説明

連動昇降式平行棒

【課題】容易に水平棒の高さを調節することができる連動昇降式平行棒を提供する。
【解決手段】水平棒4と、その軸線方向に間隔を空けて立設され上下に伸縮可能な第一支柱10及び第二支柱20とを備える一対の昇降型手摺2、2が、水平棒4、4の軸線が平行となるように配設されてなる連動昇降式平行棒1において、第一支柱10と第二支柱20の上下伸縮の同期を図る同期機構としての第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40が、水平棒4内にて第一支柱10と第二支柱20とを掛け渡すように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行運動機能を回復させるための歩行訓練に使用される連動昇降式平行棒に関する。
【背景技術】
【0002】
歩行運動機能が低下した患者が歩行運動のリハビリテーションを受ける際、平行棒を使用して歩行訓練をする場合が多く、一般的な平行棒は、間隔を空けて立設された支柱に水平方向に延在する水平棒が架設された構成からなっている。
このような平行棒を使用して歩行訓練をする場合、訓練者は転倒しないように水平棒を掴み、自らの身体を支えつつ歩行訓練を行う。従って、水平棒の高さは、訓練者にとって掴みやすく身体を支え易い高さに配置されていることが望ましい。
【0003】
従来、水平棒の高さを調節するため、上下方向に伸縮可能な支柱を有する平行棒が提供されている。
伸縮可能な支柱は、例えば、フロアに立設された中空の管部材と、管部材の上端部内に嵌入されているとともに上端が水平棒に接合されている棒部材とから構成されており、棒部材を所定の高さにおいてピンやねじ等で管部材に固定することで、支柱をそれぞれ適当な高さに伸縮させることができ、水平棒の高さを調整することができる。
【0004】
ところが、このような平行棒において水平棒の高さを調整する際、水平棒を支える両端の支柱を1本ずつ伸縮させようとすると、棒部材が管部材内で傾斜するため、伸縮させている途中で棒部材の下端部が管部材の内周面に引っかかり、スムーズに伸縮させることができない。
【0005】
そこで、両端の支柱を同期させて上下方向に伸縮させる同期機構を備える昇降式平行棒が提案されている。例えば、特許文献1に記載の昇降式平行棒は、水平棒を支持する支柱が、固定された外筒と、この外筒に上下移動可能に取り付けられた内筒とからなり、同一の水平棒を支持する2つの支柱において、一方の支柱の内筒の上端と他方の支柱の内筒の下端とを連結するワイヤーと、一方の支柱の内筒の下端と他方の支柱の内筒の上端とを連結するワイヤーとが、それぞれの支柱の外筒に設けられたプーリに掛け回されることによって、水平棒が水平状態を保ったまま上下移動する同期機構を構成している。
【特許文献1】特開平9−47478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の昇降式平行棒においては、支柱間の水平棒の下方には、同一の水平棒を支持する支柱を連結するワイヤーがむき出しの状態、もしくはワイヤーを収納するパイプが設けられているため、これが歩行訓練の妨げとなることがあった。また、患者をサポートするための療法士が水平棒の下をくぐったり、患者に接近してサポートをすることができず、歩行訓練に応じた柔軟な介助ができないという問題が生じていた。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、各種歩行訓練を円滑に行うことが可能な連動昇降式平行棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る連動昇降式平行棒は、水平棒と、その長手方向に間隔を空けて立設され上下に伸縮可能な第一支柱及び第二支柱とを備える一対の昇降型手摺が、前記水平棒が平行となるように配設されてなる連動昇降式平行棒において、前記第一支柱と前記第二支柱の上下伸縮の同期を図る同期機構が、前記水平棒内にて前記第一支柱と前記第二支柱とに掛け渡されていることを特徴としている。
【0009】
このような特徴の連動昇降式平行棒によれば、第一及び第二支柱間には水平棒のみが存在し、同期機構が外部に露出することはないため、当該同期機構が歩行訓練を行う患者や療法士の動作の妨げになることはない。
【0010】
