説明

連続脱気脱泡装置

【課題】取り出し管との剪断による細かい気泡の発生を防止するとともに、液取り出し管の先端が液中に埋没するような構造をなくし、洗浄等のメンテナンスを容易にすることができる連続脱気脱泡装置を提供すること。
【解決手段】回転円筒1の内側に液溜まりとなる少なくとも1本の環状溝2を形成するとともに、回転円筒1と共に回転する円盤3を周縁部が環状溝2に没するように設け、環状溝2の最上部の側壁21を最下部の側壁22より高く形成し、最上部側壁21の内側に円盤3上に液Aを供給する液供給部4を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液中から気体成分を除去する連続脱気脱泡装置に関し、特に、取り出し管との剪断による細かい気泡の発生を防止するとともに、液取り出し管の先端が液中に埋没するような構造をなくし、洗浄等のメンテナンスを容易にすることができる連続脱気脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高粘度の中に含まれている小さな気泡を脱泡するには長い時間が必要で、大体において、一晩の放置により脱泡していることが多い。
また、短い時間で脱泡しようとする場合はバッチ式の脱泡装置が用いられるが、連続式の大量処理を目指した効率のよい脱泡装置が求められている。
【0003】
連続処理の場合は、真空缶の中で液を回転させ、遠心力にて脱泡する装置があり、例えば、下記の特許文献1に開示される連続脱気脱泡装置が知られている。
この連続脱気脱泡装置は、真空缶の中ある回転体に連続的に液を注入し、液に遠心力をかけることにより脱泡するとともに、回転している液をその内側から取り出し管を通じて取り出す構造となっている。
【0004】
しかしながら、この従来の連続脱気脱泡装置においては、液の取り出し口が高速で回転する液と接触する形となり、剪断を与えることから液に細かい気泡を発生させるという問題がある。
また、食品の製造においては、取り出し管はその先端が液の中に埋没していることになり、その管の先端部が洗浄できないという問題があった。
【特許文献1】特開2000−246008号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の連続脱気脱泡装置が有する問題点に鑑み、取り出し管との剪断による細かい気泡の発生を防止するとともに、液取り出し管の先端が液中に埋没するような構造をなくし、洗浄等のメンテナンスを容易にすることができる連続脱気脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の連続脱気脱泡装置は、回転体に連続的に液を注入し、液に遠心力をかけることにより脱泡する連続脱気脱泡装置において、回転円筒の内側に液溜まりとなる少なくとも1本の環状溝を形成するとともに、該回転円筒と共に回転する円盤を周縁部が環状溝に没するように設け、環状溝の最上部の側壁を最下部の側壁より高く形成し、該最上部側壁の内側に円盤上に液を供給する液供給部を設けたことを特徴とする。
【0007】
この場合において、1本の環状溝に複数の円盤を設けることができる。
【0008】
また、環状溝の最下部の側壁から逆漏斗状の回転ガイドを延設することができる。
【0009】
また、環状溝の最下部の側壁の下に、固定側として逆漏斗状の液受けガイドを設置することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の連続脱気脱泡装置によれば、回転体に連続的に液を注入し、液に遠心力をかけることにより脱泡する連続脱気脱泡装置において、回転円筒の内側に液溜まりとなる少なくとも1本の環状溝を形成するとともに、該回転円筒と共に回転する円盤を周縁部が環状溝に没するように設け、環状溝の最上部の側壁を最下部の側壁より高く形成し、該最上部側壁の内側に円盤上に液を供給する液供給部を設けることから、液供給部から供給した液を遠心力により環状溝に移動させ、この環状溝の円盤より上で遠心力による脱泡を行うとともに、円盤を堰板として脱泡された液だけをくぐらせ、最下部の側壁の内側から剪断を与えることなく自然に流下させることができる。
これにより、従来のような取り出し管の剪断による細かい気泡の発生を防止するとともに、取り出し管の先端が液中に埋没するような構造をなくし、洗浄等のメンテナンスを容易にすることができる。
この場合、回転円筒に環状溝と円盤を複数設けることにより、液の脱泡を段階的に連続して行うことができる。
