説明

連続塗布処理方法

【課題】ロールコーターを用いて基材に連続して塗布処理を行うに際して、常に安定して、所望の膜厚と良好な塗布外観の両方を得ることができる連続塗布処理方法を提供する。
【解決手段】ロールコーター1Aの下流側に設置した膜厚計11の測定値と予め設定した膜厚設定値との差に応じて、ピックアップロール4の周速Vp、ドクターロール5の周速Vd、アプリケーターロール6の周速Vaを自動的に調整するフィードバック制御によって膜厚制御を行うに際して、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaについて上下限値を設定するとともに、フィードバック制御を開始する時は、ドクターロール5の周速Vdの調整のみで膜厚制御を行い、ドクターロール5の周速Vdがその上下限値に達した後は、ピックアップロール4の周速Vpまたは/およびアプリケーターロール6の周速Vaの調整によって膜厚制御を行うことを特徴とする連続塗布処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に連続して塗布処理を行う連続塗布処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続して走行する基材(例えば鋼板)に耐食性、加工性、美観性、絶縁性等の性能を付与するために、各種の塗膜を基材表面上に形成させる処理(連続塗布処理)を行っている。この連続塗布処理方法には、ロールコーター方式が一般的に用いられており、ロールを2本用いる2ロールコーター、あるいは3本のロールを用いる3ロールコーターが広く使用されている。特に、3ロールコーターは塗布膜厚の制御性に優れることと、表面外観が比較的美麗であることから、主流のロールコーター方式になっている。
【0003】
この3ロールコーター方式は、塗布液が満たされているコーターパンより塗布液をくみ上げるピックアップロールと、ピックアップロールによりくみ上げられた塗布液量を調整するドクターロールと、調整された塗布液量をピックアップロールから基材に転写するアプリケーターロールにより構成されている。各ロールの回転方向は、ロール間の近接点、あるいは接触点において同方向に回転するナチュラル回転の場合と逆方向に回転するリバース回転の場合があるが、一般的にはリバース回転の方が比較的平滑な塗膜面が得られやすいということからリバース回転にする場合が多い。また、アプリケーターロールは基材表面に傷を付けないように鋼ロールにゴムをライニングしたゴムロールを用いている。
【0004】
比較的粘度の低い塗布液の場合、ピックアップロールとドクターロール間をすり抜ける液量が少なくなるため、ピックアップロールにはロール表面に溝加工が施されたグラビアロールが用いられる場合も多い。グラビアパターンには、斜線状のV溝パターンや四角錐の頂点が溝の谷となるようなパターン等があるが、グラビアパターンの種類、溝サイズは塗布液の種類、必要とする膜厚に応じて適宜決められる。
【0005】
基材の走行速度の変化に対して、一定の膜厚を保つためには、各コーターロールの周速を変更するのが最も迅速に対応できるため、各コーターロールの周速を変更し、膜厚を制御する場合が多く、膜厚を制御する際は、ロールコーターの下流側に設置された膜厚計により計測し、フィードバック制御により管理範囲内の膜厚になるように、ロール周速等を調整することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−177578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ロールコーター方式による連続塗布処理においては、単に膜厚が管理範囲内に入っていても、塗布欠陥により外観不良になる場合がある。すなわち、膜厚の自動制御を行うことによって目標の膜厚が得られたとしても、外観に不良が生じる場合がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、ロールコーターを用いて基材に連続して塗布処理を行うに際して、常に安定して、所望の膜厚と良好な塗布外観の両方を得ることができる連続塗布処理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
【0010】
[1]塗布液をピックアップロールで汲み上げ、前記ピックアップロール上の塗布液の量をドクターロールで調整し、前記ドクターロールとの近接点において逆方向に回転するアプリケーターロールに前記ピックアップロールから塗布液を転写し、さらに、連続して走行する基材に前記アプリケーターロールから塗布液を転写するロールコーターによる連続塗布処理方法において、