また、本発明に係る連動昇降式平行棒は前記第一支柱は、第一固定支柱と、上端において前記水平棒を支持するとともに前記第一固定支柱に上下移動可能に挿入された第一可動支柱とを備え、前記第二支柱は、第二固定支柱と、上端において前記水平棒を支持するとともに前記第二固定支柱に上下移動可能に挿入された第二可動支柱とを備え、前記同期機構は、一端が前記第一固定支柱に連結されるとともに他端が前記第二固定支柱に連結されて、前記第一支柱と第二支柱との間を掛け渡す第一ワイヤーと第二ワイヤーとからなり、前記第一ワイヤーは、前記第一固定支柱に固定された第一掛回部と、該第一掛回部の下方に配置されるとともに前記第一可動支柱と一体となって上下移動可能とされた第一動滑車とに掛け回され、前記第二ワイヤーは、前記第二固定支柱に固定された第二掛回部と、該第二掛回部の下方に配置されるとともに前記第二可動支柱と一体となって上下移動可能とされた第二動滑車とに掛け回されていることを特徴としている。
【0011】
例えば第一可動支柱を上昇させると、第二可動支柱内の第二ワイヤーに上方に向かっての張力が及ぶ。これによって第二動滑車が第二掛回部に近接するようにして上昇すると、該第二動滑車と一体とされた第二可動支柱も上昇する。また、このような第二可動支柱の上昇は、第一ワイヤーが上記第二ワイヤーと同様に作用することで第一可動支柱の上昇にフィードバックされる。
一方、例えば第一可動支柱を下降させると、第一動滑車が第一掛回部から離間するようにして降下することに伴い、第二支柱内の第一ワイヤーには、第一支柱側に引き込まれる方向に張力が及び、これによって第二可動支柱が下降する。また、このような第二可動支柱の下降は、第二ワイヤーが上記第一ワイヤーと同様に作用することで第一可動支柱の下降にフィードバックされる。
したがって、いずれか一方の可動支柱を昇降させると、第一及び第二ワイヤーを介して両可動支柱が同期的に昇降するため、両可動支柱を常に同様の高さ位置に保ちながら上下移動させることができる。
【0012】
また、本発明に係る連動昇降式平行棒においては、前記水平棒内における前記第一可動支柱及び第二可動支柱との各連結部に、前記第一ワイヤー及び前記第二ワイヤーが掛け回される滑車が設けられたことを特徴としている。
これにより第一ワイヤー及び第二ワイヤーが円滑に移動することができるため、第一可動支柱及び第二可動支柱の上下移動を容易かつ円滑に行わせることができる。
【0013】
さらに、本発明に係る連動昇降式平行棒においては、第一支柱及び第二支柱のいずれか一方に、前記第一可動支柱又は前記第二可動支柱を上下移動させる操作部が設けられていることを特徴としている。
これによって容易に水平棒の高さを調節することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る連動昇降式平行棒は、前記第一可動支柱及び前記第二可動支柱と前記水平棒とが着脱可能に連結されていることを特徴としている。
これにより、上記第一及び第二ワイヤーが第一支柱と第二支柱とを掛け渡しながらも、両支柱と水平棒とを分離させたり、連結部を支点として折り畳むことができるため、連動昇降式平行棒の移動や搬送を容易にすることが可能になる。
【0015】
さらに、本発明に係る連動昇降式平行棒においては、前記第一可動支柱及び前記第二可動支柱と前記水平棒とが水平方向に回動可能に連結されていることを特徴としている。
水平棒を支柱に対して水平方向に回動させることにより、一対の昇降型手摺の水平棒を互いに斜め平行となるようにし、平面視における水平棒間の距離を変化させることができる。これによって、様々な体格の患者に対応することができるとともに、歩行訓練のバリエーションを増やすことが可能となる。また、これにより当該連動昇降式平行棒の水平方向に占める面積を小さすることができるため、例えば壁際に収納する際等にはコンパクトに収納することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水平棒によれば、支柱間を掛け渡す同期機構が水平棒内に収納されていることによって、当該同期機構が歩行訓練を行う患者や療法士の動作を妨げることはなく、各種歩行訓練を円滑に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る連動昇降式平行棒について、図1から図6を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る連動昇降式平行棒が収縮状態にある場合の側面透視図、図2は本実施形態に係る連動昇降式平行棒の平面透視図、図3は図1における連動昇降式平行棒のA方向矢視図、図4は連動昇降式平行棒が収縮状態にある場合の内部構造を表す概略模式図、図5は本実施形態の連動昇降式平行棒が伸張状態にある場合の第一支柱の側面透視図、図6は連動昇降式平行棒が伸張状態にある場合の内部構造を表す概略模式図である。
【0018】
