説明

連結車両

【課題】 道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両を用いて、大量輸送を実現させる。
【解決手段】 車体2の前後に設けられた道路走行用の前方ゴムタイヤ3及び後方ゴムタイヤ4と、車体2の前後に昇降自在に設けられた軌道走行用の前方案内輪5及び後方案内輪6と、タイヤ用車軸の一方に設けられた駆動輪(後方ゴムタイヤ4)と、を備え、前方案内輪5と後方案内輪6と駆動輪とで軌道を走行する道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両1を複数連結して、連結車両10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結車両に関し、特に、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両を複数連結して構成した連結車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、都市部への人口集中に伴い、地方山村部における過疎化が進行しており、この過疎化は、地方鉄道線(いわゆるローカル線)や地方路線バスの利用者の減少をもたらしている。このため、鉄道事業者やバス事業者は、運行管理コスト等を削減するために、地方鉄道線や地方路線バスに代わる新たな交通システムを創出する必要に迫られている。
【0003】
このような状況において、近年、鉄道と道路とのシームレス化を行って鉄道車両とバスの双方の利点を生かす交通システム(以下、「デュアルモード交通システム」という)を構築して、車両コストの削減、メンテナンスコストの削減、運転コストの削減等を実現させようとする動きがある。そして、このデュアルモード交通システムを構築するために、軌道走行と道路走行との双方が可能な車両(以下、「デュアルモード車両」という)の開発が進められている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−34838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在開発が進められているデュアルモード車両は、定員約30人程度のマイクロバスの車両をベースにしたものである。従って、比較的小数の乗客や少量の荷物を輸送する際にはきわめて好適に機能するが、鉄道車両のような大量輸送ができないという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両を用いて、大量輸送を実現させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、連結車両であって、
車体の前方及び後方に各々配設されたタイヤ用車軸を介して設けられた道路走行用のタイヤと、車体の前方及び後方に各々昇降自在に配設された案内輪用車軸を介して設けられた軌道走行用の案内輪と、前記各々配設されたタイヤ用車軸の少なくとも何れか一方に設けられた駆動輪と、を有し、前方及び後方の前記案内輪と前記駆動輪とで軌道を走行する道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両が複数連結されてなることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両を複数連結して連結車両を構成するので、多数の乗客や大量の荷物を乗せて軌道走行を行うことができ、鉄道車両のような大量輸送を実現させることができる。また、連結車両を構成する各デュアルモード車両は、タイヤ用車軸の少なくとも何れか一方に設けられた駆動輪を使用して軌道走行を行うので、道路走行時に使用する駆動機構をそのまま軌道走行に利用することができる。従って、駆動機構の改良が不要となるため、改造費用を低く抑えることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の連結車両において、
2台の前記デュアルモード車両を備え、
一方の前記車体の後部ともう一方の車体の前部が連結されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記デュアルモード車両は、連結走行時、2台とも進行方向に車体前方を向けて走行することができるため、連結車両としても駆動機構の改良が不要であり、改造費用を低く抑えることができる。また、多数の乗客や大量の荷物を乗せた状態においても充分な推進力及び制動力を得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の連結車両において、
2台の前記デュアルモード車両を備え、
前記車体の後部同士が連結されてなることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記連結車両は、Uターンすることなく、逆方向に走行することができ,
進行方向を入れ替えることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の連結車両において、
前記車体の後部に開口部が設けられた2台の前記デュアルモード車両を備え、
前記開口部を介して前記車体の内部空間が連通されてなることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、2台のデュアルモード車両の車体の後部に開口部を設け、これらデュアルモード車両の車体の後部同士を連結し、開口部を介して車体の内部空間を連通するので、連結したデュアルモード車両の車体間での乗客・荷物の往来が可能となる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は4に記載の連結車両において、
低速走行状態において、所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両の前記駆動輪を正回転させるとともに、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の前記駆動輪を逆回転させることにより、所定の進行方向への推進力を発生させる推進制御装置を備えることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、デュアルモード車両の車体の後部同士を連結した連結車両が、低速走行状態(例えば発進から約15km/hまで)にある場合において、所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両(先頭車)の駆動輪の正回転による推進力と、所定の進行方向後方に配置されたデュアルモード車両(後続車)の駆動輪の逆回転による推進力と、を加算して、大きな推進力を得ることができる。従って、多数の乗客や大量の荷物を乗せた状態においても円滑な発進・加速を実現させることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の連結車両において、
前記低速走行状態を脱した段階で、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の前記駆動輪を上昇させて軌道から離隔させる駆動輪上昇装置を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、デュアルモード車両の車体の後部同士を連結した連結車両が、大きな推進力を要する低速走行状態を脱した段階で、所定の進行方向後方に配置されたデュアルモード車両(後続車)の駆動輪を上昇させて軌道から離隔させ、所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両(先頭車)の駆動輪による推進力のみで走行させるので、推進に要する燃料を節減することができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項3から6の何れか一項に記載の連結車両において、
前方の前記タイヤを操舵する前輪操舵機構を有する2台の前記デュアルモード車両を備え、
道路走行時において、所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両の前方の前記タイヤの操舵方向と、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の前方の前記タイヤの操舵方向と、を逆方向とするように前記前輪操舵機構を制御する操舵制御装置を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、デュアルモード車両の車体の後部同士を連結した連結車両が、道路走行時において、所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両の前方のタイヤ(連結車両最前部のタイヤ)の操舵方向と、所定の進行方向後方に配置されたデュアルモード車両の前方のタイヤ(連結車両最後部のタイヤ)の操舵方向と、を逆方向とすることができるので、連結車両の旋回半径を小さくすることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項1から6の何れか一項に記載の連結車両において、
前記各タイヤを独立に操舵する独立操舵機構を有する前記デュアルモード車両が連結されてなることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、連結車両は、各タイヤを独立に操舵する独立操舵機構を有するデュアルモード車両を連結したものであるので、走行速度や道路状況に応じて各タイヤの方向を適宜変更することができる。従って、種々の態様での道路走行を実現させることができる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8の何れか一項に記載の連結車両において、
