説明

連続スペクトルの多色光生成装置

本発明は専用の多色光生成装置(D)に関する。本発明による装置(D)は、少なくとも2つの異なった励起波長(λ1、λ2)で放射線を発するために使用される光ポンピング手段(MP)と、非線形相互作用レジュメで放射線によって励起された時に出力(SGL)で多色光を発するために使用される光ガイド手段(GL)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源の分野、特に白色光の光源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術から公知のように、広域スペクトル白色光はさまざまな方法によって発生させることができる。
【0003】
第一の方法は、直接に広スペクトル白色光を発する光源、例えば白熱灯、石英水銀灯またはキセノンアークを使用することである。この場合、発光スペクトルはほぼ連続しているが、生じる輝度はかなり弱く、しかも発光は等方性であり、それゆえ、ごく小さなエリアに集束させることも空間的にコヒーレントなビーム(または低発散のビーム)を形成することも不可能である。加えて、この種の光源はかなりの大きさを有する。さらに、これらの光源の寿命は相対的に短い。またさらに、アークまたは白熱光源は大量の熱を発生し、それゆえに収率の点で劣っている。
【0004】
第二の方法は、異なった波長の光子を放出する多数の単一周波数レーザーダイオードを並列に配置することからなる。この場合、寸法は相対的にわずかであるが、得られるスペクトルは不連続であり、供されるパワーはかなり低く、分配雑音はかなり高く、ダイオード間に強度の変化が生じ得る。
【0005】
第三の方法は、キロヘルツからメガヘルツまで変動する繰返し率にてピコ秒からフェムト秒のオーダーのインパルスを持つパルスレジュメ(regime)で動作する固体レーザなどのような単一周波数レーザ、例えばチタン/サファイアレーザを使ってミクロ構造の光ファイバをポンピングすることからなる。この種のポンピングがミクロ構造のファイバに非線形効果を誘導し、それによって異なった波長の光子を発生することができる。この種の光源は特に以下の文献、J K Ranka et al,Optics Letters,vol.25,No.1,p.25−27,2000およびJ C Knight et al,Optics Letters,vol.26,No.17,p.1356−1358,2001に述べられている。この種のレーザが使用されることにより、この種の光源は非常に高価かつ非常に粗大となり、したがって、集積品でのその使用を除外している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
総合的に見て満足すべき公知の光源は存在しないことから、本発明はこうした状況の改善を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的のために本発明は、一方で、少なくとも2つの異なった励起波長、好ましくは2群の異なった波長を発するために使用される光ポンピング手段と、他方で、放射により非線形光/物質相互作用レジュメにおいて励起される際に出力で多色光を発するように構成された光ガイド手段とを有する多色光生成装置を提案する。
【0008】
本発明による装置は多くの形を取ることができ、その少なくともいくつかの特徴は互いに組み合わされてよい。具体的には:
光ガイド手段は1つまたは複数の選択された波長と関連した少なくとも1つのカットオフを含む分散プロファイルを有していてよく、光ポンピング手段は上記の選択された波長の上および下の励起波長で、および必要に応じ該波長のいずれの側にも分布した励起波長で放射線を発するように設計されていてよい。
【0009】
光ガイド手段は好ましくは単一モードであることから、多色光は好ましくは横単一モードであってよい。
【0010】
光ポンピング手段はパルス時間同期モード、または、ほぼ連続的または連続的モードで使用されてよい。
【0011】
光ポンピング手段は異なった励起波長で放射線を発するレーザ光源を備えていてもよい。この場合、レーザ光源は、例えば第一の励起波長を発するレーザと、少なくとも1つの第二の励起波長の放射線を発する周波数変換手段とを備えていてよい。この周波数変換手段は、例えば場合により非線形結晶型の1つまたは複数の周波数2倍器の形態で製造されていてよく、したがって、第二の励起波長は第一の励起波長より2倍小さい。別の実施形態において、周波数変換手段は例えば少なくとも1つの周波数3倍器の形態で形成されてもよく、従って、第二および第三の励起波長はそれぞれ第一の励起波長より2倍および3倍小さい。さらに別の実施形態において、レーザ光源は、異なった励起波長で放射線を発するパラメータ発振器を備えていてもよい。
【0012】
光ガイド手段は、例えば集積回路に実装された光ガイドから成っていてよい。
【0013】
光ガイド手段は適切に選択された寸法の光ファイバから成っていてよい。この場合、光ファイバは、例えば多孔ファイバまたはフォトニックファイバなどのミクロ構造ファイバであってよい。
