説明

進行方向推定装置、携帯端末、制御プログラム、コンピュータ読み取り可能な記録媒体、および進行方向推定方法

【課題】移動体と装置との相対位置が変化しても、移動体の移動動作から進行方向を精度よく推定する。
【解決手段】加速度微分特徴量a´を出力する加速度微分特徴量計算部110と、加速度微分特徴量a´を、世界座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する鉛直/水平面分解部130と、仮進行方向成分および仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記歩行動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す特徴的パターンとの比較を行うパターン比較部150と、仮値を更新して比較した結果、最も合致度が高い仮値を、推定した進行方向として出力する推定進行方向出力部170とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動体の進行方向を推定する進行方向推定装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
人の腰部やつま先などに装着する端末や、人が自由姿勢で保持する端末等に内蔵された自蔵センサ(加速度・ジャイロ・磁気・温度・気圧センサなど)を用いて、歩行者としての人の歩行動作に特化して、その位置・方位を計測する技術を歩行者デッドレコニング(PDR=Pedestrian Dead Reckoning)と呼び、従来からよく研究されている(非特許文献1)。
【0003】
歩行者はほとんどの場合に平面上を歩行して移動するという制約条件を受ける。PDRでは、このような制約条件を勘案して、歩行者の位置・方位を計測する。このため、PDRには、大きく分けて、以下の二つの要素技術が含まれる。
【0004】
すなわち、(i)平面上における歩行者の移動方位角の推定を行う技術と、(ii)その歩幅(歩行速度)の推定を行う技術との2つである。本発明は、上記(i)の移動方位角の推定を行う技術に関する。なお、上記(ii)の歩幅(歩行速度)推定の技術は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
さて、上記(i)では、図14に示す3つのベクトルについて推定(トラッキング)を行うことにより、平面上における歩行者の移動方位角の推定を行う。すなわち、
(1)センサ座標系における重力方位ベクトル501
(2)センサ座標系における水平基準方位ベクトル502(例えば、真北方位)
(3)センサ座標系における進行方位ベクトル503
の3つである。
【0006】
上記(1)〜(3)のベクトルについて推定(トラッキング)を行うことによって、水平基準方位に対する進行方位のなす角(=方位角504)の推定がなされ、平面上における歩行者の移動方位角の推定を行うことができる。
【0007】
上記(1)〜(3)のベクトルを推定(トラッキング)する手法について説明すると以下のとおりである。
【0008】
まず、上記(1)の重力方位ベクトル501については、次のようにして推定等を行うことができる。重力方位ベクトル501は基本的に重力加速度ベクトルと同一方向である。よって、加速度センサと角速度センサの出力とその信号処理の組み合わせにより、カルマンフィルタなどの枠組みを用いて、重力方位のトラッキングを実現可能である。
【0009】
例えば、非特許文献1には重力方位ベクトル501のトラッキングを行う具体的手法が開示されている。また、重力方位ベクトル501のトラッキングにおいて、磁気を用いる手法も知られている。
【0010】
次に、上記(2)の水平基準方位ベクトル502については、磁気センサによって観測可能な地磁気ベクトルの水平分力を偏角補正することによって、原理的には真北方位を推定することが可能である。また、こうしたトラッキングは、加速度・角速度・磁気センサの出力とその信号処理を組み合わせることで実現可能である。例えば、非特許文献1には水平基準方位ベクトル502のトラッキングの具体的な手法について示されている。
【0011】
次に、上記(3)の進行方位ベクトル503についていえば、センシング手段(例えば、 加速度・角速度・温度・磁気センサ)が歩行者の腰部等に固定して装着されている場合と、そうでない場合とで考慮すべきことが異なる。
【0012】
センシング手段と歩行者との姿勢の関係が固定である場合、そのセンシング手段と歩行者との姿勢の関係が固定されているため、その進行方向は概ね既知となる。よって、この場合、進行方位ベクトル503のトラッキングを行わなくてもすむ。
【0013】
一方、センシング手段と歩行者との姿勢の関係が固定でない場合、歩行者との進行方向を既知のパラメータとして取り扱うことができなくなるので、歩行者の進行方向を求めることが技術的な課題となる。このような場合の例としては、センシング手段を備えるスマートフォンや携帯端末等が、利用者によって任意の姿勢・位置で保持されている場合、あるいは、ポケットや鞄の中に入れられた状態で持ち運ばれる場合などが挙げられる。
【0014】
そこで、従来、上記の技術的課題に対し種々の提案がなされてきた(特許文献2〜4)。
【0015】
例えば、特許文献2には、概ね姿勢固定で歩行する場合や、端末をスイングさせた場合において、加速度から歩行者の進行方向を計測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2005−114537号公報(2005年4月28日公開)
【特許文献2】国際公開第2006/104140号明細書(2006年10月5日)
【特許文献3】特開2003−302419号公報(2003年10月24日公開)
【特許文献4】特開2008―116315号公報(2008年5月22日公開)
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】興梠正克、大隈隆史、蔵田武志、「歩行者ナビのための自蔵センサモジュールを用いた屋内測位システムとその評価」、シンポジウム「モバイル08」予稿集、2008、pp151-156
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、上記従来技術においては、移動体と装置との相対位置が変化した場合において、最適な進行方向を推定することができない場合があった。
【0019】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、移動体と装置との相対位置が変化しても、移動体の移動動作から進行方位を精度よく推定することができる進行方向推定装置等を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明に係る進行方向推定装置は、移動体の運動状態を計測するセンサの計測データを用いて、移動体が一定の移動動作により移動するときの進行方向を推定する進行方向推定装置において、上記センサである3次元加速度センサまたは3次元角速度センサにおいて計測され、予め定められた座標系により表された計測データを取得するデータ取得手段と、上記データ取得手段が取得した上記計測データを、上記座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する成分分解手段と、上記成分分解手段により得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す所定のパターンとの比較を行うパターン比較手段と、上記パターン比較手段による比較の結果、パターンが所定程度以上に合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する出力手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る進行方向推定方法は、移動体の運動状態を計測するセンサの計測データを用いて、移動体が一定の移動動作により移動するときの進行方向を推定する進行方向推定方法において、上記センサである3次元加速度センサまたは3次元角速度センサにおいて計測され、予め定められた座標系により表された計測データを取得するデータ取得ステップと、上記データ取得ステップにおいて取得した上記計測データを、上記座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する成分分解ステップと、上記成分分解ステップにより得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す所定のパターンとの比較を行うパターン比較ステップと、上記パターン比較ステップにおける比較の結果、パターンが所定程度以上に合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する出力ステップとを含むことを特徴とする。
