説明

連続培養装置および化学品の製造方法

【課題】長時間にわたり安定して高生産性を維持する培養法による化学品を製造するためのコンパクトな連続培養装置を提供する。
【解決手段】本発明は、微生物もしくは培養細胞を培養するための培養反応槽と、該培養反応槽から連続的に供給される培養液を濾過する分離膜が配置される膜分離槽と、前記培養液を前記培養反応槽から前記膜分離槽へ供給するとともに濾過されなかった未濾過培養液を前記膜分離槽よりも上流側の前記培養液へ還流する培養液循環手段とを具備し、前記膜分離槽および前記培養反応槽は、前記膜分離槽における培養液に対する前記培養反応槽における培養液の培養液容積比が5以上100以下となる容積を有するものであることを特徴とする連続培養装置で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物または培養細胞の培養に用いられる培養装置に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、培養を行いながら、培養によって生産された物質を含む液を微生物または培養細胞の培養液から分離膜を通して効率よく濾過・回収する、高い生産性で化学品等を製造することが可能な連続培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物や培養細胞の培養を伴う物質生産方法では、大きく(1)回分培養法(Batch培養法)および流加培養法(Fed−Batch培養法)と、(2)連続培養法に分類することができる。
【0003】
上記(1)の回分培養法と流加培養法は、設備的には簡素であり短時間で培養が終了し、雑菌汚染による被害が少ないという利点があり、従来より、微生物や培養細胞を用いた物質生産方法として用いられてきた。しかしながら、これらの方法は時間の経過とともに培養液中の生産物濃度が高くなり、浸透圧あるいは生産物阻害等の影響により生産性および収率が低下してくる。そのためこれらの培養法は、長時間にわたり安定して高収率かつ高生産性を維持することが困難である。
【0004】
一方、上記(2)の連続培養法は、培養反応槽内で生産物が高濃度に蓄積することを回避することによって、長時間にわたって高収率かつ高生産性を維持できるという特徴がある。
【0005】
例えば、L−グルタミン酸(特許文献1参照)やL−リジン(非特許文献1参照)の発酵について連続培養法が開示されている。しかしながら、これらの例では、培養液へ栄養素等原料の連続的な供給を行うものの、微生物や培養細胞を含んだ培養液を抜き出すために培養液中の微生物や培養細胞が希釈されることから、生産効率の向上は限定されたものであった。
【0006】
このことから、連続培養法において、微生物や培養細胞を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収すると同時に濾過された微生物や培養細胞を培養液に保持または還流させることにより、培養液中の微生物や細胞濃度を高く維持する方法が提案されている。
【0007】
例えば、分離膜を用いた連続培養装置により、連続培養する技術が提案されている(特許文献2参照)。本提案では、微生物や培養細胞を培養するための槽と培養液から目的生産物と微生物や培養細胞の膜分離を行うための槽を有した連続培養装置をもちいることで様々な化学品を回分培養法と流加培養法と比較して高い生産速度で生産している。しかしながらこの例では、培養する槽に対し膜分離を行う槽の容積が大きいことから、培養槽と膜分離槽間の培養液循環に必要な動力費が高い上に、連続培養装置全体としての化学品の生産速度が低い。また、培養槽で化学品の生産に適した培養条件に調節するが、膜分離槽の容積が大きいと膜分離槽内での培養液の滞留時間が長くなり、膜分離槽では培養条件の調節ができないことから化学品に適した培養条件から逸脱して更に生産性の低下が懸念される。このように、従来の連続培養装置では運転動力の浪費、低生産速度、ならびに装置運転管理の煩雑さ等の不具合を内包しており、依然として連続培養技術の向上が望まれていた。
【特許文献1】特開平10−150996号公報
【特許文献2】国際公開第07/097260号パンフレット
【非特許文献1】Toshihiko Hirao et. al.(ヒラオ・トシヒコ ら)、 Appl. Microbiol. Biotechnol.(アプライド マイクロバイアル アンド マイクロバイオロジー),32,269−273(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の目的は、運転動力の浪費、低生産速度、ならびに装置運転管理の煩雑さ等の不具合を解決できるコンパクトな連続培養装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、分離膜を利用した連続培養装置において、装置規模の縮小を目的として鋭意研究した結果、以下の(1)〜(3)のいずれかの構成により、装置のコンパクト化が実現するすると同時に化学品の生産効率が向上ことを見いだし、本発明を完成した。
(1)微生物もしくは培養細胞を培養するための培養反応槽と、該培養反応槽から連続的に供給される培養液を濾過する分離膜が配置される膜分離槽と、前記培養液を前記培養反応槽から前記膜分離槽へ供給するとともに濾過されなかった未濾過培養液を前記膜分離槽よりも上流側の前記培養液へ還流する培養液循環手段とを具備し、前記膜分離槽および前記培養反応槽は、前記膜分離槽における培養液に対する前記培養反応槽における培養液の培養液容積比が5以上100以下となる容積を有するものであることを特徴とする連続培養装置。
(2)前記膜分離槽および前記培養反応槽は、前記培養液容積比が15以上100以下となる容積を有するものである、前記(1)記載の連続培養装置。
(3)培養反応槽において微生物もしくは培養細胞を培養し、連続的に培養液を前記培養反応槽から膜分離槽へ供給して分離膜で濾過し生産物を回収するとともに、濾過されなかった未濾過培養液を前記膜分離槽よりも上流側の前記培養液へ還流するにあたり、前記膜分離槽における培養液に対する前記培養反応槽における培養液の培養液容積比を5以上100以下とすることを特徴とする化学品の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の連続培養装置によれば、連続培養装置規模のコンパクト化が実現されるとともに、簡便な操作条件で、長時間にわたり安定して所望の生産物の高生産性を維持する連続培養が実現し、生産物である各種化学品を低コストで安定に生産することが可能となる
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の連続培養装置は、連続培養によって化学品等を製造するための装置であって、基本構造として、微生物もしくは培養細胞の培養液を分離膜で濾過し、濾液から生産物を回収するとともに未濾過液を前記の培養液に保持または還流する手段を有する。具体的には、微生物もしくは培養細胞を培養させるための培養反応槽と、該培養反応槽から連続的に供給される培養液を濾過する分離膜が配置される膜分離槽と、前記培養液を前記培養反応槽から前記膜分離槽へ供給するとともに濾過されなかった未濾過培養液を前記膜分離槽よりも上流側の前記培養液へ還流する培養液循環手段を具備する。そして、本発明において、膜分離槽および培養反応槽は、膜分離槽における培養液に対する培養反応槽における培養液の培養液容積比が5以上100以下となる容積を有する。該培養液容積比を5以上100以下とすることで装置のコンパクト化が実現するとともに、培養液の培養反応槽滞留時間を長くなり適切な培養条件への調節が実現し、動力費の低減、化学品の生産速度の向上、ならびに容易な装置運転管理が可能となる。
