説明

連結構造

【課題】 二輪車の前輪側にフロントフォークを架装する場合の利用に向くようにする。
【解決手段】 フォークブラケットBの取り付け孔に導通されるフロントフォークFにおける筒状に形成の上端部11の下半側が上方に行くにしたがって外径を徐々に縮径する傾斜部11aとされ、この傾斜部11aに連続する上端部11の上半側が外径を同じにするストレート部11bとされ、フォークブラケットBにおける取り付け孔4の下半側が内径を下方に向けて徐々に大きくするコーン状孔4aとされ、フォークブラケットBにおける取り付け孔4の上半側が上方に向けて内径を変化させないストレート孔4bとされ、このストレート孔4bに導通されるストレート部11bの内周に螺合されるキャップ部材2の締め付けで傾斜部11aがコーン状孔4aで引き上げられてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連結構造に関し、特に、二輪車の前輪を懸架するフロントフォークの上端部をハンドル側たるフォークブラケットに連結する際の利用に向く連結構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
二輪車の前輪を懸架するフロントフォークの上端部をハンドル側たるフォークブラケットに連結する際の利用に向く連結構造としては、これまでに種々の提案があるが、その中に、たとえば、特許文献1および特許文献2に開示の提案がある。
【0003】
すなわち、特許文献1に開示されている連結構造にあっては、フォークブラケットにおいて、フロントフォークの上端部を導通させる取り付け孔に割りを有し、この取り付け孔に対するフロントフォークの上端部の導通を容易にしている。
【0004】
そして、この連結構造にあっては、取り付け孔が上端に内側フランジ部を有し、この内側フランジ部の下端にフロントフォークの上端を当接させて、取り付け孔をフロントフォークの上端部が突き抜けるのを阻止している。
【0005】
それゆえ、この特許文献1に開示の連結構造にあっては、フロントフォークの上端を取り付け孔の内側フランジ部の下端に当接させた状態下に、ボルトの締め付けで取り付け孔の割りを消滅させるようにしてフロントフォークの上端部をフォークブラケットで把持する状態に連結し得る。
【0006】
一方、特許文献2に開示されているところでは、フォークブラケットにおける取り付け孔が断面を末広がりにするテーパー孔とされ、フロントフォークの上端部もこのテーパー孔に対応するコーン状に形成されている。
【0007】
それゆえ、この特許文献2に開示されている連結構造の提案にあっては、フロントフォークの上端部に螺装されるボルトの締め付けでフロントフォークの上端部を取り付け孔で引き上げ、その際の楔効果でフロントフォークがフォークブラケットに一体的に連結される。
【特許文献1】実開昭57‐60893号公報(第1図および第2図参照)
【特許文献2】実開昭57‐98991号公報(第2図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記した特許文献1および特許文献2に開示の連結構造にあっては、フロントフォークの上端部をフォークブラケットに連結する基本的な点で問題がある訳ではないが、その具現化にあって、些かの不具合があると指摘される可能性がある。
【0009】
すなわち、特許文献1の連結構造では、取り付け孔の内周とフロントフォークの外周との間における締め付け力が周方向に均一にならず、したがって、締め付け力が周方向に均一になる完全な締め付けを具現化できない不具合がある。
【0010】
その点、特許文献2の連結構造では、取り付け孔が割りを有しないから、フォークブラケット側からフロントフォークの外周側に向けての締め付け力の均一化を図り易い。
【0011】
しかし、この特許文献2の連結構造にあっては、フロントフォークの上端部とフォークブラケットの取り付け孔とが楔効果で一体的に連結されることを鑑みると、たとえば、フォークブラケットに肉厚が厚くなり、したがって、テーパー孔が深くなる場合には、これが深くなればなる程、楔におけるいわゆる傾斜角が緩くなり、その結果、両者間におけるストローク量のわりあいには、効果的な楔効果を得難くなる不具合を招く。
