説明

連続式アンローダのバケットおよびそのバケット改修方法

【課題】 重量増加を招くことなく変形や摩耗を防止可能であり、コスト削減に寄与することが可能な連続式アンローダのバケットを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の連続式アンローダのバケット110は、上面116a、底面116b、両側面116c、116dおよび後壁116eからなる箱型の箱部116と、箱部116の少なくとも底面および両側面の縁より外側に張り出す張出部118とを備え、箱部116よりも強度の高い肉厚部材で形成され、箱部116と張出部118との境界で外側に折り返されることにより、箱部116の底面116bの少なくとも一部から張出部118の先端まで連続する底部材122を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶から石炭や鉱石等の粒状物を荷揚げする連続式アンローダのバケットおよびそのバケット改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾などで、船舶から石炭や鉱石等の粒状物を荷揚げするために、連続式アンローダが利用されている。連続式アンローダは、その先端部に、上下移動および旋回移動可能なバケットエレベータを備えている。バケットエレベータには、スプロケットに噛み合う環状無端のバケットチェーンに複数のバケットが連結されている。
【0003】
粒状物の荷揚げに際しては、上記バケットエレベータを船倉内に降ろす。バケットエレベータは、下方の位置において開口が略水平方向に向くように各バケットを搬送する。一般に、各バケットの底面側および側面側の縁は外側に広がるように形成されている。このため、各バケットは下方の位置において略水平に搬送されているときに、船倉内の粒状物を掻き取って内部に収容することとなる。
【0004】
その一方で、バケットエレベータは、上方の位置において開口が下側に向くように各バケットを反転してこれを周回させる。ここで、各バケットの内部に充填された粒状物が排出され、後続のコンベヤに受け渡されることとなる。上記より、このバケットエレベータを上下移動、旋回移動させながら運転することで、船舶に積載された粒状物をくまなく荷揚げすることが可能である。
【0005】
粒状物を掻き取るために外側に広がった縁は、開口縁であるため強度(曲げ剛性)が弱くて変形しやすく、また粒状物とこすれて摩耗しやすい。これより、本体部分よりも縁部分を肉厚にしたりして、この部分の強度を高くした構成が多く採用されていた(例えば、特許文献1)。その一方で、作業員による点検作業や検知装置によって、変形してしまったバケットを事前に認識して新品のバケットに交換することで、設備トラブルを回避していた(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−137679号公報(特に、第5頁段落0019)
【特許文献2】実用新案登録第3125546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
連続式アンローダのバケットとしては、掻き取りに適した形状であること、容易に変形しないこと、および粒状物に対する耐摩耗性を備えていることが望まれている。また、軽量化され且つ充分な容積を有し、運搬能力を確保できることも要求されている。現状のバケットの多くは、本体部分が5〜6mm程度の薄い鋼板で形成され(以下、この部分を「箱部」と称する)、粒状物を掻き取るために外側に広がった縁が12〜16mm程度の肉厚の鋼板で形成されている(以下、この部分を「張出部」と称する)。これにより、一応の強度と軽量化の両立を図っている。
【0008】
しかしながら、このようなバケットでは、箱部と張出部との間に極端な肉厚差が生じてしまう。これより、バケットエレベータの上下移動および旋回移動の際にかかる荷重、船倉内の底浚い作業中の底面との接触、粒状物掻き取り作業の継続による疲労等を原因として、張出部が内側に折れ曲がる様に変形したり、箱部の底面等が摩耗減肉して亀裂を生じたり、全体的に拉げて(ひしゃげて)歪みを生じたりすることが頻繁に起こっていた。
【0009】
張出部が内側に折れ曲がる様に変形すると、バケットを略水平に移動させても張出部の下面が粒状物を押しのけるばかりでバケット内に粒状物が入らなくなり、掻き取り能力が大幅に低下してしまう。すると、連続式アンローダを稼働させても荷役が進まず、作業効率が極端に低下してしまう。また、この変形の際、張出部の両端が拉げて幅方向に突き出ると、バケットエレベータのケーシングと衝突するおそれがある。バケットエレベータのケーシングとの衝突は、バケットエレベータの緊急停止を引き起こすので、長期荷役停止、設備補修費の増大を招くこととなる。ケーシングとの衝突を避けるために応急処置的に突出した張出部の角のみを溶断して除去することもよく行われるが、この場合には張出部の先端が支えを失ってさらに折れ曲がりやすくなってしまうという問題がある。