【0012】
以下、本発明の連続培養装置の基本構成と特徴について具体的に図示して説明する。図1に、本発明の一実施形態を示す連続培養装置の概略側面図を示す。図1に示す連続培養装置は、微生物もしくは培養細胞の連続培養を行う培養反応槽1と、該培養反応槽1に培養液循環手段(配管および培養液循環ポンプ5)を介して接続され内部に培養液を濾過するための分離膜3を備えた膜分離槽12で構成される。
【0013】
培養反応槽1は微生物もしくは培養細胞を連続的に培養できる機能を有し、培養液循環手段を接続できればよく、従来、化学品の生産に用いられてきたジャーファーメンターを用いることができる。膜分離槽12は、内部に分離膜3を設置することができ、培養反応槽1同様、培養液循環手段を接続できれば、その形状等は問わない。また、本発明で用いる分離膜の素材としては、無機、有機の素材を問わず用いることが可能であるが、好ましい分離膜について後に詳述する。
【0014】
そして、本発明において、かかる培養反応槽1と膜分離槽12とは、膜分離槽における培養液に対する培養反応槽における培養液の培養液容積比が5以上100以下となる容積を有する。なお、本発明においてかかる培養液容積比とは、培養運転時に膜分離槽ならびに培養反応槽に満たされるそれぞれの培養液量の比として定義し、各々の槽中の培養液で満たされないヘッドスペース等の容積は考慮に入れない。
【0015】
また、図1に示す装置において、培養反応槽1は、培地供給ポンプ8に接続されるとともに、攪拌機2を備えており、培地供給ポンプ8によって培地を培養反応槽1に投入し、必要に応じて、攪拌機2で培養反応槽1内の培養液を攪拌することができるように構成されている。さらに、気体供給装置11も接続されており、必要に応じて、当該気体供給装置11によって必要とする気体が供給される。このとき、供給した気体を回収・リサイクルして再び気体供給装置11によって供給することができるように、例えば、培養反応槽1のヘッドスペースと気体供給装置11の間に配管を接続し、ヘッドスペース、配管、気体供給装置11の順で供給気体を流すことで回収・リサイクルすることも好ましい。
【0016】
また、培養反応槽1には、必要に応じて、培養液のpHを調整することができるように、pHセンサ・制御装置10およびpH調整溶液供給ポンプ9が設けられている。さらに、必要に応じて、培養液の温度を調節して生産性の高い化学品の生産を行うことができるように、温度調節器7も設けられている。ここでは、計装・制御装置による培養液の物理化学的条件の調節に、pHおよび温度の調節を例示したが、必要に応じて、溶存酸素やORPの制御を行うことができ、更にはオンラインケミカルセンサーなどの分析装置により培養液中の微生物の濃度を測定し、それを指標とした物理化学的条件の制御を行うことができる。また、培地の連続的もしくは断続的投入の形態に関しては、特に限定されるものではないが、上記の計装・制御装置による培養液の物理化学的環境の測定値を指標として、培地投入量および速度を適宜調節することができる。
【0017】
そして、図1に示す装置においては、分離膜3における濾過速度および培養反応槽内の培養液量を調節するために、レベルセンサ6が培養反応槽1に設けられているとともに、水頭差圧制御装置4も設けられている。
【0018】
以上のような構成の連続培養装置において、培養は例えば次のように行われる。すなわち、培養反応槽1において微生物もしくは培養細胞を培養し、連続的に培養液を培養反応槽1から膜分離槽12へ供給して分離膜3で濾過し乳酸等の生産物を回収するとともに、濾過されなかった未濾過培養液を膜分離槽12よりも上流側の培養液へ還流するにあたり、膜分離槽12における培養液に対する培養反応槽における培養液の培養液容積比を5以上100以下とする。
【0019】
より具体的に説明すると、まず、微生物と培養原料(培地)を培養反応槽1に貯留し、適宜中和剤を添加することによってかかる培養反応槽1の内部をpH4〜8の範囲内に維持するとともに温度20〜50℃の範囲に維持する。これによって、微生物の培養が行われ、その際にアルコール、有機酸、アミノ酸および核酸など、所望する物質(化学品等の生産物)が生産される。
【0020】
この間、連続的に培養が行われ所望する生産物が得られるように、培養に使用される栄養素を含む培地を、培地供給ポンプ8を介して培養反応槽1に連続的または間欠的に供給する。また、培養反応槽1内の培養液を、培養液循環ポンプ5によって、連続的に培養反応槽1と膜分離槽12との間を循環させ、膜分離槽12において、生産物を含む培養液を、分離膜によって微生物と生産物を含む濾液とに濾過・分離する。その結果、生産物を含む濾液は装置系から取り出され、一方濾過・分離された微生物および培養細胞は、培養反応槽1内に留まることから、微生物濃度を高く維持することができ、化学品の生産性が高い培養を可能としている。
【0021】
培養液中の微生物または培養細胞の濃度は、微生物または培養細胞の増殖が不適切となって死滅する比率が高くならない範囲で、高い状態で維持することが効率よい生産性を得るのに好ましい。一例として、濃度を乾燥重量として5g/L以上に維持することにより良好な生産効率が得られる。
【0022】
培養液をかかる適切な濃度に維持するためには、必要に応じて培養反応槽内から微生物または培養細胞を引き抜くことも好ましい。そして、培養反応槽内の微生物または培養細胞濃度が高くなりすぎると、分離膜の閉塞が発生しやすくなる場合もあるが、引き抜いて適当な濃度に維持することにより、分離膜の閉塞を回避することもできる。また、培養反応槽内の微生物または培養細胞濃度によって化学品の生産性能が変化することがあるが、生産性能を指標として微生物または培養細胞を引き抜くことで生産性能を維持させることも可能である。
【0023】
また、本発明では、培養初期にBatch培養またはFed−Batch培養を行って微生物または培養細胞の濃度を高くした後に連続培養を開始しても良いし、高濃度の菌体をシードし、培養開始とともに連続培養を行っても良い。
【0024】
そして、培養原料の供給および培養液の引き抜きは、適当な時期から行えばよい。すなわち、培養原料の供給と培養液の引き抜きの開始時期は必ずしも同じである必要はない。また、培養原料の供給と培養液の引き抜きは連続的であってもよいし、間欠的であってもよい。分離膜による培養液の濾過・分離は、膜分離槽12の培養液液面と濾液との水頭差圧によって行うことができ、特別な動力は必要ないが、必要に応じて、ポンプによる吸引濾過あるいは気体・液体等で装置系内を加圧することにより濾過・分離することもできる。すなわち、膜間差圧を制御するための手段として、培養液と濾液の液位差を制御する水頭差圧制御装置4や、加圧ポンプまたは/および吸引ポンプを用いることができ、また、気体または液体の圧力によって膜間差圧を制御することができる。これらの手段を適宜併用することにより、長期間安定して培養することが可能となる。
【0025】
また、必要に応じて、レベルセンサ6および水頭差圧制御装置4によって、分離膜3の濾過速度および培養反応槽内の培養液量を適当に調節することも好ましい。培養反応槽内の培養液量の調節には、培養反応槽内の培養液液位ではなく培養液重量を測定し調節することも可能である。
【0026】