【0022】
上記構成から導かれる作用・効果について述べる前に、本発明に適用される一般的概念のフレームワークについて説明する。
【0023】
(理論的なフレームワーク)
移動体の移動動作の運動パターンには、再現性および周期性が現れる場合がある。移動動作とは、例えば、人が両足で移動するときの動作のことをいう。人が移動するときの動作の例としては、平地を小走りする、歩行する、あるいは斜面や階段を上る、といった動作などが挙げられる。
【0024】
また、人間の歩行動作は高度に統制された再現性の高い運動であり、人(歩行者)の重心にかかる運動のパターンは再現性と周期性の高いものである。このため、人の歩行時には、その重心にかかる加速度ベクトルと角速度ベクトルには、特徴的な周期性の高いパターンが現れる。
【0025】
また、携帯電話やスマートフォン等に内蔵されたセンサが人の手に保持された場合や、衣服のポケットや手提げカバンなどに入れられた場合であっても、基本的にはその重心の運動が伝達されるため、同様の運動が観測される傾向がある。つまり、移動体の重心の運動が、進行方向推定装置を搭載する携帯電話等にも伝達される。
【0026】
よって、移動体の移動動作に特徴的なパターンを、移動体にかかる加速度または角速度を示す加速度ベクトルまたは角速度ベクトルを解析することで、移動体の進行方向を予測することができる。
【0027】
以下、歩行動作時における加速度ベクトル、および、角速度ベクトルについての特徴的パターンについて説明する。
【0028】
[加速度ベクトルの特徴的パターン]
加速度ベクトルについては、その鉛直方向の成分には1歩を1周期とするパターンが現れ、進行方向の成分にも1歩を1周期とするパターンが現れる。また、左右方向の成分には2歩を1周期とするパターンが現れる。
【0029】
また、このような波形をフーリエ変換して得られるパワースペクトラムにも、このような特徴点が現れる。
【0030】
[角速度ベクトルの特徴的パターン]
角速度ベクトルについては、ヨー軸(すなわち鉛直方向の軸)周りの角速度成分には、2歩を1周期とするパターンが現れ、ピッチ軸(すなわち横方向の軸)周りの角速度成分には、1歩を1周期とするパターンが現れる。また、ロール軸(すなわち進行方向の軸)周りの角速度成分には、2歩を1周期とするパターンが現れる。
【0031】
[進行方向の推定]
前述した特徴が、加速度ベクトルまたは角速度ベクトルについて観測されることが事前に分かっている。このため、この特徴が各軸に現れるように軸決めを行うことで、進行方向を推定することができる。なお、鉛直方向成分の軸決めは、例えば、重力方位べクトルを求めることによって行うことができる。重力方位ベクトルは、加速度センサ、ジャイロセンサ、および地磁気センサ等のセンサデータを用いて測定することができる。
【0032】
なお、前述の特徴は、加速度微分ベクトルおよび角加速度ベクトルについても観測されるが、これらについては後に詳しく述べる。
【0033】
(上記構成について)
上記構成によれば、仮進行方向を用いて分解した計測データの成分について、移動動作の特徴を表す所定パターンとの比較を行う。なお、予め定められた座標系としては、任意の座標系を採用することができ、例えば、世界座標系などを採用することができる。世界座標系とは、センサ固有の座標系を全地球的な座標系に変換したものであり、全地球的測地系と称することもある。
【0034】
成分分解において、上記座標系における鉛直方向成分は、事前に、重力方位べクトルを求めることによって得られる。よって、鉛直軸に直交する平面は、このようにして求めた鉛直方向成分を基準に得ることができる。
【0035】
上記仮進行方向とは、上記平面上における進行方向を仮に示すものであり、任意に設定することができる。そして、上記構成では、上記平面において仮進行方向の軸と、仮進行方向に直交する軸、すなわち仮横方向の軸とを決定する。
【0036】
このようにして、計測データを、鉛直方向成分、仮進行方向成分、および仮横方向成分に成分分解する。
【0037】
また、移動動作の周期性を表すパターンとは、上記例示した移動動作において、実際に、進行方向、横方向に生じる加速度または角速度を計測した場合に現れる周期性を示す特徴的パターンのことである。移動動作の周期性を表すパターンとしては、例えば、歩行動作における上記特徴的パターンが挙げられる。この特徴的パターンとして、事前に移動動作における進行方向および横方向の加速度または角速度を計測して記憶されたものを用いてもよい。
【0038】
パターンの比較とは、このような周期性を有する波形のパターンを照合したり、パワースペクトラムの特徴点との比較を行ったりすることである。
【0039】
そして、上記構成によれば、パターンの比較の結果、所定程度以上パターンが合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する。
【0040】
すなわち、仮進行方向成分と、上記特徴的パターンの進行方向成分とのパターン合致、および、仮横方向成分と、上記特徴的パターンの横方向成分とのパターン合致の少なくとも一方が、所定程度以上であれば、所定程度以上パターンが合致していると判定してもよい。
【0041】
このように、上記構成によれば、仮進行方向成分および仮横方向成分に現れるパターンと、実際の特徴的パターンとのパターンが所定程度以上合致しているか否かに応じて、仮進行方向を、推定した進行方向として出力することができる。上記パターンの合致が所定程度以上である場合、仮進行方向は、実際の進行方向により近いといえる。
【0042】
この結果、移動体と装置との相対位置が変化しても、移動体の移動動作から進行方向を精度よく推定することができるという効果を奏する。
【0043】
なお、鉛直方向成分についても、上記パターン比較を行ってもかまわない。
【0044】
本発明に係る進行方向推定装置では、上記座標系により表された計測データを時間微分する時間微分手段を備え、上記データ取得手段は、上記時間微分手段によって時間微分された上記計測データを取得することが好ましい。
【0045】
近年、よく用いられるMEMS(MicroElectroMechanical System)タイプの加速度センサにおいては、その出力には、ゼロGオフセット(すなわち、加速度がまったく加わっていない状態でのオフセット出力)が無視できないレベルで存在する。このため、加速度センサの出力を用いる場合、適切に補正する必要があるが、その手順は煩雑である。
【0046】
さらに、温度などの外的要因によって加速度センサから出力されるオフセット出力の特性が変化する。このため、加速度センサの素の出力を解析対象の特徴量として用いると、そのオフセット出力の影響を補正したり、外的要因による特性変化に対応したりすることは困難が伴う。
【0047】
ところで、十分に高速にサンプリングされている加速度センサの出力については、姿勢の変化が小さく無視できる場合、時刻tと時刻t+Δtとにおける加速度センサのサンプルの差分データから加速度微分(いわば加加速度)を得ることができる。
【0048】
ここで、非常に短い間隔でサンプルされている場合、近接する(例えば、時刻tと時刻t+Δtとにおける)加速度センサの出力に含まれるゼロGオフセット出力は同一とみなせる。このため、その差分データでは、ゼロGオフセット出力が相殺され、オフセット出力の影響を受けない。
【0049】
しかも、加速度の時間微分には、基本的に前述の加速度のパターンと同一の周期的な性質を持つパターンが現れる(ただし、位相は90度ずれている)。
