説明

連続鋳造鋳型

【課題】厚さの異なる複数形状の鋳片の鋳造を行うことが可能な連続鋳造鋳型を提供する。
【解決手段】対向配置された長辺11、12の間に、鋳造する鋳片の厚さに対応した幅を有するN種類の短辺13a、14a、13b、14bを交換可能に対向配置して、上下方向に貫通状態で形成された鋳型空間部Vに溶鋼を入れて、N種類の厚さの鋳片の鋳造が可能な連続鋳造鋳型10であって、対向する長辺11、12に、最上部を除いて上下に連通するN個の分割勾配領域L、L、Lを形成し、最下部に形成される分割勾配領域Lを、最小幅の短辺13、14によって形成される鋳片の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させ、最下部の分割勾配領域Lの上位置に順次形成される分割勾配領域L、Lは、順次幅広の短辺13a、14a、13b、14bによって形成される鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させて、段階的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の厚さの鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造鋳型内に溶鋼を注湯して鋳片を鋳造する場合、溶鋼の凝固過程において凝固収縮が発生するため、溶鋼の鋳型接触面側に形成される凝固シェル(鋳片)と鋳型内面との間に隙間が生じる。そして、凝固シェルでは、隙間に対向した部分の冷却効率が低下するため凝固遅れ(シェル厚みの薄い部分)が発生し、鋳片割れに発展するという問題がある。更に、鋳造中に凝固シェルが割れると、内部から溶鋼が漏れ出すという事故の虞も生じる。そこで、鋳型内面に凝固シェルの凝固収縮プロフィール(単に、収縮プロフィールともいう)を近似したマルチテーパを形成して、凝固シェルと鋳型内面との間に隙間が発生することを抑制した連続鋳造鋳型が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、複数厚さの鋳片を鋳造する場合、複数の連続鋳造鋳型を準備する代わりに、ある厚さの鋳片の鋳造用に作製した連続鋳造鋳型の長辺を共用し、対向配置される長辺の間に対向配置される短辺を、鋳造する鋳片の厚さに対応した幅を有する短辺に交換して、厚さの異なる鋳片を鋳造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−201450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
厚さTの鋳片の鋳造用に作製され、鋳型内面にマルチテーパが設けられた連続鋳造鋳型Aの対向配置された長辺Aの間に対向配置された短辺Aを、厚さTより大きい厚さTの鋳片の鋳造が可能な幅を有する短辺Bに交換し、長辺Aと短辺Bを用いて連続鋳造鋳型Bを構成して鋳造を行う場合、長辺Aの内面には、厚さTの鋳片を形成する凝固シェルAの凝固収縮プロフィールを近似するマルチテーパが形成されているので、長辺A間の内幅は、凝固シェルAの凝固収縮量の上下方向分布を反映して下方に向かうに伴って徐々に縮小している。一方、厚さTの鋳片を形成する凝固シェルBの凝固収縮量は、厚さTの鋳片を形成する凝固シェルAの凝固収縮量より大きくなる。
このため、連続鋳造鋳型B内に形成された凝固シェルBと長辺Aの内面との間には隙間が発生し、隙間は凝固の進行に(凝固シェルBが下方に移動するのに)伴って拡大していくので、凝固シェルBに凝固遅れが発生し、鋳片割れに発展するという問題が生じる。更に、凝固遅れが増大する場合、鋳造中に凝固シェルBが割れて内部から溶鋼が漏れ出すという事故の虞もある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、対向配置された長辺の間に対向配置されて、上下方向に貫通する鋳型空間部を形成している短辺を、鋳造する鋳片の厚さに対応した幅を有する短辺に交換して、複数種類の厚さの鋳片の鋳造が可能な連続鋳造鋳型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に本発明に係る連続鋳造鋳型は、対向配置された長辺の間に、鋳造する鋳片の厚さに対応した幅を有するN種類の短辺を交換可能に対向配置して、上下方向に貫通状態で形成された鋳型空間部に溶鋼を入れて、N種類の厚さの鋳片の鋳造が可能な連続鋳造鋳型であって、
対向する前記長辺に、最上部を除いて上下に連通するN個の分割勾配領域を形成し、最下部に形成される前記分割勾配領域を、最小幅の前記短辺によって形成される前記鋳片の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させ、該最下部の分割勾配領域の上位置に順次形成される前記分割勾配領域は、順次幅広の前記短辺によって形成される前記鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させて、段階的に形成されている。
