説明

連続酸洗装置

【課題】 酸洗効果を高めることができ、酸洗液に浸漬された鋼帯を引き上げる場合には昇降装置を必要とせず、随伴流を遮断するための遮断装置を退避させることができる連続酸洗装置を提供する。
【解決手段】 走行する鋼帯6を連続的に酸液中に浸漬するための酸洗槽2と、鋼帯6の搬送路に沿って酸洗槽2に配設され鋼帯6の走行に伴って生じる随伴流を遮断する遮断装置14とを有する連続酸洗装置において、上記遮断装置14が、酸洗槽2の上方に配置された回転軸14bから槽前側および槽後側に向けてそれぞれ延設され回転軸を中点として揺動する天秤式のアーム14c,14kと、アームの一方端部に設けられ随伴流を遮断するための遮断部14dと、アームの他方端部に設けられ遮断部14dが鋼帯6に向けて緩慢に下降するようにアームのバランスを調整するウエイト14pと、遮断部14dが酸液中に浸漬した状態で鋼帯6の近傍に停止するようにアームの揺動限界を規制する規制部14sとを備えてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する鋼帯を連続的に酸洗いし鋼帯表面の酸化物を溶解除去する連続酸洗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼帯を連続的に酸洗する酸洗装置として、図9に示すようなカテナリー式酸洗装置が一般的に知られている。
【0003】
この種の酸洗装置は、酸洗槽本体60内に酸洗液61が貯留されており、酸洗槽本体60に搬送されてきた鋼帯62は、入口側のヘルパロール63とシンクロール64に案内されて酸洗液中に浸漬され、酸洗液中を走行する際に鋼帯62表面の酸化物が溶解除去されるようになっている。
【0004】
酸化物が除去された鋼帯62は、出口側のシンクロール65とヘルパロール66を通過することによって酸洗液から引き上げられ、絞りロール67を介して次工程の水洗槽68へ送られる。
【0005】
上記カテナリー式酸洗装置に比べ酸洗効率をより高めたものとして、図10に示す酸洗装置も知られている。
【0006】
同図に示す酸洗装置は、酸洗槽本体69の上部をカバーしている槽カバー70から複数のフロート71が吊り下げられ、各フロート71は槽カバー70に搭載されたシリンダ装置72によって昇降可能に構成されている(図10(a)のA−A断面である同図(b)参照)。
【0007】
鋼帯73の走行方向に沿ってその上側にはフロート71に支持された障害物74が配列され、下側には障害物75が配列されている。
【0008】
このような構成からなる酸洗装置では、鋼帯73は入口側のロール76,77によって酸洗液中に案内され、カテナリー曲線状の搬送路に沿ってその酸洗液中を走行するが、鋼帯73の搬送路の上下に障害物74,75が設けられているため、鋼帯73の移動によって生じる随伴流はそれらの障害物74,75によって乱され鋼帯73表面から剥離するようになる。これによって鋼帯73の表面に接触する酸洗液が入れ替わるため、酸洗が効果的に行われる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−176868号公報(図1および図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、後者の酸洗装置では酸洗効果は高まるものの、前者のカテナリー式酸洗装置のように酸浴の上方が開放されておらず障害物74およびフロート71が配置されているため、ラインを一時的に停止させなければならない場合に、それら障害物74およびフロート71を昇降させるシリンダ装置72が必要となり、装置が大掛かりになるという欠点がある。
【0010】
また、槽カバー70、フロート71、障害物74が一体に構成されているため、メンテナンス時に槽カバー70を取り外すことが容易でなく作業性が悪いという問題もある。
【0011】
本発明は以上のような従来の連続酸洗装置における課題を考慮してなされたものであり、カテナリー式酸洗装置に比べて酸洗効果を高めることができ、ライン停止時に鋼帯を酸洗液から引き上げる場合には昇降手段を必要とせずに障害物を退避させることができる連続酸洗装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、走行する鋼帯を連続的に酸液中に浸漬するための酸洗槽と、鋼帯の搬送路に沿って酸洗槽に配設され鋼帯の走行に伴って生じる随伴流を遮断する遮断手段とを有する連続酸洗装置において、上記遮断手段が、酸洗槽の上方に配置された回転軸から槽前側および槽後側に向けてそれぞれ延設され回転軸を中点として揺動する天秤式のアームと、アームの一方端部に設けられ随伴流を遮断するための遮断部と、アームの他方端部に設けられ遮断部が鋼帯に向けて緩慢に下降するようにアームのバランスを調整するウエイトと、遮断部が酸液中に浸漬した状態で鋼帯の近傍に停止するようにアームの揺動限界を規制する規制部とを備えてなる連続酸洗装置である。
