説明

遊技機の基板ケース

【課題】開封したことを確実に発見できる遊技機の基板ケースを提供すること。
【解決手段】本発明の基板ケース(100)は、開口部(109)を有する封印シール被覆部(106)を備えている。この封印シール被覆部には、封印シールが貼り付けられたシール貼付ユニット(105)が収納され、いったん収納されると、両ケース(101,130)が封印された状態でシール貼付ユニットを抜き取ることはできない。開口部から露呈している封印シールを切断すると共に、第1貼付部材(140)と第2貼付部材(150)との固定を解除し、かしめ部材(160a,b)を破壊することにより両ケースの封印が開封される。これで、第1ケースと第2ケースとは、第1貼付部材が第1保持部(114a,114b)に保持された状態、かつ、第2貼付部材が第2保持部(134a,b)に保持された状態で互いに分離可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機やスロットマシン等の遊技機に備えられる基板ケースに係り、特に、ICタグ付きの封印シールを貼り付けて不正行為を防止するようにした遊技機の基板ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機やスロットマシン等の遊技機には遊技の制御を行う種々の制御基板が設けられており、通常、この制御基板は上ケースと下ケースとからなる基板ケース内に収納されて遊技機の裏面や筐体内部に着脱可能に取り付けられている。このような基板ケースは、制御基板に対する不正行為(例えば、遊技の主制御を行うためのプログラムが記憶された正規ROMを不正なプログラムが記憶された不正ROMに交換する行為や、所謂ぶら下がり基板と称する不正基板を制御基板に電気的に接続して正規の動作を妨げるようにする行為など)を防止するために、アンカーリベットやワンウェイネジ等の封印部材(かしめ部材)を用いて封印されており、この封印部材の一部を破壊しない限り封印状態を解除できないようになっている。
【0003】
また、近年では、識別情報が格納されたICタグが付いたICタグ封印シール(封印シール)を上ケース(第1ケース)と下ケース(第2ケース)とに跨るように貼り付けておき、不正にICタグ封印シールを剥がそうとすると、ICタグ封印シールが破損してリーダー機による識別情報の読み取りを不可能とすることにより、不正行為がなされたことを発見できるようにした技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−261640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、不正行為を行う手口は日を追うごとに巧妙になってきており、ICタグ封印シールを破損しないように剥がしてから基板ケースを開封し、基板ケース内に収納された制御基板の正規ROMを不正ROMに交換した後、再びICタグ封印シールを貼り直すといった不正行為が行われるようになってきている。このような不正行為が行われると、ICタグ封印シール自体は破損していないため、リーダー機で読み取った識別情報は正規のものとなり、リーダー機では不正行為を発見することができなくなる。しかも、ICタグ封印シールが痕跡を残さずに上手に剥がされていると、目視確認によっても不正行為を発見することができず、遊技場(ホール)が被る被害が甚大なものとなっていた。
【0006】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、開封したことを確実に発見できる遊技機の基板ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、第1ケースと第2ケースとをスライド嵌合により重ね合わせ、これら両ケースの内部に遊技の制御を行う制御基板を収納すると共に、両ケースをかしめ部材で封印する遊技機の基板ケースにおいて、識別情報が記憶されたICタグを内蔵した封印シールが貼り付けられたシール貼付ユニットを内部に収納するためのものであって、前記第1ケースに形成された第1被覆部と、前記第2ケースに形成された第2被覆部とを重ね合わせることにより形成され、一側に前記シール貼付ユニットを挿入するための開口部を有する封印シール被覆部を備え、前記シール貼付ユニットを前記開口部に挿入する方向は、前記第1ケースと