前記ロールコーターの下流側に設置した膜厚計の測定値と予め設定した膜厚設定値との差に応じて前記各ロールの周速を自動的に調整するフィードバック制御によって膜厚制御を行うに際して、前記各ロールの周速についてそれぞれ上下限値を設定するとともに、フィードバック制御を開始する時は、前記ドクターロールの周速のみの調整で膜厚制御を行い、前記ドクターロールの周速がその上下限値に達した後は、前記ピックアップロールの周速の調整または/および前記アプリケーターロールの周速の調整によって膜厚制御を行うことを特徴とする連続塗布処理方法。
【0011】
[2]塗布液をピックアップロールで汲み上げ、前記ピックアップロール上の塗布液の量をドクターロールで調整し、前記ドクターロールとの近接点において同方向に回転するアプリケーターロールに前記ピックアップロールから塗布液を転写し、さらに、連続して走行する基材に前記アプリケーターロールから塗布液を転写するロールコーターによる連続塗布処理方法において、
前記ロールコーターの下流側に設置した膜厚計の測定値と予め設定した膜厚設定値との差に応じて前記各ロールの周速を自動的に調整するフィードバック制御によって膜厚制御を行うに際して、前記ピックアップロールの周速と前記アプリケーターロールの周速についてそれぞれ上下限値を設定するとともに、前記ピックアップロールの周速の調整または/および前記アプリケーターロールの周速の調整によって膜厚制御を行うことを特徴とする連続塗布処理方法。
【0012】
[3]前記各ロールの周速のいずれかがその上下限値に達した際には、アラームを出力することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の連続塗布処理方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、基材に連続して塗布処理を行うに際して、常に安定して、所望の膜厚と良好な塗布外観の両方を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1における連続塗布処理ラインの側面図である。
【図2】本発明の実施形態2における連続塗布処理ラインの側面図である。
【図3】本発明の実施例1における本発明例3と比較例3を比較した図である。
【図4】本発明の実施例1における本発明例4と比較例4を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1における連続塗布処理ラインを示す側面図である。
【0017】
図1に示すように、この連続塗布処理ラインには、連続して走行する基材Sの表面に塗布液を塗布するために、リバース回転型の3ロールコーター1Aが設置されている。
【0018】
この3ロールコーター1Aは、コーターパン2から塗布液3をくみ上げるピックアップロール4と、ピックアップロール4上の塗布液3の液量を調整するドクターロール5と、調整されたピックアップロール4上の塗布液3を基材Sに転写するアプリケーターロール6を備えている。なお、基材Sはバックアップロール8に巻きついた状態で塗布される。
【0019】
そして、各ロール(ピックアップロール4、ドクターロール5、アプリケーターロール6)の回転方向は、各ロール間、あるいはアプリケーターロール6と基材S間において互いに逆方向である。なお、ドクターロール5上には塗布液3を掻き取るブレード7が設置されている。
【0020】
基材Sが鋼板等の金属板の場合は、アプリケーターロール6はゴムがライニングされたゴムロールを用いる。ピックアップロール4はロール表面に溝加工されたグラビアロールを用いる。
【0021】
3ロールコーター1Aの下流側には、塗布液3を乾燥、焼付けさせるオーブン9と、加熱後に冷却を行う冷却帯10が設置されている。
【0022】
そして、冷却帯10の下流側に、膜厚計11が設置されており、膜厚計11の出力は演算装置12に入力され、予め設定した目標膜厚になるように、周速制御装置13による自動制御(フィードバック制御)によって、各ロール(ピックアップロール4、ドクターロール5、アプリケーターロール6)の周速が自動的に調整されるようになっている。
【0023】
その上で、上記のようなリバース回転型3ロールコーター1Aにおいて、塗布外観を劣化させる塗布欠陥の発生メカニズムについて詳細な検討を行った結果、以下の知見が得られた。
【0024】
すなわち、塗布欠陥の発生場所は、ピックアップロール4とアプリケーターロール6の間、およびアプリケーターロール6と基材Sとの間のメニスカス部である。前者については、ピックアップロール4の周速Vpに対してアプリケーターロール6の周速Vaが速くなりすぎると塗布欠陥が生じる。後者についても、アプリケーターロール6の周速Vaに対して基材Sの走行速度(ライン速度)LSが速くなりすぎると塗布欠陥が生じる。
【0025】
