説明

連続鋳造用ノズル用の耐火物及び連続鋳造用ノズル

【課題】Al等の介在物の付着が少ない耐火物及び連続鋳造用ノズルを提供すること。
【解決手段】SiO、B、CaO及びRO(R:Na、K、Li)を合計で1.0質量%以上8.0質量%以下、炭素を20.0質量%以上34.5質量%以下含み、残部がAlを主体とし、かつ、質量比(CaO+RO)/(SiO+B)が、0.5以上2.0以下である連続鋳造用ノズル用の耐火物である。この耐火物10を連続鋳造用ノズルの溶鋼と接する面(連続鋳造用ノズルの内孔11)の一部又は全部に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の連続鋳造に使用するノズル、とくに、溶鋼が通過する内孔を軸方向に有する管状の耐火物構造体からなる連続鋳造用ノズル用の耐火物、及びその耐火物を配置した連続鋳造用ノズルに関する。
【0002】
なお、本発明において「管状」とは、内孔を軸方向に有するすべての形状を指し、その軸方向と直交する方向の断面形状は問わないものとする。すなわち、軸方向と直交する方向の断面形状は円形に限らず、楕円形状、矩形、多角形等であってもよい。
【背景技術】
【0003】
近年、鋼の高級化等に伴うアルミナ等の溶鋼中の非金属介在物の増加等もあって、連続鋳造用ノズルの内孔面におけるアルミナを中心とする介在物の付着ないし内孔の閉塞等も、連続鋳造用ノズルの寿命を決定する大きな要素の一つとなっている。
【0004】
このような状況の中、内孔面への非金属介在物等の付着ないし閉塞の低減による連続鋳造用ノズルの高耐用化の要求はますます高まっている。そこで、溶鋼中からのAl等の介在物成分の内孔面への付着等を低減ないし防止するために、連続鋳造用ノズルの内孔面側の耐火物層に関して、さまざま提案がなされている。
【0005】
例えば特許文献1には、少なくともノズルの内孔部及び/または溶鋼に接する部分が、炭素成分を含まず、SiOが5〜10重量%、Alが90〜95重量%の化学組成を有し、主要鉱物相がムライト及びコランダム及び/またはβ−アルミナであるAl−SiO系耐火材料から構成された連続鋳造用ノズルが示されている。
【0006】
しかし、このような炭素成分を含まない耐火材料は熱衝撃に対する抵抗性が極めて小さく、とくに溶鋼注入開始時等の熱衝撃によって破壊する危険性が大きい。また、炭素成分を含まないようにしても、このようなAl−SiO系耐火材料ではアルミナを中心とする介在物の付着ないし内孔の閉塞等を十分に抑制することはできない。
【0007】
そこで、内孔面側の耐火物層の材質に、アルミナを中心とする介在物と反応して低融物を生成しやすいCaO成分を多量に含ませて、介在物等の付着ないし内孔の閉塞等を抑制しようとする提案が多くなされている。
【0008】
例えば特許文献2には、40〜90重量%のCaO、0〜50重量%のMgO及び0〜20重量%のCを含む組成物のライニング層をノズルの内孔に配置することが示されている。しかし、このようなライニング層において、とくにCaO含有量が多い場合、CaOは極めて水和しやすいフリーのライムとして存在することから、その消化によるノズルの破壊等を惹き起こして実用化は困難である。また、このようなCaO等の組成物は熱膨脹性が極めて大きく、この組成物によるライニング層の熱膨張によりその外側の本体層、すなわち連続鋳造用ノズル自体を破壊する。
【0009】
このようなCaOの問題点に対し、例えば特許文献3にはCaOを16〜35重量%含み、CaZrOを主成分とするカルシウムジルコネート系クリンカー20〜95重量%、黒鉛5〜50重量%等からなるZrO−CaO含有の連続鋳造用ノズルが示されており、特許文献4には、CaOを3〜35重量%含有するジルコニアクリンカー(鉱物組成としてCubicZrO、CaZrO含有)40〜85重量%、黒鉛10〜30重量%、シリカ1〜15重量%及びマグネシア1〜15重量%の1種又は2種を加えたはい土から製造された付着防止層を内孔表層部に配置した連続鋳造用ノズルが示されている。これらの材料では、CaOをフリーのライムとして存在させないために、ZrO等との結晶構造を有する鉱物として存在させている。
【0010】
しかし、このような成分からなる耐火物では、実際の連続鋳造の操業においてAl等の介在物成分の内孔面への付着等を低減ないし防止する効果が小さく、十分な連続鋳造用ノズルの耐用時間を確保すること等ができない。また、消化の問題は解消できるものの、熱膨張性をその内孔側層の外側に位置する一般的な連続鋳造用ノズルの本体部のアルミナ−黒鉛質耐火物と同等レベルまで低下させることはできず、これらを一体的に設置した構造等では、連続鋳造用ノズルの熱衝撃による破壊を十分に防止することはできない。
【0011】
このような内孔側に熱膨張性の大きい層を設置するには、連続鋳造用ノズルの構造面で熱衝撃抵抗性を高めることが必要である。例えば特許文献5には、CaO70重量%以上で見掛け気孔率が50%以下である耐火物からなるCaOノズルの外側に母材ノズルを外装し、内孔側のCaOノズルとその外側の母材ノズル間にCaOノズルの熱膨張代に相当する間隙を設けた鋳造用ノズルが示されている。
