説明

造核剤

【課題】結晶性高分子の結晶化温度の向上及び機械強度の向上効果に優れた造核剤、及び該造核剤を含有する結晶性高分子組成物を提供すること。
【解決手段】フェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物のアルカリ土類金属のフェノキシド化合物またはフェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物の亜鉛のフェノキシド化合物である、造核剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造核剤及び該造核剤を含有する結晶性高分子組成物に関し、この結晶性高分子組成物は、主として、種々樹脂部品等の成形材料として用いられる。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン系高分子、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子、ポリアミド系高分子等の結晶性高分子は、加熱成形後の結晶化速度が遅いため、加工時の成形サイクルが長い等の問題があり、その上、成形後にも進行する結晶化によって、成形物が変形してしまうことがあった。また、これらの結晶性高分子は、加熱成形すると大きな結晶を生成するために、成形物の強度が不充分であったり、透明性が劣るという欠点があった。
【0003】
これらの欠点は、結晶性高分子の結晶性に由来するものであり、微細な結晶を急速に生成させることによって解消できることが知られている。現在、微細な結晶を急速に生成させるために、結晶化温度を上げるほか、造核剤、結晶化促進剤等を添加する等の方法が用いられている。
【0004】
上記の造核剤或いは結晶化促進剤として、例えば、ナトリウムベンゾエート、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム等のカルボン酸金属塩等が、従来から知られている。更に、亜鉛グリセロレート(特許文献1)、ジベンジリデンソルビトールまたはその誘導体(特許文献2〜4)、多価アルコールアルカリ土類金属塩または亜鉛塩とジベンジリデンソルビトールとの併用物(特許文献6)、特定の種類の不飽和二環式ジカルボン酸及び塩(特許文献7)、特定の種類の飽和二環式ジカルボン酸及び塩(特許文献8、9)等の化合物が報告されている。
【0005】
しかし、これら、カルボン酸、カルボン酸誘導体、カルボン酸金属塩、多価アルコール、多価アルコール誘導体、多価アルコール金属アルコキシド等の従来の造核剤或いは結晶化促進剤は、結晶性高分子に添加した際、結晶化温度の向上や機械強度の向上について、未だ満足できるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】特許第3182148号公報
【特許文献2】特開昭51−22740号公報
【特許文献3】特開昭56−161444号公報
【特許文献4】特開昭58−17135号公報
【特許文献5】特開平10−25295号公報
【特許文献6】特許第3336114号公報
【特許文献7】特表2004−531613号公報
【特許文献8】特表2004−531613号公報
【特許文献9】特表2004−530006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、結晶性高分子の結晶化温度の向上及び機械強度の向上効果に優れた造核剤、及び該造核剤を含有する結晶性高分子組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の多価フェノールの金属アルコキシド化合物に着目し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、フェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物のアルカリ土類金属のフェノキシド化合物またはフェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物の亜鉛のフェノキシド化合物である、造核剤を提供することで、上記目的を達成したものである。
【0009】
また本発明は、フェノキシド化合物が、下記一般式(I)で表される造核剤を提供する
ことで、上記目的を達成したものである。
【0010】
【化1】

[式中、R1、R2及びR3は、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Mは、アルカリ土類金属原子または亜鉛原子を表す。]
【0011】
また本発明は、上記造核剤を含有する造核剤組成物を提供することで、上記目的を達成したものである。
また本発明は、上記造核剤または上記造核剤組成物を含有する結晶性高分子組成物を提供することで、上記目的を達成したものである。
また本発明は、結晶性高分子がポリオレフィン系高分子である上記結晶性高分子組成物を提供することで、上記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、結晶性高分子の結晶化温度の向上及び機械強度の向上効果に優れた造核剤、及び該造核剤を含有する結晶性高分子組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態につき詳細に説明する。
本発明の造核剤は、フェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物のアルカリ土類金属のフェノキシド化合物またはフェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物の亜鉛のフェノキシド化合物である。
【0014】
フェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物の例としては、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル(没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル等)等が挙げられ、結晶性高分子の結晶化温度及び機械的強度の向上の点から、ピロガロールが好ましい。
【0015】
また、本発明の好ましい造核剤としては、結晶性高分子の結晶化温度の向上及び機械的強度の向上の点から、下記一般式(I)で表される化合物が挙げられる。
【0016】
【化2】