したがって、塗布欠陥を生じさせないためには、ピックアップロール4の周速Vpと、アプリケーターロール6の周速Vaをともに適正な周速範囲にしなければならない。つまり、基材Sの走行速度LSに対して、アプリケーターロール6の周速Vaの上下限値を設定し、そのアプリケーターロール6の周速Vaの上下限値に対応して、ピックアップロール4の周速Vpの上下限値を設定する。具体的には、アプリケーターロール6の周速Vaおよびピックアップロール4の周速Vpともに、下限値は塗布欠陥を発生させない条件で決められ、上限値は各ロールの最大周速によって決められる。
【0026】
一方、ドクターロール5の周速Vdは、それによって塗布欠陥を発生させることはないため、上下限の制約範囲を特に定める必要はない。したがって、上限値はドクターロール5の最高周速、下限値はドクターロール5の最低周速とすることでよい。
【0027】
そして、ドクターロール5の周速変更は、アプリケーターロール6やピックアップロール4とは異なり、塗布外観に影響を与えないため、膜厚制御に最も適している。
【0028】
したがって、自動制御(フィードバック制御)の開始直後は、まずドクターロール5の周速Vdの変更・調整により膜厚制御を行い、ドクターロール5の周速Vdだけでは膜厚制御ができなくなった時点、つまりドクターロール5の周速Vdが上下限値に到達した時点で、ピックアップロール4の周速Vpまたはアプリケーターロール6の周速Vaあるいはその両方を変更・調整する膜厚制御に切り替える。このように、ドクターロール5の周速Vdの変更・調整による膜厚調整を最大限行うことで、塗布外観の安定化がより一層図られる。
【0029】
このようにして、この実施形態1においては、基材Sに連続して塗布処理を行うに際して、常に安定して、所望の膜厚と良好な塗布外観の両方を得ることができる。
【0030】
すなわち、この実施形態1においては、塗布欠陥を発生させないような各ロールの周速範囲で膜厚制御を行うことが可能になり、膜厚のばらつきも少なくすることができたため、塗布欠陥もなく所望の膜厚が得られるとともに、膜厚狙い値を下げる製造方法が確立された。したがって、この実施形態1によって、オペレーターの介在がなくても常に安定した品質が得られ、省力化が可能となるとともに、製造コストの低減が図られる。
【0031】
[実施形態2]
図2は、本発明の実施形態2における連続塗布処理ラインを示す側面図である。
【0032】
図2に示すように、この連続塗布処理ラインは、基本的には、図1に示した連続塗布処理ラインと同様であるが、リバース回転型の3ロールコーター1Aに代えて、一部がナチュラル回転になっている3ロールコーター1Bが設置されている。
【0033】
すなわち、この3ロールコーター1Bは、ドクターロール5の回転方向が3ロールコーター1Aと逆方向になっており、ピックアップロール4とドクターロール5が近接点で同方向に回転する3ロールコーターである。
【0034】
その上で、上記のような一部ナチュラル回転型3ロールコーター1Bにおいて、塗布外観を劣化させる塗布欠陥の発生メカニズムについて詳細な検討を行った結果、この一部ナチュラル回転型3ロールコーター1Bにおいても、塗布欠陥の発生場所は、ピックアップロール4とアプリケーターロール6の間、およびアプリケーターロール6と基材Sとの間のメニスカス部であることが分かった。前者については、ピックアップロール4の周速Vpに対してアプリケーターロール6の周速Vaが速くなりすぎると塗布欠陥が生じる。後者についても、アプリケーターロール6の周速Vaに対して基材Sの走行速度(ライン速度)LSが速くなりすぎると塗布欠陥が生じる。
【0035】
したがって、塗布欠陥を生じさせないためには、ピックアップロール4の周速Vpと、アプリケーターロール6の周速Vaをともに適正な周速範囲にしなければならない。つまり、基材Sの走行速度LSに対して、アプリケーターロール6の周速Vaの上下限値を設定し、そのアプリケーターロール6の周速Vaの上下限値に対応して、ピックアップロール4の周速Vpの上下限値を設定する。具体的には、アプリケーターロール6の周速Vaおよびピックアップロール4の周速Vpともに、下限値は塗布欠陥を発生させない条件で決められ、上限値は各ロールの最大周速によって決められる。
【0036】
一方、ドクターロール5の周速Vdが膜厚に及ぼす影響は小さく、ドクターロール5の周速Vdの変更・調整による膜厚制御は適当でない。
【0037】
したがって、ピックアップロール4の周速Vpとアプリケーターロール6の周速Vaの変更・調整によって膜厚制御を行う。その際、実施形態1と同様にして、各ロール(ピックアップロール4、アプリケーターロール6)に上下限値を設ける。
【0038】
このようにして、この実施形態2においては、基材Sに連続して塗布処理を行うに際して、常に安定して、所望の膜厚と良好な塗布外観の両方を得ることができる。
【0039】