【0050】
従って、加速度の微分量は解析対象の特徴量として、加速度センサが持つオフセット出力の影響を受けない利点がある。
【0051】
上記構成によれば、微分された計測データを変換して変換後データを得るので、加速度センサのゼロGオフセットの影響を減少させることができる。角速度についても同様のことが言える。
【0052】
本発明に係る進行方向推定装置では、上記成分分解手段により得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分について、パワースペクトラムを取得するパワースペクトラム取得手段を備え、上記パターン比較手段は、上記パワースペクトラム取得手段が取得したパワースペクトラムと、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表すパワースペクトラムパターンとの比較を行うことが好ましい。
【0053】
上記構成によれば、移動動作の周期性を表すパワースペクトラムパターンとの比較を行うことで、比較的容易に、前述した移動動作の周期性を表すパターンとの比較を行うことができる。なお、パワースペクトラムは、各軸の成分について、それぞれ1次元高速フーリエ変換を適用することにより得ることができる。
【0054】
本発明に係る進行方向推定装置では、上記成分分解手段は、各方位について設定した上記仮進行方向にて上記成分分解を行い、上記パターン比較手段は、上記成分分解手段により得られた上記各方位の仮進行方向成分および仮横方向成分について、上記所定のパターンとの比較を行い、上記出力手段は、上記パターン比較手段による比較の結果から、各方位の上記仮進行方向うち、最もよく上記所定のパターンに合致する上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力することが好ましい。
【0055】
上記構成によれば、平面上の全方位について所定の方位から順に仮値を更新して前述した特徴的なパターンに最も合致しているものを進行方向として選ぶことができる。なお、方位は、任意の分解能にて設定することができる。
【0056】
本発明に係る進行方向推定装置では、上記座標系により表された計測データに低域通過フィルタを適用する低域通過手段を備え、上記データ取得手段は、上記低域通過手段によって低域通過フィルタを適用された上記計測データを取得することが好ましい。
【0057】
加速度成分または角速度成分には含まれる高周波のノイズ成分が含まれる場合がある。高周波のノイズ成分の例としては、足が着地したときに発生する振動が引き起こす成分などが挙げられる。
【0058】
上記構成によれば、成分分解に先立って、変換後データに低域通過フィルタを適用して、上記高周波ノイズ成分を事前に取り除くことができる。これにより、進行方向の推定の精度向上を図ることができる。
【0059】
本発明に係る進行方向推定装置は、携帯端末において搭載することが好ましい。また、本発明に係る進行方向推定装置は、人との相対位置が絶えず変化しても精度よく進行方向を推定できるため、人の体に固定しないで用いられるような携帯端末にも好ましく適用できる。
【0060】
携帯端末の例としては、携帯電話機、スマートフォン、ポータブル音楽プレーヤ等が挙げられる。
【0061】
なお、上記進行方向推定装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより進行方向推定装置をコンピュータにて実現させる制御プログラムおよびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0062】
本発明に係る進行方向推定装置は、3次元加速度センサまたは3次元角速度センサにおいて計測され、予め定められた座標系により表された計測データを取得するデータ取得手段と、上記データ取得手段が取得した上記計測データを、上記座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する成分分解手段と、上記成分分解手段により得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す所定のパターンとの比較を行うパターン比較手段と、上記パターン比較手段による比較の結果、パターンが所定程度以上に合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する出力手段とを備える構成である。
【0063】
また、本発明に係る進行方向推定方法は、3次元加速度センサまたは3次元角速度センサにおいて計測され、予め定められた座標系により表された計測データを取得するデータ取得ステップと、上記データ取得ステップにおいて取得した上記計測データを、上記座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する成分分解ステップと、上記成分分解ステップにより得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す所定のパターンとの比較を行うパターン比較ステップと、上記パターン比較ステップにおける比較の結果、パターンが所定程度以上に合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する出力ステップとを含む方法である。
【0064】
よって、移動体と装置との相対位置が変化しても、移動体の移動動作から進行方向を精度よく推定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施形態に係る進行方向推定装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】上記進行方向推定装置が備える加速度微分特徴量計算部の構成例について示す図である。
【図3】加速度データの特徴的パターンの例を示すグラフであり、(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、人が歩行動作により移動する場合に観測できる、鉛直方向、進行方向、および横方向の加速度を表している。
【図4】加速度を微分した加速度微分データの特徴的パターンを示すグラフであり、(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、鉛直方向、進行方向、および横方向の加速度微分の特徴量を表している。
【図5】加速度微分データを1次元高速フーリエ変換(FFT)して得られるパワースペクトラムを示すグラフである。
【図6】仮の進行方向が、実際の進行方向と合致していない場合のパワースペクトラムの例を示すグラフである。
【図7】上記加速度微分特徴量計算部における前処理の流れについて例示するフローチャートである。
【図8】上記進行方向推定装置における進行方向の推定処理の流れについて例示するフローチャートである。
【図9】加速度データにFFTを適用して得られるパワースペクトラムの特徴量を示すグラフである。
【図10】本発明の他の実施形態に係る進行方向推定装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図11】角速度データの特徴的パターンの例を示すグラフであり、(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、ヨー角速度の成分、ロール角速度、およびピッチ角速度について示している。
【図12】角速度データを1次元高速フーリエ変換(FFT)して得られるパワースペクトラムを示すグラフである。
【図13】上記進行方向推定装置が備える角速度特徴量計算部の構成例について示す図である。
【図14】平面上における歩行者の移動方位角を推定するために推定(トラッキング)する3つのベクトルについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。まず、図1を参照しながら、進行方向推定装置10の概略的構成について説明する。図1は、進行方向推定装置10の構成例を示す機能ブロック図である。
【0067】
図1に示すように、進行方向推定装置10は、計測部50、制御部100、および記憶部200を備えている。
