説明

遊技場用椅子

【課題】遊技者が着座する前の隣接した椅子同士の間隔を広く確保すると共に、既に着座した遊技者が隣接する椅子によって圧迫感を感じることがない遊技場用椅子を提供することを目的とする。
【解決手段】遊技場用椅子1は、多数の遊技機30が並べられた遊技場において各遊技機30に対応するように遊技機30の正面に設置されるもので、遊技者が腰掛ける着座部2を有する。着座部2は、ヒンジ部を介して姿勢が変更する座面形成部7と付勢機構8とを有し、付勢機構8によって、座面形成部7の姿勢を収納姿勢に維持される。収納姿勢は、座面形成部7がヒンジ部を基準として、上に凸状態で屈曲する姿勢であり、腰掛け姿勢よりも遊技機30に対して左右に広がる領域を小さくすることができる。そして、収納姿勢の座面形成部7に着座すると、付勢方向に対向する外力が掛かり、座面形成部7は腰掛け姿勢に変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技場用椅子に関するもので、特に着座部の姿勢変更が可能な遊技場用椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技場では、1人でも多くの遊技者にパチンコ機やスロット機等の遊技機を遊技してもらえるように、多数の遊技機が隙間なく設置されている。具体的には、遊技場は、所定の数の遊技機が連続的に列をなして並べられ、その列が遊技機群(所謂遊技機島)を形成して構成されている。
【0003】
より具体的に説明すると、一般的に、遊技機島においては、各遊技機に隣接する位置に、遊技球やメダル等の遊技媒体を貸し出す貸出機等(以下台間機器という)が設置されているため、隣接する遊技機同士は、台間機器が有する幅程度の間隔を空けた配置とされている。即ち、この台間機器の幅は、40mm〜50mm程度であるため、隣接する遊技機同士の間に異なる機器が2台設置されたとしても、隣接する遊技機同士は広くても100mm程度の間隔を空けた配置とされている。
【0004】
ところで、遊技場には、前記した大きさの間隔を空けて設置された各遊技機に向かい合うように、1脚ずつの遊技場用椅子が配置されている。即ち、遊技場における各遊技場用椅子は、遊技機同士の間隔に依存する配置となるように設置されている。また、一般的に、遊技場用椅子の幅(遊技機の幅に対応する長さ)は、遊技機の幅(例えば、520mm)よりも若干短く設計されている。例えば、遊技場用椅子の幅は、390〜450mm程度である。
そのような事情に鑑みると、遊技機の設置位置に依存する遊技場用椅子同士の間隔は、狭い場合、110mm程度の大きさしか確保できない場合がある。そのため、現在の遊技場では、遊技者が椅子に腰掛ける際に、椅子同士の間隔が狭すぎる場合があり、座席に着きにくいという不満があった。
【0005】
そこで、特許文献1には、椅子に対して上方からの負荷がない状態においては、遊技機の正面からずれた位置に待機(待機姿勢)し、遊技者が当該椅子に腰を掛けて負荷が発生すると、その負荷によって遊技機の正面に位置(遊技姿勢)するようにスライド移動する遊技場用椅子が開示されている。即ち、この椅子が採用された遊技場では、遊技者が腰掛ける際に、椅子は遊技機の正面からずれた待機姿勢にあるため、椅子同士の間隔が十分確保され、遊技者が座席に着きにくいと感じる不満が解消される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−68084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の遊技場用椅子は、既に腰を掛けた遊技者(着座状態の遊技者)に隣接する椅子が空席の場合、その着座状態の遊技者に隣接する空席の椅子が、その着座状態の遊技者に対して圧迫感を与えてしまう不満があった。より具体的に説明すると、特許文献1に記載の遊技場用椅子は、付勢手段により常時右又は左方向に付勢されており、遊技者が着座していない待機姿勢のときは、遊技機に対して右側又は左側にずれた位置で待機している。そのため、着座状態の遊技者の隣の椅子が空席の場合、その空席の椅子は着座状態の遊技者に近接した位置で待機しており、着座状態の遊技者に対して従来よりも窮屈さを感じさせる場合があった。
【0008】
