説明

連結機構、ワイヤハーネス

【課題】2つの部材を離脱可能に連結する連結機構において、簡易な構造により、連結された2つの部材が想定外の状況下で離脱しないこと、及び2つの部材の連結を人の操作によって容易に外せることを両立できること。
【解決手段】ガイドレール部32、及びそれに対してスライド可能に連結されるスライド部41・42からなるスライド連結機構が、2つのブラケット10,20を連結する。2つのブラケット10,20の一方に形成された突起部34と、他方に設けられて突起部34が嵌入する穴部43は、2つのブラケット10,20の相対移動を規制する。一方のブラケット10には、曲げ変形が可能な可撓部52が設けられている。一方のブラケット10における可撓部52の近傍に形成された作用部53は、可撓部52の曲げ変形に応じて、てこの原理に従って、他方のブラケット20の被作用部60を第一方向D1に対し反対の第二方向D2へ押す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離脱可能に連結する連結機構及びそれを備えるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、スライドドア又は座席シートなどのように、車体に対して相対的に移動可能な可動部を備える。また、そのような可動部には、モータ、センサ又は操作ボタンなどの電装機器が設けられる場合がある。その場合、特許文献1及び特許文献2に示されるように、可動部用のワイヤハーネスが、車体と可動部との間に跨って取り付けられる。
【0003】
また、特許文献1に示されるように、可動部用のワイヤハーネスは、車体及び可動部の各々に取り付けられる取付部材である2つのブラケットを備える。また、そのようなブラケットは、軽量化などの理由により樹脂製の部材である場合が多い。
【0004】
ところで、可動部用のワイヤハーネスが備える2つのブラケットは、それぞれ別の工程において、可動部を構成する一方の支持体及び他方の支持体の各々に取り付けられることがある。
【0005】
例えば、スライドドアと車体との間に敷設されるスライドドア用のワイヤハーネスは、それぞれ別の工程において、可動部を構成するスライドドア及び車両本体の各々に取り付けられることがある。この場合、まず、ドア側のブラケットが、ドア単体の組み立て工程においてスライドドアに取り付けられ、その後、車体側のブラケットが、車両本体に対するドアの組み付け工程において車体に取り付けられることが多い。
【0006】
ワイヤハーネスの2つのブラケットが、それぞれ別の工程において支持体に取り付けられる場合、自由に動く一方のブラケット及びそれに連なる部分が、工程間の移動中に他の物と衝突することを防止する必要がある。特に、スライドドア用のワイヤハーネスは、長い電線束、及び比較的重くて硬いプロテクタを備えるため、他の物と衝突した場合の衝撃が大きく、衝突防止の必要性が高い。そのため、可動部用のワイヤハーネスにおいて、2つのブラケットを離脱可能に連結する連結機構が設けられる場合がある。以下の説明において、2つの部材を離脱可能に連結する連結機構のことを仮連結機構と称する。
【0007】
従来のスライドドア用のワイヤハーネスにおいて、仮連結機構は、2つのブラケットを一の直線方向に沿ってスライド可能に連結するスライド連結機構と、2つのブラケットの相対移動を規制する突起部及び穴部からなる嵌入機構とを備える。
【0008】
スライド連結機構は、一方のブラケットに設けられたガイドレール部と、他方のブラケットに設けられたスライド部とからなる。スライド部は、ガイドレール部が形成する溝に挿入され、ガイドレール部に対してスライド可能に連結される部分である。
【0009】
また、嵌入機構は、2つのブラケットの一方に形成された突起部と他方に設けられた穴部からなる。嵌入機構は、スライド連結機構により連結された2つのブラケットの相対移動の途中で突起部が穴部に嵌入することにより、2つのブラケットの相対移動を規制する。これにより、2つのブラケットは連結され、ワイヤハーネスは環状に保持される。
【0010】
また、連結された2つのブラケットが、ガイドレールの長手方向に沿って強く引っ張られることにより、嵌入機構の突起部が穴部から外れ、2つのブラケットは相互に離脱する。以上に示される仮連結機構は、例えば、特許文献1などに示されている。
【0011】
可動部用のワイヤハーネスは、搬送時などにおける取り扱いの容易化のため、環状に保持されていることが望ましい場合がある。そのような場合、可動部用のワイヤハーネスは、そのブラケットが支持体に取り付けられる前の段階において、予め2つのブラケットが仮連結機構によって連結された状態で取り扱われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−112376号公報
