説明

遊技機における球発射装置

【課題】遊技球の発射強度及び発射方向を安定させることができる遊技球における球発射装置を提供すること。
【解決手段】球発射装置1は、発射トルクを発生させる駆動手段2と、駆動手段2による発射トルクを受けて回転する発射アーム3とを有している。発射アーム3は、回転軸部33と球受部32とを備えており、遊技球8を発射させる正回転方向C1への回転を開始する発射開始位置301と、正回転方向C1への回転を急停止して、球受部32に保持した遊技球8をその慣性力により発射させる球発射位置302との間を往復回動するよう構成されている。発射アーム3は、発射開始位置301と球発射位置302とのいずれの位置においても、球受部32が回転軸部33に対して斜め下方に位置するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技領域に向けて遊技球を発射させるパチンコ遊技機又はアレンジボール遊技機等の遊技機における球発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、パチンコ遊技機においては、パチンコ遊技を行う遊技領域に向けて遊技球を発射させるために、球発射装置を用いている。この球発射装置としては、例えば、特許文献1に開示されたものがある。
この特許文献1のパチンコ玉の発射装置は、アームと、正逆回転可能でかつ速度制御可能なモータと、モータの出力軸とアームとを連結する連結手段と、モータを回転駆動する駆動回路とを備えている。そして、このパチンコ玉の発射装置は、モータの回転運動をアームのパチンコ玉(遊技球)の発射方向の回動運動に直接変換し、アームの一端に形成した槌部によりパチンコ玉を打撃して発射させることができる。
【0003】
また、他の球発射装置としては、例えば、特許文献2に開示されたものがある。この特許文献2のパチンコ球発射装置は、発射アームと、発射アームを回転させるモータと、モータの回転を制御する回転制御手段とを備えている。上記発射アームには、パチンコ球(遊技球)を受け入れる球受け部が形成されており、この球受け部は、発射アームの回転に伴う遠心力がパチンコ球に作用しても、このパチンコ球を放射方向に移動させない構造を有している。そして、このパチンコ球発射装置は、上記回転制御手段が、パチンコ球の発射位置で発射アームの回転を急停止させることにより、その慣性力でパチンコ球を発射させることができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のパチンコ玉の発射装置は、遊技球を打撃して発射させるものである。そのため、この打撃を行う打撃位置が、遊技球の中心を外れてしまったときには、遊技球の発射強度及び発射方向にばらつきが生じるおそれがある。
また、遊技球の表面に汚れやキズ等があったときにも、遊技球の発射強度(発射速度)及び発射方向にばらつきが生じるおそれがある。
【0005】
一方、上記特許文献2のパチンコ球発射装置は、発射アームの慣性力を遊技球に付与して、この慣性力により遊技球を発射させるものである。しかしながら、このパチンコ球発射装置においては、発射アームを半周以上回転させており、この発射アームの回転角度が大きくなる。そのため、発射アームが回転する際に、球受け部に保持した遊技球が位置ずれを起こすおそれがあり、この位置ずれが起こったときには、遊技球の発射強度及び発射方向にばらつきが生ずるおそれがある。また、発射アームの移動範囲が広くなるので、当該パチンコ球発射装置を遊技機に配設する際の設置スペースを広くとる必要が生じる。
【0006】
【特許文献1】特開平10−15162号公報(図1、図15等)
【特許文献2】特開2002−177489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、遊技球の発射強度及び発射方向を安定させることができる遊技機における球発射装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発射トルクを発生させる駆動手段と、該駆動手段による発射トルクを受けて回転する発射アームとを有し、該発射アームは、上記回転の中心となる回転軸部と、遊技球を保持するための球受部とを備えてなる遊技機における球発射装置において、
上記発射アームは、遊技球を発射させる正回転方向への回転を開始する発射開始位置と、上記正回転方向への回転を急停止して、上記球受部に保持した遊技球を該遊技球が有する慣性力により発射させる球発射位置との間を往復回動するよう構成されており、上記発射開始位置と上記球発射位置とのいずれの位置においても、上記球受部が上記回転軸部に対して下方に位置するよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置にある(請求項1)。
【0009】
本発明の遊技機における球発射装置は、遊技球を慣性力により発射させるタイプのものであり、上記発射アームの発射開始位置及び球発射位置を工夫することにより、遊技球の発射強度(発射速度)及び発射方向を安定させることができるものである。