【0013】
本発明において、上記鋼帯が酸液液面寄りを走行するように鋼帯下面を支持するロールを備えることが好ましい。それにより、随伴流によって生じる境界層の拡散を液面で抑制することができる。
【0014】
本発明において、上記ロールは酸洗槽内に設置されたロール架台に設けることができる。
【0015】
本発明において、上記遮断部は、鋼帯の幅に対応する長さを有するプレート状部材から構成することができ、平面から見て鋼帯の走行方向と直交する方向に配置することが好ましい。それにより、鋼帯の全幅に亙って効果的に随伴流を遮断することができる。
【0016】
本発明において、上記酸洗槽の上部をカバーする槽カバーを有する場合、この槽カバーに遮断手段の回転軸を設けることができる。
【0017】
本発明において、上記遮断部が設けられているアームを槽カバー内に格納した状態で解除可能に固定するアーム固定手段を設ければ、メンテナンス時等において槽カバーを取り外す場合に、専用の支持台を必要とせず槽カバーを別の場所に載置することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の連続酸洗装置は、鋼帯の走行に伴って生じる随伴流を遮断する遮断手段を備えているためカテナリー式酸洗装置に比べて酸洗効果を高めることができ、その遮断手段は天秤式のアームで構成されているため、鋼帯を酸洗液から一時的に引き上げる場合には特別な昇降装置を必要とせずに鋼帯の引き上げに連動して遮断手段を退避させることができるという長所を有する。
【0019】
また、槽カバーを備えた連続酸洗装置において、その槽カバーを取り外す場合には遮断部が設けられているアームを槽カバー内に格納し保持することができるため、槽カバーを支持する支持台を必要とせずそのまま槽カバーを別の場所に載置することができ、メンテナンス性に優れるという利点がある。
【0020】
また、遮断手段は槽カバーに取り付けることができ、また、ロール架台は酸洗槽内に設置するように構成されているため、本発明は大幅な設計変更をすることなく既存の連続酸洗装置に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る連続酸洗装置の全体構成を示したものであり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0023】
両図において連続酸洗装置(以下、単に酸洗装置と呼ぶ)1は既存のカテナリー式連続酸洗槽に適用したものであり、槽本体2内に酸洗液ALが貯留されている。
【0024】
図1(b)に示すように、槽本体2の入口側と出口側には入口ガイド部3と出口ガイド部4がそれぞれダム状に設けられるとともに、両ガイド部3,4の略中間に中間ガイド部5が設けられ、各ガイド部3〜5は走行する鋼帯6を下側から支持するようになっている。
【0025】
酸洗装置1に搬送される鋼帯6はまず、入口ガイド部3を通過して酸洗液AL内に浸漬され、中間ガイド部5との間で下向きに湾曲した状態で走行し、中間ガイド部5を通過して再び下向きに湾曲した状態で走行し、出口ガイド部4を通過することによって酸洗液ALから引き上げられ、次工程(後段側の別の連続酸洗槽または水洗槽)に搬送される。
【0026】
入口ガイド部3と中間ガイド部5との間にはロール架台7および8が設置され、中間ガイド部5と出口ガイド部4との間には同じくロール架台9が設置されている。
【0027】
各ロール架台7〜9はFRP製の箱体からなり、それぞれ槽本体2内に鋼帯6の走行方向に沿って配置される。また、各ロール架台7〜9の内部には架台固定用のウエイト10を収納することができるようになっている。
【0028】
また、各ロール架台7〜9の上面には、ロール軸受け11を介してロール12が支持されており、走行する鋼帯6の下面を支持するようになっている。
【0029】
このように、本実施形態では走行する鋼帯6はカテナリー曲線を描かず、各ロール12上を走行することになる。なお、ロール12は金属製パイプを芯材としてその外周面にFRPを積層したものが使用され、ロール軸受け11もFRP製から構成されている。
【0030】
槽本体2の上部は、天板とその天板の周囲から垂直方向に立ち下げられた側壁を有する槽カバー13によって覆われており、この槽カバー13に、鋼帯6の走行方向に沿って複数(本実施形態では7基)の遮断装置(遮断手段)14が設けられている。
【0031】
なお、中間ガイド部5の下流側(鋼帯走行方向において)にはリフタ15が設けられている。このリフタ15は、ラインを一時的に停止させるような場合に鋼帯6が長時間酸洗液と接触しないように鋼帯6を酸洗液ALから引き上げるためのものである。図中、6′はリフタ15上昇時の鋼帯位置を示している。なお、鋼帯6上昇時にはリフタ15のアーム15aを鋼帯6の幅方向に回転させるようになっている。