【特許文献2】特開2001−128348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の仮連結機構において、2つの部材の連結の外れにくさが優先され、嵌入機構における突起部が穴部から外れにくい構造が採用されると、突起部を穴部から外すために非常に大きな力で2つの部材を引っ張らなければならない。
【0014】
また、2つの部材を大きな力で両側へ引っ張る作業が行われると、突起部が穴部から外れた際に、2つの部材は、強い勢いで両側へ離れ、周囲の物に衝突しやすい。そのため、2つの部材の連結を外す作業のために広い作業スペースが必要となる。
【0015】
一方、2つの部材の連結の外しやすさが優先され、嵌入機構における突起部が穴部から外れやすい構造が採用されると、搬送中の振動などに起因して加わる外力により、想定外の状況下で突起部が穴部から外れ、連結が外れてしまう。
【0016】
即ち、従来の仮連結機構は、連結された2つの部材が想定外の状況下で離脱しないこと、及び2つの部材の連結を人の操作によって容易に外せること、の両立が難しいという問題点を有している。
【0017】
一方、仮連結機構が、嵌入機構の代わりに、つまんで操作されることによって変位する操作片と、その操作片の操作に応じて2つの部材を固定する状態とその固定を解除する状態とに切り替わる係合部とを含むロック機構を備えることも考えられる。しかしながら、そのようなロック機構は追加のスペースを必要とし、また、そのようなロック機構を含む樹脂部材を成形するためには、比較的複雑な金型が必要となる。そのため、操作片を含むロック機構は、配置スペース及びコストの面において採用が難しい場合がある。
【0018】
本発明は、可動部用のワイヤハーネスなどにおいて2つの部材を離脱可能に連結する連結機構において、簡易な構造により、連結された2つの部材が想定外の状況下で離脱しないこと、及び2つの部材の連結を人の操作によって容易に外せることの両立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る連結機構は、樹脂製の第一部材と第二部材とを離脱可能に連結する機構であり、以下に示す各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、スライド連結機構である。このスライド連結機構は、第一部材に設けられたガイドレール部、及び第二部材に設けられ、ガイドレール部に対してスライド可能に連結されるスライド部からなり、第一部材と第二部材とを一の直線方向に沿って相対移動可能な状態で連結する機構である。
(2)第2の構成要素は、嵌入機構である。この嵌入機構は、第一部材及び第二部材の一方に形成された突起部及び第一部材及び第二部材の他方に設けられた穴部からなり、スライド連結機構により連結された第一部材及び第二部材の相対移動の途中で突起部が穴部に嵌入することによって第一部材及び第二部材の相対移動を規制する機構である。
(3)第3の構成要素は、第一部材に形成され、一の直線方向に沿う第一方向からその第一方向に交差する方向への曲げ変形が可能な可撓部である。
(4)第4の構成要素は、押し機構である。この押し機構は、第一部材における可撓部の近傍に形成された作用部、及び嵌入機構により相対移動が規制された第二部材における作用部に対向する位置に形成された被作用部からなり、可撓部の曲げ変形に応じて、作用部が被作用部を第一方向に対し反対の第二方向へ押す機構である。
【0020】
また、本発明に係る連結機構において、押し機構における作用部及び被作用部の一方又は両方の表面が、相手側へ突出した湾曲面であることが望ましい。
【0021】
また、本発明は、本発明に係る連結機構を備えたワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。即ち、本発明に係るワイヤハーネスは、相対的に移動可能な第一支持体及び第二支持体の各々に取り付けられる樹脂製の第一取付部材及び第二取付部材を備え、第一取付部材及び第二取付部材に、それらを離脱可能に連結する連結機構が設けられたワイヤハーネスである。また、その連結機構は、本発明に係る連結機構である。
【0022】
また、本発明は、スライドドア用のワイヤハーネスに採用されれば好適である。この場合、本発明に係るワイヤハーネスの第一取付部材及び第二取付部材の取り付け先である第一支持体及び第二支持体は、それぞれ車両におけるスライドドア及び車体の一方及び他方である。
【発明の効果】
【0023】