すなわち、上記発射アームは、回転の中心となる回転軸部と、遊技球を保持するための球受部とを備えており、発射開始位置と球発射位置との間を往復回動するよう構成されている。
【0010】
上記球発射装置において、遊技球を発射させる際には、上記球受部に遊技球を保持させ、当該発射アームを発射開始位置から正回転方向に向けて回転させる。このとき、発射アームの回転に伴い、球受部に保持された遊技球には慣性力が付与される。
そして、発射アームが球発射位置において急停止すると、球受部に保持された遊技球が発射アームから投げ出される。これにより、遊技球を発射させることができる。
その後、発射アームは、球発射位置から逆回転方向に回転させて発射開始位置に回転させることができ、発射開始位置と球発射位置との間を何度でも往復回動して、遊技球の発射を繰り返すことができる。
【0011】
また、上記発射アームは、発射開始位置と球発射位置とのいずれの位置においても、球受部が回転軸部に対して下方に位置するよう構成されている。そのため、発射アームは、その球受部を回転軸部よりも下方の位置の回転範囲の間でのみ回転させて、球受部に保持した遊技球を発射させることができる。
そのため、発射アームを回転させる回転角度を小さくすることができ、球受部に保持した遊技球が位置ずれを起こし難くすることができる。また、球発射装置の遊技機における設置スペースを小さくすることもできる。
それ故、本発明の球発射装置によれば、遊技球の発射強度及び発射方向を安定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
上述した本発明における好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記球受部は、上記発射開始位置において、上記回転軸部に対して斜め下方に位置し、上記球発射位置において、上記発射開始位置から当該発射アームを上記正回転方向の上方に向けて20〜45°回転させた位置に位置することが好ましい。
この場合には、上記球発射装置は、遊技球を一層安定して発射させることができる。
【0013】
また、上記駆動手段は、モータ及びねじりコイルバネを用いて構成することができる。この場合には、ねじりコイルバネを上記発射アームに配設し、モータを回転させたときにねじりコイルバネをねじり変形させる。そして、このねじり変形が復帰する力を発射トルクとして発射アームに伝達して、発射アームを正回転方向に回転させることができる。
【0014】
また、上記駆動手段は、所定角度の間を往復回動可能なロータリソレノイドを用いて構成することもできる。この場合には、ロータリソレノイドに発射アームを連結し、ロータリソレノイドの回転力を発射トルクとして発射アームに伝達して、発射アームを正回転方向に回転させることができる。そして、発射アームにおける遊技球の発射強度の調整は、遊技機における操作ハンドルの操作量を受けて、電気的にロータリソレノイドの回転速度を調整することにより行うことができる。
また、この場合には、ロータリソレノイドの代わりにステッピングモータを用いることもできる。
【0015】
また、上記駆動手段をロータリソレノイドを用いて構成する場合に、遊技球の発射強度の調整は、以下のように機械的に行うこともできる。
すなわち、この場合には、発射アームに、上記遊技球を発射させる正回転方向とは逆の逆回転方向に付勢力を生じさせるバネ等の付勢手段を設け、この付勢手段の弾性変形量を操作ハンドルの操作に応じて調整できるようにする。また、ロータリソレノイドは所定の回転速度で回転させるよう構成する。
【0016】
これにより、操作ハンドルの操作量を受けて付勢手段による付勢力が変化し、付勢手段の付勢力の減少に応じて発射アームの回転速度を増加させることにより、遊技球の発射強度の調整を行うことができる。この場合には、ロータリソレノイドを所定の回転速度で回転するように回転制御するだけでよいので制御回路を簡単にすることができる。
また、この場合においても、ロータリソレノイドの代わりにステッピングモータを用いることができる。
【0017】
また、上記発射アームは、上記球受部に保持した遊技球を略鉛直方向上方に向けて発射させるよう構成することが好ましい(請求項2)。
この場合には、遊技球を略鉛直方向上方に発射させることができ、遊技球を遊技領域まで導くための案内レールを短く形成することができる。そのため、遊技球が案内レールに接触する距離をできるだけ短くすることができ、遊技球が案内レールに接触することによってその発射強度が減衰してしまうことを抑制することができる。
【0018】
また、上記発射アームは、遊技球を発射させる目標となる発射目標方向に、当該発射アームの回転接線方向が向く前に、急停止させるよう構成することが好ましい(請求項3)。
上記発射アームが正回転方向に回転するときには、上記球受部に保持した遊技球には遠心力が働いており、上記急停止を行ったときには、遊技球は遠心力による反力を受け、また、発射アームはその剛性等により若干たわむ。これにより、球受部に保持した遊技球は、発射アームの回転接線方向よりも内側の方向に発射することになる。