【0014】
光ガイド手段は「偏光選択型」または「偏光維持型」として知られたタイプのものであってよい。
【0015】
本発明による装置は、光ガイド手段の下流で一定の波長をフィルタリング(または選別)するために使用されるフィルタリング手段を有していてよい。この種のフィルタリング手段は、例えば1つまたは複数のブラッググレーティングから成っていてよい。
【0016】
本発明による装置は光ポンピング手段を光ガイド手段の入力に結合するために使用される結合手段を有していてよい。
【0017】
本発明は多数の分野に使用することができ、とりわけ、物理的大きさの計測法、光学顕微鏡法、および特に断層撮像および三次元顕微鏡法、分光分析法、試料の医学的分析および特にフローサイトメトリー、医学的ホログラフィー、撮像特にホログラフィー像の伝送、微小および極微小寸法の粒子、または原子の取り扱い、および干渉分光法に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のその他の特徴ならびに利点は以下に述べる詳細な説明および添付図面を吟味することによって明らかとなろう。
【0019】
添付図面は本発明を補うのみならず、必要に応じ、本発明を画定する一助となるものである。
【0020】
第一に図1を参照して、本発明による多色光を発生させるための専用装置Dの第一の実施形態を説明する。
【0021】
本発明による装置Dは、まず少なくとも2つの異なった励起波長λ1とλ2、好ましくは2群の異なった波長を有する放射を発するために使用される光ポンピングモジュールMPを備えている。言うまでもなく、この光ポンピングモジュールMPは2つ以上(例えば3つまたは4つまたはそれ以上)の異なった波長または2群以上(例えば3群または4群またはそれ以上)の異なった波長を有する光子を発することもできる。
【0022】
多波長の光ポンピングモジュールMPは多くの方法によって製造することができる。例えば、該モジュールはパラメータ発振器よりなるレーザ光源の形を取ることができる。該モジュールはまた、図2に示すように、周波数変換手段例えば周波数2倍器DFに結合される単一波長レーザ光源SLの形であってもよい。この場合、レーザ光源SLは周波数2倍器DFに、例えば1064nmに等しい第一の波長λ1を有する光子(または放射線)を供給し、周波数2倍器DFはその出力SMPにて、第一の波長λ1で光子(または放射線)を発すると共に、λ1の1/2に等しい(つまりこの場合には532nmに等しい)第二の波長λで光子(または放射線)を発する。
【0023】
さらに、多波長光ポンピングモジュールMPはパルスおよび時間同期モード、またはほぼ連続的なモードまたは連続モードで動作してよい。
【0024】
また、本発明による装置Dは光ガイド手段GLを備え、その手段は、数波長を有する放射線によって励起され非線形光/物質相互作用レジュメにおいて光ポンピングモジュールMPにより発せられる時に、出力SGLにて「連続体」に相当する多色光を発するために使用される。
【0025】
ここで「多色光」とは、図3に示す種類のスペクトル(波長350nm〜750nmの間の第一の曲線)、つまり、広帯域に渡って波長(λ)によりほぼ連続的かつ非離散的なスペクトルを有する光を意味している。同図から理解されるように、光ガイド手段GLによって発せられる多色光の(ここでは任意の単位による)強度Iは約420nmから約700nmの範囲にわたってほとんど変化していない。
【0026】
負の分散レジュメ(図4における800nm(または0.8μm)以下の波長に対応する常分散)を使用する単一モード光ファイバでは、単一周波数光源によるポンピングは(図3における波長500nm〜700nmの間の第二の曲線で示されているような)高い波長に向かう不連続ラマン線を生じる。したがって、ポンピング信号よりも短い波長で信号は発生できない(またはごく弱い信号のみが発生される)。発生するラマン線の数は入射信号の強度とともに増加する。
【0027】
適切に選ばれた少なくとも2つの波長(またはそれぞれ少なくとも1つの波長を有する2群の波長)を使用するポンピングの場合には、このように、スペクトルプロファイルに2つの変化が観察される。図3の(波長350nm〜750nmの間の)第一の曲線によって図示されているように、均等かつ対照的なスペクトル拡大がポンピング波長のうちの1つのいずれの側にも実際に現れている。つまり、ラマン成分が最小化されている。この二重変化は主として非線形効果間の競合現象による。このスペクトル拡大は、自己位相変調、相互位相変調、およびパラメトリック効果(4つの波の混合)の各効果の組合せによって説明される。第二のポンピングパワーを付加することにより、(本実施例において)532nmと1064nmとを中心とした波長間の位相調整と、ラマン効果のそれよりも低い出現しきい値を有するパラメトリック効果の位置決めとを開始させることができる。
【0028】