前方及び後方の前記案内輪を操舵する案内輪操舵機構を有する前記デュアルモード車両が連結されてなることを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、連結車両は、前方及び後方の案内輪を操舵する案内輪操舵機構を有するデュアルモード車両を連結したものであるので、曲線軌道の曲率半径に対応させて案内輪の方向を適宜変更することができる。従って、曲線軌道の円滑な走行を実現させることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項1から9の何れか一項に記載の連結車両において、
前記駆動輪の正回転による推進力と逆回転による推進力とを同等にする逆転機構を有する前記デュアルモード車両が連結されてなることを特徴とする。
【0025】
請求項10に記載の発明によれば、連結車両は、駆動輪の正回転による推進力と逆回転による推進力とを同等にする逆転機構を有するデュアルモード車両を連結したものであるので、例えば、請求項3〜7のように、2台のデュアルモード車両の車体の後部同士を連結し、所定の進行方向後方に配置したデュアルモード車両(後続車)の駆動輪を逆回転させて推進力を発生させる場合においても、正回転の場合と同等の推進力を加算することができ、より大きな推進力を得ることができる。
【0026】
ここで、請求項2に記載の連結車両において、
所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両のアクセルペダルの操作に応じて、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両のエンジンも制御する出力同期制御手段を備える構成としても良い(当該構成を第一の例示構成とする)。
【0027】
上記構成によれば、一方の前記デュアルモード車両の前記車体の後部と、もう一方の車体の前部が連結されてなる連結車両において、運転士が所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両の運転席に設置されているアクセルペダルを操作するだけで、後方のデュアルモード車両のエンジンを同期して制御することができる。
【0028】
また、請求項2又は第一の例示構成に記載の連結車両において、
所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両の変速機に入力されるシフトポジション位置の操作に応じて、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の変速機も制御する変速同期制御手段を備える構成としても良い(当該構成を第二の例示構成とする)。
【0029】
上記構成によれば、一方の前記デュアルモード車両の前記車体の後部と、もう一方の車体の前部が連結されてなる連結車両において、運転士が所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両の運転席に設置されているトランスミッションのシフトレバーを操作するだけで、後方のデュアルモード車両のトランスミッションを同期して制御することができる。
【0030】
また、請求項1から10の何れか一項に記載の連結車両又は第一若しくは第二の例示構成において、
所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両のブレーキペダルの操作に応じて、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両のブレーキも制御する制動同期制御手段を備える構成としても良い(当該構成を第三の例示構成とする)。
【0031】
上記構成によれば、一方の前記デュアルモード車両の前記車体の後部と、もう一方の車体の前部が連結されてなる連結車両において、運転士が所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両の運転席に設置されているブレーキペダルを操作するだけで、後方のデュアルモード車両のブレーキを同期して制御することができる。
【0032】
また、請求項1から10の何れか一項に記載の連結車両又は第一から第三のいずれか一の例示構成において、
所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両の乗降ドア開閉スイッチ操作に応じて、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の乗降ドア開閉も制御する開閉同期制御手段を備える構成としても良い(当該構成を第四の例示構成とする)。
【0033】
上記構成によれば、連結車両において、運転士が所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両の運転席に設置されている乗降ドア開閉スイッチを操作するだけで、後方のデュアルモード車両の乗降ドア開閉を同期して制御することができる。
【0034】
また、請求項1から10の何れか一項に記載の連結車両又は第一から第四のいずれか一の例示構成において、
所定の進行方向前方と後方とに配置された前記各デュアルモード車両の車内音声出力手段に対して、共通する音声信号を入力する音声出力制御手段を備える構成としても良い(当該構成を第五の例示構成とする)。
【0035】
上記構成によれば、連結車両において、連結されているデュアルモード車両の一方の車内放送装置で行った放送を、同時に、もう一方のデュアルモード車両に放送することができる。
【0036】
また、請求項1から10の何れか一項に記載の連結車両又は第一から第五のいずれか一の例示構成において、
2台の前記デュアルモード車両の分離を検知して、前記各デュアルモード車両のブレーキを作動させる停止制御手段を前記各デュアルモード車両に備える構成としても良い(当該構成を第六の例示構成とする)。
【0037】
上記構成によれば、連結車両において、2台の前記デュアルモード車両の分離を検知した場合に、即座にブレーキを動作させ、分離した各デュアルモード車両を円滑に停止させることができる。
【0038】
また、請求項1から10の何れか一項に記載の連結車両又は第一から第六のいずれか一の例示構成において、
牽引力を伝える金属製のリングと、前記各デュアルモード車両に設けられて前記リングに対して挿抜可能なピンを保持する枠体とを備えた、2台の前記デュアルモード車両を連結する連結器を備え、
前記各デュアルモード車両に設けられた枠体は、互いに当接する当接面を備えると共に、少なくとも一方の枠体は一方の前記デュアルモード車両に緩衝器により弾性支持されている構成としても良い(当該構成を第七の例示構成とする)。
【0039】
上記構成によれば、ピンによりリングの係止状態と非係止状態を切り替えるという簡易な操作のみによりデュアルモード車両同士の連結と分離を行うことが出来る。このため、前記連結器を用いて連結車両を構成する場合、運転士が一人でも容易に連結操作が可能である。さらに、デュアルモード車両相互間には当接面を備えた枠体が設けられ、当該枠体の少なくとも一方は緩衝器により弾性支持されているので、デュアルモード車両の連結作業時には、一方又は双方のデュアルモード車両を駆動走行により連結器同士を当接させて連結作業を行うことができ、車両連結作業を他の設備や工具を使用することなく容易且つ迅速に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両を複数連結して連結車両を構成するので、多数の乗客や大量の荷物を乗せて軌道走行を行うことができ、大量輸送を実現させることができる。また、連結車両を構成する各デュアルモード車両は、タイヤ用車軸の少なくとも何れか一方に設けられた駆動輪を使用して軌道走行を行うので、道路走行時に使用する駆動機構をそのまま軌道走行に利用することができ、改造費用を低く抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0042】
[第1の実施の形態]
最初に、図1〜図4を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る連結車両10の構成について説明する。本実施の形態に係る連結車両10は、図2に示すように、後輪駆動タイプのデュアルモード車両1を後部同士2台連結して構成したものであり、デュアルモード車両1単体の場合と同様に道路走行と軌道走行との双方を可能とする。
【0043】
連結車両10を構成する各デュアルモード車両1は、図1〜図4に示すように、車体2、車体2の前方及び後方に配設されたタイヤ用車軸3a、4aを中心に回転する前方ゴムタイヤ3及び後方ゴムタイヤ4、車体2の前方及び後方に昇降自在に配設された案内輪用車軸5a、6aを中心に回転する軌道走行用の前方案内輪5及び後方案内輪6、デュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3の操舵方向や後方ゴムタイヤ4の回転状態等を制御する図示されていない制御装置、等を備えて構成されている。デュアルモード車両1は、前方ゴムタイヤ3及び後方ゴムタイヤ4による道路走行と、前方案内輪5、後方案内輪6及び後方ゴムタイヤ4による軌道走行と、の双方を自在に切り換えて実現させることができるものである。
【0044】
車体2は、複数の乗客を搭乗させる構造を有している。本実施の形態においては、図1に示すようなマイクロバスの車体2を採用しており、運転手を含めて約30人を搭乗させることができる。車体2の後部2aには、連結器2bと図示されていない開口部とが設けられている。連結車両10を構成する際には、図2に示すように、連結器2bを介して2台のデュアルモード車両1の車体2の後部2a同士を連結し、開口部を介して双方の車体2の内部空間を連通させるようにしている。また、車体2の左側面には、図1に示すように乗降用扉2cが設けられている。
【0045】