【0068】
進行方向推定装置10は、移動体(人や物体)に装着または保持されて、該移動体の進行方向を示すパラメータを出力する装置である。具体的には、進行方向推定装置10は、移動体の運動状態、姿勢の変化等を検出するセンサを備える計測部50が計測した計測データを用いて、当該移動体の移動の進行方向を推定して出力する。
【0069】
計測部50は、より具体的には、角速度センサ(3次元角速度センサ)51および加速度センサ(3次元加速度センサ)52を備える構成である。
【0070】
角速度センサ51には、3軸の角速度センサを用いている。角速度センサ51は、計測した角速度をベクトルデータである角速度データωとして出力する。なお、角速度センサ51が出力する角速度データωは、センサ座標系により表されている。また、角速度センサ51は、例示的に、MEMS型のものを用いている。しかしながら、これに限られず角速度センサ51は水晶型のものなどを用いてもよい。
【0071】
加速度センサ52には、3軸の加速度センサを用いている。加速度センサ52は、計測した加速度をベクトルデータである加速度データAとして出力する。なお、加速度センサ52が出力する加速度データAは、センサ座標系により表されている。また、加速度センサ52には、例示的に、MEMS型を用いている。
【0072】
なお、角速度センサ51および加速度センサ52は、十分に高速にサンプリングを行っているものとする。以下、その出力のサンプリング間隔をΔtと表す。また、計測部50の構成は、上記に示したものに制限されない。例えば、計測部50は、地磁気センサをさらに備える構成であってもよい。
【0073】
以後、角速度センサ51が出力する角速度データωおよび加速度センサ52が出力する加速度データAをまとめて、計測データとも称する。
【0074】
制御部100は、進行方向推定装置10を統括的に制御するものであり、計測部50が出力する計測データを用いて移動体の進行方向を推定し、出力する制御を行う。
【0075】
記憶部200は、進行方向推定装置10で使用する各種データを記憶する。
【0076】
(特徴量データについて)
ここで、図3、図4、および図5を用いて、人が歩行動作により移動する場合に得られる加速度に関する各種データの特徴的パターンについて説明すると次のとおりである。
【0077】
[加速度データの特徴的パターン]
図3は、加速度データの特徴的パターンの例を示すグラフである。同図の(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、人が歩行動作により移動する場合に観測できる、鉛直方向、進行方向、および横方向の加速度を表したグラフである。
【0078】
加速度の計測により得られる加速度ベクトルについては、次のような特徴的パターンが現れる。まず、図3の(a)に示す鉛直方向の成分には1歩を1周期とするパターンが現れ、また、図3の(b)に示す進行方向の成分にも1歩を1周期とするパターンが現れる。そして、図3の(c)に示す横方向(左右方向)には2歩を1周期とするパターンが現れる。
【0079】
なお、この例においては、加速度成分に含まれる高周波のノイズ成分がローパスフィルタを用いて事前に除去されている。
【0080】
[加速度微分データの特徴的パターン]
図4は、加速度を微分した加速度微分データの特徴的パターンを示すグラフである。同図の(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、図3の(a)、(b)、および(c)に示した加速度データを時間微分して得られる加速度微分データを表したグラフである。
【0081】
加速度データを時間微分して得られる加速度微分データには、図4の(a)〜(c)に示すように、上述の加速度データの特徴的パターンと同様の周期性を有する特徴的パターンが現れる。ただし、図4の(a)〜(c)に示すグラフは、図3の(a)〜(c)に示すグラフと比べて位相が90度ずれている。
【0082】
なお、この例においても、加速度微分成分に含まれる高周波のノイズ成分がローパスフィルタを用いて事前に除去されている。
【0083】
また、加速度の微分量では、加速度データに含まれる誤差やノイズ成分がわずかであっても増幅されるため、加速度の微分量にはローパスフィルタを適用することが好ましい。
【0084】
[加速度微分のパワースペクトラム]
図5は、加速度微分データを1次元高速フーリエ変換(FFT)して得られるパワースペクトラムを示すグラフである。
【0085】
図5に示すように、加速度微分のパワースペクトラムには、次のような特徴的パターンが現れる。まず、点線で示す鉛直方向についてのパワースペクトラムには、2Hz付近に周波数のピークPK11が現れる。これは、2Hzが歩行動作の基本的な周波数であることを示している。また、実線で示す進行方向についてのパワースペクトラムについても、2Hz付近に周波数のピークPK12が現れる。このように、進行方向についても鉛直方向と同様のピークが現れる。
【0086】
また、破線で示す横方向についてのパワースペクトラムについては、1Hz付近に周波数のピークPK13が現れる。横方向では、ピークが現れる周波数は、鉛直方向(あるいは進行方向)においてピークが現れる周波数の1/2となる。
【0087】
このように、人が歩行動作により移動するときの加速度微分のパワースペクトラムには、特徴的パターンが現れる。
【0088】
よって、進行方向を推定するには、仮の進行方向を任意に定めて、加速度微分のパワースペクトラムの周波数のピークを調べて上記特徴的パターンが現れるかどうかを判定すればよい。別の表現をすれば、加速度微分の周波数領域における特徴量を調べて、それが歩行動作における特徴的パターンと合致しているかを判定すればよい。
【0089】
より具体的にいえば、1Hz付近および2Hz付近に周波数のピークが上述のように現れるかどうかを判定すればよい。
【0090】
仮の進行方向が、実際の進行方向と合致していれば、上記特徴的パターンが現れる。言い換えれば、上記特徴的パターンが、鉛直方向、進行方向、および当該進行方向に直交する横方向の各軸に現れるように軸決めを行えばよい。
【0091】
なお、図5に示す左右方向についてのパワースペクトラムにおいて、3Hz付近にも山が存在するが、この山は無視してもかまわない。
【0092】
これに対して、仮の進行方向が、実際の進行方向と合致していない場合、このような特徴的パターンは現れない。図6を用いて、仮の進行方向が、実際の進行方向と合致していない場合の例を示す。図6は、仮の進行方向が、実際の進行方向と合致していない場合のパワースペクトラムの例を示すグラフである。
【0093】
図6に示すように、まず、点線で示す鉛直方向についてのパワースペクトラムには、図5の例に見られたように、2Hz付近に周波数のピークPK11が現れる。
【0094】
図6において実線で示す仮の進行方向についてのパワースペクトラムについては、2Hz付近に一番大きな周波数のピークPK122が現れるものの、1Hz付近にもやや大きな周波数のピークPK121が現れている。
【0095】
また、図6において破線で示す仮の横方向についてのパワースペクトラムについては、1Hz付近に一番大きな周波数のピークPK131が現れるものの、2Hz付近にもやや大きな周波数のピークPK132が現れている。
【0096】
このように、図6に示す仮の進行方向および仮の横方向のパワースペクトラムでは、図5とは異なり、2つのピークが現れる。これは、仮の進行方向が、実際の進行方向と合致していないため、進行方向のピークと、横方向のピークとが混ざって現れるためである。
【0097】
なお、鉛直方向についてのパワースペクトラムについては、図5と図6とでさほど相違がないが、これは、鉛直方向は、加速度および角速度等により相当程度に高い精度で推定が可能であるからであり、既知のものとして扱えるからである。
【0098】
(記憶部)
記憶部200は、仮値記憶部201、パターン記憶部202、および合致度記憶部203を備える構成である。
【0099】
仮値記憶部201には、仮の進行方向を示す方位を示す仮値が記憶される。仮値は、所定の分解能で分割された方位を示す値により表される。方位は、例示的に、0.5度刻みで分割している。しかしながら、これに限られず、方位は、進行方向を所望の精度で推定するのに要求される分解能で分割されていればよい。