前記第2ケースのスライド方向の一方向と一致しており、前記シール貼付ユニットは、第1貼付部材と第2貼付部材とを重ね合わせて固定した後に、前記第1貼付部材と前記第2貼付部材とに跨って前記封印シールを貼り付けて構成されるものであり、前記第1被覆部には、前記第1貼付部材を保持する第1保持部が設けられ、前記第2被覆部には、前記第2貼付部材を保持する第2保持部が設けられ、前記シール貼付ユニットは、いったん前記封印シール被覆部内に収納されると、前記両ケースが封印された状態では抜き取ることはできない構成となっており、前記シール貼付ユニットが前記封印シール被覆部内に収納されている状態で前記開口部から露呈している前記封印シールを切断すると共に、前記第1貼付部材と前記第2貼付部材との固定を解除し、さらに、前記かしめ部材を破壊することにより、前記両ケースの封印が開封され、前記第1ケースと前記第2ケースとは、前記第1貼付部材が前記第1保持部に保持された状態、かつ、前記第2貼付部材が前記第2保持部に保持された状態で互いに分離可能に構成されることを特徴としている。
【0008】
本発明では、両ケースの封印を開封するためには、かしめ部材の破壊だけでなく、シール貼付ユニットに貼り付けられている封印シールを切断して、第1貼付部材と第2貼付部材との固定を解除しなければならない。そして、封印シールを切断すると、その封印シールに内蔵されたICタグが破壊されるため、リーダー機を近付けても、ICタグに記憶されている識別情報を読み取ることができない。従って、本発明によれば、かしめ部材の破壊の痕跡を目視確認すれば不正行為の有無を確認できるうえ、両ケースを開封してROM交換等の不正行為を行なった場合には必ずICタグが破壊されるため、仮に外観が未開封の如き状態になっていたとしても、リーダー機でICタグの情報を確認すれば、確実に不正に基板ケースが開封されたか否かを発見することができる。
【0009】
さらに、本発明では、第1貼付部材が第1保持部に保持された状態、かつ、第2貼付部材が第2保持部に保持された状態で、第1ケースと第2ケースとが互いに分離可能に構成されているため、第1ケースと第2ケースとを相対的にスライドさせる際に、第1貼付部材が第1ケースから外れて落下したり、あるいは第2貼付部材が第2ケースから外れて落下したりして、第1、第2貼付部材を後から拾い上げるようなことはない。よって、開封後の第1ケースと第2ケースとの分離作業に手間が掛かることはない。
【0010】
なお、本発明における「かしめ部材」は、第1ケースと第2ケースとをいったん封印すると、破壊によらなければその封印を解除することができない構成全てを含む概念のものであり、例えば、一方向にしか回転させることができない構造のネジや、いったん所定の位置までねじ込むと、緩める方向に回転させても空回りして取り外すことができない構造のネジなどは、いったん両ケースを封印するとネジを取り外すことができず、破壊によらなければ両ケースの封印を解除することができないから、本発明のかしめ部材に該当する。
【0011】
また、上記構成において、前記第1貼付部材と前記第2貼付部材とはネジで固定されており、前記封印シールは、前記ネジの頭部を覆い隠すようにして前記シール貼付ユニットに貼り付けられ、前記封印シール被覆部には、前記ネジの頭部を臨む位置に、前記ネジを緩めるための工具の挿入が可能な大きさの孔が設けられている構成とするのが好ましい。
【0012】
この構成によれば、第1貼付部材と第2貼付部材との固定がネジにより行えるため、当該固定の作業が簡単である。しかも、シール貼付ユニットが封印シール被覆部に収納されると、第1貼付部材と第2貼付部材との固定を解除するためには、孔からドライバ等の工具を挿入して、封印シールの少なくとも一部を破ったり、剥がしたりして、ネジの頭部を露呈させなければならないため、封印シールの使い回しはより一層困難である。
【0013】
また、上記構成において、前記第2貼付部材には可撓性材料から成る矢尻状先端部を有するフック部材が設けられ、前記第2保持部には前記フック部材の前記矢尻状先端部と係合するフック受入部が設けられており、前記フック部材は、その矢尻状先端部が前記シール貼付ユニットを前記開口部から挿入する過程で撓みながら変形して前記フック受入部へ進入し、いったん前記フック受入部に進入すると前記矢尻状先端部が前記フック受入部と係合して、前記シール貼付ユニットが前記開口部から抜き取り不能となる構成とするのが好ましい。