そのため、発射アームを、その回転接線方向が上記発射目標方向を向く前に急停止させることにより、球受部に保持した遊技球を適切に発射目標方向に向けて発射させることができる。
【0019】
また、上記球受部には、該球受部に保持した遊技球を吸着するための永久磁石を配設することが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記発射アームを回転させる際に、上記球受部に保持した遊技球を上記永久磁石によって吸着しておくことができる。そのため、発射アームが回転する際に、球受部に保持した遊技球が位置ずれを起こしてしまうことを一層容易に防止することができ、遊技球の発射方向を一層安定させることができる。
【0020】
また、上記球受部は、当該発射アームの回転径方向に沿って形成された底面部と、該底面部の上記回転径方向の外側位置において、当該発射アームの回転接線方向に沿って形成された側面部とを備えており、上記底面部は、V溝形状を有していることが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記発射アームを回転させる際に、上記球受部には、遊技球を上記側面部と上記V溝形状の底面部とに接触させて保持することができる。そのため、発射アームが回転する際に、遊技球を球受部に一層安定して保持しておくことができ、遊技球の発射強度及び発射方向を一層安定させることができる。
【0021】
また、上記球受部は、上記発射開始位置又はその近傍の位置にあるときに、遊技球を受け取るよう構成することが好ましい(請求項6)。
上記発射アームが上記球発射位置において急停止し遊技球を発射させるときには、この発射アームは、急停止した反動により振動する。そのため、この振動を行っている状態の球受部に遊技球を供給すると、この遊技球が零れ落ちてしまうおそれがあり、振動が収まってから球受部に遊技球を供給する必要が生じる。
【0022】
これに対し、発射アームを球発射位置から上記発射開始位置に回転させたときには、上記急停止したときのような大きな振動が起こらないようにすることができる。そのため、発射開始位置又はその近傍の位置にある発射アームにおける球受部に対して、遊技球を供給することにより、遊技球の供給に要する時間を短縮することができる。
これにより、発射アームが発射開始位置と球発射位置との間を往復回動するサイクル時間を短縮することができ、遊技球の発射間隔を短くすることができる。
【0023】
また、上記発射アームは、上記球発射位置において、ストッパーと衝突して急停止することにより遊技球を発射させるよう構成することが好ましい(請求項7)。
この場合には、発射アームが急停止する球発射位置を、ストッパーによって安定させることができる。
【0024】
また、上記発射アームは、上記発射開始位置から上記正回転方向に向けて回転を開始し、上記球発射位置において上記ストッパーと衝突した後、該球発射位置から上記正回転方向とは逆の逆回転方向に向けて若干戻った位置において静止するよう構成することが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記発射アームは、球発射位置においてストッパーに衝突した後、このストッパーから離れた状態で静止することができる。そのため、発射アームがストッパーに衝突したときに振動が生じても、この振動により発射アームが繰り返しストッパーに衝突することを防止することができる。また、上記衝突を行った後には、発射アームをストッパーから隔離させることができる。
さらに、球発射装置を動作させていないときにも、発射アームをストッパーから隔離した状態で保管することができ、ストッパーに生ずる磨耗や圧縮応力による変形を効果的に低減させることができる。
【0025】
また、上記発射アームは、上記発射開始位置から上記正回転方向に向けて回転を開始し、上記ストッパーと衝突する前に最速となり、減速しながら該ストッパーと衝突するよう構成することが好ましい(請求項9)。
この場合には、発射アームを減速させた状態でストッパーに衝突させることができる。そのため、ストッパーの磨耗の発生、発射アームの衝突によるストッパーの変形、又は発射アームの衝突の際に生じる騒音等を抑制することができる。
【0026】
また、上記発射アームは、上記ストッパーと衝突するためのアーム当接部を有しており、該アーム当接部の回転軸方向における幅は、上記ストッパーの回転軸方向における幅よりも大きいことが好ましい(請求項10)。
上記アーム当接部の回転軸方向における幅が、上記ストッパーの回転軸方向における幅よりも小さいと、アーム当接部が繰り返しストッパーに衝突することにより、ストッパーの表面が溝状に磨耗又は変形してしまうことがある。そして、この溝状の磨耗部分がストッパーの表面に形成されると、アーム当接部は、当該磨耗部分に嵌り込むようにしてストッパーに衝突するようになる。このときには、発射アームの球発射位置に誤差が生じてしまい、遊技球の発射方向を安定させることが困難になるおそれがある。