【0100】
パターン記憶部202には、人が歩行動作により移動するときに計測される加速度の微分特徴量について得られるパワースペクトラムのピーク周波数の特徴的パターンが記憶されている。具体的には、ピーク周波数の特徴的パターンは、人の歩行動作における世界座標上での鉛直方向と、鉛直方向に直交する水平面における人の進行方向と、当該水平面において進行方向に直交する横方向とのそれぞれについて記憶されている。
【0101】
パターン記憶部202には、例えば、図5で示したような、パワースペクトラムのピーク周波数の特徴的パターンが記憶されている。
【0102】
このピーク周波数の特徴的パターンは、事前に計測した加速度に基づいて得られたものを、パターン記憶部202に記憶しておけばよい。
【0103】
合致度記憶部203には、進行方向の仮値と、パターンの比較により得られる合致度とが対応付けて記憶される。
【0104】
(制御部)
制御部100は、加速度微分特徴量計算部(データ取得手段)110、鉛直/水平面分解部(成分分解手段)130、1次元離散フーリエ変換部(パワースペクトラム取得手段)140、パターン比較部(パターン比較手段)150、仮値更新部160、および推定進行方向出力部(出力手段)170を備える。
【0105】
加速度微分特徴量計算部110は、計測部50が出力する計測データから、加速度微分特徴量aを計算するものである。ここで、加速度微分特徴量計算部110の詳細について、図2を用いて説明すると次のとおりである。図2は、加速度微分特徴量計算部110のさらに詳しい構成例について示す図である。
【0106】
図2に示すように、加速度微分特徴量計算部110は、姿勢角トラッキング部111、座標系変換部112、時間微分部(時間微分手段)113、および低域通過フィルタ(低域通過手段)114を備えている。
【0107】
姿勢角トラッキング部111は、姿勢角をトラッキングするものである。姿勢角トラッキング部111は、具体的には、角速度センサ51から出力される角速度データωと、加速度センサ52から出力される加速度データAを用いて、姿勢角を算出する。そして、姿勢角トラッキング部111は、算出した姿勢角に基づいて、センサ固有の座標系を世界座標系に変換する回転行列Rを生成して出力する。
【0108】
ここで、世界座標系としては、例えば、NED(North-East-Down)座標系が挙げられる。なお、変換の対象となる座標系は、世界座標系に限られず、任意の点を基準として設定した座標系であってよい。例えば、センサ固有の座標系を、計測部50が計測を開始した地点を基準とする座標系に変換してもよい。この場合、重力方向の軸と、真北方向の軸と、これらの軸に直行する軸とからなる座標系への変換を行えばよい。なお、図14を用いて示したように、真北方向は、地磁気センサ等で検出することが可能である。
【0109】
座標系変換部112は、姿勢角トラッキング部111が出力する回転行列Rを、時間微分部113が出力する加速度微分データA´に適用し、センサ固有の座標系を世界座標系に変換する。座標系変換部112は、世界座標系に変換された加速度微分データA´を出力する。
【0110】
時間微分部113は、加速度センサ52から出力される加速度データAを時間微分した加速度微分データA´を出力する。時間微分部113は、具体的には、時刻tにおける加速度データと、時刻(t+Δt)における加速度データとの差分を計算することで、加速度微分データA´(加加速度)を得ることができる。
【0111】
低域通過フィルタ114は、世界座標系に変換された加速度微分データA´の高周波成分を除去した加速度微分特徴量a´を出力する。なお、低域通過フィルタ114は、例えば、FIR(Finite Impulse Response)型のフィルタによって実現可能である。
【0112】
再び図1に戻り、残りの各部について説明する。
【0113】
鉛直/水平面分解部130は、加速度微分特徴量a´を鉛直方向成分と、仮進行方向成分と、仮横方向成分とに成分分解するものである。鉛直/水平面分解部130は、具体的には、次のようにして上記成分分解を行う。
【0114】
まず、鉛直/水平面分解部130は、計測部50から出力される加速度データAおよび角速度データωなどを用いて、重力方位ベクトルを算出する。そして、鉛直/水平面分解部130は、重力方位ベクトルを用いて、鉛直方向軸を決定し、加速度微分特徴量a´を鉛直方向軸に従って成分分解して鉛直方向成分を得る。
【0115】
また、鉛直/水平面分解部130は、仮値記憶部201から仮値を取得して、取得した仮値に基づいて、加速度微分特徴量a´の鉛直方向に直交する水平面についてさらに成分分解を行う。
【0116】
すなわち、鉛直/水平面分解部130は、水平面について、加速度微分特徴量a´を、仮値が示す仮進行方向成分と、当該仮進行方向成分に直交する仮横方向成分とに成分分解する。
【0117】
これは、別の表現をすれば、鉛直/水平面分解部130は、鉛直方向軸に直交する仮進行方向軸と、鉛直軸および仮進行方向軸に直交する仮横方向軸とを決定し、加速度微分特徴量a´を、上記仮進行方向軸と、上記仮横方向軸とにマッピングするといえる。
【0118】
このようにして、鉛直/水平面分解部130は、鉛直方向軸(Z軸)、仮進行方向軸(X軸)、および仮横方向軸(Y軸)を決定し、それぞれの軸に従い、加速度微分特徴量a´を、鉛直方向成分a´、仮進行方向成分a´、および仮横方向成分a´に成分分解して、それぞれ出力する。
【0119】
1次元離散フーリエ変換部140は、分解された各軸について、FFTを適用する。1次元離散フーリエ変換部140は、より詳細には、鉛直軸処理部141、水平面X軸処理部142、および水平面Y軸処理部143を備えている。
【0120】
鉛直軸処理部141、水平面X軸処理部142、および水平面Y軸処理部143は、それぞれ、鉛直方向成分a´、仮進行方向成分a´、および仮横方向成分a´に対してFFTを適用する。
【0121】
なお、1次元離散フーリエ変換部140における1次元FFTの時間窓の長さは、たとえば、歩行動作が4、5歩程度収まる範囲にすることが好ましい。よって、時間窓の長さは、例えば、5.12秒程度に設定することが好ましい。
【0122】
鉛直軸処理部141、水平面X軸処理部142、および水平面Y軸処理部143は、FFTを適用した結果、Z軸、水平X軸、および水平Y軸について、それぞれ、鉛直方向パワースペクトラムP(a´)、仮進行方向パワースペクトラムP(a´)、および仮横方向パワースペクトラムP(a´)を出力する。
【0123】
パターン比較部150は、各方向のパワースペクトラムについて、予め定められたピーク周波数の特徴的パターンとの比較を行う。
【0124】
より具体的には、パターン比較部150は、鉛直方向パワースペクトラムP(a´)、仮進行方向パワースペクトラムP(a´)、および仮横方向パワースペクトラムP(a´)を、パターン記憶部202に記憶されるパワースペクトラムのピーク周波数の特徴的パターンとそれぞれ比較する。
【0125】
また、パターン比較部150は、上記比較の結果、各方向の成分について、パワースペクトラムのピーク周波数の特徴的パターンとの合致度を計算する。この計算の詳細については、後述する。
【0126】
そして、パターン比較部150は、計算した合致度を、進行方向の仮値に対応付けて、合致度記憶部203に記憶する。
【0127】
パターン比較部150は、0度から、0.5度刻みで、180度までの360方位について上記比較を行う。
【0128】
仮値更新部160は、仮値記憶部201に記憶されている進行方向の仮値を補正して、補正後の仮値により進行方向の推定を行うよう制御する。すなわち、パターン比較部150における比較が終了すると、仮値更新部160は、現在の仮値に0.5度を加えた後、再度、成分分解を行うよう鉛直/水平面分解部130に指示する。
【0129】
仮値更新部160は、例示的に、0度から、0.5度刻みで、180度まで、仮値を更新していくものとしている。すなわち、仮値更新部160は、360方位について順に仮の進行方向を設定する。
【0130】