【0007】
本発明に係る連続鋳造鋳型において、最下部の前記分割勾配領域は、前記最小幅の短辺で形成される前記鋳片の凝固収縮プロフィールに近似させた複数の直線で形成されることが好ましい。
【0008】
本発明に係る連続鋳造鋳型において、前記最下部の分割勾配領域の上位置に形成される前記分割勾配領域は、前記凝固開始側の凝固収縮プロフィールに近似させた1の直線又は連接された2以上の直線によって形成されていることが好ましい。
【0009】
本発明に係る連続鋳造鋳型において、前記短辺の側端面の輪郭線の形状は、前記長辺の内側輪郭線の形状に一致することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る連続鋳造鋳型においては、N種類の厚さの鋳片を鋳造する場合、連続鋳造鋳型の長辺に、最上部を除いて上下に連通するN個の分割勾配領域を形成し、最下部に形成される分割勾配領域を、最小幅の短辺によって形成される鋳片の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させているので、最小厚さの(1番薄い)鋳片を鋳造する場合、最小厚さの鋳片に対応した幅を有する短辺に交換して連続鋳造鋳型を構成し、最下部の分割勾配領域の上端位置が溶鋼湯面高さ位置となるように鋳造空間部に溶鋼を注入して鋳造を行うと、最下部の分割勾配領域に形成される凝固シェルと最下部の分割勾配領域の内面との間に隙間が発生することが抑制され、凝固シェルの冷却を十分に行うことができる。その結果、凝固シェルに凝固遅れが発生せず、凝固シェルの割れを防止して高品質の鋳片を製造することができる。
【0011】
また、最下部の分割勾配領域の上位置に順次形成される分割勾配領域は、順次幅広の短辺によって形成される鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させて、段階的に形成されるので、例えば、K(K=2、3、・・・、N)番目に薄い鋳片Kを鋳造する場合、鋳片Kに対応した幅を有する短辺に交換して連続鋳造鋳型を構成し、下からK番目の分割勾配領域の上端位置が溶鋼湯面高さ位置となるように鋳造空間部に溶鋼を注入して鋳造を行うと、K番目の分割勾配領域に形成される凝固シェルとK番目の分割勾配領域の内面との間に隙間が発生することが抑制され、凝固開始段階における凝固シェルの冷却を十分に行うことができ、凝固シェルの厚みを成長させることができる。
【0012】
下からK番目の分割勾配領域で形成された凝固シェルは、直下のK−1番目の分割勾配領域内に進入するが、K−1番目の分割勾配領域はK−1番目に薄い鋳片K−1(K−1番目に薄い鋳片K−1を形成する凝固シェル)の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに基づいて形成されているので、K−1番目の分割勾配領域内に進入する凝固シェルの表面はK−1番目の分割勾配領域の内面に密着はしない。しかし、K−1番目の分割勾配領域内での凝固シェルの凝固収縮量は、K番目の分割勾配領域内での凝固シェルの凝固収縮量より小さくなるので、凝固シェルの表面と長辺の内面との間の隙間の距離は大きく増大しない。このため、K−1番目の分割勾配領域内においても凝固シェルの冷却を継続して行うことができ、凝固シェルに凝固遅れが発生することを回避できる。
【0013】
そして、下から2番目の分割勾配領域を通過した凝固シェルは、最下部の分割勾配領域内に進入する。最下部の分割勾配領域においても、凝固シェルの表面は最下部の分割勾配領域の内面に密着しないが、凝固シェルの凝固収縮量は更に小さくなるので、凝固シェルの表面と最下部の分割勾配領域の内面との間の隙間の距離は更に大きく増大しない。このため、最下部の分割勾配領域内においても凝固シェルの冷却を継続して行うことができ、凝固シェルに凝固遅れが発生することを回避できる。その結果、凝固シェルの割れを防止して高品質の鋳片を製造することができる。
【0014】
本発明に係る連続鋳造鋳型において、最下部の分割勾配領域が、最小幅の短辺で形成される鋳片の凝固収縮プロフィールに近似させた複数の直線で形成される場合、最下部の分割勾配領域の形状を最小厚さの鋳片の凝固収縮プロフィールに対応させた形状に近づけると共に、簡単な形状にすることができる。これにより、長辺の最下部の分割勾配領域の加工が容易になり、製造時の作業性を良好にすることができると共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
本発明に係る連続鋳造鋳型において、最下部の分割勾配領域の上位置に形成される分割勾配領域が、凝固開始側の凝固収縮プロフィールに近似させた1の直線又は連接された2以上の直線によって形成されている場合、最下部の分割勾配領域の上位置に順次形成される分割勾配領域の形状を、順次幅広の短辺によって形成される鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに対応させた形状に近づけると共に、簡単な形状にすることができる。これにより、長辺の最下部より上側の分割勾配領域の加工が容易になり、製造時の作業性を良好にすることができると共に、製造コストの低減を図ることができる。
