説明

遊技機の遊技球揚送機構

【課題】上皿への遊技球の揚送量の調節が容易であるとともに構造も簡易な遊技機の遊技球揚送機構を提供する
【解決手段】上皿3から溢れた遊技球Bを下皿4へ溢流させる溢流流路5を備える遊技機であって、溢流流路5の上端51に上皿3が連結されるとともに、溢流流路5の下端52に下皿4の一端41が連結されており、常時は下皿4の他端42に移動可能に位置させられ、下皿4の他端42から当該下皿4の一端41を経て溢流流路5内をその上端51に至るまでの間で移動させられて、下皿4内の遊技球Bを上皿3へ押し出す球押し部材6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊技機の遊技球揚送機構に関し、特に、パチンコ遊技機等において下皿から上皿へ遊技球を戻す際に好適に使用できる遊技球揚送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ遊技機等において、賞球を貯留する上皿が満杯になると、余剰の遊技球は本体内に設けられたオーバーフロー流路を経て下皿へ供給される。この場合、遊技が進行し上皿に貯留された遊技球が少なくなると、従来は遊技者が下皿内の遊技球を手で掴んで上皿へ戻していた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、下皿を揺動可能な構造として、上皿への遊技球の返送が必要な場合には下皿を上方へ揺動させることによって下皿内の遊技球を上皿上へ排出させている。また特許文献2では、螺旋コンベアを備えた搬送機構(揚送機構)を設けて、螺旋コンベアの螺旋羽根を電動回転させることによって下皿内の遊技球を上皿内へ返送している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−204790
【特許文献2】特開2001−353322
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の構造は、上方へ揺動させた下皿内の遊技球を上皿上へほぼ自然落下させるものであるため、上皿へ返送する遊技球の量を細かく調節することが困難であるという問題があった。特許文献2に記載の構造ではこのような問題は解消されるが、上皿から下皿への溢流流路とは別に搬送機構を設ける必要があるとともにその機構も複雑であるという問題があった。
【0006】
そこで本発明はこれらの問題を解決するもので、上皿への遊技球の揚送量の調節が容易であるとともに構造も簡易な遊技機の遊技球揚送機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、上皿(3)から溢れた遊技球(B)を下皿(4)へ溢流させる溢流流路(5)を備える遊技機であって、溢流流路(5)の上端(51)に前記上皿(3)が連結されるとともに、溢流流路(5)の下端(52)に前記下皿(4)の一端(41)が連結されており、常時は下皿(4)の他端(42)に移動可能に位置させられ、下皿(4)の他端(42)から当該下皿(4)の一端(41)を経て溢流流路(5)内をその上端(51)に至るまでの間で移動させられて、下皿(4)内の遊技球(B)を上皿(3)へ押し出す球押し部材(6)を備える。
【0008】
本発明において、下皿内の遊技球を上皿内へ揚送する場合には、下皿の他端から当該下皿の一端を経て溢流流路内をその上端に至るまでの間で球押し部材を移動させると、この過程で球押し部材の移動方向前方にある下皿内の遊技球が掻き集められて溢流流路を経て上皿内へ押し出される。
【0009】
本発明は、球押し部材によって遊技球を下皿から溢流流路内を経て上皿へ押しやる構造であるから、揚送機構の構造が簡易である。また上皿から下皿への遊技球の溢流流路を上皿への遊技球の揚送流路として兼用できるから、従来のように溢流流路とは別体に揚送機構を設ける必要がなく、遊技機の全体構造を複雑にすることなく揚送機能を果たすことができる。また、球押し部材を溢流流路の途中の適当位置まで移動させることによって、上皿内へ押し出される遊技球、すなわち遊技球の揚送量を容易に調節することができる。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように本発明の遊技機の遊技球揚送機構によれば、上皿への遊技球の揚送量の調節が容易であるとともに構造の簡易化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す、遊技球揚送機構を備えたパチンコ遊技機の要部斜視図である。
【図2】球皿ユニットの全体斜視図である。
【図3】下皿の横断面図で、図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】球皿ユニットの全体側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には、本発明の遊技球揚送機構を備えたパチンコ遊技機の一例を示す。図1において、遊技盤11を覆うガラス枠1の下方に位置する球皿板2には球皿ユニットBUが設けられており、この球皿ユニットBUは上方に位置する上皿3とその下方に位置する下皿4、およびこれらを連結する溢流流路5より構成されている。これら上皿3、下皿4および溢流流路5は同幅で一体に成形されている。なお、図1中の符号21は遊技球発射ハンドルである。
