説明

連続鋳造設備における冷却水供給配管の詰まり判定方法

【課題】本発明では、スラブの表面の温度分布の測定からノズル詰まりの相関情報を得て、かつノズル詰まりが起こったゾーン又はノズルが配管される冷却水供給配管の位置を特定し判定することを目的とする。
【解決手段】連続鋳造機の二次冷却帯の冷却ゾーン毎にスラブの幅方向に対称に配置された複数の二次冷却スプレーノズルが接続された冷却水供給配管を前記冷却ゾーン毎に複数備える連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法であって、前記スラブが前記二次冷却帯を通過した直後、放射温度計を用いて前記スラブの表面の温度分布を測定する工程と、該温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを判断する工程とを有する連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼工場の連続鋳造設備において、放射温度計を用いて二次冷却スプレーのノズル詰まりに起因する冷却水供給配管詰まりを判定し、冷却水供給配管の詰まりが発生した位置を特定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機に付帯する二次冷却スプレーノズル(以下、「スプレーノズル」又は「ノズル」と称する場合がある)は、現場工程において高温、高湿、高粉塵環境下で使用されるため、スプレーノズルの先端が詰まって、水流がスプレーノズルから噴出しないか、又は十分な水流が供給されずスラブの冷却が不均一な状態となる頻度が多く発生する場合がある。かかる状況では、連鋳スラブの内部の凝固が不均一となり、スラブの表面及び内部で割れが発生する原因となり、スラブ材質の品質上の問題のみならず、連続鋳造操業上のトラブルが発生しやすくなる。したがって、二次冷却スプレーノズル詰まりを迅速に判定し、ノズル詰まりが発生した位置を簡便に特定する方法が望まれている。
たとえば、特許文献1には、ノズルへの供給圧力と流量の関係を監視することで、ノズル詰まりを判別する方法が開示されている。また、スプレー冷却されているスラブの表面温度変化の推移を測定し、ノズル詰まりを検知する方法が特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−179414号公報
【特許文献2】特開2000−246412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら方法では、二次冷却スプレーノズルがスラブの幅方向に左右対称に設置されている場合であっても、実測されるスラブの表面温度分布は左右対称にならない場合があり、また、ノズル詰まりと表面温度分布との相関は明らかではないという問題点があった。さらに、スプレーノズルの詰まりの発生ゾーン又はノズルが配管される二次冷却水供給配管(以下、単に「冷却水供給配管」という場合もある。)の配管配置位置とスラブ表面温度分布の相関が判明すればスプレーノズルの不具合が早期に検出でき、連続鋳造操業での保全効率の向上にも資する。
【0005】
本発明は、連続鋳造機の外すなわち、二次冷却帯をスラブが通過する直後に設置した放射温度計によるスラブの表面の温度分布を観測し、スラブの表面の温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを監視し、スラブの表面の温度分布の測定からノズルに配管されている冷却水供給配管の詰まりを判定し、かつノズル詰まりが起こったゾーン又はノズルが配管される冷却水供給配管の位置を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するために、連続鋳造機外に出た直後、すなわち、二次冷却帯をスラブが通過した直後に設置した放射温度計によりスラブ表面温度を測定する事で、スラブの表面の温度分布がスラブ幅方向に対して左右対称か否かを監視することを行うことを特徴の一つとしている。ここで、連続鋳造機外に出た直後とは、すなわち、図1にて10ゾーンを通過して、二次冷却帯の外に出て、スラブ搬送領域に入り、スラブを視認できた時期をいう。
【0007】
さらに、本発明は、各ゾーンに配置される複数の異なる冷却水供給配管の冷却水量を実測し、さらに冷却水供給配管の背圧値から、冷却水量理論値を算出し、これと実績冷却水量とを比較することで、冷却水量理論値が実績冷却水量より多い場合に、ノズル詰まりが発生したと判定し、その発生したゾーンを特定することを特徴とする。
【0008】
本発明の具体的構成を以下に示す。
(1)連続鋳造機の二次冷却帯の冷却ゾーン毎にスラブの幅方向に対称に配置された複数の二次冷却スプレーノズルが接続された冷却水供給配管を前記冷却ゾーン毎に複数備える連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法であって、
前記スラブが前記二次冷却帯を通過した直後、放射温度計を用いて前記スラブの表面の温度分布を測定する工程と、