そこで本発明では、従来技術の問題に鑑み、遊技者が着座する前の隣接した椅子同士の間隔を広く確保すると共に、既に着座した遊技者が隣接する椅子によって圧迫感を感じることがない遊技場用椅子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、遊技者が腰掛ける着座部を有し、多数の遊技機が並べられた遊技場において各遊技機に対応するように遊技機の正面に設置される遊技場用椅子であって、着座部は、ヒンジ部を介して姿勢が変更される座面形成部と、当該座面形成部を所定の方向に付勢する付勢機構を有し、座面形成部は、遊技機に対して左及び/又は右方向に傾倒し、傾倒した姿勢たる収納姿勢と、着座可能な姿勢たる腰掛け姿勢とをとるものであり、付勢機構は、座面形成部が収納姿勢をとる方向に付勢し、無負荷状態の座面形成部を収納姿勢に維持可能なものであり、座面形成部に対して付勢方向に対向する外力が掛かると、座面形成部を腰掛け姿勢に変更できることを特徴とする遊技場用椅子である。
【0010】
本発明の遊技場用椅子は、隣接する椅子同士の間隔を十分に確保するべく、着座部の姿勢を変更できる構成としている。即ち、本発明では、着座部の構成部位たる座面形成部を、ヒンジ部を基準に、遊技機に対して左方向、右方向あるいは左右双方向に傾倒可能とし、付勢機構によって、座面形成部が傾倒した状態(収納姿勢)を維持できる構成とされている。これにより、収納姿勢をとった座面形成部は、遊技機に対して左右方向に広がる領域に占める割合を小さくできるため、隣接する別の椅子との間隔を拡げることが可能となる。即ち、本発明によれば、付勢機構によって座面形成部の収納姿勢が維持されている限り、当該座面形成部を備えた椅子は隣接する別の椅子との間隔を広く維持できるため、遊技者が腰掛ける際に当該椅子同士の間を通過しづらいと感じることがない。これにより、遊技者は、座席に着き易くなる。
【0011】
また、収納姿勢は着座可能な腰掛け姿勢から傾倒した姿勢、つまり座面形成部は遊技機に対して左右方向に移動した姿勢ではなく、あくまで傾倒した姿勢であり、さらに前記したように、遊技機に対して左右方向に広がる領域に占める割合が小さいため、遊技者が腰掛けた椅子に隣接する別の椅子が空席状態の場合、当該遊技者が隣接する別の椅子から圧迫感を感じるようなおそれがない。
【0012】
また、本発明の遊技場用椅子は、座面形成部に対して付勢方向に対向する外力が掛かると、座面形成部は腰掛け姿勢に変更される構成であるため、腰掛ける際に遊技者に要する手間が殆どない。例えば、座面形成部が左方向又は右方向に傾倒する構成であれば、傾倒状態の座面形成部を起こした状態にしたり、座面形成部が左右方向に傾倒、つまり座面形成部が遊技機に対して左右方向中途が折れ曲がる(例えばヒンジ部を基準に上に凸に折れ曲がる)構成であれば、折れ曲がり状態を平坦にした状態にするだけである。
以上のように、本発明によれば、遊技者が着座する前の隣接した椅子同士の間隔を広く確保することができる。また、既に着座した遊技者が隣接する椅子によって圧迫感を感じることもない。また、腰掛ける際に要する椅子の姿勢変更の手間も殆ど掛からないため利便性が高い。
【0013】
請求項2に係る発明は、座面形成部は、ヒンジ部を介して屈曲するもので、遊技機に対して左右方向両端側が互いに近接・離反する方向に移動し、屈曲した姿勢たる収納姿勢と、着座可能なほぼ平坦な姿勢たる腰掛け姿勢とをとるものであり、座面形成部に遊技者が腰掛けると、座面形成部は腰掛け姿勢に変更されることを特徴とする請求項1に記載の遊技場用椅子である。
【0014】
かかる構成によれば、座面形成部は、ヒンジ部を介して、遊技機に対して左右方向両端側を互いに近接・離反する方向に移動させることができるため、当該座面形成部を備えた椅子と隣接する左右双方の椅子との間隔を同時に広げた状態にすることが可能である。即ち、本発明によれば、収納姿勢をとった椅子に腰掛ける際に、当該椅子と左側に隣接する椅子との間を通過する場合や、当該椅子と右側に隣接する椅子との間を通過する場合のどちらの場合であっても、遊技者が当該椅子同士の間を通過しづらいと感じることがない。
また、本発明では、座面形成部をほぼ平坦にした姿勢を腰掛け姿勢としているため、例えば、座面形成部がヒンジ部を基準として、上に凸となるように折れ曲がる構成とすれば、遊技者が普段通り椅子に腰掛ける動作をすることで、座面形成部が腰掛け姿勢に変更されるため、椅子の姿勢を変更するという煩わしい手間がなく便利である。