【0011】
また、1本の環状溝に複数の円盤を設けることにより、液の脱泡を段階的に細密に行うことができる。
【0012】
また、環状溝の最下部の側壁から逆漏斗状の回転ガイドを延設することにより、遠心力が付与された状態で流下する脱泡後の液を放射状に案内して円滑に流下させることができる。
【0013】
また、環状溝の最下部の側壁の下に、固定側として逆漏斗状の液受けガイドを設置することにより、遠心力が付与された状態で流下する脱泡後の液を放射状に案内して円滑に流下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の連続脱気脱泡装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に、本発明の連続脱気脱泡装置の一実施例を示す。
この連続脱気脱泡装置は、回転体に連続的に液を注入し、液Aに遠心力をかけることにより脱泡するもので、回転円筒1の内側に液溜まりとなる少なくとも1本の環状溝2を形成するとともに、該回転円筒1と共に回転する円盤3を周縁部が環状溝2に没するように設け、環状溝2の最上部の側壁21を最下部の側壁22より高く形成し、該最上部側壁21の内側に円盤3上に液Aを供給する液供給部4を設けている。
【0016】
回転円筒1は、固定側として設置された真空缶5の内部に配設されており、真空缶5を上から貫通する回転軸6に前記円盤3を介して接続されている。
真空缶5は真空ポンプ(図示省略)に接続されており、内部を真空状態にすることにより、遠心力で液Aから分離された泡Bを破砕し消滅させる。
また、真空缶5の内部には、回転円筒1を取り囲むように中間筒7が固設されており、該中間筒7の下部は内側に折り返されて、回転円筒1の下に下向きに広がる逆漏斗状の液受けガイド71を形成している。
【0017】
また、回転円筒1の内側には、図2にも示すように、回転時に液溜まりとなる1又は2本の環状溝2が形成されており、各環状溝2には、回転円筒1と同軸の円盤3がその周縁部を環状溝2の液溜まりに没するように設けられている。
環状溝2の最下部の側壁22からは、下向きに広がる逆漏斗状の回転ガイド23が延設されており、この回転ガイド23の外側には前記した中間筒7の液受けガイド71が配設されている。
【0018】
円盤3は回転軸6に直接固定されるとともに、連結部材31を介して回転円筒1を回転軸6に連結しており、円盤3と回転円筒1はモータ(図示省略)により高速で一体に回転する。
また、図3に示すように、円盤3を1本の環状溝2に複数設けることも可能であり、これにより、液Aの脱泡を段階的に細密に行うことができる。
なお、円盤3の回転軸6付近には、円盤3の上でも連通して真空が保たれるように通気口(図示省略)が設けられている。
【0019】
次に、本実施例の連続脱気脱泡装置の作用を説明する。
高速で回転する回転円筒1に対し、処理液Aは環状溝2の最上部側壁21の内側から円盤3上に供給される。
供給された液Aは遠心力により円盤3上を薄膜状で外側に移動し、環状溝2内で遠心力により脱泡され、脱泡された液Aは外側に、泡Bは内側に分離する。
環状溝2の液Aは高速で回転しており、図1〜図3に示すように、環状溝2の中央に設けられた円盤3を埋没させた形の液面を形成する。
これにより、液面の内側に浮かび上がる泡Bは、堰板となる円盤3をくぐることなくその位置にとどまり、真空缶5の真空により破砕され消滅する。
一方、脱泡後の液Aは円盤3の外側をくぐって下へと移動し、回転円筒1よりオーバーフローし、固定側の液受けガイド71に到達し、その後重力により落下していく。
【0020】
この場合、図2に示すように、回転円筒1に環状溝2と円盤3を複数設けた場合は、このような液の脱泡が段階的に連続して行われる。
【0021】
また、図3に示すように、1本の環状溝2に複数の円盤3を設けた場合は、1枚目の円盤3をくぐった液Aは、2枚目の円盤3との間でさらに脱泡される。
そして、脱泡後の液Aは2枚目の円盤3をくぐってさらに下へと移動し、液面の内側に浮かび上がる泡Bは、円盤3をくぐることなく真空缶5の真空により破砕され消滅する。
【0022】
[実験例1]
食品添加物CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニチリン化学工業株式会社キッコレートF−120)を攪拌機付きのタンクにて水に溶解し、原料液を得た。
この原料液をポンプで本実施例の連続脱気脱泡装置に導入し、連続脱気脱泡装置より排出された脱泡後のサンプルを得た。