【0016】
本発明に係る連続鋳造鋳型において、短辺の側端面の輪郭線の形状が、長辺の内側輪郭線の形状に一致する場合、短辺を交換しても、短辺の端面と長辺の内側面との間に隙間が発生しないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態に係る連続鋳造鋳型の斜視図である。
【図2】同連続鋳造鋳型の長辺の縦断面図である。
【図3】実施例に係る長辺内面のテーパと凝固収縮量の関係を示す説明図である。
【図4】実施例の連続鋳造鋳型内に形成される凝固シェルのコーナー部におけるシェル厚みの分布の計算結果の説明図である。
【図5】凝固シェルのコーナー部のシェル厚みの分布の説明図である。
【図6】比較例に係る長辺内面のテーパと凝固収縮量の関係を示す説明図である。
【図7】比較例の連続鋳造鋳型内に形成される凝固シェルのコーナー部におけるシェル厚みの分布の計算結果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造鋳型10は、対向配置された長辺11、12の間に、3種類(N種類の一例)の短辺13、14、13a、14a、13b、14bを交換可能に配置して、上下方向に貫通状態で形成された鋳型空間部Vに溶鋼を入れて3種類の厚さの鋳片(鋳片の幅は一定)を鋳造するものである。そして、長辺11、12の内側及び短辺13、14(短辺13a、14a、短辺13b、14bも同様、以下同じ)の内側には耐磨耗性の図示しない補強皮膜(例えば、めっき層、溶射層)がそれぞれ形成されている。なお、長辺11、12間の内幅の減少量は僅かであるが、説明の便宜上、図1、図2においては、誇張して示している。以下、詳細に説明する。
【0019】
長辺11、12及び短辺13、14の外表面(鋳型空間部Vを囲う面、即ち溶鋼と接する面とは反対側の面)側には、上下方向(鋳造方向)に並べて配置される複数のボルト(図示せず)からなる締結手段群を介して図示しないバックプレートがそれぞれ取付けられている。これにより、バックプレートの下部に設けられた給水部(図示せず)から、長辺11、12と短辺13、14の外面側に設けられた図示しない多数の導水溝に冷却水を流すことで、長辺11、12及び短辺13、14の冷却を行うと共に鋳型空間部Vに供給した溶鋼の冷却を行なって鋳片を製造することができる。なお、長辺11、12の母材及び短辺13、14の母材は、銅又は銅合金で構成されている。
【0020】
短辺13、14は、厚さ(補強皮膜を含めた厚さ)が、例えば、5mm以上100mm以下程度、幅が50mm以上400mm以下程度で、上下方向の長さが600mm以上1200mm以下程度である。また、長辺11、12は、厚さ(補強皮膜を含めた厚さ)が、例えば5mm以上100mm以下程度、対向配置される一対の短辺13、14の間隔(鋳片と接触する幅)を、600mm以上3000mm以下程度の範囲で変更可能とすることのできる幅を有し、上下方向の長さは短辺13、14と同程度である。これにより、例えば、幅が600mm以上3000mm以下程度、厚みが50mm以上400mm以下程度のスラブ(鋳片の一例)を製造できる。
【0021】
補強皮膜には、Co−Ni系の合金めっき、Ni又はCoをベースとしたCr−Si−B系の合金からなる溶射皮膜、あるいはCo、Ni、又はCo−Ni系の合金に、炭化物(例えばWC)、窒化物(例えばTiN)、及び硼化物(例えばCrB)のいずれか1又は2以上を添加した複合材からなる溶射皮膜を使用することができる。なお、Ni又はCoをベースとしたCr−Si−B系の合金からなる溶射皮膜の場合、ヒュージング処理を行うことで、補強皮膜の緻密化、補強皮膜と長辺母材、補強皮膜と短辺母材との結合性を高めることができ、補強皮膜の寿命を延ばすことができる。一方、Co、Ni、又はCo−Ni系の合金に、炭化物、窒化物、及び硼化物のいずれか1又は2以上を添加した複合材からなる溶射皮膜の場合、補強皮膜に発生する擦り疵の防止、補強皮膜の耐摩耗性の向上を更に図ることができる。
【0022】
対向する長辺11、12に、最上部を除いて上下に連通する3個の分割勾配領域L、L、Lを形成する。そして、最下部に形成される分割勾配領域Lは、最小幅の短辺13、14で形成される最小厚さ鋳片の凝固収縮プロフィールPに近似させ、最下部の分割勾配領域Lの上位置に順次形成される分割勾配領域L、Lは、順次幅広の短辺13a、14a、13b、14bによって形成される、即ち順次厚みが増大する鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールP、Pに近似させて、段階的に形成する。
【0023】