【0015】
本発明の遊技場用椅子は、前記付勢機構は、バネと、1組の摺動体を有した直動部材とを備え、バネは1組の摺動体が互いに近接する方向に付勢するものであって、前記座面形成部は、摺動体の動作に連動して姿勢が変更されるものであることが望ましい。(請求項3)
【発明の効果】
【0016】
本発明の遊技場用椅子では、当該椅子の座面形成部がヒンジ部を介して、遊技機に対して左方向及び/又は右方向に傾倒し、その傾倒した収納姿勢が付勢機構によって維持される構成であるため、遊技者が収納姿勢をとった椅子に腰掛ける際に、椅子同士の間が狭すぎて通りにくいと感じることがない。また、本発明では、座面形成部が隣接する椅子に近接移動することはなく、単に傾倒姿勢をとるだけであるため、当該傾倒姿勢たる収納姿勢の椅子が既に椅子に腰掛けた遊技者に対して圧迫感を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る遊技場用椅子を備えた遊技機島の一部を示した正面図である。
【図2】図1の第一実施形態に係る遊技場用椅子を示す斜視図である。
【図3】図2の遊技場用椅子を示す分解斜視図である。
【図4】クッション部の断面図である。
【図5】摺動体を概念的に示した図で、(a)は斜視図で、(b)は断面図である。
【図6】図3の遊技場用椅子における背もたれ部の基材を別の角度から示した斜視図である。
【図7】図2の遊技場用椅子を正面から見た説明図である。
【図8】着座部と背もたれ部と脚部との接続関係を示す説明図である。
【図9】(a)〜(c)は、遊技場用椅子を姿勢変更した際の各部材の動作を示す説明図である。
【図10】第二実施形態の遊技場用椅子を示す一部透明化した斜視図である。
【図11】(a)〜(c)は、図10に示す遊技場用椅子を姿勢変更した際の各部材の動作を示す概念図である。
【図12】第三実施形態の遊技場用椅子を示す概念図であり、(a)〜(c)は、姿勢変更した際の各部材の動作を示す。
【図13】第三実施形態の遊技場用椅子の変形例を示す図で、(a)は収納姿勢を示す説明図で、(b)は腰掛け姿勢を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第一実施形態に係る遊技場用椅子1について説明する。
本実施形態の遊技場用椅子1は、図1に示すように、パチンコ機やスロット機等の遊技機30が群をなした遊技機群(所謂遊技機島)に設置されるもので、遊技者が遊技する際に腰掛けるものである。具体的には、遊技場用椅子1は、並列的に並べられた各遊技機30に対向するように1脚ずつ配されており、各遊技機30の設置位置に依存した配置とされている。
【0019】
本実施形態の遊技場用椅子1は、図2に示すように、遊技者が腰掛けた際に当該遊技者のでん部が置かれる着座部2と、遊技者が腰掛けてもたれた際に当該遊技者の背中が接する背もたれ部3と、着座部2及び背もたれ部3を床面から離れた位置で支持する脚部5とによって構成されている。
【0020】
着座部2は、図3に示すように、クッション部6と、そのクッション部6が保持される座面形成部7と、付勢機構8とを備えている。
クッション部6は、図4に示すように、衝撃を緩和する機能を備えたクッション材27と、そのクッション材27を一定の形状に保持しカバーするカバー部材28とを有する。即ち、クッション部6は、カバー部材28内部にクッション材27が充填された構成である。
【0021】
座面形成部7は、樹脂の射出成形によって成形された2つのケース部材11、12と、そのケース部材11、12を連結する2つのケース回動ヒンジ部材21とを有し、隣接するように並べた2つのケース部材11、12を、ケース回動ヒンジ部材21によって回動可能に接続したものである。
ケース部材11、12は、図3に示すように、平面視した形状がほぼ長方形で、1面が開放された筐体である。即ち、ケース部材11、12は、開放面と対向する位置の底壁35と、その底壁35を囲繞するように配された周壁36とを有し、底壁35と周壁36とによって座部クッション保持空間34が形成されている。即ち、ケース部材11、12の座部クッション保持空間34は、ケース部材11、12の開放面側からクッション部6が嵌め込まれる部分である。なお、クッション部6は、接着剤等によって座部クッション保持空間34に固定される。
【0022】