【0014】
球皿ユニットBUの詳細を図2に示す。図2において、上皿3は横長で上方へ開放する容器状に成形されており、その一端31に近い後側側壁には底壁から離れた上方位置に、本体枠9(図1)内の賞球払出流路61に連通する賞球払出口34が開口している。上皿3の底壁内面には賞球払出口34から払い出された遊技球を下流に向けて一列に整列させる公知の案内路(図示略)が形成されており、案内路の下流端は上皿3の他端32の底壁近くに開口して遊技球を発射装置へ供給する遊技球供給路(図示略)へ連通している。なお、上皿3の底面は一端31から他端32へ向けて下り傾斜している(図4参照)。
【0015】
溢流流路5は矩形断面の筒体で、略U字形に湾曲した上端51が上皿3の一端31に上下方向へずれた状態で一体に連結されている。これにより、溢流流路上端51の底壁は上皿3の底壁に対して遊技球一個分以上上方に位置してここに段付き部33が形成されている。上皿3の下方に位置する下皿4は、上皿3よりやや長い横長で上方へ開放する容器状に成形されており、その一端41には溢流流路5の下端52が底壁を面一に一致させて一体に連結されている。なお、下皿4の底面は一端41から他端42にかけて下り傾斜となるように形成されている。また、底面の下流側には下皿4に貯留された遊技球を機外に排出するための球抜き孔(図示略)が形成され、周知のシャッター機構により閉じた状態を維持している。なお、溢流流路下端52の頂壁部521は下皿4に向かって斜め上方へ開いており、これにより後述する下皿4から溢流流路5内への遊技球の押し込みが、遊技球が多量な場合であってもスムーズになされるようになっている。
【0016】
下皿4内には球押し部材6が配設されている。球押し部材6は常時は図2に示すように下皿4内の他端42に位置している。図3に示すように、球押し部材6は両側に遊技球の外径よりも狭い隙間Sを形成して下皿4の内空間を横断する矩形板状に成形されている。球押し部材6の上下方向の中央には左右方向へ軸体61が貫通しており、球押し部材6は軸体61に回転可能に支持されている。
【0017】
軸体61の両端は、下皿4の前後(図3の左右)の側壁に長手方向へ形成された、案内手段を構成する案内長孔81,82内に延びており、軸体61の一端には前側側壁の外方に設けられた円形の操作用つまみ7の軸部711が軸体61に対し相対回転可能に連結されている。
【0018】
一方、軸体61の他端には後側側壁の外方に設けられた円形のキャップ部材72の軸部721が固定されている。案内長孔81,82は下皿4の前後の側壁から、これに続く溢流流路5の前後の側壁へ延びて、溢流流路5の上端51へ至っている(図2)。なお、操作用つまみ7とキャップ部材72の外径はそれぞれ案内長孔81,82の幅よりも十分大きくしてあり、これによって軸体61の軸方向へのぶれが防止されている。
【0019】
図3において、球押し部材6の両側の間隙Sに位置する軸体61の外周にはそれぞれ歯車83,84が固定されており、これら歯車83,84は、下皿4の前後の側壁に沿う底壁上に設けられたラック部材85,86の歯型に噛合している。ラック部材85,86は下皿4の底壁から、これに続く溢流流路5の外周壁へ延びて、溢流流路5の上端51へ至っている(図2)。
【0020】
図3において、球押し部材6の両側面上端部にはそれぞれ回り止めピン62,63が突設してあって、これら回り止めピン62,63が下皿4の、前後の側壁の上端部に長手方向へ形成された案内手段を構成する案内溝43,44内に嵌装されている。案内溝43,44は下皿4の前後の側壁から、これに続く溢流流路5の前後の側壁へ延びて、溢流流路5の上端51へ至っている(図2)。
【0021】
このような構造の遊技球揚送機構において、賞球払出口34から払い出された遊技球が上皿3内に滞留して、これが過大に貯留されると、遊技球は段付き部33を乗り越えて溢流流路5内へ進入し、溢流流路5を経て下皿4へと溢流する。
【0022】
上皿3から溢流流路5を経て溢流し下皿4内に貯留された遊技球B(図2)を再び上皿3内へ揚送する場合には、操作用つまみ7を掴んでこれを下皿4の他端42から一端41方向へ案内手段を構成する案内長孔81,82に沿って移動させる。これに伴い、球押し部材6の両側に位置する歯車83,84がラック部材85,86上をこれに噛合しつつ転動し、軸体61の移動に伴って球押し部材6も同方向へ移動させられる。このとき、歯車83,84が一体的に結合されているので、操作用つまみ側の歯車83がラック部材85に噛合して回転するのに応じて、奥側の歯車84が同じ回転量だけラック部材86と噛合しながら移動して球押し部材6をスムーズに平行移動させることができる。
