説明

遅延凝固リン酸カルシウムペースト

本発明は、生物活性薬剤の送達ビヒクルの調製に有用であり、整形外科症状の処置に有用であり、かつ、時期尚早な凝固を起こすことなく長期間貯蔵可能な遅延凝固リン酸カルシウムペーストを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リン酸カルシウムインプラント、および生物活性薬剤のための送達ビヒクルに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
薬物送達の領域では、リン酸カルシウムセラミックスは、それらの生体適合性およびタンパク質試薬に対する親和性のため、潜在的な送達ビヒクルとしてかなりの注目を集めてきた(例えば、Ijntema et al., Int. J. Pharm. 112:215 (1994)(非特許文献1);Itokazu et al., J. Orth. Res.10:440 (1992)(非特許文献2);Shinto et al., J. Bone Joint Surg. 74-B:600 (1992)(非特許文献3);およびUchida et al., J. Orth. Res. 10:440 (1992)(非特許文献4)を参照されたい)。これらの材料のほとんどは、顆粒またはブロック形状の予め作られた、焼結されたハイドロキシアパタイトの形であった。これらの製品には、特にブロックについては、骨格の欠陥に適合するには限られた能力、(互いに結合しない)顆粒の不十分な構造的保全性、およびブロックおよび顆粒の両方について、欠けている骨格組織の形体にインプラントを成形する際の困難性を含む幾つかの欠点がある。ハイドロキシアパタイトのブロック形は、構造的支持体を提供するが、その他の問題と共に、機械的手段により固定される必要があるため、その使用および美容的な結果は大きく制限されている。さらに、ハイドロキシアパタイトのブロックを、患者個人の欠損に適合する形体に挽くのは非常に困難である。一般に、これらの製品は全て、高温焼結により製造されるセラミックスであって、各々が結晶体から成るのではなく、どちらかと言えば、それらの結晶結合が互いに融合されている。ほとんどのセラミック型材料は、一般に、機能的に生物学的非吸収性である(一般に、1年当り1%台を超えない吸収率を有する)。
【0003】
別の型のリン酸カルシウム組成物は、非晶質リン灰石リン酸カルシウムを反応物として、プロモーターおよび水性溶液を含み、硬化するペーストを形成する。Leeらの、米国特許第5,650,176号(特許文献1)、第5,676,976号(特許文献2)、第5,683,461号(特許文献3)、第6,027,742号(特許文献4)、および第6,117,456号(特許文献5)を参照されたい。この系は、生物適合性、生物吸収性、および長期間にわたり室温において加工可能な生物作用性セラミック材料を提供する。生物作用性セラミック材料は、低温で形成することでき、容易に形成可能および/または注射可能であり、その上、さらなる反応により高い硬度に硬化させられる。生物作用性セラミック材料は、自然に存在する骨鉱物に匹敵するカルシウム対リン酸(Ca/P)割合であり、天然の骨と同等の剛性および破壊粗面度(fracture roughness)を持つ、低結晶性リン灰石リン酸カルシウム固体を含む。生物作用性セラミック合成材料は、強く生物吸収性であり、その生物吸収性および反応性は、特定の治療および/または移植部位の要求を満たすよう調節することができる。
【0004】
リン酸カルシウムペーストの長期保存は、その経時的硬化により複雑である。リン酸カルシウムペーストの使用を簡単にし、移植前に医師に要求される操作の量を軽減するために、その遅延凝固処方が必要とされている。
【0005】
【非特許文献1】Ijntema et al., Int. J. Pharm. 112:215 (1994)
【非特許文献2】Itokazu et al., J. Orth. Res.10:440 (1992)
【非特許文献3】Shinto et al., J. Bone Joint Surg. 74-B:600 (1992)
【非特許文献4】Uchida et al., J. Orth. Res. 10:440 (1992)
【特許文献1】米国特許第5,650,176号
【特許文献2】米国特許第5,676,976号
【特許文献3】米国特許第5,683,461号
【特許文献4】米国特許第6,027,742号
【特許文献5】米国特許第6,117,456号
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、非水性液体を用いて遅延凝固リン酸カルシウムペーストを調製できるという発見に基づいている。遅延凝固ペーストは、生物活性薬剤の送達ビヒクルの調製、および整形外科症状の処置のためのインプラントとして有用である。
【0007】
第一の局面において、本発明は、リン酸カルシウム材料、および液体を含む遅延凝固ペーストであって、該液体が5%(w/w)よりも少ない水を含み、該ペーストが湿環境に置かれた場合に硬化したリン酸カルシウム材料を形成するペーストを特徴とする。
【0008】
遅延凝固ペーストは、リン酸カルシウム材料を、5%(w/w)よりも少ない水を含む液体と合わせることにより調製される。液体は、4%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.75%、0.5%、0.25%、または0.1%よりも少ない水を含み得る。望ましくは、液体は、1%(w/w)よりも少ない水を含む。遅延凝固ペーストは、少なくとも5%(w/w)の液体を含む。望ましくは、遅延凝固ペーストは、少なくとも7.5%、10%、12.5%、15%、17.5%、20%、22.5%、25%、27.5%、または、30%(w/w)までもの液体を含む。本発明の遅延凝固ペースト製剤中で有用な液体は、限定されることなく、ジメチルスルホキシド、N-メチル2-ピロリドン、グリコフロール、乳酸エチル、エタノール、プロピレングリコール、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム、ジメチルイソソルバイド、Solketal(登録商標)、テトラヒドロフルフリルアルコール、グリセロール、グリセロールホルマール、ポリグリセロール、トリアセチン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、レシチン、およびその他のリン脂質、ならびにそれらの組み合わせを含む。望ましくは、液体はN-メチル2-ピロリドンを含む。
【0009】
遅延凝固ペーストは、少なくとも30%(w/w)のリン酸カルシウム材料を含む。望ましくは、遅延凝固ペーストは、少なくとも35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、または90%(w/w)までものリン酸カルシウム材料を含む。リン酸カルシウム材料は、限定されることなく、メタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸ヘプタカルシウム(heptacalcium phosphate)、リン酸三カルシウム二水和物、結晶性ハイドロキシアパタイト(HA)、低結晶性リン酸カルシウム(poorly crystalline calcium phosphate;PCA)、ピロリン酸カルシウム、モネタ石、リン酸オクタカルシウム、非晶質リン酸カルシウム、およびそれらの混合物を含む。望ましくは、リン酸カルシウム材料は非晶質リン酸カルシウムまたは低結晶性リン酸カルシウムを含む。
【0010】
本発明の遅延凝固ペーストは、生体分解性材料(例えば、生分解性および生物吸収性材料)、ならびに非侵食性材料より選択される追加材料を任意で含む。生体分解性材料は、多糖、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルト炭酸塩)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(リン酸エステル)、またはそれらの共重合体を含む。望ましくは、生体分解性材料は、コラーゲン、グリコーゲン、キチン、デンプン、ケラチン類、絹、鉱質除去骨マトリックス、ヒアルロン酸、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-炭酸トリメチレン)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、またはそれらの共重合体を含む。非生体分解性材料は、デキストラン類、セルロース類、およびセルロース誘導体類(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロース)、ポリエチレン、ポリメタクリル酸メチル、炭素繊維類、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体類、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、またはそれらの共重合体を含む。生体分解性および非侵食性材料は、有孔性を導入するため、または強度および粘度等の物理的特徴を変えるために選択することができる。
【0011】
本発明の遅延凝固ペーストは、生物活性薬剤を任意で含む。本明細書中に記載される組成物および方法において使用され得る生物活性薬剤は、限定されることなく、骨形成タンパク質、抗生物質、ポリヌクレオチド、抗癌剤、成長因子、およびワクチンを含む。骨形成タンパク質は、限定されることなく、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP-16、BMP-17、およびBMP-18を含む。生物活性薬剤はさらに、アルキル化剤、プラチナ剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、細胞分裂阻止剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、鉱質除去骨マトリックス、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫モジュレーター、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光力学剤、およびチロシンキナーゼ阻害剤を含む。
【0012】
本発明の遅延凝固ペーストは、発泡剤を任意で含む。発泡剤は、限定されることなく、重炭酸ナトリウムを含む。遅延凝固ペーストは、例えば、約1から約40パーセント(w/w)の重炭酸ナトリウムを含んでもよい。
【0013】