【0027】
これに対し、アーム当接部の回転軸方向における幅をストッパーの回転軸方向における幅よりも大きくすることにより、上記溝状の磨耗部分が形成されないようにすることができる。また、これにより、ストッパーが受ける単位面積当たりの変形応力を下げることができる。そのため、ストッパーの表面における磨耗の発生を抑制することができ、遊技球の発射方向を安定させることができる。
なお、上記回転軸方向とは、発射アームの回転軸部の軸方向が向く方向のことをいう。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明の遊技機における球発射装置にかかる実施例につき、図面と共に説明する。
(実施例1)
本例の遊技機における球発射装置1は、図1〜図4に示すごとく、発射トルクを発生させる駆動手段2と、この駆動手段2による発射トルクを受けて回転する発射アーム3とを有している。この発射アーム3は、その一端に上記回転の中心となる回転軸部33を備えると共に、その他端に遊技球8を保持するための球受部32を備えている。
【0029】
また、発射アーム3は、図2に示すごとく、遊技球8を発射させる正回転方向C1への回転を開始する発射開始位置301と、図1に示すごとく、正回転方向C1への回転を急停止して、球受部32に保持した遊技球8をその慣性力により発射させる球発射位置302との間を往復回動するよう構成されている。そして、図1に示すごとく、発射アーム3は、発射開始位置301と球発射位置302とのいずれの位置においても、球受部32が回転軸部33に対して斜め下方に位置し、かつ球受部32が発射開始位置301から正回転方向C1の上方に向けて20〜45°回転したときに球発射位置302に到達するよう構成されている。
そして、発射アーム3における発射開始位置301と球発射位置302との間の回転角度θ1は、20〜45°に設定されている。
以下に、これを詳説する。
【0030】
本例において、発射アーム3の逆回転方向C2とは、正回転方向C1とは逆の方向のことをいう。また、発射アーム3の回転径方向Rとは、発射アーム3の回転軌道における径方向のことをいい、発射アーム3の回転接線方向Tとは、発射アーム3の回転軌道における接線方向のことをいう。また、発射アーム3の回転軸方向Lとは、回転軸部33の軸方向が向く方向のことをいう。
【0031】
図7に示すごとく、本例の球発射装置1は、パチンコ遊技機4に用いるものである。このパチンコ遊技機4においては、パチンコ遊技を行う遊技領域42を形成してなる遊技盤41が配設されている。そして、球発射装置1は、パチンコ遊技機4の前面に配設された操作ハンドル43の操作を受けて、上記遊技盤41の遊技領域42に向けて遊技球8を発射させることができる。
【0032】
また、遊技盤41における遊技領域42は、遊技領域形成レール421によって囲まれて形成されており、この遊技領域形成レール421には、球発射装置1から発射された遊技球8を遊技領域42内に導くための一対の案内レール422が接続されている。
この一対の案内レール422は、遊技盤41において互いに対向配置されている。そして、本例の球発射装置1が遊技球8を発射させる目標となる発射目標方向Dは、一対の案内レール422同士の間の中心を通る仮想中心線の方向とする。
なお、発射目標方向Dは、上記仮想中心線の方向以外にも、一対の案内レール422同士の間における種々の方向に設定することもできる。
【0033】
また、図1、図7に示すごとく、本例の球発射装置1は、垂直発射方式のものであり、上記発射アーム3は、その球受部32に保持した遊技球8を略鉛直方向上方Vに向けて発射させるよう構成されている。
また、発射アーム3の球発射位置302は、球受部32に保持した遊技球8の中心と回転軸部33の軸中心Oとを結ぶ傾斜仮想線L1が、回転軸部33の軸中心Oから水平方向に引かれた水平仮想線L0に対して、5〜30°の傾斜角度θ2を有する位置に形成されている。そして、球発射装置1は、鉛直方向上方Vに若干傾斜する方向に向けて遊技球8を発射させる。
【0034】
図1に示すごとく、上記発射アーム3は、球発射位置302において、ストッパー121と衝突して急停止することにより遊技球8を発射させるよう構成されている。ストッパー121は、ストッパー部材12の表面に設けられており、発射アーム3がストッパー121に衝突したときに生ずる騒音の発生を抑制するために、弾力性を有するゴム材料からなる。
【0035】
また、発射アーム3は、球受部32と回転軸部33とを連結するアーム本体部31を有しており、このアーム本体部31は、その軽量化を図りつつ剛性を向上させるために、断面H形状を有している。また、発射アーム3は、その軽量化を一層図るために、アルミニウム材料からなる。
なお、発射アーム3のアーム本体部31は、断面長方形状、断面T形状、断面環形状等の種々の断面形状に形成することもでき、発射アーム3は、マグネシウム材料等からも作製することができる。