最下部の分割勾配領域Lは、凝固収縮プロフィールPを近似し、連接する複数の直線、例えば2つの直線S、Sからなるマルチテーパで形成されている。ここで、分割勾配領域Lの下側に配置され、直線Sからなる下テーパ部の勾配は、分割勾配領域Lの上側に配置され、直線Sからなる上テーパ部の勾配より大きく(直線Sからなる下テーパ部と垂直面とのなす角度は、直線Sからなる上テーパ部と垂直面とのなす角度より小さく)、対向する長辺11、12に形成された分割勾配領域L間の上端部の内幅は、下端部(長辺11、12の下端部)の内幅より大きくなっている。
なお、分割勾配領域Lを、凝固収縮プロフィールPを近似する連接する3つ以上の直線を有するマルチテーパ(連接する各直線からなるテーパ部の勾配は、下側に配置されるテーパ部ほど勾配が大きい)で形成してもよい。分割勾配領域Lを構成する直線の個数を増加させることで、凝固収縮プロフィールPをマルチテーパで近似する際の近似精度を向上させることができる。
【0024】
また、最下部の分割勾配領域Lの直上(下から2番目)の分割勾配領域Lは、2番目に薄い鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールPに近似させた1の直線で形成されている。ここで、分割勾配領域Lの上テーパ部の勾配は、分割勾配領域Lの勾配より大きく(上テーパ部と垂直面とのなす角度は、分割勾配領域Lと垂直面とのなす角度より小さく)、対向する長辺11、12に形成された分割勾配領域L間の上端部の内幅は、下端部(分割勾配領域L間の上端部)の内幅より大きくなっている。
なお、分割勾配領域Lを、凝固開始側の凝固収縮プロフィールPを近似する連接された2以上の直線(連接する各直線の勾配は、下側に配置される直線ほど勾配が大きい)からなるマルチテーパで形成してもよい。分割勾配領域Lを構成する直線の個数を増加させることで、凝固開始側の凝固収縮プロフィールPをマルチテーパで近似する際の近似精度を向上させることができる。
【0025】
更に、分割勾配領域Lの直上(下から3番目)の分割勾配領域Lは、3番目に薄い(最大厚さの)鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールPに近似させた1の直線で形成されている。ここで、分割勾配領域Lの勾配は、分割勾配領域Lの勾配より大きく(分割勾配領域Lと垂直面とのなす角度は、分割勾配領域Lと垂直面とのなす角度より小さく)、対向する長辺11、12に形成された分割勾配領域L間の上端部の内幅は、下端部(分割勾配領域L間の上端部)の内幅より大きくなっている。
なお、分割勾配領域Lを、連接された2以上の直線(連接する各直線の勾配は、下側に配置される直線ほど勾配が大きい)からなるマルチテーパで形成してもよい。分割勾配領域Lを構成する直線の個数を増加させることで、凝固開始側の凝固収縮プロフィールPをマルチテーパで近似する際の近似精度を向上させることができる。
【0026】
また、対向する長辺11、12の最上部には、下から3番目の分割勾配領域Lより傾斜勾配が大きな(垂直面となす角度が小さな)分割勾配領域Lを形成する。なお、最上部の分割勾配領域Lを、分割勾配領域Lを延長して形成しても、長辺11、12の裏面側と平行な垂直領域として形成してもよい。下から3番目の分割勾配領域Lの上側に分割勾配領域Lを形成することにより、鋳型空間部Vに、分割勾配領域Lの上端が溶鋼湯面高さ位置となるように溶鋼を注入することができる。
【0027】
一方、長辺11、12に組合わせる短辺(最小厚さの鋳片に対応した幅を有する短辺13、14、2番目に薄い鋳片に対応した幅を有する短辺13a、14a、及び3番目に薄い(最大厚さの)鋳片に対応した幅を有する短辺13b、14b)の側端面の輪郭線の形状は、長辺11、12の内側輪郭線の形状に一致する。そして、短辺13、14、13a、14a、13b、14bの内面(溶鋼と接する面)には、鋳片の幅方向の凝固収縮プロフィールを近似する勾配部(図示せず)が形成されている。そして、勾配部の縦断面は、1又は連接する2以上の直線で形成されており、対向する短辺13、14、13a、14a、13b、14b間の内幅は、鋳片が引き抜かれる下方に向けて狭まっている。したがって、勾配部の縦断面が連接する2以上の直線で形成されている場合、連接する各直線の勾配は、下側に配置される直線ほど勾配が大きくなっている。
なお、短辺の内面に、鋳片の幅方向の凝固収縮プロフィールに一致させた膨出部を形成して、対向する短辺13、14、13a、14a、13b、14b間の内幅が、鋳片が引き抜かれる下方に向けて徐々に狭まるようにすることもできる。
【0028】
ここで、最小厚さの鋳片に応じた幅を有する短辺13、14では、分割勾配領域Lの上端位置に対応する高さ位置における幅は、最小厚さの鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の溶鋼湯面高さ位置における幅に一致しており、分割勾配領域Lの下端位置に対応する下端の幅は、最小厚さの鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の下端(連続鋳造鋳型の出口)における幅に一致している。そして、長辺11、12の分割勾配領域L〜Lの高さ範囲に対応する高さ範囲における短辺13、14の幅は、長辺11、12の分割勾配領域Lにおける短辺13、14の幅によって決定される長辺11、12間の分割勾配領域L〜Lの高さ範囲における内幅に一致するように形成する。