該温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを判断する工程とを有し、
該判断する工程において対称でないと判断した場合には、さらに、
前記複数の冷却水供給配管系統から流れる実際の水量を測定する工程と、
前記冷却水供給配管毎の背圧値を測定する工程と、
該背圧値を用いて前記冷却水供給配管毎の理論二次冷却水量を算出する工程と、
前記実際の水量と前記理論二次冷却水量を前記冷却水供給配管毎に比較し、理論二次冷却水量が大きい場合には、大きい結果となった冷却水供給配管の冷却水路に詰まりが生じていると判定する工程とを有する連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。
(2)前記放射温度計が二次元放射温度計であることを特徴とする(1)に記載の連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。
(3)前記温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを判断する工程において、前記スラブの表面の温度分布が幅方向の左右の領域のそれぞれの最高温度の温度差が任意の設定温度以上の場合に、前記温度分布がスラブ幅方向に対称でないと判断する(1)または(2)に記載の連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、連続鋳造機の二次冷却スプレーノズルに配管されている冷却水供給配管の詰まりを判定し、かつノズル詰まりが起こったゾーン又はノズルが配管される冷却水供給配管の位置を簡便に特定することができ、保全作業に役立てことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】連続鋳造機全体を表す図である。
【図2】スプレーノズルの配置を示す概略図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るシステム構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る制御ループの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
連続鋳造機本体は、例えば、第1図に示すように、モールド及び複数のガイドロールで構成される19台のセグメントと呼ばれるユニットで構成されている。また、この例では、連続鋳造機を10のゾーンに区分し、各ゾーンの内側・外側からの冷却水量とそれに伴うスプレー背圧を測定し監視している。スプレー背圧の測定及び制御並びに二次冷却スプレーの制御は幅切り制御とよばれる制御方法が行われている。
【0012】
ここで、幅切り制御とは、むだ水抑止、スラブの割れ発生抑止のため、図2に示すように各ゾーンにおいてスプレーを幅方向に3つのスプレー群(以下、「ルート」ともいう。)毎に分割し、鋳造するスラブ幅によって各ルートの遮断弁を開閉する制御をいう。例えば、図2において、スプレーノズル13への冷却水供給配管14は、ルート1,2,3の3つの系統に分かれており、ルート1が鋳造可能な最大幅の鋳片に対してその中央部を冷却し、ルート3がその端部を冷却し、ルート2がルート1とルート3との間を冷却するように構成されている。第1ゾーンから第10ゾーンまでの各冷却ゾーンで、それぞれ独立して二次冷却水の供給量が調整可能となっているのみならず、各冷却ゾーンのルート1,2,3の3つの系統でも独立して二次冷却水供給配管が配備されており、独立の冷却水の供給量が調整可能となっている。したがって、冷却水の供給に関しては、表現上、ルート毎とは、すなわち二次冷却水供給配管毎と同様な意味で用いる場合がある。
【0013】
本発明は、前提として、連続鋳造機の二次冷却帯が複数のゾーンからなり、該ゾーンはスラブの幅方向に対称に配置された複数の二次冷却スプレーノズル群を備え、該複数の二次冷却スプレーノズル群は各々群毎に異なる冷却水供給配管に接続された冷却設備を用いた二次冷却制御を行う工程において適用される。この条件を具備すれば、垂直曲げ方式、垂直式又はS字式等の連続鋳造方式に適用できる。
【0014】
本発明によれば、まず連続鋳造機外に搬送された直後、すなわち二次冷却帯をスラブが通過した直後のスラブの表面の温度分布を放射温度計で測定する。放射温度計を用いるのは、スラブが凝固し、冷却される過程の温度が高精度かつ容易に測定できるので、特に適しており、2次元の放射温度計であればスラブ表面の温度の分布を効率良く観察測定できるので好ましい。また、スラブが通過した直後の放射温度計による温度分布を測定するとは、当該スラブの先端が二次冷却帯を通過したときに放射温度計にてスラブの表面の温度分布の測定を開始し、スラブの後端が通過するまで続ける操作を意味する。
【0015】
該温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを判断するのは、スラブの表面の温度分布を、デイスプレイ等により映像化して観測することもできるが、コンピュータによりデジタル処理して、次工程のシーケンス制御及び分散制御処理に供することが好ましい。