【0036】
図1、図2、図4に示すごとく、本例の駆動手段2は、モータ21及びねじりコイルバネ23を用いて構成されている。モータ21の出力軸210には、カム22が連結されており、本例においては、モータ21の出力軸210とカム22の中心軸220とは各ギヤ211、221を介して連結されている。また、カム22は、その中心軸220から外周面222までの半径が徐々に増大する形状を有しており、半径が最も小さい最小外周面部223と、半径が最も大きい最大外周面部224とが半径急変面225において急激に変化する形状を有している。
【0037】
また、図4に示すごとく、ねじりコイルバネ23は、その軸中心を発射アーム3の回転軸部33の軸中心Oにほぼ合わせるようにして、発射アーム3の回転軸部33に配設されている。また、発射アーム3の回転軸部33には、ねじりコイルバネ23のねじり変形量を調節するための変形量調節器24と、上記カム22の外周面222と当接する当接片34とが配設されている。
また、発射アーム3の回転軸部33における軸中心Oの部分には、回転軸部33、当接片34、ねじりコイルバネ23及び変形量調節器24を挿通配置してなるアーム中心軸331が配設されている。
【0038】
また、図1、図2、図4に示すごとく、ねじりコイルバネ23は、その一端が発射アーム3の回転軸部33に取り付けてあると共に、その他端が変形量調節器24に取り付けてあり、変形量調節器24と操作ハンドル43との間には、ワイヤ25が掛け渡されている。そして、遊技者等が操作ハンドル43の操作を行ったときには、ワイヤ25を介して変形量調節器24の回動位置が変化し、ねじりコイルバネ23のねじり変形可能なねじり変形量が変化する。これにより、発射アーム3による遊技球8の発射強度の調節が可能になっている。
【0039】
また、図1、図4に示すごとく、球発射装置1は、ベースプレート11上に、駆動手段2及び発射アーム3を配設してなる。そして、発射アーム3、モータ21及びストッパー121は、ベースプレート11の前面側に配設されており、カム22、各ギヤ211、221、ねじりコイルバネ23、変形量調節器24及び当接片34は、ベースプレート11の裏面側に配設されている。
【0040】
また、図1、図7に示すごとく、本例の発射アーム3は、遊技球8を発射させる目標となる発射目標方向Dに、当該発射アーム3の回転接線方向Tが向く前に、急停止させるよう構成されている。すなわち、球発射位置302にある発射アーム3の回転接線方向Tは、一対の案内レール422同士の間の仮想中心線の方向として形成された発射目標方向Dよりもパチンコ遊技機4の横方向の外方を向いている。
【0041】
そして、発射アーム3が正回転方向C1に回転するときには、その球受部32に保持した遊技球8には遠心力が働いており、上記急停止を行ったときには、遊技球8は、後述する球受部32の側面部323から遠心力による反力を受ける。また、上記急停止を行ったときには、発射アーム3がストッパー121に衝突して、発射アーム3がたわむと共にストッパー121が弾性変形する。これにより、発射アーム3の球受部32から発射される遊技球8は、上記回転接線方向Tよりも上記横方向の内方に向けて発射される。そして、遊技球8の球発射方向Mは、はぼ発射目標方向Dを向くことができる。
このように、発射アーム3をその回転接線方向Tが発射目標方向Dを向く前に急停止させることにより、球受部32に保持した遊技球8を、適切に発射目標方向Dに向けて発射させることができる。
【0042】
また、図5に示すごとく、発射アーム3の球受部32は、当該発射アーム3の回転径方向Rに沿って形成された底面部321と、この底面部321の回転径方向Rの外側位置において、発射アーム3の回転接線方向Tに沿って形成された側面部323とを備えている。また、底面部321は、V溝形状を有しており、本例のV溝形状は、発射アーム3の回転軸方向Lに向けて互いに対向する一対の対向傾斜面322によって形成されている。また、本例の側面部323は、平面状に形成されており、この側面部323には、球受部32に保持した遊技球8を吸着するための永久磁石324が埋設されている。
【0043】
そして、球受部32に保持された遊技球8は、永久磁石324によって磁気吸引されて側面部323の表面に当接すると共に、底面部321における各対向傾斜面322に当接する。そして、遊技球8は、側面部323における表面と、底面部321における各対向傾斜面322との3箇所に当接した状態で球受部32内に保持される。これにより、発射アーム3を正回転方向C1に向けて回転させる際に、遊技球8に働く遠心力を側面部323の表面によって受けると共に、遊技球8に働く慣性力を各対向傾斜面322によって受けることができる。そのため、発射アーム3を正回転方向C1に向けて回転させる際に、球受部32に保持した遊技球8が、球受部32内において位置ずれを起こしてしまうことを効果的に防止することができる。
【0044】