【0029】
また、2番目に薄い鋳片に応じた幅を有する短辺13a、14aでは、分割勾配領域Lの上端位置に対応する高さ位置における幅は、2番目に薄い鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の溶鋼湯面高さ位置における幅に一致しており、分割勾配領域Lの下端位置(分割勾配領域Lの上端位置)に対応する高さ位置における幅は、2番目に薄い鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の溶鋼湯面高さ位置から分割勾配領域Lの高さに相当する距離だけ下方にある位置における幅に一致し、分割勾配領域Lの下端位置に対応する下端の幅は、2番目に薄い鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の下端(連続鋳造鋳型の出口)における幅に一致している。そして、長辺11、12の分割勾配領域L、Lの高さ範囲に対応する高さ範囲における短辺13a、14aの幅は、長辺11、12の分割勾配領域L1、における短辺13a、14aの幅によって決定される長辺11、12間の分割勾配領域L、Lの高さ範囲における内幅に一致するように形成する。
【0030】
更に、3番目に薄い鋳片に応じた幅を有する短辺13b、14bでは、分割勾配領域Lの上端位置に対応する高さ位置における幅は、3番目に薄い(最大厚さの)鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の溶鋼湯面高さ位置における幅に一致しており、分割勾配領域Lの下端位置(分割勾配領域Lの上端位置)に対応する高さ位置における幅は、3番目に薄い鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の溶鋼湯面高さ位置から分割勾配領域Lの高さに相当する距離だけ下方にある位置における幅に一致し、分割勾配領域Lの下端位置(分割勾配領域Lの上端位置)に対応する高さ位置における幅は、3番目に薄い鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の溶鋼湯面高さ位置から分割勾配領域Lの高さと分割勾配領域Lの高さの和に相当する距離だけ下方にある位置における幅に一致し、分割勾配領域Lの下端位置に対応する下端の幅は、3番目に薄い鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型の短辺の下端(連続鋳造鋳型の出口)における幅に一致している。そして、長辺11、12の分割勾配領域Lの高さ範囲に対応する高さ範囲における短辺13b、14bの幅は、長辺11、12の分割勾配領域L1、2、における短辺13b、14bの幅によって決定される長辺11、12間の分割勾配領域Lの高さ範囲における内幅に一致するように形成する。
したがって、短辺の高さ位置の幅は、長辺の勾配によって決定される。
【0031】
以上の構成とすることにより、対向配置される長辺11、12と、長辺11、12の間に対向配置される短辺13、14、13a、14a、13b、14bにより形成される鋳型空間部Vでは、対向する長辺11、12及び短辺13、14のそれぞれの内幅が鋳片の引き抜かれる下方へ向けて狭まるようになっている。これによって、短辺13、14、13a、14a、13b、14bを交換して鋳型空間部Vを形成し、分割勾配領L、L、Lの上端がそれぞれ溶鋼湯面高さ位置となるように鋳型空間部Vに溶鋼を注入して、鋳型空間部V内に凝固シェルを生成させると、生成した凝固シェルの凝固収縮に伴って凝固シェルを下方に向けて引き抜くことができる。
【0032】
続いて、本発明の一実施の形態に係る連続鋳造鋳型10の作用について説明する。
凝固収縮プロフィールPは、最下部の分割勾配領域Lの上端位置を溶鋼湯面高さ位置(メニスカス位置)として最小厚さの鋳片を鋳造する際の凝固シェルの厚さ方向の凝固収縮プロフィールである。したがって、最小厚さの鋳片に応じた幅を有する短辺13、14を用いて連続鋳造鋳型10を構成し、最下部の分割勾配領域Lの上端位置が溶鋼湯面高さ位置となるように溶鋼を連続鋳造鋳型10内に注湯して鋳造すると、分割勾配領域Lは、最小厚さの鋳片の厚さ方向の凝固収縮プロフィールPを近似するマルチテーパとなっているため、分割勾配領域Lに形成される凝固シェルと長辺11、12内面との間に隙間が発生することが抑制され、凝固シェルの冷却を十分に行うことができて凝固シェルの厚みを成長させることができる。
【0033】