前方ゴムタイヤ3は、図3及び図4に示すように、車体2のシャーシ2dに取り付けられたタイヤ用車軸3aに左右1本ずつ軸支され、後方ゴムタイヤ4とともに道路走行時に車体2の荷重を支持するものである。前方ゴムタイヤ3の操舵方向(図3における操舵角θ)は、車体2の運転席のハンドルに連結された図示されていない前輪操舵機構によって変更することができる。
【0046】
後方ゴムタイヤ4は、図3及び図4に示すように、車体2のシャーシ2dに取り付けられたタイヤ用車軸4aに左右2本ずつ軸支されている。後方ゴムタイヤ4は、前方ゴムタイヤ3とともに道路走行時に車体2の荷重を支持するとともに、エンジン及び動力伝達装置によって駆動されて道路走行時及び軌道走行時に駆動輪として機能するものである。軌道走行時には、内側の後方ゴムタイヤ4が軌道を構成するレールRの上面に当接して駆動力を発生させる。
【0047】
前方案内輪5及び後方案内輪6は、鉄等の金属で構成されており、図3及び図4に示すように各々左右1個ずつ設けられている。左右の前方案内輪5及び後方案内輪6は、各々前後の案内輪用車軸5a、6aで連結されている。また、前方案内輪5及び後方案内輪6は、案内輪用車軸5a、6a、アーム及び回動軸を介して車体2のシャーシ2dの前後に回動自在に取り付けられており、図示されていない油圧アクチュエータの伸縮により上方及び下方に回動するように構成されている。また、図示されていない案内輪操舵機構により、前方案内輪5及び後方案内輪6の操舵方向(図4における操舵角φ1〜φ4)を独立に変更することができるようになっている。
【0048】
道路走行時においては、図1に示すように、油圧アクチュエータの収縮により前方案内輪5及び後方案内輪6を上方に回動させて、前方ゴムタイヤ3及び後方ゴムタイヤ4より上方で固定する。一方、軌道走行時には、図2に示すように、油圧アクチュエータの伸長により前方案内輪5及び後方案内輪6を下方に回動させて、軌道のレールR上面に当接させる。軌道走行時においては、前方案内輪5は車体2の前方荷重を支持し、後方案内輪6は車体2の後方荷重の一部を支持することとなる。
【0049】
制御装置は、連結車両10の道路走行時において、図3に示すように、所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3(連結車両10の最前部のゴムタイヤ)の操舵方向と、所定の進行方向後方に配置されたデュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3(連結車両10の最後部のゴムタイヤ)の操舵方向と、を逆方向とするように前輪操舵機構を制御する。すなわち、制御装置は、本発明における操舵制御装置として機能する。また、制御装置は、連結車両10の曲線軌道走行時において、案内輪操舵機構を制御することにより、軌道の曲率半径に対応させてデュアルモード車両1の前方案内輪5及び後方案内輪6の操舵方向を独立に変更する。
【0050】
また、制御装置は、デュアルモード車両1が連結車両10の進行方向前方に配置されている場合に、所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)において後方ゴムタイヤ4を正回転させて、進行方向への推進力を発生させる。一方、制御装置は、デュアルモード車両1が連結車両10の進行方向後方に配置されている場合に、前記した低速走行状態において後方ゴムタイヤ4を逆回転させて、進行方向への推進力を発生させる。すなわち、制御装置は、本発明における推進制御装置としても機能する。また、制御装置は、デュアルモード車両1が連結車両10の進行方向後方に配置されている場合に、前記した低速走行状態を脱した段階で後方案内輪6を下降させることにより、後方ゴムタイヤ4を上昇させて軌道から離隔させる。すなわち、制御装置は、本発明における駆動輪上昇装置としても機能する。
【0051】
次に、本実施の形態に係る連結車両10の軌道走行時における走行制御動作について、図5及び図6を用いて説明する。
【0052】
まず、図5(a)に示すように、連結車両10を所定の軌道R上に乗せて停止させ、軌道走行可能な状態とする。この状態においては、図5(a)に示すように、連結車両10を構成する各デュアルモード車両1の前方案内輪5及び後方案内輪6が下降して軌道Rに当接し、前方ゴムタイヤ3が上昇して軌道Rから離隔する一方、後方ゴムタイヤ4が軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。
【0053】
このように軌道走行可能な状態から、連結車両10を構成する各デュアルモード車両1の制御装置を起動させることにより、各デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4を回転させて、所定の進行方向(図5の矢印の方向)へ向けて連結車両10を発進させる。この際、連結車両10の進行方向前方に配置されているデュアルモード車両(以下「前方デュアルモード車両」という)1の制御装置が、この車両の後方ゴムタイヤ4を正回転させることにより、進行方向への推進力を発生させる。また、連結車両10の進行方向後方に配置されているデュアルモード車両(以下「後方デュアルモード車両」という)1の制御装置が、この車両の後方ゴムタイヤ4を逆回転させることにより、進行方向への推進力を発生させる。
【0054】
次いで、連結車両10が所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)を脱した段階で、後方デュアルモード車両1の制御装置が、この車両の後方案内輪6を徐々に下降させて後方ゴムタイヤ4を徐々に上昇させる。この結果、図5(b)に示すように後方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4は軌道から離隔し、この後方ゴムタイヤ4の逆回転に起因する推進力は消失することとなる。その後、後方デュアルモード車両1の制御装置は、この車両の後方ゴムタイヤ4の逆回転を停止させ、図5(c)に示すように後方ゴムタイヤ4を所定の上昇位置まで上昇させて固定する。
【0055】
一方、連結車両10が所定の低速走行状態を脱した段階において、前方デュアルモード車両1の制御装置は、この車両の後方ゴムタイヤ4の正回転駆動を続行して、進行方向への推進力を発生させ続ける。これにより、連結車両10は、所定の低速走行状態を脱した段階において、図5(c)及び図6(a)に示すように前方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4による推進力のみによって走行することとなる。かかる走行中に連結車両10が曲線軌道に進入した場合には、各デュアルモード車両1の制御装置が案内輪操舵機構を制御することにより、軌道の曲率半径に対応させてデュアルモード車両1の前方案内輪5及び後方案内輪6の操舵方向を変更する。
【0056】
例えば、連結車両10が図4に示すような緩い左曲がりの曲線軌道に進入した場合には、進行方向前方に位置する前方デュアルモード車両1の前方案内輪5の操舵方向を左向きに(図示矢印方向に操舵角φ1)、後方案内輪6の操舵方向を右向きに変更する(図示矢印方向に操舵角φ2)。一方、進行方向後方に位置する後方デュアルモード車両1の前方案内輪5(進行方向後方)の操舵方向を、前方デュアルモード1の案内輪とは逆方向(右向き)に(図示矢印方向に操舵角φ3)、後方案内輪6(進行方向前方)の操舵方向を、前方デュアルモード1の案内輪とは逆方向(左向き)に(図示矢印方向に操舵角φ4)変更する。操舵角変更後における案内輪の回転軸の延長線は、曲線軌道の曲率半径の中心で交わるようになっている。なお、案内輪の操舵は、軌道の形状に合わせて受動的に追従する方法としても良い。
【0057】
続いて、連結車両10が所定の目的地に近付いたら、減速装置により連結車両10を減速させ、所定の目的地で停止させる。その後、図6(b)に示すように後方デュアルモード車両1の後方案内輪6を徐々に上昇させて後方ゴムタイヤ4を徐々に下降させる。そして、図6(c)に示すように後方ゴムタイヤ4を軌道Rに当接させて、発進前と同様の状態(図5(a)参照)に戻す。この状態から、再び各デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4を回転させて、連結車両10を発進させることができる。
【0058】
以上説明した実施の形態に係る連結車両10は、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両1を複数連結して構成したものであるので、多数の乗客や大量の荷物を乗せて軌道走行を行うことができ、鉄道車両のような大量輸送を実現させることができる。また、連結車両10を構成する各デュアルモード車両1は、タイヤ用車軸に設けられた駆動輪(後方ゴムタイヤ4)を使用して軌道走行を行うので、道路走行時に使用する駆動機構をそのまま軌道走行に利用することができる。従って、駆動機構の改良が不要となるため、改造費用を低く抑えることができる。
【0059】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10においては、2台のデュアルモード車両1の車体2の後部2aに開口部を設け、これらデュアルモード車両1の車体2の後部2a同士を連結し、開口部を介して車体2の内部空間を連通するので、連結したデュアルモード車両1の車体2間での乗客・荷物の往来が可能となる。
【0060】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10においては、所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)において、前方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4の正回転による推進力と、後方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4の逆回転による推進力と、を加算して、大きな推進力を得ることができる。従って、多数の乗客や大量の荷物を乗せた状態においても円滑な発進・加速を実現させることができる。