ここで、微生物もしくは培養細胞の培養液を分離膜で濾過する際の膜間差圧、濾過速度について説明する。膜間差圧と濾過速度は相関関係があり、濾過速度を高くすると膜間差圧も上昇する。すなわち連続培養運転中の膜間差圧を制御することで濾過速度も制御することが可能であるとともに、膜間差圧が重要な運転パラメータである。連続培養運転に於いては、高い膜間差圧、濾過速度条件で運転すれば、目的とする化学品の生産速度向上が可能となる一方で、分離膜の細孔への微生物もしくは培養細胞および培地成分の目詰まりが発生しやすくなり、連続培養運転に不具合が生じる。従って、膜間差圧は、濾過速度が微生物もしくは培養細胞および培地成分が容易に目詰まりしない条件であることが好ましい。具体的には、膜間差圧を0.1kPa以上20kPa以下の範囲にして濾過処理することが好ましく、さらに好ましくは0.1kPa以上10kPa以下の範囲である。上記膜間差圧の範囲を外れた場合、微生物もしくは培養細胞および培地成分の目詰まりが急速に発生し、透過液量の低下を招き、連続培養運転に不具合を生じることがある。
【0027】
なお、本発明において、培養液とは、培養原料に微生物または培養細胞が増殖した結果得られる液のことを言い、培養原料とは、培養する微生物または培養細胞の生育を促し、目的とする生産物である化学品等を良好に生産させ得るものをいう。培養原料の組成は、目的とする化学品の生産性が高くなるように、培養開始時の培養原料組成から適宜変更しても良い。
【0028】
本発明で使用される微生物や培養細胞としては、例えば、工業的によく使用されるパン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌、動物細胞および昆虫細胞などが挙げられる。使用する微生物や細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。これらの微生物や培養細胞のうち、目的とする化学品の生産能力が高いものを選択して用いることが好ましい。なお、本発明においては微生物の培養を「発酵」または「発酵培養」と称することがある。
【0029】
培養原料としては、前述の目的を達成し得るものであればよいが、炭素源、窒素源、無機塩類、および必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する通常の液体培地が好ましく用いられる。
【0030】
炭素源としては、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトースおよびラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、更には酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、およびグリセリンなども使用される。
【0031】
窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種培養菌体およびその加水分解物などが使用される。
【0032】
無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩およびマンガン塩等を適宜添加することができる。微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加することができる。また、消泡剤も必要に応じて使用することができる。
【0033】
また、培養液は、糖類濃度が5g/l以下に保持されることが好ましい。その理由は、培養液の引き抜きによる糖類の流失を最小限にするためである。微生物または培養細胞の培養は、通常pH4〜8、温度20〜50℃の範囲で行われることが多い。培養液のpHは、無機の酸あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウムおよびアンモニアガスなどによって、上記範囲内のあらかじめ定められた値に調節することができる。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
【0034】
そして、連続培養操作は、通常、培養管理上単一の培養反応槽で行うことが好ましい。しかしながら、微生物、培養細胞を培養して生産物を生成する連続培養法であれば、培養反応槽の数は問わない。培養反応槽の容量が小さい等の理由から、複数の培養反応槽を用いることも好ましい。この場合、複数の培養反応槽を配管で並列または直列に接続して連続培養を行っても生産物の高生産性は得られる。
【0035】
また本発明では、予め別の培養槽で微生物もしくは培養細胞を培養し、培養されたフレッシュな微生物もしくは培養細胞を含む培養液を培養反応槽に供給し、連続培養することも好ましい。すなわち、別途用意された培養能力が高い状態の微生物もしくは培養細胞を含む培養液を培養反応槽に供給することにより、常に高い化学品の生産性能を維持させることができる。
【0036】
次に、本発明で用いることができる分離膜について説明する。
【0037】
分離膜としては、被処理液の性状や用途に応じた分離性能と透過性能を有する多孔性膜であることが好ましい。多孔性膜としては、セラミクスなどの無機材料、樹脂などの有機材料を素材とした多孔性膜を用いることが可能であるが、好ましくは多孔質樹脂層を含む多孔性の分離膜であることが好ましい。このような多孔性膜は、多孔質基材の表面に、分離機能層として作用とする多孔質樹脂層を有している。多孔質基材は、多孔質樹脂層を支持して分離膜に強度を与えるものである。
【0038】
多孔質基材の材質は、有機材料および/または無機材料等からなり、中でも有機繊維が望ましく用いられる。好ましい多孔質基材は、セルロース繊維、セルローストリアセテート繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維およびポリエチレン繊維などの有機繊維を用いてなる織布や不織布等である。中でも、密度の制御が比較的容易であり製造も容易で安価な不織布が好ましく用いられる。
【0039】
多孔質樹脂層は、上述したように分離機能層として作用するものであり、有機高分子膜を好適に使用することができる。有機高分子膜の材質としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース系樹脂およびセルローストリアセテート系樹脂等が挙げられる。有機高分子膜は、これらの樹脂を主成分とする樹脂の混合物からなるものであってもよい。ここで主成分とは、その成分が50重量%以上、好ましくは60重量%以上含有することをいう。中でも、多孔質樹脂層を構成する膜素材としては、溶液による製膜が容易で物理的耐久性や耐薬品性にも優れているポリ塩化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはポリオレフィン系樹脂がより好ましく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂またはそれを主成分とする樹脂が最も好ましく用いられる。
【0040】
ここで、ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体が好ましいが、フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体との共重合体も好ましく用いられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なビニル系単量体としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび三塩化フッ化エチレンなどが例示される。また、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンまたは塩素化ポリプロピレンが挙げられるが、塩素化ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0041】