【0016】
ここで、幅方向の測定温度間隔は、2次元の放射温度計を用いた場合であれば、2次元放射温度計の測定視野に対応するデイスプレイ上の1画素当たりの温度とした。
【0017】
また、スラブの長手方向の中心線に対して左右の領域の温度分布から、左右のスラブ1/2幅におけるピーク温度(最高温度)を決定し、この左右のピーク温度を比較してその温度差が任意の設定温度以上であった場合にはノズル詰まりが発生したと判断して次の工程に移行するように指示を出す。例えば、この任意の設定温度が100℃以上であればノズル詰まりが生じている可能性が極めて高いといえるので、この温度を判断の基準値とすることが好ましい。
【0018】
次の工程では、二次冷却水量の実績値と冷却水供給配管毎の背圧値を測定し、この背圧値を用いて二次冷却水量理論値を算出する。次に、各ルート毎、すなわち二次冷却水供給配管毎に二次冷却水量の実績値と算出した二次冷却水量理論値とを比較する。この結果、理論二次冷却水量が二次冷却水量の実績値よりも大きい冷却水供給配管の場合には、該当する冷却水供給配管の冷却水路に詰まりが生じていると判定する。この判定により、ノズル詰まり生じている発生ゾーンを特定することが出来る。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0020】
第3図に本発明に係る一実施形態であるシステム構成を、第4図には本発明に係る一実施形態である処理フロー図を示す。第4図には例えば、スラブ1/2幅左右における、最高温度を比較し、温度差が100℃以上の場合を示す。スラブの表面の温度分布が幅方向左右の温度のピークの温度の差が100℃以上の場合に、温度分布がスラブ幅方向に対称でないと判断して、処理を行うこともできる。
【0021】
各冷却水供給配管からの冷却水量は下式で算出される。設置の冷却水供給配管型式より、任意の流量における背圧値が既知であることから、背圧実績値から想定される冷却水量を算出できる。
【0022】
=Q×√(P/P
:理論二次冷却水量
:冷却水供給配管の背圧値がPの時の設定冷却水量
:冷却水供給配管の実績の背圧値
:任意の流量での設定冷却水供給配管の背圧値
スラブ幅方向において非対称な表面温度分布を示すスラブを検知した場合、当該表面のプロセス実績(各ゾーンでの冷却水量)より、シーケンス制御および計装DCS(分散制御システム)により、各ルートの冷却水供給配管毎の冷却水量を算出が実行される。同時に冷却水供給配管毎の背圧値より想定される各ルートの冷却水供給配管毎を算出し、比較することで、ノズル詰まりを起こしている該当ルートを特定する。
【符号の説明】
【0023】
12 スラブ
13 スプレーノズル
14 冷却水供給配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機の二次冷却帯の冷却ゾーン毎にスラブの幅方向に対称に配置された複数の二次冷却スプレーノズルが接続された冷却水供給配管を前記冷却ゾーン毎に複数備える連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法であって、
前記スラブが前記二次冷却帯を通過した直後、放射温度計を用いて前記スラブの表面の温度分布を測定する工程と、
該温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを判断する工程とを有し、
該判断する工程において対称でないと判断した場合には、さらに、
前記複数の冷却水供給配管系統から流れる実際の水量を測定する工程と、
前記冷却水供給配管毎の背圧値を測定する工程と、
該背圧値を用いて前記冷却水供給配管毎の理論二次冷却水量を算出する工程と、
前記実際の水量と前記理論二次冷却水量を前記冷却水供給配管毎に比較し、理論二次冷却水量が大きい場合には、大きい結果となった冷却水供給配管の冷却水路に詰まりが生じていると判定する工程とを有する連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。
【請求項2】
前記放射温度計が二次元放射温度計であることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。
【請求項3】
前記温度分布がスラブ幅方向に対称か否かを判断する工程において、前記スラブの表面の温度分布が幅方向の左右の領域のそれぞれの最高温度の温度差が任意の設定温度以上の場合に、前記温度分布がスラブ幅方向に対称でないと判断する請求項1または2に記載の連続鋳造機における冷却水供給配管の詰まりの位置を特定する方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−235327(P2011−235327A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109869(P2010−109869)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】