連動昇降式平行棒1は、詳しくは図2に示すように対向する一対の昇降型手摺2によって形成されており、昇降型手摺2は図1から図3に示すように、床面に配置された薄板状のベースプレート3と、ベースプレート3上に立設された第一支柱10及び第二支柱20と、該第一支柱10及び第二支柱20の上部に支持されている水平棒4と、第一支柱10と第二支柱20の上下伸縮の同期を図る同期機構としての第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40とを備えている。
【0019】
ベースプレート3は、2本の水平棒4、4の各対向する第一支柱10、10及び第二支柱20、20を相互に連結しており、平面視にて略長方形の薄板状の形状を有し、その長手方向が連動昇降式平行棒1の左右方向(昇降型手摺2が対向する方向)となるように、前後方向(水平棒4、4が延在する方向)に間隔を空けて2枚が平行に並べられている。
【0020】
このようなベースプレート3、3のそれぞれには、図2に示すように、左右方向に間隔を空けながら一対の第一支柱10、10又は第二支柱20、20が設けられている。
第一支柱10及び第二支柱20は、ベースプレート3の上面に立設された略多段四角柱状の形状を有し、第一支柱10は第一固定支柱11と第一可動支柱12とから構成され、第二支柱20は第二固定支柱21と第二可動支柱22とから構成されている。
【0021】
第一固定支柱11は、断面四角形の筒型形状をなし、その下端が該ベースプレート3に固定支持されている。また、この第一固定支柱11の内壁面の上部には円盤状をなす第一掛回部13が設けられている。第一掛回部13はその中心軸線を連動昇降式平行棒1の前後方向をに向けて配置され、その外周側面に後述する第一ワイヤー30が上方が凸となるように上下に掛け回されるようになっている。
なお、当該第一掛回部13は、その中心軸線に回転可能な滑車であってもよい。
【0022】
第一可動支柱12は、第一固定支柱よりも外径寸法が小さく形成された断面四角形の筒型形状をなし、その下端側が上記第一固定支柱11の上方開口に挿入され、該第一固定支柱11に対して上下方向に移動可能となるように取り付けられている。
この第一可動支柱12の上端部は、上下方向に連通状態であって、後述する水平棒4の第一連結部6aが嵌まり込む断面円形の第一連結孔14が設けられている。
さらに第一可動支柱12の下端部には、ブラケット15を介して第一動滑車16が設けられている。また、第一動滑車は16は、連動昇降式平行棒1の左右方向を軸線として回転可能に構成され、後述する第一ワイヤー30が下方が凸となるように上下に巻き掛けられ、第一可動支柱12が上下移動する際に該第一可動支柱12と一体となって上下移動するように構成されている。
【0023】
また、第二固定支柱21及び第二可動支柱22は、第一固定支柱11及び第一可動支柱12と同様の構成のもの水平面上を180°回転させて配置させるものであり、第二固定支柱21は第二掛回部23を備え、第二可動支柱22は第二連結孔24、ブラケット25及び第二動滑車26を備えている。
なお、第二掛回部23も第一掛回部13と同様に、その中心軸回りに回転可能な滑車状に構成されていてもよい。
【0024】
水平棒4は、第一可動支柱12及び第二可動支柱22のそれぞれの上端2点によって支持されて水平方向に延在する棒状をなし、本実施形態においてはその内部はくり貫かれて中空部5とされている。
該水平棒4における第一可動支柱12及び第二可動支柱22の上端に対応する箇所には、それぞれ鉛直方向に延びる円筒状をなす第一連結部6a及び第二連結部6bが設けられている。これら第一連結部6a及び第二連結部6bは、上述の第一可動支柱12の第一連結孔14及び第二可動支柱22の第二連結孔24に嵌り込むことによって、水平棒4を第一可動支柱12及び第二可動支柱22に固定するようになっている。
【0025】
また、本実施形態においては第一連結部6a及び第二連結部6bと第一連結孔14及び第二連結孔24とは取り外し可能であるとともに、連結された状態であってもこれらの間には僅かな緩みがあり、第一連結部6a及び第二連結部6bは第一連結孔14及び第二可動支柱22に対して水平方向に回動可能とされている。なお、これらは歩行訓練の際には、例えばボルト等によって回動不能に固定されてもよいし、水平方向に回動可能のままであってもよい。
【0026】
また、第一連結部6a及び第二連結部6bは水平棒4の中空部5と外部とを連通させており、第一可動支柱12及び第二可動支柱22に取り付けられた際には、該水平棒4の中空部5とこれら第一可動支柱12及び第二可動支柱22内とを連通状態とさせている。
【0027】