本発明の遅延凝固ペーストは、組成物の孔形成成分として作用するよう規定された塩や糖等の不活性物質を任意で含む。好ましくは、塩または糖は、組成物の約0〜80容量%で含まれる。別の態様において、塩または糖は、約0〜50容量%、より好ましくは0〜30容量%、最も好ましくは約25容量%含まれる。
【0014】
本発明はさらに、生物活性薬剤の送達のためのビヒクルを調製する方法を特徴とする。本方法は、(i)リン酸カルシウム材料、生物活性薬剤、および液体を含む遅延凝固ペーストであって、該液体が5%(w/w)よりも少ない水を含むペーストを調製する工程、および(ii)硬化したリン酸カルシウム材料が形成されるまで該ペーストを湿環境に置く工程を含む。望ましくは、遅延凝固ペーストは、さらに追加材料を含む。
【0015】
本発明はさらに、インプラントを調製する方法を特徴とする。本方法は、(i) リン酸カルシウム材料、および液体を含む遅延凝固ペーストであって、該液体が5%(w/w)よりも少ない水を含むペーストを調製する工程、および(ii)硬化したリン酸カルシウム材料が形成されるまで該ペーストを湿環境に置く工程を含む。望ましくは、遅延凝固ペーストは、さらに追加材料を含む。
【0016】
上記いずれの方法においても、遅延凝固ペーストは、哺乳動物中への移植によって硬化させることができる(即ち、該湿環境とは、哺乳動物内部である)。
【0017】
本発明は、必要とされる部位において骨成長を促進する方法を特徴とする。本方法は、本発明の遅延凝固ペーストを該部位、例えば、整形外科用インプラント表面、または骨折部位に適用する工程を含む。望ましくは、ペーストは、骨形成タンパク質等の生物活性薬剤を含む。
【0018】
本発明はまた、分裂した骨のための構造的支持体を調製する方法を特徴とする。本方法は、骨切片を本発明の遅延凝固ペーストと接触させる工程を含む。本方法は、固定用器材(例えば、ネジ類および/またはプレート類)を遅延凝固ペーストと接触させる工程を任意で含む。
【0019】
本発明はさらに、(i)本発明の遅延凝固ペースト、および(ii)遅延凝固ペーストを哺乳動物内に移植するための説明書、を含むキットを特徴とする。遅延凝固ペーストは、生物活性薬剤を任意で含む。
【0020】
本発明はまた、本明細書中に記載される遅延凝固ペーストについてのインビボ研究を行うか、または計画している会社における投資を促進する方法を特徴とする。本方法は、遅延凝固ペーストの主体、治療的使用、毒性、効果、または政府認可の計画日についての情報を広める工程を含む。
【0021】
本発明は、本明細書中に記載される遅延凝固ペーストの使用を促進する方法を特徴とする。本方法は、遅延凝固ペーストの主体または治療的使用についての情報を広める工程を含む。
【0022】
ここで、「主体」とは、構造、図解、形状、化学名、慣用名、商用名、構造式、参考番号、または、本発明の遅延凝固ペーストの組成物を他者に伝達するその他のいずれかの標識等の識別子を指す。
【0023】
「インビボ研究」とは、限定されることなく、臨床研究に加えて非臨床研究、例えば毒性および効果に関するデータ収集のための研究を含む、本発明の遅延凝固ペーストが生きた哺乳動物に投与されるいずれかの研究を意味する。
【0024】
「政府認可の計画日」とは、本発明の遅延凝固ペーストを含む組成物を、例えば、患者、医師、または病院に販売するための認可を政府機関から会社が受けるであろう日付についての、あらゆる予測を意味する。政府認可は、例えば、その他のものと共に米国食品医薬品局(United States Food and Drug Administration)による新薬申請についての認可を含む。
【0025】
本明細書中で使用されるように、「硬化する(hardening)」または「凝固する(setting)」は、本発明の遅延凝固ペーストが、湿環境に置かれて、硬化したリン酸カルシウム材料、例えば、ヒドロキシアパタイト(HA)または低結晶性リン灰石(PCA)リン酸カルシウムに転化される過程を指す。リン酸カルシウム材料は、実質的に成形不可能な固体となったとき、「硬化した」または「凝固した」と判断される。このような硬化したリン酸カルシウム材料は、少なくもと1MPa、望ましくは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、または20MPaまでもの最小圧縮性を有し、弾性変形とは反対の塑性変形する傾向がある。
【0026】
「湿環境」とは、37℃において24時間以内にペーストを硬化させるのに十分な量の水を有する環境を意味する。湿環境の例には、ペーストが生物学的液体または蒸留水と接触している環境が含まれる。
【0027】
本明細書中で使用されるように、「非水性」は、5%(w/w)よりも少ない水を含む液体を指す。望ましくは、非水性液体は、4%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、0.75%、0.5%、0.25%、またはさらには0.1%よりも少ない水を含む。リン酸カルシウム材料は、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD, CaHPO4・H2O)または非晶質リン酸カルシウム(ACP, Ca3(PO4)2・nH2O, n=3-4.5)等の水和物を含んでもよい。ペースト中の水和物と会合した水は、リン酸カルシウム材料と錯体形成しており、非水性液体の水分量には寄与しない。非水性液体の水分量は、まず、液体をリン酸カルシウム材料から濾過し、続いて、液体中の水の割合を決めるためのカールフィッシャー滴定により決定することができる。
【0028】
本明細書中で使用されるように、「ペースト」は、硬化していない流動性または変形可能な遅延凝固リン酸カルシウム材料を指す。本発明のペーストは、多様な軟度のいずれか一つを有するよう設計することができる。例えば、非水性液体の割合を増やすことにより、その形体を維持することができないが、注射器によってより簡単に注射できるペーストを製造することができる。非水性液体の割合を減じることにより、パテ様軟度を達成することができる。
【0029】
本明細書中で使用されるように、「生物適合性」とは、宿主において実質的な免疫反応を誘起しない材料を指す。外来物を生体に導入する場合、宿主にとってネガティブな効果を有するであろう炎症反応を物体が誘導するのではないかという懸念が常にある。例えば、ハイドロキシアパタイトは、「生物適合性」であると通常考えられているが、動物に結晶性ハイドロキシアパタイト微担体が筋内挿入された場合、明らかな炎症および組織壊死が観察されている(例えば、IJntema et al., Int. J. Pharm. 112:215 (1994)を参照されたい)。
【0030】
「生物吸収性」とは、インビボにおいて再吸収または改造される材料の能力を意味する。吸収の過程には、生体液、酵素または細胞の作用を介した、元の移植材料の分解および排除が含まれる。吸収された材料は、宿主により新たな組織の形成に使われるか、または宿主により再利用されるか、または排出されてもよい。
【0031】
本発明は、遅延凝固リン酸カルシウムペースト、ならびに生物活性薬剤のための送達ビヒクルの調製、および整形外科用インプラントの調製におけるその使用を特徴とする。ペーストは、凝固することなく、長期間にわたって貯蔵することができる。
【0032】
本発明のその他の特徴および有利な点は、以下の詳細な説明および請求項により明らかである。
【0033】
詳細な説明
本発明者らは、生物活性薬剤の送達のためのビヒクルの調製、および整形外科症状の処置のために有用な遅延凝固リン酸カルシウムペーストを作成した。
【0034】
本発明のペーストは、リン酸カルシウム材料および非水性液体を含み、かつ水和により硬化したリン酸カルシウム材料を形成する。ペーストは、生物活性薬剤、追加材料、発泡剤、生物吸収性固体成分、またはそれらの組み合わせを任意で含んでも良い。
【0035】
リン酸カルシウム材料
本発明のリン酸カルシウム成分は、当技術分野において公知のいかなる生物適合性リン酸カルシウム材料であってもよい。リン酸カルシウム材料は、多様な方法のいずれか一つにより、いずれの好適な出発成分を用いて製造されてもよい。例えば、リン酸カルシウム材料は、非晶質リン灰石リン酸カルシウムを含んでもよい。リン酸カルシウム材料は、結晶性リン酸カルシウム反応物の固相酸-塩基反応により、結晶性ハイドロキシアパタイト固体を形成することにより製造してもよい。その他のリン酸カルシウム材料を作成する方法は当技術分野において公知であり、そのうちいくつかを以下に記載する。
【0036】
低結晶性リン灰石(PCA)リン酸カルシウム
リン酸カルシウム材料は、低結晶性リン灰石(PCA)リン酸カルシウムであり得る。PCA材料は、各々が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,650,176号、第6,214,368号、第6,287,341号、および第6,541,037号の出願に記載されている。
【0037】
PCA材料は、その生物学的吸収性、生物適合性、および最小限の結晶性により特徴付けられる。その結晶性特性は、天然の骨と実質的に同じである。本発明の組成物および方法を用いることにより、PCA材料は前駆体遅延凝固ペーストとして移植される。移植によりペーストは生理的条件(例えば、湿度および体温)に曝露され、その場で材料が固まることによりPCAへと転化される。
【0038】
一般に、生理的条件下で、PCA材料は5時間より短い時間、実質的に約1から5時間で硬化する。好ましくは、材料は約10-30分以内に実質的に硬化する。生理的条件下における硬化率は、本明細書に参照により組み入れられる米国特許第6,027,742号に記載されるようにいくつかの単純なパラメータを加減することにより、治療的必要に応じ変更できる。
【0039】
PCA材料を製造する転化反応は、移植に先立ち、遅延凝固前駆ペーストの混合物に蒸留水を添加し、その後移植される水和された前駆体を形成することにより開始することができる。例えば、形成されたか、または鋳造された遅延凝固前駆ペーストを、例えば非水性液体の大部分を除くために、蒸留水に浸すことができる。緩衝液、塩水、血清、または組織培養培地等の他の水性剤を、蒸留水の代わりに用いてもよい。代わりに、遅延凝固ペーストを、例えば16ゲージの針を使い、予め水和することなく患者に移植し、インビボで遅延凝固ペーストを水和させることもできる。
【0040】
最も多くの場合、ヒドロキシアパタイトのおよそ1.67の理想化学量論値と比べて、約1.6より少ないカルシウムの対リン酸割合により、得られる生物吸収性リン酸カルシウム材料は「カルシウム不足」となる。
【0041】