ケース回動ヒンジ部材21は、公知の平蝶番であり、ケース部材11、12の双方の底壁35に固定されるものである。即ち、ケース回動ヒンジ部材21は、ケース部材11、12を回動可能に接続し、ケース部材11、12の動作を、底壁35同士がヒンジを基準として、近接・離反するように制限することができるものである。換言すれば、ケース回動ヒンジ部材21は、ケース部材11、12をそれぞれ、右方向又は左方向に傾倒した状態に姿勢を変更することを可能にするものである。
【0023】
付勢機構8は、2組の直動部材9、10と、引っ張りバネ18とを有し、直動部材9、10が座面形成部7と接続されて、引っ張りバネ18の作用によって、その座面形成部7の姿勢を一定に維持することを可能とする機構である。
直動部材9、10はそれぞれ、公知の直動案内手段であって、2つの同一構造の摺動体13、15と、摺動体13、15の移動をガイドするレール部材16とを有し、レール部材16に沿って摺動体13、15が移動するものである。
【0024】
摺動体13、15は、図5(b)に示すように、断面形状がほぼC型の部材で、図5(a)に示すように、スライド保持部23と、引っ張りバネ18を保持する被係合部25とを有する。
スライド保持部23は、各摺動体13、15の内部中途に設けられた2つ1組の突起部であり、当該突起部は互いに近接する方向(内側方向)に突出した構成とされている。そして、このスライド保持部23は、後述するレール部材16に対してスライド可能に係合する。
被係合部25は、平面視した形状がコの字型のコの字部32と、コの字部32の端部から外方向に張り出した係合フランジ部33とを組み合わせて形成された金具であり、摺動体13、15の移動方向の一方の端面にそれぞれ取り付けられている。具体的には、被係合部25は、摺動体13、15が互いに向き合う側の端面にそれぞれ設けられている。
なお、係合フランジ部33には、ネジ等の締結部材を挿通する孔が形成されており、その孔を介して摺動体13、15本体に固定されている。
【0025】
レール部材16は、外観がほぼ直方体の部材であって、スライド係合部24と、2つの固定用の貫通孔26を有する。
スライド係合部24は、レール部材16の対向する1組の長手方向側面に形成された溝で、摺動体13、15のスライド保持部23がスライド可能に係合する部分である。
貫通孔26は、レール部材16の厚み方向に貫通した孔であり、ネジ又はボルト等の締結部材が螺合される孔である。
なお、レール部材16には、所定の位置に、図示しないストッパーが設けられ、摺動体13、15の可動領域が制限されている。
【0026】
引っ張りバネ18は、公知のそれと同様のものが採用されており、摺動体13、15同士が互いに引き合うような付勢力を作用させるものである。即ち、引っ張りバネ18は、両端が角フックのものが採用されており、摺動体13、15の被係合部25に係合可能な構成とされている。なお、引っ張りバネ18の両端形状は、角フックに限らず、丸フックでも、半丸フック等でも構わない。
【0027】
背もたれ部3は、着座部2に対してほぼ垂直に設けられるもので、金属又は樹脂等で構成された基材29と、遊技者が腰掛けてもたれた際に当該遊技者の背中が当接するクッション部31とを備え、基材29にクッション部31が保持された構成である。
基材29は、クッション部31が保持される1面が開放された筐体部37と、後述する脚部5に固定される接続部38とを有する。
【0028】
筐体部37は、図6に示すように、正面視した形状がほぼ長方形状の部分であり、底壁40と底壁40を囲繞するように配された周壁41とを有し、底壁40と周壁41とによって背もたれクッション保持空間44が形成されている。即ち、筐体部37の背もたれクッション保持空間44は、筐体部37の開放面側からクッション部31が嵌め込まれる部分である。なお、クッション部31は、接着剤等によって背もたれクッション保持空間44に固定される。
【0029】
接続部38は、筐体部37の周壁41を形成するいずれか1つの壁面(図6では下方の側壁)から延びた部分で、側面視した形状が滑らかな「L」字型とされた部分である。そして、接続部38には、筐体部37側の端部(基端側端部)と反対側の端部(先端側端部)側に、固定孔42が設けられている。なお、固定孔42は、ネジ又はボルト等の締結部材が螺合される孔である。
【0030】