すなわち、この実施形態2においては、塗布欠陥を発生させないような各ロールの周速範囲で膜厚制御を行うことが可能になり、膜厚のばらつきも少なくすることができたため、塗布欠陥もなく所望の膜厚が得られるとともに、膜厚狙い値を下げる製造方法が確立された。したがって、この実施形態2によって、オペレーターの介在がなくても常に安定した品質が得られ、省力化が可能となるとともに、製造コストの低減が図られる。
【0040】
さらに、上記の実施形態1および実施形態2において、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaのいずれかがそのロールの上下限値に達した場合に、アラームを出力させ、オペレーターに知らさせるようにすることで、各ロールの周速が適正範囲から外れ、塗布欠陥の発生する可能性があるという注意を促させ、塗布欠陥の連続発生を防止することができる。
【0041】
なお、上記の実施形態1、2では、図1、図2に示したように、基材Sはバックアップロール8に巻きついた状態で片面に塗布されているが、本発明は、基材Sを挟んで両面に3ロールコーターが配置されていてバックアップロールを必要としない両面同時塗布にも適用することができる。また、基材Sの通板方向は水平パスでも垂直パスでも何れでも良い。
【0042】
そして、上記の実施形態1、2では、3ロールによるロールコーターで説明したが、ピックアップロールとアプリケーターロール間に1本以上の中間ロールを挟む、3ロール以上のロール構成となっていても良い。
【0043】
また、上記の実施形態1、2では、ピックアップロールへの塗液供給は、コーターパンからの塗液掻き上げを記載したが、スプレーや押し出し等の他の塗液供給方法を用いても良い。
【0044】
さらに、上記の実施形態1、2では、ロールコーターの下流側に設置する膜厚計を乾燥後の位置に設置した例を示したが、ここに限定するものではなく、液膜の状態で測定する膜厚計の場合は、乾燥前の位置に設置し、乾燥後の膜厚に換算すればよい。また、膜厚計も、膜厚または付着量が測定出来れば特に種類を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
本発明を以下の実施例(本発明例、比較例)により詳細に説明する。
【0046】
本発明例1として、板厚0.4〜1.2mm、板幅900〜1400mmの亜鉛めっき鋼板のコイルに対して、図1に示した連続塗布処理ラインを用いて、ライン速度LSが40〜120mpmの範囲で塗布を行い、乾燥後の塗布外観の評価、および蛍光X線による膜厚測定を行った。なお、乾燥後の塗布外観の評価は、十分に明るい蛍光灯の下で目視による観察によって行った。
【0047】
その際、図1の3ロールコーター1Aは、各ロールの材質については、アプリケーターロール6とドクターロール5が鋼ロールにゴムをライニングしたゴムロールであり、ピックアップロール4は金属ロールで、ロール表面にロール周方向に対して45度の角度にV型の溝加工(ピッチ0.2mm、深さ0.1mm)が施されたグラビアロールであった。各ロール4、5、6のロール径は全て300mmであり、各ロール間およびアプリケーターロール6と鋼板S間の押付け荷重は200kgとした。塗布液は、液温度20℃において粘度が1cp、表面張力が40dyn/cmのものを用いた。
【0048】
そして、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaについて、それぞれの上下限値を設定しておき、膜厚計11の測定値が膜厚設定値となるように、自動制御(フィードバック制御)を実施した。その際、自動制御の開始時は、ドクターロール5の周速Vdのみの変更・調整で行い、ドクターロール5の周速Vdが上下限値に達した場合は、ピックアップロール4の周速Vpとアプリケーターロール6の周速Vaを同時に変更・調整するようにした。
【0049】
表1に、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaについて設定した上下限値を示す。なお、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaのいずれかがその上下限値に達した場合に、アラームを出力させる設定とした。
【0050】
【表1】

【0051】
これに対して、比較例1として、上記の本発明例1と同様の条件下で、従来のように、ライン速度LSの変更に対して、オペレーターが各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaをそれぞれ変更・調整して、膜厚の制御を行った。
【0052】
また、本発明例2として、前記と同サイズの亜鉛めっき鋼板のコイルに対して、図2に示した連続塗布処理ラインを用いて、ライン速度LSが40〜120mpmの範囲で塗布を行い、乾燥後の塗布外観の評価、および蛍光X線による膜厚測定を行った。なお、乾燥後の塗布外観の評価は、十分に明るい蛍光灯の下で目視による観察によって行った。