また、図3、図6に示すごとく、発射アーム3は、上記ストッパー121と衝突する側の側面に、このストッパー121と衝突するアーム当接部311を有している。このアーム当接部311の回転軸方向Lにおける幅W1は、ストッパー121の回転軸方向Lにおける幅W2よりも大きくなっている。また、図2に示すごとく、アーム当接部311の回転径方向Rにおける幅W3は、ストッパー121の回転径方向Rにおける幅W4と略同一になっている。なお、本例においては、上記幅W3と幅W4とが略同一であるが、幅W3を幅W4よりも大きくした方がさらに好ましい。
【0045】
そして、発射アーム3がストッパー121に衝突するときには、アーム当接部311は、ストッパー121の表面のほぼ全体に当接することができる。そのため、ストッパー121の表面における磨耗の発生や局所的な変形を効果的に抑制することができる。
また、ストッパー121が発射アーム3と接触する表面は、平坦表面に形成するだけでなく、曲状表面に形成することもできる。
【0046】
また、図2、図3に示すごとく、発射アーム3の球受部32は、発射開始位置301又はその近傍位置にあるときに、遊技球8を受け取るよう構成されている。すなわち、発射アーム3に遊技球8を供給する球供給通路の出口開口部(図示略)は、発射開始位置301にある発射アーム3の球受部32に対向する位置に形成されている。そして、本例の発射アーム3は、発射開始位置301の近傍位置において、球受部32に遊技球8を受け取るよう構成されている。なお、発射開始位置301の近傍位置は、発射開始位置301から正回転方向C1に向けて5〜15°回転した位置とすることができる。
【0047】
以下に、上記球発射装置1の球発射動作及びその作用効果につき説明する。
図1に示すごとく、上記発射アーム3は、遊技球8を発射させる前には、上記球発射位置302に静止しており、アーム当接部311がストッパー121に接触した状態にある。また、このときには、発射アーム3の当接片34とカム22とが当接していない状態にある。
【0048】
次いで、操作ハンドル43の操作を受けて、モータ21が回転すると共に各ギヤ211、221を介してカム22が回転すると、このカム22の外周面222と発射アーム3の当接片34とが当接し、当接片34によって発射アーム3が球発射位置302から逆回転方向C2に向けて回転を開始する。このとき、発射アーム3のねじりコイルバネ23がねじり変形をし、ねじりコイルバネ23は、逆回転方向C2への発射アーム3の回転量の増加に伴って大きくねじられる。そして、発射アーム3が発射開始位置301に到達する手前の近傍位置まで回転したときには、球供給通路の出口開口部から、当該発射アーム3の球受部32に向けて遊技球8が供給される。
【0049】
次いで、図2に示すごとく、発射アーム3が発射開始位置301に到達すると、カム22の外周面222と当接片34との当接状態が解除される。これにより、発射アーム3は、ねじりコイルバネ23のねじり変形が復元する力を発射トルクとして、正回転方向C1に向けて回転を開始し、球受部32に保持した遊技球8に回転の慣性力が付与される。
【0050】
そして、図1に示すごとく、発射アーム3が球発射位置302まで回転すると、発射アーム3のアーム当接部311がストッパー121に衝突することにより、発射アーム3が急停止し、球受部32に保持した遊技球8がその慣性力により投げ出される。こうして、発射アーム3は、遊技球8を発射させることができる。
その後、発射アーム3は、モータ21及びカム22の回転を受けて、球発射位置302から発射開始位置301に再度回転させることができ、発射開始位置301と球発射位置302との間を何度でも往復回動して、遊技球の発射を繰り返すことができる。
【0051】
上述したように、本例の発射アーム3は、発射開始位置301と球発射位置302とのいずれの位置においても、球受部32が回転軸部33に対して斜め下方に位置するよう構成されている。そのため、発射アーム3は、その球受部32を回転軸部33よりも斜め下方の位置の回転範囲の間でのみ回転させて、球受部32に保持した遊技球8を発射させることができる。
【0052】
そのため、発射アーム3を回転させる回転角度θ1を小さくすることができ、球受部32に保持した遊技球8が位置ずれを起こし難くすることができる。
それ故、本例の球発射装置1によれば、遊技球8の発射強度(発射速度)及び発射方向を安定させることができる。
また、上記回転角度θ1が小さいことにより、発射アーム3の回転範囲を狭くすることができ、球発射装置1をパチンコ遊技機4に配設する際の設置スペースを小さくすることができる。
【0053】
また、上記発射アーム3は、球発射位置302においてストッパー121に衝突したときには、この衝撃により振動する一方、発射開始位置301の近傍位置まで逆回転方向C2に回転したときには、上記振動がほとんどなくなっている。そのため、発射開始位置301の近傍位置にある発射アーム3の球受部32に対して遊技球8を供給することにより、この供給を安定させることができると共にこの供給に要する時間を短縮することができる。