また、凝固開始側の凝固収縮プロフィールPは、下から2番目の分割勾配領域Lの上端位置を溶鋼湯面高さ位置として、2番目に薄い鋳片を鋳造する際の凝固シェルの厚さ方向の凝固開始側の凝固収縮プロフィールである。したがって、2番目に薄い鋳片に応じた幅を有する短辺13a、14aを用いて連続鋳造鋳型10を構成し、下から2番目の分割勾配領域Lの上端位置が溶鋼湯面高さ位置となるように溶鋼を連続鋳造鋳型10内に注湯して鋳造すると、分割勾配領域L内に形成される凝固シェルと長辺11、12内面との間に隙間が発生することが抑制され、分割勾配領域L内における(凝固開始段階における)凝固シェルの冷却を効率的に行って、凝固シェル厚さの成長を促進することができる。
【0034】
そして、凝固シェルが分割勾配領域Lからの直下の分割勾配領域Lに進入した場合、分割勾配領域Lは、最小厚さの鋳片の厚さ方向の凝固収縮プロフィールPを近似するマルチテーパで形成されているため、分割勾配領域Lの内面と凝固シェルとの間に隙間が発生することになるが、分割勾配領域L内での凝固シェルの凝固収縮量は、分割勾配領域L内での凝固シェルの凝固収縮量より小さくなるので、隙間が大きく増大することは防止される。その結果、凝固シェルが分割勾配領域Lに進入しても、分割勾配領域Lの内面、即ち長辺11、12により凝固シェルを継続して冷却することができ、凝固シェルの厚みを成長させることができる。
【0035】
更に、凝固開始側の凝固収縮プロフィールPは、下から3番目の分割勾配領域Lの上端位置を溶鋼湯面高さ位置として、3番目に薄い(最大厚さの)鋳片を鋳造する際の凝固シェルの厚さ方向の凝固開始側の凝固収縮プロフィールである。したがって、3番目に薄い鋳片に応じた幅を有する短辺13b、14bを用いて連続鋳造鋳型10を構成し、下から3番目の分割勾配領域Lの上端位置が溶鋼湯面高さ位置となるように溶鋼を連続鋳造鋳型10内に注湯して鋳造すると、分割勾配領域L内に形成される凝固シェルと長辺11、12内面との間に隙間が発生することが抑制され、分割勾配領域L内における(凝固開始段階における)凝固シェルの冷却を効率的に行って、凝固シェル厚さの成長を促進することができる。
【0036】
そして、凝固シェルが分割勾配領域Lからの直下の分割勾配領域Lに進入した場合、分割勾配領域Lは、2番目に薄い鋳片の厚さ方向の凝固開始側の凝固収縮プロフィールPを近似する1つの直線で形成されているため、分割勾配領域Lの内面と凝固シェルとの間に隙間が発生することになるが、分割勾配領域L内での凝固シェルの凝固収縮量は、分割勾配領域L内での凝固シェルの凝固収縮量より小さくなるので、隙間が大きく増大することは防止される。その結果、凝固シェルが分割勾配領域Lに進入しても、長辺11、12により凝固シェルを継続して冷却することができ、凝固シェルの厚みを成長させることができる。
【0037】
更に、凝固シェルが分割勾配領域Lから直下の分割勾配領域Lに進入した場合、分割勾配領域Lは、最小厚さの鋳片の厚さ方向の凝固収縮プロフィールPを近似するマルチテーパで形成されているため、分割勾配領域Lの内面と凝固シェルとの間には更に隙間が発生することになるが、分割勾配領域L内での凝固シェルの凝固収縮量は、分割勾配領域L内での凝固シェルの凝固収縮量より小さくなるので、隙間が更に大きく増大することは防止される。その結果、凝固シェルが分割勾配領域Lに進入しても、長辺11、12により凝固シェルを継続して冷却することができ、凝固シェルの厚みを成長させることができる。
【0038】
一方、鋳片は厚さが変化しても幅は一定であるため、短辺の内面に、鋳片の幅方向の凝固収縮プロフィールを近似する勾配部が形成されていると、最下部の分割勾配領域Lの上端位置を溶鋼湯面高さ位置として鋳造しても、下から2番目の分割勾配領域Lの上端位置を溶鋼湯面高さ位置として鋳造しても、下から3番目の分割勾配領域Lの上端位置を溶鋼湯面高さ位置として鋳造しても、形成される凝固シェルと短辺の内面との間に隙間が発生することが抑制され、短辺で凝固シェルの冷却を効率的に行うことができ、凝固シェル厚さの成長を促進することができる。
【実施例】
【0039】
(実施例)
対向配置された長辺と、長辺の間に対向配置される短辺とを有し、鋳造する鋳片の厚さが変わる際には、鋳片の厚さに応じた幅を有する短辺に交換して、3種類の厚さ(200mm、250mm、及び300mm)の鋳片の鋳造が可能な連続鋳造鋳型を作製した。ここで、鋳型空間部の高さ(長辺、短辺の高さ)は900mm、鋳型空間部の短辺間の下端幅は1200mmである。
【0040】
短辺に形成された最上部(短辺上端から下方200mmの範囲)のテーパ率は3%/m、上から2番目の部分(短辺上端より下方200mmから下方200mmの範囲)のテーパ率は2%/m、上から3番目の部分(短辺上端より下方400mmから下方200mmの範囲)のテーパ率は1.5%/m、最下部(短辺上端より下方600mmから下方300mmの範囲)のテーパ率は1.0%/mである。
【0041】