本発明において、第一部材の作用部が、第一部材の可撓部の曲げ変形に応じて、第二部材の被作用部を第二方向へ押し、これにより、嵌入機構の突起部が穴部から外れる。ここで、第二方向は、第二部材のスライド部を、第一部材のガイドレール部から抜く方向である。また、第一部材における可撓部を除く部分、可撓部及び作用部は、てこの原理における力点、支点及び作用点として機能する。さらに、作用部は、支点に相当する可撓部の近傍に位置する。
【0024】
従って、本発明によれば、第一部材の可撓部が、比較的弱い力で曲げられるだけで、第二方向への大きな力が、支点(可撓部)の近くに位置する作用部から第二部材の被作用部へ作用し、嵌入機構の突起部が穴部から外れる。その結果、嵌入機構における突起部が穴部から外れにくい構造が採用された場合でも、連結を外すために要する力、即ち、可撓部を曲げるために加える力は小さくて済む。しかも、本発明において、配置スペース及びコストの増大につながるロック機構は不要である。
【0025】
また、2つの部材の連結を外すために要する力が小さくて済むため、2つの部材をゆっくりと相対移動させつつ連結を外すことが可能である。従って、2つの部材の連結を外す作業のために、周囲の物への衝突を回避するための広い作業スペースを用意する必要がなくなる。
【0026】
以上に示したように、本発明によれば、簡易な構造により、連結された2つの部材が想定外の状況下で離脱しないこと、及び2つの部材の連結を人の操作によって容易に外せることを両立できる。
【0027】
また、本発明において、押し機構における作用部及び被作用部の一方又は両方の表面が、相手側へ突出した湾曲面であれば、可撓部が曲げられることによって作用部が被作用部を押す動作において、作用部及び被作用部の表面が円滑に擦れる。そのため、2つの部材の連結を外すために要する力がより軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の側面図である。
【図2】ワイヤハーネス1の仮連結機構の部分における一部断面を含む斜視図である。
【図3】ワイヤハーネス1における連結前の仮連結機構の部分の側面図である。
【図4】ワイヤハーネス1における連結及び固定された仮連結機構の部分の側面図である。
【図5】ワイヤハーネス1における連結の固定が解除された仮連結機構の部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0030】
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の構成について説明する。ワイヤハーネス1は、車両において相対的に移動可能なスライドドア及び車体の間に敷設されるスライドドア用のワイヤハーネスである。図1に示されるように、ワイヤハーネス1は、電線束9と、その電線束9を囲って保護するプロテクタ8と、ドア側ブラケット10及び車体側ブラケット20を備えている。
【0031】
電線束9は、一方の端に近い部分がドア側ブラケット10に支持され、他方の端に近い部分が車体側ブラケット20に支持されている。即ち、電線束9は、ドア側ブラケット10と車体側ブラケット20との間に亘って設けられている。
【0032】
プロテクタ8は、連結ピン82によって相互に回動自在かつ直列に連結された複数の要素プロテクタ81を備え、各要素プロテクタ81が相互に回動することにより、全体として一の平面に沿って曲げ変形自在に構成されている。各要素プロテクタ81は、固形の部材であり、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ABS樹脂又はポリエチレン(PE)などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0033】
また、プロテクタ8は、その一方の端部がドア側ブラケット10のプロテクタ連結部12に対して回動可能に連結され、他方の端部が車体側ブラケット20のプロテクタ連結部22に対して回動可能に連結されている。
【0034】
ドア側ブラケット10及び車体側ブラケット20は、相対的に移動可能な支持体であるスライドドア及び車両本体の各々に取り付けられる樹脂製の部材である。ドア側ブラケット10及び車体側ブラケット20は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ABS樹脂又はポリエチレン(PE)などの樹脂からなる一体成形部材である。
【0035】
ドア側ブラケット10は、ボルト及びナットなどの固定具によってスライドドアに固定される部材であり、プロテクタ連結部12が形成された本体部11と、仮連結機構を構成するドア側連結部30及び中継部50とを有している。中継部50は、本体部11及びドア側連結部30を繋ぐ部分であり、可撓部52及び作用部53を含む。なお、仮連結機構は、2つの部材を離脱可能に連結する連結機構を意味し、本実施形態においては、ドア側ブラケット10及び車体側ブラケット20を離脱可能に連結する機構を意味する。