[式中、R1、R2及びR3は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Mは、アルカリ土類金属原子または亜鉛原子を表す。]
【0017】
一般式(I)において、R1、R2及びR3で表される炭素原子数1〜9のアルキル基
としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、第三アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、第三オクチル、ノニル、第三ノニル等が挙げられる。
また、一般式(I)において、Mで表されるアルカリ土類金属としては、マグネシウム
、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。
【0018】
Mは、結晶性高分子の結晶化温度の向上及び機械的強度の向上の点から、亜鉛原子が好ましい。
一般式(I)で表される化合物で、結晶性高分子の結晶化温度の向上及び機械的強度の
向上の点から、好ましい例を挙げると、ピロガロールの亜鉛フェノキシド化合物である、下記化合物No.1が挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
一般式(I)で表される化合物の製造方法は、特に制限されるものではないが、例えば
、ピロガロール等のフェノール性水酸基を分子中に三個有するフェノール化合物を、アルカリ土類金属化合物あるいは亜鉛化合物と反応させ、フェノキシド化合物にすればよい。
具体的には、上記化合物No.1を例とすると、ピロガロールと酸化亜鉛を、酸触媒存在下、約150℃、約3時間の条件下で反応させればよい。
【0021】
本発明の造核剤は、該造核剤単独で使用してもよく、該造核剤以外の造核剤や添加剤を含有する造核剤組成物として使用してもよい。該造核剤組成物として使用する場合、該造核剤組成物中の本発明の造核剤の含有量は、1〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。また、本発明の結晶性高分子組成物における本発明の造核剤組成物の含有量は、結晶性高分子100質量部に対し、本発明の造核剤が、好ましくは0.005〜10質量部、より好ましくは0.01〜2.5質量部となるような量である。また、上記造核剤組成物に配合され得る本発明の造核剤以外の造核剤や添加剤としては、後述する結晶性高分子組成物に配合され得る本発明の造核剤以外の造核剤や添加剤が挙げられる。
【0022】
本発明の造核剤を結晶性高分子に含有させた本発明の結晶性高分子組成物は、結晶化温度と機械的強度が向上した優れたものである。
上記、結晶性高分子としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、アイソチクタックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、ヘミアイソタクチックポリプロピレン、ステレオブロックポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィン重合体、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体等のα−オレフィン共重合体等のポリオレフィン系高分子;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の熱可塑性直鎖ポリエステル系高分子;ポリフェニレンスルフィド等のポリスルフィド系高分子;ポリカプロラクトン等のポリ乳酸系高分子;ポリヘキサメチレンアジパミド等の直鎖ポリアミド系高分子;シンジオタクチックポリスチレン等の結晶性のポリスチレン系高分子が挙げられる。
【0023】
本発明の結晶性高分子組成物に用いられる結晶性高分子としては、これらの結晶性高分子の中でも、本発明の造核剤の使用効果が顕著に奏されるポリオレフィン系高分子が好ましく、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、エチレン以外のα−オレフィン/プロピレンブロック又はランダム共重合体、これらのプロピレン系重合体と他のα−オレフィン重合体との混合物等のポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。
【0024】
本発明の結晶性高分子組成物中における本発明の造核剤の含有量は、特に限定されるものではないが、結晶性高分子100質量部に対して、0.005〜10質量部が好ましく、0.01〜2.5質量部がより好ましい。0.005質量部より少ないと、充分な添加効果を発揮しない場合があり、10質量部を超えると、添加効果の向上が得られずにコストが高くなるばかりではなく、結晶性高分子組成物から得られる成形品の物性に影響を及ぼす場合がある。
【0025】
本発明の結晶性高分子組成物は、必要に応じて、本発明の造核剤以外の造核剤や添加剤を含有してもよい。
【0026】
本発明の造核剤以外の造核剤としては、例えば、亜鉛グリセロレート、亜鉛プロパントリオレート等のアルコレート金属塩;リチウムベンゾエート、ナトリウムベンゾエート、アルミニウムベンゾエート、4−第三ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸ナトリウム等のカルボン酸金属塩;ナトリウムビス(4−第三ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム−2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウムビス[2,2'−メチレン−ビス−(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(ジメチルベンジリデン)ソルビトール等の多価アルコール誘導体;二ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプテンジカルボキシレート等の不飽和[2.2.1]二環式ジカルボン酸塩;二ナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタンジカルボキシレート等の飽和[2.2.1]二環式ジカルボン酸塩等が挙げられる。本発明の造核剤以外のこれらの造核剤は、本発明の結晶性高分子組成物中において、結晶性高分子100質量部に対して、0.05〜10質量部で用いるのが好ましい。
【0027】
また、必要に応じて用いられる添加剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、リン系抗酸化剤、フェノール系抗酸化剤、硫黄系抗酸化剤、脂肪族有機酸金属塩等の周知一般に用いられている添加剤が挙げられる。
上記HALSとしては、下記一般式(II)で表される化合物、塩化シアヌル縮合型HALS、高分子量型HALS等が挙げられる。
【0028】
【化4】

