域22aに近くなるほど大きくなる。そのため、上層における結着領域22bの下面と下層における結着領域22aの端面とからなる角部では、該角部を構成する上層の厚みが、下層の結着領域22aに近くなるほど大きくなる。そして、下層の結着領域22aに向けて大きくなるテーパ状の支持補助部24bを介して、下層の結着領域22aと上層の結着領域22bとが結着される。それゆえに、上層における結着領域22bの下面と下層における結着領域22aの端面とのなす角度が小さくなる分、角部における応力の集中がより緩和され、造形物の機械的強度をより高めることができる。
【0047】
(3)下層の結着領域22a上では、基準量Q1からの増加分を染み出し量Q2から「0」に変え、また基準量Q1からの増加分を「0」から染み出し量Q2に変えることとした。上層に浸透したUVインクIは、下層の未結着領域23aへ染み出しやすく、下層の結着領域22aへは染み出し難い。そのため、下層の結着領域22a上で吐出量を大きくしたとしても、同じ吐出量を下層の未結着領域23a上に吐出する場合と比較して、上述した効果が十分には得られ難い。この点、この造形方法によれば、UVインクIが下層へ染み出し難い領域、つまり、角部における応力の分散に寄与し難い領域には、相対的に小さい基準量Q1のUVインクIが吐出される。そのため、下層の結着領域22a上におけるUVインクIの浪費や上層におけるUVインクIの密度の不均衡を抑制することができる。これは、特に下層の結着領域22aの範囲が大きい場合に有効である。
【0048】
(4)UVインクIの塗布に際しては、UVインクIを液滴にして吐出する吐出ヘッド31を用い、該吐出ヘッド31から液滴を吐出することによって結着領域を形成することとした。そして、上層における吐出間隔を適宜設定することでUVインクIの部分的な増量を行い、下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界の直上に吐出ヘッドを一回だけ走査することとした。これにより、吐出ヘッド31の走査回数を増やすことなく効率的に造形物を形成することができる。
【0049】
(5)水系溶媒である水と、疎水性粒体である樹脂の粒体と、両親媒性固体ポリマーであるポリビニルアルコールとからスラリーを構成するようにした。これにより、樹脂粒体同士は、互いに独立した状態にあるのではなく、ポリビニルアルコールの介在によって互いに架橋された状態にある。そのため、造形物20の形成に際して、スラリーに振動等が与えられたとしても、樹脂粒体は、粒体間の架橋によって形成された構造中に保持されることから、粒体の飛散が抑制されるようになる。
【0050】
(第二の実施形態)
以下、本発明の造形方法における第二の実施形態について、図6、7を参照しつつ、主に第一の実施形態との相違点を中心に説明する。第二の実施形態は、上述した吐出工程における吐出位置ごとの吐出量と、それによって得られる支持補助部24bの形状とが第一の実施形態と相違する。そのため、以下では、この相違点について特に詳細に説明する。
【0051】
図6(a)(b)は、第一の実施形態にて説明した先の図4に対応する図であって、上層におけるUVインクIの吐出位置と上層の表面における単位面積当たりの吐出量とを対応付けた図である。また、図7は先の図5に対応する図であって、図6のようにUVインクIを吐出した際に形成される結着領域の断面形状を示す図である。
【0052】
第二の実施形態に係る造形方法においても、下層の結着領域上と該下層の未結着領域上とを繋ぐように上層の結着領域が形成される場合、上層に対するUVインクIの吐出量は、該UVインクIの吐出位置における下方が下層における結着領域と未結着領域との境界の近傍であるか否かによって大きく異なる。
【0053】
具体的には、図6に示されるように、上層に結着領域22bを形成するとき、上層の表面における単位面積当たりのUVインクIの吐出量が、互いに異なる二つの値に設定される。そして、未結着領域23aと結着領域22aの境界の直上の領域であって、未結着領域23a上と結着領域22a上とを含む領域(高吐出領域S)には、基準量Q1よりも染み出し量Q2だけ大きい吐出量でUVインクIが吐出される。また、該高吐出領域S以外の領域では、UVインクIの吐出量が基準量Q1に保たれる。
【0054】
このようにUVインクIを吐出した場合も、上層においてUVインクIを基準量Q1より多く吐出した領域下では、下層の結着領域22a、未結着領域23aと結着領域22aとの境界、及び下層の未結着領域23aにUVインクIが染み出す。この際、下層の結着領域22aに染み出したUVインクIは、下層の結着領域22aには浸透せずに、下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界に浸透する。そして、下層の結着領域22aがUVインクIの硬化物を含むため、より親和性の高い結着領域22aの端面に沿ってUVインクIは浸透する。一方、下層の未結着領域23aに染み出したUVインクIは、下層の表面から未結着領域23a内へ略等方的に浸透する。それゆえに、未結着領域23a上と結着領域22a上とに同じ吐出量のUVインクIを吐出する方法であっても、下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界には、相対的に大きな量のUVインクIが染み出すようになる。
