説明

連続脱泡装置

【課題】排気孔や装置天井部への分散液の固着を改善し長時間運転においても脱泡性能が低下せず、かつ分散液内への固形異物の混入が改善された連続脱泡装置を提供する。
【解決手段】回転体の遠心力を用いて各種気泡含有液体を減圧容器内壁に衝突させることによって液体を脱泡する連続脱泡装置であって、排気孔を複数有し、かつ減圧容器の内径に対する個々の排気孔の内径が7.0〜12.0%である連続脱泡装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気泡含有液体、特に分散液中に混入している気泡を取り除く連続脱泡装置に関する。詳しくは、真空又は減圧された容器内で、気泡含有液体中の気泡を連続的にかつ高精度に破砕消去する連続脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の液体、特に各種の分散液およびサスペンジョン(以下分散液と表記する)は種々の産業界、例えば製紙業界、塗料業界、ゴム業界等で幅広く用いられているが、分散液はその特性上、気泡を巻き込み易い。分散液中に分散されている気泡は様々なトラブルの原因になっている。例えば、圧送分散液中に含まれる気泡は、ポンプやシステム部品のキャビテーション・エロージョン等の原因となる。また、印刷用紙や情報記録用紙に使用される塗工用分散液中に含まれる気泡は、塗工むら、塗工液のスキップの原因にもなっている。一方、これら分散液は、その製造工程において移送、攪拌工程などが必ずあり、この工程で気体を巻き込んでしまう。この気体は、分散液が低粘度の場合浮上し破泡するが、中高粘度では浮上が難しく分散液中に残存してしまい、上述の如きトラブルの原因となる。
【0003】
分散液中の気泡を高精度に連続脱泡する方法として、真空の容器内で回転する有底のふるい体(円筒状スクリーンを有するふるい体)を用いる方法が提案されており、その装置の例として特公平2−12121号公報(特許文献1)に一つの提案がなされている。また、回転するふるい体によって発生する高い剪断力によるエマルジョンの凝集、およびふるい体固定板に対する分散液の固着を回避するために、開口面積がそれぞれ異なる細孔を形成した複数の円筒状スクリーンを利用したふるい体を用いる方法が提案されており、その装置の例として特開平7−144104号公報(特許文献2)に一つの提案がなされている。
【0004】
しかしこれらの方法は、容器内にて遠心力を用いて分散液を容器内壁に衝突させるというその機構上、衝突時に分散液のミストが発生する。容器内は真空となるよう排気されているため、高濃度の分散液を用いた長時間運転時には、排気によって吸引されたミストが排気口周辺に固着して排気口の閉塞を招き、結果として脱泡能力の著しい低下を招く。また、排気口の閉塞を招かないまでも、排気風によって容器上部にミストが舞い上がり、容器天井部に固着しそれらが剥離することによって、分散液中に固形異物が混入する。これらの固着物を完全に除去するためには、付着物を溶解する溶媒による化学的洗浄、ないしは高圧水流等を用いた機械的洗浄が必要であるが、洗浄のためには装置の運転を停止せねばならない。
【0005】
以上のように、分散液脱泡時において排気口および天井部にミスト由来の固着物が付着しにくく、長時間の連続運転においても安定した脱泡性能を発揮する回転体を用いた連続脱泡装置は未だ開発されておらず、それに対する要望は非常に大きなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平2−12121号公報
【特許文献2】特開平7−144104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、各種気泡含有液体、特に高濃度の分散液を脱泡する際に、排気孔や装置天井部への分散液の固着を改善し、長時間運転においても脱泡性能が低下せず、かつ分散液内への固形異物の混入が改善された連続脱泡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の発明により基本的に解決される。
(1)回転体の遠心力を用いて各種気泡含有液体を減圧容器内壁に衝突させることによって液体を脱泡する連続脱泡装置であって、排気孔を複数有し、かつ減圧容器の内径に対する個々の排気孔の内径が7.0〜12.0%である連続脱泡装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、排気孔や装置天井部への分散液の固着を改善し、長時間運転においても脱泡性能が低下せず、かつ分散液内への固形異物の混入が改善された連続脱泡装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の連続脱泡装置の一例を示す概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図1を用いて本発明を詳細に説明する。図1は本発明の連続脱泡装置の一例を示す概略断面図である。
【0012】