【0014】
この構成によれば、シール貼付ユニットを封印シール被覆部に押し込むだけで装着できるため、取り付け作業が簡単である。しかも、第1ケースを第2ケースから分離する際には、フック部材がフック受入部にしっかりと保持されているので、第1ケースをスムーズに第2ケースから分離させることができるといった利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態例に係る基板ケースが取り付けられたパチンコ機の外観斜視図である。
【図2】図1に示すパチンコ機のガラス扉を開けた状態の外観斜視図である。
【図3】図1に示すパチンコ機の背面図である。
【図4】本発明の実施の形態例に係る基板ケースの外観斜視図である。
【図5】図4に示す基板ケースのX部拡大図である。
【図6】図4に示す上ケースの正面図である。
【図7】図4に示す下ケースの正面図である。
【図8】図4に示すICタグユニットの詳細と組み立て手順を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態例に係る基板ケースを組み立てて封印するまでの手順(その1)を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態例に係る基板ケースを組み立てて封印するまでの手順(その2)を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態例に係る基板ケースを組み立てて封印するまでの手順(その3)を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態例に係る基板ケースを組み立てて封印するまでの手順(その4)を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態例に係る基板ケースの封印を開封して分解するまでの手順(その1)を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態例に係る基板ケースの封印を開封して分解するまでの手順(その2)を示す図である。
【図15】図14の状態を正面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の実施の形態について図面を参照して説明すると、図1と図2に示すように、本実施形態例に係る基板ケースを備えたパチンコ機(遊技機)Pは、遊技場の島設備に設置される縦長方形状の機枠1と、機枠1に扉状に開閉自在に取り付けられた本体枠2と、本体枠2の内側に収容された遊技盤3と、本体枠2の前面に扉状に開閉自在に取り付けられ、中央に大きく開口部8が形成されたガラス扉4と、このガラス扉4の開口部8に取り付けられた透明なガラス板10と、本体枠2の下側に開閉自在に配設され、遊技球を収容する受皿5を有する前面ボード6と、本体枠2の下部に設けられた発射装置9と、前面ボード6に取り付けられ、パチンコ球の発射強度を調整するハンドル7等を具備している。さらに、ガラス扉4の上部にはスピーカ20が左右に1個ずつ取り付けられており、遊技に関する様々な効果音を発するようになっている。また、受皿5の側部には、遊技者が押下操作するタッチボタン60が設けられている。
【0017】
遊技盤3はその盤面(前面)に遊技領域31を有しており、遊技者はガラス板10を通して遊技領域31を目視できるようになっている。遊技領域31はガイドレール32と遊技球規制レール33によって略円形状に区画形成されており、発射装置9によって打ち出された遊技球はこの遊技領域31内を流下する。また、遊技領域31内には、特別図柄表示装置17、演出表示装置34、スルーチャッカ21、普通図柄表示装置22、電動チューリップ49、ステージ36、第1始動入賞口(始動口)37a、第2始動入賞口(始動口)37b、一般入賞口38、アウト口39と遊技釘(図示せず)、風車(図示せず)、アタッカー装置41等が設けられている。なお、遊技盤3に設けられたこれらの構成は公知であるため、各構成の詳しい説明は省略する。
【0018】
図3に示すように、このパチンコ機Pの背面側には、主制御処理部11と、副制御処理部を構成する演出制御処理部12a、特別図柄表示制御部12b、ランプ制御処理部12c、払出制御処理部12e、および普通図柄表示制御部12fと、発射制御処理部13と、賞球払出装置14等が設けられている。