(式(II)中、mは、1〜6の整数を表し、Aは、水素原子、炭素数1〜18のm価の炭化水素基、m価のアシル基またはm価のカルバモイル基を表し、Bは、酸素原子、−NH−又は炭素数1〜8のアルキル基(Re)を有する−NRe−を表し、Yは、水素原子、オキシラジカル(・O)、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルキル基またはヒドロキシル基を表し、Zは、メチン、または炭素数1〜8のアルキル基(Rf)を有する下記一般式(III)で表される基を表す。)
【0029】
【化5】

【0030】
上記一般式(II)において、Aで表されるm価の炭素数1〜18の炭化水素基としては、メタン、エタン、プロパン、ブタン、第二ブタン、第三ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、第三ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、第三ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、第三オクタン、2−エチルヘキサン、ノナン、イソノナン、デカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、ペプタデカン、オクタデカン等の炭化水素化合物から誘導される基(アルキル基、アルカンジないしヘキサイル基)が挙げられる。
【0031】
上記一般式(II)において、Aで表されるm価のアシル基は、カルボン酸から誘導される基、m価カルボン酸から誘導される基、又は、n価カルボン酸から誘導され且つカルボキシル基がm個残存している(n−m)個のエステル基を含有するアルキルエステルから誘導される基である(カルボン酸、m価カルボン酸及び上記アルキルエステルを、アシル誘導体化合物という)。
【0032】
該アシル誘導体化合物としては、酢酸、安息香酸、4−トリフルオロメチル安息香酸、サリチル酸、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2−メチルコハク酸、2−メチルアジピン酸、3−メチルアジピン酸、3−メチルペンタン二酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリト酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸、プロパン−1,2,3−トリカルボン酸モノ又はジアルキルエステル、ペンタン−1,3,5−トリカルボン酸、ペンタン−1,3,5−トリカルボン酸モノ又はジアルキルエステル、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸モノないしトリアルキルエステル、ペンタン−1,2,3,4,5−ペンタカルボン酸、ペンタン−1,2,3,4,5−ペンタカルボン酸モノないしテトラアルキルエステル、ヘキサン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボン酸、ヘキサン−1,2,3,4,5,6−ヘキサカルボン酸モノないしペンタアルキルエステル等が挙げられる。
【0033】
上記一般式(II)において、Aで表されるm価のカルバモイル基は、イソシアネート化合物から誘導されるモノアルキルカルバモイル基又はジアルキルカルバモイル基である。
モノアルキルカルバモイル基を誘導するイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3、3'−ジメチルジフェニル−4、4'−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキシルジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,2,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1−メチルベンゾール−2,4,6−トリイソシアネート、ジメチルトリフェニルメタンテトライソシアネート等が挙げられる。
ジアルキルカルバモイル基としては、ジエチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ジヘキシルカルバモイル基、ジオクチルカルバモイル基等が挙げられる。
上記の炭素数1〜18のm価の炭化水素基、上記のm価のアシル基及び上記のm価のカルバモイル基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基等で置換されていてもよい。
【0034】
上記一般式(II)において、Bで表される基が有する、Reで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、1−エチルペンチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル等が挙げられる。
【0035】
上記一般式(II)において、Yで表される炭素数1〜18のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブチルオキシ、第三ブチルオキシ、イソブチルオキシ、アミルオキシ、イソアミルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、イソノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、トリデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ペンタデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、ペプタデシルオキシ、オクタデシルオキシ等が挙げられる。Yで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Reと同様の基が挙げられる。
上記一般式(II)におけるZを表す上記一般式(III)中のRfで表される炭素数1〜8のアルキル基としては、上記Reと同様の基が挙げられる。
【0036】
上記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジルメタクリレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−[トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ]エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0037】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記塩化シアヌル縮合型HALSとしては、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノ]ウンデカン等が挙げられる。
【0038】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記高分子量型HALSとしては、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物等が挙げられる。