本発明で用いられる多孔性膜の作成法の概要を説明する。まず、前記の多孔質基材の表面に、前記の樹脂と溶媒を含む製膜原液の被膜を形成するとともに、その製膜原液を多孔質基材に含浸させる。その後、被膜を有する多孔質基材の被膜側表面のみを、非溶媒を含む凝固浴と接触させて樹脂を凝固させると共に多孔質基材の表面に多孔質樹脂層を形成する。製膜原液の温度は、製膜性の観点から、通常、15〜120℃の温度の範囲内で選定することが好ましい。
【0042】
ここで、製膜原液には、開孔剤を添加することもできる。開孔剤は、凝固浴に浸漬された際に抽出されて、樹脂層を多孔質にする作用を持つものである。開孔剤を添加することにより、多孔性樹脂層の細孔の平均細孔径の大きさの制御することができる。開孔剤は、凝固浴に浸漬された際に抽出されて、樹脂層を多孔質にする作用を持つものである。開孔剤は、凝固浴への溶解性の高いものであることが好ましい。開孔剤としては、例えば、塩化カルシウムや炭酸カルシウムなどの無機塩を用いることができる。また、開孔剤として、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリオキシアルキレン類や、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールおよびポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物や、グリセリンを用いることができる。
【0043】
また、溶媒は、樹脂を溶解するものである。溶媒は、樹脂および開孔剤に作用してそれらが多孔質樹脂層を形成するのを促す。このような溶媒としては、N−メチルピロリジノン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトンおよびメチルエチルケトンなどを用いることができる。中でも、樹脂の溶解性の高いNMP、DMAc、DMFおよびDMSOが好ましく用いられる。
【0044】
さらに、製膜原液には、非溶媒を添加することもできる。非溶媒は、樹脂を溶解しない液体である。非溶媒は、樹脂の凝固の速度を制御して細孔の大きさを制御するように作用する。非溶媒としては、水やメタノールおよびエタノールなどのアルコール類を用いることができる。中でも、価格の点から水やメタノールが好ましい。非溶媒は、これらの混合物であってもよい。
【0045】
本発明で用いられる多孔性膜は、平膜であっても中空糸膜であっても良い。平膜の場合、多孔質樹脂層の平均厚みは用途に応じて選択されるが、好ましくは20μm以上5000μm以下であり、より好ましくは50μm以上2000μm以下の範囲で選択される。
【0046】
上述のように、本発明で用いられる多孔性膜は、多孔質基材と多孔質樹脂層とから形成されている多孔性膜であることが望ましい。その際、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していても、多孔質基材に多孔質樹脂層が浸透していなくてもどちらでも良く、用途に応じて選択される。多孔質基材の平均厚みは、好ましくは50μm以上3000μm以下の範囲で選択される。
【0047】
また、多孔性膜が中空糸膜の場合、中空糸の内径は好ましくは200μm以上5000μm以下の範囲で選択され、そのうち多孔質樹脂層の膜厚は好ましくは20μm以上2000μm以下の範囲で選択される。また、有機繊維または無機繊維を筒状にした織物や編物を中空糸の内部に含んでいても良い。
【0048】
分離膜は平均細孔径が0.01μm以上2μm以下の範囲内にあると、微生物触媒がリークしにくい高い排除率と、高い透過性を両立させることができ、さらに目詰まりをしにくく、透過性を長時間保持することが、より高い精度と再現性を持って実施することができる。微生物として細菌類を用いた場合、分離膜の平均細孔径は、好ましくは0.4μm以下であり、0.2μm未満であればなお好適に実施することが可能である。平均細孔径は、小さすぎると透過液量が低下することがあるので、本発明では、0.01μm以上であり、好ましくは0.02μm以上であり、さらに好ましくは0.04μm以上である。
【0049】
ここで、平均細孔径は、倍率10,000倍の走査型電子顕微鏡観察における、9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔すべての直径を測定し、平均することにより求めることができる。
【0050】
本発明で用いることができる分離膜は、細孔径の標準偏差σが小さいほど、すなわち細孔径の大きさの分布が狭い方が良い。細孔径の大きさの分布を狭くし、標準偏差を0.1μm以下とすることが好ましい。細孔径の標準偏差が小さい、すなわち細孔径の大きさが揃っている方が、均一な特性の透過液を得ることができるとともに、装置の運転管理が容易になる。
【0051】
細孔径の標準偏差σは、上述の9.2μm×10.4μmの範囲内で観察できる細孔数をNとして、測定した各々の直径をXkとし、細孔直径の平均をX(ave)とした下記の(式1)により算出される。
【0052】
【数1】

【0053】
本発明で用いられる分離膜においては、化学品を含む反応液の透過性が重要点の一つであり、透過性の指標として、使用前の分離膜の純水透過係数を用いることができる。本発明において、分離膜の純水透過係数は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで透水量を測定し算出したとき、1×10−10/m/s/pa以上であることが好ましい。純水透過係数が2×10−9/m/s/pa以上6×10−7/m/s/pa以下であれば、実用的に十分な透過液量が得られる。より好ましい純水透過係数は、2×10−9/m/s/pa以上2×10−7/m/s/pa以下である。
【0054】
本発明で用いられる分離膜の膜表面粗さは、分離膜の目詰まりに影響を与える因子である。分離膜の膜表面粗さが好ましくは0.1μm以下のときに、分離膜の剥離係数や膜抵抗を好適に低下させることができ、より低い膜間差圧で化学品等の製造が実施可能である。従って、目詰まりを抑えることにより、安定した化学品等の製造が可能になることから、表面粗さは小さければ小さいほど好ましい。
【0055】
また、分離膜の膜表面粗さを低くすることにより、微生物触媒の濾過において、膜表面で発生する剪断力を低下させることが期待でき、微生物の破壊が抑制され、分離膜の目詰まりも抑制されることにより、長期間安定な濾過が可能になると考えられる。
【0056】
ここで、膜表面粗さは、下記の原子間力顕微鏡装置(AFM)を使用して、下記の装置と条件で測定することができる。
・装置:原子間力顕微鏡装置(Digital Instruments(株)製Nanoscope IIIa)
・条件:探針 SiNカンチレバー(Digital Instruments(株)製)
:走査モード コンタクトモード(気中測定)
水中タッピングモード(水中測定)
:走査範囲 10μm、25μm 四方(気中測定)
5μm、10μm 四方(水中測定)
:走査解像度 512×512
・試料調製:測定に際し膜サンプルは、常温でエタノールに15分浸漬後、RO水中に24時間浸漬し洗浄した後、風乾し用いた。RO水とは、ろ過膜の一種である逆浸透膜(RO膜)を用いてろ過し、イオンや塩類などの不純物を排除した水を指す。RO膜の孔の大きさは、概ね2nm以下である。
【0057】
膜表面粗さdroughは、上記AFMにより各ポイントのZ軸方向の高さから、下記の(式2)により算出する。
【0058】
【数2】

【0059】
上述のような分離膜は、膜分離槽の形状に合わせて形状を適宜加工して用いることができる。例えば、平膜形態の分離膜を別に用意された支持体と組み合わせることによって分離膜エレメントとすることができる。支持板の少なくとも片面に(膜面積を大きくすることが困難であったり透過性を高めるためには支持板の両面に)、分離膜を配したこの分離膜エレメントは、本発明における分離膜の好適な使用形態の一つであり、このような分離膜エレメントが膜分離槽に設置される。以下、図面を用いてその概略を説明する。