【0036】
また、車体側ブラケット20は、ボルト及びナットなどの固定具によって車両本体に固定される部材であり、プロテクタ連結部22が形成された本体部21と、仮連結機構を構成する車体側連結部40及び被作用部60を有している。
【0037】
ドア側連結部30は、土台部31と、その土台部31から起立して形成されたガイドレール部32と、ガイドレール部32の内側において土台部31から突出して形成された突起部34とを含む。本実施形態において、突起部34は、ガイドレール部32が形成する2つの溝33の間の位置に形成されている。
【0038】
図2は、ワイヤハーネス1の仮連結機構の部分における一部断面を含む斜視図である。図2に示されるドア側連結部30の斜視図は、突起部34の部分における断面を含む。図2に示されるように、ガイドレール部32は、相互に対向するとともに少なくとも一端が解放端である2つの直線状の溝33を形成する部分である。
【0039】
一方、車体側連結部40は、図1及び図2に示されるように、直線方向に沿って形成された支柱部41と、その支柱部41の先端部分から両側へ張り出した鍔部42とを含む。また、支柱部41は、ドア側連結部30の突起部34が嵌り込む穴を形成する穴部43を含む。
【0040】
車体側連結部40の支柱部41及び鍔部42は、ドア側連結部30のガイドレール部32に対してスライド可能に連結される部分である。以下、支柱部41及び鍔部42をスライド部41・42と称する。ドア側連結部30のガイドレール部32と、車体側連結部40の支柱部41及び鍔部42とは、ドア側ブラケット10と車体側ブラケット20とを一の直線方向に沿って相対移動可能な状態で連結するスライド連結機構を構成している。
【0041】
図3及び図4は、ワイヤハーネス1における仮連結機構の部分の側面図であり、図3は連結前の状態を表し、図4は連結及び固定された状態を表す。
【0042】
図2及び図3に示されるように、スライド部41・42の鍔部42は、ガイドレール部32の2つの溝33各々にその解放端から第一方向D1へ挿入される。これにより、スライド部41・42は、ガイドレール部32に対し、第一方向D1及びその反対の第二方向D2へスライド可能な状態で連結される。その際、ガイドレール部32及びスライド部41・42のわずかな撓みにより、土台部31とスライド部41・42との間に突起部34の高さに相当する隙間が形成される。これにより、スライド部41・42がガイドレール部32に対してスライド移動されると、突起部34は、支柱部41の頭頂部分に擦れる。
【0043】
また、図4に示されるように、ドア側連結部30の突起部34は、スライド連結機構により連結されたドア側ブラケット10及び車体側ブラケット20の相対移動の途中で、車体側連結部40の穴部43に嵌り込む。突起部34が穴部43に嵌り込むと、ガイドレール部32及びスライド部41・42の撓みは解消される。突起部34が穴部43に嵌り込むことにより、ドア側ブラケット10及び車体側ブラケット20の相対移動は規制される。これにより、2つのブラケット10,20の相対位置は固定される。即ち、突起部34及び穴部43は、突起部34が穴部43に嵌入することによって2つのブラケット10,20の相対移動を規制する嵌入機構を構成している。
【0044】
なお、ガイドレール部32が車体側連結部40に設けられ、スライド部41・42がドア側連結部30に設けられることも考えられる。また、突起部34が車体側連結部40に設けられ、穴部43がドア側連結部30に設けられることも考えられる。
【0045】
また、中継部50にはくびれ部51が形成され、これにより、中継部50は、その前後の部分よりも細く形成された部分である可撓部52を含む。可撓部52は、それに隣接するドア側連結部30側の部分及び本体部11側の部分よりも細く形成され、これにより、一の直線方向に沿う第一方向D1からその第一方向D1に交差する方向D3への曲げ変形が可能な部分となっている。
【0046】
また、ドア側ブラケット10における可撓部52の近傍に、作用部53が形成されている。本実施形態において、作用部53は、ドア側ブラケット10における可撓部52に隣接する部分に形成されている。
【0047】
一方、車体側ブラケット20には、ドア側ブラケット10の作用部53から力を受ける部分である被作用部60が形成されている。被作用部60は、突起部34及び穴部43により相対移動が規制された車体側ブラケット20における、ドア側ブラケット10の作用部53に対向する位置に形成されている。