【0010】
また、摩耗により箱部の底面等に亀裂を生じると、張出部の内側への折れ曲がり変形が急速に進行し、粒状物を充分に運ぶことができず、運搬能力が低下する。また、全体的にバケットが拉げて歪みを生じると、両側のバケットチェーンの間隙が一定に保てずバケットチェーンがスプロケットから外れたり、バケットチェーン自体が破損するおそれがある。よって、設備損傷により運転不能となり、長期荷役停止、設備補修費の増大を招くこととなる。
【0011】
ここで、箱部や張出部の肉厚を増して、上記のような変形を防ぐことも考えられるが、この場合各バケットの重量が増すため、軽量化を図れず運搬能力に支障をきたすこととなる(駆動用モーターが過負荷となってバケットを回せなくなる)。また、作業員による点検作業や検知装置によって、変形してしまったバケットを事前に認識して新品のバケットに交換するとしても、通常、新品のバケットは納品までに期間(4ヶ月〜6ヶ月)を要する。その上、新品のバケットは、非常に高価なため、コストが嵩む問題がある。
【0012】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされてものであり、重量増加を招くことなく変形や摩耗を防止可能であり、コスト削減に寄与することが可能な連続式アンローダのバケットおよびそのバケット改修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明の代表的な構成は、スプロケットに噛み合うバケットチェーンに連結され、粒状物を掻き取る連続式アンローダのバケットであって、上面、底面、両側面および後壁からなる箱型の箱部と、箱部の少なくとも底面および両側面の縁より外側に張り出す張出部とを備え、箱部よりも強度の高い肉厚部材で形成され、箱部と張出部との境界で外側に折り返されることにより、箱部の底面の少なくとも一部から張出部の先端まで連続する底部材を有することを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、箱部の底面から張出部の先端まで肉厚な底部材が設けられることから、張出部が内側に折れ曲がる様に変形することを防止できる。また、張出部近傍の箱部の底面にこの底部材が備えられることから、この位置にて摩耗減肉して亀裂を生じることを回避できる。これより、新品のバケットに交換する頻度が大幅に少なくなるため、コストの削減を図ることができる。
【0015】
上記張出部は、肉厚部材で形成され円錐台の一部の形状をなす、箱部の底面から側面に亘って配設される角部材を含み、角部材の開口側の縁の曲率半径が、箱部側の縁の曲率半径よりも大きいとよい。
【0016】
かかる構成によれば、角部材の開口側の強度が、箱部側よりも高くなる。角部材の開口側の強度を高くすることで、両端が幅方向に拉げることを抑制でき、バケットエレベータのケーシングと衝突するおそれを低減することが可能となる。また、開口側の強度が高い角部材に、張出部の底面および側面が突き合わせられる(溶接)ことから、全体的にバケットが拉げて歪みを生じることを抑制することができる。よって、バケットチェーンの間隙を一定に保つことができるようになり、バケットチェーンがスプロケットから外れたり、バケットチェーン自体が破損するおそれを低減することができる。
【0017】
上記張出部の側面は、上辺よりも下辺の方が外側に開いており、肉厚部材で形成され箱部側の縁と上辺を含む略三角形の第1側延部材と、肉厚部材で形成され開口側の縁と下辺を含む略三角形の第2側延部材とから構成されるとよい。
【0018】
かかる構成によれば、張出部の側面の下辺が外側に開くこととなるため、粒状物を好適に掻き取ることができる。ここで、第1側延部材および第2側延部材をいずれも略三角形とすることにより、第1側延部材が成す側面の上辺と、第2側延部材が成す側面の下辺の開き角度を異ならせることができる。したがって、側面の上辺の角度にかかわらず、第2側延部材を角部材に円滑に突き当てて接合することができる。また、略三角形の第1側延部材および第2側延部材、平板を折り曲げた底部材、円錐台の一部である角部材とあわせて、いずれも基本形状(プリミティブな形状)の部材とすることができる。したがって、そもそも加工の難しい厚板鋼板であるが、容易に製作することができ、溶接作業も容易となる。また基本形状であるため、積み重ねることもできるので、運搬や保管の際にも場所をとらない。このため、バケットの保守管理が非常に簡便となる。
【0019】
なお、上述した構成では、底部材の寄与を除き箱部の重量が増加することはない。また、元々、張出部は肉厚に形成されていることから、張出部の重量も増加することはない。これより、重量が増加して、駆動用モーターが過負荷になることがなく、また変形や摩耗を防止可能である。
【0020】