【0012】
しかし、このように内孔側層と外周側層の間に間隙を設ける等の特殊な構造にすると、通常の一体的な成形体として連続鋳造操業に供することが困難となる等の問題がある。また、内孔側層のズレや剥離ないしは連続鋳造用ノズルの損傷や破壊を惹き起こす危険性が高くなる等の問題も生じる。
【0013】
このようにCaO系の耐火物を内孔側に配置する場合には、構造設計、製造、取り扱い等々に多くの困難な問題を有していることが多く、その克服には多大な労力やコストを要すること等、産業上多くの未解決の課題が依然としてある。
【特許文献1】特開平10−128507号公報
【特許文献2】特開平01−289549号公報
【特許文献3】特公平02−023494号公報
【特許文献4】特公平03−014540号公報
【特許文献5】特開平07−232249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明が解決しようとする課題は、とくにアルミニウムキルド鋼などノズル閉塞現象が起こりやすい鋼種での連続鋳造用ノズルにおけるノズル内閉塞を防止することにあり、より具体的には、一体構造品として連続鋳造操業に供することが可能であって、かつ、消化や高膨張が問題となるCaO含有耐火物固有の問題を解決し、Al等の介在物の付着が少ない耐火物及び連続鋳造用ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の耐火物は、SiO、B、CaO及びRO(R:Na、K、Li)を合計で1.0質量%以上8.0質量%以下、炭素を20.0質量%以上34.5質量%以下含み、残部がAlを主体とし、かつ、質量比(CaO+RO)/(SiO+B)が、0.5以上2.0以下である(請求項1)。
【0016】
ここで「RO」の「R」は、上記のとおり、Na、K、Liであり、したがって「RO」は、NaO、KO、LiOである。また、本発明において化学成分値は、1000℃非酸化雰囲気中における熱処理後の試料の測定値を基準とする。
【0017】
本発明の耐火物は、言い換えると、ガラス形成酸化物としての(SiO+B)成分とガラス修飾酸化物としての(CaO+RO)成分を合計で1.0質量%以上8.0質量%以下含み、そのガラス修飾酸化物/ガラス形成酸化物の質量比、すなわち(CaO+RO)/(SiO+B)の質量比が0.5以上2.0以下であり、炭素を20.0質量%以上34.5質量%以下含み、残部がAlを主体とすることを特徴とする。
【0018】
このように本発明においては、耐火物のマトリクス内部に適度なガラス化成分(ガラス形成酸化物とガラス修飾酸化物の総称をいう。以下同じ。)を含有させる。これによって、SiO、Bをガラス形成酸化物とし、CaO、ROをガラス修飾酸化物とする、溶融状態のガラス相を溶鋼と耐火物界面に形成させる。溶鋼の温度(約1500℃)において適度な粘性を維持した稼働面に生成した溶融フィルム状のガラス相は、その稼働面の平滑作用及び保護膜的作用により溶鋼中からのAl等の介在物粒子を耐火物に固着させることなく溶鋼中に流出させる。
【0019】
より具体的に説明すると、耐火物中に上述したガラス化成分を含むことで、溶鋼中に存在する非金属介在物(Al)とガラス化相との反応により耐火物と溶鋼界面に緻密で粘ちょうなガラス被膜層を生成する。緻密で粘ちょうなガラス被膜層とは、溶鋼と耐火物との直接的な接触をガラス被膜により防止し、かつ、溶鋼流によりそのガラス被膜が容易に流出しない状態をいう。溶鋼と耐火物との界面でのこのガラス被膜層の生成により、耐火物表面の凹凸を平滑化し、溶鋼のミクロ的な乱流(溶鋼渦)を抑制する作用も得られる。耐火物壁面でのミクロ的な溶鋼渦の抑制は、溶鋼中に懸濁するAl等の非金属介在物の耐火物表面への溶鋼渦の慣性力による衝突を抑制することになり付着現象を抑制する。さらに、耐火物稼働面での緻密で粘ちょうなガラス被膜層の生成は、炭素やシリコン等の耐火物成分の溶鋼中への溶解を抑制することになり、Al等介在物の付着現象を防止することが可能となる。耐火物材質が直接溶鋼と接触し耐火物成分である炭素やシリコン等が溶鋼中へ溶解すると、壁面近傍の溶鋼中でのこれら溶質濃度勾配に伴う溶鋼の表面張力勾配を生じることになり、耐火物壁面でのアルミナ付着現象を促進する。
【0020】
このように耐火物と溶鋼との界面に緻密で粘ちょうなガラス被膜層を形成させるためには、そのガラス相を除く構成物との反応を抑制しつつ、一方で稼働面ではガラス相の形成を確実にする必要がある。
【0021】
本発明者らは、これらのガラス化成分が、溶鋼流速下でのアルミナ付着現象にどのような影響を及ぼすかを溶鋼中回転試験方法により調査した。その結果、(SiO+B)成分と(CaO+RO)成分を合計で1.0質量%以上8.0質量%以下含み、その(CaO+RO)/(SiO+B)の質量比が0.5以上2.0以下である場合にアルミナ付着現象を抑制することが可能であることを見いだした。