長辺に形成された最下部の分割勾配領域(長辺上端より下方240mmの位置から下方660mmの位置(長辺下端)までの領域)は連接する2の直線から形成され、長辺の上端より下方240mmから下方260mmの範囲のテーパ率は1.6%/m、長辺の上端より下方500mmから下方400mmの範囲のテーパ率は1.0%/mである。また、下から2番目の分割勾配領域(長辺上端より下方160mmから下方80mmの範囲)は1の直線で形成され、そのテーパ率は2.5%/mである。更に、下から3番目の分割勾配領域(長辺上端より下方80mmから下方80mmの範囲)は1の直線で形成され、そのテーパ率は3.7%/mである。なお、最上部の分割勾配領域(長辺の上端から下方80mmの範囲)は1の直線で形成され、そのテーパ率は2.0%/mである。
【0042】
厚さ300mmの鋳片鋳造用の短辺を使用して連続鋳造鋳型を構成し、連続鋳造鋳型長辺の下から3番目の分割勾配領域の上端部(長辺上端より下方80mm位置)が溶鋼の湯面高さ位置となるように溶鋼を注湯して連続鋳造を行った際に連続鋳造鋳型内に形成される凝固シェルの収縮プロフィールのシミュレーションを行った。
【0043】
図3に、厚さ300mmの鋳片を鋳込んだときの凝固シェルの収縮プロフィールと、連続鋳造鋳型長辺の下から3番目の分割勾配領域の上端部(長辺上端より下方80mm位置)が溶鋼の湯面高さ位置となるように溶鋼を注湯したときの鋳型長辺間の内幅の減少を示す収縮量の分布との関係を示す。図3から、溶綱の湯面高さ位置を長辺上端より下方80mm位置となるよう設定した場合、凝固シェルの収縮プロフィールと長辺間の内幅の収縮量とは湯面から下方200mm程度範囲ではよい一致を示している。このため、この範囲では凝固シェルの冷却を十分に行うことができ、凝固シェル厚さの成長を促進することができる。
【0044】
また、実施例の連続鋳造鋳型を用いて300mm厚さの鋳片を鋳造する場合の凝固シェルのコーナー部のシェル厚みの分布を計算により求めた。シェル厚みの分布の計算結果を図4に示す。なお、図4に示すシェル厚みの分布では、図5に示すように、凝固シェルのコーナー部を起点として、凝固シェルの長辺幅方向中央側に向かう方向を横軸の負領域に、凝固シェルの短辺幅方向中央側に向かう方向を横軸の正領域として示している。
【0045】
図4に示すように、長辺に対向する凝固シェルのシェル厚さの分布に関しては、連続鋳造鋳型内湯面位置から下方400mmの範囲(400mmレベル)では、厚さが極小となる部分は形成されない。これは、溶鋼の湯面高さ位置から下方400mmの範囲では、凝固シェルと長辺内面との間に隙間が発生することが抑制され、凝固シェルの冷却が効率的に行われて、凝固シェル厚さが均一に成長できることと対応している。
【0046】
一方、連続鋳造鋳型内湯面位置から下方600mmの位置(600mmレベル)では、コーナー部から長辺の幅方向中央側に約30mmの位置に厚さが極小となる部分が現れ、凝固シェルの長辺の幅方向中央部の厚さとの差は、連続鋳造鋳型の下端部に向けて増大する傾向を示す。これは、溶鋼の湯面高さ位置から下方600mmを超える範囲では、図3に示すように、凝固シェルと長辺内面との間に発生した隙間が徐々に拡大することに対応して、凝固シェルの冷却効果が徐々に低下して、凝固シェル厚さが均一に成長し難いことと対応している。しかしながら、凝固シェルの長辺の幅方向中央部の厚さ(20mm)に対する厚さの減少率は10%と小さく、凝固シェルの冷却が継続して行われ(凝固シェルの厚みが成長して)、凝固シェルに凝固遅れが発生することは回避できると考えられる。
【0047】
短辺に対向する凝固シェルのシェル厚さの分布に関しては、連続鋳造鋳型内湯面位置から200mm下方の位置(200mmレベル)では、コーナー部から短辺の幅方向中央側に約20mmの位置に厚さが極小となる部分が形成されるが、連続鋳造鋳型の上端から下方に向かうに伴って(即ち、凝固シェルの厚さが増加するのに伴って)厚さの差は徐々に解消され、連続鋳造鋳型の下端部では、シェル厚さの極小部分は消失する。
このことは、短辺の内面に、1200mm幅の鋳片の幅方向の凝固収縮プロフィールを近似する4マルチテーパからなる勾配部を形成することにより、凝固シェルと短辺の内面との間に隙間が発生することが抑制でき、凝固シェルの冷却が継続して行われることで凝固シェルの厚みが均一に成長できることと対応している。
【0048】
(比較例)
実施例で構成した厚さ300mmの鋳片鋳造用の連続鋳造鋳型において、連続鋳造鋳型長辺の下から3番目の分割勾配領域の下端部(長辺上端より下方160mm位置)が溶鋼の湯面高さ位置となるように溶鋼を注湯して連続鋳造を行った際に連続鋳造鋳型内に形成される凝固シェルの収縮プロフィールのシミュレーションを行った。
【0049】
図6に、厚さ300mmの鋳片を鋳込んだときの凝固シェルの収縮プロフィールと、鋳型長辺の下から3番目の分割勾配領域の下端部(長辺上端より下方160mm位置)が溶鋼の湯面高さ位置となるように溶鋼を注湯したときの鋳型長辺間の内幅の減少を示す収縮量の分布との関係を示す。図6から、溶鋼の湯面高さ位置を長辺上端より下方160mm位置となるよう設定した場合、凝固シェルと長辺内面との間に隙間が形成され、拡大していくことが分かる。
また、比較例の連続鋳造鋳型を用いて300mm厚さの鋳片を鋳造する場合の凝固シェルのコーナー部のシェル厚みの分布を計算により求めた。シェル厚みの分布の計算結果を図7に示す。