【0053】
その際、図2の3ロールコーター1Bは、各ロールの材質については、アプリケーターロール6とドクターロール5が鋼ロールにゴムをライニングしたゴムロールであり、ピックアップロール4は鏡面の金属ロールであった。各ロールのロール径は全て300mmであり、各ロール間およびアプリケーターロール6と鋼板S間の押付け荷重は200kgとした。塗布液は、液温度20℃において粘度が8cp、表面張力が40dyn/cmのものを用いた。
【0054】
そして、各ロール4、6の周速Vp、Vaについて、それぞれの上下限値を設定しておき、膜厚計11の測定値が膜厚設定値となるように、自動制御(フィードバック制御)を実施した。その際、自動制御は、ピックアップロール4の周速Vpとアプリケーターロール6の周速Vaを同時に変更・調整するようにした。
【0055】
表2に、各ロール4、6の周速Vp、Vaについて設定した上下限値を示す。なお、各ロール4、6の周速Vp、Vaのいずれかがその上下限値に達した場合に、アラームを出力させる設定とした。
【0056】
【表2】

【0057】
これに対して、比較例2として、上記の本発明例2と同様の条件下で、従来のように、ライン速度LSの変更に対して、オペレーターが各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaをそれぞれ変更・調整して、膜厚の制御を行った。
【0058】
また、本発明例3として、前記と同サイズの亜鉛めっき鋼板のコイルに対して、図1に示した連続塗布処理ラインを用いて、ライン速度LSが40〜120mpmの範囲で塗布を行い、乾燥後の塗布外観の評価、および蛍光X線による膜厚測定を行った。なお、乾燥後の塗布外観の評価は、十分に明るい蛍光灯の下で目視による観察によって行った。
【0059】
その際、図1の3ロールコーター1Aは、各ロールの材質については、アプリケーターロール6とドクターロール5が鋼ロールにゴムをライニングしたゴムロールであり、ピックアップロール4は金属ロールで、ロール表面にロール周方向に対して45度の角度にV型の溝加工(ピッチ0.2mm、深さ0.1mm)が施されたグラビアロールであった。各ロール4、5、6のロール径は全て300mmであり、各ロール間およびアプリケーターロール6と鋼板S間の押付け荷重は70kgとした。塗布液は、液温度20℃において粘度が24cp、表面張力が40dyn/cmのものを用いた。
【0060】
そして、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaについて、それぞれの上下限値を設定しておき、膜厚計11の測定値が膜厚設定値となるように、自動制御(フィードバック制御)を実施した。その際、自動制御の開始時は、ドクターロール5の周速Vdのみの変更・調整で行い、ドクターロール5の周速Vdが上下限値に達した場合は、ピックアップロール4の周速Vpとアプリケーターロール6の周速Vaを同時に変更・調整するようにした。
【0061】
表3に、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaについて設定した上下限値を示す。なお、各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaのいずれかがその上下限値に達した場合に、アラームを出力させる設定とした。
【0062】
【表3】

【0063】
これに対して、比較例3として、上記の本発明例3と同様の条件下で、従来のように、ライン速度LSの変更に対して、オペレーターが各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaをそれぞれ変更・調整して、膜厚の制御を行った。
【0064】
また、本発明例4として、前記と同サイズの亜鉛めっき鋼板のコイルに対して、図2に示した連続塗布処理ラインを用いて、ライン速度LSが40〜120mpmの範囲で塗布を行い、乾燥後の塗布外観の評価、および蛍光X線による膜厚測定を行った。なお、乾燥後の塗布外観の評価は、十分に明るい蛍光灯の下で目視による観察によって行った。
【0065】
その際、図2の3ロールコーター1Bは、各ロールの材質については、アプリケーターロール6とドクターロール5が鋼ロールにゴムをライニングしたゴムロールであり、ピックアップロール4は鏡面の金属ロールであった。各ロールのロール径は全て300mmであり、各ロール間およびアプリケーターロール6と鋼板S間の押付け荷重は70〜100kgとした。塗布液は、液温度20℃において粘度が40cp、表面張力が40dyn/cmのものを用いた。
【0066】
そして、各ロール4、6の周速Vp、Vaについて、それぞれの上下限値を設定しておき、膜厚計11の測定値が膜厚設定値となるように、自動制御(フィードバック制御)を実施した。その際、自動制御は、ピックアップロール4の周速Vpとアプリケーターロール6の周速Vaを同時に変更・調整するようにした。