【0022】
SiO、B、CaO及びROの合計が1.0質量%未満であると、これらが耐火物組織内に分散して、他の耐火骨材に対して相対的に量が少なすぎ、均一な皮膜層としてのガラス相の形成には至らない。
【0023】
SiO、B、CaO及びROの合計が1.0質量%以上8.0質量%以下であっても、(CaO+RO)/(SiO+B)の質量比が0.5未満又は2.0を超えると、溶鋼稼働面に緻密で粘ちょうなガラス被膜層は形成されず、Al等介在物の付着防止効果(目標とする範囲の効果)を得ることができない。すなわち、前記質量比が0.5未満の場合は耐火物組織内の一部に粘性の高いガラス相が散在する程度にとどまってその量も少なく、溶鋼稼働面では溶鋼内介在物等の付着を減ずる程度の低粘性のガラス被膜層は形成されない。一方、前記質量比が2.0を超える場合は粘性の低いガラス相が耐火物組織内の全体に分布し、かつ溶鋼稼働面では溶鋼内介在物等の付着を減ずる程度を超えた軟らかい被膜層となり、溶鋼摩耗等による溶損傾向が大きくなる。
【0024】
また、SiO、B、CaO及びROの合計が8.0質量%を超えると、溶鋼温度レベルの温度域での耐火物組織中のガラス化の進行が大きくなるため、耐火度の低下や溶損が大きくなる等の問題が生じる。
【0025】
連続鋳造用ノズル用の耐火物として必要な強度等を維持しつつ、このようなガラス相を含むマトリクス組織を維持するために、ガラス相形成に寄与する前記の諸成分(SiO、B、CaO及びRO)並びに炭素以外の残部としての骨材部分(主として粒径0.001mm以上1mm以下程度)の構成物は、Alを主体とする。このAlの鉱物相としては熱的に安定なコランダム相が良い。コランダムとしてのAlであれば、前記のガラス相に対して早期に溶解することがなく、適度なノズルの耐用時間を維持することができる。また、一般的な連続鋳造用ノズルの本体部用の材質であるアルミナ−黒鉛材質と同等の熱膨張特性とすることができるため、耐熱衝撃性面や耐溶損性面での取り扱いが容易であるという利点もある。
【0026】
なお、前記の残部中に、一般的な連続鋳造用耐火物に使用する原料に由来し又は一般的な連続鋳造用耐火物の製造方法において混入する不可避成分及びその不可避量を含むことは本発明の効果を著しく損なうことはない。
【0027】
本発明の耐火物は、一般的な連続鋳造用ノズルの本体部のアルミナ−黒鉛質耐火物と同程度の耐熱衝撃性を得るために、炭素を20.0質量%以上34.5質量%以下含む。この炭素は、黒鉛等の骨材粒子としての炭素と結合材としての炭素との合計をいう。
【0028】
骨材粒子としての炭素とは、すなわち黒鉛質骨材であって、これは炭素質結合組織間の充填材として添加することにより、構造体強度を高め、熱伝導率を上げ、熱膨張率を低下させる作用により耐熱衝撃性を改善できる。また、炭素質の骨材粒子(結合材としての炭素もこの一部とみなすことができる)が酸化物等の間に存在することで、酸化物の焼結や低融化反応を抑制する効果があり、鋳造時の品質の安定化も期待できる。
【0029】
骨材粒子(黒鉛質骨材)として炭素の量は18.0質量%以上33.5質量%以下が好ましい。18.0質量%未満であると、1000℃程度の予熱状態から溶鋼を受鋼した際の熱衝撃に対して十分な抵抗性を確保し難くなる。33.5質量%を超えると、溶鋼流の摩耗により損傷しやすくなり、連続鋳造用ノズルの耐用時間が短くなるほか、溶鋼偏流による局部損耗を生じやすくなる。
【0030】
結合材としての炭素は、耐火物自体の強度を担い、構造体としての形態を維持すると共に、主として熱衝撃に対する破壊抵抗性を付与する。結合材としての炭素は、主として高温度(約1000℃以上の非酸化雰囲気中)において固定炭素量が多く炭素結合を形成する樹脂、ピッチ、タール等によって得ることが好ましい。この結合材としての炭素は、1.0質量%以上が好ましい。1.0質量%未満であると、骨材同士を炭素で結合した構造体を維持するに十分な強度が得にくい。また、本発明の耐火物の厚みが相対的に小さい(例えば約10mm以下等)場合に初期強度を高めることが好ましい場合や、本発明の耐火物を適用した連続鋳造用ノズルの製造における一体成形時に均一性や充填性をより高めることが好ましいような場合には、2.0質量%以上がより好ましい。上限は5.0質量%以下であることが好ましい。5.0質量%を超えると、炭素結合の構造体強度は十分であるが、耐熱衝撃性の低下や製品を作る上での歩留まりが低下しやすくなるため好ましくない。この結合材としての炭素量は、個別の操業や製造時の条件や状況等に応じて決定すればよい。
【0031】
以上説明した本発明の耐火物は、連続鋳造用ノズルにおいて、溶鋼と接する面の一部又は全部に配置することで、Al等の介在物の付着ないしノズル内閉塞を防止することができる(請求項2)。すなわち、個別の操業の条件、Al等の介在物の付着状況に応じて、その付着の多い部分を主に配置すればよい。また、その厚みは、個別の操業の条件に応じて、本発明の耐火物の溶損の程度、Al等の介在物の付着の程度等と、設定耐用時間とを考慮して決定すればよい。