好ましくは、光ガイド手段GLは1または複数の選択された周波数λcと相関した1または複数のカットオフを含む分散パターンを有する。この場合、光ポンピングモジュールMPを構成する素子(単数または複数)は、好ましくは、選択された波長λcの上および下の励起波長を有する光子(または放射線)を発するように選ばれる。2つ以上の励起波長が存在する場合には、それらは好ましくは選択された波長λcのいずれかの側に分布させられる。したがって、多色光のスペクトルは、選択された波長λcのいずれかの側に、それゆえ、励起波長λ1、λ2のいずれかの側にほぼ均等かつ連続的に分布させられる。
【0029】
光ガイド手段GLはさまざまな方法でつくられてよい。これらは例えば、基板上に形成選択された寸法の光ガイド(または導波路)の形をとることができる。例えば、導波路(または光ガイド)は、分散のカットオフに対応する波長を制御するように、例えばドープしたガラスなどの材料でつくられる。導波路(または光ガイド)は好ましくは単一モードであるので、多色光は好ましくは横単一モードである。
【0030】
ここで「横単一モード」によって意味されているのは、特定の場合に放出されるスペクトルの波長にかかわりなく単一の空間モードしかもたないことを特徴とする特別な空間構造のビームである。
【0031】
別法として、図1に示すように、光ガイド手段GLは光ファイバの形態で製造され、その光ファイバの非線形特性がその構造および寸法の関数であってもよい。例えば、ミクロ構造光ファイバとして知られた光ファイバが使用される。この種の光ファイバは、分散プロファイルを制御でき、かつ、シリカの全伝送帯に渡って好ましくは横単一モードの伝搬モードにおいて伝搬を許容する可変的な「光幾何学的」構造を有している。さらに、この種の光ファイバによって、ガイドされる電磁場の閉じ込めを有意義に増大させることができ、こうして、スペクトル拡大の原因である非線形現象の出現しきい値を低下させる。
【0032】
例えば、光ファイバGLは横断面で図5に示すタイプの多孔の光ファイバであってもよい。この種の光ファイバは特に欧州特許第1148360号明細書に詳細に記載されている。このミクロ構造ファイバは、光ファイバGLの長手方向軸に平行な中空チャネルCCからなり、光ファイバGLは、選択されたピッチでファイバのコアCFの周囲に相互に平行に配置されて格子構造(フォトニック結晶と称される)を規定するようにしているとともに、光ファイバGLのシリカコアCFを取り囲むシースGFを構成する材料で形成されている。フォトニック結晶は、格子(例えば正方または三角)を規定する回折エレメント(この場合には中空チャネルCC)から成る棒状光子帯を備えた構造であり、格子の物理的特性によって光の伝搬を制御できることを想起されたい。この種の構造は、以下の文献、Jean−Michel Lourtioz,「les cristaux photoniques」,p.324,Editions Hermes,2003に述べられているように、例えば線引きダイス型での線引きによって得ることができる。図5に示す実施例において、ファイバGLのコアCFの直径は約3μm、格子のピッチは3〜4μmのオーダーである。
【0033】
連続体光子への励起光子の変換効率は主として、光ポンピングモジュールMPによって発されるピークパワーと、光ファイバGLのコアCFと、前記光ファイバGLの「活動」長さとに依存している。したがって、高いパワー(組み合わされた全励起波長)を発する光ポンピングモジュールMPによって相対的に短い光ファイバ(または導波路)を使用できる。
【0034】
例えば、それぞれ1064nmと532nmの2つの励起波長λ1とλ2とが存在する場合には、コア直径3μmで長さ数メートルのミクロ構造のシリカ光ファイバGLを使用することが可能である。
【0035】
ここでは、広域スペクトル多色光の発生に対応するスペクトル拡大は、ミクロ構造の光ファイバGLを通る単一の通路において生じる。しかしながら、いくつかの通路を通すこともできる。スペクトル拡大は光ファイバGL(または導波路)の色分散の徴候とはほぼ無関係であり、したがって、光ガイド手段GLの光幾何学的パラメータの制約を減少させることが可能であることに注目することが重要である。
【0036】
多色光が偏光さるべき場合には、光ガイド手段GLは任意に「偏光選択」型または「偏光維持」型のいずれであってもよい。
【0037】
光ポンピングモジュールMPの出力SMPと光ガイド手段GLの入力EGLとの間の結合は、図1に示す実施例のように直接的に行われるか、または、図6に示す第二の実施形態におけるように間接的に行われるかであってもよい。
【0038】
特に、励起光子(または放射線)が出力SMPでの光ポンピングモジュールMPにより発せられて、その光ポンピングモジュールMPが例えば光ガイド(または導波路)または光ファイバの部分などの光ガイド手段からなる時には、直接結合が想定されてもよい。
【0039】
間接結合の場合には、本発明による装置Dは、例えば、光ポンピングモジュールMPの出力SMPと光ガイド手段GLの入力EGLとの間に介在するレンズの形で形成されてもよい結合手段MCからなる(図6参照)。