【0012】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、二輪車の前輪側にフロントフォークを架装する場合の利用に向き、その汎用性の向上を期待するのに最適となる連結構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した目的を達成するために、この発明による連結構造の構成を、基本的には、二輪車の前輪を懸架するフロントフォークの上端部をハンドル側たるフォークブラケットの取り付け孔に導通させると共にフロントフォークの上端部へのキャップ部材の螺合でフロントフォークの上端部をフォークブラケットに連結してなる連結構造において、フォークブラケットの取り付け孔に導通されるフロントフォークにおける上端部が筒状に形成され、この上端部の下半側が上方に行くにしたがって外径を徐々に縮径する傾斜部とされ、この傾斜部に連続する上端部の上半側が外径を同じにするストレート部とされ、フォークブラケットにおける取り付け孔の下半側が内径を下方に向けて徐々に大きくするコーン状孔とされ、フォークブラケットにおける取り付け孔の上半側が上方に向けて内径を変化させないストレート孔とされ、このストレート孔に導通されるフロントフォークの上端部におけるストレート部の内周にキャップ部材が螺合されると共に、このキャップ部材の締め付けでフロントフォークの上端部における傾斜部がフォークブラケットの取り付け孔におけるコーン状孔で引き上げられてなるとする。
【発明の効果】
【0014】
それゆえ、この発明にあっては、フォークブラケットの取り付け孔における下半側のコーン状孔にフロントフォークの上端部における下半側の傾斜部が嵌挿された状態下に、フロントフォークの上端部におけるストレート部の内側に螺合されるキャップ部材の締め付けによって、フロントフォークの上端部における傾斜部がフォークブラケットの取り付け孔におけるコーン状孔で引き上げられて密着する。
【0015】
このとき、フォークブラケットの取り付け孔における上半側のストレート孔にフロントフォークの上端部における上半側のストレート部が嵌挿されるから、両者間に調芯作用が発現され、したがって、傾斜部とコーン状孔との間の楔効果が設定の通りに得られる。
【0016】
のみならず、上記の傾斜部およびコーン状孔を形成するのにあって、フォークブラケットにおける取り付け孔の肉厚方向の全長に亙って形成せず、また、フロントフォークにおける上端部の肉厚方向の全長に亙ってこれを形成せず、下半側に形成するから、傾斜部およびコーン状孔における傾斜角が楔効果を発揮する上で有利になる急角度に設定でき、短い移動ストロークで効果的に楔効果を発揮でき、両者の一体化にあって、両者間の密着性が向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図示する実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による連結構造は、図1および図2に示すように、二輪車の前輪を懸架するフロントフォークFの上端部をハンドル側たるフォークブラケットBに連結する際に具現化される。
【0018】
そして、フロントフォークFは、下端側に前輪を連結させてこれを懸架する一方で、このフロントフォークFの上端部たる筒体1の上端部11がフォークブラケットBに一体的に連結される。
【0019】
このとき、筒体1は、このフロントフォークFが正立型に設定される場合にはインナーチューブとされ、このフロントフォークFが倒立型に設定される場合にはアウターチューブとされる。
【0020】
そして、このフロントフォークFにあって、上記の筒体1の上端開口は、キャップ部材2の螺着で閉塞され、このキャップ部材2の軸芯部には、このフロントフォークFが内蔵するダンパにおけるロッド体3の上端部がロックナット3aの配在下に螺着されている。
【0021】
ところで、後述することであるが、この発明の連結構造にあっては、フロントフォークFの上端部11をハンドル側たるフォークブラケットBの取り付け孔4に導通させた状態下にフロントフォークFの上端部11に螺合されたキャップ部材2を締め上げることで、フロントフォークの上端部をフォークブラケットに連結している。
【0022】
このとき、キャップ部材2は、上端に外周フランジ部2aを有すると共に、この外周フランジ部2aの下端をフォークブラケットBにおける取り付け孔4を形成するボス部11cの上端に当接させると共に、この外周フランジ部2aの下端とフロントフォークFにおける上端部11の上端との間に隙間Aを出現させている。
【0023】