好ましいPCA材料は、PCA前駆体を、1もしくはそれ以上の非水性液体またはゲルと合わせてペーストを形成させ、遅延凝固ペーストをPCA材料に硬化させることにより同定してもよい。望ましい前駆体は、湿環境において、体温または体温前後の温度で5時間より短い、好ましくは10〜30分以内で硬化することができる。このようにして硬化する成分を、その後、試験動物の骨欠損中またはそれに近接して(例えば、筋内または皮下)置き、生物吸収性について調べてもよい。望ましい材料は、1〜5gのペレットとして移植された場合、1年に少なくとも80%が吸収される材料である。好ましくは、材料は完全に吸収され得る。
【0042】
PCA材料は、少なくとも1つの非晶質リン酸カルシウム(ACP)前駆体を用いる反応により形成されてもよく、かつ好ましくは、活性化されたまたは反応性のACPを用いる反応により形成される(例えば、PCT出願第WO98/16209号の実施例1〜4を参照されたい)。いくつかの例において、反応は、その一部または全てが制御された様式でPCA材料へと転化される唯一の前駆体ACPを用いてもよい。また、活性化ACPのPCA材料への転化を容易にするため、非参加助触媒を用いることもできる。
【0043】
ACPのPCA材料への転化は、水の存在下で促進される。本発明の方法および組成物を用いることにより、ACPは粉末として提供され、他のいずれの反応物(例えば、第二のリン酸カルシウム)、および非水性液体と組み合わされて遅延凝固ペーストを形成する。この遅延凝固前駆ペーストは、その後、移植前または移植後に湿気に曝露されて、それから硬化する。硬化は、PCA材料の形成と関連している。ACPのPCAリン酸カルシウムへの転化は、制御された様式で進行し、歯科、整形外科、薬物送達、またはその他の治療的応用に用いることができる。
【0044】
結晶性ハイドロキシアパタイト
代わりに、リン酸カルシウム材料は結晶性ハイドロキシアパタイト(HA)であってもよい。結晶性HAは、例えば、米国特許第Re.33,221号および第Re.33,161号に記載されている。これらの特許はリン酸カルシウム再鉱化組成物の調製について、および同じリン酸カルシウム組成物に基づく高度に結晶性で非セラミックの逐次吸収性ハイドロキシアパタイト担体材料について教示している。リン酸テトラカルシウム(tetracalcium phosphate;TTCP)、およびリン酸モノカルシウム(monocalcium phosphate;MCP)またはその一水和物型(MCPM)からなる類似したリン酸カルシウム系が、米国特許第5,053,212号および第5,129,905号に記載されている。このリン酸カルシウム材料は、結晶性ハイドロキシアパタイト固体を形成する、結晶性リン酸カルシウム反応物の固相酸-塩基反応により製造される。
【0045】
結晶性HA材料(通常、ダーライトと呼ばれる)は、流動性、鋳造可能、およびインサイチューで硬化きるように調製してもよい(米国特許第5,962,028号を参照されたい)。これらのHA材料(通常、炭酸化ハイドロキシアパタイトと呼ばれる)は、反応物を非水性液体と組み合わせ、実質的に均質な混合物を用意し、混合物を適当に形作り、かつ混合物を水の存在下で(例えば、移植前または移植後に)硬化することにより形成することができる。硬化の間、混合物は固体で、かつ実質的にモノリシックなリン灰石構造へと結晶化する。
【0046】
反応物は、一般に、実質的に水を含まないリン酸源、例えば、リン酸またはリン酸塩、具体的にはカルシウムであるアルカリ土類金属源、場合により具体的にはハイドロキシアパタイトまたはリン酸カルシウム結晶である結晶核、炭酸カルシウム、および、本明細書中に記載されるいずれかの非水性液体等の生理学的に許容される潤滑剤を含むであろう。乾燥成分は、混合物として予め調製してもよく、かつその後、実質的に均一な混合が起こるような条件下で非水性液体成分と合わされる。
【0047】
本明細書中に記載されるいずれの遅延凝固リン酸カルシウムペーストについても、種々の成分を組み合わせ、混合し、かつその組み合わせ、ペーストの水分量、および貯蔵条件に依存して、何週間、何ヶ月、もしくは何年も凝固または硬化することなく貯蔵することができる。
【0048】
非水性液体
本発明のペーストを作るのに好適な非水性液体は、生物適合性であり、かつ、少なくとも水性媒体、体液、または水に混和できる。好ましくは、非水性液体は全ての濃度において水性媒体、体液もしくは水に、好ましくは少なくとも適度に可溶性であるか、または非常に可溶性ですらある。水性液体または体液に少なくとも適度に可溶性な液体は、数秒から数週間の範囲の期間にわたってペースト中へ水を浸透させ、例えばPCAへとペーストを硬化させる。わずかに可溶性の液体は、流動性のペーストからゆっくりと拡散し、典型的には、数日から数週間、例えば、約一日から数週間の期間にわたって転換を可能にする。高度に可溶性の液体は、硬化がほとんど直ちに開始するよう、流動性のペーストから数秒から数時間の期間にわたって拡散するであろう。非水性液体は好ましくは極性非プロトン性または極性プロトン性液体である。液体は、約30から約5,000の範囲内の分子量を有し得る。好ましくは、液体は約30から約1,000の範囲内の分子量を有する。
【0049】
本発明の遅延凝固ペーストを形成するのに使用し得る生物適合性非水性液体の例としては、環境および生理学的温度において液体または少なくとも流動性であり、かつアルコール、ケトン、エーテル、アミド、エステル、炭酸、スルホキシド、スルホン、およびその他いずれかの生組織適合性の官能基等の官能基を含む脂肪族、アリル、およびアリルアルキル直鎖状、環状、ならびに分枝状有機化合物を含む。
【0050】
生物適合性水混和性液体は、N-メチル2-ピロリドン、2-ピロリドン;エタノール、グリセリン、ポリグリセロール、プロピレングリコール、ブタノール等のC1からC15アルコール、ジオール、トリオールおよびテトラオール;アセトン、ジエチルケトンおよびメチルエチルケトン等のC3からC15のアルキルケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル等のC3からC15のエステル;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドおよびカプロラクタム等のC1からC15のアミド;テトラヒドロフランまたはSolketal(登録商標)等のC3からC20のエーテル;ツイーン、トリアセチン、炭酸プロピレン、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド、オレイン酸、および1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オンを含む。その他の好ましい溶媒は、ベンジルアルコール、ベンジルベンソエート、ジプロピレングリコール、トリブチリン、オレイン酸エチル、グリコフラール、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸、ポリエチレングリコール、炭酸プロピレン、およびクエン酸トリエチルである。
【0051】
ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体を本発明のペースト中の非水性液体として用いてもよい。これらは、シンペロニックPE(Synperonic PE)シリーズ(ICI)、プルロニック(登録商標)シリーズ(BASF)、ルトロール(BASF)、スプロニック(Supronic)、モノラン(Monolan)、プルラケア(Pluracare)およびプルロダック(Plurodac)のうちの1つまたはそれ以上を含む、種々の商用名で入手可能である。これらの重合体の一般名は、「ポロキサマー」(CAS9003-11-6)である。これらの重合体は、式Iの構造式を有する:
HO(C2H4O)a(C3H6O)b(C2H4O)aH (I)
式中、「a」および「b」は、各々、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン単位の数を示す。これらの共重合体は、1000から15000ダルトンの範囲の分子量で、エチレンオキシド/プロピレンオキシド重量比が0.1と0.8の間のものが入手可能である。本発明に係るリファラジルの処方は、上記ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の1つまたはそれ以上を含んでもよい。本発明の処方は、上記ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の1つまたはそれ以上を含んでもよい。
【0052】
ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルを本発明のペースト中の非水性液体として用いてもよい。商業的に入手可能なポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルの例は、PEG-10ソルビタンラウレート(Liposorb L-10, Lipo Chem.)、PEG-20ソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)20, Atlas/ICI)、PEG-4ソルビタンモノラウレート(Tween(登録商標)21, Atlas/ICI)、PEG-80ソルビタンモノラウレート(Hodag PSML-80, Calgene)、PEG-6ソルビタンモノラウレート(Nikkol GL-1, Nikko)、PEG-20ソルビタンモノパルミテート(Tween(登録商標)40, Atlas/ICI)、PEG-20ソルビタンモノステアレート(Tween(登録商標)60, Atlas/ICI)、PEG-4ソルビタンモノステアレート(Tween(登録商標)61, Atlas/ICI)、PEG-8ソルビタンモノステアレート(DACOL MSS, Condea)、PEG-6ソルビタンモノステアレート(Nikkol TS106, Nikko)、PEG-20ソルビタントリステアレート(Tween(登録商標)65, Atlas/ICI)、PEG-6ソルビタンテトラステアレート(Nikkol GS-6, Nikko)、PEG-60ソルビタンテトラステアレート(Nikkol GS-460, Nikko)、PEG-5ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)81, Atlas/ICI)、PEG-6ソルビタンモノオレエート(Nikkol TO-106, Nikko)、PEG-20ソルビタンモノオレエート(Tween(登録商標)80, Atlas/ICI)、PEG-40ソルビタンオレエート(Emalex ET 8040, Nihon Emulsion)、PEG-20ソルビタントリオレエート(Tween(登録商標)85, Atlas/ICI)、PEG-6ソルビタンテトラオレエート(Nikkol GO-4, Nikko)、PEG-30ソルビタンテトラオレエート(Nikkol GO-430, Nikko)、PEG-40ソルビタンテトラオレエート(Nikkol GO-440, Nikko)、PEG-20ソルビタンモノイソステアレート(Tween(登録商標)120, Atlas/ICI)、PEGソルビトールヘキサオレエート(Atlas G-1086, ICI)、ポリソルベート80(Tween(登録商標)80, Pharma)、ポリソルベート85(Tween(登録商標)85, Pharma)、ポリソルベート20(Tween(登録商標)20, Pharma)、ポリソルベート40(Tween(登録商標)40, Pharma)、ポリソルベート60(Tween(登録商標)60, Pharma)およびPEG-6ソルビトールヘキサステアレート(Nikkol GS-6, Nikko)を含む。本発明のペーストは、上記ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステルの1つまたはそれ以上を含んでもよい。