【0040】
さらに、上述したような本発明による装置Dは、広いスペクトルすなわち可視および/または紫外および/または赤外にわたって連続した多色光を発するのに適している。しかしながら、フィルタリング手段MFに結合されるもの(またはフィルタリング手段からなるもの)を想定して、選択された波長または連続スペクトルの選択された部分において光子(放射線)を発するために光ガイド手段GLにより発生された連続体の光子をフィルタリング(または選別)することができる。これにより、ぴったりあった光源を合成することができる。
【0041】
あらゆる種類のフィルタリング手段MFが想定されてよい。ただしそれらは、例えば当業者によく知られた(直列に配置された)1つまたは複数のブラッググレーティングの形で、光ガイド手段GLに組込まれているのが有利である。実際には、ブラッググレーティングは光ガイド手段GLの出力SGLに結合された末端部において、または、この出力SGLの末端部において、例えば、図1に図示するように、選択されたピッチと長さによるローカル指数変調によって形成されていてよい。この場合、ブラッググレーティング(単数または複数)の構造を適切に選ぶことにより、1つまたは複数の選択された波長を放出する光源を合成することができる。
【0042】
変形例として、(直列に配置された)1つまたは複数のファブリー・ペロー共振器を使用することも想定されてよい。
【0043】
しかしながら、フィルタリング手段MFは光ガイド手段GLの外部にあって、追加構成要素を構成してもよい。この場合、それらは例えば、図7に示すように、光ガイド手段GLの出力SGLに結合されてもよいし、平行ビームとして図示された回折格子RDを含んでもよく、その回折格子は、例えば光ファイバFOなどのような別の光ガイドFOに単色ビームを発するために光を回折させるべく使用されるとともに、スペクトル選択用の空間フィルタリングを実施するのに使用される。ブラッググレーティングよりも技術的にシンプルなこの装置により、多色光源の放出範囲内の波長に連続的に同調させることのできる光源を製造することが可能とする。このように、波長同調は、回折格子RDを回転させることによって得られる。
【0044】
本発明は、特に、生成された光の横コヒーレンスと多色性とによって多数の分野で使用することができる。
【0045】
第一の分野は物理的大きさの計測である。本発明による装置Dは、例えばフランス特許第2738343号に記載のタイプの光微小層位学(optical microstratigraphy)装置の白色光源を形成することができる。この装置において、白色光は、光ファイバにより、それを試料(または対象)上に集束させる顕微鏡対物レンズまで送られる。この顕微鏡対物レンズは選択された色収差を有し、白色光に含まれるすべての波長をZ軸に集束させるようにしている。検出は、測定軸の色コーディングを使って共焦点モード内で行われる。この分光計を使って、試料によって反射された光のスペクトルを分析しその特性のいくつかを、例えば検出器に対する位置およびそれを構成する層の光学的厚さを推定できる。
【0046】
実施される測定の精度は、白色光源の全時間に及ぶ安定性と、主として光源のエネルギ輝度(または単位表面積および単位立体角当たりの放出パワー)に依存する光度バランスとに依存している。こうした特徴は本発明による光源によってもたらされる。一例として、上記の装置は、以下の特徴を有するビームを発する本発明による装置を組込んでもよい:例えば、直径6μm、パワー3mW、開口数=0.4、平均輝度(400nm〜700nm)=200W.mm−2.sr−1のコア。現在使用されている光源(石英水銀灯またはキセノンアーク)に比較して、本発明による光源は千倍も強力であり、したがって、同じ信号対雑音比で積分時間を1000の因数まで低下させることができる。この種の時間利得は、例えばプラスチックフィルムまたはガラスまたはプラスチックパッケージなどの製品製造における品質管理と関連した用途において特に有用である。
【0047】
第二の領域は光学顕微鏡法と、特に生物材料または非生物材料の断層撮影法とである。例えば、本発明による装置Dは、フランス特許第2738140号に記載の種類の皮膚インビボの断層撮影の装置の白色光源を構成することができる。この装置は多重チャネル分析分光光度計を使用した長手方向の色コーディングを使って共焦点顕微鏡を構成している。この種の装置は、生物媒体中で連続した撮像を可能とするのに十分な明るさを有した白色光源を必要とする。したがって、本発明による光源はこの種の装置に特に好適である。これは光断層撮影が、時間的コヒーレンスの低い広帯域光源を必要とする「光コヒーレンス断層撮影(optical coherence tomography)」用のOCT技術の場合のように、いわゆるコヒーレントな類のものである場合にいっそう当てはまる。このOCT技術は特に高分解能バイオプシーに使用される。このOCT用途において、本発明による光源のスペクトル幅は、異なった波長を中心とした幾つかの光源の同時使用の必要性を無用にする。