さらに、水平棒4の中空部5における第一連結部6a及び第二連結部6bの配設箇所付近には、それぞれ連動昇降式平行棒1の左右方向を軸線として回転可能とされた第一滑車7a及び第二滑車7bが設けられている。これら第一滑車7a及び第二滑車7bのそれぞれは、互いに独立して回転可能な2つの滑車が並設されることにより構成されている。そして、第一滑車7a及び第二滑車7bにおける2つの滑車のそれぞれに後述する第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40が外周面の略4分の1の範囲に巻き掛けられ、当該第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40を水平棒4の中空部5と第一支柱10及び第二支柱20との間で導出入可能としている。
【0028】
そして、上記のような第一支柱10及び第二支柱20とを水平棒4の中空部5内で掛け渡すようにして、例えば鋼鉄等のような大きな張力にも耐え得る材質で形成された第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40が配設されている。以下、これら第一ワイヤ30及び第二ワイヤー40の配設構造について、図1から図3に加えて図4も参照しながら説明する。
【0029】
第一ワイヤー30はその一端30aが、第一固定支柱11の内壁面付近に設けられたワイヤー固定部17に連結固定されている。
そして、第一ワイヤー30はワイヤー固定部17から上方に延びた後、第一掛回部13に上方に凸となるように上下に掛け回されて下方に延び、その後、第一動滑車16に下方に凸となるように上下に掛け回される。
その後、第一ワイヤー30は第一可動支柱12内を上方に向かって延び、第一連結孔14及び第一連結部6aを介して水平棒4の中空部5に至る。しかる後、中空部5の第一滑車7aの外周面略4分の1の範囲に巻き掛けられ中空部5に沿って第二支柱20に向かって延び、第二滑車7bの外周面略4分の1の範囲に巻きかけられて下方に向かって延びる。そして、第二連結部6b及び第二連結孔24を通過して第二可動支柱22内をさらに下方に向かって延び、第二固定支柱21の下部に設けられたワイヤー固定部28に他端30bが連結される。
【0030】
同様にして、第二ワイヤー40の一端40aは第二固定支柱12の内壁面付近に設けられたワイヤー固定部27に連結固定され、該ワイヤー固定部27から上方に延びた後、第二掛回部23に上方に凸となるように上下に掛け回されて下方に延び、第一動滑車26に下方に凸となるように上下に掛け回される。
その後、第一ワイヤー40は第二可動支柱22内を上方に向かって延びて、第一連結孔24及び第一連結部6bを介して水平棒4の中空部5に至る。そして、中空部5の第二滑車7bの外周面略4分の1の範囲に巻き掛けられ中空部5に沿って水平方向に延び、第一滑車7aの外周面略4分の1の範囲に巻きかけられて下方に向かって延びる。その後、第一連結部6a及び第一連結孔14を通過して第一可動支柱12内をさらに下方に向かって延び、第一固定支柱11の下部に設けられたワイヤー固定部18に他端40bが連結される。
【0031】
以上のようにして、第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40は互いに昇降型手摺2の前後方向中央を境に対称となるように第一支柱10及び第二支柱20を水平棒4内で掛け渡している。
【0032】
また、本実施形態の連動昇降式平行棒1においては、それぞれの水平棒4、4の第一支柱10、10には、図1及び図2に示すようにロック付ガススプリング50が設けられている。ロック付ガススプリング50は、ロック機能を有した伸縮部材であって、内部に高圧ガスが注入されておりその反力を利用することにより一方向に付勢することができる仕組みを有するものである。
【0033】
このロック付ガススプリング50は第一支柱10における第一可動支柱12内に上下方向に沿って配設されており、下端がベースプレート3上に固定されているとともにその上端が連結部51として第一可動支柱12の上端付近と連結されている。これによって、第一可動支柱12を上方向に付勢することができるように構成されている。
【0034】
また、ロック機能は、操作部として第一固定支柱11の下部に設けられた高さ調節用のペダル52の操作で作用するものであり、ペダル52を踏むとロックが解除されてロック付ガススプリング50が伸張して第一可動支柱12を上方向に付勢するようになっている。一方、ペダル52を踏まないときには、ロックが作用してロック付ガススプリング50の伸張が阻止されてその長さが固定される。
【0035】
次に本実施形態に係る連動昇降式平行棒1の使用方法について説明する。
例えば、図1に示す連動昇降式平行棒1が伸縮した状態から水平棒4の上昇させて伸張させる際には、まず、患者や療法士等の操作者がペダル52を踏んでロック付きガススプリング50のロックを解除させる。これにより、ロック付ガススプリング50が第一可動支柱12を上方向に付勢する、操作労力を少なくして第一可動支柱12を上昇させることができる。
【0036】