【0061】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10においては、大きな推進力を要する低速走行状態を脱した段階で、後方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4を上昇させて軌道Rから離隔させ、前方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4による推進力のみで走行させるので、推進に要する燃料を節減することができる。
【0062】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10においては、道路走行時において、前方デュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3(連結車両10の最前部のゴムタイヤ)の操舵方向と、後方デュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3(連結車両10の最後部のゴムタイヤ)の操舵方向と、を逆方向とすることができる(図3参照)。従って、連結車両10の旋回半径を小さくすることができる。
【0063】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10は、左右の前方案内輪5及び左右の後方案内輪6を独立に操舵する案内輪操舵機構を有するデュアルモード車両1を連結したものであるので、曲線軌道の曲率半径に対応させて左右の前方案内輪5及び左右の後方案内輪6の操舵方向を適宜変更することができる。従って、曲線軌道の円滑な走行を実現させることができる。
【0064】
なお、以上の実施の形態においては、2台のデュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4を各々軌道Rに当接させた状態から連結車両10を発進させた例を示したが、図7(a)に示すように前方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4のみを軌道Rに当接させ、後方デュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3及び後方ゴムタイヤ4を軌道Rから予め離隔させた状態から連結車両10を発進させてもよい。かかる場合には、図7(b)及び図7(c)に示すように、前方デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4による推進力のみで発進して走行することとなるため、発進の際の加速度は小さくなるが、推進に要する燃料を節減することができる。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、図8を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る連結車両について説明する。本実施の形態に係る連結車両は、第1の実施の形態に係る連結車両10を構成する2台のデュアルモード車両1の軌道走行用駆動輪(後方ゴムタイヤ4)を「前方ゴムタイヤ」に変更したものであり、その他の構成については第1の実施の形態と同一である。このため、変更した構成を中心に説明することとし、第1の実施の形態と重複する構成については、第1の実施の形態と同一の符号を付すこととする。
【0066】
本実施の形態に係る連結車両10Aは、図8(a)に示すように、前輪駆動タイプのデュアルモード車両1Aを2台連結して構成したものである。連結車両10を構成する各デュアルモード車両1は、図8(a)に示すように、車体2、車体2の前方及び後方に配設されたタイヤ用車軸を中心に回転する前方ゴムタイヤ3A及び後方ゴムタイヤ4A、車体2の前方及び後方に昇降自在に配設された車軸を中心に回転する軌道走行用の前方案内輪5及び後方案内輪6、デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aの操舵方向や回転状態等を制御する図示されていない制御装置、等を備えて構成されている。デュアルモード車両1Aは、前方ゴムタイヤ3A及び後方ゴムタイヤ4Aによる道路走行と、前方案内輪5、後方案内輪6及び前方ゴムタイヤ3Aによる軌道走行と、の双方を自在に切り換えて実現させることができるものである。
【0067】
前方ゴムタイヤ3Aは、車体2のシャーシに取り付けられたタイヤ用車軸に左右2本ずつ軸支されている。前方ゴムタイヤ3Aは、後方ゴムタイヤ4Aとともに道路走行時に車体2の荷重を支持するとともに、エンジン及び動力伝達装置によって駆動されて道路走行時及び軌道走行時に駆動輪として機能するものである。軌道走行時には、内側の前方ゴムタイヤ3Aが軌道を構成するレールRの上面に当接して駆動力を発生させる。前方ゴムタイヤ3Aの操舵方向は、車体2の運転席のハンドルに連結された図示されていない前輪操舵機構によって変更することができる。後方ゴムタイヤ4Aは、車体2のシャーシに取り付けられたタイヤ用車軸に左右2本ずつ軸支されている。後方ゴムタイヤ4Aは、前方ゴムタイヤ3Aとともに道路走行時に車体2の荷重を支持する。
【0068】
制御装置は、デュアルモード車両1Aが連結車両10Aの進行方向前方に配置されている場合に、所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)において前方ゴムタイヤ3Aを正回転させて、進行方向への推進力を発生させる。一方、制御装置は、デュアルモード車両1Aが連結車両10Aの進行方向後方に配置されている場合に、前記した低速走行状態において前方ゴムタイヤ3Aを逆回転させて、進行方向への推進力を発生させる。すなわち、制御装置は、本発明における推進制御装置として機能する。また、制御装置は、デュアルモード車両1Aが連結車両10Aの進行方向後方に配置されている場合に、前記した低速走行状態を脱した段階で前方案内輪5を下降させることにより、前方ゴムタイヤ3Aを上昇させて軌道から離隔させる。すなわち、制御装置は、本発明における駆動輪上昇装置としても機能する。
【0069】
次に、本実施の形態に係る連結車両10Aの軌道走行時における走行制御動作について、図6を用いて説明する。
【0070】
まず、図8(a)に示すように、連結車両10Aを所定の軌道R上に乗せて停止させ、軌道走行可能な状態とする。この状態においては、図8(a)に示すように、連結車両10Aを構成する各デュアルモード車両1Aの前方案内輪5及び後方案内輪6が下降して軌道Rに当接し、後方ゴムタイヤ4Aが上昇して軌道Rから離隔する一方、前方ゴムタイヤ3Aが軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。
【0071】
このような軌道走行可能な状態から、連結車両10Aを構成する各デュアルモード車両1Aの制御装置を起動させることにより、各デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aを回転させて、所定の進行方向(図8の矢印の方向)へ向けて連結車両10Aを発進させる。この際、連結車両10Aの進行方向前方に配置されているデュアルモード車両(前方デュアルモード車両)1Aの制御装置が、この車両の前方ゴムタイヤ3Aを正回転させることにより、進行方向への推進力を発生させる。また、連結車両10Aの進行方向後方に配置されているデュアルモード車両(後方デュアルモード車両)1Aの制御装置が、この車両の前方ゴムタイヤ3Aを逆回転させることにより、進行方向への推進力を発生させる。
【0072】
次いで、連結車両10Aが所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)を脱した段階で、後方デュアルモード車両1Aの制御装置が、この車両の前方案内輪5を徐々に下降させて前方ゴムタイヤ3Aを徐々に上昇させる。この結果、図6(b)に示すように後方デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aは軌道から離隔し、この前方ゴムタイヤ3Aの逆回転に起因する推進力は消失することとなる。その後、後方デュアルモード車両1Aの制御装置は、この車両の前方ゴムタイヤ3Aの逆回転を停止させ、図6(c)に示すように前方ゴムタイヤ3Aを所定の上昇位置まで上昇させて固定する。
【0073】
一方、連結車両10Aが所定の低速走行状態を脱した段階において、前方デュアルモード車両1Aの制御装置は、この車両の前方ゴムタイヤ3Aの正回転駆動を続行して、進行方向への推進力を発生させ続ける。これにより、連結車両10Aは、所定の低速走行状態を脱した段階において、図6(c)に示すように前方デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aによる推進力のみによって走行することとなる。
【0074】
続いて、連結車両10Aが所定の目的地に近付いたら、減速装置により連結車両10Aを減速させ、所定の目的地で停止させる。その後、後方デュアルモード車両1Aの前方案内輪5を徐々に上昇させることにより、前方ゴムタイヤ3Aを徐々に下降させて軌道Rに当接させ、発進前と同様の状態(図8(a)参照)に戻す。この状態から、再び各デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aを回転させて、連結車両10Aを発進させることができる。
【0075】