【0048】
第三の領域は、特に例えば表面形状測定(profilometry)または生物細胞(例えば血球)の検査などの用途における三次元顕微鏡法である。
【0049】
第四の領域は、位相差顕微鏡による解析と、平行な光で位相物体を照明するために大きな空間的コヒーレンスを持った光源を必要とするストリオスコピー(strioscopy)とを組合せている。いずれの用途においても、光源の像は影像装置の焦点面に形成される。この像は停止される(ストリオスコピー)か、または観察下にある物体によって回折された光に対して位相変位されるか(位相差)である。回折によって生じた物体の像は共役面で観察される。この種の用途には、光点であるとともに非常に明るい光源が必要であるが、これらはいずれも本発明による光源の特徴である。これらの解析は特に、生物学の分野の光学顕微鏡法において、例えば低屈折の細胞の研究に使用され、また計測学の分野において、例えば精密光学機器による微小な表面しわの測定に使用される。特に、構造化された光投影と、レーザ粒状雑音(または「スペックル」効果)を除去可能な白色光で動作するシャック−ハルトマン波面解析器とを使用する測定技術について言及しておく。したがって、本発明は単色レーザに比較して大きな利点を形成する。
【0050】
第五の領域は干渉分光法、要するに、いわゆる低コヒーレンス干渉分光法である。実際には、特にA.Courtville,「Methodes et techniques nouvelles pour l‘industrie」,conference of the SFO at Belfort on 17−21 November 2003による文献で述べられているように、例えば紫外線中でフォトリソグラフィーに使用されるような超高精密光学機器をモニタするために、本発明による光源を使用することが可能である。また、米国特許第2002/085208号に記載されているタイプの光ファイバ干渉計において、または、「Optical biosensors. Monitoring studies of glycopeptide antibiotic fermentation using white light interference」,Analytical Chemistry,vol.73,No.17,September 1,2001の文献に述べられているタイプのバイオセンサおよび/または化学センサの分野において、本発明による光源を使用することが可能である。
【0051】
第六の分野は建造物または記念建築物の監視または観測である。例えば、F.Figuera et al,「Evaluation of White light Fabry−Perot interferometry fiber−optic gages for small strains」,Experimental Techniques,p.31−36,July/August 2003の文献において、白色光源をファブリー・ペロー共振器に結合して特に土木建築構造物の監視を意図した歪ゲージを形成することが提案されている。この種の用途には、歪測定用の高信頼度システムが必要であるが、このシステムは主として異なったセンサ(時として、並列に装着された100個のセンサ)の白色光源の寿命に依存している。現在使用されている白熱灯は、特にレーザ光源が使用される場合に、本発明による光源に比べて遥かに短い寿命しかないために、本発明はこの種の用途に特に好適である。一般に、本発明による光源により、A.Othonos,「Fiber bragg gratings: Fundamentals and applications in telecommunications and sensing」,Artech House Optoelectronics Library,Hardcover,June 1999の文献に述べられているようなブラッググレーティングに結合された光ファイバで多重化されたセンサグレーティングによって求められるスペクトルおよびエネルギに関する多くの要求を満たすことが可能である。
【0052】
第七の分野はライダ(LIDAR)観測である(「Light Detection and Ranging」の意である)。ライダ測定装置は、特に米国特許第5394243号中で、低高度(一般に10m〜100m)での風速の測定用に提案されている。この種の装置は、ファブリー・ペロー干渉計により放出ステージと受光ステージとでフィルタリングされる広域スペクトル光源を有している。大気によって拡散された光の分光分析によって、特に光線が円錐湾曲運動を被った場合には、ドップラー効果を求めて、そこから速度ベクトルを導出することが可能である。したがって、本発明による光源は、遠距離からの集束を可能にするとともに広範囲の波長にわたって高いパワーを提供しかつ現在使用されている多重モードレーザダイオードによって生成される分配雑音よりも実質的に少ないことから、この種の用途に特に好適である。さらに一般に本発明は固体、液体、および気体の分光分析に特に好適である。特に本発明により、気体種の検出滴定のための大気ライダ型用途を想定することができ、また、特に「Two−mirror multipass absorption cell」,Applied Optics,vol.20,No.6,15 March 1981の文献に記載の多重パス測定セル型の用途を想定することができる。