【0019】
主制御処理部11は、CPU(Central Processing Unit)と、予め定められた制御プログラムを格納するROM(Read Only Memory)と、生成された処理情報の一時記憶および記憶した情報の削除を行うRAM(Random Access Memory)等が実装されたメイン基板(制御基板)120と、このメイン基板120を収納する後述の基板ケース100とを備えて構成されており、このCPUがROMに格納された各種プログラムやデータを読み込んで実行することにより、遊技に関する主要な処理が行われる。なお、基板ケース100は遊技盤3の裏面に支持部材等を介して設けられている。
【0020】
副制御処理部を構成する演出制御処理部12a、特別図柄表示制御部12b、ランプ制御処理部12c、払出制御処理部12e、および普通図柄表示制御部12fは、主制御処理部11からの指令(コマンド)を受けて、演出表示装置34やスピーカ20、その他の演出装置(LED装置など)などの制御を行う装置である。この副制御処理部を構成する各装置も、遊技盤3の裏面に支持部材等を介して設けられている。
【0021】
演出制御処理部12aは遊技の演出に関する制御を行うためのものであり、特別図柄表示制御部12bは主制御処理部11で決定した特別図柄に関する表示の制御を行うためのものである。普通図柄表示制御部12fは普通図柄に関する表示の制御を行うためのものであり、ランプ制御処理部12cは主制御処理部11からコマンドを受けて各種ランプや電飾の点灯制御を行うものである。また、払出制御処理部12eは、CRユニットからの信号を受けて遊技球を遊技者に貸し出すように賞球払出装置14を制御する他、主制御処理部11からの払出指令を受けて、所定個数の賞球を遊技者に対して払い出すように賞球払出装置14を制御するためのものである。さらに、発射制御処理部13は、ハンドル7の回動量に応じて発射装置9に対する作動の制御を行う装置である。
【0022】
次に、本発明の実施の形態例に係る基板ケース100の詳細な構造について図4〜図8を参照しながら説明すると、基板ケース100は、矩形箱状の透明な上ケース(第1ケース)101と、矩形箱状の透明な下ケース(第2ケース)130とを備えている。そして、上ケース101と下ケース130の内部に収納空間が形成されており、この収納空間にCPU、ROM、RAM等が実装された前述のメイン基板120が収納されている。
【0023】
上ケース101と下ケース130はスライド嵌合によって重ね合わされるようになっており、上ケース101の長手方向の一方の側部(図6における右側の側部)には、後述するICタグユニット(シール貼付ユニット)105の一部を覆う上側タグカバー(第1被覆部)111が形成されている。また、下ケース130の同じく長手方向の一方の側部(図6における右側の側部)には、ICタグユニット105の一部を覆う下側タグカバー(第2被覆部)131が形成されている。そして、上ケース101を下ケース130に重ね合わせると、上側タグカバー111と下側タグカバー131とにより封印シールカバー(封印シール被覆部)106が形成される。この封印シールカバー106は、その内部にICタグユニット105を収納するための空間が形成されていると共に、一側には、その空間内へICタグユニット105を挿入するための大きな開口部109が形成されている。よって、ICタグユニット105を開口部109から挿入して内部に押し込むと、その内部空間に、ICタグユニット105が配置された状態で保持されることとなる。
【0024】
ICタグユニット105は、図8に示すように、上側タグプレート(第1貼付部材)140と、下側タグプレート(第2貼付部材)150と、これら2つのタグプレート140,150を固定する皿ネジ(ネジ)125と、上側タグプレート140と下側タグプレート150とに跨って貼り付けられる封印シール108とを備えて構成されている。
【0025】
上側タグプレート140は、同図(a)に示すように、細長い矩形プレート状を成し、2つの短辺には、それぞれ突条141a,141bが設けられている。さらに、上側タグプレート140の長手方向の一端側には、皿ネジ125を差し込むための取付孔142が設けられている。
【0026】