脚部5は、着座部2及び背もたれ部3を遊技場の床面から所定の高さに維持できる支持部材であって、長尺状の本体部45と、本体部45の端部に一体的に形成されたフランジ部46、49と、フランジ部46に固定された取付部47とで構成されている。
【0031】
本体部45は、長尺状の丸パイプであり、当該丸パイプの端部にそれぞれ、フランジ部が取り付けられている。即ち、本体部45は、一方の端部側に円形状のフランジ部49が設けられ、他方の端部側には方形状のフランジ部46が設けられている。
なお、いずれのフランジ部46、49においても、ネジ又はボルト用の孔が形成されており、当該孔にネジ又はボルト等の締結部材を螺合する構成とされている。
【0032】
取付部47は、直方体状の内空部材であって、着座部2が取り付けられる複数の取付孔(図示しない)と、フランジ部46及び背もたれ部3が接続される接続孔(図示しない)が設けられている。
なお、取付孔及び接続孔は、ネジ又はボルト等の締結部材が螺合される孔であり、接続孔は取付部47の下面(フランジ部46に対向する面)側に位置し、取付孔は取付部47の上面(前記下面と対向する面)側に位置する。
【0033】
次に、本実施形態に係る遊技場用椅子1の各構成部材の位置関係について説明する。
本実施形態に係る遊技場用椅子1は、図1に示すように、遊技機30の正面に対向する位置に配されて、遊技場の床面に脚部5の一方の端部側に設けられたフランジ部49を介して固定されている。そして、脚部5の他方の端部側は、図7、8に示すように、フランジ部46に接続された取付部47に着座部2及び背もたれ部3が固定されている。具体的には、着座部2は、取付部47の上面側の面に固定され、背もたれ部3が、取付部47の下面側に固定されている。
【0034】
より詳細に説明すると、着座部2は、直動部材9、10を構成するそれぞれのレール部材16が互いに平行となるように並べられ、各レール部材16の貫通孔26と、脚部5の取付部47の取付孔(図示しない)とを連通させた状態で、締結部材によって締結されている。そして、このレール部材16に対して相対的に移動可能に係合された摺動体13、15に、座面形成部7が接続されている。
【0035】
摺動体13、15と座面形成部7は、図7、8に示すように、公知の平蝶番たる補助ヒンジ部材43を介して接続されており、座面形成部7が摺動体13、15に対して相対的に回動可能な構成である。より具体的には、補助ヒンジ部材43は、座面形成部7に対しては、底壁35であって図7の左右方向中途に配され、且つ、摺動体13、15に対しては、摺動体13、15の移動方向の他方の端面、つまり、被係合部25が設けられた端面とは反対側の端面に位置するように接続されている。また、このとき、座面形成部7に対して外力による負荷がない状態であれば、座面形成部7のケース回動ヒンジ部材21は、レール部材16の図示しないストッパーによって、摺動体13、15のほぼ中央に位置する配置とされている。
一方、背もたれ部3は、接続部38の固定孔42と、取付部47の下部に設けられた接続孔(図示しない)とを連通させた状態で、締結部材によって締結されている。
【0036】
次に、本実施形態に係る遊技場用椅子1の使用時の動作について説明する。
本実施形態の遊技場用椅子1は、図9(a)に示すように、空席時には、着座部2の座面形成部7が上方に屈曲した姿勢(収納姿勢)が維持される。即ち、図9(a)に示すように、収納姿勢の遊技場用椅子1は、付勢機構8の構成部材たる引っ張りバネ18の付勢力によって、摺動体13、15同士が互いに近接した状態であり、さらにこの状態に連動するように、座面形成部7がケース回動ヒンジ部材21を基準として、ケース部材11、12の底壁35の外側が互いに近接した状態が維持されている。換言すれば、収納姿勢の遊技場用椅子1は、座面形成部7がケース回動ヒンジ部材21を基準に上向きに凸状に屈曲した状態であり、座面形成部7の遊技機30に対する左右方向の広がり(座面形成部7が背もたれ部3の側面から外側にはみ出した長さp)が、減少させられた姿勢である。即ち、収納姿勢の遊技場用椅子1は、遊技機30に対する左右方向に隣接する別の遊技場用椅子との間隔を広くした姿勢である。
【0037】