【0032】
次に、酸洗装置1の各部の構成について説明する。
【0033】
図2は上記遮断装置14を拡大して示したものである。
【0034】
同図において遮断装置14は、槽カバー13上にその幅方向(紙面厚さ方向)に設置された一対の軸受け14aを有し、これらの軸受け14aに対し、両端に回転軸14a′を固定したスリーブ14bが回転自在に支持されており(図3参照)、そのスリーブ14bの筒軸方向各端部から下向きに一対のアーム14cが鉤状に延設され、それらのアーム14cの先端部を連絡するようにして遮断プレート(遮断部)14dが設けられている。
【0035】
図3は遮断プレート14dの断面を拡大して示したものである。
【0036】
同図において、遮断プレート14dは、一対のアーム14cを幅方向に接続するパイプ14eを芯材とし、そのパイプ14eの表面に耐酸性のゴムライニング14fが施され、そのゴムライニング14fの表面にFRP14gが水滴状に積層されている。
【0037】
なお、遮断プレート14dの断面形状は、上記した水滴状に限らず、正円、楕円、多角形、矩形状であってもよく、要するに随伴流を打ち消す作用を発揮するものであれば、任意の断面形状のものを採用することができる。
【0038】
遮断プレート14dには上端に折曲部14h′を備えた波返し板14hが接続されており、遮断プレート14dと同じ長さに形成されている。この波返し板14hは、遮断プレート14dに衝突して発生する乱流がその遮断プレート14dを乗り越えて下流側に流れることを阻止している。なお、図中、14i,14jは一対のアーム14cに架設される補強部材である。
【0039】
また、槽カバー13にはアーム14cが矢印B方向に揺動する範囲について開口部13aが設けられている。この開口部13aには、槽カバー13の内側と外側を遮断した状態でアーム14cが揺動できるようにスリットが形成されたゴムカバー16が取り付けられている。
【0040】
図2に戻って説明する。
【0041】
スリーブ14bの筒軸方向中央部には上記したアーム14cと逆向きにアーム14kが鉤状に延設され、そのアーム14kの後端部にはウエイト14pが備えられている。
【0042】
アーム14kの後端部寄りには座板14mが固定されており、この座板14mにはウエイト14p固定用のボルト14nを挿通するためのボルト孔が2箇所穿設されている。
【0043】
この座板14mを支えとしてバランス調整用のウエイト14pがアーム14kに装着される。なお、ウエイト14pは厚さの異なるプレート14q(粗調整用)およびプレート14r(微調整用)からなり、各プレートの中央にはアーム14kに跨がる状態でアーム14kに装着できるようにスリットが形成されている。そして、天秤式のアーム14c,14kが反時計回りに回転し鋼帯6に向けて緩慢に下降するようにウエイト14pのプレート枚数を調整するようになっている。また、アーム14cを槽カバー13内に退避させる場合には、少ない操作力で時計回りに回転するようにもなっている。
【0044】
遮断プレート14dは酸洗液に浸漬する所定の位置に保持される。具体的には、芯材となるパイプ14eの軸心位置が酸洗液の液面位置と略一致するように調整される。このときアーム14cは、軸14a′を通る水平線HLを基準として約45°先下がりに傾斜している。ただし、アーム14cは、水平線HLを基準として約60°先下がりに傾斜する姿勢まで回転することができるようになっている。なお、14m′を備えたアーム14k′は、アーム14c降下方向に荷重をかける必要がある場合にのみ使用されるものである。
【0045】
図4はアーム14cを所定位置に保持するためのストッパ装置(規制部)14sを示したものである。
【0046】
同図において、ストッパ装置14sは、遮断プレート14dの下降限界を規制するようになっており、スリーブ14bの胴部から槽本体2の入口側に向けて突設されたブラケット14tと、このブラケット14tの先端部に設けられる調整ボルト14uとを備えている。
【0047】
アーム14cが反時計方向に回転するとこのブラケット14tも連動して回転し、アーム14cが図2に実線で示した位置に移動すると、調整ボルト14uの下端14vが軸受け14aの台座13b上面に当接するようになっている。
【0048】
なお、調整ボルト14uはブラケット14tの横板14t′に対し一対のナット14wを用いて固定されており、ナット14wを緩めて調整ボルト14uを回転させると、ブラケット14tと台座13bとの距離Fを変更することができ、それにより、遮断プレート14dの停止位置を調整することができるようになっている。
【0049】
図5は図1のC−C矢視図であって上記遮断装置14を背面側から見たものである。また、図6はその平面図である。
【0050】