【0060】
図2は、本発明で用いられる分離膜エレメントの一つの実施の形態を説明するための概略斜視図である。分離膜エレメントは、図2に示すように、剛性を有する支持板13の両面に、流路材14と分離膜15とをこの順序で配し構成されている。支持板13は、両面に凹部16を有している。分離膜15は培養液を濾過する。流路材14は、分離膜15で濾過された透過液を効率よく支持板13に流すためのものである。支持板13に流れた生産物を含む透過液は、支持板13の凹部16を通り、排出手段である集液パイプ17を経て連続培養装置外部に取り出される。ここで、水頭差圧をはじめとして、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を、透過液を取り出すための動力として用いることができる。
また、分離膜が中空糸膜の場合、図3に示すような、別の形態の分離膜エレメントに加工される。図3は、分離膜エレメントの概略斜視図であって、主に支持板13と、中空糸形態の分離膜15と、上部樹脂封止層18および下部樹脂封止層19とによって構成される。分離膜15は、上部樹脂封止層18および下部樹脂封止層19よって束状にかつ支持板13に接着・固定化されている。下部樹脂封止層19による接着・固定化は、中空糸形態の分離膜15の中空部を封止しており、培養液の漏出を防ぐ構造になっている。一方、上部樹脂封止層18は、中空糸形態分離膜15の中空部を封止しておらず、中空部と集液パイプ17とが連通している。この分離膜エレメントは、支持板13を介して連続培養装置内に設置することが可能である。分離膜15によって濾過された透過液は、中空糸膜の中空部を通り、集液パイプ17を介して連続培養装置外部に取り出される。透過液を取り出すための動力としては、水頭差圧、ポンプ、液体や気体等による吸引濾過、あるいは装置系内を加圧するなどの方法を用いることができる。
【0061】
分離膜を備えた膜分離槽12は、高圧蒸気滅菌可能なことが望ましく、このようにすることにより雑菌からの汚染回避を可能となる。本発明の高圧蒸気滅菌とは、蒸気によって膜分離槽を加熱・加圧することによって槽内に存在する微生物もしくは培養細胞を滅菌させることである。加熱・加圧条件としては例えば121.1℃、蒸気圧1気圧の条件で20分以上加圧・加温することが好ましい。従って、本発明の連続培養装置の膜分離槽12、および該膜分離槽12に配設される分離膜、エレメント構成部材には、かかる条件での高圧蒸気滅菌操作に耐性のある部材を用いることが好ましい。これにより分離膜エレメントを含む培養反応槽内を滅菌可能とすることができる。培養反応槽内が滅菌可能であれば、連続培養時に好ましくない微生物による汚染の危険を回避でき、安定した連続培養が可能となる。
【0062】
分離膜エレメントを構成する分離膜ならびに支持板等の部材は、高圧蒸気滅菌操作の条件である例えば121.1℃、蒸気圧1気圧の条件で20分以上という条件に耐性であれば、分離膜ならびにエレメント構成部材の種類は特に限定されない。かかる耐性を有する分離膜の素材としては上述の多孔性膜の素材を用いることが可能である。また、支持板等のエレメント構成部材としては、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属、あるいはポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、PVDF、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリサルホン系樹脂等を好ましく選定することができる。
【0063】
本発明の連続培養装置で製造される化学品は、上記の微生物や培養細胞が培養液中に生産する物質であれば特に制限はないが、例えば、アルコール、有機酸、アミノ酸および核酸など工業的に大量生産されている物質を挙げることができる。アルコールとしては、例えば、エタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオールおよびグリセロールなどが挙げられる。また有機酸としては、例えば、酢酸、乳酸、ピルビン酸、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸が挙げられ、核酸としては、イノシンやグアノシンなどのヌクレオシド、イノシン酸、グアニル酸などのヌクレオチドが挙げられる。また、化学品のその他の例としては、カダベリンなどのジアミン化合物、抗生物質、酵素、組換えタンパク質が挙げられる。本発明の連続培養装置を用いることにより、上記化学品の高い生産性を得ることができる。
【0064】
ここで、連続培養における生産速度は、次の式(3)で計算される。
【0065】
【数3】

【0066】
また、バッチ培養での化学品の生産速度は、原料炭素源をすべて消費した時点の生産物量(g)を、炭素源の消費に要した時間(h)とその時点の培養液量(L)で除して求められる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明の連続培養装置を、実施例を挙げて詳細に説明する。具体的には、化学品としてL−乳酸、微生物もしくは培養細胞にL―乳酸生産能力を持つ酵母(参考例1)、分離膜に多孔性膜(参考例2:平膜、参考例3:中空糸膜)を選定し、図1に示す連続培養装置を用い、連続培養装置の膜分離槽に対する培養反応槽の培養液容積比を5から100の範囲で変化させた連続的な化学品の製造について、実施例を挙げて説明する。
【0068】
(参考例1)乳酸生産能力を持つ酵母株(SW−1株)の作製
乳酸生産能力を持つ酵母株を、下記のように造成した。具体的には、ヒト由来LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結することにより、L−乳酸生産能力を持つ酵母株を造成する。ポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)には、La−Taq(宝酒造社製)あるいはKOD-Plus-polymerase(東洋紡社製)を用い、付属の取扱説明に従って行った。
【0069】
ヒト乳ガン株化細胞(MCF−7)を培養回収後、TRIZOL Reagent(Invitrogen)を用いてtotal RNAを抽出し、得られたtotal RNAを鋳型としてSuperScript Choice System(Invitrogen)を用いた逆転写反応によりcDNAの合成を行った。これらの操作の詳細は、それぞれ付属のプロトコールに従った。得られたcDNAを、続くPCRの増幅鋳型とした。
【0070】
上記の操作で得られたcDNAを増幅鋳型とし、配列番号1および配列番号2で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたKOD-Plus-polymeraseによるPCRによりL−ldh遺伝子のクローニングを行った。各PCR増幅断片を精製し末端をT4 Polynucleotide Kinase(TAKARA社製)によりリン酸化後、pUC118ベクター(制限酵素HincIIで切断し、切断面を脱リン酸化処理したもの)にライゲーションした。ライゲーションは、DNA Ligation Kit Ver.2(TAKARA社製)を用いて行った。ライゲーションプラスミド産物で大腸菌DH5αを形質転換し、プラスミドDNAを回収することにより、各種L−ldh遺伝子(配列番号3)がサブクローニングされたプラスミドを得た。得られたL−ldh遺伝子が挿入されたpUC118プラスミドを制限酵素XhoIおよびNotIで消化し、得られたDNA断片を酵母発現用ベクターpTRS11(図4)のXhoI/NotI切断部位に挿入した。このようにして、ヒト由来L−ldh遺伝子発現プラスミドpL−ldh5を得た。ヒト由来のL−ldh遺伝子発現ベクターである上記pL−ldh5は、プラスミド単独で独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1中央第6)にFERM AP−20421として寄託した(寄託日:平成17年2月21日)。