第一可動支柱12を上昇させると、第二可動支柱22内の第二ワイヤー40に上方に向かっての張力が及ぶ。これによって第二動滑車26が第二掛回部23に近接するようにして上昇すると、該第二動滑車26と一体とされた第二可動支柱22も上昇する。また、このような第二可動支柱22の上昇は、第一ワイヤー30が上記第二ワイヤー40と同様に作用することで第一可動支柱12の上昇にフィードバックされる。
したがって、第一可動支柱12を上昇させる際には、第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40を介して第一可動支柱12及び第二可動支柱22が互いに同期して上昇する。その結果、水平棒4が水平状態を保ったまま上昇し、図5及び図6に示すような連動昇降式平行棒4が伸張した状態とすることができる。
【0037】
なお、これら第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40は、水平棒4の中空部5に滑車7a、7bが存在することにより、水平棒5内と第一支柱10及び第二支柱20間を円滑に移動することができるため、第一可動支柱12及び第二可動支柱22の昇降を容易かつ円滑に行うことが可能となる。
【0038】
一方、水平棒4を下降させて連動昇降式平行棒1を収縮させる場合には、患者や療法士等の操作者がペダル52を踏んでロック付きガススプリング50のロックを解除させるともに、手動で第一可動支柱12を押し込むようにして降下させる。すると、該第一可動支柱12と一体とされた第一動滑車16が第一掛回部13から離間するようにして降下することに伴い、第二支柱20内の第一ワイヤー30には、第一支柱10側に引き込まれる方向に張力が及び、これによって第二可動支柱22も下降する。また、このような第二可動支柱22の下降は、第二ワイヤー40が上記第一ワイヤー30と同様に作用することで第一可動支柱の下降にフィードバックされる。
したがって、第一可動支柱12を降下させる際にも、第二可動支柱22を同期させて降下させることができ、水平棒4が水平状態を保ったまま連動昇降式平行棒1を収縮させることが可能となる。
なお、本実施形態においては、ロック付きガススプリング50の反力は、水平棒4と第一可動支柱12及び第二可動支柱22の重量よりも僅かだけ大きなものとなるように設定されている。したがって、患者や療法士等の操作者が軽い力で押し込むことのみをもって水平棒4を下降させることができる。
【0039】
以上のようにして、本実施形態の連動昇降式平行棒1においては、第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40が同期機構として作用することにより、第一可動支柱12及び第二可動支柱22の昇降を同期させて水平棒4を水平に保ったまま連動昇降式平行棒1を伸縮させることが可能となる。
【0040】
また、上記第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40は、水平棒4内の中空部5にて、第一支柱10及び第二支柱20とを掛け渡して同期を図っているため、当該第一支柱10及び第二支柱20間には水平棒4のみが存在しすることになる。したがって、第一ワイヤー30及び第二ワイヤー40からなる同期機構が歩行訓練を行う患者や療法士の動作を妨げることはないため、各種歩行訓練を円滑に行うことが可能となる。
【0041】
また、本実施形態に係る連動昇降式平行棒1においては、第一可動支柱12及び第二可動支柱22と水平棒4とが、それぞれ第一連結孔14と第一連結部6aとの間で、第二連結孔24と第二連結部6bとの間で取り外し可能であるため、第一支柱10及び第二支柱20と水平棒4とを分離させ、連動昇降式平行棒1の移動や搬送を容易にすることが可能になる。
【0042】
さらに、第一連結部6a及び第二連結部6bは第一連結孔14及び第二連結孔24に対して水平方向に回動可能とされているため、水平棒4を第一支柱10及び第二支柱20に対して水平方向に回動させることにより、例えば図7(a)に示すように、一対の昇降型手摺2、2の水平棒4、4を互いに斜め平行となるようにし、平面視における水平棒4、4間の距離を変化させることができる。これによって、様々な体格の患者に対応することができるとともに、歩行訓練のバリエーションを増やすことが可能となる。さらに、同様にして、例えば図7(b)に示すように、2つの水平棒4、4が接するまで水平方向に回転させることにより、連動昇降式平行棒1の水平方向に占める面積を小さすることができるため、例えば壁際に収納する際等にはスペースをとらずしてコンパクトに収納することが可能となる。
【0043】