【0067】
表4に、各ロール4、6の周速Vp、Vaについて設定した上下限値を示す。なお、各ロール4、6の周速Vp、Vaのいずれかがその上下限値に達した場合に、アラームを出力させる設定とした。
【0068】
【表4】

【0069】
これに対して、比較例4として、上記の本発明例4と同様の条件下で、従来のように、ライン速度LSの変更に対して、オペレーターが各ロール4、5、6の周速Vp、Vd、Vaをそれぞれ変更・調整して、膜厚の制御を行った。
【0070】
その結果、本発明例1、2では、鋼板Sの速度(ライン速度)LSを変更しても、常に良好な外観と安定した膜厚が得られ、膜厚のばらつきも膜厚平均値に対する標準偏差が5.8%と小さくすることができたため、膜厚の管理範囲内で下限値を下回らない膜厚狙い値を低くすることができ、従来よりも膜厚平均値を7.5%下げることができた。
【0071】
一方、比較例1、2では、膜厚を管理範囲内に入れるためには、必ずしも良好な外観が得られなかった場合もあり、膜厚のばらつきも膜厚平均値に対する標準偏差が8.3%と大きかった。また、ライン速度LSの変更直後では、膜厚においても管理範囲から外れる場合もあった。
【0072】
さらに、本発明例3と比較例3の比較結果を図3に示す。
【0073】
また、本発明例4と比較例4の比較結果を図4に示す。
【0074】
本発明例4では、高粘度塗料においても、鋼板Sの速度(ライン速度)LSを変更しても、常に良好な外観を安定した膜厚が得られ、膜厚のばらつきも比較例4に対して70%下げることができた。
【0075】
なお、この実施例では基材として鋼板を用いたが、本発明は特に鋼板に限定されることなく、アルミ等の他の金属板や紙、フィルムにも適用されるものである。
【符号の説明】
【0076】
S 基材
1A 3ロールコーター(リバース回転型3ロールコーター)
1B 3ロールコーター(一部ナチュラル回転型3ロールコーター)
2 コーターパン
3 塗布液
4 ピックアップロール
5 ドクターロール
6 アプリケーターロール
7 ブレード
8 バックアップロール
9 オーブン
10 冷却帯
11 膜厚計
12 演算装置
13 周速制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布液をピックアップロールで汲み上げ、前記ピックアップロール上の塗布液の量をドクターロールで調整し、前記ドクターロールとの近接点において逆方向に回転するアプリケーターロールに前記ピックアップロールから塗布液を転写し、さらに、連続して走行する基材に前記アプリケーターロールから塗布液を転写するロールコーターによる連続塗布処理方法において、
前記ロールコーターの下流側に設置した膜厚計の測定値と予め設定した膜厚設定値との差に応じて前記各ロールの周速を自動的に調整するフィードバック制御によって膜厚制御を行うに際して、前記各ロールの周速についてそれぞれ上下限値を設定するとともに、フィードバック制御を開始する時は、前記ドクターロールの周速のみの調整で膜厚制御を行い、前記ドクターロールの周速がその上下限値に達した後は、前記ピックアップロールの周速の調整または/および前記アプリケーターロールの周速の調整によって膜厚制御を行うことを特徴とする連続塗布処理方法。
【請求項2】
塗布液をピックアップロールで汲み上げ、前記ピックアップロール上の塗布液の量をドクターロールで調整し、前記ドクターロールとの近接点において同方向に回転するアプリケーターロールに前記ピックアップロールから塗布液を転写し、さらに、連続して走行する基材に前記アプリケーターロールから塗布液を転写するロールコーターによる連続塗布処理方法において、
前記ロールコーターの下流側に設置した膜厚計の測定値と予め設定した膜厚設定値との差に応じて前記各ロールの周速を自動的に調整するフィードバック制御によって膜厚制御を行うに際して、前記ピックアップロールの周速と前記アプリケーターロールの周速についてそれぞれ上下限値を設定するとともに、前記ピックアップロールの周速の調整または/および前記アプリケーターロールの周速の調整によって膜厚制御を行うことを特徴とする連続塗布処理方法。
【請求項3】
前記各ロールの周速のいずれかがその上下限値に達した際には、アラームを出力することを特徴とする請求項1または2に記載の連続塗布処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6006(P2012−6006A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287058(P2010−287058)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】