【0048】
図4に示されるように、2つのブラケット10,20の相対移動が突起部34及び穴部43によって規制された状態において、車体側ブラケット20の被作用部60は、ドア側ブラケット10における中継部50のくびれ部51に位置し、作用部53に対向する。
【0049】
図5は、ワイヤハーネス1における仮連結機構の部分の側面図であり、連結の固定が解除された状態を表す。2つのブラケット10,20の相対移動が突起部34及び穴部43によって規制された状態において、ドア側ブラケット10におけるドア側連結部30及び本体部11の一方又は両方に力が加えられると、ドア側ブラケット10は、可撓部52において曲がる。
【0050】
そして、図5に示されるように、ドア側ブラケット10が可撓部52において曲げられると、可撓部52の曲げ変形に応じて、ドア側ブラケット10の作用部53は、車体側ブラケット20の被作用部60に接触し、被作用部60を第二方向D2へ押す。即ち、作用部53及び被作用部60は、可撓部52の曲げ変形に応じて、作用部53が被作用部60を第二方向D2へ押す押し機構を構成している。
【0051】
また、図1及び図3〜図5に示されるように、押し機構を構成する被作用部60の表面は、作用部53側へ突出した滑らかな湾曲面である。作用部53は、可撓部52の曲げ変形に応じて、被作用部60の表面を滑りつつ、被作用部60を第二方向D2へ押す。
【0052】
ドア側ブラケット10の作用部53が、可撓部52の曲げ変形に応じて被作用部60を第二方向D2へ押すことにより、ガイドレール部32及びスライド部41・42がわずかに撓み、嵌入機構の突起部34が穴部43から外れる。ここで、第二方向D2は、スライド部41・42をガイドレール部32から抜く方向である。さらに、車体側ブラケット20を第二方向D2へ移動させると、2つのブラケット10,20は、それらの連結が完全に外れ、相互に離脱する。
【0053】
<効果>
ワイヤハーネス1の仮連結機構において、ドア側ブラケット10の作用部53が、可撓部52の曲げ変形に応じて、車体側ブラケット20の被作用部60を第二方向D2へ押し、これにより、嵌入機構の突起部34が穴部43から外れる。また、ドア側ブラケット10における中継部50を除く部分、可撓部52及び作用部53は、てこの原理における力点、支点及び作用点として機能する。さらに、作用部53は、支点に相当する可撓部52の近傍に位置する。
【0054】
従って、ワイヤハーネス1の仮連結機構においては、可撓部52が、比較的弱い力で曲げられるだけで、第二方向D2への大きな力が、支点(可撓部52)の近くに位置する作用部53から車体側ブラケット20の被作用部60へ作用し、嵌入機構の突起部34が穴部43から外れる。その結果、嵌入機構における突起部34が穴部43から外れにくい構造が採用された場合でも、連結を外すために要する力、即ち、可撓部52を曲げるために加える力は小さくて済む。しかも、ワイヤハーネス1の仮連結機構において、配置スペース及びコストの増大につながるロック機構は不要である。
【0055】
また、2つのブラケット10,20の連結を外すために要する力が小さくて済むため、2つのブラケット10,20をゆっくりと相対移動させつつ連結を外すことが可能である。従って、2つのブラケット10,20の連結を外す作業のために、周囲の物への衝突を回避するための広い作業スペースを用意する必要はない。
【0056】
以上に示したように、ワイヤハーネス1の仮連結機構によれば、簡易な構造により、連結された2つのブラケット10,20が想定外の状況下で離脱しないこと、及び2つのブラケット10,20の連結を人の操作によって容易に外せることを両立できる。
【0057】
また、押し機構における被作用部60の表面が、相手側へ突出した滑らかな湾曲面であるため、作用部53が被作用部60を押す動作において、作用部53及び被作用部60の表面が円滑に擦れる。そのため、2つのブラケット10,20の連結を外すために要する力がより軽減される。なお、ここに示す効果は、作用部53及び被作用部60の一方又は両方の表面が、相手側へ突出した湾曲面であれば得られる。
【0058】
<その他>
以上に示された実施形態においては、2つの部材を離脱可能に連結する連結機構が、車両におけるスライドドアと車両本体との間に跨って敷設されるスライドドア用のワイヤハーネスに適用されている。しかしながら、同様の連結機構(仮連結機構)が、他のワイヤハーネスに適用されることも考えられる。例えば、ドア側連結部30及び中継部50の構造が、電動式の座席シートに固定されるブラケットに設けられ、車体側連結部40及び被作用部60の構造が、車両本体に取り付けられるブラケットに設けられることが考えられる。