【0032】
本発明の耐火物からなる層を内孔側に配置する連続鋳造用ノズルは、本発明の耐火物が一般的な連続鋳造用ノズルの本体部のアルミナ−黒鉛質層と同程度の熱膨張特性を有することから、本発明の耐火物からなる内孔側層とその外周側のアルミナ−黒鉛質層との間には、応力を緩和することを目的とする空間その他の特別なモルタル層等を設置する等の、特異な構造とする必要がない。すなわち、本発明の耐火物からなる内孔側層と、その外周側のアルミナ−黒鉛質層とを同時成形した一体構造とすることができる(請求項3)。
【発明の効果】
【0033】
本発明の耐火物及びこの耐火物を配置した連続鋳造用ノズルにより、連続鋳造用ノズルにおけるAl等の介在物の付着ないしノズル内閉塞を防止することができる。
【0034】
また、本発明の耐火物と一般的な連続鋳造用ノズル用の耐火物との間の熱膨張特性が同程度であって、耐火骨材、黒鉛、炭素結合等の耐火物の組成と構造がほぼ同一とみなせる程度に近似しているので、これら耐火物間の諸現象の緩衝等を目的とするような特殊な構造を必要としない。さらにはこの耐火物を配置した連続鋳造用ノズルの製造においても、ほぼ同一の耐火物のはい土、成形体等としての取り扱いが可能であって、同時一体成形が可能である。これらにより、強度や取り扱い等に有利な一体構造品としての連続鋳造用ノズルを連続鋳造操業に供することができ、連続鋳造操業の安定化等にも寄与することができる。
【0035】
前述のように、本発明の耐火物は、本発明の耐火物以外の主として連続鋳造用ノズルの本体部に使用される一般的な連続鋳造用ノズル用の耐火物とほぼ同じ耐火骨材を主体とし、かつほぼ同様の組織構造(黒鉛、諸耐火骨材の分散状態、結合組織等)である。したがって、本発明の耐火物とそれ以外の耐火物間の熱膨張特性はほぼ同程度(相互に緩衝して破壊を生じない程度)である。
【0036】
これに対し、Al介在物の付着を防止することができる程度のCaO量を含有する耐火物の約1000℃から溶鋼温度(約1500℃)付近までの高温度域での熱膨張率は、一般的な連続鋳造用ノズルの本体用の耐火物のそれに対し、約1.5〜約2倍程度である。このような熱膨張特性のCaO含有耐火物を、一般的な連続鋳造用ノズルの本体用の耐火物の内孔側に配置する構造では、CaO含有耐火物がその外周側の耐火物を押し割る等の問題がある。さらに、Al介在物の付着を防止することができる程度のCaO量を含有する耐火物は、CaOが水和して崩壊しやすいために、CaO源とする原料の成分や構造の制限、原料、製造工程における取り扱い、製品の保管や取り扱い等に、固有の困難な問題が存在する。
【0037】
本発明の耐火物には、前記のようなAl介在物の付着を防止することができる程度のCaO量を含有する耐火物に固有の問題は生じない。したがって、本発明の耐火物を配置した連続鋳造用ノズルには、異なる耐火物間の諸現象の緩衝等を目的とするような特殊な構造を必要としない。さらには本発明の耐火物を配置した連続鋳造用ノズルの製造においても、一般的な連続鋳造用ノズルの原料、製造工程と同様の取り扱いが可能である。これらのことから、本発明の耐火物を内孔側層として配置した連続鋳造用ノズルは、一般的な連続鋳造用ノズルの本体をなす耐火物との同時一体成形も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の耐火物の製造方法について述べる。
SiO、Bのガラス形成酸化物の原料としては無定形のシリカやホウ酸、CaO、ROのガラス修飾酸化物の原料としては、アルカリ土類酸化物、アルカリ金属酸化物など純度の高い試薬等が好ましいが、工業的に流通している、SiOを主成分とする各種シリカ微粉末、ホウ酸末、ほう珪酸ガラス、工業用ガラス粉末、フリット粉末、合成スラグ粉末、ポルトランドセメント、アルミナセメント、ホウ酸化合物、硼砂粉末、ホウ酸塩化合物、ドロマイト粉末、各種珪酸塩、各種炭酸塩など使用ができる。また、ガラス化基材成分とガラス化助剤成分とからなる珪酸アルカリ等も使用することができる。ただし、均一なガラス化のためには予め成分が調整され溶融粉砕されたガラスフリット微粉末の使用が好ましい。
【0039】
これらのガラス化成分の添加により、また耐火物組織中でSiO、B、CaO及びROを合計で1.0質量%以上8.0質量%以下含み、(CaO+RO)/(SiO+B)の質量比が0.5以上2.0以下の条件を満たすことにより、アルミキルド鋼などアルミナ等介在物の付着ないし内孔閉塞が生じやすい鋼種にて、溶鋼流速下での閉塞等防止効果を得ることができる程度の粘ちょうなガラス皮膜層を得ることができる。
【0040】