【0055】
その結果、図7に示されるように、角部に形成される支持補助部24bの厚みは、未結着領域23aと結着領域22aとの境界に近くなるほど大きくなる。そして、下層の結着領域22aに向けて拡大するテーパ状の支持補助部24bを介して、下層の結着領域22aと上層の結着領域22bとが連結される。なお、未結着領域23aと結着領域22aとの境界から離れた部位に染み出すUVインクIは、下層の表面から未結着領域23a内へ略等方的に浸透する。そのため、支持補助部24bにおける角部とは反対側の端部は、下層の未結着領域23aに向けて突出する半球面状あるいは半円筒面状に形成される。
【0056】
これによって角部における応力の集中が緩和され、造形物における機械的な強度が高められる。また、UVインクIの量を大きくすることによって上記応力を分散しているため、上層におけるUVインクIの密度の低下による強度の低下を招くことがないことも、上述の第一の実施形態と同様である。
【0057】
ちなみに、下記条件のもとで造形物を形成する場合、角部における応力の緩和と造形物
の形状精度の維持との均衡を図る上で、UVインクIの基準量Q1に対する染み出し量Q2の割合は、5%〜25%が望ましく、さらには15%〜20%が望ましい。また、UVインクIの吐出量を基準量Q1より大きくする区間(高吐出領域S)の距離d2は、スラリー層の厚みの2倍以下であることが望ましく、スラリー層の厚さが100μmの場合、距離d2は200μm以下であることが望ましい。
・(A)疎水性粒体 シャリーヌR−170S(粒径30μm)(日信化学工業(株)製)(シャリーヌ:登録商標)
・(B)水系溶媒 水
・(C)両親媒性固体ポリマー ポバールJP−03(日本酢ビ・ポバール(株)製)・組成比 (A):(B):(C)=7:3.1:0.22(単位g)
・各スラリー層の厚さ 100μm
・UVインク アクリル系のUVインク
以上説明したように、第二の実施形態における造形方法によれば、上述の(1)、(3)〜(5)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0058】
(6)上層の結着領域に対するUVインクIの部分的な増量を、基準量Q1と、基準量Q1に染み出し量Q2を加えた吐出量との切り替えによって行うこととした。これにより、2つの吐出量を切り替えるという簡易な設定をもって、上述の効果を得ることができる。
【0059】
なお、上記実施形態は、以下のように適宜変更して実施することも可能である。
・上記の造形方法は、上記造形用スラリーを用いる場合に限られず、粒体から構成される層を形成し、UVインクIを該層に塗布して粒体同士を結着することを繰り返すことにより造形物を形成する造形方法に対してであれば、採用することができる。なお、粒体からのみ構成される層を形成した場合、除去工程において、例えば積層体にエアを吹き付けることにより未結着領域を除去することが可能である。
【0060】
・UVインクIは、吐出ヘッド31によってスラリー層21a,21b,21c,21d,21eに吐出されるようにした。これに限らず、スラリー層21a,21b,21c,21d,21eにUVインクIを塗布することの可能な方法であれば、適宜採用可能である。
【0061】
・UVインクIの塗布量は、図8で示すように変化させてもよい。すなわち、上層において、下層の未結着領域23a上から結着領域22a上へ近づくに従ってUVインクIの塗布量を基準量Q1から徐々に増やしていく。そして、UVインクIの増加量が、未結着領域23aと結着領域22aの境界の直上の手前で染み出し量Q2に達するようにし、該境界の直上の領域及び該境界に近接する結着領域22a上の領域では、増加量を染み出し量Q2に保つようにする。このような塗布制御の態様によっても、上述の効果と同等、あるいはそれに準じた効果を得ることができる。
【0062】
・第一の実施形態における未結着領域23a上では、未結着領域23aと結着領域22aとの境界の直上の部位と塗布位置との距離に比例して、UVインクIの吐出量を小さくするようにしたが、該距離に対して指数関数的に小さくするようにしてもよい。要は、UVインクIの塗布位置が上記境界の直上に近くなるに連れて、塗布位置における単位面積当たりのUVインクIの塗布量が連続的に大きくなる方法であればよい。
【0063】
・第二の実施形態における未結着領域23a上では、単位面積当たりのUVインクIの塗布量が二値化されているが、互いに異なる三つ以上の値が設定されてもよい。要は、UVインクIの塗布位置が上記境界の直上に近くなるに連れて、塗布位置における単位面積当たりのUVインクIの塗布量が不連続的に大きくなる方法であればよい。