上記課題を解決するために本発明の他の代表的な構成は、上面、底面、両側面および後壁からなる箱型の箱部と、この箱部の少なくとも底面および両側面の縁より外側に張り出す張出部とを含む連続式アンローダのバケット改修方法であって、既存の箱部の底面および両側面の縁から張出部を切断するとともに、この箱部の底面の少なくとも一部を切り欠くステップと、切り欠いた底面に、箱部の各面よりも強度が高い肉厚部材からなり、この箱部の縁で外側に折り返される底部材を溶接するステップと、底部材の両隣に、肉厚部材からなり箱部の底面から側面に亘る角部材を溶接するステップと、箱部の側面縁に、肉厚部材からなり張出部の側面の上辺を含む略三角形の第1側延部材を溶接するステップと、第1側延部材と角部材に肉厚部材からなる略三角形の第2側延部材を溶接するステップと、を含むことを特徴とする。
【0021】
かかる構成によれば、変形や摩耗を生じた既存のバケットを、より強固な構造に改修して、再使用することができる。そのため、新品のバケットのように納品までの期間を要することもなく、高額な購入費がかかることもないため、コストの削減を図ることができる。なお、上述した連続式アンローダのバケットの技術的思想に基づく構成要素やその説明は、当該改修方法にも適用可能である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、重量増加を招くことなく変形や摩耗を防止可能であり、コスト削減に寄与することが可能な連続式アンローダのバケットおよびそのバケット改修方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるバケットが適用される連続式アンローダの外観図である。
【図2】図1のバケットエレベータの拡大図である。
【図3】第1実施形態にかかるバケットの構造を示す図である。
【図4】第1実施形態にかかるバケットへの改修手順を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかるバケットの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
[第1実施形態]
(連続式アンローダ)
図1は、本発明の第1実施形態にかかるバケット110が適用される連続式アンローダ100の外観図である。図1に示すように、連続式アンローダ100は、港湾などに設置されており、船舶200から石炭や鉱石等の粒状物204を荷揚げするために利用される。かかる粒状物204の荷揚げは、上下移動および旋回移動可能なバケットエレベータ102を船倉202内に降ろして粒状物204を掻き取り、後続のコンベヤ104に受け渡すことで実施される。
【0026】
図2は、図1のバケットエレベータ102の拡大図である。図2に示すように、バケットエレベータ102には、スプロケット106a、106bに噛み合う環状無端のバケットチェーン108に複数のバケット110(個々のバケットを110a〜110oとして図示する)が連結されている。これらのバケット110は、矢印Rの方向に周回する。
【0027】
バケット110は、箱型の箱部116が本体部分をなし、この箱部116の少なくとも底面および両側面の縁には外側に張り出す張出部118が形成されている。ここでは、箱部116、張出部118を一般的な鋼板で構成しており、例えば箱部116は6mm鋼板、張出部は12〜16mm鋼板で製作している。
【0028】
バケットエレベータ102の下方の位置において、バケット110a〜110fは、開口が略水平方向に向くようにバケットチェーン108に吊下された状態で搬送される。これにより、船倉202内に積載された粒状物204を張出部118が掻き取り、箱部116の内部に収容する。
【0029】
粒状物204を掻き取ったバケット110g〜110iは、開口が上側を向いた状態でバケットエレベータ102のケーシング102a内を通り上方へと搬送される。そして、バケットエレベータ102の上方へと到達すると、開口が下側を向くように反転させられて、コンベヤ104(図1参照)に粒状物204を受け渡す。
【0030】
粒状物204を受け渡したバケット110j〜110oは、バケットエレベータ102の下方の位置まで、反転したまま搬送される。そして、この後、再び開口が略水平方向に向くようにバケットチェーン108に吊下されて、上記過程を繰り返す。
【0031】
上記のバケット110は、バケットエレベータ102の上下移動および旋回移動に際して大きな荷重を受ける。また、特に、バケットエレベータ102の下方の位置にあるバケット110a〜110fは、船倉202内の底浚い作業中に船底と接触したり、波によってタンカーが上下移動することにより突き上げを受けたり、粒状物204掻き取り作業の継続によって摩耗したりする。これらを原因として、バケット110は、変形や亀裂を生じやすい。これに対し、本実施形態ではバケット110を下記の構造とすることにより、重量増加を招くことなく高い耐久性を得ている。