以上説明した実施の形態に係る連結車両10Aは、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両1Aを複数連結して構成したものであるので、多数の乗客や大量の荷物を乗せて軌道走行を行うことができ、鉄道車両のような大量輸送を実現させることができる。また、連結車両10Aを構成する各デュアルモード車両1Aは、タイヤ用車軸に設けられた駆動輪(前方ゴムタイヤ3A)を使用して軌道走行を行うので、道路走行時に使用する駆動機構をそのまま軌道走行に利用することができる。従って、駆動機構の改良が不要となるため、改造費用を低く抑えることができる。
【0076】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10Aにおいては、所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)において、前方デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aの正回転による推進力と、後方デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aの逆回転による推進力と、を加算して、大きな推進力を得ることができる。従って、多数の乗客や大量の荷物を乗せた状態においても円滑な発進・加速を実現させることができる。
【0077】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10Aにおいては、大きな推進力を要する低速走行状態を脱した段階で、後方デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aを上昇させて軌道Rから離隔させ、前方デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aによる推進力のみで走行させるので、推進に要する燃料を節減することができる。
【0078】
[第3の実施の形態]
次に、図9及び図10を用いて、本発明の第3の実施の形態に係る連結車両について説明する。本実施の形態に係る連結車両10Bは、図9(a)及び図10(a)に示すように、第1の実施の形態で説明した後輪駆動タイプのデュアルモード車両1と、第2の実施の形態で説明した前輪駆動タイプのデュアルモード車両1Aと、を後部同士2台連結して構成したものである。各デュアルモード車両1、1Aの構成については説明を省略することとする。
【0079】
本実施の形態に係る連結車両10Bの軌道走行時における走行制御動作について、図9及び図10を用いて説明する。
【0080】
最初に、図9を用いて、前輪駆動タイプのデュアルモード車両1Aを進行方向前方に配置し、後輪駆動タイプのデュアルモード車両1を進行方向後方に配置した場合における走行制御動作について説明する。
【0081】
まず、図9(a)に示すように、連結車両10Bを所定の軌道R上に乗せて停止させ、軌道走行可能な状態とする。この状態においては、図9(a)に示すように、連結車両10Bを構成する各デュアルモード車両1、1Aの前方案内輪5及び後方案内輪6が下降して軌道Rに当接している。そして、前方に配置されたデュアルモード車両1Aの後方ゴムタイヤ4Aが上昇して軌道Rから離隔する一方、前方ゴムタイヤ3Aが軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。また、後方に配置されたデュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3が上昇して軌道Rから離隔する一方、後方ゴムタイヤ4が軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。
【0082】
このように軌道走行可能な状態から、連結車両10Bを構成する各デュアルモード車両1、1Aの制御装置を起動させることにより、各車両の駆動輪を回転させて、所定の進行方向(図9の矢印の方向)へ向けて連結車両10Bを発進させる。この際、進行方向前方に配置されているデュアルモード車両1Aの制御装置が、この車両の前方ゴムタイヤ3Aを正回転させることにより、所定の進行方向への推進力を発生させる。また、進行方向後方に配置されているデュアルモード車両1の制御装置が、この車両の後方ゴムタイヤ4を逆回転させることにより、進行方向への推進力を発生させる。
【0083】
次いで、連結車両10Bが所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)を脱した段階で、進行方向後方に配置されているデュアルモード車両1の制御装置が、この車両の後方案内輪6を徐々に下降させて後方ゴムタイヤ4を徐々に上昇させる。この結果、図9(b)に示すようにデュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4は軌道から離隔し、この後方ゴムタイヤ4の逆回転に起因する推進力は消失することとなる。その後、デュアルモード車両1の制御装置は、この車両の後方ゴムタイヤ4の逆回転を停止させ、図9(c)に示すように後方ゴムタイヤ4を所定の上昇位置まで上昇させて固定する。
【0084】
一方、連結車両10Bが所定の低速走行状態を脱した段階において、進行方向前方に配置されているデュアルモード車両1Aの制御装置は、この車両の前方ゴムタイヤ3Aの正回転駆動を続行して、進行方向への推進力を発生させ続ける。これにより、連結車両10Bは、所定の低速走行状態を脱した段階において、図9(c)に示すようにデュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aによる推進力のみによって走行することとなる。
【0085】
続いて、連結車両10Bが所定の目的地に近付いたら、減速装置により連結車両10Bを減速させ、所定の目的地で停止させる。その後、進行方向後方に配置されているデュアルモード車両1の後方案内輪6を徐々に上昇させることにより、後方ゴムタイヤ4を徐々に下降させて軌道Rに当接させ、発進前と同様の状態(図9(a)参照)に戻す。この状態から、再び各デュアルモード車両1、1Aの駆動輪を回転させて、連結車両10Bを発進させることができる。
【0086】
次に、図10を用いて、後輪駆動タイプのデュアルモード車両1を進行方向前方に配置し、前輪駆動タイプのデュアルモード車両1Aを進行方向後方に配置した場合における走行制御動作について説明する。
【0087】
まず、図10(a)に示すように、連結車両10Bを所定の軌道R上に乗せて停止させ、軌道走行可能な状態とする。この状態においては、図10(a)に示すように、連結車両10Bを構成する各デュアルモード車両1、1Aの前方案内輪5及び後方案内輪6が下降して軌道Rに当接している。そして、前方に配置されたデュアルモード車両1の前方ゴムタイヤ3が上昇して軌道Rから離隔する一方、後方ゴムタイヤ4が軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。また、後方に配置されたデュアルモード車両1Aの後方ゴムタイヤ4Aが上昇して軌道Rから離隔する一方、前方ゴムタイヤ3Aが軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。
【0088】
このように軌道走行可能な状態から、連結車両10Bを構成する各デュアルモード車両1、1Aの制御装置を起動させることにより、各車両の駆動輪を回転させて、所定の進行方向(図10の矢印の方向)へ向けて連結車両10Bを発進させる。この際、進行方向前方に配置されているデュアルモード車両1の制御装置が、この車両の後方ゴムタイヤ4を正回転させることにより、所定の進行方向への推進力を発生させる。また、進行方向後方に配置されているデュアルモード車両1Aの制御装置が、この車両の前方ゴムタイヤ3Aを逆回転させることにより、進行方向への推進力を発生させる。
【0089】
次いで、連結車両10Bが所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)を脱した段階で、進行方向後方に配置されているデュアルモード車両1Aの制御装置が、この車両の前方案内輪5を徐々に下降させて前方ゴムタイヤ3Aを徐々に上昇させる。この結果、図10(b)に示すようにデュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aは軌道から離隔し、この前方ゴムタイヤ3Aの逆回転に起因する推進力は消失することとなる。その後、デュアルモード車両1Aの制御装置は、この車両の前方ゴムタイヤ3Aの逆回転を停止させ、図10(c)に示すように前方ゴムタイヤ3Aを所定の上昇位置まで上昇させて固定する。
【0090】
一方、連結車両10Bが所定の低速走行状態を脱した段階において、進行方向前方に配置されているデュアルモード車両1の制御装置は、この車両の後方ゴムタイヤ4の正回転駆動を続行して、進行方向への推進力を発生させ続ける。これにより、連結車両10Bは、所定の低速走行状態を脱した段階において、図10(c)に示すようにデュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4による推進力のみによって走行することとなる。
【0091】
続いて、連結車両10Bが所定の目的地に近付いたら、減速装置により連結車両10Bを減速させ、所定の目的地で停止させる。その後、進行方向後方に配置されているデュアルモード車両1Aの前方案内輪5を徐々に上昇させることにより、前方ゴムタイヤ3Aを徐々に下降させて軌道Rに当接させ、発進前と同様の状態(図10(a)参照)に戻す。この状態から、再び各デュアルモード車両1、1Aの駆動輪を回転させて、連結車両10Bを発進させることができる。
【0092】