また、これらのガラス化成分は耐火物組織中に均等に分散させることによりその効果を発揮する。浸漬ノズルやロングノズルなどの連続鋳造用ノズル用の耐火物に使用される骨材粒度サイズは、組織の均質性と耐熱衝撃性、耐食性の観点から一般的に最大サイズが1mm程度である。したがって耐火物の骨材間のマトリックス中に均等にガラス化成分を均等に分散させるためには、これらのガラス化成分の添加は、骨材サイズの1/10以下の0.1mm以下の粒子を90.0質量%以上含む粉末での添加が好ましい。0.1mm以下が90.0質量%未満の場合、ガラス化成分が組織中に均等に分散され難く、ガラス化成分が偏在することになり、耐火物と溶鋼とが接触し、耐火物稼働面で緻密で粘ちょうなガラス被膜層が均一に形成され難くなる。
【0041】
骨材粒子としての炭素としては、鱗状黒鉛、土状黒鉛粒子、人造黒鉛等の六角網面の結晶が発達した黒鉛質骨材の使用が好適である。とくに、天然で産出する鱗状黒鉛の使用が熱衝撃性面で最も好ましい。黒鉛質骨材中の炭素含有量は90.0質量%以上(不可避の不純物を除き100質量%を含む)であることが好ましい。その理由は90.0質量%未満の純度であると、不純物相互又は不純物と他の原料粒子等との焼結反応等によって耐火物組織の高弾性率化等を招来し、耐熱衝撃性が低下するためである。
【0042】
これらの黒鉛質骨材は、前述のとおり、炭素質結合組織間の充填材として添加することにより、構造体強度を高め、熱伝導率を上げ、熱膨張率を低下させる作用により耐熱衝撃性を改善できる。また、結合材を含め、炭素が酸化物等の間に均一に分散して存在することで、酸化物の焼結や低融化反応を抑制する効果があり鋳造途中の品質が安定化できる。このように均一に分散した状態で存在させるために、粒子サイズは2mm以下の黒鉛質骨材の使用が好ましい。しかし、粒子サイズが0.1mmより小さい黒鉛質骨材を主体に使用すると組織の均質性に優れる反面、耐熱衝撃性が低下する。また、粒子サイズが2mmより大きい場合は、耐熱衝撃性に優れる反面、組織中での成分の偏在を生じやすい。したがって、黒鉛質骨材の粒子サイズは0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。
【0043】
本発明の耐火物は、前述のガラス化成分(SiO、B、CaO、RO)及び炭素以外の残部が原料又は製造における不可避成分を除いてAlからなることも特徴とする。Alは、その粒子サイズが0.1mm超のものが骨材全体に対して80.0質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90.0質量%以上である。その理由は、前記のガラス相を形成する部分はできるだけそれら構成成分のみで耐火物のマトリクスに均一に分散している状態が好ましく、他の耐火物の構造や強度を維持する骨格としての他の粒子は、そのガラス相に溶解又はガラス成分と反応して低融物を生成すること等の組織劣化となる要因をできる限り小さくするためである。なお、Al骨材の一部をSiC、ZrO2、ジルコニア化合物等のガラス化成分の原料と反応しにくい耐火性骨材と骨材全体に対して10.0質量%以下の範囲で置換することは可能である。
【0044】
ここで、前述のガラス化成分及び炭素以外の残部については、前述のAl以外に、原料由来又は製造中に混入する等の不可避の成分を含むことがある。これらの不可避成分のうち、Fe、TiOなどの不純物は1.0質量%以下程度に抑制することが好ましい。
【0045】
これら粉体を混和して均一な粉体混合物にする。そして、この粉体混合物に、結合組織を担う炭素質原料としてのフェノール樹脂、ピッチ、タール等の結合材を適宜選択して添加し、均一に混練して成形用のはい土を得る。この結合材となる原料は粉体でも液体でもよいが、成形に適したはい土の特性に合わせてはい土の可塑性を調整することが重要である。
【0046】
次に、前記の本発明の耐火物のはい土から得られる耐火物を内孔側層に設置した連続鋳造用ノズルの製造方法について一例を述べる。
【0047】
前記の本発明の耐火物のはい土とは別に、外周側層すなわち連続鋳造用ノズルの本体用のはい土を作製する(一般的な製造方法でよい)。次に、成形用鋳型に内孔側層及び外周側層を形成するための、所定の大きさに仕切られた複数の空間を設ける工程と、成形用鋳型内の各空間にそれぞれ専用に作製したはい土を充填し、その空間の仕切りを除去する等によって隣接するはい土を直接接触させる。
【0048】
これらの直接接触させたはい土を、CIP装置により同時に加圧して一体的に成形する。得られた成形体を、非酸化雰囲気中又は表面に酸化防止処理を施した状態での酸化雰囲気中で、600℃以上1300℃以下での熱処理をする。なお、この熱処理をする工程に先立って、前記温度より低い温度で、揮発分の除去や樹脂の硬化等を目的とする独立した熱処理工程を含んでもよい。最後に通常の連続鋳造用ノズルの製造と同様に、適宜加工等を行う。
【0049】
前記の各工程の基本的な操作・作業方法、使用する装置等は、一般的な連続鋳造用ノズルの製造方法と同様でよい。
【0050】
なお、本発明の連続鋳造用ノズル用の耐火物は、前述のとおり、連続鋳造用ノズルの内孔表面のみに内孔側層として配置することを第一の実施の形態としている。しかし、内孔側層のみにとどまらず他の部分、例えば前記の「本体部分」等や連続鋳造用ノズル全体に使用することも可能である。