【0032】
(バケットの構造)
図3は、第1実施形態にかかるバケット110の構造を示す図である。特に、図3(a)がバケット110の斜視図であり、図3(b)がバケット110の正面図である。図3(a)および(b)に示すように、上述した通りバケット110は、箱部116と張出部118とから構成される。箱部116は、上面116a、底面116b、側面116c、116dおよび後壁116eから構成される。
【0033】
本実施形態のバケット110には、底面116bと張出部118との境界で外側に折り返され(山折り)、底面116bの一部から張出部118の先端まで連続する底部材122が配設されている。すなわち、底部材122は、箱部116の底面116bの一部でもあり、張出部118の一部でもある。底部材122は、箱部116の各面を構成する鋼板よりも肉厚(例えば、12mm鋼板)に構築される。
【0034】
上記底部材122によって、バケット110の底面側において張出部118と箱部116との境界に肉厚差が生じなくなる。また、底部材122が箱部116より肉厚であること、および底部材122が箱部116と張出部118の境界で折れ曲がっていることから、底部材122の剛性が高くなっている。これより、箱部116の張出部118近傍で張出部118が内側に折れ曲がる様に変形することを防止できる。
【0035】
また、張出部118近傍の箱部116の底面116bに底部材122が備えられることから、この位置にて摩耗減肉して亀裂を生じることを回避できる。なお、底面116bの一部として、底部材122が10cm以上侵出している場合に特に好適な効果を奏することが可能である。
【0036】
張出部118の側面は、上辺よりも下辺の方が外側に開いており、上記底部材122と併せて粒状物を好適に掻き取ることができる形状になっている。本実施形態では、張出部118の側面は、箱部116側の縁と上辺を含む第1側延部材126a、126bと、開口側の縁と下辺を含む第2側延部材128a、128bとから構成される。第1側延部材126a、126b、第2側延部材128a、128bは、箱部116の各面を構成する鋼板よりも肉厚に構築される(底部材122と同じ厚みでよく、例えば12mmとすることができる)。
【0037】
第1側延部材126a、126bは細長い略直角三角形であって、第2側延部材128a、128bは細長い略二等辺三角形である。箱部116の縁に、直角部を上にして第1側延部材126a、126bを接合し、その斜辺に第2側延部材128a、128bを二等辺の先端を上にして接合することで、張出部118の側面が構成される。
【0038】
張出部118の下部の左右の角には、それぞれ円錐台の一部の形状をなす角部材132a、132bが配設される。角部材132a、132bは、箱部116の底面116bから側面116cまたは側面116dに亘って配設され、底部材122と第2側延部材128aまたは第2側延部材128bとを接続する役割を担っている。角部材132a、132bは、箱部122の各面を構成する鋼板よりも肉厚に構築される(底部材122と同じ厚みでよく、例えば12mmとすることができる)。
【0039】
角部材132a、132bは、開口側の縁の曲率半径が、箱部116側の縁の曲率半径よりも大きく設定される。具体例としては、角部材132a、132bの開口側の曲率半径を195mm、箱部116側の曲率半径を120mmとすることができる。一般に、荷重に対する曲げ剛性は、平面よりも、荷重を受ける側に凸となる曲面の方が強い。したがって、張出部118が受ける荷重の方向を考慮した場合、角部材132a、132bの曲率を小さく(曲率半径を大きく)したほうが張出部118の変形に強くなる。そのため、上記のような形状とすることで角部材132a、132bの開口側の強度を確保することができる。これより、両端が幅方向に拉げることを抑制でき、バケットエレベータ102のケーシング102aと衝突するおそれを低減することが可能となる。
【0040】
ここで、第1側延部材126a、126bおよび第2側延部材128a、128bをいずれも略三角形とすることにより、第1側延部材126a、126bが成す側面の上辺と、第2側延部材128a、128bが成す側面の下辺の開き角度を異ならせることができる。したがって、側面の上辺の角度にかかわらず、第2側延部材128a、128bを角部材132a、132bに円滑に突き当てて接合することができる。このように底部材122、第1側延部材126a、126b、第2側延部材128a、128bが、開口側の強度が高い角部材132a、132bに突き当てられることとなるので、全体的にバケットが拉げて歪みを生じることを抑制できる。よって、バケットチェーン108の間隙を一定に保てるようになり、バケットチェーン108がスプロケット106a、106bから外れたり、バケットチェーン108自体が破損するおそれを低減することができる。