一方、下側タグプレート150は、細長い矩形プレート状を成し、2つの短辺には、それぞれ突条151a,151bが設けられていると共に、下側タグプレート150の長手方向の一端側には、皿ネジ125とネジ締結するための雌ネジ穴155が設けられている。さらに、下側タグプレート150の略中央部には、長手方向と直交する方向(ICタグユニット105の挿入方向)に突出するようにフック部材152が設けられている。このフック部材152は、可撓性材料からなる2つのフックバー153,154を有して成るものである。2つのフックバー153,154は、それぞれ先端に、外方に折り返された矢尻状先端部153a,154aが形成されている。2つのフックバー153,154は、下側タグプレート150の長手方向に間隔を空けて配置されており、外力を受けると、互いに近接する方向へ変形可能に構成されている。
【0027】
上側タグプレート140と下側タグプレート150とを皿ネジ125により固定すると、同図(b)に示すように、1つのブロック体の如き形状となり、これら2つのタグプレート140,150を跨ぐようにして、封印シール108が貼り付けられている。そして、同図(c)に示すように、皿ネジ125の頭部125aは、封印シール108によって覆われている。
【0028】
なお、この封印シール108は裏面に粘着層が形成された矩形状のベースシートを備えた公知のものであり、粘着層には図8(b),(c)に示すように、ICタグ108aが埋め込まれている。なお、ICタグ108aは、ベースシートの対角線に沿って延びる長尺状のアンテナと、アンテナの中央付近に配置されたICチップとを備えており、ICチップに記憶された固有の識別情報がリーダー機によって読み取り可能となっている。また、封印シール108のベースシートは手指を用いて簡単に破ることが可能であり、ベースシートを破ることによってICタグ108aも同時に切断される。
【0029】
次に、上ケース101に形成された上側タグカバー111は、長方形状の天板112と、この天板112の3辺を囲うように設けられた側板113a,b,cとを備えて成り(図6参照)、下ケース130に形成された下側タグカバー131は、長方形状の底板132と、この底板132の3辺を囲うように設けられた側板133a,b,cとを備えて成る(図7参照)ものである。そして、上側タグカバー111と下側タグカバー131とを重ね合わせると、その内部に直方体形状の空間が形成されるようになっている。
【0030】
また、図5に示すように、上側タグカバー111の側板113aおよび側板113cの端縁部には、それぞれ内方に折れ曲がる保持片(第1保持部)114a,114bが設けられている。同様に、下側タグカバー131の側板133aおよび側板133cの端縁部には、それぞれ内方に折れ曲がる保持片(第2保持部)134a,134bが設けられている。これら保持片114a,114b,134a,134bは、ICタグユニット105を封印シールカバー106内に保持するためのものであって、具体的には、保持片114a,114bがICタグユニット105に設けられている突条141a,141b(図8参照)をそれぞれ保持し、保持片134a,134bが同ユニット105の突条151a,151b(図8参照)をそれぞれ保持している。なお、上側タグカバー111の天板112には、差込孔(孔)117が設けられている。この差込孔117の直径は、ドライバ等の工具の挿入が可能な程度の大きさとなっている。
【0031】
また、下側タグカバー131の側板133bには、図7に示すように、フック受入部135が設けられている。フック受入部135は、上記したフック部材152を受け入れて保持するためのものであり、2つの受入孔138a,138bと、フック部材152の矢尻状先端部153a,154aのそれぞれと係合する2つの引っ掛け部136,137とを備えて構成されている。
【0032】
2つのフックバー153,154の先端部を2つの受入孔138a,138bにそれぞれ挿入して、フック部材152をフック受入部135に差し込んでいくと、矢尻状先端部153a,154aが引っ掛け部136,137と当接して、フックバー153は図7のF方向に、フックバー154はG方向にそれぞれ撓みながら変形していく。そこからさらにフック部材152を図7の左方向(ICタグユニットの挿入方向)に差し込むと、矢尻状先端部153a,154aが引っ掛け部136,137を乗り越える。矢尻状先端部153a,154aが引っ掛け部136,137を乗り越えると、変形していたフックバー153は、弾性力により図7のG方向へ形を戻し、フックバー154は、弾性力により図7のF方向に形を戻す。この状態では、下側タグカバー131を図7の右方向へ引っ張っても、矢尻状先端部153a,154aが引っ掛け部136,137と係合するので、ICタグユニット105が図7の右方向へ引き出されることはない。