以上、本発明である連動昇降式平行棒1の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。例えば、実施形態における連動昇降式平行棒1においては、水平棒4と第一支柱10及び第二支柱20とが取り外し自在であることにより、その移動や搬送を容易としているが、これとは別に、第一支柱10及び第二支柱20とが、その長手方向が水平棒4に沿うような位置まで該水平棒4に対して回動可能に連結されたものであってもよい。これにより、その連結箇所を支点として第一支柱10及び第二支柱20を水平棒4に沿って折り畳むようにすることで、連動昇降式平行棒1のコンパクト化を図り、搬送を用意にすることができる。。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本実施形態に係る連動昇降式平行棒が収縮状態にある場合の側面透視図である。
【図2】本実施形態に係る連動昇降式平行棒の平面透視図である。
【図3】図1における連動昇降式平行棒のA方向矢視図である。
【図4】連動昇降式平行棒が収縮状態にある場合の内部構造を表す概略模式図である。
【図5】本実施形態の連動昇降式平行棒が伸張状態にある場合の第一支柱の側面透視図である。
【図6】連動昇降式平行棒が伸張状態にある場合の内部構造を表す概略模式図である。
【図7】水平棒を互いに斜め平行となるようにして水平棒間の距離を変化させた場合の連動昇降式平行棒を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 連動昇降式平行棒
2 昇降型手摺
4 水平棒
7a 第一滑車(滑車)
7b 第二滑車(滑車)
10 第一支柱
11 第一固定支柱
12 第一可動支柱
13 第一掛回部
16 第一動滑車
20 第二支柱
21 第二固定支柱
22 第二可動支柱
23 第二掛回部
26 第二動滑車
30 第一ワイヤー
40 第二ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平棒と、その長手方向に間隔を空けて立設され上下に伸縮可能な第一支柱及び第二支柱とを備える一対の昇降型手摺が、前記水平棒が平行となるように配設されてなる平行棒において、
前記第一支柱と前記第二支柱の上下伸縮の同期を図る同期機構が、前記水平棒内にて前記第一支柱と前記第二支柱とに掛け渡されていることを特徴とする平行棒。
【請求項2】
前記第一支柱は、第一固定支柱と、上端において前記水平棒を支持するとともに前記第一固定支柱に上下移動可能に挿入された第一可動支柱とを備え、
前記第二支柱は、第二固定支柱と、上端において前記水平棒を支持するとともに前記第二固定支柱に上下移動可能に挿入された第二可動支柱とを備え、
前記同期機構は、一端が前記第一固定支柱に連結されるとともに他端が前記第二固定支柱に連結されて、前記第一支柱と第二支柱との間を掛け渡す第一ワイヤーと第二ワイヤーとからなり、
前記第一ワイヤーは、前記第一固定支柱に固定された第一掛回部と、該第一掛回部の下方に配置されるとともに前記第一可動支柱と一体となって上下移動可能とされた第一動滑車とに掛け回され、
前記第二ワイヤーは、前記第二固定支柱に固定された第二掛回部と、該第二掛回部の下方に配置されるとともに前記第二可動支柱と一体となって上下移動可能とされた第二動滑車とに掛け回されていることを特徴とする請求項1に記載の平行棒。
【請求項3】
前記水平棒内における前記第一可動支柱及び前記第二可動支柱との各連結部付近に、前記第一ワイヤー及び前記第二ワイヤーが掛け回される滑車が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の平行棒。
【請求項4】
第一支柱及び第二支柱のいずれか一方に、前記第一可動支柱又は前記第二可動支柱を上下移動させる操作部が設けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の平行棒。
【請求項5】
前記第一可動支柱及び前記第二可動支柱と前記水平棒とが着脱可能に連結されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の平行棒。
【請求項6】
前記第一可動支柱及び前記第二可動支柱と前記水平棒とが水平方向に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の平行棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−225982(P2009−225982A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−74517(P2008−74517)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)