両図において、スリーブ14bの一方に固定されている回転軸14a′先端は角軸17に形成されており、この角軸17には操作用シャフト18が取り付けられるようになっている。詳しくは、この操作用シャフト18の一方端には上記角軸17に係合する角孔18aが設けられており、角軸17に角孔18aを係合することによりスリーブ14bと操作用シャフト18が接続されるようになっている。
【0051】
この操作用シャフト18の他方端は角軸18bに形成されており、この角軸18bに対し、ハンドル19の基端側に備えられた角孔19aを着脱自在に係合することができるようになっている。
【0052】
各軸18bにハンドル19を取り付けた状態でそのハンドル19を手動で時計回り、あるいは反時計回り(矢印D方向)に操作すれば、スリーブ14bを介しアーム14cを所望の角度に移動させることができるようになっている。
【0053】
また、スリーブ14bから斜め後方に向けてレバー20が延設されており、このレバー20の先端部には後述するロックピンを挿入するためのピン孔20aが穿設されている。
【0054】
ハンドル19を回転させて上記レバー20を水平になるように移動させ、アームロック装置(アーム固定手段)21を操作すると、アームロック装置21のロックピンがピン孔20aに挿入され、スリーブ14bの回転が拘束されることによってアーム14cは図2に示したように、槽カバー13内に格納された状態でロックされる。
【0055】
アーム14cを槽カバー13内に格納してロックするのは、メンテナンス等で槽カバー13を取り外し場合である。
【0056】
図7および図8は上記アーム14cのロック操作を示したものである。
【0057】
図7において、通常運転時にはハンドル19は二点鎖線で示す位置にあり、レバー20は二点鎖線で示す上向き傾斜姿勢となっている。
【0058】
槽カバー13を取り外す場合、オペレータOは、ハンドル19を実線で示す位置まで押し下げる。それによりレバー20は回転軸14a′を中心として矢印E方向に回転し、水平姿勢となる。この状態で図8に示すアームロック装置21の操作輪21aを操作するとロックピン21bが突出してレバー20のピン孔20aに挿入される。
【0059】
詳しくは、アームロック装置21は外筒21c内に可動軸21dが摺動自在に収納されており、この可動軸21dの先端にロックピン21bが形成されている。また、外筒21cの操作輪21a側端部には案内溝21eがコ字状に形成されており、この案内溝21eに沿って可動軸21dに固定されているピン21fが移動するようになっている。
【0060】
従って、操作輪21aを操作してピン21fを案内溝21eの前側袋部21gに移動させるとロックがかかり、案内溝21eの後側袋部21hまで移動させるとロックが解除されるようになっている。なお、21iはアームロック装置21を槽カバー13に固定するためのブラケットである。
【0061】
このようにレバー20を水平姿勢にしロックピン21bで固定すると、アーム14cを水平姿勢に保持することができる。従って、メンテナンス時等において槽カバー13を取り外す場合には、アーム14cをすべて槽カバー13内に格納することができるため、特別な槽カバー用支持台を必要とせず槽カバー13を別の場所に載置することができるようになる。
【0062】
次に、上記構成を有する酸洗装置1の動作について説明する。
【0063】
図1において、走行する鋼帯6は入口ガイド部3を通過して酸洗液中に浸漬され、ロール架台7,8,9に設けられているロール12に支持されながら酸洗液中を走行する。
【0064】
このとき、走行する鋼帯6の上側表面に鋼帯6の移動によって随伴流が発生し境界層が形成されようとするが、この随伴流は図中、最も左側に配置された遮断装置14の遮断プレート14dと衝突することで遮断され、乱流に変化する。それにより、随伴流は鋼帯6の表面から剥離され、鋼帯6の表面で酸洗液の入れ替えが行われる。なお、上記境界層とは、鋼帯6の流れに同伴して酸洗液が流れる領域を意味する。
【0065】
このようにして走行する鋼帯6の上面側に発生する随伴流は、鋼帯走行方向に沿って一列に配設された遮断装置14の各遮断プレート14dに衝突する度に遮断されることにより乱流に変化し、鋼帯6から剥離する。したがって各遮断装置14を通過する毎に鋼帯6の表面において酸洗液が効果的に入れ替えられ、酸洗効率を高めることができる。
【0066】
しかも、本発明の酸洗装置1では、槽本体2内にロール架台を設置し、ロール架台のロールで鋼帯6の下面を支持しかさ上げしているため、酸洗液の液面近傍で鋼帯6を走行させることができ、それにより、境界層は液面を上限としてそれ以上に拡大しない。境界層の拡大が液面によって規制されれば、従来技術で示したようにフロートを鋼帯の上方に設置する必要もなく、酸洗装置1の構成を大幅に簡略化することができる。
【0067】