【0033】
また、本実施形態では、上ケース101の端部(図6の左側端部)に2本のかしめネジ(かしめ部材)160a,160bを有するかしめネジユニット160が設けられ、下ケース130の端部(図7の左側端部)であってかしめユニット160と向かい合う位置に、かしめネジ160a,bと締結するかしめネジ締結部170が設けられている。かしめネジ締結部170には、かしめネジ160aがねじ込まれる第1ネジ締結部170aと、かしめネジ160bがねじ込まれる第2ネジ締結部170bとが設けられている。かしめネジ160a,160bは、一度かしめネジ締結部170とネジ締結されると、破壊を伴わなければそのネジ締結を解除することができないような構成となっており、例えば、ワンウェイネジ等の公知の構成のものが用いられている。なお、本実施形態は、かしめネジが2本設けられていることにより、基板ケース100の封印を2回行うことができるものである。
【0034】
次に、上記のように構成された基板ケース100を組み立てて封印するまでの手順について、図9〜図12を参照しながら説明する。まず、図9に示すように、上ケース101の裏面にメイン基板120をビス止めする。次に、図10に示すように、上ケース101を下ケース130に対してB方向にスライドさせる。上ケース101と下ケース130とを完全にスライド嵌合させると、図11の状態となる。この図11の状態において、かしめネジ160a,160bの何れかをかしめネジ締結部170にねじ込むことにより、両ケース101,130を封印する。
【0035】
次に、図12に示すように、外面に封印シール108が貼り付けられたICタグユニット105を、開口部109から同図中B方向へと押し込むようにして装着する。ICタグユニット105を封印シールカバー106内に完全に押し込むと、フック部材152がフック受入部135と係合するため、ICタグユニット105を開口部109から抜き取ることができない。
【0036】
こうして、両ケース101,130の封印が完了すると、封印シール108は、上ケース101の上側タグカバー111と下ケース130の下側タグカバー131とにより保護されており、不正に封印シール108を剥がすことは困難である。しかも、かしめネジ160a,bによっても基板ケース100のかしめ封印がなされているので、一度封印された基板ケース100を、どこも破壊せずに上ケース101と下ケース130とに分解するのは不可能である。
【0037】
なお、封印が完了した状態の基板ケース100に対して、リーダー機を近付けることにより、封印シール108のICタグ108aに記憶されている識別情報をリーダー機で読取ることができる。
【0038】
続いて、基板ケース100を開封して両ケース101,130を分離するまでの手順について、図13〜図15を参照しながら説明する。上ケース101を下ケース130から取り外すためには、まず、基板ケース100の封印を開封する必要がある。具体的には、図13に示すように、かしめネジ160a,bのうち、かしめ固定に用いられた方をニッパー等で破壊すると封印が開封される。次に、開口部109からカッターで封印シール108を同図中C方向に切断する。なお、上側タグプレート140と下側タグプレート150との接触面に沿ってカッターを当てると、封印シール108の切断が容易である。このとき、ICタグ108aもカッターで破壊されるため、リーダー機を近付けてもICタグ108aに記憶されている識別情報を読み取ることは不可能である。
【0039】
さらに、上側タグカバー111の差込孔117からドライバを挿入して、封印シール108の上から皿ネジ125の頭部125aに突き当てて、皿ネジ125を緩める方向(同図中D方向)に回すと、封印シール108が破れて皿ネジ125を取り出すことができる。これにより、ICタグユニット105の上側タグプレート140と下側タグプレート150との固定が解除される。なお、不正に差込孔117からドライバを挿入して皿ネジ125を緩めようとすれば、封印シール108の一部が破れてしまうため、その破れた痕跡から、不正に基板ケース100へアクセスされたことを発見することができる。