図1において、排気孔1には図示しない真空ポンプが接続されており、真空ポンプにより減圧容器5内部が減圧される。気泡含有液体は供給孔2より減圧容器5内部に供給され、回転体天板3と回転体底板4からなる回転体9の中心部付近(主軸7付近)へ投入される。主軸7および回転体底板4はモーター6の駆動により回転し、回転体9の回転に伴って発生する遠心力により投入された気泡含有液体が加速され、回転体9内を中心部から遠心部へ向かって移動し、回転体9の排出口8から噴出して減圧容器5の内壁に衝突して流下し、最終的に減圧容器5内の下方に蓄積される。これにより高精度の脱泡が実現される。
【0013】
図1において排気孔1は2カ所に設けられている。またこの排気孔1の個々の内径は減圧容器の内径に対して7.0〜12.0%である。このような内径の排気孔1を複数個設けることにより、排気風速を低減させ、排気孔1の周辺や、減圧容器5の天井部への分散液の固着を改善し、長時間運転においても脱泡性能が低下せず、かつ分散液内への固形異物の混入の少ない連続脱泡装置を提供することが可能となる。上記範囲を下回った場合、排気風速の上昇により、減圧容器5に分散液が衝突することによって発生したミストが、排気孔1に吸引され、排気孔1付近に固着しやすくなる。その結果として排気孔1の閉塞が発生し、減圧容器5内の内圧が上昇し始めるため長時間運転が困難となる。また、ミストが排気孔1の方向に吸引され、固着することによって、減圧容器5の天井部内壁に多くの固形異物が付着し、処理後の液体に固形異物が混入する。また上記範囲を上回った場合、減圧効率が著しく低下し、効率的な脱泡を行うことが困難となるとともに、排気開始時の運転圧まで減圧するための時間の延長を招き、その結果連続脱泡装置のダウンタイム延長を招く。図1では排気孔1は2カ所であるが、更に3カ所等としても良いが、排気経路の複雑化による減圧効率の低下を招くため、2カ所が好ましい。
【0014】
なお図1では、供給孔2から気泡含有液体が回転体9内を中心部から遠心部へ向かって移動し、回転体9の排出口8から噴出して減圧容器5の内壁に衝突して流下する機構により脱泡する装置を示したが、特公平2−12121号公報に記載される減圧容器内で回転する有底のふるい体(円筒状スクリーンを有するふるい体)を用いる装置や、特開平7−144104号公報に記載される、開口面積がそれぞれ異なる細孔を形成した複数の円筒状スクリーンを利用したふるい体を用いる装置においても本発明は有効である。
【実施例】
【0015】
(実施例1)
気泡含有液体として炭酸カルシウム40質量%分散液を用い、図1に示した連続脱泡装置にて脱泡した。減圧容器5の内径は1650mmであり、減圧容器5の上部に設けられた2カ所の排気孔1の内径はそれぞれ150mm(減圧容器5の内径に対する個々の排気孔1の内径が9.1%)である。これら2系統の排気孔1に図示しない真空ポンプを接続し、排気することで10mmHgまで減圧し、供給孔2より1500L/hrの流量で炭酸カルシウム40質量%分散液を供給し、2週間連続運転を行った。運転後の減圧容器5の天井部内壁に付着したカスの厚みは21mmであった。また脱泡処理後の炭酸カルシウム40質量%分散液中には固形異物の混入は認められなかった。
【0016】
(比較例1)
気泡含有液体として炭酸カルシウム40質量%分散液を用い、実施例1の減圧容器5の上部に設けられた2カ所の排気孔を1カ所に変更し、また排気孔1の内径を80mm(減圧容器5の内径に対する排気孔1の内径が4.8%)に変更し、1系統の排気孔1に図示しない真空ポンプを接続し、排気することで10mmHgまで減圧し、液供給孔2より1500L/hrの流量で炭酸カルシウム40質量%分散液を供給し、1週間連続運転を行った。6日目にて排気孔1の閉塞が発生し、減圧容器5内の内圧が上昇を始めた。運転後の減圧容器5の天井部内壁に付着したカスの厚みは380mmであった。また脱泡処理後の炭酸カルシウム40質量%分散液中には固形異物の混入が認められた。
【0017】
以上の結果から本発明の連続脱泡装置により、排気孔や装置天井部への分散液の固着が改善され、長時間運転においても脱泡性能が低下せず、かつ分散液内への固形異物の混入が改善されることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0018】
製紙、化学、塗料分野等幅広い産業分野においての利用が期待できる。
【符号の説明】
【0019】
1 排気孔
2 供給孔
3 回転体天板
4 回転体底板
5 減圧容器
6 モーター
7 主軸
8 排出口
9 回転体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体の遠心力を用いて各種気泡含有液体を減圧容器内壁に衝突させることによって液体を脱泡する連続脱泡装置であって、排気孔を複数有し、かつ減圧容器の内径に対する個々の排気孔の内径が7.0〜12.0%である連続脱泡装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−206673(P2011−206673A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76772(P2010−76772)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】