【0039】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5'−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2'−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4'−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;ニッケル、クロム等の各種金属の金属塩又は金属キレート等が挙げられる。
【0040】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスフィト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4'−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス[2,2'−メチレンビス(4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4'−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0041】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4'−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、4,4'−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4'−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2'−エチリデンビス (4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス[2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル]テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル]イソシアヌレート、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ第三ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0042】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸の、ジラウリルエステル、ジミリスチルエステル、ミリスチルステアリルエステル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類、ペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【0043】
本発明の結晶性高分子組成物において用いることができる上記脂肪族有機酸金属塩としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ネオデカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、トウハク酸、リンデル酸、ツズ酸、パルミトレイン酸、ペトラセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、γ−リノレン酸、リノレン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ナフテン酸、アビエチン酸等の脂肪族有機酸と、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム等の金属とから得られるものが挙げられる。これらの脂肪族有機酸と金属とから得られる脂肪族有機酸金属塩の中でも、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛が好ましい。
【0044】
本発明の結晶性高分子組成物には、必要に応じて、さらに、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等からなる帯電防止剤;ハロゲン系化合物、リン酸エステル系化合物、リン酸アミド系化合物、メラミン系化合物、ポリリン酸のメラミン塩化合物、フッ素樹脂又は金属酸化物等の難燃剤;炭化水素系、脂肪酸系、脂肪族アルコール系、脂肪族エステル系、脂肪族アマイド系、金属石けん系等の滑剤;重金属不活性剤;ハイドロタルサイト;有機カルボン酸;染料顔料等の着色剤;ポリオレフィンパウダー等の加工助剤;フュームドシリカ、微粒子シリカ、けい石、珪藻土類、クレー、カオリン、シリカゲル、珪酸カルシウム、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、マイカ、ミネソタイト、パイロフィライト等の珪酸系添加剤;炭酸カルシウム等の充填剤等の添加剤を使用することができる。
【0045】
本発明の結晶性高分子組成物においては、上記添加剤を、必要に応じて、1種又は2種以上用いることができ、それぞれの添加剤の使用量は、結晶性高分子100質量部に対して、0.001〜10質量部が好ましい。0.001質量部未満では効果が得られない場合があり、また10重量部を超えると添加効果の向上が得られないばかりかコストが高くなる。
【0046】
また、必要に応じて用いられるこれらの添加剤の結晶性高分子への添加方法としては、本発明の造核剤とは別に結晶性高分子に添加する方法、予め本発明の造核剤と混合して混合物あるいは組成物とし、該混合物あるいは組成物を結晶性高分子に添加する方法、本発明の造核剤を、必要に応じて用いられる、バインダー、ワックス、溶剤、シリカ等の造粒助剤等と共に予め所望の割合で混合した後、造粒してワンパック複合添加剤とし、該ワンパック複合添加剤を結晶性高分子に添加する方法等が挙げられる。
【0047】
本発明の結晶性高分子組成物の用途としては、バンパー、ダッシュボード、インスツルメントパネル等の自動車用樹脂部品;冷蔵庫、洗濯機、掃除機等の家電製品用樹脂部品;食器、バケツ、入浴用品等の家庭用品;コネクター等の接続用樹脂部品;玩具等の雑貨品;医療用パック、注射器、カテーテル、医療用チューブ等の医療用成形品;壁材、床材、窓枠、壁紙等の建材;電線被覆材;ハウス、トンネル等の農業用資材;ラップ、トレイ等の食品包装材等のフィルム及びシートを含む成形品;繊維等が挙げられる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例をもって本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明は以下の実施例によって何ら制限を受けるものではない。
尚、製造例は、造核剤の合成例を示し、実施例は、製造例で得られた造核剤を含有する結晶性高分子組成物の調製及び評価を示す。また、比較例は、造核剤を含有しない比較結晶性高分子組成物、及び比較造核剤を含有する比較結晶性高分子組成物の調製及び評価を示す。
【0049】
[製造例1]
以下の方法で、造核剤(化合物No.1)を合成した。
【0050】
【化6】