【0053】
望ましくは、非水性液体はそれらの生物適合性のため、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル2-ピロリドン(NMP)、グリコフロール、乳酸エチル、エタノール、プロピレングリコール(PG)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグライム、ジメチルイソソルビド(DMI)、Solketal(登録商標)、テトラヒドロフルフリルアルコール(THFA)、グリセリン、グリセロール、グリセロールホルマール(GF)、ポリグリセロール類、トリアセチン、炭酸プロピレン、PEG300 、PEG400、およびPEG600等の種々の分子量のポリエチレングリコール(PEG)、ならびにそれらの組み合わせより選択される。
【0054】
追加材料
混成遅延凝固ペーストは、リン酸カルシウム材料および非水性液体を選択された追加材料と組み合わせることにより調製してもよい。追加材料は、リン酸カルシウムおよびその他の成分との適合性、ならびに混成物に特定の治療目的または滅菌後の安定性に望ましい特性(生物学的、化学的、物理的、もしくは機械的)を授けるそれ自体の能力に基づいて選択される。例えば、追加材料は、引っ張り強度および硬度を改善し、破断強度を増加し、ならびに、移植、水和、および硬化後のペーストに形像能を付与するよう選択することができる。さらに、追加材料は、遅延凝固ペーストの凝固時間を改善するため、および/または流動特性を変えるために選択してもよい。追加材料は望ましくは生物適合性である。追加材料はまた結合剤として選択されてもよい。
【0055】
追加材料は、リン酸カルシウム組成物に、期待される治療的使用に応じて異なる量、かつ種々の物理的形体で添加することができる。例えば、追加材料はスポンジ、メッシュ、フィルム、繊維、ゲル、単繊維または、マイクロ粒子およびナノ粒子を含む粒子等の固体構造の形であってもよい。追加材料自体が混成物であってもよい。追加材料は、リン酸カルシウム材料と完全に混合される微粒子または液体添加物または粘状液剤であり得る。例えば、追加材料は、リン酸カルシウム材料と混合する前に、非水性液体に溶解してもよい。完全にリン酸カルシウム材料と混合する場合、追加材料は、接着反応を肉眼的レベルで妨げるかもしれないが、湿環境に置かれた時にペーストが硬化または凝固するのを阻止するのに十分な量では存在しない。リン酸カルシウム材料、非水性液体、および追加材料の割合は、所望の軟度、加工性、および付着力のペーストを製造できるよう変えることができる。
【0056】
多くの場合、追加材料が生物吸収性であることが望ましい。本発明のペースト中の追加材料として使用されるための生物吸収性材料は、限定されることなく、多糖類、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド)、ポリ(オルト炭酸塩)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノアート)、ポリ(ジオキサノン)、およびポリ(リン酸エステル)を含む。好ましくは、生物吸収性重合体は、コラーゲン、グリコーゲン、キチン、デンプン、ケラチン類、絹、鉱質除去骨マトリックス、およびヒアルロン酸等の天然に存在する重合体、または、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-炭酸トリメチレン)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、ポリ(カプロラクトン)、またはそれらの共重合体である合成重合体である。これらの重合体は生物的に侵食されることが知られており、本発明のペースト中での使用に好ましい。さらに、塩類(例、NaCl)および糖類(例、マンニトール)、ならびにそれらの組み合わせと同様に、SiO2、Na2O、CaO、P2O5、Al2O3、および/またはCaF2を含む組成物等の生物吸収性無機追加材料を用いてもよい。
【0057】
追加材料はまた、非吸収性または貧吸収性の材料から選択されてもよい。本発明のペーストで使用するための好ましい非吸収性または貧吸収性材料は、限定されることなく、デキストラン、セルロースおよびその誘導体(例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシエチルセルロース)、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、炭素繊維類、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体、ポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、ならびに重合体ワックス、脂質類、および脂肪酸類等の潤滑剤を含む。
【0058】
生物活性薬剤
本発明のペーストは、生物活性薬剤の送達ビヒクルを調製するのに有用である。一般に、唯一の必要条件は、物質がペースト中で製造される間活性を保つか、またはその後活性化もしくは再活性化され得るか、または遅延凝固ペーストを宿主に移植する際もしくはビヒクルを37℃において水性環境で硬化させた後に生物活性薬剤が添加されることである。
【0059】
本発明の送達ビヒクルに加え得る生物活性薬剤は、限定されることなく、有機分子類、無機材料類、タンパク質、ペプチド、核酸(例えば、遺伝子、遺伝子断片、遺伝子制御配列、およびアンチセンス分子)、核タンパク質、多糖類、糖タンパク質、およびリポタンパク質を含む。本発明の送達ビヒクル中に付加できる生物活性化合物の種類は、限定されることなく、抗癌剤、抗生物質、鎮痛剤、抗炎症剤、免疫抑制剤、酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、抗痙攣薬、ホルモン、筋弛緩剤、抗発作剤、眼剤、プロスタグランジン類、抗鬱剤、抗精神物質、栄養因子、骨誘導性タンパク質、成長因子、およびワクチンを含む。
【0060】
抗癌剤は、アルキル化剤、プラチナ剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、細胞分裂阻止剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト/アンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫モジュレーター、ホルモンおよび抗ホルモン剤、光力学剤、ならびにチロシンキナーゼ阻害剤を含む。
【0061】
表1に列記されるいずれの生物活性薬剤をも用いることができる。
(表1)




【0062】
抗生物質は、アミノグリコシド類(例えば、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、ストレプトマイシン、アミカシン、ネオマイシン)、バシトラシン、カルバペネム類(corbapenems)(例えば、イミペネム/シラスタチン(cislastatin))、セファロスポリン類、コリスチン、メテナミン、モノバクタム類(例えば、アズトレオナム)、ペニシリン類(例えば、ペニシリンG、ペニシリンV、メチシリン、ナフシリン(natcillin)、オキサシリン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、アンピシリン、アモキシリン、カルベニシリン、チカルシリン、ピペラシリン、メズロシリン、アズロシリン) 、ポリミキシンB、キノロン類、およびバンコマイシン;ならびに、クロラムフェニコール、クリンダマイシン(clindanyan)、マクロライド類(例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラシスロマシン)、リンコマイシン(lincomyan)、ニトロフラントイン、スルホンアミド類、テトラサイクリン類(例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、デメクロシリン(demeclocycline))、およびトリメトプリム等の静菌剤を含む。さらに、メトロニダゾル、フルオロキノロン類、およびリタンピン(ritampin)が含まれる。
【0063】
酵素阻害剤とは、酵素反応を阻害する物質である。酵素阻害剤の例としては、塩化エドロホニウム、N-メチルフィソチグミン、臭化ネオスチグミン、硫酸フィゾスチグミン、タクリン、タクリン、1-ヒドロキシマレアート、ヨードツベルシジン(iodotubercidin)、p-ブロモテトラミソール(p-bromotetramisole)、10-(α-ジエチルアミノプロピオニル)-フェノチアジンハイドロクロライド、塩化カルミダゾリウム、ヘミコリニウム-3、3,5-ジニトロカテコール、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤I、ジアシルグリセロールキナーゼ阻害剤II、3-フェニルプロパギルアミン、N6-モノメチル-L-アルギニンアセテート、カルビドパ、3-ヒドロキシベンジルヒドラジン、ヒドラジン、クロルジリン、デプレニール、ヒドロキシルアミン、リン酸イプロニアジド、6-MeO-テトラヒドロ-9H-ピリド-インドール、ニアルアミド、パルジリン、キナクリン、セミカルバジド、トラニルシプロミン、N,N-ジエチルアミノエチル-2,2-ジフェニルバレレートハイドロクロライド、3-イソブチル-1-メチルキサンチン、パパベリン、インドメタシン、2-シクロオクチル-2-ヒドロキエチルアミンハイドロクロライド、2,3-ジクロロ-a-メチルベンジルアミン(DCMB)、8,9-ジクロロ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-2-ベンズアゼピンハイドロクロライド、p-アミノグルテチミド、酒石酸p-アミノグルテチミド、3-ヨードチロシン、α-メチルチロシン、アセタゾラミド、ジクロルフェナミド、6-ヒドロキシ-2-ベンゾチアゾールスルフォンアミド、およびアロプリノールが含まれる。