【0071】
ヒト由来LDH遺伝子を含むプラスミドpL−ldh5を増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号5で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより、1.3kbのヒト由来LDH遺伝子、及びサッカロミセス・セレビセ由来のTDH3遺伝子のターミネーター配列含むDNA断片を増幅した。また、プラスミドpRS424を増幅鋳型として、配列番号6および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより、1.2kbのサッカロミセス・セレビセ由来のTRP1遺伝子を含むDNA断片を増幅した。それぞれのDNA断片を、1.5%アガロースゲル電気泳動により分離し、常法に従い精製した。ここで得られた1.3kb断片と1.2kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、配列番号4および配列番号7で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCR法によって得られた産物を1.5%アガロースゲル電気泳動して、ヒト由来LDH遺伝子およびTRP1遺伝子が連結された2.5kbのDNA断片を、常法に従い調整した。この2.5kbのDNA断片で、出芽酵母NBRC10505株を常法に従いトリプトファン非要求性に形質転換した。
【0072】
得られた形質転換細胞が、ヒト由来LDH遺伝子を酵母ゲノム上のPDC1プロモーターの下流に連結されている細胞であることの確認は、下記のようにして行った。まず、形質転換細胞のゲノムDNAを常法に従って調製し、これを増幅鋳型とした配列番号8および配列番号9で表されるオリゴヌクレオチドをプライマーセットとしたPCRにより0.7kbの増幅DNA断片が得られることにより確認した。また、形質転換細胞が乳酸生産能力を持つかどうかは、SC培地(METHODS IN YEAST GENETICS 2000 EDITION、 CSHL PRESS)で形質転換細胞を培養した培養上澄に乳酸が含まれていることを、下記に示す条件でHPLC法により乳酸量を測定することにより確認した。
【0073】
・カラム:Shim-Pack SPR-H(島津社製)
・移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
・反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
・検出方法:電気伝導度
・温度:45℃。
【0074】
また、L−乳酸の光学純度測定は以下の条件でHPLC法により測定した。
【0075】
・カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー社製)
・移動相:1mM 硫酸銅水溶液
・流速:1.0ml/min
・検出方法:UV254nm
・温度:30℃。
【0076】
また、L−乳酸の光学純度は次式で計算される。
【0077】
・光学純度(%)=100×(L−D)/(L+D)
ここで、LはL−乳酸の濃度を表し、DはD−乳酸の濃度を表す。
【0078】
HPLC分析の結果、4g/LのL−乳酸が検出され、D−乳酸は検出限界以下であった。以上の検討により、この形質転換体がL−乳酸生産能力を持つことが確認された。得られた形質転換細胞を、酵母SW−1株として、実施例に用いた。
【0079】
(参考例2)多孔性平膜の作製(その1)
樹脂としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂を、また溶媒としてN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)をそれぞれ用い、これらを90℃の温度下に十分に攪拌し、次の組成の原液を得た。
【0080】
・PVDF:13.0重量%
・DMAc:87.0重量%
次に、上記原液を25℃の温度に冷却した後、あらかじめガラス板上に貼り付けて置いた、密度が0.48g/cm3で、厚みが220μmのポリエステル繊維製不織布(多孔質基材)に塗布し、直ちに次の組成を有する25℃の温度の凝固浴中に5分間浸漬して、多孔質基材に多孔質樹脂層が形成された多孔質性膜を得た。
【0081】
・水:30.0重量%
・DMAc:70.0重量%。
【0082】
この多孔質性膜をガラス板から剥がした後、80℃の温度の熱水に3回浸漬してDMAcを洗い出し、分離膜(多孔性膜)を得た。多孔質樹脂層表面の9.2μm×10.4μmの範囲内を、倍率10,000倍で走査型電子顕微鏡観察を行ったところ、観察できる細孔すべての直径の平均は0.1μmであった。次に、上記の分離膜について純水透過係数を評価したところ、50×10-93/m2・s・Paであった。純水透水量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、細孔径の標準偏差 は0.035μmで、膜表面粗さは0.06μmであった。
【0083】
(参考例3)多孔性中空糸膜の作製
重量平均分子量41.7万のフッ化ビニリデンホモポリマーとγ-ブチロラクトンとを、それぞれ38重量%と62重量%の割合で170℃の温度で溶解し原液を作製した。この原液をγ-ブチロラクトンを中空部形成液体として随拌させながら口金から吐出し、温度20℃のγ-ブチロラクトン80重量%水溶液からなる冷却浴中で固化して中空糸膜を作製した。
【0084】
次いで、重量平均分子量28.4万のフッ化ビニリデンホモポリマーを14重量%、セルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル社、CAP482−0.5)を1重量%、N-メチル-2-ピロリドンを77重量%、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン(三洋化成株式会社、商品名イオネットT−20C)を5重量%、水を3重量%の割合で95℃の温度で混合溶解して原液を調整した。この原液を、上記で得られた中空糸膜の表面に均一に塗布し、すぐに水浴中で凝固させた本発明で用いる多孔性中空糸膜を製作した。得られた多孔性中空糸膜の被処理水側表面の平均細孔径は、0.05μmであった。次に、上記の分離膜である多孔性中空糸膜について純水透水量を評価したところ、5.5×10-93/m2・s・Paであった。透過液量の測定は、逆浸透膜による25℃の温度の精製水を用い、ヘッド高さ1mで行った。また、細孔径の標準偏差 は0.006μmであった。
【0085】
(実施例1)連続培養によるL−乳酸の製造(その1)
酵母SW−1株、図1の概要図に示した連続培養装置、表1に示す組成の乳酸生産培地を用い、連続培養を行うことによるL−乳酸の製造を行った。実施例1では2L容の培養反応槽、150ml容の膜分離槽を用い、分離膜エレメントには参考例2で作製した多孔性平膜を装着した図2に示す分離膜エレメントを用いた。
【0086】