【0051】
本発明の耐火物を使用した連続鋳造用ノズルの製造方法についても、前述の内孔側層として他の材質との一体的な製造方法にとどまらず、(1)筒状の成形体として製造した管体を別に製造した本体部分の内孔に装着し、モルタル等で固定する方法や、(2)ノズル本体部分と内孔側層部分とを本発明の材質1種による単体として成形等を行う方法を採用することができる。
【0052】
次に、本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0053】
<実施例A>
実施例Aは、耐火物中に含まれるSiO、B、CaO及びROの合計量、並びに(CaO+RO)/(SiO+B)の質量比が、Al等介在物の付着速度又は耐火物の溶損速度に及ぼす影響を調査した結果を示す。
【0054】
調査は、対象試料を溶鋼中に浸漬し、さらにその試料を溶鋼中で回転する試験方法(以下、この試験方法を単に「溶鋼中回転試験」という。)によって行った。この溶鋼中回転試験は、溶鋼と接触する耐火物に関してAl等介在物の付着現象及び溶損現象を、多種多数の材質等で実炉における現象との相関性を確認して確立した調査及び評価方法である。
【0055】
Al等介在物の付着防止効果を高める組成を有する耐火物は、一方で通常の(付着防止効果を高めない)耐火物に比較して溶損が大きくなる傾向になる。このAl等介在物の付着防止効果と溶損性とは最適なバランスを保った状態であることが必要であって、過度な溶損性を備える耐火物の場合はAl等介在物の付着防止効果は十分であっても、溶損によって連続鋳造用ノズルの寿命を短くしてしまい、実操業に支障が生じることがある。したがって、Al等介在物の付着防止効果を高めるための耐火物の試験を行う際には、その耐溶損性をも同時に評価する必要がある。
【0056】
溶鋼中回転試験においては、多くの調査等から、Al等介在物の付着速度(以下「+」の符号で表す。)が15μm/分以下、溶損速度(以下「−」の符号で表す。)が15μm/分以下であると、Al等介在物の付着が多い鋼種の実設備での連続鋳造操業に支障がなく、また同様の目的で開発されるCaO系耐火物と同等の付着防止効果があることを知見している。
【0057】
以上のことから本実施例Aの試験では、対象試料につき、その寸法変化の速度を+15μm/分から−15μm/分の範囲を、本発明の課題を解決することができる範囲の実施例として評価した。
【0058】
溶鋼中回転試験の方法を図1と共に以下に示す。
【0059】
図1は下部に4つの所定の形状に加工した対象試料(以下、「試験サンプル」という。)1を保持するホルダー2が、るつぼ4内の溶鋼3中に浸漬された状態を示している。試験サンプル1は直方体で4つ設置してあり、四角柱のホルダー2の下部の4面にそれぞれ固定されている。この試験サンプル1は、四角柱のホルダー2に設けた凹部にモルタルを介して挿入されており、試験終了後は引き抜くことで外すことができる。ホルダー2は上部が図示していない回転軸に接続され長手軸を回転軸として回転可能に保持されている。また、ホルダー2は長手軸に対する水平断面においては1辺が40mmの正方形をしており、長手方向の長さは160mmで、ジルコニア−カーボン質の耐火物製である。試験サンプル1はホルダー2からの露出部が縦20mm、横20mm、長さLが25mmである。また試験サンプル1の下端面1aがホルダー2の下端面2aから上に10mmの位置に取り付けられている。
【0060】
るつぼ4は、内径130mm、深さ190mmの円筒形の耐火物製である。このるつぼ4内に溶鋼3を貯留しており、るつぼ4は高周波誘導炉5に内装されていて、溶鋼3の溶融状態及び温度を制御することができる。ホルダー2の溶鋼3中への浸漬深さは50mm以上である。また図示していないが上面には、蓋をすることができる。
【0061】
溶鋼中回転試験は、溶鋼直上で試験サンプルを5分間保持することで予熱した後、溶解した低炭アルミキルド鋼中へ試験サンプルを浸漬し、試験サンプルの最外周面で平均1m/秒の周速で回転させる。試験中は、溶鋼中へアルミニウムを添加することで酸素濃度を10〜50ppmの範囲に保持し、かつ温度を1550〜1600℃の範囲に保持する。3時間後に引き上げて試験サンプルの寸法を計測する。
【0062】
付着又は溶損速度の測定は、図2に示すように試験終了後の試験サンプル1をホルダーから外して回転軸に対する直角の方向の水平面(回転周方向の面)で切断する。試験面において側端面1bから回転軸方向に向かって3mmピッチで6箇所の長さを測定し平均する。溶鋼中回転試験前の試験サンプルも各々の同位置の長さを測定し平均しておく。溶鋼中回転試験前の平均値(μm)から溶鋼中回転試験後の平均値(μm)を差し引き、その値を試験時間180分で除することで付着又は溶損速度(μm/分)を算出する。
【0063】
表1及び表2に耐火物の組成と結果を示す。