【0064】
抗ヒスタミンは、その他のものに加えてピリルアミン、クロルフェニラミン、およびテトラヒドラゾリンを含む。
【0065】
抗炎症剤は、コルチコステロイド類、非ステロイド抗炎症剤(例えば、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、ピロキシカム、およびフルフィナミック酸類)、アセトアミノフェン、フェナセチン、金塩、クロロキン、D-ペニシラミン、メトトレキサートコルヒチン、アロプリノール、プロベネシド、ならびにスルフィンピラゾンを含む。
【0066】
筋弛緩剤は、メフェネシン、メトカルバモール、塩酸シクロベンザプリン、塩酸トリヘキシフェニジル、レボドパ/カルビドパ、およびビペリデンを含む。
【0067】
抗痙攣薬は、アトロピン、スコポラミン、オキシフェノニウム、およびパパベリンを含む。
【0068】
鎮痛薬は、アスピリン、フェニルブタゾン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、イブプロフェン、ピロキシカム、フルフィナミック酸類、アセトアミノフェン、フェナセチン、硫酸モルヒネ、硫酸コデイン、メペリジン、ナロルフィン、オピオイド類(例えば、硫酸コデイン、クエン酸フェンタニル、酒石酸水素ヒドロコドン、ロペラミド、硫酸モルヒネ、ノスカピン、ノルコデイン、テバイン、ノルビナルトレフィミン、ブプレノルフィン、クロルナルトレキサミン(chlornaltrexamine)、フナルトレキサミン、ナルブフェン、ナロルフィン、ナロキソン、ナルキソナジン、ナルトレキソン、およびナルトリンドール)、プロカイン、リドカイン、テトラカイン、ならびにジブカインを含む。
【0069】
眼剤は、フルオレセインナトリウム、ローズベンガル、メタコリン、アドレナリン、コカイン、アトロピン、α-キモトリプシン、ヒアルロニダーゼ、ベタキソロール、ピロカルピン、チモロール、チモロール塩類、およびそれらの組み合わせを含む。
【0070】
プロスタグランジンは当技術分野において認識されており、種々の生物学的効果を有する天然に生じる化学的に関連した長鎖ヒドロキシ脂肪酸類である。
【0071】
抗鬱剤は、鬱病を予防または緩和することができる物質である。抗鬱剤の例は、イミプラミン、アミトリプチリン、ノルトリプチリン、プロトリプチリン、デシプラミン、アモキサピン、ドキセピン、マプロチリン、トラニルシプロミン、フェネルジン、およびイソカルボキシサジドを含む。
【0072】
栄養因子とは、連続的に存在することにより、細胞の生存能または寿命を改善する因子である。栄養因子は、限定されることなく、血小板由来増殖因子(PDGF)、好中球活性化タンパク質、単球化学走性タンパク質、マクロファージ炎症性タンパク質、血小板因子、血小板塩基性タンパク質、およびメラノーマ増殖刺激活性;表皮成長因子、トランスフォーミング成長因子(α)、繊維芽細胞増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子、インシュリン様成長因子、グリア由来成長神経栄養因子、繊毛神経栄養因子、神経成長因子、骨成長/軟骨誘導因子(αおよびβ)、骨形態形成タンパク質類、インターロイキン類(例えば、インターロイキン1からインターロイキン10を含む、インターロイキン阻害剤類またはインターロイキン受容体)、インターフェロン類(例えば、インターフェロンα、β、およびγ);エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージコロニー刺激因子、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子を含む造血因子類;腫瘍壊死因子;β-1、β-2、β-3、インヒビンおよびアクチビンを含むトランスフォーミング成長因子類(β)を含む。
【0073】
ホルモンは、エストロゲン類(例えば、エストラジオール、エストロン、エストリオール、ジエチルスチベステトロール、キネストロール、クロロトリアニセン、エチニルエストラジオール、メストラノール)、抗エストロゲン類(例えば、クロミフェン、タモキシフェン)、プロゲスチン類(例えば、メドロキシプロゲステロン、ノルエチンドロン、ヒドロキシプロゲステロン、ノルゲストレル)、抗プロゲスチン類(ミフェプリストン)、アンドロゲン類(例えば、テストステロンシピオネート、フルオキシメステロン、ダナゾール、テストラクトン)、抗アンドロゲン類(例えば、酢酸シプロテロン、フルタミド)、甲状腺ホルモン類(例えば、トリヨードサイロン、サイロキシン、プロピルチオウラシル、メチマゾール、および酸化ヨード(iodixode))、ならびに下垂体ホルモン類(例えば、コルチコトロピン、ソマトトロピン、オキシトシン、およびバソプレシン)を含む。ホルモンは、ホルモン補充療法および/または産児制限の目的で、通常用いられる。プレドニゾン等のステロイドホルモン類は、免疫抑制剤および抗炎症剤としても使用される。
【0074】
骨形成タンパク質
生物活性薬剤は、アクチビン類、インヒビン類、および骨形態形成タンパク質(BMP類)を含むタンパク質のトランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーとして知られるタンパク質ファミリーから望ましくは選択される。最も好ましくは、活性薬剤は、骨形成活性、ならびにその他の成長および分化型活性を有すると開示されてきたBMP類として一般的に知られるタンパク質サブクラスから選択される少なくとも1つのタンパク質を含む。これらのBMP類には、例えば米国特許第5,108,922号、第5,013,649号、第5,116,738号、第5,106,748号、第5,187,076号、および第5,141,905号に開示される、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、およびBMP-7;PCT公開公報WO91/18098号に開示されるBMP-8;ならびに、PCT公開公報WO93/00432号に開示されるBMP-9、PCT出願WO94/26893号に開示されるBMP-10、PCT出願WO94/26892号に開示されるBMP-11、またはPCT出願WO95/16035号に開示されるBMP-12もしくはBMP-13;BMP-14;米国特許第5,635,372号に開示されるBMP-15;または米国特許5,965,403号に開示されるBMP-16のBMPタンパク質を含む。本発明のペースト中の活性薬剤として有用であり得るその他のTGF-βタンパク質は、Vgr-2(Jones et al., Mol. Endocrinol. 6:1961(1992))、ならびにPCT出願WO94/15965号、WO94/15949号、WO95/01801号、WO95/01802号、WO94/21681号、WO94/15966号、WO95/10539号、WO96/01845号、WO96/02559号、およびその他に記載されるものを含む、いずれかの成長および分化因子(GDF類)を含む。WO94/01557号に開示されるBIP、JP公開公報番号7-250688に開示されるHP00269、およびPCT出願WO93/16099号に開示されるBMP-14(MP52、CDMP1、およびGDF5としても知られる)も本発明で有用であり得る。上記全ての出願における開示は、参照により本明細書に組み入れられる。本発明の使用に現在好ましいBMP類のサブセットには、BMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP-16、BMP-17、およびBMP-18が含まれる。活性薬剤は、最も好ましくは、本明細書に参照により組み入れられる米国特許第5,013,649号にその配列が開示されるBMP-2である。その他の物に加えてテリパラチド(Forteo(登録商標))、クリサリン(Chrysalin(登録商標))、プロスタグランジンE2、またはLIMタンパク質等の当技術分野において知られる他の骨形成薬剤を用いてもよい。
【0075】
生物活性薬剤は、組換え産生、または、タンパク質組成物より精製されてもよい。BMP等のTGF-βまたはその他のダイマー型タンパク質が活性薬剤の場合、ホモダイマー型でも、他のBMP類とのヘテロダイマー型(例えば、BMP-2およびBMP-6の各々の1個のモノマーより構成されるヘテロダイマー)、またはアクチビン類、インヒビン類、もしくはTGF-β1等のTGF-βスーパーファミリーのその他のメンバーとのヘテロダイマー型(例えば、BMPおよびTGF-βスーパーファミリーに関連するメンバーの各々の1個のモノマーより構成されるヘテロダイマー)であってもよい。このようなヘテロダイマー型タンパク質の例は、例えば、その明細書が本明細書に参照として組み入れられる公開されたPCT特許出願WO93/09229号に記載されている。
【0076】
活性薬剤はさらに、ヘッジホッグ、Frazzled、コーディン(Chordin)、ノギン(Noggin)、セルベルス(Cerberus)、およびフォリスタチンタンパク質等の追加薬剤を含む。これらのタンパク質ファミリーは、一般的に、Sasai et al., Cell 79:779-790 (1994)(Chordin)、PCT特許公開公報WO94/05800号(Noggin)、およびFukui et al., Devel. Biol. 159:131 (1993)(フォリスタチン)に記載されている。ヘッジホッグタンパク質は、WO96/16668号、WO96/17924号、およびWO95/18856号に記載されている。タンパク質のFrazzledファミリーは、Frizzledとして知られる受容体タンパク質ファミリーの細胞外結合ドメインに高い相同性を持つ、最近発見されたタンパク質のファミリーである。Frizzledファミリーの遺伝子およびタンパク質は、Wang et al., J. Biol. Chem. 271:4468-4476 (1996)に記載されている。活性薬剤はさらに、PCT特許公開公報WO95/07982号に開示される切断型可溶性受容体等の他の可溶性受容体を含んでもよい。WO95/07982号の教示から、当業者は、無数の他の受容体タンパク質について、切断型可溶性受容体を調製できることを認識するであろう。上記公開公報は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