推定進行方向出力部170は、すべての方位について比較が終了したときに、合致度記憶部203に記憶されている各方位と、合致度との組を参照して、最も合致度が高い方位を推定した進行方向として出力する。
【0131】
(処理の流れ)
以下において、図7および図8を用いて、進行方向推定装置10が実行する処理の流れについて説明する。
【0132】
まず、図7を用いて、加速度微分特徴量計算部110における処理の流れについて説明する。図7は、加速度微分特徴量計算部110における前処理の流れについて例示するフローチャートである。
【0133】
図7に示すように、まず、加速度微分特徴量計算部110が、加速度センサからセンサデータ(加速度データ)を取得する(S11)。
【0134】
続いて、時間微分部113が、センサデータの時間微分を計算する(S12)。続いて座標系変換部112が、センサデータの時間微分を世界座標系に座標変換する(S13)。続いて、低域通過フィルタ114が座標変換されたセンサデータに低域通過フィルタを適用する(S14)。
【0135】
加速度微分特徴量計算部110は、このようにして得られた低域通過フィルタ適用後データを出力する(S15)。
【0136】
次に、図8を用いて、進行方向推定装置10における進行方向の推定処理の流れについて説明する。図8は、進行方向推定装置10における進行方向の推定処理の流れについて例示するフローチャートである。
【0137】
図8に示すように、まず、鉛直/水平面分解部130が、加速度微分特徴量を取得する(S21)。続いて、鉛直/水平面分解部130が、進行方向の仮値に基づいて加速度微分特徴量を鉛直軸と、水平面(2軸)に分解する(S22)。
【0138】
続いて、1次元離散フーリエ変換部140が、各軸成分について1次元離散フーリエ変換を適用する(S23)。
【0139】
続いて、パターン比較部150が、ピーク周波数と歩行動作の特徴的パターンとを比較して合致度を計算する(S24)。
【0140】
ここで、仮値を最後まで更新していない場合(S25においてNO)、仮値更新部160が、進行方向の仮値を更新する(S26)。一方、仮値を最後まで更新している場合(S25においてYES)、推定進行方向出力部170が、最も合致度が高い仮値を推定した進行方向として出力する(S27)。
【0141】
(作用・効果)
以上のように、進行方向推定装置10は、自装置に保持されるセンサの計測データを用いて、自装置が人の歩行動作に伴って移動するときの進行方向を推定する進行方向推定装置10であって、上記センサである加速度センサ52において計測され、時間微分された後、世界座標系に変換され、低域通過フィルタが適用された加速度微分特徴量a´を出力する加速度微分特徴量計算部110と、加速度微分特徴量a´を、上記世界座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する鉛直/水平面分解部130と、仮進行方向成分および仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記歩行動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す特徴的パターンとの比較を行うパターン比較部150と、仮値を更新して比較した結果、最も合致度が高い仮値を、推定した進行方向として出力する推定進行方向出力部170とを備える構成である。
【0142】
上記構成により、人と自装置との相対位置が変化しても、人の歩行動作から上記世界座標系における進行方向を精度よく推定することができるという効果を奏する。また、図14に示したように、地磁気センサ等で水平基準方位(真北方向)を検出することで、水平基準方位に対する進行方位についての方位角を好適に求めることができる。
【0143】
また、時間微分部113は、世界座標系の加速度データではなく、センサ座標系の加速度データを微分しているので、ノイズの低減に効果がある。
【0144】
また、加速度センサ52は、MEMS型を採用しているので、その出力には、ゼロGオフセット出力の影響が無視できないレベルで存在する。
【0145】
ここで、時間微分部113は、時刻tにおける加速度データと、時刻(t+Δt)における加速度データとの差分を計算することで、加速度微分データA´を出力することとしている。また、Δtは、非常に短い間隔であるので、加速度センサ52の出力に含まれるゼロGオフセット出力は同一とみなせる。よって、その差分データである加速度微分データA´ではゼロGオフセット出力が相殺されているので、その影響が低減されている。
【0146】
(変形例)
以下において、進行方向推定装置10の変形例について説明する。
【0147】
[時間微分の省略]
以上の説明では、加速度微分特徴量計算部110が時間微分部113を備える構成としたが、時間微分部113を省略した構成とすることも可能である。
【0148】
すなわち、加速度センサ52が出力する加速度データAを座標系変換部112にて座標変換し、さらに低域通過フィルタ114によるフィルタ処理を適用してもよい。
【0149】
そして、このようにして得られた加速度特徴量に対して、鉛直/水平面分解部130による成分分解および1次元離散フーリエ変換部140によるFFTを行う構成とすることも可能である。
【0150】
図9に、加速度データにFFTを適用して得られるパワースペクトラムの特徴量を示す。図9に示すように、加速度のパワースペクトラムには、図5に示したものと同様の特徴的パターンが現れる。
【0151】
より具体的に説明すると、まず、点線で示す鉛直方向についてのパワースペクトラムには、2Hz付近に周波数のピークPK21が現れる。また、実線で示す進行方向についてのパワースペクトラムについても、2Hz付近に周波数のピークPK22が現れる。
【0152】
そして、破線で示す横方向についてのパワースペクトラムについては、1Hz付近に周波数のピークPK23が現れる。
【0153】
[低域通過フィルタについて]
以上の説明では、加速度微分特徴量計算部110が低域通過フィルタ114を備える構成としたが、低域通過フィルタ114を省略した構成とすることも可能である。
【0154】
例えば、加速度センサ52の計測精度が十分であり、高周波成分を除去するまでもない場合や、加速度センサ52が低域通過フィルタを備えている場合などに、このような構成とすることが考えられる。
【0155】
また、低域通過フィルタ114は、時間微分部113と、座標系変換部112との間に設けてもよい。
【0156】
なお、上記“時間微分部の省略”の変形例および“低域通過フィルタについて”の変形例を両方同時に採用することも可能である。
【0157】
[仮値の更新について]
仮値更新部160は、0度から、0.5度刻みで、180度まで、総計360方位について仮値を設定する構成としたが、これに限られない。例えば、仮値更新部160が設定する仮値の初期値は、任意に設定できる。また、進行方向推定装置10が携帯電話に搭載される場合であって、なおかつ人の手に保持されている状態であれば、進行方向の候補はおおよそ予測できる。よって、仮値更新部160は、ある程度予測された進行方向の候補について仮値を更新してもよい。
【0158】
[パターン比較]
パターン比較部150は、FFT後の各軸のパワースペクトラムパターンと、パターン記憶部202に記憶される特徴的パターンとの比較を行う構成とした。しかしながら、これに限られず、例えば次のようにパターン判定してもよい。すなわち、パターン比較部150が、1Hzにおける強度値(Power)と、2Hzにおける強度値との比が、所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。また、パターン比較部150が、1Hzにおける強度値と、2Hzにおける強度値との差が、所定の閾値以上であるか否かを判定してもよい。
【0159】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について図10〜13を参照して説明する。なお、説明の便宜上、前記実施の形態1にて説明した図面と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0160】