【0040】
次に、図14および図15に示すように、下ケース130に対して上ケース101を同図中E方向にスライドさせると、上ケース101に上側タグプレート140が保持された状態で下ケース130から分離する。このとき、下ケース130のフック受入部135には、下側タグプレート150のフック部材152がしっかりと保持されているので、上ケース101がE方向にスライドしても、下側タグプレート150は下ケース130の下側タグカバー131に収納されたままである。
【0041】
また、上側タグカバー111に設けられた保持片114a,114bによって上側タグプレート140が保持されているため、上ケース101をスライドさせている間に、上側タグプレート140が落下するといった心配はない。同様に、下側タグカバー131に設けられた保持片134a,134bによって下側タグプレート150が保持されているから、上ケース101と下ケース130との分離の作業中に、下ケース130から下側タグプレート150が落下することもない。なお、図14では、かしめネジ160aを切除して開封した様子が示されている。
【0042】
以上、説明したように、本実施形態では、基板ケース100の封印を開封して、制御基板120のROMを不正なものと交換しようとした場合、封印シール108が必ず切断され、それと共にICタグ108aも破壊されて、リーダー機による識別情報の読み取りができなくなる。よって、不正ROMに交換した場合には、仮に封印シール108を偽造して、外見上は正規なものと区別できないようにしたとしても、リーダー機で識別情報を読み取れば、直ちに不正行為が行われたか否かを発見することができるのである。
【0043】
しかも、上ケース101を下ケース130から分離する際に、上側タグプレート140は上側タグカバー111に、下側タグプレート150は下側タグカバー131にそれぞれしっかりと保持されているから、分離の作業に手間取ることはない。即ち、上下のタグプレート140,150は、上下ケース101,130を分離する動作を妨げないようにして、上下のタグカバー111,131にそれぞれ保持される構造となっているから、上下ケース101,130を分離する際には、単に、両ケース101,130を所定の方向にスライドするだけで足りるのである。
【0044】
勿論、本実施形態例に係る基板ケース100では、かしめネジ160a,160bが破壊されているか否かによって、開封されたことが目視確認できることは言うまでもない。
【0045】
なお、本実施形態で用いた封印シール108は、下ケース130に対して上ケース101を図14のE方向に少し力を入れてスライドさせると破れる程度の強度であるため、上記した「基板ケース100を開封して両ケース101,130を分離するまでの手順」で説明したような、「開口部109からカッターで封印シール108を図13のC方向に切断する作業」を省略することもできる。つまり、カッターで封印シール108を切断しなくても、上下ケース101,130をスライド分離させることは可能である。
【0046】
なお、上記の実施の形態例において、差込孔117の周縁に複数の脚部を立設し、前記差込孔117を覆う蓋部材をこれら複数の脚部によって支持させるようにしておき、複数の脚部をニッパー等で切断することにより初めて差込孔117が露呈する構成としても良い。このようにすると、差込孔117へのアクセスがより一層困難となるから、不正防止に効果的である。さらに、複数の脚部が切断されているか否かを目視確認することにより、不正行為を早期に発見できるといった利点もある。
【0047】
また、上記の実施の形態例では、メイン基板120を収納する基板ケース100について説明したが、それ以外にも、上記した演出制御処理部12a、特別図柄表示制御部12b、ランプ制御処理部12c、払出制御処理部12e、および発射制御処理部13の制御基板を収納するケースとして用いることも可能である。
【0048】
また、上記した実施の形態例では、本発明の基板ケース100をパチンコ機Pに取り付けた場合について説明したが、スロットマシン等の他の遊技機についても同様に適用可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