本発明の細胞、または浸潤性前駆細胞もしくはその他の細胞の骨形成活性の増加を刺激するのに効果的な骨形成タンパク質の量は、採用される担体と同様に、処置される欠損の大きさおよび性質に依存するであろう。一般に、送達されるべきタンパク質の量は、約0.1から約100mg、好ましくは約1から約100mg、最も好ましくは約10から約80mgの範囲内である。
【0078】
生物活性薬剤は、本発明の送達ビヒクル中に、その形成中または形成後に導入することができる。都合よくは、薬剤は、凝固前にペースト中へ混合され得る。代わりに、ビヒクルは形成され、硬化された後、溶液中で治療剤に曝露され得る。この特定の手法は、リン灰石材料に親和性を有することが知られているタンパク質に特によく適している。遅延凝固ペーストを、例えば移植前に湿らせる水性溶液として、水に代えて生物活性薬剤を含む緩衝溶液を用いることができる。どのようなpH範囲でも緩衝液を用いることができるが、最も多くの場合には5.0から8.0の範囲内で用いられ、好ましい態様においてpHは、所望の治療用薬剤の延長された安定性および効果と融和するものであり、最も好ましい態様において5.5から7.4の範囲内であろう。好ましい緩衝液は、これらに限定されないが、炭酸塩類、リン酸塩類(例えば、リン酸緩衝溶液(PBS)、ならびに、Tris、HEPES、およびMOPS等の有機緩衝液を含む。最も多くの場合、宿主組織との生物適合性、および治療用薬剤との適合性に基づいて緩衝液は選択されるであろう。核酸、ペプチドまたは抗生物質のほとんどの適用については、単純なリン酸緩衝溶液で十分である。
【0079】
上記に列挙した薬剤の送達についての標準的なプロトコルおよび養生法は、当技術分野において公知である。典型的には、これらのプロトコルは、経口または静脈内送達に基づく。生物活性薬剤は、移植部位へ適当な用量の薬剤が送達されるような量で、ビヒクル中に導入される。殆どの場合、開業医に公知で、かつ問題となる特定の薬剤に適用できるガイドラインを用いて、用量は決定される。本発明のペーストに含まれるか、または硬化させた送達ビヒクルに添加する生物活性薬剤の例示的な量は、症状の型および程度、個々の患者の全体的な健康状態、活性薬剤の処方、ならびに使用された送達ビヒクルの生物吸収性等の変化要因に依存するであろう。いずれの特定の生物活性薬剤についても、用量および投与頻度を最適化するために、標準的な臨床試験を用いることができる。
【0080】
送達動態の改変
本発明の送達ビヒクルの利点の一つは、遅延凝固前駆ペーストの成分を変えることにより、送達ビヒクルの吸収速度を調節できることである。濃密な、硬化した結晶性産物となるペーストは、一般に、インビボにおいて移植されたビヒクルのよりゆっくりとした吸収時間に結びつく。硬化した産物の密度または吸収動態を変えるため多様な方法が存在する。これらには、ペーストを形成するのに使用する非水性液体の量の調節、開始リン酸カルシウム材料類の粒の大きさの変更、硬化の際のペーストの圧縮を含む。
【0081】
浸出可能もしくは生物分解性の粒子または材料を、ペースト中に組み入れてもよい。浸出可能または生物分解性の材料は、高度に多孔性のインプラントが製造されるように、インビボにおいて硬化した材料から、その後除かれてもよい(例えば、浸出により)。ペーストは、インビボにおいて、移植されて硬化したペーストよりも大きな吸収速度を有する生物吸収性固体要素を含み得る。その結果、硬化したインプラントは、予め選択された大きさおよび形体の溝または孔を生じるよう設計できる。それにより、リン酸カルシウム吸収の速度およびインプラントからの生物活性薬剤の放出速度を調節するのに用いることができる、間隙率および表面積の増加が得られる。望ましくは、固体要素は、ペーストの調製に使用される非水性液体に不溶性である。固体要素は、棒、繊維、シート、繊維状マット、星型、およびジャック型より選択できる。要素は、限定されることなく、本明細書中に記載される追加材料のいずれをも含み得る。望ましくは、本要素は糖、無機塩、または炭水化物である。固体要素のその他の例は、本明細書に参照として組み入れられる米国特許第6,599,516号に記載されている。
【0082】
発泡剤
粒状化は、細胞外骨マトリックス分泌のための細胞移行および浸潤を容易にするため、ならびに脈管化への近接(access for vascularization)をもたらすため望ましい。顆粒はさらに、増大された細胞-基質相互反応と同様に、活性物質の増幅された吸収および放出をもたらす。
【0083】
高度に多孔質または顆粒ですらあるインプラントは、ペーストに発泡剤を添加することで達成できる。発泡剤は、移植前にペーストに溶解される気体であり得る。気体は加圧下、即ち構成材料を接着反応には不活性である気体の圧縮雰囲気下に付すことにより、ペースト中に溶解され得る。生理的温度に曝露されることにより(即ち、注射または移植により)、上昇した温度による気体溶解度の減少のため、気体は遊離される。これらの状況下、気体の分離および続いての顆粒化は、インビボでの硬化の間にのみ起こり、投与前には起こらない。シリンジ内で室温において顆粒化が起こることは望まれないため、これは特に魅力的である。好ましい気体は、限定されることなく、二酸化炭素、空気、窒素、ヘリウム、酸素、およびアルゴンを含む。代わりの発泡剤は、溶解により気体を放出する固体材料である。例えば、重炭酸ナトリウムは、後に二酸化炭素と水を生じる不安定な炭酸中間体へと転化する際に二酸化炭素を生じる。望ましくは、重炭酸ナトリウムは、遅延凝固ペースト中に約0.5および40%(w/w)の間の量で存在する。発泡剤の使用についてのより詳細な説明は、2002年5月31日に出願された「骨誘導性タンパク質のためのリン酸カルシウム送達ビヒクル」と題されたU.S.S.N10/160,607で見い出せる。
【0084】
多孔性は、代わりに発泡剤を結合剤と組み合わせることにより達成することもできる。
【0085】
移植
本発明のペーストは、好ましくは人体である、哺乳動物の身体の多様な部位のいずれかに生物活性薬剤を送達するためのビヒクルの調製に使用することができる。送達ビヒクルは、骨質部位および眼領域中へ皮下、筋内、腹膜内移植することができる。
【0086】
このようなビヒクルは、調節された局所送達という利点を提供する。その結果、全身投与と比べ、治療成果を達成するのにより少ない生物活性薬剤しか必要とせず、副作用の可能性を低下し、移植された部位における薬剤の活性を最大にする。
【0087】
送達ビヒクルは、いかなる許容可能な組織にも注射または移植することができる。経口処方もまた、本発明の範囲内とみなされる。好ましい送達部位は、骨、筋肉、脊髄、中枢神経系、腹膜腔、皮下位置、ならびに眼球の硝子液および水様液内の部位を含む。ビヒクルの移行が重要である状況下で、送達ビヒクルをある部位へ送達する場合、正しい位置に付着および維持されるよう、アンカー構造またはフックをビヒクルに加えることができる。適した場合、送達ビヒクルは骨質部位内に挿入によりつなぎ留められてもよい(以下を参照されたい)。具体的な適用、および好ましい送達部位について、以下により詳細に論じる。
【0088】

送達ビヒクルは、骨内の部位への生物活性薬剤の送達に関して、特定の利点を有する。送達ビヒクルの骨質部位への移植は、骨、または、厳密には「内」ではないが骨に近接する部位のどちらかへつなぎ留める工程を含む。
【0089】
天然の骨鉱質は、リン灰質構造を有する、ナノメーターの大きさの、低結晶性リン酸カルシウムからなる。しかしながら、原子Ca/P比が1.67である理想的な化学量論的結晶性ハイドロキシアパタイトCa10(PO4)6(OH)2とは違い、骨鉱質の組成は明らかに異なっており、次の化学式により表され得る:Ca8.3(PO4)4.3(HPO4,CO3)1.7(OH,CO3)0.3
【0090】
骨鉱質非化学量論は、三価イオンPO43-を置換しているCO32-およびHPO42-等の二価イオンの存在に主として帰すべきものである。HPO42-およびCO32-イオンによる置換は、Ca/P比に変化を生じさせ、その結果、年齢および骨質部位に依存して1.50から1.70の間で変動し得るCa/P比となる。一般的に、Ca/P比は骨の老化と共に増加し、古い骨では炭酸塩種の量が典型的には増加することを示唆する。骨鉱質の特定の可溶性特性をもたらすのは、ナノ結晶サイズおよび低結晶性の性質と共に、Ca/P比である。かつ、骨組織は、鉱質再吸収細胞(破骨細胞)および鉱質産生細胞(骨芽細胞)により調節される、定常的な組織修復を受けるため、これらの細胞活性の間の繊細な代謝均衡を維持するのに鉱質の溶解性質は重要である。
【0091】
本明細書中に記載される送達ビヒクルのいくつかは、骨質部位における移植に最適である。これらのビヒクルは、天然骨鉱質に匹敵するCa/P比を有するナノサイズの低結晶性固体として製造された材料から作られている。材料は、生物吸収性であってもよく、低温で製造されてもよく、さらに容易に成形可能で注射可能である。
【0092】
さらに、本明細書中に記載されるペーストは、患者自身の骨によりついには置換されるよう、骨成長を助けるため移植することができる。しかしながら、生物活性薬剤を組み入れたペーストの薬物送達の吸収速度に、骨の内方成長がかなり影響するかも知れないことを留意すべきである。従って、一定の条件下(例えば、正確に予め決められた投与スケジュールに従って生物活性薬剤が送達されなければならない場合)においては、薬物送達ビヒクル内への骨の成長を、例えば、骨細胞性もしくは軟骨細胞性細胞、または前駆体の浸透を妨げることにより、減少させることが望ましいかもしれない。ほとんどの状況下で、骨からデバイスを、幾分距離を開けて配置することにより骨化作用を避けることができる。一般的に、より長い距離が好ましいが、1mmで十分であろう。また、骨成長を防止するため、インディアンヘッジホッグ遺伝子および遺伝子産物、甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHRP)、およびPTHRP受容体アゴニスト等の化合物を薬物送達デバイス中、デバイス上、またはデバイスと隣接して含み得る。
【0093】
骨化作用の促進