そして、遊技者が収納姿勢の遊技場用椅子1に着席すると、遊技者の体重がクッション部6を介して座面形成部7に伝導されて、図9(c)に示すように、当該座面形成部7がほぼ平坦な姿勢(腰掛け姿勢)に変更される。具体的には、図9(b)に示すように、座面形成部7に伝導された体重(以下、単に外力という)が、摺動体13、15に伝導され、引っ張りバネ18の付勢力と対向する方向に働く。即ち、この外力は、摺動体13、15を近接した状態から引き離す方向に働く。そして、外力が引っ張りバネ18の付勢力以上となった瞬間から、摺動体13、15が互いに離反する方向に移動する。これにより、座面形成部7がケース回動ヒンジ部材21を基準に上向き(ケース部材11、12の底壁35の外側が互いに離反する方向)に回動するため、座面形成部7のはみ出し長さxが前記はみ出し長さpより大きくなる。そしてその後、座面形成部7がほぼ平坦な姿勢となれば、摺動体13、15の移動が制限されて姿勢が安定する。このとき、座面形成部7のはみ出し長さxは、最大値たるはみ出し長さqとなる。
なお、腰掛け姿勢の遊技場用椅子1において、遊技者が起立等によって引っ張りバネ18に働いていた外力が解放されると、付勢力によって摺動体13、15は近接する方向に移動して、座面形成部7を再び屈曲した収納姿勢に変更する。
【0038】
以上のように、本実施形態では、座面形成部7をケース回動ヒンジ部材21によって屈曲可能とし、さらに付勢機構8によって収納姿勢を維持できる構成としたため、座面形成部7の収納姿勢が維持されている限り、隣接する椅子同士の間隔を広く維持することができる。即ち、座面形成部7の背もたれ部3の側面からのはみ出し長さxを小さくできる。そのため、遊技者が腰掛ける際に当該椅子同士の間を通過しづらいと感じることがない。またこれにより、遊技者は座席に着き易くなる。
さらに、本実施形態では、収納姿勢の座面形成部6に遊技者が腰掛けるだけで、座面形成部7の姿勢が収納姿勢から腰掛け姿勢に変更されるため、煩わしい手間がなく便利である。
また、本実施形態では、収納姿勢は、着座可能な腰掛け姿勢から座面形成部7が左右に傾倒した姿勢、つまり座面形成部7は遊技機に対して左右方向に移動した姿勢ではなく、あくまで傾倒しただけの姿勢であるため、座面形成部6が腰掛け姿勢の際に占める以上の領域を要さない。即ち、収納姿勢の座面形成部7の遊技機30に対する左右方向の広がりは、腰掛け姿勢の座面形成部7の遊技機30に対する左右方向の広がりより小さい。これにより、本実施形態によれば、遊技者が腰掛けた椅子に隣接する別の椅子が空席状態の場合であっても、当該遊技者が隣接する別の椅子から圧迫感を感じるようなおそれがない。
【0039】
上記実施形態では、直動部材9、10と引っ張りバネ18を備え、水平方向に移動する摺動体13、15に付勢力を作用させて、座面形成部7の収納姿勢を維持する構成を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、直動部材を用いることなく、鉛直方向に付勢力を作用させて、座面形成部7の収納姿勢を維持する構成であっても構わない。
なお、以下の説明では、上記実施形態と同一の部品等に関しては、同一の符番を符して説明を省略する。
【0040】
第二実施形態の遊技場用椅子51では、図10に示すように、座面形成部55のケース部材56、57を回動可能に接続するケース回動ヒンジ部材58の支持軸59を通常より長くし、その支持軸59の両端部を圧縮バネ60で鉛直方向上方に付勢して座面形成部55の姿勢を屈曲した収納姿勢に維持できる構成としても構わない。
【0041】
即ち、本実施形態の遊技場用椅子51は、脚部69のフランジ部46に所定の大きさの支持板53を固定し、その支持板53に圧縮バネ60を固定し、その圧縮バネ60で支持軸59の両端を支持した構成とされている。これにより、支持軸59は、圧縮バネ60の付勢力に対抗する外力が働いていない場合又はその付勢力よりも小さな外力が働いている場合においては、図11(a)に示すように、支持板53から鉛直方向所定の位置まで持ち上げられた状態が維持される。このとき、ケース回動ヒンジ部材58の回動板61は、重力の作用により、支持軸59と支持板53との間で垂れ下がったような姿勢が維持される。即ち、回動板61は、支持軸59を基点として、当該支持軸59と対向する側の縁端に向かって下り勾配の傾倒姿勢となり、支持板53に当接した位置で当該姿勢が維持される。そして、この回動板61の姿勢に追従するように、回動板61に固定されたケース部材56、57は、傾倒した姿勢、つまり上に凸状態で屈曲した収納姿勢が維持される。