なお、培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、100mL(培養液容積比15)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が1.6Lとなるように連続培養を行った。乳酸生産培地は、121℃の温度で15分間、高圧蒸気滅菌して用いた。分離膜エレメントの基材部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成型品を用いた。
【0087】
また、実施例1における運転条件は、下記のとおりとした。
・培養反応槽容量:2(L)(運転時培養液量として1.5L)
・膜分離槽容量:150(mL)(運転時培養液量として100mL)
・使用分離膜:平膜(参考例2参照)
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:30(℃)
・培養反応槽通気量:0.05(L/min)
・培養反応槽攪拌速度:100(rpm)
・pH調整:1N NaOHによりpH5に調整
・乳酸生産培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
・培養液循ポンプによる循環液量:0.1(L/min)
・膜透過液量制御:膜間差圧による流量制御
(連続培養開始後〜100時間:膜間差圧0.1kPa以上5kPa以下で制御
100時間〜200時間:膜間差圧0.1kPa以上2kPa以下で制御
200時間〜300時間:膜間差圧0.1kPa以上20kPa以下で制御)
より具体的には、まず、試験管中で5mlの乳酸生産培地を用いSW−1株を一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸生産培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコ中で24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示した膜分離型連続培養装置の1.5Lの乳酸生産培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機2によって400rpmで攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整およびpH調整を行いながら、培養液循環ポンプ5を稼働させることなく、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、培養液循環ポンプ5を稼働させた。前培養時の運転条件に加え、培地の連続供給を行い、連続培養装置における全培養液量が2Lとなるように膜透過液量の制御を行いながら連続培養し、連続培養によるL−乳酸の製造を行った。
【0088】
連続培養を行うときの膜透過液量の制御は、水頭差圧制御装置4により水頭差を膜間差圧として測定し、上記の膜透過液量制御条件で変化させることで行った。連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。適宜、膜透過培養液中の生産されたL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。なお、L−乳酸の濃度の評価には参考例1に示したHPLCを用い、グルコース濃度の測定には“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。
【0089】
以上の条件で300時間の連続培養を行った結果を表2に示す。その結果、図1の連続培養装置を用いることにより、連続培養による安定したL−乳酸の製造が可能であることを確認することができた。
【0090】
【表1】

【0091】
(実施例2)連続培養によるL−乳酸の製造(その2)
分離膜として参考例2で作製した多孔性膜を用い、実施例1と同様の連続培養によるL−乳酸の製造を行った。但し、実施例2では2L容の培養反応槽、400ml容の膜分離槽を用い、培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、300mL(培養液容積比5)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が1.8Lとなるように連続培養を行った。実施例2においても連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。その結果を表2に示す。その結果、安定したL−乳酸の連続培養による安定したL−乳酸の製造が可能であることを確認することができた。
【0092】
(実施例3)連続培養によるL−乳酸の製造(その3)
分離膜として参考例2で作製した多孔性膜を用い、実施例1と同様の連続培養によるL−乳酸の製造を行った。但し、実施例3では2L容の培養反応槽、100ml容の膜分離槽を用い、連続培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、50mL(培養液容積比30)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が1.55Lとなるように連続培養を行った。実施例3においても連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。その結果を表2に示す。その結果、連続培養による安定したL−乳酸の製造が可能であることが確認できた。
【0093】
(比較例1)連続培養によるL−乳酸の製造(その1)
分離膜として参考例2で作製した多孔性膜を用い、実施例1と同様の連続培養を行った。但し、比較例1では2L容の培養反応槽、500ml容の膜分離槽を用い、培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、500mL(培養液容積比3)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が2Lとなるように連続培養を行った。比較例1においても連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。その結果を表2に示す。
【0094】
(実施例4)連続培養によるL−乳酸の製造(その4)
酵母SW−1株、図1の概要図に示した連続培養装置、表2に示す組成の酵母乳酸生産培地を用い、連続培養を行った。なお、実施例4では2L容の培養反応槽、150ml容の膜分離槽を用い、分離膜エレメントには参考例3で作製した多孔性中空糸膜を装着した図3に示す分離膜エレメントを用いた。
【0095】
なお、連続培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、100mL(培養液容積比15)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が1.6Lとなるように連続培養試験を行った。該酵母乳酸生産培地は、121℃の温度で15分間、高圧蒸気滅菌して用いた。分離膜エレメントの基材部材には、ステンレスおよびポリサルホン樹脂の成型品を用いた。
【0096】
また、実施例4における運転条件は、下記のとおりとした。
・培養反応槽容量:2(L)(運転時培養液量として1.5L)
・膜分離槽容量:150(mL)(運転時培養液量として100mL)
・使用分離膜:中空糸膜(参考例3参照)
・膜分離エレメント有効濾過面積:120平方cm
・温度調整:30(℃)
・培養反応槽通気量:0.05(L/min)
・培養反応槽攪拌速度:100(rpm)
・pH調整:1N NaOHによりpH5に調整