【0041】
なお、側面116cと第1側延部材126aの間、側面116dと第1側延部材126bの間、底面116bと底部材122との間にはそれぞれ肉厚の違いによる段差が生じるが、この段差の軌跡はクランク状になり、連続していない。そのため、本実施形態のバケット110の構造によれば、この境界近傍を境に折れ曲がることも抑制できる。
【0042】
上記のバケット110の構造は、新しく作成した物の耐久性が高いばかりでなく、既存のバケット110の保守にも適している。バケット110のなかで、使用により特に摩耗または損傷しやすい箇所は張出部118である。そして上記構成によれば、交換すべき張出部118の部材が、平板(鋼板)を折り曲げて形成された底部材122、略三角形の第1側延部材126a、126b、第2側延部材128a、128b、および円錐台の一部をなす角部材132a、132bの基本形状(プリミティブな形状)の7枚の部材によって形成されている。これらの7枚の部材をいずれもプリミティブな形状とすることで、加工が難しい肉厚な鋼板であっても、容易に交換用の部材を製作することができ、溶接作業も容易である。また、基本形状であるため、積み重ねることもできるので、運搬や保管の際にも場所をとらない。
【0043】
また、既製品(従来構造のバケット)を上記構造に改修することも可能である。従来構造とは、張出部118が1枚の肉厚の鋼板を曲げて形成されているような構造の物をさす。この場合において、上記の7枚の部材を肉厚(例えば12mm)に構築しても、元々従来構造のバケットでも張出部118は肉厚(例えば12〜16mm)に形成されていることから、バケット110の重量増加を最小限または現状と同程度に留めることができる。よって、設備全体の重量バランスを維持することができるため、バケットエレベータ102の駆動用モーターの駆動動力低減を図ることが可能である。
【0044】
なお、本実施形態では、バケット110が全て鋼板製であり、ステンレスや樹脂等の非磁性体を一切使用していない。各バケット110を鋼板で形成することで、万が一、バケット110がバケットエレベータ102のケーシング102a等と接触して破損し、その断片が混入しても異物として電磁石などによって除去可能である。これにより、後工程の破砕機(クラッシャー)や粉砕器(ミル)、コンベアベルト等を傷つけることを防止することができる。
【0045】
(改修方法)
図4は、第1実施形態にかかるバケット110への改修手順を示す図である。まず、図4(a)に示すように、作業員の点検作業や検知装置によって、変形や亀裂を生じたバケット114を見つけ、バケットエレベータ102から取り外す。
【0046】
次に、図4(b)に示すように、このバケット114の箱部116の底面116bおよび側面116c、116dの縁から変形した張出部118を切断するとともに、箱部116の底面116bの少なくとも一部(10cm以上)を切り欠く。摩耗等で底面116bに亀裂が存在する場合には、亀裂部分を含めて切り欠くようにする。
【0047】
次に、図4(c)に示すように、半自動溶接機(不図示)を用いて、上記の切断した部分、切り欠いた部分に底部材122、第1側延部材126a、126b、第2側延部材128a、128b、角部材132a、132bを溶接する。
【0048】
なお、図4(d)に示すように、付加的にバケット114の溶接部分にアルミニウムを含有する錆止め材136を吹き付けてもよい。これにより、本実施形態にかかるバケット110への改修作業が完了する。
【0049】
上述した改修方法によれば、変形や摩耗を生じた既存のバケット114を容易に改修して、再使用することができる。そのため、新品のバケットを発注する頻度が大幅に少なくなるため、納品までの待ち期間を削減し、大幅なコストの削減を図ることができる。
【0050】
なお、上記では、張出部118の底面から側面にかけて切断し、底部材122、第1側延部材126a、126b、第2側延部材128a、128b、角部材132a、132bを溶接する場合について説明したが、当該改修方法がこれに限定される訳ではない。局所的に変形、摩耗したバケット114を改修する場合には、対象となる部分だけを切断し、その部分に対応する部材のみを溶接することも可能である。
【0051】
[第2実施形態]
(バケットの構造)
図5は、本発明の第2実施形態にかかるバケット112の構造を示す図である。特に、図5(a)がバケット112の斜視図であり、図5(b)がバケット112の正面図である。図5(a)および(b)に示すように、第2実施形態にかかるバケット112は、図3に示した第1側延部材126a、126b、第2側延部材128a、128bに代えて、矩形側延部材130a、130bを採用している。また同様に、図3に示した湾曲した角部材132a、132bに代えて、平板状の角部材134a、134bを採用している。すなわちバケット112は、バケット110と比較すると、開口縁が末広がりになっていない。