【0050】
図7に示すように、長辺に対向する凝固シェルのシェル厚さの分布に関しては、連続鋳造鋳型の上端から200mm下方の位置では、コーナー部から長辺の幅方向中央側に約20mmの位置に厚さが極小となる部分が発生し、凝固シェルの長辺の幅方向中央部の厚さとの差は、連続鋳造鋳型の下端に向かうに伴って増大する傾向を示す。これは、図6に示すように、凝固シェルと長辺内面との間には当初から大きな隙間が発生しているため、長辺による凝固シェルの冷却が十分に行われていないと考えられる。
【0051】
一方、短辺に対向する凝固シェルのシェル厚さの分布に関しては、連続鋳造鋳型の上端から200mm下方の位置では、コーナー部から短辺の幅方向中央側に約15〜20mmの位置に厚さが極小となる部分が形成され、連続鋳造鋳型の下端に向かうに伴って(即ち、凝固シェルの厚さが増加するのに伴って)、凝固シェルの短辺の幅方向中央部の厚さとの差は略一定で、厚さが極小となる場所は徐々に短辺の幅方向中央側に移動する。短辺に対向する凝固シェルのシェル厚さの分布に現れた厚さ極小部分が消失しないのは、図6に示すように、凝固シェルと長辺内面との間には当初から大きな隙間が発生しているため、短辺側においても凝固シェルの冷却が十分に行われないためと考えられる。
したがって、凝固シェルの冷却が十分に行われず(凝固シェルの厚みが均一に成長し難く)、凝固シェルに凝固遅れが発生する虞が考えられる。
【0052】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
更に、本実施の形態とその他の実施の形態や変形例にそれぞれ含まれる構成要素を組合わせたものも、本発明に含まれる。
例えば、3個の分割勾配領域において、最下部に形成される分割勾配領域を、最小幅の短辺によって形成される鋳片の凝固収縮プロフィールに一致させ、最下部の分割勾配領域の上位置に順次形成される分割勾配領域を、順次幅広の短辺によって形成される鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに一致させて形成してもよい。
また、本実施の形態では、3種類の厚さの鋳片を鋳造する連続鋳造鋳型について説明したが、2種類の厚さの鋳片を鋳造する場合、4種類以上の厚さの鋳片を鋳造する場合についても、本発明の連続鋳造鋳型は適用できる。
更に、本実施の形態では、本発明の連続鋳造鋳型を、垂直曲げ型の連続鋳造機に使用する鋳型に対して適用したが、本発明の連続鋳造鋳型は、湾曲型の連続鋳造機に使用する鋳型(湾曲した鋳型)に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0053】
10:連続鋳造鋳型、11、12:長辺、13、14、13a、14a、13b、14b:短辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された長辺の間に、鋳造する鋳片の厚さに対応した幅を有するN種類の短辺を交換可能に対向配置して、上下方向に貫通状態で形成された鋳型空間部に溶鋼を入れて、N種類の厚さの鋳片の鋳造が可能な連続鋳造鋳型であって、
対向する前記長辺に、最上部を除いて上下に連通するN個の分割勾配領域を形成し、最下部に形成される前記分割勾配領域を、最小幅の前記短辺によって形成される前記鋳片の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させ、該最下部の分割勾配領域の上位置に順次形成される前記分割勾配領域は、順次幅広の前記短辺によって形成される前記鋳片の凝固開始側の凝固収縮プロフィールに一致又は近似させて、段階的に形成されることを特徴とする連続鋳造鋳型。
【請求項2】
請求項1記載の連続鋳造鋳型において、最下部の前記分割勾配領域は、前記最小幅の短辺で形成される前記鋳片の凝固収縮プロフィールに近似させた複数の直線で形成されることを特徴とする連続鋳造鋳型。
【請求項3】
請求項1又は2記載の連続鋳造鋳型において、前記最下部の分割勾配領域の上位置に形成される前記分割勾配領域は、前記凝固開始側の凝固収縮プロフィールに近似させた1の直線又は連接された2以上の直線によって形成されていることを特徴とする連続鋳造鋳型。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の連続鋳造鋳型において、前記短辺の側端面の輪郭線の形状は、前記長辺の内側輪郭線の形状に一致することを特徴とする連続鋳造鋳型。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86121(P2013−86121A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228162(P2011−228162)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000176626)三島光産株式会社 (40)
【Fターム(参考)】