・乳酸生産培地供給速度:50〜300ml/hr.の範囲で可変制御
・培養液循環ポンプによる循環液量:0.1(L/min)
・膜透過液量制御:膜間差圧による流量制御
(連続培養開始後〜100時間:膜間差圧0.1kPa以上5kPa以下で制御
100時間〜200時間:膜間差圧0.1kPa以上2kPa以下で制御
200時間〜300時間:膜間差圧0.1kPa以上20kPa以下で制御)
より具体的には、まず、試験管中で5mlの乳酸生産培地を用いSW−1株を一晩振とう培養した(前々々培養)。得られた培養液を新鮮な乳酸生産培地100mlに植菌し、500ml容坂口フラスコ中で24時間、30℃の温度で振とう培養した(前々培養)。前々培養液を、図1に示した連続培養装置の1.5Lの乳酸生産培地に植菌し、培養反応槽1を付属の攪拌機2によって400rpmで攪拌し、培養反応槽1の通気量の調整、温度調整およびpH調整を行いながら、培養液循環ポンプ5を稼働させることなく、24時間培養を行った(前培養)。前培養完了後直ちに、培養液循環ポンプ5を稼働させた。前培養時の運転条件に加え、乳酸生産培地の連続供給を行い、連続培養装置における全培養液量が2Lとなるように膜透過液量の制御を行いながら連続培養し、連続培養によるL−乳酸の製造を行った。
【0097】
連続培養を行うときの膜透過液量の制御は、水頭差圧制御装置4により水頭差を膜間差圧として測定し、上記の膜透過液量制御条件で変化させることで行った。連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。適宜、膜透過培養液中の生産されたL−乳酸濃度および残存グルコース濃度を測定した。なお、化学品であるL−乳酸の濃度の評価には参考例1に示したHPLCを用い、グルコース濃度の測定には“グルコーステストワコーC”(登録商標)(和光純薬社製)を用いた。
【0098】
以上の条件で300時間の連続培養を行った結果を表3に示す。その結果、図1の連続培養装置を用いることにより、連続培養による安定したL−乳酸の製造が可能であることを確認することができた。
【0099】
(実施例5)連続培養によるL−乳酸の製造(その5)
分離膜として参考例3で作製した多孔性中空糸膜を用い、実施例4と同様の連続培養を行った。但し、実施例5では2L容の培養反応槽、100ml容の膜分離槽を用い、培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、50mL(培養液容積比30)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が1.55Lとなるように連続培養を行った。実施例5においても連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。その結果を表3に示す。その結果、連続培養による安定したL−乳酸の製造が可能であることが確認できた。
【0100】
(実施例6)連続培養によるL−乳酸の製造(その6)
分離膜として参考例3で作製した多孔性中空糸膜を用い、実施例4と同様の連続培養を行った。但し、実施例6では2L容の培養反応槽、50ml容の膜分離槽を用い、連続培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、15mL(培養液容積比100)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が1.515Lとなるように連続培養を行った。実施例6においても連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。その結果を表3に示す。その結果、連続培養による安定したL−乳酸の製造が可能であることが確認できた。
【0101】
(比較例2)連続培養によるL−乳酸の製造(その2)
分離膜として参考例3で作製した多孔性中空糸膜を用い、実施例4と同様の連続培養を行った。但し、比較例2では2L容の培養反応槽、500ml容の膜分離槽を用い、連続培養運転時に培養反応槽ならびに膜分離槽に満たされる培養液量をそれぞれ1.5L、500mL(培養液容積比3)とし、連続培養装置内(配管内は除く)の培養液量が2Lとなるように連続培養を行った。比較例2においても連続培養の期間中の膜間差圧は、結果的に2kPa以下で推移した。その結果を表3に示す。
【0102】
【表2】

【0103】
【表3】

【0104】
実施例1〜6ならびに比較例1、2の連続培養結果から、従来の連続培養装置と比較して膜分離槽に対する培養反応槽の培養液容積比を5〜100の範囲にすることで、装置のコンパクト化を実現しつつも、培養液の培養反応槽滞留時間が長くなり適切な培養条件への調節が実現し、化学品の生産速度が向上することが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、本発明で用いられる膜分離型の連続培養装置の一つの実施の形態を説明するための概略側面図である。
【図2】図2は、本発明で用いられる分離膜エレメントの一つの実施の形態を説明するための概略斜視図である。
【図3】図3は、本発明で用いられる他の分離膜エレメントの例を説明するための断面説明図である。
【図4】図4は、実施例で用いた酵母用発現ベクターpTRS11のフィジカルマップを示す図である。
【符号の説明】
【0106】
1 培養反応槽
2 攪拌機
3 分離膜(エレメント)
4 水頭差圧制御装置
5 培養液循環ポンプ
6 レベルセンサ
7 温度調節器
8 培地供給ポンプ
9 pH調整溶液供給ポンプ
10 pHセンサ・制御装置
11 気体供給装置
12 膜分離槽
13 支持板
14 流路材
15 分離膜
16 凹部
17 集液パイプ
18 上部樹脂封止層
19 下部樹脂封止層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物もしくは培養細胞を培養するための培養反応槽と、該培養反応槽から連続的に供給される培養液を濾過する分離膜が配置される膜分離槽と、前記培養液を前記培養反応槽から前記膜分離槽へ供給するとともに濾過されなかった未濾過培養液を前記膜分離槽よりも上流側の前記培養液へ還流する培養液循環手段とを具備し、前記膜分離槽および前記培養反応槽は、前記膜分離槽における培養液に対する前記培養反応槽における培養液の培養液容積比が5以上100以下となる容積を有するものであることを特徴とする連続培養装置。
【請求項2】
前記膜分離槽および前記培養反応槽は、前記培養液容積比が15以上100以下となる容積を有するものである、請求項1記載の連続培養装置。
【請求項3】
培養反応槽において微生物もしくは培養細胞を培養し、連続的に培養液を前記培養反応槽から膜分離槽へ供給して分離膜で濾過し生産物を回収するとともに、濾過されなかった未濾過培養液を前記膜分離槽よりも上流側の前記培養液へ還流するにあたり、前記膜分離槽における培養液に対する前記培養反応槽における培養液の培養液容積比を5以上100以下とすることを特徴とする化学品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−296921(P2009−296921A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153846(P2008−153846)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度新エネルギー・産業技術総合開発機構、「微生物機能を活用した環境調和型製造基盤技術開発/微生物機能を活用した高度製造基盤技術開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】