【0042】
そして、遊技者が収納姿勢の遊技場用椅子51に着席すると、遊技者の体重が座面形成部55に伝導されて、当該座面形成部55がほぼ平坦な姿勢(腰掛け姿勢)に変更される。具体的には、図11(b)に示すように、座面形成部55に伝導された体重(以下、単に外力という)が、ケース回動ヒンジ部材58の支持軸59を介して、圧縮バネ60の付勢力と対向する方向に働く。即ち、この外力は、鉛直方向下方に働く。そして、外力が圧縮バネ60の付勢力以上となった瞬間から、支持軸59が鉛直方向下方に移動する。そして、その支持軸59の移動に追従するように、座面形成部55が支持板53に近接する方向に移動する。その後、座面形成部55のほぼ全体が、ほぼ平坦な姿勢となれば、支持軸59及び座面形成部55の移動が制限されて姿勢が安定する。
そして、腰掛け姿勢の遊技場用椅子51において、遊技者が起立等によって圧縮バネ60に働いていた外力が解放されると、付勢力によって支持軸59は鉛直上方に移動して、座面形成部7を再び屈曲した収納姿勢に変更される。
なお、本実施形態では、支持板53とケース回動ヒンジ部材58との間に、スペーサ70を設け、腰掛け姿勢をより平坦に維持できる構成にすると共に、支持軸59の鉛直方向の移動をガイドするガイド部材71が設けられた構成にされている。
【0043】
また、上記第一、第二実施形態では、座面形成部7、55が2つのケース部材11、12、56、57を備え、2つのケース部材11、12、56、57の境界部分で、上に凸状態に屈曲する構成(二方向に傾倒する構成)を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ケース部材を1部材とし、一方向に傾倒して収納姿勢となる構成であっても構わない。
【0044】
即ち、第三実施形態の遊技場用椅子62は、図12(a)に示すように、脚部69に固定された支持板64と、座面形成部63のケース部材65とをヒンジ部材67で回動可能に接続し、さらに支持板64の上部側に圧縮バネ66を取り付け、圧縮バネ66の作用によって、支持板64に対して座面形成部63が一方向に傾倒する構成とされている。具体的には、遊技場用椅子62は、ヒンジ部材67が、支持板64における脚部69寄りに配されて、座面形成部63の左右方向(図12基準)中途を基準に傾倒する構成である。これにより、座面形成部63は、圧縮バネ66の付勢力に対抗する外力が働いていない場合又はその付勢力よりも小さな外力が働いている場合においては、座面形成部63の左右方向中途を基準に、遊技機30に対して左方向(又は右方向)に傾倒した収納姿勢が維持される。
【0045】
そして、遊技者が収納姿勢の遊技場用椅子62に着席する際には、まず、図12(b)に示すように、当該遊技者自身が腰を掛けることができる程度の位置まで、座面形成部63をヒンジ部材67を基準に回動させて寝かせた状態にする。そして、その状態の座面形成部63に着席して、座面形成部63の姿勢を変更する。即ち、遊技者が座面形成部63に着席すると、遊技者の体重が座面形成部63に伝導されて、図12(c)に示すように、当該座面形成部63がほぼ平坦な姿勢(腰掛け姿勢)に変更される。具体的には、座面形成部63に体重(以下、単に外力という)が伝導されると、圧縮バネ66には付勢力と対向する方向に外力が働く。そしてその後、座面形成部63が、ほぼ平坦な姿勢となれば、座面形成部63の移動が支持板64によって制限されて姿勢が安定する(腰掛け姿勢)。
そして、腰掛け姿勢の遊技場用椅子62において、遊技者が起立等によって圧縮バネ66に働いていた外力が解放されると、付勢力によって座面形成部63はヒンジ部材67を基準に回動して、座面形成部63を再び一方向に傾倒した収納姿勢に変更される。
なお、本実施形態に採用された支持板64は、中心がフランジ部46の中心からずれた配置で固定されている。また、本実施形態では、支持板64と座面形成部63との間にスペーサ70を設け、ヒンジ部材67がスペーサ70に跨るように取り付け、腰掛け姿勢を平坦に維持できる構成としている。
また、本実施形態においては、遊技者が着座している状態であっても、遊技者の重心の位置によっては、不意に座面形成部63が収納姿勢に変更されるおそれがあるため、それを予め防止する腰掛け姿勢ロック機構を設ける構成を付加することが好ましい。