【0064】
・第一の実施形態における未結着領域23a上では、未結着領域23aと結着領域22aとの境界の直上の部位と塗布位置との距離に比例して、UVインクIの塗布量を小さくするようにした。これに加えて、結着領域22a上においても、境界の直上の部位と塗布位置との距離に比例して、UVインクIの塗布量を小さくするようにしてもよい。
【0065】
・上記実施形態における結着領域22a上では、基準量Q1からの増加分を染み出し量Q2から「0」に変え、また基準量Q1からの増加分を「0」から染み出し量Q2に変えることとした。これに限らず、下層の結着領域22a上でも基準量Q1からの増加分を徐々に変化させる、あるいは基準量Q1からの増加分を維持するようにしてもよい。要は、上層に浸透したUVインクIが下層における結着領域22aと未結着領域23aとの境界に染み出すように、上層では、該境界の直上を含む領域(高吐出領域S)に塗布するUVインクIの量を他の領域よりも大きくすればよい。
【0066】
・上記実施形態における結着液は、紫外線硬化樹脂を含む液状体に限らず、熱硬化樹脂を含む液状体、あるいは紫外線硬化性樹脂と熱硬化性樹脂とを含む液状体に具現化することもできる。
【0067】
・造形物20を構成するスラリー層21a,21b,21c,21d,21eの形成に先立ち、基板11上に犠牲層12を形成するようにしたが、該犠牲層12を形成しないようにしてもよい。
【0068】
・造形物20は、5層のスラリー層21a,21b,21c,21d,21eによって形成されるものを例示した。これに限らず、造形物20を構成する層の数は、二以上の任意の数とすることができる。また、各スラリー層に形成される構造物の形状も任意である。
【0069】
・上記実施形態において上記境界の直上を含む領域は、該境界の直上が端となる領域であってもよく、あるいは該境界の直上のみから構成されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
d1,d2…距離、L…紫外線、I…UVインク、Q1…基準量、Q2…染み出し量、20…造形物、21a,21b,21c,21d,21e…スラリー層、22a,22b,22c,22d,22e…結着領域、23a,23c,23d,23e…未結着領域、24b…支持補助部、31…吐出ヘッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒体を含む層を形成する層形成工程と、
結着液を前記層の一部に浸透させた後に該結着液を硬化することによって、前記粒体同士が結着した層状構造体を前記層に形成する結着工程と、
前記層状構造体を含む前記層から前記層状構造体以外の部位を取り除く除去工程と
を含み、前記層形成工程と前記結着工程とを交互に繰り返して前記層状構造体を含む前記層からなる積層体を形成したのち前記除去工程が実施されることにより、前記層状構造体を積層させたかたちの造形物が造形される造形方法であって、
第(k+1)層目(kは1以上の整数)の結着領域を、第k層目の結着領域上から第k層目の未結着領域上へ張り出すように形成する場合に、前記第(k+1)層目の結着工程において、前記第k層目の結着領域と前記第k層目の未結着領域との境界の直上を含む第一の領域に対し該第一の領域以外の第二の領域よりも前記結着液の塗布量を大きくする
ことを特徴とする造形方法。
【請求項2】
前記第(k+1)層目の前記第一の領域の結着工程において、
前記第k層目の未結着領域上では、前記結着液の塗布位置が前記境界の直上に近くなるに連れて前記結着液の塗布量を大きくする
請求項1に記載の造形方法。
【請求項3】
前記第(k+1)層目の結着工程において、
前記第(k+1)層目の表面における単位面積当たりの前記塗布量を二値化し、
前記第一の領域には、第一の塗布量で前記結着液を塗布し、
前記第二の領域には、前記第一の塗布量よりも小さい第二の塗布量で前記結着液を塗布する
請求項1に記載の造形方法。
【請求項4】
前記第(k+1)層目の結着工程において、
前記結着液を液滴にして吐出する吐出ヘッドを用い、前記吐出ヘッドを前記第(k+1)層目に対して走査しつつ、前記吐出ヘッドから前記第(k+1)層目に向けて複数の前記液滴を同じサイズで吐出し、
前記第一の領域では、一回の走査における吐出間隔を前記第二の領域よりも短くする
請求項1〜3のいずれか1項に記載の造形方法。
【請求項5】
疎水性の粒体と、水系溶媒と、該水系溶媒に溶解された両親媒性固体ポリマーとを含むスラリーから前記粒体を含む層を形成し、
前記除去工程では、
水系の液体を流すことによって、前記層状構造体を含む前記層から前記層状構造体以外の部位を取り除く
請求項1〜4のいずれか1項に記載の造形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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