それゆえ、このキャップ部材2にあっては、フランジ部2aをボス部11cに当接させた状態下にこれを螺合操作することで、フロントフォークFにおける上端部11のフォークブラケットBにおける取り付け孔4での引き上げを可能にし得る。
【0024】
そして、このとき、外周フランジ部2aの下端とフロントフォークFにおける上端部11の上端との間に隙間Aを出現させているから、キャップ部材2の螺合操作によるフロントフォークFにおける上端部11の引き上げが妨害されない。
【0025】
また、フォークブラケットBは、上記のフロントフォークFが松葉型とされることから、図1に示すように、左右にフロントフォークFを有し、中央にステアリングシャフトSを有する一枚のブラケットからなる。
【0026】
そして、このフォークブラケットBは、前記した特許文献1に開示のフォークブラケットにあって取り付け孔に割りを有することで不具合が招来されていることを鑑み、取り付け孔4に割りを有しない構造に設定されている。
【0027】
のみならず、この発明におけるフォークブラケットBにあっては、前記した特許文献1に開示のフォークブラケットのように取り付け孔の上端に内側フランジ部を有することに代えて、前記した隙間Aを形成することもあって、取り付け孔4の上端に内側フランジ部を有しない。
【0028】
それゆえ、この取り付け孔4の上端に内側フランジ部を有しないことを鑑みると、フォークブラケットBの形成が、特に、鋳造された原型を切削などして加工する際に、上記の内側フランジ部を形成する必要がなく、部品加工に手間を省ける利点がある。
【0029】
以上のように形成されたフロントフォークFにおける上端部11を同じく以上のように形成されたフォークブラケットBに連結する際にこの発明の連結構造が利用される。
【0030】
そこで、以下には、この連結構造について説明すると、この発明による連結構造は、筒状に形成されたフロントフォークFにおける上端部11の下半側が上方に行くにしたがって外形を徐々に縮径する、すなわち、内径を変化させずして外周側で肉厚を徐々に薄くする傾斜部11aとされている。
【0031】
また、上記の上端部11の上半側、すなわち、上記の傾斜部11aに連続する上端部11の上半側が上方に行くにしたがって外径を同じにする、すなわち、内径も変化させずして肉厚を同じにするストレート部11bとされ、このストレート部11bの内周にキャップ部材2の螺合部2bが螺合される。
【0032】
そして、上記のように形成された上端部11を受け容れるフォークブラケットBにおける取り付け孔4にあっては、下半側が内径を下方に向けて徐々に大きくするコーン状孔4aとされ、上半側が上方に向けて内径を変化させないストレート孔4bとされている。
【0033】
このとき、ストレート孔4bの内径は、上記のストレート部11bの嵌挿を許容する寸法に設定され、コーン状孔4aの傾斜角は、上記の傾斜部11aの密接を許容する角度に設定されるのはもちろんである。
【0034】
以上のように、この発明におけるフォークブラケットBにあっては、取り付け孔4が下半側のコーン状孔4aと上半側のストレート孔4bで形成されるから、この取り付け孔4の形成が前記した特許文献1に開示のフォークブラケットに比較して有利になる。
【0035】
すなわち、特許文献1に開示のフォークブラケットにあっては、取り付け孔がストレート孔のみからなるから、一本のドリルを利用するのみでこれを形成できる利点があるが、長時間に亙って一本のドリルを利用することになり、ドリルの耐久性の点からは不利になる。
【0036】
それに対して、この発明のフォークブラケットBにあっては、一旦コーン状孔4aを一本のドリルで形成した後に、別のドリルを利用してストレート孔4bを形成するから、二本のドリルを利用する不利があるが、各ドリルの利用時間を短くでき、したがって、各ドリルの耐久性を保障する上で有利になる。
【0037】
フロントフォークFにおける上端部11とこれを導通させるハンドル側たるフォークブラケットBにおける取り付け孔4が上記したように形成されるから、この発明の連結構造にあっては、フロントフォークFの上端部11をフォークブラケットBの取り付け孔4に導通させた状態下にこの上端部11に螺合されたキャップ部材2を締め上げることで、フロントフォークFの上端部11をフォークブラケットBに一体的に連結し得る。
【0038】