【0059】
また、本発明に係る連結機構(仮連結機構)が、ワイヤハーネスのブラケット以外の部材に適用されることも考えられる。例えば、本発明に係る連結機構が、ワイヤハーネスの両端に設けられた2つのコネクタを離脱可能に連結する機構として適用されることが考えられる。この場合、ドア側連結部30及び中継部50の構造が、ワイヤハーネスの一方の端部のコネクタに設けられ、車体側連結部40及び被作用部60の構造が、ワイヤハーネスの他方の端部のコネクタに設けられることが考えられる。
【符号の説明】
【0060】
1 ワイヤハーネス
8 プロテクタ
9 電線束
10 ドア側ブラケット(取付部材)
11 ドア側ブラケットの本体部
12 ドア側ブラケットのプロテクタ連結部
20 車体側ブラケット
21 車体側ブラケットの本体部
22 車体側ブラケットのプロテクタ連結部
30 ドア側連結部
31 ドア側連結部の土台部
32 ガイドレール部
33 ガイドレール部の溝
34 嵌入機構の突起部
40 車体側連結部
41 支柱部(スライド部)
42 鍔部(スライド部)
43 嵌入機構の穴部
50 ドア側ブラケットの中継部
51 ドア側ブラケットのくびれ部
52 可撓部
53 作用部
60 被作用部
81 要素プロテクタ
82 連結ピン
D1 第一方向
D2 第二方向
D3 第三方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の第一部材と第二部材とを離脱可能に連結する連結機構であって、
前記第一部材に設けられたガイドレール部、及び前記第二部材に設けられ、前記ガイドレール部に対してスライド可能に連結されるスライド部からなり、前記第一部材と前記第二部材とを一の直線方向に沿って相対移動可能な状態で連結するスライド連結機構と、
前記第一部材及び前記第二部材の一方に形成された突起部及び前記第一部材及び前記第二部材の他方に設けられた穴部からなり、前記スライド連結機構により連結された前記第一部材及び前記第二部材の相対移動の途中で前記突起部が前記穴部に嵌入することによって前記第一部材及び前記第二部材の相対移動を規制する嵌入機構と、
前記第一部材に形成され、前記一の直線方向に沿う第一方向から該第一方向に交差する方向への曲げ変形が可能な可撓部と、
前記第一部材における前記可撓部の近傍に形成された作用部、及び前記嵌入機構により前記相対移動が規制された前記第二部材における前記作用部に対向する位置に形成された被作用部からなり、前記可撓部の前記曲げ変形に応じて、前記作用部が前記被作用部を前記第一方向に対し反対の第二方向へ押す押し機構と、を備えることを特徴とする連結機構。
【請求項2】
前記押し機構における前記作用部及び前記被作用部の一方又は両方の表面が、相手側へ突出した湾曲面である、請求項1に記載の連結機構。
【請求項3】
相対的に移動可能な第一支持体及び第二支持体の各々に取り付けられる樹脂製の第一取付部材及び第二取付部材を備え、前記第一取付部材及び前記第二取付部材に、それらを離脱可能に連結する連結機構が設けられたワイヤハーネスであって、
前記連結機構が、
前記第一取付部材に設けられたガイドレール部、及び前記第二取付部材に設けられ、前記ガイドレール部に対してスライド可能に連結されるスライド部からなり、前記第一取付部材と前記第二取付部材とを一の直線方向に沿って相対移動可能な状態で連結するスライド連結機構と、
前記第一取付部材及び前記第二取付部材の一方に形成された突起部及び前記第一取付部材及び前記第二取付部材の他方に設けられた穴部からなり、前記スライド連結機構により連結された前記第一取付部材及び前記第二取付部材の相対移動の途中で前記突起部が前記穴部に嵌入することによって前記第一取付部材及び前記第二取付部材の相対移動を規制す嵌入機構と、
前記第一取付部材に形成され、前記一の直線方向に沿う第一方向から該第一方向に交差する方向への曲げ変形が可能な可撓部と、
前記第一取付部材における前記可撓部の近傍に形成された作用部、及び前記嵌入機構により前記相対移動が規制された前記第二取付部材における前記作用部に対向する位置に形成された被作用部からなり、前記可撓部の前記曲げ変形に応じて、前記作用部が前記被作用部を前記第一方向に対し反対の第二方向へ押す押し機構と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第一支持体及び前記第二支持体は、それぞれ車両におけるスライドドア及び車体の一方及び他方である、請求項3に記載のワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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