原料液のサンプル及び脱泡した液のサンプルを、デシケーターにて真空下に置き、体積膨張を計測して脱気率を得た。
その結果を下記表1に示す。
なお、脱気率は、次のように計算した。
脱気率%=(原料の膨張体積−脱泡後の膨張体積)÷原料の膨張体積×100
【0023】
【表1】

【0024】
かくして、本実施例の連続脱気脱泡装置は、回転体に連続的に液Aを注入し、液Aに遠心力をかけることにより脱泡する連続脱気脱泡装置において、回転円筒1の内側に液溜まりとなる少なくとも1本の環状溝2を形成するとともに、該回転円筒1と共に回転する円盤3を周縁部が環状溝2に没するように設け、環状溝2の最上部の側壁21を最下部の側壁22より高く形成し、該最上部側壁21の内側に円盤3上に液Aを供給する液供給部4を設けることから、液供給部4から供給した液Aを遠心力により環状溝2に移動させ、この環状溝2の円盤3より上で遠心力による脱泡を行うとともに、円盤3を堰板として脱泡された液Aだけをくぐらせ、最下部の側壁22の内側から剪断を与えることなく自然に流下させることができる。
これにより、従来のような取り出し管の剪断による細かい気泡の発生を防止するとともに、取り出し管の先端が液中に埋没するような構造をなくし、洗浄等のメンテナンスを容易にすることができる。
この場合、図2に示すように、回転円筒1に環状溝2と円盤3を複数設けることにより、液Aの脱泡を段階的に連続して行うことができる。
【0025】
また、図3に示すように、1本の環状溝2に複数の円盤3を設けることにより、液Aの脱泡を段階的に細密に行うことができる。
【0026】
また、環状溝2の最下部の側壁22から逆漏斗状の回転ガイド23を延設することにより、遠心力が付与された状態で流下する脱泡後の液Aを放射状に案内して円滑に流下させることができる。
また、環状溝2の最下部の側壁22の下に、固定側として逆漏斗状の液受けガイド71を設置することにより、遠心力が付与された状態で流下する脱泡後の液Aを放射状に案内して円滑に流下させることができる。
【0027】
以上、本発明の連続脱気脱泡装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の連続脱気脱泡装置は、取り出し管との剪断による細かい気泡の発生を防止するとともに、液取り出し管の先端が液中に埋没するような構造をなくし、洗浄等のメンテナンスを容易にするという特性を有していることから、例えば、食品工業や薬品工業、化学工業における粘度品の脱泡の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の連続脱気脱泡装置の第1実施例を示す断面図である。
【図2】同第2実施例を示す断面図である。
【図3】同第3実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 回転円筒
2 環状溝
21 最上部側壁
22 最下部側壁
23 回転ガイド
3 円盤
31 連結部材
4 液供給部
5 真空缶
6 回転軸
7 中間筒
71 液受けガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体に連続的に液を注入し、液に遠心力をかけることにより脱泡する連続脱気脱泡装置において、回転円筒の内側に液溜まりとなる少なくとも1本の環状溝を形成するとともに、該回転円筒と共に回転する円盤を周縁部が環状溝に没するように設け、環状溝の最上部の側壁を最下部の側壁より高く形成し、該最上部側壁の内側に円盤上に液を供給する液供給部を設けたことを特徴とする連続脱気脱泡装置。
【請求項2】
1本の環状溝に複数の円盤を設けたことを特徴とする請求項1記載の連続脱気脱泡装置。
【請求項3】
環状溝の最下部の側壁から逆漏斗状の回転ガイドを延設したことを特徴とする請求項1又は2記載の連続脱気脱泡装置。
【請求項4】
環状溝の最下部の側壁の下に、固定側として逆漏斗状の液受けガイドを設置したことを特徴とする請求項1、2又は3記載の連続脱気脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−284451(P2008−284451A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131494(P2007−131494)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【Fターム(参考)】