骨化作用を最適化するため、遅延凝固ペーストまたは硬化したリン酸カルシウム組成物を、前駆体細胞、幹細胞、および/または骨芽細胞等の骨形成細胞と一緒に植えてもよい。これは、ペーストまたは硬化した組成物を、患者自身の骨形成細胞供給源と接触させて配置することにより最も簡単に達成される。このような細胞は、骨関連組織、血液、または骨もしくは骨材もしくは骨膜、海綿質、もしくは骨髄を含む領域と接触していた外因性液体を含む体液中に見い出し得る。骨への導入に骨膜の破断および/または出血を伴う、ネジおよび止め針等のデバイスを一緒に使用する場合、さらなる植え付けは必要とされない。皮質骨にのみ対峙するプレートについては、デバイスに接触する骨膜外傷の誘導が推奨される。さらに別の態様においては、移植部位における皮質骨の一部を取り除くことにより、骨内に外科的に台座を設けることが有効であろう。骨化作用を増大させるために、患者より採取された骨形成細胞を移植片に導入してもよい。骨化作用増大のため、患者から採取された骨形成細胞の移植片への導入、またはデバイス中もしくはデバイス上への栄養因子または骨成長タンパク質の組み入れを含む、その他の工程を採用してもよい。非自己骨細胞もまた、骨再生を促進するために使用することができる。全身投与によるか、またはデバイスに組み入れることにより、免疫抑制剤をデバイス受容者に投与してもよい。従って、一次供給源、セルライン、またはセルバンクより得られた細胞群または組織群を用いてもより。本明細書に参照として組み入れられるLeeらの米国特許第6,132,463号を参照されたい。
【0094】
あるカテゴリーの生物活性薬剤は、骨質部位への送達に特に好適であると期待される。例えば、損傷を受けた骨部位へ薬物送達ビヒクルを適用する場合、骨再生タンパク質(BRP類)をビヒクル中に組み入れることが望ましいかもしれない。BRP類は、骨成長の速度を増加し、骨の治癒を促進することが証明されている(例えば、Appel et al., Exp. Opin. Ther. Patents 4:1461 (1994)を参照されたい)。例示的なBRP類は、これらにいかなる意味でも限定されないが、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、細胞接着因子(CAF類)、内皮成長因子(EGF類)、OP-1、および骨形態形成タンパク質(BMP類)を含む。このようなBRP類は目下、マサチューセッツ州ケンブリッジのGenetics Institute、カリフォルニア州パロアルトのGenentech、およびマサチューセッツ州ホプキントンのCreative Biomoleculesにより開発されている。骨再生タンパク質および栄養因子もまた、望まれる場合、異所性骨形成を刺激するために用いることができる。例えば、BMP-2を含む遅延凝固ペーストを皮下に配置することができ、骨形成は2〜4週間以内に起こるであろう。
【0095】
抗生物質および防腐剤もまた望ましくは、本発明の遅延凝固ペーストを用いて骨質部位へと送達される。例えば、骨移植片手術により生じる主な臨床的意味の一つは、術後の炎症または感染、特に骨髄炎を伴う感染を抑制する必要があることである。抗生物質を含む本発明の薬物送達デバイスは、手術部位における局所感染の可能性を減らすため、改良された骨移植として、または骨移植と共に用いることができ、非感染性のためより早い骨治癒プロセスに貢献する。抗生物質の効果は、組織修復部位へ最も効果的な用量で抗生物質ペプチドまたはその活性成分を送達する速度で溶解するように、低結晶性ハイドロキシアパタイトの吸収を制御することにより、さらに増幅することができる。骨組織修復の最適条件を容易にするために必要な成分のほとんど、または全てを局所送達するため、抗生物質および骨再生タンパク質類を共に本発明の遅延凝固ペーストに組み入れてもよい。
【0096】
骨質部位へ望ましくは送達されるその他の生物活性薬剤は、例えば骨腫瘍の処置のための抗癌剤を含む(例えば、Otsuka et al., J. Pharm. Sci. 84:733 (1995))。骨部位の機械的充全性を改善すると共に、転移を阻止するようあらゆる残存癌細胞をも処置するために、遅延凝固ペーストを移植することができるため、本発明の送達ビヒクルは、例えば、骨腫瘍を外科的に除去された患者に有用である。例示的抗癌剤は、表1に列挙される多くの生物活性薬剤を含む。
【0097】
骨質部位への送達のための本発明の遅延凝固ペースト中に組み入れることができる追加の生物活性薬剤は、骨粗鬆症を緩和する薬剤を含む。例えば、骨粗鬆症に対してアミド化サケカルシトニンが有効であることが証明されている。
【0098】
血管新生を増加することが望ましい場合に用いることができる、VEGF等の血管新生因子と同様に、ビタミンDおよびビタミンKもまた望ましくは骨質部位へ送達される。
【0099】
整形外科用途
本発明のペーストは、多様な整形外科症状を修復するのに有用となり得る。本発明の遅延凝固ペーストは、脊椎骨折の処置のため脊椎本体中に注射しても、骨折の修復を増大もしくは骨折した断片を安定化するために長骨または扁平骨中に注射しても、または骨強度を改善するために無傷の骨粗鬆症骨中に注射してもよい。骨ネジまたは骨移植インターフェースの増強に有用であり得る。さらに、骨が欠損しているかもしれない骨格領域における骨充填剤として有用となり得る。このような欠損が存在し得る状況は、部分的骨損失を有する外傷後、骨が切り出された骨腫瘍手術後、および関節全置換術後を含む。ペーストは、関節置換術を受ける患者において人工的関節成分を保持および固定するために、摘出手術後の脊髄前柱を安定化させるための支柱として、分断された骨の構造的支持体として(例えば、骨切片を集合させ、ネジ、外部プレート、および関連する内部固定金属製品を支えるため)、ならびに脊椎固定術における骨移植片代用品として使用することができる。
【0100】
遅延凝固ペーストは、人工的骨インプラントを被覆するために使用することができる。例えば、人工的骨インプラントが多孔性の表面を有している場合、遅延凝固ペーストは、内部における骨の成長(即ち、骨内方成長)を促進するため表面に適用してもよい。ペーストはまた、骨内における固着を高めるために人工的骨インプラントに適用してもよい。
【0101】
本発明の遅延凝固ペーストは、骨腔、欠けている骨を正確に再構成するため、および骨格骨の外形的欠陥を再形成するために、容易に適用できかつ簡単に模ることができる。遅延凝固ペーストは、例えばスパチュラを用いて適用でき、成形および彫刻することができ、さらにその形体を硬化するまで十分に保持することできる。
【0102】
皮下
送達ビヒクルは、そのデバイスが骨化することなく吸収される非骨質部位に移植することができる。送達ビヒクルの皮下配置は、生物活性化合物の全身投与のために特に有用である。出生調節に使用するためのエストロゲン類および/またはプロゲステロン類の投与は、皮下適用の一例である。さらに、抗原および/またはワクチンの投与は、皮下移植により達成され得る。
【0103】
中枢神経系
治療用物質の中枢神経系への送達は、本発明の送達ビヒクルにより達成され得る。有用な治療用物質は、癲癇病巣へのγ-アミノ酪酸の送達、パーキンソン病処置のための線条もしくは黒質へのL-ドーパもしくはドーパミンの送達、パーキンソン病処置において側脳室、線条、または黒質中のGDNF等の神経変性を予防するための成長因子の送達、アルツハイマー病処置のための皮質およびその他の領域へのNGFの投与、または、筋萎縮性側索硬化症(ALS)処置のための仙椎もしくは腰椎の脊髄へのCNTFの投与を含む。
【0104】
本発明のペーストは、種々の方法で包装することができ、限定されることなく、広口瓶内、送達用銃(delivery gun)の薬室に合うチューブ(例えば、家庭用コーキング用銃に、コーキング用チューブが詰められているのと同様)、絞り出せるチューブ(例えば、歯磨きチューブと同様)、予め充填された注射器、および、個別に包装された予め形成された形体を含む。ペーストの包装および送達の望ましい様式は、処置される症状に依存するであろう。
【0105】
以下の実施例は、本明細書中で特許請求される方法および化合物が、どのように行われ、作られ、および評価されるかについての完全な開示ならびに記載を、当業者に提供するために示されており、純粋に本発明の例示を目的とするものであって、本発明者らが本発明者らの発明と認識する範囲を限定することを目的とするものではない。
【0106】
実施例1.リン酸カルシウムセメント(CPC)の調製
非晶質リン酸カルシウム(ACP)およびリン酸二カルシウム二水和物(DCPD)粉末を、等量、セラミック製広口瓶中に流し入れた。粉末および5000gの粉砕用媒体(10-mm YTZ)を含むセラミック製広口瓶を、100rpmで3時間、ボールミルにかけた。得られた粉末を、120メッシュの篩にかけた。
【0107】
実施例2.非水性溶媒を含む重合体の調製
1.0gのポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)、Resomer RG755を5mLの1-メチル-2-ピロリドン(メチルピロリドン(NMP)としても公知)溶媒に溶解した。2.0gのポリ(D,L-ラクチド)、Resomer R208を5mLのNMPに溶解した。
【0108】
実施例3.CPCおよびResomerLR708混合粉末の調製
0.95gの実施例1のCPCを、0.05gのポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、Resomer LR708とスパチュラを用いて混合した。
【0109】
実施例4.CPCおよびResomerRG755NMPペーストの調製
1.0gの実施例1のCPC粉末を、Resomer RG755を含む300μLのNMP溶液と混合した。混合物を1分間完全に練り、ペーストを形成した。ペーストを注射器の中へ移した。
【0110】
実施例5.CPCおよびResomerR208NMPペーストの調製
1.0gの実施例1のCPC粉末を、Resomer R208を含む350μLのNMP溶液と混合した。混合物を1分間完全に練り、ペーストを形成した。ペーストを注射器の中へ移した。
【0111】
実施例6.CPC-NMPペーストの調製
実施例3の粉末混合物を、400μLのNMP溶液と混合した。混合物を1分間完全に練り、ペーストを形成した。ペーストを注射器の中へ移した。追加材料を加えることなく、実施例1の粉末も同様の方法で処理し、ペーストを製造した。
【0112】
実施例7.水性媒体を用いたCPCペーストの調製
1.0gの実施例1のCPC粉末を、400μLの食塩水と混合した。混合物を1分間完全に練り、ペーストを形成した。ペーストを注射器の中へ移した。
【0113】
実施例8.種々のペースト類の硬化特性
種々のペーストの硬化を、ペーストをステンレス鋼の鋳型に入れ、37℃で24時間インキュベートすることにより特徴付けた。規定された時間インキュベートした後、硬化したペレットを鋳型より取り出し、加圧試験に付した。ペースト形成および加圧強度測定の結果を表2に示す。非水性液体および重合体を添加したCPCペーストと、CPCペーストを食塩水を用いて形成した場合とで、類似した硬化反応結果が示された。
【0114】
(表2)ペースト形成および加圧強度の測定値

【0115】
その他の態様
本明細書中で言及された全ての刊行物、特許および特許出願は、各個別の刊行物または特許出願が、具体的かつ個別に参照として組み入れられることが示されている場合と同様に、本明細書に参照として組み入れられる。