【0023】
この際、球押し部材6はその両側面上端部に設けられた案内手段を構成する回り止めピン62,63が案内溝43,44内に位置していることによって、球押し部材6は下皿4の内空間を横断する姿勢を変化させることなく下皿4内を他端42から一端41へ移動して(図4のX位置)、下皿4内の遊技球Bを溢流流路5内へ押し出す。
【0024】
操作用つまみ7を案内長孔81,82に沿って下皿4から溢流流路5へ移動させると、これにつれて球押し部材6も溢流流路5内へ進入する(図4のY位置)。溢流流路5内においても、回り止めピン62,63が案内溝43,44内に位置していることによって、球押し部材6は溢流流路5の内空間を横断する姿勢を変化させることなく溢流流路5内をその下端52から上端51へ向けて移動して、この過程で球押し部材6の進行方向に掻き寄せられている遊技球B(図2)を溢流流路5の上端51開口から上皿3内へ押し出す。
【0025】
この際、上皿3内へ押し出す、すなわち揚送する遊技球Bの量は、球押し部材6を溢流流路5内の上端51に至る間の適当位置まで移動させる(図4のZ位置)ことによって容易に調節することができる。上皿3への適当量の遊技球Bの揚送を終えた後は、操作用つまみ7によって球押し部材6を再び下皿4内の他端42位置へ戻しておく。
【0026】
このようにして、溢流流路5を経て、球押し部材6によって必要量の遊技球Bを下皿4内から上皿3内へ簡易かつ迅速に揚送することができる。本実施形態は、球押し部材6によって遊技球Bを下皿4から溢流流路5内を経て上皿3へ押しやる構造であるから、揚送機構の構造が簡易である。また、上皿3から下皿4への遊技球Bの溢流流路5を上皿3への遊技球Bの揚送流路として兼用させたから、従来のように溢流流路とは別体に揚送機構を設ける必要がなく、遊技機の全体構造を複雑にすることなく揚送機能を果たすことができる。そして、本実施形態の構造では前面側に溢流流路があるので本体枠内にオーバーフロー流路を設置する必要が無いから本体枠の構造を簡易化することができる。また球押し部材と操作用つまみを短い距離で係合でき、揚送機構の交換等を目的とした着脱構造を容易にすることができる。更に溢流流路を透明にすれば流通する遊技球を遊技者が目視することも可能になる。また、球押し部材6を溢流流路5の途中の適当位置まで移動させることによって、上皿3内へ押し出される遊技球B、すなわち遊技球Bの揚送量を容易に調節することができる。
【0027】
なお、上記実施形態において、球押し部材の板面中央を軸体に固定して、操作用つまみによって球押し部材の移動とその姿勢維持を適正に行うことができれば、球押し部材の移動を円滑に行うための手段である歯車やラック部材、あるいは球押し部材の姿勢を保つための手段である回り止めピンや案内溝は特に設ける必要が無い。
【0028】
また上記実施形態では操作用つまみ7を把持して球押し部材6を手動で移動させたが、移動駆動機構を設けてスイッチ操作で自動的に移動させるようにしても良い。また球押し部材を下皿の他端位置に戻す場合に、手動で戻してもよいが、他端側に引き寄せ用の定荷重ばねなどを設けて下皿の他端側に自動で戻るようにしてもよい。また、溢流流路5は必ずしも上皿3の一端に連結させる必要は無いが、溢流流路5を最短距離とし上皿3内の遊技球の流れを乱すことがないから一端に連結するのが好ましい。上皿3の案内路の途中に蓋体で開閉可能な球抜口を設けて当該球抜口を開くことにより、発射装置へ向かう遊技球を直接下皿4内へ落下排出させるようにしても良い。これによれば、発射球を下皿へ簡便に排出することができる。この際、球押し部材が揚送作業中の場合、すなわち下皿の他端に無い場合には球抜口の開放を規制するようにすると良い。
【符号の説明】
【0029】
3…上皿、4…下皿、41…一端、42…他端、5…溢流流路、51…上端、52…下端、6…球押し部材、B…遊技球。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上皿から溢れた遊技球を下皿へ溢流させる溢流流路を備える遊技機であって、前記溢流流路の上端に前記上皿が連結されるとともに、前記溢流流路の下端に前記下皿の一端が連結されており、常時は前記下皿の他端に移動可能に位置させられ、前記下皿の他端から当該下皿の一端を経て前記溢流流路内をその上端に至るまでの間で移動させられて、前記下皿内の遊技球を前記上皿へ押し出す球押し部材を備える遊技機の遊技球揚送機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−130529(P2012−130529A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285346(P2010−285346)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(500077959)株式会社MRD (150)
【Fターム(参考)】