【0051】
すなわち、200mlの3つ口フラスコに酸化亜鉛(5g)、ピロガロール(8.5g)および触媒の酢酸亜鉛2水和物(0.5g)を加えた。溶媒としてMSP(40ml)とジエチレンモノブチルエーテル(3ml)を加えた後140℃、3時間反応させた。室温まで冷却後、エタノール(20ml)、水(10ml)を加えた。なお操作はすべて窒素雰囲気下でおこなった。生成物を濾別後、30mlのエタノールで洗浄し、黒色固体を82%の収率で得た。得られた個体の亜鉛含有量は37wt%であり、理論値(34.5%)とほぼ一致していた。
【0052】
[実施例1、比較例1〜4]
表1記載の造核剤を用いて、下記配合の結晶性高分子組成物を調整し、試験片を作成した。
すなわち、ポリプロピレンパウダー(2.5kg)に精秤した下記配合成分を加え、ヘンシェルミキサーで1000rpm、1分間ブレンドした後、φ30mm単軸押出機(60メッシュ入り)を用い240℃、25rpmで造粒した。得られたペレットを射出温度230℃、金型温度50℃で射出成形し各種試験片を得た。試験片は射出成形後直ちに23℃の恒温槽に移し、7日間静置した後、物性試験(結晶化温度、曲げ弾性率)を行った。結果を〔表1〕に示す。
【0053】
<配合>
ポリプロピレンパウダー 100質量部
テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ第3ブチル−4'−
ヒドロキシフェニル)プロピオネート・・・・・・・・・・・・・・・0.1質量部
トリス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ホスファイト・・・・・・・0.1質量部
ステアリン酸カルシウム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.05質量部
造核剤(表1)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.1質量部
【0054】
<結晶化温度測定方法>
・測定サンプル調整法
前記ペレットをプレス成型機でフィルムを作成した(230℃、50t x 30秒)。 φ6mmのパンチで切り出した小片をDSC測定用パンに挿入密着させDSC測定サン プルとした。なお、各種測定はPerkin-Elmer製 Diamond-DSCを用いて行った。
・結晶化温度測定
20℃/分で230℃まで昇温し10分間保持した。その後、10℃/分で80℃ま で冷却し結晶化温度を測定した。
【0055】
<曲げ弾性率測定方法>
23℃に保たれた室内で20mm/分で応力―歪測定を行い、その初期の接線の傾き から曲げ弾性率を求めた。3回の試験結果の平均を測定値とした(ISO178準拠)。
【0056】
比較造核剤として、下記比較化合物1〜3を同様に試験した。結果を表1に示す。
【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物のアルカリ土類金属のフェノキシド化合物またはフェノール性水酸基を分子中に三個有する化合物の亜鉛のフェノキシド化合物である、造核剤。
【請求項2】
請求項1記載のフェノキシド化合物が、下記一般式(I)で表される造核剤。
【化1】

[式中、R1、R2及びR3は、各々独立に、水素原子または炭素原子数1〜9のアルキル基を表し、Mは、アルカリ土類金属原子または亜鉛原子を表す。]
【請求項3】
請求項1または2記載の造核剤を含有する造核剤組成物。
【請求項4】
請求項1または2記載の造核剤、あるいは請求項3記載の造核剤組成物を含有する結晶性高分子組成物。
【請求項5】
請求項1または2記載の造核剤の含有量が、結晶性高分子100質量部に対して、0.005〜10質量部である請求項4記載の結晶性高分子組成物。
【請求項6】
結晶性高分子がポリオレフィン系高分子である請求項4または5記載の結晶性高分子組成物。

【公開番号】特開2007−224132(P2007−224132A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46166(P2006−46166)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】