【0116】
本発明は、具体的な態様と関連して記載されているが、さらなる改変が可能であること、ならびに一般に本発明の原理に従い、本発明が属する分野において公知もしくは慣習的な実践の範囲内のものであり、上述される本質的な特性に適用され得、請求の範囲内に含まれる本明細書の開示からの発展を含め、本発明のあらゆる変更、使用または適用を、本出願が保護するものであることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿環境に置かれた場合に、液体が5%(w/w)より少ない水を含み、かつペーストが硬化したリン酸カルシウム材料を形成する、リン酸カルシウム材料および液体を含むペースト。
【請求項2】
少なくとも30%(w/w)のリン酸カルシウム材料、および少なくとも5%(w/w)の液体を含み、該液体は1%(w/w)より少ない水を含む、請求項1記載のペースト。
【請求項3】
少なくとも50%(w/w)のリン酸カルシウム材料、および少なくとも10%(w/w)の液体を含む、請求項2記載のペースト。
【請求項4】
リン酸カルシウム材料がメタリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム二水和物、リン酸ヘプタカルシウム(heptacalcium phosphate)、リン酸三カルシウム二水和物、結晶性ハイドロキシアパタイト(HA)、低結晶性リン酸カルシウム(poorly crystalline calcium phosphate;PCA)、ピロリン酸カルシウム、モネタ石、リン酸オクタカルシウム、非晶質リン酸カルシウム、またはそれらの混合物である、請求項1記載のペースト。
【請求項5】
リン酸カルシウム材料が低結晶性リン酸カルシウムを含む、請求項4記載のペースト。
【請求項6】
リン酸カルシウム材料が非晶質リン酸カルシウムを含む、請求項4記載のペースト。
【請求項7】
ペーストが少なくとも50%(w/w)のリン酸カルシウム材料、および少なくとも20%(w/w)の液体を含み、該液体が1%(w/w)より少ない水を含む、請求項6記載のペースト。
【請求項8】
液体がジメチルスルホキシド、N-メチル2-ピロリドン、グリコフロール、乳酸エチル、エタノール、プロピレングリコール、1,2-ジメトキシエタン、ジグライム(diglyme)、ジメチルイソソルバイド(isosorbide)、Solketal(登録商標)、テトラヒドロフルルフリルアルコール、グリセロール、トリアセチン、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、レシチン、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1記載のペースト。
【請求項9】
液体がN-メチル2-ピロリドンを含む、請求項8記載のペースト。
【請求項10】
追加材料をさらに含む、請求項1記載のペースト。
【請求項11】
追加材料が多糖類、核酸、炭水化物、タンパク質、ポリペプチド、ポリ(α-ヒドロキシ酸)、ポリ(ラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(無水物)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(無水物-コ-イミド(anhydride-co-imide))、ポリ(オルト炭酸塩)、ポリ(α-ヒドロキシアルカノエート(alkanoate))、ポリ(ジオキサノン)、およびポリ(リン酸エステル)、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される生体分解性(bioerodible)重合体を含む、請求項10記載のペースト。
【請求項12】
追加材料がコラーゲン、グリコーゲン、キチン、デンプン、ケラチン類、絹、鉱質除去骨マトリックス、ヒアルロン酸、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ(L-ラクチド-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-炭酸トリメチレン)、ポリヒドロキシ酪酸(PHB)、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリ(δ-バレロラクトン)、ポリ(γ-ブチロラクトン)、およびポリ(カプロラクトン)、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される生体分解性材料を含む、請求項10記載のペースト。
【請求項13】
追加材料がデキストラン、セルロース、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、炭素繊維、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド)-コ-ポリ(プロピレンオキシド)ブロック共重合体、およびポリ(エチレンテレフタレート)ポリアミド、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される非侵食性(non-erodible)重合体を含む、請求項10記載のペースト。
【請求項14】
セルロースがメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースである、請求項13記載のペースト。
【請求項15】
生物活性薬剤をさらに含む、請求項1記載のペースト。
【請求項16】
生物活性薬剤が骨形成性タンパク質、抗生物質、ポリヌクレオチド、抗癌剤、成長因子、またはワクチンである、請求項15記載のペースト。
【請求項17】
骨形成性タンパク質がBMP-2、BMP-3、BMP-3b、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP-16、BMP-17、またはBMP-18である、請求項16記載のペースト。
【請求項18】
生物活性薬剤がアルキル化剤、プラチナ剤、代謝拮抗物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗腫瘍抗生物質、細胞分裂阻止剤、アロマターゼ阻害剤、チミジル酸シンターゼ阻害剤、DNAアンタゴニスト、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、ポンプ阻害剤、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、リボヌクレオシドレダクターゼ阻害剤、TNFαアゴニスト、TNFαアンタゴニスト、エンドセリンA受容体アンタゴニスト、レチノイン酸受容体アゴニスト、免疫モジュレーター、ホルモン剤、抗ホルモン剤、光力学剤、またはチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項15記載のペースト。
【請求項19】
発泡剤をさらに含む、請求項1記載のペースト。
【請求項20】
発泡剤が重炭酸ナトリウムである、請求項18記載のペースト。
【請求項21】
ペーストが約1から約40パーセント(w/w)の重炭酸ナトリウムである、請求項20記載のペースト。
【請求項22】
以下の工程を含む、生物活性薬剤の送達のためのビヒクルを調製する方法:
(i)リン酸カルシウム材料、生物活性薬剤、および液体を含むペーストであって、該液体が5%(w/w)より少ない水を含むペーストを調製する工程;ならびに
(ii)硬化したリン酸カルシウム材料が形成されるまで、該ペーストを湿環境に置く工程。
【請求項23】
ペーストが追加材料をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
湿環境が哺乳動物の内部である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
以下の工程を含む、インプラントを調製する方法:
(i)リン酸カルシウム材料および液体を含むペーストであって、該液体が5%(w/w)よりも少ない水を含むペーストを調製する工程;ならびに
(ii)硬化したリン酸カルシウム材料が形成されるまで、該ペーストを湿環境に置く工程。
【請求項26】
ペーストが追加材料をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項27】
湿環境が哺乳動物の内部である、請求項24記載の方法。
【請求項28】
必要とされる部位において骨成長を促進する方法であって、該部位に請求項1記載のペーストを塗布する工程を含む、方法。
【請求項29】
部位が整形外科用インプラントの表面である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
部位が骨折である、請求項28記載の方法。
【請求項31】
ペーストが生物活性薬剤をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項32】
骨切片を請求項1記載のペーストと接触させる工程を含む、分裂した骨の構造的支持体を調製する方法。
【請求項33】
ペーストと固定用器材を接触させる工程をさらに含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
固定用器材がネジ類およびプレート類から選択される、請求項33記載の方法。
【請求項35】
以下を含むキット:
(i)請求項1記載のペースト;および
(ii)該ペーストを哺乳動物内に移植するための使用説明書。
【請求項36】
ペーストが生物活性薬剤をさらに含む、請求項35記載のキット。
【請求項37】
請求項1〜21のいずれか一項記載のペーストの主体、治療的使用、毒性、効果、または政府認可の計画日についての情報を広める工程を含む、該ペーストについてのインビボ研究を行うか、または計画している会社における投資を促進する方法。
【請求項38】
請求項1〜21のいずれか一項記載のペーストの主体または治療的使用についての情報を広める工程を含む、該ペーストの使用を促進する方法。

【公表番号】特表2007−533376(P2007−533376A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508509(P2007−508509)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/012583
【国際公開番号】WO2005/117919
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(504238046)エテックス コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】