以上説明した実施の形態に係る連結車両10Bは、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両1、1Aを連結して構成したものであるので、多数の乗客や大量の荷物を乗せて軌道走行を行うことができ、鉄道車両のような大量輸送を実現させることができる。また、連結車両10Bを構成する各デュアルモード車両1、1Aは、タイヤ用車軸に設けられた駆動輪(後方ゴムタイヤ4及び前方ゴムタイヤ3A)を使用して軌道走行を行うので、道路走行時に使用する駆動機構をそのまま軌道走行に利用することができる。従って、駆動機構の改良が不要となるため、改造費用を低く抑えることができる。
【0093】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10Bにおいては、所定の低速走行状態(発進から約15km/hまで)において、デュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3Aの正回転(逆回転)による推進力と、デュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4の逆回転(正回転)による推進力と、を加算して、大きな推進力を得ることができる。従って、多数の乗客や大量の荷物を乗せた状態においても円滑な発進・加速を実現させることができる。
【0094】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10Bにおいては、大きな推進力を要する低速走行状態を脱した段階で、進行方向後方に配置された車両の駆動輪(例えば図9におけるデュアルモード車両1の後方ゴムタイヤ4)を上昇させて軌道Rから離隔させ、進行方向前方に配置された車両の駆動輪(図9におけるデュアルモード車両1Aの前方ゴムタイヤ3A)による推進力のみで走行させるので、推進に要する燃料を節減することができる。
【0095】
[第4の実施の形態]
次に、図11及び図12を用いて、本発明の第4の実施の形態に係る連結車両について説明する。本実施の形態に係る連結車両10Cは、図11に示すように、後輪駆動タイプのデュアルモード車両1に新たな構成を加えてなるデュアルモード車両1Cを同じ向きに2台連結して構成したものであり、デュアルモード車両1Cの説明において前述したデュアルモード車両1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明は省略することとする。
【0096】
互いに連結されるそれぞれのデュアルモード車両1Cは、図12に示すように、連結されたもう一方のデュアルモード車両1Cとの間で後述する各種の構成について相互に同期した動作或いは機能を実行するための同期制御装置101を備えている。また、同期制御装置101による同期制御の対象として、デュアルモード車両1Cは、エンジンコントローラ121、トランスミッションコントローラ122、ブレーキ用油圧シリンダ123及び乗降ドア開閉用エアシリンダ124を制御する電磁弁を備えている。
【0097】
エンジンコントローラ121は、図12に示すように、同期制御装置101からの電気信号に従って実際にエンジンを制御する装置で、同期制御装置101から受信したアクセルペダル112に設けられた変位計112aの検出踏込み量、アクセルペダル112に設けられたアクセルON/OFFスイッチ112bが検出するアクセル112のON/OFF、シフトレバー113のシフトポジションの情報、運転席の操作盤111に設けられた排気ブレーキスイッチ111c等からの情報をもとに燃料の噴射量や噴射時期等を算出し、エンジンに対する燃料の供給や吸排気弁の開閉を行っている。
【0098】
また、トランスミッションコントローラ122は、図12に示すように、同期制御装置101からの電気信号に従って実際にトランスミッションを制御する装置で、同期制御装置101から受信したシフトレバー113のシフトポジション、運転席の操作盤111に設けられたオーバードライブスイッチ111d、ローレンジスイッチ111e、パワーモードスイッチ111f等からの情報をもとに走行に必要なギアを算出し、トランスミッションに対するギアチェンジを行っている。
【0099】
図12に示すように、操作盤111には、所定の進行方向前方又は後方に配置されていることを指定する前後指定スイッチ111a、デュアルモード車両1Cが単車か編成かを指定する単車編成指定スイッチ111b、エンジンに対して排気ブレーキON/OFFの指令を与える排気ブレーキスイッチ111c、トランスミッションに対して各種モードのON/OFFの指令を与えるオーバードライブスイッチ111d、ローレンジスイッチ111e、パワーモードスイッチ111f、乗降ドア開閉を行う乗降ドア開閉スイッチ111g等を備えている。なお、ここで言う排気ブレーキとは、エンジンの排気機構に設けた弁を閉じてエンジン内の排気を強制的に抑えることで働くエンジンブレーキの一種であり、ローレンジとは、オートマチックトランスミッションにおいて、シフトを1速に固定する機能、オーバードライブとは、高速走行用の最高速ギア使用の可否を指示する機能、パワーモードとは、シフトチェンジのタイミングを通常よりも遅らせて、エンジンをより高回転領域で使用する機能である。
【0100】
前記同期制御装置101は、図12に示すように、通信手段141を備え、連結しているもう一方のデュアルモード車両1Cとの間で、複数の通信線を含む通信ケーブル142によって接続されており、車両間で通信を行う。通信手段141は、デュアルモード車両1Cの変位計112aからのアクセルペダル112の踏込み量、アクセルON/OFFスイッチ112bからのアクセルペダルのON/OFF、シフトレバー113のシフトポジション、変位計114aからのブレーキペダル114の踏込み量、ブレーキ圧力計115からのブレーキ圧、操作盤111に設けられた各種スイッチの情報等を通信ケーブル142によって送受信することができる。
【0101】
また、前記同期制御装置101は、単車編成指定スイッチ111bが「単車」の場合には、運転席の操作盤111に設置された各種スイッチ、変位計112aからのアクセルペダル112の踏込量、アクセルON/OFFスイッチ112bからのアクセルペダルのON/OFF、トランスミッションのシフトレバー113のシフトポジション、変位計114aからのブレーキペダル114の踏込量、ブレーキ圧力計115からのブレーキ圧等を入力情報とし、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、乗降ドア開閉等を制御する機能を備え、単車編成指定スイッチ111bが「編成」及び前後指定スイッチ111aが「前」の場合には、前記「単車」設定における各部への制御と同じ制御を実行すると共に通信手段141を通して連結されたもう一方のデュアルモード車両1C側に前記入力情報を出力する機能を備えている。
【0102】
また、前記同期制御装置101は、単車編成指定スイッチ111bが「編成」及び前後指定スイッチ111aが「後」の場合には、前記通信手段141により受信した所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両からの情報に従い、エンジン、トランスミッション、ブレーキ、乗降ドアの開閉等を制御する機能を備えている。
また、前記同期制御装置101は、連結されたデュアルモード車両1Cとの間で車内放送の音声信号を相互に送受信し、それぞれの車内に放送するアンプ131、マイク132及びスピーカ133も備えている。
【0103】
次に、本実施の形態に係る連結車両10Cの軌道走行時における走行制御動作について、図11を用いて説明する。
【0104】
図11に示すように、連結車両10Cが軌道走行可能な状態においては、連結車両10Cを構成する各デュアルモード車両1Cの前方案内輪5及び後方案内輪6が下降して軌道Rに当接し、前方ゴムタイヤ3が上昇して軌道Rから離隔する一方、後方ゴムタイヤ4が軌道Rに当接して推進力を発生させることができるようになっている。
【0105】
また、かかる走行中に連結車両10Cが曲線軌道に進入した場合には、各デュアルモード車両1Cの制御装置が案内輪操舵機構を制御することにより、軌道の曲率半径に対応させてデュアルモード車両1Cの前方案内輪5及び後方案内輪6の操舵方向を変更する。
【0106】
例えば、連結車両10Cが図13に示すような緩い左曲がりの曲線軌道に進入した場合には、連結された各デュアルモード車両1Cの前方案内輪5の操舵方向を軌道の曲線に合わせて左向きに(図示矢印方向に操舵角φ1及びφ3)、後方案内輪6の操舵方向を右向きに(図示矢印方向に操舵角φ2及びφ4)変更する。操舵角変更後における案内輪の回転軸の延長線は、曲線軌道の曲率半径の中心で交わるようになっている。なお、案内輪の操舵は、軌道の形状に合わせて受動的に追従する方法としても良い。
【0107】
次に、本実施の形態に係る連結車両10の同期制御装置101の動作について、図12を用いて説明する。
【0108】
なお、以下の説明においては、運転士は所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両1Cに搭乗し、前後指定スイッチ111aが「前」に、後方に配置されたデュアルモード車両は、前後指定スイッチ111aが「後」になっている。また、両車両とも単車編成指定スイッチ111bは「編成」となっている。そのため、進行方向後方に配置されたデュアルモード車両1Cは、進行方向前方に配置されたデュアルモード車両1Cに同期して制御される。
【0109】
図12に示すように、運転士が操作したアクセルペダル112の踏込み量は、前記アクセルペダル112に設けられた変位計112a及びアクセルON/OFFスイッチ112bから電気信号として前記同期制御装置101へ送られ、また、シフトレバー113のシフトポジションの情報、運転席の操作盤111に設けられた排気ブレーキスイッチ111c等からの情報とともに、エンジンコントローラ121に送られ、エンジンコントローラ121がエンジンを制御する。それと同時に、前記同期制御装置101に接続された通信手段141から、進行方向後方に配置されたデュアルモード車両1Cの同期制御装置101に対して同様の情報が送られ、進行方向後方のデュアルモード車両1Cのエンジンが同様に制御される。これにより、連結された両方のデュアルモード車両1Cが同期をとって制御されることとなる。すなわち、前記同期制御装置101は、本発明における出力同期制御手段として機能する。