【0054】
また、発射アーム3が発射開始位置301又はその近傍位置において遊技球8を受け取る構成にしたことにより、パチンコ遊技機1における上記球供給通路の形成位置を下方に移動させることができる。そのため、図7に示すごとく、球供給通路に遊技球8を送る球皿44の形成位置も下方に移動させることができ、上記遊技盤41の遊技領域42を下方に拡大することができる。
【0055】
なお、本例においては、回転軸部33を発射アーム3の一端に形成すると共に球受部32を発射アーム3の他端に形成し、ストッパー121を両者の中間位置に形成した。これに対し、例えば、回転軸部33を発射アーム3の一端に形成すると共にストッパー121を発射アーム3の他端に形成し、球受部32を両者の中間位置に形成することもできる。
【0056】
(実施例2)
本例は、図8、図9に示すごとく、上記ストッパー121に生ずる磨耗や圧縮応力によるストッパー121の変形を低減させるために、上記発射アーム3を上記球発射位置302において静止させるのではなく、球発射位置302から逆回転方向C2に若干回転した静止位置303において静止させる例である。
すなわち、図8に示すごとく、本例の発射アーム3は、発射開始位置301から正回転方向C1に向けて回転を開始し、球発射位置302においてストッパー121と衝突した後、逆回転方向C2に向けて2〜10°戻った静止位置303において静止するよう構成されている。
【0057】
また、本例の球発射装置1は、発射アーム3を静止位置303に引き寄せるための引寄せ手段13を有している。この引寄せ手段13は、発射アーム3又はこの発射アーム3に対向するようベースプレート11に配設した対向配設部14の少なくとも一方に永久磁石351、141を配設することにより構成されている。
本例においては、発射アーム3の回転軸部33に突出部35を形成し、この突出部35の先端面に永久磁石351を配設している。また、対向配設部14の先端面にも永久磁石141を配設している。そして、静止位置303において、両永久磁石351、141を互いに異なる磁極において対面させて、発射アーム3を静止位置303に引き寄せる磁気吸引力を発生させている。
【0058】
また、発射アーム3における突出部35の先端面は、回転軸部33の軸中心Oを中心とする凸曲面状に形成している。一方、対向配設部14の先端面は、突出部35の凸曲面状の先端面に沿った凹曲面状に形成している。
そして、発射アーム3が回転するときには、対向配設部14の先端面に沿って突出部35の先端面が回転し、発射アーム3は、対向配設部14の先端面と突出部35の先端面との磁気吸引力が最も大きくなる回転位置を静止位置303として静止することができる。
【0059】
なお、上記引寄せ手段13は、発射アーム3を静止位置303に引き寄せるためのバネ15によって構成することもできる。この場合には、例えば、図9に示すごとく、バネ15としての引張バネ15を用いて発射アーム3の突出部35を引っ張ることによって、発射アーム3を静止位置303に引き寄せることができる。また、引寄せ手段13としてのバネ15は、互いに逆方向に付勢力を発生させるよう一対に配設して、発射アーム3を静止位置303に引き寄せることもできる。
【0060】
本例においては、発射アーム3は、球発射位置302においてストッパー121に衝突した後、静止位置303においてストッパー121から離れた状態で静止することができる。そのため、発射アーム3がストッパー121に衝突したときに振動が生じても、この振動により発射アーム3が繰り返しストッパー121に衝突することを防止することができる。また、上記衝突を行った後には、発射アーム3をストッパー121から隔離させることができる。
さらに、パチンコ遊技を行っていないときにも、発射アーム3をストッパー121から隔離した状態で保管することができ、ストッパー121に生ずる磨耗や圧縮応力によるストッパー121の変形を効果的に低減させることができる。
【0061】
また、上記引寄せ手段13により、本例の発射アーム3は、遊技球8を発射させる正回転方向C1への回転速度が、ストッパー121と衝突する前の上記静止位置303において最速となる。そして、発射アーム3は、最速状態から減速してストッパー121に衝突する。そのため、ストッパー121に生ずる磨耗や発射アーム3の衝突によるストッパー121の変形を一層効果的に低減させることができると共に、上記衝突の際に生ずる騒音を小さくすることができる。
本例においても、その他は、上記実施例1と同様であり、上記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1における、発射アームが球発射位置にある状態の球発射装置を示す正面図。
【図2】実施例1における、発射アームが発射開始位置にある状態の球発射装置を示す正面図。
【図3】実施例1における、球発射装置を示す斜視図。
【図4】実施例1における、球発射装置を上方から見た状態で示す上面図。