【0046】
第三実施形態では、座面形成部63のケース部材65を、座面形成部63の図12の左右方向中途を基準に、回動可能に接続した構成を示したが、本発明はこれに限定されず、ケース部材65を脚部69に固定された支持板64の端部に回動可能に接続する構成であっても構わない(第三実施形態の変形例)。具体的には、図13(a)に示すように、脚部69のフランジ部46に支持板64を固定し、その支持板64の左右方向(図13基準)一方の端部にケース部材65を、ヒンジ部材67を介して回動可能に接続し、さらに支持板64に圧縮バネ66を取り付け、その圧縮バネ66の作用によって、支持板64に対してケース部材65が一方向に傾倒する構成である。これにより、圧縮バネ66の付勢力に対抗する外力が働いていない場合又はその付勢力よりも小さな外力が働いている場合においては、一方向に傾倒した姿勢が維持される。具体的には、座面形成部63は、ヒンジ部材67を基準として、遊技機30に対して右方向(又は左方向)に傾倒した収納姿勢が維持される。そして、遊技者が着席する際においては、座面形成部63を支持板64に近接する方向に回動して寝かせた状態にし、その状態で当該遊技者が着席すると座面形成部63が腰掛け姿勢に変更される(図13(b))。
また、本実施形態においては、支持板64と座面形成部63との間にスペーサ70を設け、ヒンジ部材67をスペーサ70に取り付け、腰掛け姿勢を平坦に維持できる構成としている。
【0047】
上記実施形態では、着座部2が脚部5の軸回り方向に回転しない構成を示したが、本発明はこれに限定されず、公知の回転機構を備えた回転装置を設け、着座部2が脚部5に対して相対的に回転する構成を備えたものであっても構わない。
【0048】
上記第一実施形態では、2組の直動部材9、10を設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、1組の直動部材のみで構成したものであっても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1、51、62 遊技場用椅子
2 着座部
3 背もたれ部
5 脚部
7、55、63 座面形成部
8 付勢機構
9、10 直動部材
11、12、56、57 ケース部材
13、15 摺動体(摺動部材)
16 レール部材
18 引っ張りバネ
21 ケース回動ヒンジ部材(ヒンジ部)
67、68 ヒンジ部材(ヒンジ部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技者が腰掛ける着座部を有し、多数の遊技機が並べられた遊技場において各遊技機に対応するように遊技機の正面に設置される遊技場用椅子であって、
着座部は、ヒンジ部を介して姿勢が変更される座面形成部と、当該座面形成部を所定の方向に付勢する付勢機構を有し、
座面形成部は、遊技機に対して左及び/又は右方向に傾倒し、傾倒した姿勢たる収納姿勢と、着座可能な姿勢たる腰掛け姿勢とをとるものであり、
付勢機構は、座面形成部が収納姿勢をとる方向に付勢し、無負荷状態の座面形成部を収納姿勢に維持可能なものであり、
座面形成部に対して付勢方向に対抗する外力が掛かると、座面形成部を腰掛け姿勢に変更できることを特徴とする遊技場用椅子。
【請求項2】
座面形成部は、ヒンジ部を介して屈曲するもので、遊技機に対して左右方向両端側が互いに近接・離反する方向に移動し、屈曲した姿勢たる収納姿勢と、着座可能なほぼ平坦な姿勢たる腰掛け姿勢とをとるものであり、
座面形成部に遊技者が腰掛けると、座面形成部は腰掛け姿勢に変更されることを特徴とする請求項1に記載の遊技場用椅子。
【請求項3】
前記付勢機構は、バネと、1組の摺動体を有した直動部材とを備え、バネは1組の摺動体が互いに近接する方向に付勢するものであって、
前記座面形成部は、摺動体の動作に連動して姿勢が変更されるものであることを特徴とする請求項2に記載の遊技場用椅子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−34775(P2013−34775A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175057(P2011−175057)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】