溶鋼中回転試験の結果、SiO、B、CaO及びROを合計で1.0質量%以上8.0質量%以下、かつ(CaO+RO)/(SiO+B)が0.5以上2.0以下の実施例では、寸法変化の速度が+15μm/分から−15μm/分の範囲を満たすことができることがわかる。
【0064】
また、SiO、B、CaO及びROを合計で約1質量%の下限近く、かつ(CaO+RO)/(SiO+B)が下限の0.5である各実施例(実施例1〜6)でも、SiO、B、CaO及びROを含有しない比較例1の+21μm/分の付着速度と比較して約71%〜約52%の付着速度であり、付着速度低減効果が観られる。なお、ROのRすなわちNa、K、Liはほぼ同様な効果を示している。
【0065】
シリカを含まない比較例1に単にシリカを添加し、さらにその量を増量させた、すなわち(CaO+RO)/(SiO+B)がゼロの比較例2ないし5では、シリカ量の増量に伴って付着速度が大きくなる傾向となり、いずれも付着の目標値を満足していない。これは粘ちょうなガラス被膜層が形成せず、またシリカが直接的及び炭素との反応が介在する間接的な反応により溶鋼中のAlを酸化させたことによると考えられる。
【0066】
SiO、B、CaO及びROの合計が1.0質量%以上であっても(CaO+RO)/(SiO+B)が0.5未満の比較例7、比較例9では付着速度が大きく、いずれも付着速度の目標値を満足していない。
【0067】
SiO、B、CaO及びROの合計が8.0質量%であって(CaO+RO)/(SiO+B)が2.0の実施例14では、溶損傾向ではあるもののその目標値を満足している。しかし、SiO、B、CaO及びROの合計が8質量%であってもCaO+RO)/(SiO+B)が2.0を超えている比較例10、また、CaO+RO)/(SiO+B)が0.5〜2.0の範囲であってもSiO、B、CaO及びROの合計が8.0質量%を超えている比較例11、比較例12では溶損速度が大きくなって、いずれも溶損速度の目標値を満足していない。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
<実施例B>
実施例Bは、耐火物中に含まれる炭素量が、Al等介在物の付着速度又は耐火物の溶損速度に及ぼす影響を調査した結果を示す。また、SiO、B、CaO及びRO並びに炭素以外の、Alを主体とする残部にZrOを含む場合及びZrOとSiCを含む場合のAl等介在物の付着速度又は耐火物の溶損速度に及ぼす影響を調査した結果も示す。
【0071】
調査は、前記実施例Aと同様の溶鋼中回転試験により行った。表3に耐火物の組成と結果を示す。
【0072】
溶鋼中回転試験の結果、炭素量が19.0質量%である比較例13ではAl介在物等の付着速度が目標の15μm/分を超える17μm/分であるのに対し、炭素量が20.0質量%の実施例15ではAl介在物等の付着速度が8μm/分と急激に減少し、Al介在物等の付着速度の目標値である15μm/分以内を得ることができることがわかる。また、炭素量が35.5質量%の比較例14では溶損速度が目標の15μm/分を超える21μm/分であるのに対し、34.5質量%の実施例19では溶損速度が15μm/分と急激に減少し、溶損速度の目標値である15μm/分以内を得ることができることがわかる。以上のことから、炭素の含有量の範囲は20.0質量%以上34.5質量%以下である必要があることがわかる。
【0073】
また、実施例10のSiO、B、CaO及びRO並びに炭素の含有量の組成を有する耐火物に対し、Alを主体とするその残部にZrOを含む場合の実施例20及びZrOとSiCを含む場合の実施例21においても、溶鋼中回転試験の目標値である±15μm/分以内を得ることができることがわかる。
【0074】
【表3】

【0075】
<実施例C>
実施例Cは、本発明の耐火物、従来技術の一般的な連続鋳造用ノズルの本体部用の材質として使用されているアルミナ−黒鉛質の耐火物(以下単に「本体部用AG耐火物」という。)及びAl等介在物の付着対策として使用されるCaO−MgO系耐火物(以下単に「CMG耐火物」という。実操業において本体部の層との間はモルタル等の応力緩衝機能を有する層を設置して使用することが条件となっている。)の熱膨張特性を比較した結果を示す。
【0076】
主たる耐火骨材以外に熱膨張特性に大きな影響を及ぼす各耐火物中に含まれる黒鉛量及び炭素量がほぼ同程度として比較した。
【0077】
本発明の耐火物のSiO、B、CaO及びROの合計、(CaO+RO)/(SiO+B)比の対象となる原料等は、表1ないし表3の外掛け添加の各原料を所定の割合になるように調整した。それらの数個の代表的な試験結果を得、それらの結果から平均値を算出した。
【0078】
結果を表4に示す。
【0079】
本発明の耐火物(実施例22、実施例23)は、本体部用AG耐火物(比較例15、比較例16)とほぼ同等の熱膨張特性を示している。このことから、本体部用AG耐火物を本体部分に使用して本発明の耐火物をその内孔側層に設置した複合構造の連続鋳造用ノズルにおいては、内孔側層を設置していない本体部用AG耐火物単層からなる構造の連続鋳造用ノズルと、熱膨張に関しては同一物とみなすことができる。すなわち、熱膨張に関しては、内孔側層を設置していない本体部用AG耐火物単層からなる構造の連続鋳造用ノズルと、同一物とみなすことができる。