【図5】実施例1における、発射アームにおける球受部を拡大して示す斜視図。
【図6】実施例1における、ストッパーと発射アームにおけるアーム当接部との回転軸方向における断面を示す断面説明図。
【図7】実施例1における、球発射装置を配設してなるパチンコ遊技機を示す正面図。
【図8】実施例2における、発射アームが静止位置にある状態の球発射装置を示す正面図。
【図9】実施例2における、発射アームが静止位置にある状態の他の球発射装置を示す正面図。
【符号の説明】
【0063】
1 球発射装置
121 ストッパー
2 駆動手段
21 モータ
22 カム
23 ねじりコイルバネ
24 変形量調節器
3 発射アーム
301 発射開始位置
302 球発射位置
303 静止位置
31 アーム本体部
311 アーム当接部
32 球受部
321 底面部
323 側面部
324 永久磁石
33 回転軸部
34 当接片
4 パチンコ遊技機
41 遊技盤
42 遊技領域
422 案内レール
8 遊技球
C1 正回転方向
C2 逆回転方向
D 発射目標方向
R 回転径方向
T 回転接線方向
L 回転軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射トルクを発生させる駆動手段と、該駆動手段による発射トルクを受けて回転する発射アームとを有し、該発射アームは、上記回転の中心となる回転軸部と、遊技球を保持するための球受部とを備えてなる遊技機における球発射装置において、
上記発射アームは、遊技球を発射させる正回転方向への回転を開始する発射開始位置と、上記正回転方向への回転を急停止して、上記球受部に保持した遊技球を該遊技球が有する慣性力により発射させる球発射位置との間を往復回動するよう構成されており、上記発射開始位置と上記球発射位置とのいずれの位置においても、上記球受部が上記回転軸部に対して下方に位置するよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項2】
請求項1において、上記発射アームは、上記球受部に保持した遊技球を略鉛直方向上方に向けて発射させるよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記発射アームは、遊技球を発射させる目標となる発射目標方向に、当該発射アームの回転接線方向が向く前に、急停止させるよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記球受部には、該球受部に保持した遊技球を吸着するための永久磁石が配設されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記球受部は、当該発射アームの回転径方向に沿って形成された底面部と、該底面部の上記回転径方向の外側位置において、当該発射アームの回転接線方向に沿って形成された側面部とを備えており、上記底面部は、V溝形状を有していることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記球受部は、上記発射開始位置又はその近傍の位置にあるときに、遊技球を受け取るよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記発射アームは、上記球発射位置において、ストッパーと衝突して急停止することにより遊技球を発射させるよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項8】
請求項7において、上記発射アームは、上記発射開始位置から上記正回転方向に向けて回転を開始し、上記球発射位置において上記ストッパーと衝突した後、該球発射位置から上記正回転方向とは逆の逆回転方向に向けて若干戻った位置において静止するよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、上記発射アームは、上記発射開始位置から上記正回転方向に向けて回転を開始し、上記ストッパーと衝突する前に最速となり、減速しながら該ストッパーと衝突するよう構成されていることを特徴とする遊技機における球発射装置。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項において、上記発射アームは、上記ストッパーと衝突するためのアーム当接部を有しており、該アーム当接部の回転軸方向における幅は、上記ストッパーの回転軸方向における幅よりも大きいことを特徴とする遊技機における球発射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−34455(P2006−34455A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216312(P2004−216312)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(500077959)株式会社MRD (150)
【Fターム(参考)】