【0052】
矩形側延部材130a、130bは、箱部116の各面を構成する鋼板よりも肉厚に構築される。そして、上辺が張出部120の上部の角に接続され、下辺が張出部120の下部の角部材134a、134bに接続され、張出部120の側面を構成する。
【0053】
張出部120の下部に配設された角部材134a、134bは、略台形の平板状である。このような平板状の角部材134a、134bであっても、ある程度の強度を確保することができる。かかる角部材134a、134bも、箱部122の各面を構成する鋼板よりも肉厚に構築される。
【0054】
上述した構成によれば、5枚のプリミティブな形状の部材で、強固なバケット112が実現される。特に、湾曲した角部材132a、132bに代えて平板状の角部材134a、134bを採用したため、第1実施形態よりも製作、溶接作業を容易に行うことができる。故に、さらに簡便にバケットの保守管理を行うことができる。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明した。上記実施形態によれば、変形や亀裂の発生を抑え、長期荷役停止や設備補修費の増大等を招くおそれを低減可能なバケット110、112を提供することができる。なお、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、船舶から石炭や鉱石等の粒状物を荷揚げする連続式アンローダのバケットおよびそのバケット改修方法に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
100…連続式アンローダ、102…バケットエレベータ、102a…ケーシング、104…コンベヤ、106a、106b…スプロケット、108…バケットチェーン、110(110a〜110o)、112…バケット、114…変形、摩耗したバケット、116…箱部、116a…上面、116b…底面、116c、116d…側面、116e…後壁、118、120…張出部、122…底部材、126a、126b…第1側延部材、128a、128b…第2側延部材、130a、130b…矩形側延部材、132a、132b、134a、134b…角部材、136…錆止め材、200…船舶、202…船倉、204…粒状物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプロケットに噛み合うバケットチェーンに連結され、粒状物を掻き取る連続式アンローダのバケットであって、
上面、底面、両側面および後壁からなる箱型の箱部と、
前記箱部の少なくとも底面および両側面の縁より外側に張り出す張出部と、
を備え、
前記箱部よりも強度の高い肉厚部材で形成され、前記箱部と張出部との境界で外側に折り返されることにより、前記箱部の底面の少なくとも一部から前記張出部の先端まで連続する底部材を有することを特徴とする連続式アンローダのバケット。
【請求項2】
前記張出部は、前記肉厚部材で形成され円錐台の一部の形状をなす、前記箱部の底面から側面に亘って配設される角部材を含み、
前記角部材の開口側の縁の曲率半径が、前記箱部側の縁の曲率半径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の連続式アンローダのバケット。
【請求項3】
前記張出部の側面は、上辺よりも下辺の方が外側に開いており、
前記肉厚部材で形成され、前記箱部側の縁と上辺を含む略三角形の第1側延部材と、
前記肉厚部材で形成され、開口側の縁と下辺を含む略三角形の第2側延部材とから構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連続式アンローダのバケット。
【請求項4】
上面、底面、両側面および後壁からなる箱型の箱部と、該箱部の少なくとも底面および両側面の縁より外側に張り出す張出部とを含む連続式アンローダのバケット改修方法であって、
既存の箱部の底面および両側面の縁から前記張出部を切断するとともに、該箱部の底面の少なくとも一部を切り欠くステップと、
前記切り欠いた底面に、前記箱部の各面よりも強度が高い肉厚部材からなり、該箱部の縁で外側に折り返される底部材を溶接するステップと、
前記底部材の両隣に、前記肉厚部材からなり前記箱部の底面から側面に亘る角部材を溶接するステップと、
前記箱部の側面縁に、前記肉厚部材からなり前記張出部の側面の上辺を含む略三角形の第1側延部材を溶接するステップと、
前記第1側延部材と前記角部材に前記肉厚部材からなる略三角形の第2側延部材を溶接するステップと、
を含むことを特徴とする連続式アンローダのバケット改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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