【0110】
また、図12に示すように、運転士が操作したトランスミッションのシフトレバー113のシフトポジションは、電気信号として前記同期制御装置101へ送られ、また、運転席の操作盤111に設けられたオーバードライブスイッチ111d、ローレンジスイッチ111e、パワーモードスイッチ111f等からの情報とともに、トランスミッションコントローラ122に送られ、トランスミッションコントローラ122がトランスミッションを制御する。それと同時に、前記同期制御装置101に接続された通信手段141から、進行方向後方に配置されたデュアルモード車両1Cの同期制御装置101に対して同様の情報が送られ、進行方向後方のデュアルモード車両1Cのトランスミッションが同様に制御される。これにより、連結された両方のデュアルモード車両1Cが同期をとって制御されることとなる。すなわち、前記同期制御装置101は、本発明における変速同期制御手段として機能する。
【0111】
また、図12に示すように、運転士が操作したブレーキペダル114の踏込み量は、前記ブレーキペダル114に設けられた変位計114aから、同じくブレーキ圧はブレーキ圧力計115から、電気信号として前記同期制御装置101へ送られ、前記同期制御装置101がブレーキ油圧シリンダ123に設けられた電磁弁123aを開閉して、ブレーキ圧を制御する。それと同時に、前記同期制御装置101に接続された通信手段141から、進行方向後方に配置されたデュアルモード車両1Cの同期制御装置101に対して同様の情報が送られ、進行方向後方のデュアルモード車両1Cのブレーキ圧が同様に制御される。これにより、連結された両方のデュアルモード車両1Cが同期をとって制御されることとなる。すなわち、前記同期制御装置101は、本発明における制動同期制御手段として機能する。
【0112】
また、図12に示すように、運転士が操作した運転席の操作盤111に設けられた乗降ドア開閉スイッチ111gの情報は前記同期制御装置101へ送られ、前記同期制御装置101が乗降ドア開閉用エアシリンダ124に設けられた電磁弁124aを開閉して、乗降ドア開閉を制御する。それと同時に、前記同期制御装置101に接続された通信手段141から、進行方向後方に配置されたデュアルモード車両1Cの同期制御装置101に対して同様の情報が送られ、進行方向後方のデュアルモード車両1Cの乗降ドア開閉が同様に制御される。これにより、連結された両方のデュアルモード車両1Cが同期をとって制御されることとなる。すなわち、前記同期制御装置101は、本発明における開閉同期制御手段として機能する。なお、エアシリンダ及び電磁弁の代わりに、電気アクチュエータを用いても良い。
【0113】
また、図12に示すように、連結車両10Cを構成する各デュアルモード車両1Cにおいて、車内放送用のマイク132に入力された音声は、アナログ信号として、アンプ131を経由してスピーカ133に出力される。それと同時に、アンプ131及び同期制御装置101を経由して、連結されたもう一方のデュアルモード車両1Cの制御装置に同様の音声が送られ、アンプ131を経由してスピーカ133に出力される。これにより、連結された両方のデュアルモード車両1Cに対して車内放送がなされることとなる。すなわち、制御装置は、本発明における音声出力制御手段として機能する。ここでは音声信号をアナログ信号として説明したが、既知の先行技術によりディジタル信号に変換し、送受信しても良いし、各デュアルモード車両1Cの間で接続された図示しないアナログケーブルにより送受信しても良い。
【0114】
以上説明した実施の形態に係る連結車両10Cは、道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両1Cを複数連結して構成したものであるので、多数の乗客や大量の荷物を乗せて軌道走行を行うことができ、鉄道車両のような大量輸送を実現させることができる。また、連結車両10Cを構成する各デュアルモード車両1Cは、タイヤ用車軸に設けられた駆動輪(後方ゴムタイヤ4)を使用して軌道走行を行うので、道路走行時に使用する駆動機構をそのまま軌道走行に利用することができる。従って、駆動機構の改良が不要となるため、改造費用を低く抑えることができる。
【0115】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10Cにおいて、エンジン、トランスミッション、ブレーキが、所定の進行方向前方に配置されたデュアルモード車両から同期制御できるため、デュアルモード車両を2台合わせた充分な推進力、円滑なシフトチェンジ、充分な制動力が得られ、乗降用ドア開閉及び車内放送も含めて運転士一人で対応できるため、鉄道車両のような大量輸送において、運用費用も低く抑えることができる。
【0116】
また、以上説明した実施の形態に係る連結車両10Cは、左右の前方案内輪5及び左右の後方案内輪6を独立に操舵する案内輪操舵機構を有するデュアルモード車両1Cを連結したものであるので、曲線軌道の曲率半径に対応させて左右の前方案内輪5及び左右の後方案内輪6の操舵方向を適宜変更することができる。従って、曲線軌道の円滑な走行を実現させることができる。
【0117】
なお、以上説明した実施の形態においては、上記連結車両10Cで各デュアルモード車両1Cが同期制御を行う対象は前述したものに限定されず、他にも運転士が設定可能な機能(例えば、雪道で2速発進をするスノーモード等)をデュアルモード車両1Cが備える場合には、それら他の機能についても同期制御を行うことが望ましい。
【0118】
なお、以上説明した実施の形態においては、後輪駆動タイプのデュアルモード車両1Cを2台連結して構成したものであるが、前輪駆動タイプのデュアルモード車両を連結しても良い。その場合は、駆動輪は後方ゴムタイヤ4にかえて前方ゴムタイヤ3となり、前方ゴムタイヤ3にかえて後方ゴムタイヤ4を上昇させることとなる。
【0119】
また、以上説明した実施の形態におけるブレーキ及び乗降ドアに係る同期制御と、車内放送に係る制御は、第1から第3の各実施の形態に係る後部同士を連結した連結車両に適用しても良い。
【0120】
なお、以上説明した実施の形態のようにデュアルモード車両の後部と前部とを連結する方式を採用すると、3台以上のデュアルモード車両を連結することが可能となる。
【0121】
また、以上の各実施の形態における2台のデュアルモード車両を連結して構成した連結車両(例えば第1の実施の形態に係る連結車両10や第2の実施の形態に係る連結車両10A)を複数連結して、4台、6台、8台・・・のデュアルモード車両からなる連結車両を構成してもよい。
【0122】
また、以上の各実施の形態においては、前方ゴムタイヤの操舵方向を変更する前輪駆動機構を有するデュアルモード車両を連結して連結車両を構成した例を示したが、前輪駆動機構に代えて、前後左右のゴムタイヤを各々独立に操舵する「4輪操舵機構(独立操舵機構)」を設けることもできる。かかる「4輪操舵機構」を有するデュアルモード車両を連結して連結車両を構成すると、走行速度や道路状況に応じて各ゴムタイヤの方向を適宜変更することができるので、種々の態様での道路走行を実現させることができる。
【0123】
また、以上の第1から第3の各実施の形態に係る連結車両を構成する各デュアルモード車両に、駆動輪(後方ゴムタイヤ4や前方ゴムタイヤ3A)の正回転による推進力と逆回転による推進力とを同等にする「逆転機構」を設けることもできる。かかる「逆転機構」を設けた場合には、連結車両の所定の進行方向後方に配置されたデュアルモード車両の駆動輪を逆回転させて推進力を発生させる際に、正回転の場合と同等の推進力を加算することができ、より大きな推進力を得ることができる。
【0124】
また、以上の各実施の形態において、例えば連結車両10の走行中に、連結器が破損し又はリングが脱落し連結が解除された場合、連結車両10はデュアルモード車両同士を接続している通信ケーブル142が切断されたことを検知して、即座にブレーキを動作させ、各デュアルモード車両を停止させる機能を同期制御装置に持たせても良い。すなわち、前記同期制御装置101は、本発明における停止制御手段として機能する。かかる「停止制御手段」を設けることにより、万一、連結車両が意図せず分離した場合にも、分離した各デュアルモード車両を安全に停止させることができる。
【0125】
また、以上の各実施の形態において、図14(a)、(b)に示すように、連結される二台のデュアルモード車両間で牽引力を伝える金属製のリング215と、各デュアルモード車両に設けられて前記リング215に対して挿抜可能なピン212,222を保持し、互いに当接する当接面213,223を備えた枠体211,221、を備え、デュアルモード車両の後部に設けられた一方の枠体211はデュアルモード車両に緩衝器214により弾性支持され、デュアルモード車両の前部に設けられた他方の枠体221はデュアルモード車両に直接固定支持されている。かかる連結器210は、枠体211,221がいずれも内部中空の構造体であり、その他の構成はピン212、リング215、コイル状の緩衝器214であるため全体として軽量化が図られている。各枠体211,221の各当接面213,223はその中央部が広く開口し、リング215の一端部又は他端部を枠体の中空内部に挿入させることができる。
【0126】