【0080】
このことは、本体部用AG耐火物を本体部分に使用して本発明の耐火物をその内孔側層に設置した複合構造の連続鋳造用ノズルにおいては、両耐火物の層間に内孔側層(本発明の耐火物)の熱膨張に伴う応力を緩和する機能を有するモルタル層等の第3層を必要とせず、直接接触した連続的構造(一体構造)とすることができること、及び、その製造にあたっては、はい土を同時に一体的に成形する等の製造方法を採用することができることを示している。
【0081】
これに対し、CMG耐火物(比較例17、比較例18)は、本体部用AG耐火物(比較例15、比較例16)に対して大きな熱膨張特性を示している。このことは、本体部用AG耐火物を本体部分に使用してCMG耐火物をその内孔側層に設置した複合構造の連続鋳造用ノズルにおいては、両耐火物の層間に内孔側層(CMG耐火物)の熱膨張に伴う応力を緩和する機能を有するモルタル層等の第3層を必要とすること、及び、その製造にあたっては、通常、本体部と内孔側層とを別々に製造して最後に組み合わせる等の手段が必要であることを裏付けている。
【0082】
【表4】

【0083】
<実施例D>
実施例Dは、本発明の耐火物を実設備での連続鋳造用ノズルの操業に供して効果を調査した結果を示す。
【0084】
本発明の実施例の耐火物としては、溶損と付着のバランスが良かった実施例10の耐火物を使用し、比較例として比較例1の耐火物(アルミナ−黒鉛質耐火物)を使用した。
【0085】
実施例の連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)は、図3に示すように本発明の耐火物10をその内孔11側のみに10mmの厚みで内孔11の全長に配置し、本体部にアルミナ−黒鉛質耐火物12を配置した構造とした。なお、実施例の連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)は本体部用耐火物と内孔側層とを同時一体成形により製造し、層間が直接接触して連続的な組織である一体構造とした。
【0086】
比較例の連続鋳造用ノズル(浸漬ノズル)の構造は、内孔側層と本体部とが比較例1の耐火物による単一の層からなる構造とした。ただし、実施例、比較例共に、連続鋳造用ノズルの最外周側のパウダー部にはジルコニア−黒鉛質耐火物(図3中の13)を配置した。
【0087】
実施例及び比較例の連続鋳造用ノズルを使用し、低炭アルミニウムキルド鋼にて、3ch約3時間の鋳造を行った。その結果、本発明の連続鋳造用ノズルではアルミナ付着は軽微であった。一方、比較例の連続鋳造用ノズルでは内孔部にアルミナが付着し閉塞現象が認められた。
【0088】
なお、図3に示した実施例の連続鋳造用ノズルでは、内孔の全長に本発明の耐火物を配置したが、連続鋳造用ノズルの使用条件等に応じて、内孔側の適宜箇所に部分的に本発明の耐火物を配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】溶鋼中回転試験の方法を示す説明図である。
【図2】溶鋼中回転試験後の試験サンプルの横断面のイメージ図であり、(a)は付着の場合、(b)は溶損の場合を示す。
【図3】本発明の連続鋳造用ノズルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
1 試験サンプル
1a 試験サンプルの下端面
1b 試験サンプルの側端面
2 ホルダー
2a ホルダーの下端面
3 溶鋼
4 るつぼ
5 高周波発生装置
10 本発明の耐火物
11 連続鋳造用ノズルの内孔
12 アルミナ−黒鉛質耐火物
13 ジルコニア−黒鉛質耐火物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO、B、CaO及びRO(R:Na、K、Li)を合計で1.0質量%以上8.0質量%以下、炭素を20.0質量%以上34.5質量%以下含み、残部がAlを主体とし、かつ、質量比(CaO+RO)/(SiO+B)が、0.5以上2.0以下である連続鋳造用ノズル用の耐火物。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火物を、溶鋼と接する面の一部又は全部に配置した連続鋳造用ノズル。
【請求項3】
請求項1に記載の耐火物からなる層が、その外周側の耐火物層と同時成形された一体構造である連続鋳造用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−131634(P2010−131634A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309948(P2008−309948)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】