図10に示す進行方向推定装置10Aは、角速度特徴量に基づく進行方向の推定を行う。
【0161】
(特徴量データについて)
ここで、進行方向推定装置10Aの具体的な構成について説明する前に、図11および図12を用いて、人が歩行動作により移動する場合に得られる加速度に関する各種データの特徴的パターンについて説明すると次のとおりである。
【0162】
[角速度データの特徴的パターン]
図11は、角速度データの特徴的パターンの例を示すグラフである。同図の(a)、(b)、および(c)は、それぞれ、人が歩行動作により移動する場合に観測できる、ヨー軸(すなわち鉛直方向の軸)周り、ロール軸(すなわち進行方向の軸)周り、およびピッチ軸(すなわち横方向の軸)周りの角速度を表したグラフである。
【0163】
角速度の計測により得られる角速度ベクトルについては、次のような特徴的パターンが現れる。まず、図11の(a)に示すヨー角速度の成分には、2歩を1周期とするパターンが現れる。また、図11の(b)に示すロール角速度の成分には、2歩を1周期とするパターンが現れる。そして、図11の(c)に示すピッチ角速度の成分には、1歩を1周期とするパターンが現れる。
【0164】
なお、この例においては、角速度成分に含まれる高周波のノイズ成分がローパスフィルタを用いて事前に除去されている。
【0165】
[角速度のパワースペクトラム]
図12は、角速度データを1次元高速フーリエ変換(FFT)して得られるパワースペクトラムを示すグラフである。
【0166】
図12に示すように、角速度のパワースペクトラムには、次のような特徴的パターンが現れる。まず、点線で示すヨー角速度についてのパワースペクトラムには、1Hz付近に周波数のピークPK31が現れる。
【0167】
また、実線で示すロール角速度についてのパワースペクトラムについても、1Hz付近に周波数のピークPK32が現れる。
【0168】
また、破線で示すピッチ角速度についてのパワースペクトラムについては、2Hz付近に周波数のピークPK33が現れる。
【0169】
このように、人が歩行動作により移動するときの角速度のパワースペクトラムには、特徴的パターンが現れる。
【0170】
よって、進行方向を推定するには、仮の進行方向を任意に定めて、角速度微分のパワースペクトラムの周波数のピークを調べて上記特徴的パターンが現れるかどうかを判定すればよい。これは、以上で説明した加速度微分のパワースペクトラムの場合と同様である。
【0171】
(構成例)
次に、図10を参照しながら、進行方向推定装置10Aの構成について説明する。図10は、進行方向推定装置10Aの構成例を示す機能ブロック図である。
【0172】
図1に示した進行方向推定装置10と、図10に示す進行方向推定装置10Aとの相違点について説明すると次のとおりである。
【0173】
進行方向推定装置10Aは、図1に示した進行方向推定装置10において、加速度微分特徴量計算部110、鉛直/水平面分解部130、1次元離散フーリエ変換部140、およびパターン比較部150を、それぞれ、角速度特徴量計算部(データ取得手段)120、鉛直/水平面分解部(成分分解手段)130Aに変更し、1次元離散フーリエ変換部(パワースペクトラム取得手段)140A、およびパターン比較部(パターン比較手段)150Aに変更した構成である。
【0174】
(相違点について)
上記相違点について説明すると次のとおりである。
【0175】
角速度特徴量計算部120は、計測部50が出力する計測データから、角速度特徴量ωWbを計算するものである。ここで、角速度特徴量計算部120の詳細について、図13を用いて説明すると次のとおりである。図13は、角速度特徴量計算部120のさらに詳しい構成例について示す図である。
【0176】
図13に示すように、角速度特徴量計算部120は、図2に示した加速度微分特徴量計算部110において、座標系変換部112を、座標系変換部121に変更し、時間微分部113を取り除いたものである。
【0177】
座標系変換部121は、姿勢角トラッキング部111が出力する回転行列Rを、角速度センサ51が出力する角速度データωに適用し、センサ固有の座標系を世界座標系に変換する。座標系変換部121は、世界座標系に変換された角速度データωWaを出力する。
【0178】
なお、低域通過フィルタは、角速度データωWaの高周波成分を除去した角速度特徴量ωWbを出力するよう設計変更している。
【0179】
再び図10に戻り、残りの各部について説明する。
【0180】
鉛直/水平面分解部130Aは、仮値記憶部201から仮値を取得して、取得した仮値仮値を仮ロール軸とし、角速度特徴量ωWbをヨー軸、仮ロール軸、仮ピッチ軸にマッピングする。
【0181】
そして、鉛直/水平面分解部130Aは、ヨー軸(Z軸)、仮ロール軸(X軸)、および仮ピッチ軸(Y軸)を決定し、それぞれの軸に従い、加速度微分特徴量a´を、ヨー角速度成分ω、仮ロール角速度成分ω、および仮ピッチ角速度成分ωに成分分解して、それぞれ出力する。
【0182】
1次元離散フーリエ変換部140Aは、分解された各軸について、FFTを適用する。1次元離散フーリエ変換部140Aは、より詳細には、ヨー軸処理部141A、ロール軸処理部142A、およびピッチ軸処理部143Aを備えている。
【0183】
ヨー軸処理部141A、ロール軸処理部142A、およびピッチ軸処理部143Aは、それぞれ、ヨー角速度成分ω、仮ロール角速度成分ω、および仮ピッチ角速度成分ωに対してFFTを適用する。
【0184】
そして、ヨー軸処理部141A、ロール軸処理部142A、およびピッチ軸処理部143Aは、FFTを適用した結果、Z軸、水平X軸、および水平Y軸について、それぞれ、ヨー角速度成分パワースペクトラムP(ω)、仮ロール角速度成分パワースペクトラムP(ω)、および仮ピッチ角速度成分パワースペクトラムP(ω)を出力する。
【0185】
パターン比較部150Aは、各角速度成分のパワースペクトラムについて、予め定められた上述のピーク周波数の特徴的パターンとの比較を行う。
【0186】
(変形例)
以下において、進行方向推定装置10Aの変形例について説明する。
【0187】
[時間微分部の追加]
角速度特徴量計算部120において、角速度センサ51と、座標系変換部121との間に時間微分部を設ける構成としてもよい。
【0188】
すなわち、上述した加速度の場合と同様に角速度の時間微分(角加速度)を特徴量として用いても良い。この場合、角速度のデータに対して位相が90度ずれる点は留意すべきである。
【0189】
[出力補正部の追加]
角速度センサ51にMEMS型もしくは水晶型のものを採用する場合、その出力には加速度センサ52の出力と同様にヌルオフセット出力が存在する。しかしながら、そもそもPDRにおける姿勢角推定処理では、姿勢角推定の精度を向上させるために、事前に角速度センサのオフセットを十分に補正して除去することが想定される。つまり、角速度センサの角速度データを補正する出力補正部(不図示)を設けることが考えられる。
【0190】
このため、出力補正部により角速度センサの出力を補正した補正後データを用いれば、時間微分を行わなくてもオフセットの影響をそれほど受けない可能性もある。出力補正部を設ける場合、温度センサを内蔵もしくは外付けしておき、温度に基づいて出力補正部がヌルオフセット出力を推定して補正する構成が考えられる。
【0191】
(その他の構成例)
最後に、上述した進行方向推定装置10、10Aの各ブロックは、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0192】
後者の場合、上記各装置は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである上記各装置の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記各装置に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0193】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R/ブルーレイディスク(登録商標)等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類などを用いることができる。