また、走行する鋼帯6を一時的に停止させる必要がある場合、鋼帯6にテンションがかけられリフタ15のアーム15aを上昇させる。それにより、酸洗液中に浸漬されている鋼帯6の中央部分が持ち上げられ、鋼帯6が酸洗液から引き上げられる。
【0068】
このとき、上昇する鋼帯6の上面と遮断プレート14dが当接し、鋼帯6の上昇に伴って遮断装置14のアーム14cが、回転軸14a′を中心として時計回りに回転する。従って、遮断装置14は昇降装置を必要とせず退避させることができる。
【0069】
また、鋼帯6に過剰なテンションがかかっても遮断装置14は上記したように退避することができるため、鋼帯6が走行している状態でも設備を破損することがない。
【0070】
なお、アーム14cは図4に示したストッパ装置14sによって下降限界が規制されそれ以上、反時計方向には回転しないが、時計方向には規制がないために自由に回転することができるため、しかもアーム14c,14kはウエイト14pによってほぼ釣り合っているため、鋼帯6の引き上げ時にはスムーズに時計方向に回転することができる。
【0071】
なお、鋼帯6の移動によって鋼帯6の下側に発生する随伴流については、鋼帯6の全幅を支持しているロール12によって随伴流が遮断され、乱流となるため、鋼帯6の下面についても酸化物が除去される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a)は本発明に係る酸洗装置の全体構成を示す平面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示す遮断装置の拡大図である。
【図3】遮断装置の遮断プレートの構成を示す断面図である。
【図4】図1に示すストッパ装置の構成を示す側面図である。
【図5】図1のC−C矢視断面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】アームロック装置の動作説明図である。
【図8】(a)はアームロック装置の平面図、(b)は背面図である。
【図9】従来のカテナリー式酸洗装置の構成を示す側面図である。
【図10】(a)は従来の別の酸洗装置の構成を示す側面図、(b)はそのA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 酸洗装置
2 槽本体
3 入口ガイド部
4 出口ガイド部
5 中間ガイド部
6 鋼帯
7,8,9 ロール架台
10 ウエイト
11 ロール軸受け
12 ロール
13 槽カバー
14 遮断装置
14c アーム
14d 遮断プレート
14p ウエイト
15 リフタ
19 ハンドル
20 レバー
21 アームロック装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行する鋼帯を連続的に酸液中に浸漬するための酸洗槽と、上記鋼帯の搬送路に沿って上記酸洗槽に配設され鋼帯の走行に伴って生じる随伴流を遮断する遮断手段とを有する連続酸洗装置において、
上記遮断手段が、上記酸洗槽の上方に配置された回転軸から槽前側および槽後側に向けてそれぞれ延設され上記回転軸を中点として揺動する天秤式のアームと、上記アームの一方端部に設けられ上記随伴流を遮断するための遮断部と、上記アームの他方端部に設けられ上記遮断部が上記鋼帯に向けて緩慢に下降するように上記アームのバランスを調整するウエイトと、上記遮断部が酸液中に浸漬した状態で上記鋼帯の近傍に停止するように上記アームの揺動限界を規制する規制部とを備えてなることを特徴とする連続酸洗装置。
【請求項2】
上記鋼帯が酸液液面寄りを走行するように上記鋼帯下面を支持するロールが備えられている請求項1記載の連続酸洗装置。
【請求項3】
上記ロールは上記酸洗槽内に設置されたロール架台に設けられている請求項2記載の連続酸洗装置。
【請求項4】
上記遮断部は、上記鋼帯の幅に対応する長さを有するプレート状部材からなり、平面から見て上記鋼帯の走行方向と直交する方向に配置される請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続酸洗装置。
【請求項5】
上記酸洗槽の上部をカバーする槽カバーを有し、この槽カバーに上記遮断手段の回転軸が設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の連続酸洗装置。
【請求項6】
上記遮断部が設けられているアームを上記槽カバー内に格納した状態で解除可能に固定するアーム固定手段が設けられている請求項5記載の連続酸洗装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−45612(P2006−45612A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−227649(P2004−227649)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】