すなわち、フォークブラケットBの取り付け孔4における下半側のコーン状孔4aにフロントフォークFの上端部11における下半側の傾斜部11aが嵌挿された状態下に、フロントフォークFの上端部11におけるストレート部11bの内側に螺合されるキャップ部材2の締め付けで、フロントフォークFの上端部11における傾斜部11aがフォークブラケットBの取り付け孔4におけるコーン状孔4aで引き上げられて密着する。
【0039】
このとき、フォークブラケットBの取り付け孔4における上半側のストレート孔4bにフロントフォークFの上端部11における上半側のストレート部11bが嵌挿されるから、両者間に調芯作用が発現され、したがって、傾斜部11aとコーン状孔4aとの間の楔効果が設定の通りに得られる。
【0040】
のみならず、上記の傾斜部11aおよびコーン状孔4aを形成するのにあって、フォークブラケットBにおける取り付け孔4の肉厚方向の全長に亙って形成せず、また、フロントフォークFにおける上端部11の肉厚方向の全長に亙ってこれを形成せず、下半側に形成するから、傾斜部11aおよびコーン状孔4aにおける傾斜角が楔効果を発揮する上で有利になる急角度に設定でき、短い移動ストロークで効果的に楔効果を発揮でき、両者の一体化にあって、両者間の密着性が向上される。
【0041】
前記したところでは、フォークブラケットBがいわゆる一枚物からなるとしたが、この発明が意図するところからすれば、このフォークブラケットBがアッパーブラケットとアンダーブラケットの二枚物からなる場合であっても、この発明の具現化が可能になるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明による連結構造を具現化するフロントフォークとステアリングシャフトが連結されたフォークブラケットを示す平面図である。
【図2】フロントフォークの上端部がフォークブラケットに連結された状態を図1中のX-X線位置で示す部分断面正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 フロントフォークを構成する筒体
2 キャップ部材
2a 外側フランジ部
2b 螺条部
3 ロッド体
3a ロックナット
4 取り付け孔
4a コーン状孔
4b ストレート孔
11 上端部
11a 傾斜部
11b ストレート部
11c ボス部
A 隙間
B フォークブラケット
F フロントフォーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車の前輪を懸架するフロントフォークの上端部をハンドル側たるフォークブラケットの取り付け孔に導通させると共にフロントフォークの上端部へのキャップ部材の螺合でフロントフォークの上端部をフォークブラケットに連結してなる連結構造において、フォークブラケットの取り付け孔に導通されるフロントフォークにおける上端部が筒状に形成され、この上端部の下半側が上方に行くにしたがって外径を徐々に縮径する傾斜部とされ、この傾斜部に連続する上端部の上半側が外径を同じにするストレート部とされ、フォークブラケットにおける取り付け孔の下半側が内径を下方に向けて徐々に大きくするコーン状孔とされ、フォークブラケットにおける取り付け孔の上半側が上方に向けて内径を変化させないストレート孔とされ、このストレート孔に導通されるフロントフォークの上端部におけるストレート部の内周にキャップ部材が螺合されると共に、このキャップ部材の締め付けでフロントフォークの上端部における傾斜部がフォークブラケットの取り付け孔におけるコーン状孔で引き上げられてなることを特徴とする連結構造。
【請求項2】
キャップ部材が上端に外周フランジ部を有すると共に、この外周フランジ部の下端がフォークブラケットにおける取り付け孔を形成するボス部の上端に当接され、フランジ部の下端とフロントフォークにおける上端部の上端との間に隙間が出現されてなる請求項1に記載の連結構造。
【請求項3】
フロントフォークが軸芯部にダンパを内蔵すると共にこのダンパを形成するロッド体の上端部がキャップ部材の軸芯部に螺着されてなる請求項1または請求項2に記載の連結構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−40301(P2009−40301A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209156(P2007−209156)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】