【0053】
第八の分野は、非常に小さな一点への励起光の集束を要する微視的対象の分光分析である。本発明による光源は紫外、可視、および赤外域で放出可能であるとともに集束を容易にするから、細胞の固有発色団のような微視的対象の分光分析に特に好適である。したがって、細胞レベルまたは亜細胞レベルでの赤血球の光学的特性を研究することができる。さらに、本発明による光源によって提供される高いパワーにより、フラックス顕微分光法の分野で、特にKerker,「The scattering of light and other electromagnetic radiation」,p.396,1969の文献に述べられた回折ダイヤグラムで得られた呈色現象の研究に使用することも可能である。
【0054】
第九の分野は、光ファイバを使って像の伝送、可能なホログラフィー像の伝送である。このデータ伝送は、光伝送ファイバ固有のロスを補償するように、波長の広範囲にわたって高いパワーで光の実質的に一定のスペクトル分布を必要とするスペクトル変調技術を使用して行われる。したがって、本発明による光源は、その特徴から、この用途に特に好適である。
【0055】
特に白色光ホログラフィーと、いわゆるリップマン写真との分野において、または(例えば「Atom cooling by white light」,Applied Physics B54,p.428−433,1992の文献に述べられているような原子組織の1つまたは複数の光吸収線をカバーするために)原子または分子の取り扱い分野において、その他の多くの用途を想定することもできる。
【0056】
本発明は、もっぱら一例として示した上記の白色光生成装置の実施形態に制限されるものではなく、添付の請求項の範囲内で当業者によって想定され得る一切の変形を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明による多色光生成装置の第一の実施形態を図示したものである。
【図2】ポンピングモジュールの代替の実施形態を図示したものである。
【図3】一例として、一方で本発明による装置によって供された多色光、他方で単一周波数光源によるポンピングによって供された光の、それぞれの強度I(任意の単位による)を波長λ(ナノメーター(またはnm))の関数として示した線図である。
【図4】一例として、一方でファイバの分散の変化Dcx(ps/nm/km)をマイクロメーター単位の波長の関数として表し(左のy軸に関係する増加曲線、約0.8μmに等しい波長で生じるゼロ分散)、他方でファイバの基本モードの実効指数neffをナノメーター単位の波長の関数として表した図である(右のy軸に関係する減少曲線)。
【図5】ミクロ構造の光ファイバの断面を高度に摸式化して示した図である。
【図6】本発明による多色光生成装置の第二の実施形態を図示したものである。
【図7】本発明による多色光生成装置の第三の実施形態を図示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多色光を生成するための装置(D)であって、少なくとも2つの異なった励起波長(λ1、λ2)の放射線を発することのできる光ポンピング手段(MP)と、非線形相互作用レジュメで前記放射線によって励起された時に出力(SGL)において多色光を発するように構成された光ガイド手段(GL)とを備えている装置。
【請求項2】
請求項1記載の装置において、ドープガラスの前記光ガイド手段(GL)は、選択された少なくとも1つの波長(λc)と関連した少なくとも1つのカットオフを含む分散プロファイルを有し、前記光ポンピング手段(MP)は、選択された前記波長(λc)の下および上の励起波長(λ1、λ2)で前記放射線を発するように構成されている装置。
【請求項3】
請求項1または2に項記載の装置において、ドープガラスの前記光ガイド手段(GL)は単一モード型であり、出力において横単一モードの多色光を発する装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、前記光ポンピング手段(MP)はパルス時間同期モードで前記放射線を発するように構成されている装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置において、前記光ポンピング手段(MP)は連続的または準連続的に前記放射線を発するように構成されている装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置において、前記光ポンピング手段(MP)は前記異なった励起波長(λ1、λ2)で前記放射線を発することのできるレーザ光源(SL)を備えている装置。