そして、各ピン212,222は、各枠体211,221に対して上下にスライド操作が可能に支持されており、当該各ピン212,222をそれぞれ上方に待避させた状態から下方にスライド操作することで、各ピン212,222をリング215内に挿通させ、これにより図14に示すように、枠体211,221を連結することを可能としている。なお、デュアルモード車両の後部同士を連結する場合には、図15(a)、(b)に示すように、枠体211同士を突き合わせて、各ピン212に同様の操作を加えることで枠体211同士を連結させることを可能としている。これにより、デュアルモード車両同士の連結作業を、運転士が一人でも容易に連結操作が可能であり、従来の鉄道車両より連結器が軽いため車両全体の軽量化を図ることができる。
【0127】
また連結器210では、車両前部の枠体221については緩衝器を省略し、枠体自身も小型にすることで、一層の軽量化を図っているが、軽量化の要求が少なければ、無論前側の枠体211も緩衝器214により支持される構造としても良い。また、かかる連結器はリングとピンで各車両を連結しているため、各車両の上下動やロール及びピッチ動揺がもう一方の車両に伝わり難い構造となっている。
【0128】
また、以上の各実施の形態においては、前後の案内輪用車軸5a、6aの操舵方向を変更させる「案内輪(輪軸)操舵機構」を採用した例を示したが、左右の前方案内輪5及び左右の後方案内輪6の操舵方向を独立に変更する「(独立)案内輪操舵機構」を採用することもできる。かかる(独立)案内輪操舵機構採用した場合においても、曲線軌道の曲率半径に対応させて前後の前方案内輪5、6の操舵方向を適宜左右独立に変更することができるので、曲線軌道の円滑な走行を実現させることができる。
【0129】
また、以上の各実施の形態においては、デュアルモード車両の車体の左側面にのみ乗降用扉を設けた例を示したが、乗客の乗降を容易にするために車体の左右双方の側面に乗降用扉を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両を構成する各デュアルモード車両の側面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両の道路走行時における平面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両の曲線軌道走行時における平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両の走行制御動作を説明するためのものであり、(a)は連結車両が軌道上に停止した状態(2台のデュアルモード車両の駆動輪が軌道に当接した状態)を示す説明図、(b)は連結車両が発進して低速走行状態を脱した直後の状態を示す説明図、(c)は連結車両の通常走行(非低速走行)状態を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両の走行制御動作を説明するためのものであり、(a)は連結車両の通常走行(非低速走行)状態を示す説明図、(b)は連結車両が軌道上に停止して後続車の駆動輪の下降を開始させた状態を示す説明図、(c)は連結車両の後続車の駆動輪を下降させて軌道に当接させた状態を示す説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る連結車両の走行制御動作を説明するためのものであり、(a)は連結車両が軌道上に停止した状態(前方のデュアルモード車両の駆動輪のみが軌道に当接した状態)を示す説明図、(b)は連結車両が発進して低速走行状態を脱した直後の状態を示す説明図、(c)は連結車両の通常走行(非低速走行)状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る連結車両の走行制御動作を説明するためのものであり、(a)は連結車両が軌道上に停止した状態を示す説明図、(b)は連結車両が発進して低速走行状態を脱した直後の状態を示す説明図、(c)は連結車両の通常走行(非低速走行)状態を示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る連結車両の走行制御動作を説明するためのものであり、(a)は連結車両が軌道上に停止した状態を示す説明図、(b)は連結車両が発進して低速走行状態を脱した直後の状態を示す説明図、(c)は連結車両の通常走行(非低速走行)状態を示す説明図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る連結車両の走行制御動作を説明するためのものであり、(a)は連結車両が軌道上に停止した状態を示す説明図、(b)は連結車両が発進して低速走行状態を脱した直後の状態を示す説明図、(c)は連結車両の通常走行(非低速走行)状態を示す説明図である。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る連結車両の側面図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る同期制御装置の構成図である
【図13】本発明の第4の実施の形態に係る連結車両の曲線軌道走行時における平面図である。
【図14】本発明の連結車両を構成するデュアルモード車両を、後方と前部を連結した時の連結部の(a)平面図及び(b)側面図である。
【図15】本発明の連結車両を構成するデュアルモード車両を、後方同士連結した時の連結部の(a)平面図及び(b)側面図である。
【符号の説明】
【0131】
1、1A、1C デュアルモード車両
2 車体
2a 後部
2b 連結器
2c 乗降用扉
2d シャーシ
3 前方ゴムタイヤ
3a タイヤ用車軸
3A 前方ゴムタイヤ(駆動輪)
4 後方ゴムタイヤ(駆動輪)
4a タイヤ用車軸
4A 後方ゴムタイヤ
5 前方案内輪
5a 案内輪用車軸
6 後方案内輪
6a 案内輪用車軸
7 ジャンパー栓(通信ケーブル)
10、10A、10B、10C 連結車両
101 同期制御装置
111 操作盤
112 アクセルペダル
112a 変位計
113 シフトレバー
114 ブレーキペダル
114a 変位計
121 エンジンコントローラ
122 トランスミッションコントローラ
123 ブレーキ油圧シリンダ
123a 電磁弁
124 乗降ドア開閉用エアシリンダ
124a 電磁弁
131 アンプ
132 マイク
133 スピーカ
141 通信手段
142 通信ケーブル
210 連結器
211、221 枠体
212、222 ピン
213、223 当接面
214 緩衝器
215 リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前方及び後方に各々配設されたタイヤ用車軸を介して設けられた道路走行用のタイヤと、車体の前方及び後方に各々昇降自在に配設された案内輪用車軸を介して設けられた軌道走行用の案内輪と、前記各々配設されたタイヤ用車軸の少なくとも何れか一方に設けられた駆動輪と、を有し、前方及び後方の前記案内輪と前記駆動輪とで軌道を走行する道路走行・軌道走行可能なデュアルモード車両が複数連結されてなることを特徴とする連結車両。
【請求項2】
2台の前記デュアルモード車両を備え、
一方の前記車体の後部ともう一方の車体の前部が連結されてなることを特徴とする請求項1に記載の連結車両。
【請求項3】
2台の前記デュアルモード車両を備え、
前記車体の後部同士が連結されてなることを特徴とする請求項1に記載の連結車両。
【請求項4】
前記車体の後部に開口部が設けられた2台の前記デュアルモード車両を備え、
前記開口部を介して前記車体の内部空間が連通されてなることを特徴とする請求項3に記載の連結車両。
【請求項5】
低速走行状態において、所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両の前記駆動輪を正回転させるとともに、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の前記駆動輪を逆回転させることにより、所定の進行方向への推進力を発生させる推進制御装置を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の連結車両。
【請求項6】
前記低速走行状態を脱した段階で、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の前記駆動輪を上昇させて軌道から離隔させる駆動輪上昇装置を備えることを特徴とする請求項5に記載の連結車両。
【請求項7】
前方の前記タイヤを操舵する前輪操舵機構を有する2台の前記デュアルモード車両を備え、
道路走行時において、所定の進行方向前方に配置された前記デュアルモード車両の前方の前記タイヤの操舵方向と、所定の進行方向後方に配置された前記デュアルモード車両の前方の前記タイヤの操舵方向と、を逆方向とするように前記前輪操舵機構を制御する操舵制御装置を備えることを特徴とする請求項3から6の何れか一項に記載の連結車両。
【請求項8】
前記各タイヤを独立に操舵する独立操舵機構を有する前記デュアルモード車両が連結されてなることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の連結車両。
【請求項9】
前方及び後方の前記案内輪を操舵する案内輪操舵機構を有する前記デュアルモード車両が連結されてなることを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の連結車両。
【請求項10】
前記駆動輪の正回転による推進力と逆回転による推進力とを同等にする逆転機構を有する前記デュアルモード車両が連結されてなることを特徴とする請求項1から9の何れか一項に記載の連結車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−199277(P2006−199277A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367977(P2005−367977)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)