【0194】
また、上記各装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークは、プログラムコードを伝送可能であればよく、特に限定されない。例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、この通信ネットワークを構成する伝送媒体も、プログラムコードを伝送可能な媒体であればよく、特定の構成または種類のものに限定されない。例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA(Digital Living Network Alliance)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0195】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0196】
例えば、進行方向推定装置10、10Aを携帯電話機等の携帯端末に搭載してもよい。携帯端末のように、人と端末との相対位置が絶えず変化する可能性がある場合においても、進行方向を精度よく推定することができ、進行方向についての方位角を好適に求めることができる。
【0197】
また、推定した進行方向の時系列データを記憶して、人が歩行動作により移動した履歴をとることもできる。例えば、GOT(Graphical Order Terminal)等の発注端末に適用した場合、推定方向の履歴をとることにより、店舗で働く従業員の動きや導線を把握することができる。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明によれば、歩行により移動する人の移動方位を高精度に推定することができるので、地図上で人の現在地を表示するナビゲーション装置等にも好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0199】
10、10A 進行方向推定装置
50 計測部
51 角速度センサ(3次元角速度センサ)
52 加速度センサ(3次元加速度センサ)
100 制御部
110 加速度微分特徴量計算部(データ取得手段)
111 姿勢角トラッキング部
112 座標系変換部
113 時間微分部(時間微分手段)
114 低域通過フィルタ(低域通過手段)
120 角速度特徴量計算部(データ取得手段)
121 座標系変換部
130、130A 鉛直/水平面分解部(成分分解手段)
140 1次元離散フーリエ変換部(パワースペクトラム取得手段)
141 鉛直軸処理部
142 水平面X軸処理部
143 水平面Y軸処理部
140A 1次元離散フーリエ変換部(パワースペクトラム取得手段)
141A ヨー軸処理部
142A ロール軸処理部
143A ピッチ軸処理部
150、150A パターン比較部(パターン比較手段)
160 仮値更新部
170 推定進行方向出力部(出力手段)
200 記憶部
201 仮値記憶部
202 パターン記憶部
203 合致度記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の運動状態を計測するセンサの計測データを用いて、移動体が一定の移動動作により移動するときの進行方向を推定する進行方向推定装置において、
上記センサである3次元加速度センサまたは3次元角速度センサにおいて計測され、予め定められた座標系により表された計測データを取得するデータ取得手段と、
上記データ取得手段が取得した上記計測データを、上記座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する成分分解手段と、
上記成分分解手段により得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す所定のパターンとの比較を行うパターン比較手段と、
上記パターン比較手段による比較の結果、パターンが所定程度以上に合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する出力手段とを備えることを特徴とする進行方向推定装置。
【請求項2】
上記座標系により表された計測データを時間微分する時間微分手段を備え、
上記データ取得手段は、上記時間微分手段によって時間微分された上記計測データを取得することを特徴とする請求項1に記載の進行方向推定装置。
【請求項3】
上記成分分解手段により得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分について、パワースペクトラムを取得するパワースペクトラム取得手段を備え、
上記パターン比較手段は、上記パワースペクトラム取得手段が取得したパワースペクトラムと、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表すパワースペクトラムパターンとの比較を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の進行方向推定装置。
【請求項4】
上記成分分解手段は、各方位について設定した上記仮進行方向にて上記成分分解を行い、
上記パターン比較手段は、上記成分分解手段により得られた上記各方位の仮進行方向成分および仮横方向成分について、上記所定のパターンとの比較を行い、
上記出力手段は、上記パターン比較手段による比較の結果から、各方位の上記仮進行方向のうち、最もよく上記所定のパターンに合致する上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の進行方向推定装置。
【請求項5】
上記座標系により表された計測データに低域通過フィルタを適用する低域通過手段を備え、
上記データ取得手段は、上記低域通過手段によって低域通過フィルタを適用された上記計測データを取得することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の進行方向推定装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の進行方向推定装置を備える携帯端末。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項に記載の進行方向推定装置を動作させるための制御プログラムであって、コンピュータを上記各手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項8】
請求項7に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項9】
移動体の運動状態を計測するセンサの計測データを用いて、移動体が一定の移動動作により移動するときの進行方向を推定する進行方向推定方法において、
上記センサである3次元加速度センサまたは3次元角速度センサにおいて計測され、予め定められた座標系により表された計測データを取得するデータ取得ステップと、
上記データ取得ステップにおいて取得した上記計測データを、上記座標系における鉛直方向成分と、当該鉛直方向に直交する方向に設定した仮進行方向成分と、上記仮進行方向および上記鉛直方向に直交する仮横方向成分とに成分分解する成分分解ステップと、
上記成分分解ステップにより得られた上記仮進行方向成分および上記仮横方向成分に現れるパターンそれぞれについて、上記移動動作時における、移動体の進行方向および横方向の加速度または角速度の周期性を表す所定のパターンとの比較を行うパターン比較ステップと、
上記パターン比較ステップにおける比較の結果、パターンが所定程度以上に合致しているとき、上記仮進行方向を、推定した進行方向として出力する出力ステップとを含むことを特徴とする進行方向推定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−145457(P2012−145457A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4303(P2011−4303)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】