【請求項7】
請求項6記載の装置において、前記レーザ光源は、第一の励起波長(λ1)を発することのできるレーザ(SL)を備え、前記光ポンピング手段(MP)は、前記レーザ(SL)によって放射線を供給されるとともに、少なくとも1つの第二の励起波長(λ2)で前記放射線を発することのできる周波数変換手段(DF)を備えている装置。
【請求項8】
請求項7記載の装置において、前記周波数変換手段(DF)は、前記第一の励起波長(λ1)より2倍小さい第二の励起波長(λ2)で前記放射線を発することのできる少なくとも1つの周波数2倍器の形態で構成されている装置。
【請求項9】
請求項7記載の装置において、前記周波数変換手段(DF)は、前記第一の励起波長(λ1)より2倍小さい第二の励起波長(λ2)と、前記第一の励起波長(λ1)より3倍小さい第三の励起波長(λ3)とで前記放射線を発することのできる少なくとも1つの周波数3倍器の形態で構成されている装置。
【請求項10】
請求項6記載の装置において、前記レーザ光源(SL)は、前記異なった励起波長(λ1、λ2)で前記放射線を発することのできるパラメータ発振器を備えている装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置おいて、前記光ガイド手段(GL)は光ガイドを備えている装置。
【請求項12】
請求項11記載の装置において、前記光ガイドが集積回路に実装されている装置。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置おいて、
前記光ガイド手段(GL)は、選択された寸法の光ファイバを備えている装置。
【請求項14】
請求項13記載の装置において、前記光ファイバ(GL)はミクロ構造である装置。
【請求項15】
請求項14記載の装置において、前記光ファイバ(GL)は、少なくとも1つの多孔ファイバと1つのフォトニックファイバとを含む群から選択されている装置。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の装置おいて、前記光ガイド手段(GL)は偏光選択型として知られたタイプのものである装置。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置おいて、前記光ガイド手段(GL)は偏光維持型として知られたタイプのものである装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置おいて、前記光ガイド手段(GL)の下流で放射線の前記波長のうちのいくつかをフィルタリングするのに適したフィルタリング手段(MF)を備えている装置。
【請求項19】
請求項18記載の装置において、前記フィルタリング手段(MF)は少なくとも1つのブラッググレーティングを備えている装置。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか1項に記載の装置おいて、前記光ポンピング手段(MP)を前記光ガイド手段(GL)の入力(EGL)に結合するように配置された結合手段(MC)を備えている装置。
【請求項21】
少なくとも、物理的大きさの計測法、光学顕微鏡法、および特に断層撮影および三次元顕微鏡法、分光分析法、試料の医学的分析法、および特にフローサイトメトリー、医学的ホログラフィー、撮像とくにホログラフィー像の伝送、微小粒子および極微小粒子の取り扱い、および干渉分光法を含む群から選択された領域において請求項1〜20のいずれか1項に記載の装置(D)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−535691(P2007−535691A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502369(P2007−502369)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000550
【国際公開番号】WO2005/098527
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(506065013)ホリバ・エービーエックス・エスエーエス (5)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【出願人】(506309102)ユニヴェルシテ・デュ・リモージュ (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LIMOGES
【出願人】(506310061)セントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・サイエンティフィーク・セエヌアールエス (2)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE CNRS
【Fターム(参考)】