100 基板ケース
101 上ケース(第1ケース)
105 ICタグユニット(シール貼付ユニット)
106 封印シールカバー(封印シール被覆部)
108 封印シール
108a ICタグ
109 開口部
111 上側タグカバー(第1被覆部)
114a,114b 保持片(第1保持部)
117 差込孔(孔)
125 皿ネジ(ネジ)
125a 皿ネジの頭部
130 下ケース(第2ケース)
131 下側タグカバー(第2被覆部)
134a,134b 保持片(第2保持部)
135 フック受入部
140 上側タグプレート(第1貼付部材)
141a,141b,151a,151b 突条
150 下側タグプレート(第2貼付部材)
152 フック部材
153a,154a 矢尻状先端部
160a,160b かしめネジ(かしめ部材)
P パチンコ機(遊技機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ケースと第2ケースとをスライド嵌合により重ね合わせ、これら両ケースの内部に遊技の制御を行う制御基板を収納すると共に、両ケースをかしめ部材で封印する遊技機の基板ケースにおいて、
識別情報が記憶されたICタグを内蔵した封印シールが貼り付けられたシール貼付ユニットを内部に収納するためのものであって、前記第1ケースに形成された第1被覆部と、前記第2ケースに形成された第2被覆部とを重ね合わせることにより形成され、一側に前記シール貼付ユニットを挿入するための開口部を有する封印シール被覆部を備え、
前記シール貼付ユニットを前記開口部に挿入する方向は、前記第1ケースと前記第2ケースのスライド方向の一方向と一致しており、
前記シール貼付ユニットは、第1貼付部材と第2貼付部材とを重ね合わせて固定した後に、前記第1貼付部材と前記第2貼付部材とに跨って前記封印シールを貼り付けて構成されるものであり、
前記第1被覆部には、前記第1貼付部材を保持する第1保持部が設けられ、
前記第2被覆部には、前記第2貼付部材を保持する第2保持部が設けられ、
前記シール貼付ユニットは、いったん前記封印シール被覆部内に収納されると、前記両ケースが封印された状態では抜き取ることはできない構成となっており、
前記シール貼付ユニットが前記封印シール被覆部内に収納されている状態で前記開口部から露呈している前記封印シールを切断すると共に、前記第1貼付部材と前記第2貼付部材との固定を解除し、さらに、前記かしめ部材を破壊することにより、前記両ケースの封印が開封され、
前記第1ケースと前記第2ケースとは、前記第1貼付部材が前記第1保持部に保持された状態、かつ、前記第2貼付部材が前記第2保持部に保持された状態で互いに分離可能に構成される
ことを特徴とする遊技機の基板ケース。
【請求項2】
請求項1の記載において、
前記第1貼付部材と前記第2貼付部材とはネジで固定されており、
前記封印シールは、前記ネジの頭部を覆い隠すようにして前記シール貼付ユニットに貼り付けられ、
前記封印シール被覆部には、前記ネジの頭部を臨む位置に、前記ネジを緩めるための工具の挿入が可能な大きさの孔が設けられている
ことを特徴とする遊技機の基板ケース。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、
前記第2貼付部材には可撓性材料から成る矢尻状先端部を有するフック部材が設けられ、
前記第2保持部には前記フック部材の前記矢尻状先端部と係合するフック受入部が設けられており、
前記フック部材は、その矢尻状先端部が前記シール貼付ユニットを前記開口部から挿入する過程で撓みながら変形して前記フック受入部へ進入し、いったん前記フック受入部に進入すると前記矢尻状先端部が前記フック受入部と係合して、前記シール貼付ユニットが前記開口部から抜き取り不能となる構成から成る
ことを特徴とする遊技機の基板ケース。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−239504(P2012−239504A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109545(P2011−109545)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】